(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】プログラム及びシミュレーション装置
(51)【国際特許分類】
G06F 30/398 20200101AFI20240422BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240422BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
G06F30/398
H01L29/78 301B
(21)【出願番号】P 2020144932
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西口 賢弥
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 保
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-092319(JP,A)
【文献】特開2002-373982(JP,A)
【文献】特開2009-129043(JP,A)
【文献】特開2018-142563(JP,A)
【文献】特開2007-073846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/398
H01L 21/336
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体と、前記半導体の上の絶縁体と、前記絶縁体の上の金属とを備えた積層構造のC-V特性のシミュレーションをコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記シミュレーションは、
前記半導体と前記絶縁体との界面に、前記金属に印加される電圧の変化に伴って電子が捕獲及び放出される複数の離散的な界面準位を含む前記積層構造のC-V特性モデルを使用し、
前記C-V特性モデルは、
前記電圧の変化に応じた第3容量を示し、
前記第3容量は、
前記界面に形成された空乏層に応じた第1容量と、
前記複数の離散的な界面準位に応じた第2容量と、
前記絶縁体の容量と、
を備え、
前記第1容量と、前記第2容量とは並列接続され、さらに並列接続された前記第1容量と前記第2容量とに、前記絶縁体の容量が直列接続され、
前記金属に印加された第1電圧に応じた前記第1容量を算出する手順と、
前記複数の離散的な界面準位のうちで前記第1電圧に応じた第1界面準位から放出される電子の量から前記第2容量を算出する手順と、
前記第3容量を算出する手順と、
前記第1電圧を段階的に変化させることで、当該第1電圧に対応する第1界面準位を段階的に変化させる手順と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
半導体と、前記半導体の上の絶縁体と、前記絶縁体の上の金属とを備えた積層構造のC-V特性をシミュレーションする装置であって、
前記シミュレーションは、
前記半導体と前記絶縁体との界面に、前記金属に印加される電圧の変化に伴って電子が捕獲及び放出される複数の離散的な界面準位を含む前記積層構造のC-V特性モデルを使用し、
前記C-V特性モデルは、
前記電圧の変化に応じた第3容量を示し、
前記第3容量は、
前記界面に形成された空乏層に応じた第1容量と、
前記複数の離散的な界面準位に応じた第2容量と、
前記絶縁体の容量と、
を備え、
前記第1容量と、前記第2容量とは並列接続され、さらに並列接続された前記第1容量と前記第2容量とに、前記絶縁体の容量が直列接続され、
前記金属に印加された第1電圧に応じた前記第1容量を算出する第1容量算出部と、
前記複数の離散的な界面準位のうちで前記第1電圧に応じた対応する第1界面準位から放出される電子の量から前記第2容量を算出する第2容量算出部と、
前記第3容量を算出する第3容量算出部と、
を有し、
前記第1電圧を段階的に変化させることで、当該第1電圧に対応する第1界面準位を段階的に変化させ、
前記第3容量算出部は、前記第1容量と、それまでに算出した前記第2容量と、前記絶縁体の容量に応じて合計の容量値を算出するシミュレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム及びシミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置に含まれる半導体と絶縁膜との界面には界面準位が存在し、界面準位は半導体装置の特性に影響を及ぼす。例えば、GaNを用いた高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistor:HEMT)の電流コラプスには、界面準位の密度が深く関わっている。一般に、界面準位の密度が高いほどC-V(Capacitance-Voltage)特性の周波数依存性が高い。そこで、シミュレーションにより、半導体装置の設計段階で、数値計算によるC-V特性の解析を通じて界面準位を定量化しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】J. Appl. Phys. 63 (1988) 2120
【文献】J. Appl. Phys. 103 (2008) 104510
【文献】J. Appl. Phys. 57 (2018) 04FG04
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のC-V特性のシミュレーション方法では、周波数が1Hz~1kHz程度と低い場合の精度が低い。
【0006】
本開示は、周波数が低い場合でも優れた精度が得られるプログラム及びシミュレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のシミュレーション方法は、半導体と、前記半導体の上の絶縁体と、前記絶縁体の上の金属とを備えた積層構造のC-V特性をシミュレーションする方法であって、前記シミュレーションする方法は、前記半導体と前記絶縁体との界面に、前記金属に印加される電圧の変化に伴って電子が捕獲及び放出される複数の離散的な界面準位を含む前記積層構造のC-V特性モデルを使用し、前記C-V特性モデルは、前記電圧の変化に応じた第3容量を示し、前記第3容量は、前記界面に形成された空乏層に応じた第1容量と、前記複数の離散的な界面準位に応じた第2容量と、前記絶縁体の容量と、を備え、前記第1容量と、前記第2容量とは並列接続され、さらに並列接続された前記第1容量と前記第2容量とに、前記絶縁体の容量が直列接続され、前記シミュレーションする方法は、前記金属に印加された第1電圧に応じた前記第1容量を算出する工程と、前記複数の離散的な界面準位のうちで前記第1電圧に応じた第1界面準位から放出される電子の量から前記第2容量を算出する工程と、を有し、前記第2容量を算出する工程は、前記第1電圧を段階的に変化させることで、当該第1電圧に応じた前記第1界面準位を段階的に変化させる工程を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、周波数が低い場合でも優れた精度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るシミュレーション方法の対象を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す対象における理想的なポテンシャル分布を示すバンド図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す対象における界面準位を考慮したポテンシャル分布を示すバンド図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すバンド構造の等価回路を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るシミュレーション方法で用いられる積層構造のポテンシャル分布を示すバンド図である。
