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  • 特許-印刷不良検出システム、及び記憶媒体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】印刷不良検出システム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240422BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B41J2/165 501
B41J2/01 451
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020205809
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2021094853
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2020-12-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】16/712985
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】ニキータ グルダス
(72)【発明者】
【氏名】スコット アール ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ズリン ジャン
【合議体】
【審判長】藤本 義仁
【審判官】門 良成
【審判官】嵯峨根 多美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-83359(JP,A)
【文献】特開2013-169760(JP,A)
【文献】特開2018-153922(JP,A)
【文献】特開2013-252691(JP,A)
【文献】特開2014-199244(JP,A)
【文献】特開2010-34678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01- 2/215
B41J 29/393
B41J 29/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データで印刷された媒体の画像を受信するように構成されたインターフェースと、
プリンタの1つ以上のプリントヘッドに属するノズルの不良参照データを格納するように構成されたメモリと、
前記画像と前記印刷データとの比較に基づいて、不良パターンを前記画像内で検出し、前記不良パターンと前記不良参照データとの比較に基づいて、前記ノズル不良のタイプであってノズル不良の要因に関連付けられたタイプを判別するように構成された印刷不良コントローラと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記印刷不良コントローラは、前記ノズル不良の前記タイプが、ノズル曲がり不良、吐出不足ノズル不良、及び剥離ノズル不良のうちの1つであるかどうかを判別するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記印刷不良コントローラは、前記ノズル不良の位置及び1つ以上の印刷システム設定に基づいて、前記ノズル不良の前記タイプを判別するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
インクを吐出するように構成された複数のノズルを各々が有するプリントヘッドを含む印刷エンジンを備えるプリンタを更に備える請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
プリンタの1つ以上のプリントヘッドに属するノズルの不良参照データをメモリに格納するステップと、
印刷データで印刷された媒体の画像を受信するステップと、
前記画像と前記印刷データとの比較に基づいて、不良パターンを前記画像内で検出するステップと、
前記不良パターンと前記不良参照データとの比較に基づいて、前記ノズル不良のタイプであってノズル不良の要因に関連付けられたタイプを判別するステップと、
を含む方法。
【請求項6】
前記判別するステップは、前記ノズル不良の前記タイプが、ノズル曲がり不良、吐出不足ノズル不良、及び剥離ノズル不良のうちの1つであるかどうかを判別するステップを更に含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記判別するステップは、前記ノズル不良の位置及び1つ以上の印刷システム設定に基づいて、前記ノズル不良の前記タイプを判別するステップを更に含む請求項5に記載の方法。
【請求項8】
プロセッサにより実行される方法を実行するように動作することが可能なプログラムされた命令を含む有形のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、前記方法は、
プリンタの1つ以上のプリントヘッドに属するノズルの不良参照データをメモリに格納するステップと、
印刷データで印刷された媒体の画像を受信するステップと、
前記画像と前記印刷データとの比較に基づいて、不良パターンを前記画像内で検出するステップと、
前記不良パターンと前記不良参照データとの比較に基づいて、前記ノズル不良のタイプであってノズル不良の要因に関連付けられたタイプを判別するステップと、
を含む、記憶媒体。
【請求項9】
前記判別するステップは、
