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特許7475871包皮食品、包皮食品の製造方法、及び包皮食品の加熱調理時の相互結着の防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】包皮食品、包皮食品の製造方法、及び包皮食品の加熱調理時の相互結着の防止方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 35/00 20160101AFI20240422BHJP
【FI】
A23L35/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020010438
(22)【出願日】2020-01-25
(65)【公開番号】P2021114940
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154597
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】黒川 健二
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-085959(JP,A)
【文献】国際公開第2020/004632(WO,A1)
【文献】特開2019-041633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に難消化性澱粉を含む結着防止層(ただし、「(a)10質量%水溶液における粘度が100mPa・s以下である加工澱粉に該当する難消化性澱粉及び(b)グリセリン脂肪酸エステルを含有するもの」を除く)を有することを特徴とする包皮食品。
【請求項2】
包皮食品を加熱調理する前に、前記包皮食品の皮の表面に、難消化性澱粉を含む結着防止剤(ただし、「(a)10質量%水溶液における粘度が100mPa・s以下である加工澱粉に該当する難消化性澱粉及び(b)グリセリン脂肪酸エステルを含有するもの」を除く)を付着させる工程(A)を含む包皮食品の製造方法。
【請求項3】
前記工程(A)の後、前記包皮食品を加熱調理する前に、前記付着した結着防止剤を固着させる工程(B)を含む請求項2に記載の包皮食品の製造方法。
【請求項4】
前記工程(B)が、前記包皮食品を蒸し処理する工程である請求項3に記載の包皮食品の製造方法。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の包皮食品の製造方法を用いることによる包皮食品の加熱調理時の相互結着を防止する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、餃子、シュウマイ等の包皮食品、及び包皮食品の製造方法に関し、特に加熱調理時に相互結着が生じ難い包皮食品、及び包皮食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
包皮食品は、必要に応じて細断した野菜類、畜肉類、魚介類、調味料等からなる具材を、麺皮(以下、単に「皮」ともいう)で包んだものを焼き調理、揚げ調理、蒸し調理、茹で調理等の加熱調理したものであり、餃子、ワンタン、シュウマイ、ラビオリ等が挙げられる。これらの包皮食品を加熱調理する場合、通常、複数個の包皮食品を同時に調理する。この際、隣り合う包皮食品の互いの皮部が接触した状態でα化すると、相互結着が生じる場合がある。このような相互結着が生じると、剥がす際に皮が破れる等の不具合が発生し、製品歩留りが低下することになる。
【0003】
従来から、食品の結着防止に関する技術は種々開発されている。例えば、特許文献1では、餃子、焼売等の皮を使用する食品において、調理後の食品同士の付着防止、喫食時の破れを防止することを目的とし、でん粉を主体とし、米粉を含有する、食品生地または食品生地用組成物が開示されている。また、特許文献2では、水分が多い麺を使用してスナック菓子を製造する方法であって、簡便な手段で油ちょう工程中の麺同士の結着を抑制し、作業性良く、高い歩留まりでスナック菓子を製造することができる製造方法を提供することを目的とし、麺を油ちょうする油ちょう工程を含むスナック菓子を製造する方法であって、前記麺の水分が、42質量%以上であり、前記油ちょう工程前に、前記麺に結着防止粉体をまぶすことを特徴とするスナック菓子の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-223205号公報