【
図6】
図6は、
図5に示すバンド構造の等価回路を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態において、金属に印加される電圧の変化に伴うポテンシャル分布の変化を示すバンド図(その1)である。
【
図8】
図8は、第1実施形態において、金属に印加される電圧の変化に伴うポテンシャル分布の変化を示すバンド図(その2)である。
【
図9】
図9は、第1実施形態において、金属に印加される電圧の変化に伴うポテンシャル分布の変化を示すバンド図(その3)である。
【
図11】
図11は、第1実施形態において、金属に印加される電圧の変化に伴うポテンシャル分布の変化を示すバンド図(その4)である。
【
図13】
図13は、シミュレーション装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図14】
図14は、シミュレーション装置の機能構成を示す図である。
【
図15】
図15は、シミュレーション装置が実施するシミュレーション方法を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、第1実施形態における第1ポテンシャル分布及び第2ポテンシャル分布を並べて示す図である。
【
図17】
図17は、第1実施形態に関するシミュレーションの対象の積層構造を示す断面図である。
【
図20】
図20は、第1実施形態に関するシミュレーション結果及び実測結果を重ねて示す図である。
【
図21】
図21は、第2実施形態に係るシミュレーション方法の対象を示す断面図である。
【
図22】
図22は、
図21に示す対象における理想的なポテンシャル分布を示すバンド図である。
【
図23】
図23は、第2実施形態に係るシミュレーション方法で用いられる積層構造のポテンシャル分布を示すバンド図である。
【
図25】
図25は、第2実施形態における第1ポテンシャル分布及び第2ポテンシャル分布を並べて示す図である。
【
図26】
図26は、第2実施形態における第2ポテンシャル分布及び第3ポテンシャル分布を並べて示す図である。
【
図27】
図27は、第2実施形態に関するシミュレーションの対象の積層構造を示す断面図である。
【
図30】
図30は、第2実施形態に関するシミュレーション結果及び実測結果を重ねて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一又は対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0012】
〔1〕 本開示の一態様に係るシミュレーション方法は、半導体と、前記半導体の上の絶縁体と、前記絶縁体の上の金属とを備えた積層構造のC-V特性をシミュレーションする方法であって、前記シミュレーションする方法は、前記半導体と前記絶縁体との界面に、前記金属に印加される電圧の変化に伴って電子が捕獲及び放出される複数の離散的な界面準位を含む前記積層構造のC-V特性モデルを使用し、前記C-V特性モデルは、前記電圧の変化に応じた第3容量を示し、前記第3容量は、前記界面に形成された空乏層に応じた第1容量と、前記複数の離散的な界面準位に応じた第2容量と、前記絶縁体の容量と、を備え、前記第1容量と、前記第2容量とは並列接続され、さらに並列接続された前記第1容量と前記第2容量とに、前記絶縁体の容量が直列接続され、前記シミュレーションする方法は、前記金属に印加された第1電圧に応じた前記第1容量を算出する工程と、前記複数の離散的な界面準位のうちで前記第1電圧に応じた第1界面準位から放出される電子の量から前記第2容量を算出する工程と、を有し、前記第2容量を算出する工程は、前記第1電圧を段階的に変化させることで、当該第1電圧に応じた前記第1界面準位を段階的に変化させる工程を有する。
【0013】
半導体と絶縁体との界面に複数の離散的な界面準位を含むC-V特性モデルにおいて、複数の離散的な界面準位の第2容量を半導体の第1容量から独立して算出し、第1容量と複数の離散的な界面準位の第2容量とを用いて積層構造の容量を算出する。この方法によれば、積層構造のC-V特性を高精度で取得することができる。
【0014】
〔2〕 〔1〕において、前記第3容量の算出に、前記複数の界面準位ごとの時定数が用いられてもよい。この場合、より高精度のシミュレーションを行うことができる。
【0015】
〔3〕 〔1〕又は〔2〕において、前記第1容量を取得する工程は、前記金属に前記第1電圧よりも高い第2電圧が印加され、かつ前記界面準位に電子が捕獲されたときの第1ポテンシャル分布から前記半導体における第1電子量を算出する工程と、前記界面準位に電子が捕獲されたままで前記金属に前記第1電圧よりも低い第3電圧が印加されたときの第2ポテンシャル分布から前記半導体における第2電子量を算出する工程と、前記第1電子量と前記第2電子量との差を、前記第2電圧と前記第3電圧との差で除算する工程と、を有してもよい。この場合、第1ポテンシャル分布及び第2ポテンシャル分布を用いることで、第1容量をより高精度で取得できる。
【0016】
〔4〕 〔3〕において、前記第2容量を、前記第2ポテンシャル分布が得られる時刻から予め定められた時間が経過して前記界面準位から電子が放出されたときの第3ポテンシャル分布から算出してもよい。この場合、第3ポテンシャル分布を用いることで、第2容量をより高精度で取得できる。
【0017】
〔5〕 〔3〕又は〔4〕において、前記第2電圧と前記第1電圧との差は、前記第1電圧と前記第3電圧との差と等しくてもよい。この場合、第1容量及び第2容量を算出しやすい。
【0018】
〔6〕 〔1〕~〔5〕において、前記金属に印加される交流信号の周波数を複数設定する工程と、複数の前記周波数の各々について前記第1電圧と前記第3容量との関係から前記積層構造のC-V特性を算出する工程と、を有してもよい。この場合、C-V特性の周波数依存性、すなわち周波数分散を解析できる。
【0019】
〔7〕 〔1〕~〔6〕において、前記半導体は、第1バンドギャップを備えた第1半導体と、前記第1半導体の上の前記第1バンドギャップよりも小さい第2バンドギャップを備えた第2半導体と、を有し、前記絶縁体は前記第2半導体の上に設けられており、前記積層構造のC-V特性モデルは、前記第1半導体と前記絶縁体との間に前記第2半導体の量子井戸を含み、前記第2容量は、前記複数の離散的な界面準位のうちで前記第1電圧に対応する第1界面準位から前記量子井戸に放出される電子の量から算出されてもよい。この場合、HEMTにおけるC-V特性の周波数依存性を解析しやすい。
【0020】
〔8〕 本開示の他の一態様に係るプログラムは、半導体と、前記半導体の上の絶縁体と、前記絶縁体の上の金属とを備えた積層構造のC-V特性のシミュレーションをコンピュータに実行させるプログラムであって、前記シミュレーションは、前記半導体と前記絶縁体との界面に、前記金属に印加される電圧の変化に伴って電子が捕獲及び放出される複数の離散的な界面準位を含む前記積層構造のC-V特性モデルを使用し、前記C-V特性モデルは、前記電圧の変化に応じた第3容量を示し、前記第3容量は、前記界面に形成された空乏層に応じた第1容量と、前記複数の離散的な界面準位に応じた第2容量と、前記絶縁体の容量と、を備え、前記第1容量と、前記第2容量とは並列接続され、さらに並列接続された前記第1容量と前記第2容量とに、前記絶縁体の容量が直列接続され、前記金属に印加された第1電圧に応じた前記第1容量を算出する手順と、前記複数の離散的な界面準位のうちで前記第1電圧に応じた第1界面準位から放出される電子の量から前記第2容量を算出する手順と、前記第3容量を算出する手順と、前記第1電圧を段階的に変化させることで、当該第1電圧に対応する第1界面準位を段階的に変化させる手順と、をコンピュータに実行させる。
【0021】
〔9〕 本開示の他の一態様に係るシミュレーション装置は、半導体と、前記半導体の上の絶縁体と、前記絶縁体の上の金属とを備えた積層構造のC-V特性をシミュレーションする装置であって、前記シミュレーションは、前記半導体と前記絶縁体との界面に、前記金属に印加される電圧の変化に伴って電子が捕獲及び放出される複数の離散的な界面準位を含む前記積層構造のC-V特性モデルを使用し、前記C-V特性モデルは、前記電圧の変化に応じた第3容量を示し、前記第3容量は、前記界面に形成された空乏層に応じた第1容量と、前記複数の離散的な界面準位に応じた第2容量と、前記絶縁体の容量と、を備え、前記第1容量と、前記第2容量とは並列接続され、さらに並列接続された前記第1容量と前記第2容量とに、前記絶縁体の容量が直列接続され、前記金属に印加された第1電圧に応じた前記第1容量を算出する第1容量算出部と、前記複数の離散的な界面準位のうちで前記第1電圧に応じた対応する第1界面準位から放出される電子の量から前記第2容量を算出する第2容量算出部と、前記第3容量を算出する第3容量算出部と、を有し、前記第1電圧を段階的に変化させることで、当該第1電圧に対応する第1界面準位を段階的に変化させ、前記第3容量算出部は、前記第1容量と、それまでに算出した前記第2容量と、前記絶縁体の容量に応じて合計の容量値を算出する。
【0022】
[第1実施形態]
第1実施形態は、半導体、絶縁体及び金属を備えた積層構造の特性をシミュレーションする方法に関する。
図1は、第1実施形態に係るシミュレーション方法の対象を示す断面図である。
図1に示すように、第1実施形態に係るシミュレーション方法の対象は、半導体10と、半導体10の上の絶縁体20と、絶縁体20の上の金属30とを備えた積層構造101である。すなわち、積層構造101は、MIS(metal-insulator-semiconductor)構造を備える。例えば、半導体10はn型のGaN又はAlGaNであり、絶縁体20はSiN又はAl
2O
3である。
【0023】
図2は、第1実施形態に係るシミュレーション方法の対象における理想的なポテンシャル分布を示すバンド図である。
図2において、縦軸は電子のエネルギーの大きさを表し、横軸は
図1の断面図に対応し、絶縁体20と半導体10との界面に垂直で、絶縁体20から半導体10へ向かう方向への距離を表す。E
Vはバンド構造における電子に占有された最も高いエネルギーバンド(価電子帯)の頂上を示す。E
Cはバンド構造における最も低い空のエネルギーバンド(伝導帯)の底を示す。E
Fはフェルミ準位を示す。
図2の例では、半導体10はn型半導体であり、
図2に示していない金属30(
図1参照)にバイアス電圧V
Gが印加された状態を示している。
【0024】
積層構造101においては、半導体10の絶縁体20との界面の近傍に空乏層40が存在し、金属30に印加された電圧に応じて空乏層40の厚さが界面に垂直な方向に変化する。
図2に示すように、半導体10の空乏層40よりも絶縁体20から離間する部分には、電子eが存在する。そして、空乏層40の厚さの変化に伴って、半導体10と金属30との間の容量及び電子の量が変化する。
【0025】
また、実際には、
図2には示されていないが、半導体10と絶縁体20との界面に界面準位が存在する。界面準位においては、金属30に電圧が印加されると、当該界面準位のエネルギーEの大きさに応じて電子が捕獲及び放出される。例えば、直流バイアス電圧に微小交流電圧を重ねた微小交流バイアス電圧を金属30に印加すると、半導体10の電子の量が変化するとともに、界面準位における電子の捕獲及び放出が生じる。
【0026】
図3は、積層構造101における界面準位を考慮したポテンシャル分布を示すバンド図である。
図3に示すように、半導体10と絶縁体20との界面に複数の界面準位50を含む。
図3では、便宜的に複数の界面準位50を離散的に示しているが、実際には、連続的に存在している。
図3には、フェルミ準位E
Fよりもエネルギーが高い界面準位からいくつかの電子51が放出され、フェルミ準位E
F近辺の、又はフェルミ準位E
Fよりもエネルギーが低い界面準位では、電子52が界面準位に捕獲されたままの状態にある例を示している。
【0027】
図4は、
図3に示すバンド構造の等価回路を示す図である。容量C
oxは、絶縁体20の厚さ及び誘電率に応じて構成される絶縁体容量を示し、容量C
Sは、半導体10の不純物濃度及び印加バイアスV
Gに応じた空乏層厚さ40に応じて構成される空乏層容量C
Sを示す。容量C
ox及び空乏層容量C
Sは、等価回路では、
図4に示されているように、互いに直列に接続されたものとして表現できる。また、容量C
itは、界面準位50が電子を捕獲又は放出する状態に応じて構成される容量を表し、コンダクタンスG
itは界面準位50に捕獲又は放出される電子の時定数τを表すためのもので、時定数τは、容量C
itと合わせて、τ=C
it/G
itで定義される。
【0028】
容量C
itとコンダクタンスG
itは、等価回路では、
図4に示されているように、互いに直列に接続され、さらに空乏層容量C
Sに並列に接続されたものとして表現できる。積層構造101の全体としての容量C
totalに対する等価回路は、容量C
oxと、空乏層容量C
Sと、容量C
itと、コンダクタンスG
itとを、
図4のように接続したものとして表現できる。
【0029】
図4の等価回路から導出された積層構造101の全体としての容量C
totalを表す式は、式(1)~式(5)のように表される。式(5)中のfは、印加バイアスV
Gの小振幅変動周波数fを表す。従来C-V特性のシミュレーション方法では、周波数fが1Hz~1kHz程度と低い場合に、界面準位に応じた容量C
itの再現性が不十分であり、積層構造101の全体としての容量C
totalを表す精度が低い。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
第1実施形態においては、積層構造101に対して、複数の離散的な界面準位を含むC-V特性モデル(以下、モデルと称する)を使用する。
図5は、第1実施形態に係るシミュレーション方法で用いられる積層構造101のポテンシャル分布を示すバンド図である。
図6は、
図5に示すバンド構造の等価回路を示す図である。
図5のバンド図は、
図3のバンド図に比べ、離散的に複数の界面準位を持つ。
図5に示す例は、エネルギーの高い方から5つの離散的な界面準位E
0、E
1、E
2、E
3、E
4を持つ。
【0036】
図6に示す等価回路は、
図4の等価回路に比べ、離散的な複数の界面準位E
kに対応した、並列接続された複数の界面準位の容量C
it(E
k)及びコンダクタンスG
it(E
k)を持つ。kは0以上の整数であり、kの値が大きい界面準位E
kほど深い(電子のエネルギーが低い)。
図6の例は、5つの離散的な界面準位E