【文献】特開2018-161093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、包皮食品の皮の配合が限定されるため、汎用性が低い。そのため、包皮食品の皮の配合を工夫して、食感や健康機能等に特徴付けをする場合に制限がある。また、特許文献2の技術は、水分が多い麺を使用してスナック菓子を製造する際の油ちょう工程中の麺同士の結着を防止するための技術であり、上述のような内部に具材を包んだ包皮食品の加熱調理時の皮部の相互結着を防止する場合は不十分な場合がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、包皮食品の皮の配合に係らず、加熱調理時に相互結着が生じ難い包皮食品、及び加熱調理時に相互結着が生じ難い包皮食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、包皮食品の加熱調理時の相互結着の防止に有効な素材を種々検討した結果、難消化性澱粉を用いることで、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち、上記目的は、表面に難消化性澱粉を含む結着防止層(ただし、「(a)10質量%水溶液における粘度が100mPa・s以下である加工澱粉に該当する難消化性澱粉及び(b)グリセリン脂肪酸エステルを含有するもの」を除く)を有することを特徴とする包皮食品によって達成される。また、上記目的は、包皮食品を加熱調理する前に、前記包皮食品の皮の表面に、難消化性澱粉を含む結着防止剤(ただし、「(a)10質量%水溶液における粘度が100mPa・s以下である加工澱粉に該当する難消化性澱粉及び(b)グリセリン脂肪酸エステルを含有するもの」を除く)を付着させる工程(A)を含む包皮食品の製造方法によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、包皮食品の皮の配合に係らず、加熱調理時に相互結着が生じ難い包皮食品を提供できるので、どのような包皮食品でも、高い製品歩留りで製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[包皮食品]
本発明の包皮食品は、表面に難消化性澱粉を含む結着防止層を有することを特徴とする。これにより、前記包皮食品は、皮の配合に係らず、加熱調理時の相互結着を防止することができるので、どのような包皮食品でも、高い製品歩留りで製造することができる。後述する実施例に示す通り、澱粉を含む層であっても、難消化性澱粉を含まない層では、結着防止層として機能しない。前記結着防止層は、後述する本発明の包皮食品の製造方法に示す通り、包皮食品の表面に難消化性澱粉を含む結着防止剤が付着した層であるか、又は包皮食品の表面に前記結着防止剤が固着した層である。本発明において、「付着」とは、前記結着防止剤が、前記包皮食品の皮自体の水分等により、前記包皮食品の表面にくっついている状態をいい、「固着」とは、前記付着した結着防止剤の層が、加熱処理等により前記包皮食品の表面により強固に接合した状態をいう。前記結着防止層は、より安定している点で、包皮食品の表面に前記結着防止剤が固着した層であることが好ましい。
【0011】
本発明において、難消化性澱粉を含む結着防止層は、本発明の効果が得られれば、包皮食品の表面全体に有る必要はなく、包皮食品の表面の少なくとも一部に有ればよい。前記難消化性澱粉を含む結着防止層は、少なくとも、その包皮食品の加熱調理時に、他の包皮食品と接触する可能性がある表面に有ることが好ましく、包皮食品の表面全体にあることがさらに好ましい。
【0012】
難消化性澱粉とは、植物から抽出した澱粉、例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉等の澱粉を原料として、消化酵素の消化作用に抵抗性を有するように物理的及び/又は化学的(酵素処理も含む)に加工を施したものである。本発明において、難消化性澱粉は、特に制限はなく、公知の難消化性澱粉を適宜選択して使用することができるが、架橋処理が施されたものが好ましく、リン酸架橋処理が施されたものがより好ましい。
【0013】