0、E
1、E
2、E
3、E
4に対応し、空乏層容量C
Sに並列接続された、それぞれ5つの界面準位の容量C
it(E
0)、C
it(E
1)、C
it(E
2)、C
it(E
3)、C
it(E
4)及びコンダクタンスG
it(E
0)、G
it(E
1)、G
it(E
2)、G
it(E
3)、G
it(E
4)を持つ。それぞれのコンダクタンスG
it(E
k)は、それぞれ対応した離散的な界面準位が電子を捕獲又は放出する時定数τ(E
k)を表し、τ(E
k)=C
it(E
k)/G
it(E
k)で定義される。
図6に示す等価回路から導出される積層構造101の全体としての容量C
totalを表す式は、式(6)~式(9)のように表される。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
第1実施形態では、
図5及び
図6に示すモデルと、これに対応する式(6)~式(9)のモデル式とを用いて、金属30に第1電圧、例えば上記直流バイアス電圧V
Gが印加されたときの半導体10の容量C
Sを取得し、複数の離散的な界面準位E
kごとに、金属30に第1電圧が印加されたときの当該複数の離散的な界面準位の容量C
it(E
k)を算出する。容量C
it(E
k)は、金属30に印加される電圧が変化したときに当該複数の離散的な界面準位の容量C
it(E
k)それぞれから放出される電子の量から算出する。
【0042】
その後、金属30に第1電圧が印加されたときの積層構造101の容量Ctotalを、容量Cox、CSと複数の離散的な界面準位Ekごとの容量Cit(Ek)とを用いて算出する。
【0043】
このように、このシミュレーション方法では、複数の離散的な界面準位Ekごとの容量Cit(Ek)を容量CSから独立して算出する。そして、このシミュレーション方法によれば、第1電圧における積層構造101の容量Ctotalを高精度で算出できる。
【0044】
また、第1電圧を段階的に変化させ、変化した第1電圧ごとに、当該第1電圧に対応する界面準位Ekの容量Cit(Ek)を算出することで、高精度でC-V特性を取得することができる。
【0045】
更に、金属30に印加される交流信号の周波数を複数設定し、これら周波数の各々についてC-V特性を取得することで、C-V特性の周波数依存性、すなわち周波数分散を解析できる。
【0046】
図7~
図12は、個々の界面準位E
kごと、それぞれに応じた容量C
it(E
k)を算出する動作を示す図である。
図7及び
図8は、トランジスタのゲート電極に相当する金属30に印加されたバイアスV
Gを変化させた時に、該当の界面準位から捕獲されていた電子が放出される様子を示す。
図7は、金属30に印加されたバイアスV
G(V
G=V
0-dV)により、最初の離散的な界面準位E
0(k=0)がフェルミレベルE
F相当の位置まで持ち上げられた状態を示すバンド図である。
図8は、金属30に印加されたバイアスV
G(V
G=V
1-dV)により、次の離散的な界面準位E
1(k=1)がフェルミレベルE
F相当の位置まで持ち上げられた状態を示すバンド図である。
図8は、
図7に示す状態では離散的な界面準位E
1と界面準位E
0との間の界面準位に捕獲されていた電子が、
図8で放出される様子を示している。
【0047】
図7~
図12では、いずれも、式(9)より、t=1/(2πf)と定義している。式(5)と同様に、式(9)中のfは、印加したバイアス電圧V
Gの小振幅変動周波数fを表す。後述するように、空乏層容量C
Sと離散的な界面準位E
kの容量C
it(E
k)を求めるため、直流の印加バイアスに対し微小な振幅のバイアス変動dVを与える。微小なバイアス変動dVの変動周波数をfとする。離散的な界面準位E
kに捕獲された電子の放出が、微小なバイアス変動dVの変動に追い付くことを前提にしているため、周波数fの周期は当然、式(8)で定義される時定数よりも大きい値が適応される。
【0048】
図7及び
図8に示されるように、界面準位そのものは複数の界面準位が連続的に存在し、それら複数の界面準位に多数の電子が捕獲されている。これに対し、本実施形態のモデルでは、複数の界面準位は、離散的に存在しているように表わされている。別の言い方をすると、複数の界面準位は、いくつかの離散的な界面準位E
kを代表として用いて表わされている。具体的には、例えば
図7と
図8との比較により明らかなように、離散的な界面準位E
0(k=0)と、離散的な界面準位E
1(k=1)との間に捕獲されていた電子は、あたかも、離散的な界面準位E
1(k=1)に捕獲されていたかのように表される。この様子を式で表したものが式(10)である。
【0049】
【0050】
式(10)について、
図7及び
図8を参照しながら説明すると、ΔVは、2つ印加バイアスの差を表し、ここでは、ΔV=V
1-V
2である。それぞれの印加バイアスは所望の離散的な界面準位E
kに対し、その離散的な界面準位E
kで捕獲されていた電子が、捕獲から放出へと変化するのに必要な印加バイアスであると考えられる。
図7及び
図8では、ΔVの差があるバイアスの印加により、
図7のバンド図の状態から
図8のバンド図の状態への変化が生じる。この状態の変化の結果、離散的な界面準位E
1と界面準位E
0との間に捕獲されていた電子が放出される。この放出される電子の量は電荷の増加量ΔQ
it(E
k)(ここではk=1)として定義される。そして、この電荷の増加量ΔQ
it(k)(k=1)は、代表としての離散的な界面準位E
1(k=1)に蓄えられていたとして、これを界面準位の容量C
it(E
1)(ここではk=1)として定義する。これらの関係を示したものが式(10)である。
【0051】
図9~
図12は、
図7及び
図8のバンド図のポテンシャル分布の変化に対応させて説明した等価回路の説明を、それぞれ、注目する離散的な界面準位と回路図を対応させて表した図である。
【0052】
図9は、金属30に印加されたバイアス電圧V
G(V
G=V
1-dV)により、離散的な界面準位E
1(k=1)がフェルミレベルE
F相当の位置まで持ち上げられた状態を示すバンド図である。
図9には、
図8と同じ状態を示している。
図10は、
図9に示すバンド構造の等価回路を示す図である。
図10には、界面準位の容量C
it(E
1)及びコンダクタンスG
it(E
1)を示してある。
【0053】
図11は、金属30に印加されたバイアス電圧V
G(V
G=V
2-dV)により、離散的な界面準位E
2(k=2)がフェルミレベルE
F相当の位置まで持ち上げられた状態を示すバンド図である。
図11には、
図9の状態に続くバイアス電圧の印加の結果として、離散的な界面準位E
2と界面準位E
1との間に捕獲されていた電子が放出される状態が示されている。
図12は、
図11に示すバンド構造の等価回路を示す図である。
図12には、
図10中の容量C
it(E
1)及びコンダクタンスG
it(E
1)に加えて、界面準位の容量C
it(E
2)及びコンダクタンスG
it(E
2)を示してある。
【0054】
次に、上記のシミュレーション方法の実施に好適なシミュレーション装置について説明する。
図13は、シミュレーション装置のハードウェア構成を示す図である。
図13において、シミュレーション装置100は、コンピュータによって制御される情報処理装置であって、CPU(central processing unit)11と、主記憶装置12と、補助記憶装置13と、入力装置14と、表示装置15と、通信インターフェース(I/F)17と、ドライブ装置18とを有し、バスBに接続される。
【0055】
CPU11は、主記憶装置12に格納されたプログラムに従ってシミュレーション装置100を制御するプロセッサに相当する。主記憶装置12には、RAM(random access memory)、ROM(read only memory)等が用いられ、CPU11にて実行されるプログラム、CPU11での処理に必要なデータ、CPU11での処理にて得られたデータ等を記憶又は一時保存する。
【0056】
補助記憶装置13には、HDD(hard disk drive)等が用いられ、各種処理を実行するためのプログラム等のデータを格納する。補助記憶装置13に格納されているプログラムの一部が主記憶装置12にロードされ、CPU11に実行されることによって、各種処理が実現される。記憶部130は、主記憶装置12及び補助記憶装置13を含む。
【0057】
入力装置14は、マウス、キーボード等を有し、ユーザがシミュレーション装置100による処理に必要な各種情報を入力するために用いられる。表示装置15は、CPU11の制御のもとに必要な各種情報を表示する。入力装置14と表示装置15とは、一体化したタッチパネル等によるユーザインタフェースであってもよい。通信I/F17は、有線又は無線などのネットワークを通じて通信を行う。通信I/F17による通信は無線又は有線に限定されるものではない。
【0058】
シミュレーション装置100によって行われる処理を実現するプログラムは、例えば、CD-ROM(compact disc read-only memory)等の記憶媒体19によってシミュレーション装置100に提供される。
【0059】
ドライブ装置18は、ドライブ装置18にセットされた記憶媒体19(例えば、CD-ROM等)とシミュレーション装置100とのインターフェースを行う。
【0060】
また、記憶媒体19に、後述される本実施形態に係る種々の処理を実現するプログラムを格納し、この記憶媒体19に格納されたプログラムは、ドライブ装置18を介してシミュレーション装置100にインストールされる。インストールされたプログラムは、シミュレーション装置100により実行可能となる。
【0061】
なお、プログラムを格納する記憶媒体19はCD-ROMに限定されない。コンピュータ読取可能な記憶媒体として、CD-ROMの他に、DVD(digital versatile disk)ディスク、USB(universal serial bus)メモリ等の可搬型記録媒体、フラッシュメモリ等の半導体メモリであってもよい。
【0062】
図14は、シミュレーション装置の機能構成を示す図である。
図14において、シミュレーション装置100は、主に、入力データ取得部41と、シミュレーション実行部42とを有する。入力データ取得部41と、シミュレーション実行部42とは、シミュレーション装置100にインストールされたプログラムが、シミュレーション装置100のCPU11に実行させる処理により実現される。記憶部130には、シミュレーションにおいてポテンシャル分布を算出するための数式等が記憶される。
【0063】
入力データ取得部41は、シミュレーション実行部42に入力するデータを取得する。入力データ取得部41は、例えば、ユーザからの入力により、シミュレーションの対象の積層構造101に関するパラメータを取得する。
【0064】
シミュレーション実行部42は、入力データ取得部41に入力されたデータを読み込んで、シミュレーションを実行する。シミュレーション実行部42は、モデル式取得部43と、CS算出部44と、Cit(Ek)算出部45と、Ctotal算出部46とを有する。
【0065】
モデル式取得部43は、入力データ取得部41に入力された積層構造101に関するパラメータを用いて、
図6で示された等価回路から半導体10と絶縁体20との界面に複数の離散的な界面準位E
kを含むモデルに関するモデル式(式(6)~式(9))を作成し、取得する。
【0066】
CS算出部44は、モデル式取得部43が作成及び取得したモデル式において、金属30に第1電圧が印加されたときの半導体10の容量CSを算出する。CS算出部44は、入力データ取得部41に入力された積層構造101に関するパラメータを用いて容量CSを算出する。CS算出部44は第1容量算出部の一例である。
【0067】
Cit(Ek)算出部45は、モデル式取得部43が取得したモデル式において、複数の離散的な界面準位Ekごとに、金属30に第1電圧が印加されたときの当該離散的な界面準位Ekの容量Cit(Ek)を、金属30に印加される電圧が変化したときに当該離散的な界面準位Ekから放出される電子の量から算出する。Cit(Ek)算出部45は第2容量算出部の一例である。
【0068】
Ctotal算出部46は、モデル式取得部43が作成したモデル式において、金属30に第1電圧が印加されたときの積層構造101の容量Ctotalを、容量CSと、複数の離散的な界面準位Ekごとの容量Cit(Ek)とを用いて算出する。Ctotal算出部46は第3容量算出部の一例である。
【0069】
次に、シミュレーション装置100が行う処理について説明する。
図15は、シミュレーション装置が実施するシミュレーション方法を示すフローチャートである。このシミュレーション方法では、直流バイアスに微小交流電圧を重ねた微小交流バイアスを金属30に印加したときの電子の量の変化に基づいてC-V特性のシミュレーションを行う。
【0070】
図15に示すように、まず、入力データ取得部41が積層構造101に関するパラメータを取得する(ステップS101)。パラメータには、例えば、半導体10の材料、誘電率、厚さ及びドナー密度と、絶縁体20の材料、誘電率及び厚さとが含まれる。パラメータには、金属30に印加する信号の周波数、シミュレーションを行う第1電圧(直流バイアス)の範囲及び第1電圧の変化の大きさ(V
step)と、微小交流電圧の振幅(dV)とも含まれる。ここでは、金属30に印加する信号及び微小交流電圧の周波数がfであり、第1電圧の範囲が-10V~+10Vであり、0.1Vずつ段階的に変化し、微小交流電圧の振幅は10mVであるとする。
【0071】
次いで、モデル式取得部43が、半導体10及び絶縁体20の材料等の情報を用いて、半導体10と絶縁体20との界面に複数の離散的な界面準位Ekを含むモデルのモデル式を作成し、取得する(ステップS102)。
【0072】
次いで、第1電圧の範囲の最小値(-10V)を第1電圧Vの初期値V0とし(ステップS103)、CS算出部44が、金属30の電圧VGが第1電圧よりもdVだけ高い第2電圧(V+dV)であり、離散的な界面準位Ekに電子が捕獲されたときの第1ポテンシャル分布を算出する。また、第1ポテンシャル分布から、半導体10における電子の量Q1を算出する(ステップS104)。
【0073】
次いで、CS算出部44が、離散的な界面準位Ekに電子が捕獲されたままで金属30の電圧VGが第1電圧よりもdVだけ低い第3電圧(V-dV)であるときの第2ポテンシャル分布を算出する。また、第2ポテンシャル分布から、半導体10における電子の量Q2を算出する(ステップS105)。
【0074】
図16は、金属30に第2電圧が印加された時の第1ポテンシャル分布191と金属30に第3電圧が印加された時の第2ポテンシャル分布192とを並べて示すバンド図である。
図16に示すように、第1実施形態では、第1ポテンシャル分布191と第2ポテンシャル分布192とを比較すると、金属30に印加される第3電圧の電子エネルギーが、第2電圧の電子エネルギーよりも高くなる。その結果、第1ポテンシャル分布191(
図16の左側)に比べて第2ポテンシャル分布192(