本発明において、前記結着防止層は、本発明の効果を阻害しない限り、難消化性澱粉以外の材料が含まれていてもよい。そのような材料としては、例えば、包皮食品の皮に配合する材料、前記包皮食品の皮を製造する際に打ち粉として使用する材料等が含まれ得る。具体的には、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、全粒粉、デュラム小麦粉等の小麦粉;そば粉、トウモロコシ粉、大豆粉、大麦粉等の小麦粉以外の穀粉;上述の植物から抽出した澱粉、及びそれらの澱粉を原料として、物理的又は化学的に加工を施した難消化性澱粉以外の加工澱粉;卵白、卵黄、カゼイン、グルテン等のたん白質;食用油脂類;糖類;色素;アラニン、グリシン、リジン等のアミノ酸;グルタミン酸ナトリウム、食塩等の調味料; 増粘剤;乳化剤;香料等が挙げられる。本発明の効果を十分に得るため、前記結着防止層は、難消化性澱粉を主成分として含むことが好ましい。
【0014】
本発明の包皮食品は、上述の説明から理解されるように、原則として、最終的に加熱調理する前の未調理又は半調理の常温、冷蔵、又は冷凍の包皮食品である。半調理の包皮食品は、例えば、最終的に加熱調理する際の生焼けを防止する目的で、蒸し加熱処理等の加熱処理を行った後、冷蔵、又は冷凍した包皮食品等が挙げられる。本発明の包皮食品の例としては、未調理又は半調理の常温、冷蔵、又は冷凍の餃子、ワンタン、シュウマイ、ラビオリ等が挙げられる。本発明の包皮食品を加熱調理する方法は、特に制限はなく、例えば、焼き調理、揚げ調理、蒸し調理、茹で調理、電子レンジ調理等が挙げられる。本発明は、特に包皮食品の相互結着が生じ易い、焼き調理、及び揚げ調理に有効である。なお、本発明の包皮食品においては、最終的に加熱調理する際の相互結着が防止されるだけでなく、特に冷凍包皮食品の場合に一次加熱として行う、電子レンジ解凍の際の相互結着も防止され得る。
【0015】
[包皮食品の製造方法]
本発明の包皮食品の製造方法は、包皮食品を加熱調理する前に、前記包皮食品の皮の表面に、難消化性澱粉を含む結着防止剤を付着させる工程(A)を含む。前記工程(A)によって、前記包皮食品の表面に、難消化性澱粉を含む結着防止層を形成することができるので、上述の通り、どのような包皮食品であっても、その後、包皮食品を加熱調理する際の相互結着を防止することができる。加熱調理する方法は、特に制限はなく、例えば、焼き調理、揚げ調理、蒸し調理、茹で調理、電子レンジ調理等が挙げられる。本発明は、特に包皮食品の相互結着が生じ易い、焼き調理、及び揚げ調理に有効である。なお、本発明において、「包皮食品を加熱調理する前」とは、原則として、最終的に加熱調理する前のことである。ただし、上述の通り、冷凍包皮食品の場合は、一次加熱としての電子レンジ解凍の際の相互結着も防止され得るので、そのような場合は、前記電子レンジ解凍の前のことでもあり得る。
【0016】
本発明において、前記工程(A)は、包皮食品を加熱調理する前に、難消化性澱粉を含む結着防止剤が包皮食品の皮の表面に付着されることができれば、どのような時期に行なってもよく、どのような方法で行なってもよい。例えば、包皮食品の皮に具材を包んで包皮食品を調製した後、加熱調理前に、包皮食品の表面に、難消化性澱粉を含む粉状の結着防止剤をまぶしてもよい。また、包皮食品の皮を調製した後、具材を包む前に難消化性澱粉を含む粉状の結着防止剤を包皮食品の皮の表面(具材を包む際に外側となる面)にまぶしてもよく、包皮食品の皮を調製する際の打ち粉として、難消化性澱粉を含む粉状の結着防止剤を用いることで、包皮食品の皮に付着させてもよい。
【0017】
本発明において、結着防止剤は、本発明の効果を阻害しない限り、難消化性澱粉以外の材料が含まれていてもよい。そのような材料としては、上述の包皮食品の皮に配合する材料、前記包皮食品の皮を製造する際に打ち粉として使用する材料等が含まれ得る。本発明の効果を十分に発揮するためには、前記結着防止剤は、難消化性澱粉を主成分として含むことが好ましく、難消化性澱粉のみからなることがさらに好ましい。
【0018】
本発明において、包皮食品の皮の材料については特に制限はなく、上述のような各種包皮食品の皮の製造に通常配合される材料を適宜使用することができる。前記包皮食品の皮の製造についても、各種包皮食品の皮の常法に従って、実施することができる。また、各種包皮食品の製造についても、通常使用される具材や装置を用いて、常法に従って、実施することができる。一般に、包皮食品の皮の水分は、30~55質量%である。本発明においては、水分が高すぎると皮が破れ易くなる場合があるので、皮の水分は、30~50質量%であることが好ましく、30~45質量%であることが好ましい。