図16の右側)では、空乏層40の厚さが広がる。従って、半導体10の容量C
Sの値は小さくなり、第2ポテンシャル分布での半導体10の電子の量Q
2は、第1ポテンシャル分布での半導体10の電子の量Q
1よりも少なくなる。
【0075】
C
S算出部44は、モデル式の取得(ステップS102)の後に、絶縁体20の容量C
OXを算出する(ステップS120)。そして、C
S算出部44は、第2ポテンシャル分布の算出(ステップS105)の後に、第1ポテンシャル分布191と第2ポテンシャル分布192との間での半導体10における電子の量の差ΔQ(=Q
1-Q
2)と、第2電圧と第3電圧との差ΔV(=2dV)と、絶縁体20の容量C
OXとを用いて半導体10の容量C
Sを算出する(ステップS106)。ここで、本実施形態においては、時間変化を考慮しないものと仮定する。つまり、
図15のフローチャートにおけるステップS104とステップS105は、それぞれ例えば、t=0の瞬間において行われる。具体的には、t=0の瞬間において、
図16の左側に示されるような、第2電圧の印加と第1ポテンシャル分布191の形成が瞬時になされるか、
図16の右側に示されるような、第3電圧の印加と第2ポテンシャル分布192の形成が瞬時になされるものとする。
【0076】
この結果、ステップS106において、CS算出部44は、離散的な界面準位Ekからの電子の放出を考慮せずに容量CSを算出する。すなわち、CS算出部44は、離散的な界面準位Ekに電子が捕獲された状態が維持されているものとして、容量CSを算出する。これは式(6)~式(8)において、時刻tが時定数τ(Ek)より小さい0であり、Cit(Ek)=0と仮定することと等しい。
【0077】
次いで、C
it(E
k)算出部45が、金属30の電圧V
Gが第3電圧(V-dV)であり、時刻がt=1/(2πf)であるときの第3ポテンシャル分布193を算出する。また、第3ポテンシャル分布193から半導体10における電子の量Q
3を算出する(ステップS107)。なお、時刻tは、第1ポテンシャル分布191及び第2ポテンシャル分布192が得られるステップS104、S105での時刻をそれぞれt=0とした時刻であり、例えば、時定数τ(E
k)より大きい1/(2πf)である。
図9が第3ポテンシャル分布193の例を示す。
図9に示す第3ポテンシャル分布193の例の条件は「V
G=V
1-dV、t=1/(2πf)」である。つまり、
図9には、条件が「V
G=V
1-dV、t=0」である
図16の右側に示すステップS105に続くステップS107で算出される第3ポテンシャル分布193が示されている。
【0078】
次いで、C
it(E
k)算出部45は、第2ポテンシャル分布192と第3ポテンシャル分布193とを比較し、Δtの時間で各離散的な界面準位E
kから放出される電子の量ΔQ
it(E
k)を算出し、各離散的な界面準位E
kについて容量C
it(E
k)を算出する(ステップS108)。例えば、
図9及び
図10に示す例では、k=1に対応した離散的な界面準位E
1について、容量C
it(E
1)を算出する。
図7からの変化として
図8にも示したように、第3電圧を印加することで、離散的な界面準位E
0と界面準位E
1との間の連続した界面準位がフェルミエネルギーE
Fと同等のエネルギー、又はフェルミエネルギーE
Fより高いエネルギーまで持ち上げられ、
図8及び
図9中に矢印で示すように、離散的な界面準位E
0と界面準位E
1との間の連続した界面準位に捕獲されていた電子が伝導帯の下端に放出される。また、離散的な界面準位E
1よりエネルギーが低い界面準位に捕獲された電子は、そのエネルギーがフェルミエネルギーE
Fより低いため、界面準位に捕獲されたままである。
【0079】
各容量C
it(E
k)の算出では、各離散的な界面準位E
kから放出された電子の量ΔQ
it(E
k)と、第2電圧と第3電圧との差ΔV(=2dV)とが用いられる。ΔQ
it(E
k)と、ΔVと、C
it(E
k)との間には、式(10)の関係が成り立つ。例えば、
図10に示したように、等価回路図中の容量C
it(E
1)とコンダクタンスG
it(E
1)が求められる。ここで、本実施形態においては、コンダクタンスG
it(E
k)を算出するに際し、SRH(Shockley-Read-Hall)モデルによるモデル式(11)から算出したτ(E
k)を式(8)に代入することにより、コンダクタンスG
it(E
k)を簡便に算出することが可能である。
【0080】
【0081】
本実施形態においては、式(11)において、エネルギーEの値として離散的な界面準位E
1を代入し簡便にτ(E
1)を算出する。
図9に示すように、実際の界面準位は複数かつ連続的に存在しているが、本実施形態では、例えば、離散的な界面準位E
0と界面準位E
1との間の連続した界面準位に捕獲された電子は、全て離散的な界面準位E
1に存在すると考え、これら捕獲された電子が放出される時定数を一意にτ(E
1)と定義する。その結果、式(8)にモデル式(11)の値を代入することが可能となる。
【0082】
次いで、C
total算出部46が、容量C
Sと、複数の離散的な界面準位E
kごとの容量C
it(E
k)とを用いて、積層構造101の容量C
totalを算出する(ステップS109)。例えば、
図11及び
図12に示すように、離散的な界面準位E
2に対し、V
G=V
2-dVとして、容量C
it(E
2)、コンダクタンスG
it(E
2)を求めた後(ステップS108)、それまで求められていた離散的な界面準位E
1及びE
0に対する、容量C
it(E
1)、コンダクタンスG
it(E
1)と、容量C
it(E
0)、コンダクタンスG
it(E
0)に、さらに並列に容量C
it(E
2)、コンダクタンスG
it(E
2)を追加し、新たな合計の容量値C
totalとする。
【0083】
その後、第1電圧Vが、予め定められている上限Vend、ここでは入力された範囲の上限である+10Vに達していれば(ステップS110のYES)、処理を終了する。第1電圧Vが上限Vendに達していなければ(ステップS110のNO)、第1電圧をVstep、ここでは0.1Vだけ増加する(ステップS111)。第1電圧の変化に伴い、kの値を1だけインクリメントする。つまり、離散的な複数の界面準位Ekのうちで、次の処理で注目する界面準位を1つだけ深い界面準位にずらす。そして、第1電圧Vが上限Vendに達するまでステップS104~S111の処理が繰り返される。
【0084】
このようなシミュレーション方法によれば、パラメータとして入力された特定の周波数fの信号について、パラメータとして入力された-10V~+10Vの第1電圧の範囲で、0.1Vずつ積層構造101との間の容量Ctotalが算出される。つまり、周波数fの信号が金属30に印加される場合のC-V特性をシミュレーションすることができる。そして、周波数fの値を変更することで、複数種類の周波数fについてC-V特性を取得し、C-V特性の周波数依存性を解析できる。容量Ctotalの算出に際して離散的な界面準位Ekごとの時定数τ(Ek)を用いることで、より高精度のシミュレーションを行うことができる。
【0085】
また、第1ポテンシャル分布191及び第2ポテンシャル分布192を用いることで、容量CSをより高精度で取得でき、第3ポテンシャル分布193を用いることで、容量Cit(Ek)をより高精度で取得できる。
【0086】
更に、第2電圧と第1電圧との差(dV)が第1電圧と第3電圧との差(dV)と等しい交流電圧を用いることで、容量CS及び容量Cit(Ek)を算出しやすい。
【0087】
ここで、実際に行われたシミュレーションの結果について説明する。
図17は、シミュレーションの対象の積層構造を示す断面図である。この積層構造では、
図17に示すように、SiC基板80の上に厚さが900nmのGaN層81Aが形成され、GaN層81Aの上に厚さが20nmのn型のAl
0.24Ga
0.76N層81Bが形成されている。Al
0.24Ga
0.76N層81Bの上に厚さが30nmのAl
2O
3膜82がゲート絶縁膜として形成され、Al
2O
3膜82の上にNi膜とAu膜との金属積層体83がゲート電極として形成されている。また、Al
0.24Ga
0.76N層81Bの上の2か所に、ソース電極及びドレイン電極として、Ti膜、Al膜、Ti膜及びAu膜の積層体84が形成されている。平面視での金属積層体83の直径は200μmである。GaN層81A及びAl
0.24Ga
0.76N層81Bが半導体10に対応し、Al
2O
3膜82が絶縁体20に対応し、金属積層体83が金属30に対応する。ここで、金属積層体83に印加される信号の周波数は、1kHz、10kHz、100kHz、1MHzである。
【0088】
図18は、
図17に示す積層構造についてのシミュレーション結果を示す図である。
図19は、
図17に示す積層構造についての実測結果を示す図である。
図20は、シミュレーション結果及び実測結果を重ねて示す図である。
図20には、
図18及び
図19の一部を拡大して重ねて示す。
図18~
図20の横軸は金属積層体83に印加される電圧であり、縦軸は積層構造の容量である。
図18及び
図19には、C-V特性に加えて、G
P/ω-V特性も示す。
図20では、シミュレーション結果を細線で示し、実測結果を太線で示している。
図18~
図20に示すように、本実施形態においては、実測結果と同等のシミュレーション結果が得られた。
【0089】
半導体10、絶縁体20及び金属30の材料は限定されない。微小交流電圧の振幅、直流バイアスの範囲及び直流バイアスの変化量は限定されない。例えば、微小交流電圧の振幅は10mV以上15mV以下程度とすることができる。
【0090】
第1実施形態により、半導体10、絶縁体20及び金属30を含むトランジスタのシミュレーションを行うことができる。このようなトランジスタとしては、例えば、MIS電界効果トランジスタ(field effect transistor:FET)、MOS(metal-oxide-semiconductor)FET、MIS-HEMT、MOS-HEMT等が挙げられる。
【0091】
なお、上記の実施形態では、半導体10の導電型がn型であるが、半導体10の導電型がp型であってもよい。半導体10の導電型がp型である場合、電圧の極性を反転させればよい。
【0092】
[第2実施形態]
第2実施形態も、半導体、絶縁体及び金属を備えた積層構造の特性をシミュレーションする方法に関する。
図21は、第2実施形態に係るシミュレーション方法の対象を示す断面図である。
図21に示すように、第2実施形態に係るシミュレーション方法の対象は、第1半導体10Aと、第1半導体10Aの上の第2半導体10Bと、第2半導体10Bの上の絶縁体20と、絶縁体20の上の金属30とを備えた積層構造201である。積層構造201は、MIS構造を備える。例えば、第1半導体10AはGaN10AAと、その上のn型のAlGaN10ABを含み、第2半導体10BはGaNであり、絶縁体20はSiN又はAl
2O
3である。第2半導体10Bの厚さは、例えば1nm以上5nm以下であり、好ましくは2nm以上4nm以下である。第2半導体10Bの第2バンドギャップは、AlGaN10ABの第1バンドギャップよりも小さい。
【0093】
図22は、第2実施形態に係るシミュレーション方法の対象における理想的なポテンシャル分布を示すバンド図である。
図22において、縦軸は電子のエネルギーの大きさを表し、横軸は
図21の断面図に対応し、絶縁体20と第2半導体10Bとの界面に垂直で、絶縁体20から第2半導体10B及び第1半導体10Aへ向かう方向への距離を表す。E
Vはバンド構造における電子に占有された最も高いエネルギーバンド(価電子帯)の頂上を示す。E
Cはバンド構造における最も低い空のエネルギーバンド(伝導帯)の底を示す。E
Fはフェルミ準位を示す。
図22の例では、AlGaN10ABはn型半導体であり、
図22に示していない金属30(
図22参照)にバイアス電圧V
Gが印加された状態を示している。
【0094】
積層構造201においては、
図22には示されていないが、第2半導体10Bと絶縁体20との界面に界面準位が存在する。界面準位においては、金属30に電圧が印加されると、当該界面準位のエネルギーの大きさに応じて電子が捕獲及び放出される。例えば、直流バイアスに微小交流電圧を重ねた微小交流バイアスを金属30に印加すると、第1半導体10A及び第2半導体10Bの電子密度が変化するとともに、界面準位における電子の捕獲及び放出が生じる。
【0095】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、複数の界面準位を、離散的に存在しているように表す。別の言い方をすると、複数の界面準位を、いくつかの離散的な界面準位Ekを代表として用いて表す。
【0096】
第2実施形態においては、積層構造201に対して、複数の離散的な界面準位を含み、第1半導体10Aと絶縁体20との間に第2半導体10Bの量子井戸が存在するモデルを使用する。
図23は、第2実施形態に係るシミュレーション方法で用いられる積層構造201のポテンシャル分布を示すバンド図である。
図24は、
図23に示すバンド構造の等価回路を示す図である。
図23のバンド図は、
図22のバンド図に比べ、離散的に複数の界面準位を持つ。
図23に示す例は、エネルギーの高い方から5つの離散的な界面準位E
0、E
1、E
2、E
3、E
4を持つ。また、第2半導体10Bの量子井戸には、基底準位E
Xが存在する。
【0097】
図24に示す等価回路は、
図6に示す等価回路と同様に、離散的な複数の界面準位E
kに対応した、並列接続された複数の界面準位容量C
it(E
k)及びコンダクタンスG
it(E
k)を持つ。
図24に示す等価回路から導出される積層構造201の全体としての容量C
totalを表す式は、上記の式(6)~式(9)のように表される。
【0098】
第2実施形態では、
図23及び
図24に示すモデルと、これに対応する式(6)~式(9)のモデル式とを用いて、金属30に第1電圧、例えば上記直流バイアスV
Gが印加されたときの半導体10の容量C
Sを取得し、複数の離散的な界面準位E
kごとに、金属30に第1電圧が印加されたときの当該複数の離散的な界面準位の容量C
it(E
k)を算出する。容量C
it(E
k)は、金属30に印加される電圧が変化したときに当該複数の離散的な界面準位の容量C
it(E
k)それぞれから量子井戸に放出される電子の量から算出する。
【0099】
その後、金属30に第1電圧が印加されたときの積層構造201の容量Ctotalを、容量CSと複数の離散的な界面準位Ekごとの容量Cit(Ek)とを用いて算出する。
【0100】
このように、このシミュレーション方法では、複数の離散的な界面準位Ekごとの容量Cit(Ek)を容量CSから独立して算出する。そして、このシミュレーション方法によれば、第1電圧における積層構造201の容量Ctotalを高精度で算出できる。
【0101】