【0019】
本発明の包皮食品の製造方法は、前記工程(A)の後、前記包皮食品を加熱調理する前に、前記付着した結着防止剤を固着させる工程(B)を含むことが好ましい。前記工程(B)によって、前記包皮食品の皮の表面に、より安定した前記結着防止層を形成することができるので、その後、前記包皮食品を加熱調理する際の相互結着を、より十分に防止することができる。
【0020】
本発明において、前記工程(B)は、包皮食品を加熱調理する前に、前記包皮食品の皮の表面に付着した、難消化性澱粉を含む結着防止剤を固着させることができれば、どのような方法で行なってもよい。例えば、工程(A)の後、前記包皮食品を、最終的に加熱調理する条件よりも弱い条件で、加熱処理することによって、前記結着防止剤を固着させることができる。前記加熱処理としては、湿熱条件下で行うことが好ましく、蒸し処理が好ましい。したがって、本発明の包皮食品の製造方法において、前記工程(B)は、前記包皮食品を蒸し処理する工程であることが好ましい。なお、上述の通り、最終的に加熱調理する際の生焼けを防止する目的で、蒸し加熱処理等の加熱処理を行った後、冷蔵、又は冷凍した包皮食品等の半調理の冷蔵、又は冷凍包皮食品の場合は、前記蒸し加熱処理等の加熱処理を、前記工程(B)として行うことができる。
【0021】
本発明においては、上述の通り、前記工程(A)の後、又は前記工程(B)の後、前記包皮食品を加熱調理する前に、冷蔵又は冷凍保存してもよい。
【0022】
なお、本発明は、上述の説明から理解できるように、本発明の包皮食品の製造方法を用いることによる包皮食品の加熱調理時の相互結着を防止する方法にもある。
【実施例
【0023】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.餃子の製造試験
(1)餃子の皮の調製
包皮食品として餃子を選定し、まず、表1に示した配合で餃子の皮を調製した。具体的には、各材料の内、食塩以外の材料(小麦粉1kg使用)を混練機(カントーミキサー10Q、フック使用)に投入し、所定の量の食塩、及び水を混合したものを混練機中へ投入し、さらに混練し、そぼろ状の生地を調製した。その後、そぼろ状の生地を製麺機の圧延ロールに掛け(8号ロール1回、6号ロール2回)麺帯を調製した。得られた麺帯を型でくり抜き、餃子の皮(直径90mm、厚さ0.8mm)を調製した。
(2)餃子の製造
豚挽き肉200質量部、ラード30質量部を混合し、ごま油25質量部、醤油25質量部、酒15質量部、おろしニンニク2質量部、おろしショウガ2質量部、及びコショウ少々を加えてさらに混合し、キャベツ(脱水処理(5~7mmの角切りにし、1質量%の食塩を振って混ぜた後、1時間放置後、水分を搾った(歩留まり約80質量%))したもの)400質量部、及び刻んだニラ400質量部を加えて軽く混合して、餡を調製した。1.(1)で調製した餃子の皮を用いて、上記餡(15g)を包み、生餃子を調製した。得られた生餃子の表面に、表2に記載した通り、各結着防止剤をまぶして付着させ、「固着工程なし」の場合は、そのまま、「固着工程あり」の場合は、蒸し処理(5分)を行った後、冷蔵(7℃)、又は冷凍(-20℃)保存した。その後、各餃子を10個同時に焼き調理、又は揚げ調理し、相互結着の状態を観察した。焼き調理は、200℃に加熱したフライパンに8gの油を引き、各餃子(10個)を隣接するように置き、水140ml添加し、蓋をして約5分間加熱した。その後、蓋をはずして焼き色がつくまで加熱した。また、揚げ調理は、170℃の油で4分間加熱した。なお、比較例1Bと実施例2Bは、加熱調理前の電子レンジ解凍時の相互結着の状態も観察した。
(3)相互結着の状態の評価
相互結着の状態は、以下の評価基準に従って評価した。
◎:相互結着も、皮破れも認められない
○:相互結着は容易に分離できるレベルであり、皮破れは認められない
△:相互結着があり、皮破れが10個中1~2個発生した
×:相互結着があり、皮破れが10個中3個以上発生した
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