また、第1電圧を段階的に変化させ、変化した第1電圧ごとに容量Cit(Ek)を算出することで、高精度でC-V特性を取得することができる。
【0102】
更に、金属30に印加される交流信号の周波数を複数設定し、これら周波数の各々についてC-V特性を取得することで、C-V特性の周波数依存性、すなわち周波数分散を解析できる。
【0103】
上記のシミュレーション方法は、例えば、第1実施形態と同様に、
図13及び
図14に示すシミュレーション装置100を用いて実施できる。また、第2実施形態においても、シミュレーション装置100は、
図15に示すフローチャートに基づいてシミュレーション方法を実施する。
【0104】
ここで、フローチャート(
図15)に基づくシミュレーション方法において、主に、第1実施形態と相違する点について説明する。
【0105】
第2実施形態では、例えば、入力データ取得部41がステップS101において取得するパラメータに、第1半導体10Aの材料、誘電率、厚さ及びドナー密度と、第2半導体10Bの材料、誘電率、厚さ及びドナー密度と、絶縁体20の材料、誘電率及び厚さとが含まれる。
【0106】
ステップS102において、モデル式取得部43は、第1半導体10A、第2半導体10B及び絶縁体20の材料等の情報を用いて、第2半導体10Bと絶縁体20との界面に複数の離散的な界面準位Ekを含み、第1半導体10Aと絶縁体20との間に第2半導体10Bの量子井戸が存在するモデルのモデル式(式(6)~式(9))を作成し、取得する。
【0107】
第1実施形態と同様に、ステップS104において、CS算出部44は、金属30の電圧VGが第1電圧よりもdVだけ高い第2電圧(V+dV)であり、離散的な界面準位Ekに電子が捕獲されたときの第1ポテンシャル分布を算出する。第1実施形態と同様に、ステップS105において、CS算出部44は、離散的な界面準位Ekに電子が捕獲されたままで金属30の電圧VGが第1電圧よりもdVだけ低い第3電圧(V-dV)であるときの第2ポテンシャル分布を算出する。
【0108】
図25は、金属30に第2電圧が印加された時の第1ポテンシャル分布291と金属30に第3電圧が印加された時の第2ポテンシャル分布292とを並べて示すバンド図である。
図25に示すように、第2実施形態では、第1ポテンシャル分布291と第2ポテンシャル分布292とを比較すると、第1半導体10A及び第2半導体10Bのエネルギーが、第1ポテンシャル分布291よりも第2ポテンシャル分布292において高くなる。
【0109】
ステップS106では、CS算出部44が、第1ポテンシャル分布291と第2ポテンシャル分布292との間での第1半導体10A及び第2半導体10Bにおける電子の量の差ΔQと、第2電圧と第3電圧との差ΔV(=2dV)と、絶縁体20の容量COXとを用いて第1半導体10A及び第2半導体10Bの容量CSを算出する。
【0110】
ステップS107では、C
it(E
k)算出部45が、金属30の電圧V
Gが第3電圧(V-dV)であり、時刻がt=1/(2πf)であるときの第3ポテンシャル分布293を算出する。第1半導体10A及び第2半導体10Bのエネルギーが、第2ポテンシャル分布292よりも第3ポテンシャル分布293において低くなる。本実施形態では、このようなポテンシャル分布の変化に伴って、離散的な界面準位E
kに電子が捕獲されるのではなく、量子井戸において電子の密度が増加するものとみなす。
図26は、第2ポテンシャル分布及び第3ポテンシャル分布を示す図である。
【0111】
ステップS108では、Cit(Ek)算出部45が、第2ポテンシャル分布292と第3ポテンシャル分布293とを比較し、Δtの時間で各離散的な界面準位Ekから放出される電子の量ΔQit(Ek)を算出し、各離散的な界面準位Ekについて容量Cit(Ek)を算出する。
【0112】
ステップS109では、Ctotal算出部46が、容量CSと、複数の離散的な界面準位Ekごとの容量Cit(Ek)とを用いて、積層構造201の容量Ctotalを算出する。
【0113】
他の処理は第1実施形態と同様である。
【0114】
ここで、実際に行われたシミュレーションの結果について説明する。
図27は、シミュレーションの対象の積層構造を示す断面図である。この積層構造では、
図27に示すように、SiC基板80の上に厚さが900nmのGaN層81Aが形成され、GaN層81Aの上に厚さが20nmのn型のAl
0.24Ga
0.76N層81Bが形成され、Al
0.24Ga
0.76N層81Bの上にGaNキャップ層81Cが形成されている。GaNキャップ層81Cの上に厚さが30nmのAl
2O
3膜82がゲート絶縁膜として形成され、Al
2O
3膜82の上にNi膜とAu膜との金属積層体83がゲート電極として形成されている。また、GaNキャップ層81Cの上の2か所に、ソース電極及びドレイン電極として、Ti膜、Al膜、Ti膜及びAu膜の積層体84が形成されている。平面視での金属積層体83の直径は200μmである。GaN層81A及びAl
0.24Ga
0.76N層81Bが第1半導体10Aに対応し、GaNキャップ層81Cが第2半導体10Bに対応し、Al
2O
3膜82が絶縁体20に対応し、金属積層体83が金属30に対応する。ここで、金属積層体83に印加される信号の周波数は、1kHz、10kHz、100kHz、1MHzである。
【0115】
図28は、
図27に示す積層構造についてのシミュレーション結果を示す図である。
図29は、
図27に示す積層構造についての実測結果を示す図である。
図30は、シミュレーション結果及び実測結果を重ねて示す図である。
図28~
図30の横軸は金属積層体83に印加される電圧であり、縦軸は積層構造の容量である。
図28~
図30には、C-V特性に加えて、G
P/ω-V特性も示す。
図30では、シミュレーション結果を細線で示し、実測結果を太線で示している。
図28~
図30に示すように、実測結果と同等のシミュレーション結果が得られた。
【0116】
第1半導体10A、第2半導体10B、絶縁体20及び金属30の材料は限定されない。微小交流電圧の振幅、直流バイアスの範囲及び直流バイアスの変化量は限定されない。例えば、微小交流電圧の振幅は10mV以上15mV以下程度とすることができる。
【0117】
第2実施形態により、第1半導体10A、第2半導体10B、絶縁体20及び金属30を含むトランジスタのシミュレーションを行うことができる。このようなトランジスタとしては、例えば、MIS-HEMT、MOS(metal-oxide-semiconductor)-HEMT等が挙げられる。
【0118】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0119】
10:半導体
10A:第1半導体
10AA:GaN
10AB:AlGaN
10B:第2半導体
12:主記憶装置
13:補助記憶装置
14:入力装置
15:表示装置
17:通信インターフェース(I/F)
18:ドライブ装置
19:記憶媒体
20:絶縁体
30:金属
40:空乏層
41:入力データ取得部
42:シミュレーション実行部
43:モデル式取得部
44:CS算出部
45:Cit(Ek)算出部
46:Ctotal算出部
50:界面準位
51、52:電子
80:SiC基板
81A:GaN層
81B:Al0.24Ga0.76N層
81C:GaNキャップ層
82:Al2O3膜
83:金属積層体
84:積層体
100:シミュレーション装置
101、201:積層構造
130:記憶部
191、291:第1ポテンシャル分布
192、292:第2ポテンシャル分布
193、293:第3ポテンシャル分布
B:バス