表2に示した通り、加熱調理する前に、皮の表面に難消化性澱粉を含む結着防止剤を付着させ、結着防止層を形成させ冷蔵した実施例1A、及び冷凍した実施例1Bの餃子は、焼き餃子の評価で、相互結着は容易に分離できるレベルであり、皮破れは認められず、良好な評価であった。また、結着防止剤を付着させた後、固着工程を行ってから冷蔵した実施例2A、及び冷凍した実施例2Bの餃子は、焼き餃子の評価では同様に良好であり、揚げ餃子の評価では、相互結着も、皮破れも認められない非常に良好な評価であった。実施例2Bでは、電子レンジ解凍時の評価でも良好な評価であった。一方、結着防止剤を付着させないで冷蔵した比較例1A、及び冷凍した比較例1Bの餃子、結着防止剤としてコーンスターチを付着させて冷蔵した比較例2A、及び冷凍した比較例2Bの餃子、並びにコーンスターチを付着させた後、固着工程を行ってから冷蔵した比較例3A、及び冷凍した比較例3Bの餃子は、焼き餃子の評価、揚げ餃子の評価、及び電子レンジ解凍時の評価の全てで相互結着が認められ、皮破れが発生していた。
【0027】
2.シュウマイの製造試験
(1)シュウマイの皮の調製
包皮食品としてシュウマイを選定し、まず、表3に示した配合でシュウマイの皮を調製した。具体的には、各材料の内、食塩以外の材料(小麦粉1kg使用)を混練機(カントーミキサー10Q、フック使用)に投入し、所定の量の食塩、及び水を混合したものを混練機中へ投入し、さらに混練し、そぼろ状の生地を調製した。その後、そぼろ状の生地を製麺機の圧延ロールに通して得られた麺帯を切断して、シュウマイの皮(70mm角、厚さ0.35mm)を調製した。
(2)シュウマイの製造
豚挽き肉47質量部、玉ねぎ32質量部、調味料類13質量部、澱粉5質量部、しょうが3質量部を混合し、ペースト状にして餡を調製した。次いで、2.(1)で調製したシュウマイの皮を用いて、上記餡(12g)を包み、約15gの生シュウマイを調製した。得られた生シュウマイの表面に、表4に記載した通り、各結着防止剤をまぶして付着させ、「固着工程なし」の場合は、そのまま、「固着工程あり」の場合は、蒸し処理(5分)を行った後、冷蔵(7℃)、又は冷凍(-20℃)保存した。その後、各シュウマイを10個同時に蒸し調理、又は揚げ調理し、相互結着の状態を観察した。蒸し調理は、シュウマイ同士が隣接するように配置して蒸し器で、5分間加熱した。また、揚げ調理は、170℃の油で4分間加熱した。
(3)相互結着の状態の評価
相互結着の状態は、1.(3)と同様に評価した。
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
表4に示した通り、加熱調理する前に、皮の表面に難消化性澱粉を含む結着防止剤を付着させ、結着防止層を形成させ冷蔵した実施例3A、及び冷凍した実施例3Bのシュウマイは、蒸しシュウマイの評価で、相互結着は容易に分離できるレベルであり、皮破れは認められず、良好な評価であった。また、結着防止剤を付着させた後、固着工程を行ってから冷蔵した実施例4A、及び冷凍した実施例4Bのシュウマイは、揚げシュウマイの評価で、相互結着も、皮破れも認められない非常に良好な評価であった。一方、結着防止剤を付着させないで冷蔵した比較例4A、及び冷凍した比較例4Bのシュウマイ、結着防止剤としてコーンスターチを付着させて冷蔵した比較例5A、及び冷凍した比較例5Bのシュウマイ、並びにコーンスターチを付着させた後、固着工程を行ってから冷蔵した比較例6A、及び冷凍した比較例6Bの餃子は、蒸しシュウマイの評価及び、揚げシュウマイの評価の全てで相互結着が認められ、皮破れが発生していた。
【0031】
以上により、包皮食品を加熱調理する前に、前記包皮食品の皮の表面に、難消化性澱粉を含む結着防止剤を付着させる工程(A)によって、難消化性澱粉を含む結着防止層を形成することで、その後、包皮食品を加熱調理する際の相互結着を防止することができることが示唆された。また、付着した前記結着防止剤を固着させる工程(B)によって、前記包皮食品を加熱調理する際の相互結着を、より十分に防止することができることが示唆された。
【0032】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明により、包皮食品の皮の配合に係らず、加熱調理時に相互結着が生じ難い包皮食品を提供できるので、どのような包皮食品でも、高い製品歩留りで製造することができる。