前記ノズル不良の前記タイプが、ノズル曲がり不良、吐出不足ノズル不良、及び剥離ノズル不良のうちの1つであるかどうかを判別するステップを更に含む、請求項8に記載の記憶媒体。
【請求項10】
前記判別するステップは、
前記ノズル不良の位置及び1つ以上の印刷システム設定に基づいて、前記ノズル不良の前記タイプを判別するステップ
を更に含む、請求項8に記載の記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷の分野、特に印刷不良を検出することに関連する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット・プロダクション・プリンタは、ボリューム印刷(例えば、毎分100ページ以上)に使用される高速プリンタであり、大きなロールに保持される印刷媒体のウェブ上に印刷する連続用紙プリンタを含む可能性がある。連続形態のインクジェット・プリンタが動作している間、ウェブは、プリンタのプリントヘッドのノズルの下に速やかに通され、ノズルは、ピクセルを形成するように間隔をおいてウェブ上にインクを放出する。
【0003】
プリントヘッドにより分配されるインクの大部分はウェブに移るが、幾らかのインクがプリントヘッドのノズルに残ってしまう。時間が経過し、凝固したインク、汚染物質、又はノズル構造の不具合は、ノズルを詰まらせたり又は部分的に詰まらせたりする形態となる可能性があり、その結果、印刷品質を低下させるインク・ジェット不良を生じさせてしまう。印刷不良の特定のタイプ及び位置の決定は、印刷不良を補償して印刷品質を改善するためのフォローアップの決定(例えば、クリーニング処理)を報告する。
【0004】
印刷不良の識別は、典型的には、熟練した印刷オペレータによって、1日の始め又は印刷サイクルの開始時に手動で実行される。しかしながら、たとえオペレータが種々のタイプの印刷不良を区別するための多くの経験及び訓練を経ていたとしても、人的な印刷不良分析は時間がかかり、不正確になりやすい。
【発明の概要】
【0005】
本願における実施形態は強化された印刷不良検出を述べている。プリンタの不良検出システムは、様々なタイプの印刷不良を高精度かつ高速に自動的に区別する。以前に特定された不良タイプの参照データを使用して、不良検出システムは、プリンタの個々のノズルに対する不良の位置及びタイプを決定することができる。プリントヘッドに存在するノズル不良のタイプは、迅速かつ正確に決定され、プリンタに対して実行されるメンテナンス手順の効率を改善するように、メンテナンスの決定を知らせるために使用されることが可能である。
【0006】
一実施形態は、印刷データで印刷される媒体の画像を受信するように構成されたインターフェースと、プリンタのプリントヘッドに属するノズルの不良参照データを格納するように構成されたメモリとを含むシステムである。システムは、画像と印刷データとの比較に基づいて画像内のノズル不良を検出し、ノズル不良と不良参照データとの比較に基づいてノズル不良のタイプを判別するように構成された印刷不良コントローラも含む。
【0007】
別の実施形態は、プリンタのプリントヘッドに属するノズルの不良参照データをメモリに格納するステップを含む方法である。方法は、印刷データで印刷される媒体の画像を受信するステップと、画像と印刷データとの比較に基づいて画像内のノズル不良を検出するステップとを含む。方法は、ノズル不良と不良参照データとの比較に基づいてノズル不良のタイプを判別するステップを更に含む。
【0008】
その他の例示的な実施形態(例えば、前述の実施形態に関連する方法及びコンピュータ読み取り可能な媒体)は以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の幾つかの実施形態は単なる例示として添付図面を参照しながら本願で説明される。同一の参照番号は全図において同一の要素又は同一のタイプの要素を表す。
【0010】
図1】例示的な実施形態における印刷システムの図である。
【0011】
図2A】テスト・チャートにおける吐出不足不良を示す。
【0012】
図2B】テスト・チャートにおける吐出曲がり不良を示す。
【0013】
図2C】テスト・チャートにおけるヘッド剥離不良を示す。
【0014】
図2D】テスト・チャートにおける未知不良を示す。
【0015】
図3】例示的な実施形態におけるプリンタのブロック図である。
【0016】
図4】例示的な実施形態において印刷不良のタイプを決定する方法を示すフローチャートである。
【0017】
図5】別の例示的な実施形態において印刷不良のタイプを決定する方法を示すフローチャートである。
【0018】
図6】例示的な実施形態において機械学習機能を実装する不良検出システムのブロック図である。
【0019】
図7】例示的な実施形態において所望の機能を実行するためにプログラムされた命令を具現化するコンピュータ読み取り可能な媒体を実施するように動作することが可能な処理システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面及び以下の説明は具体的な例示的な実施形態を示す。従って、当業者は、本願で明示的には記載も図示もされていないが、実施形態の原理を具現化し、実施形態の範囲内に含まれる種々のアレンジを行うことが可能な点は理解されるであろう。更に、本願で説明される何れの例も、実施形態の原理を理解することに役立つように意図されており、そのように具体的に記載された例及び条件に限定されるものではないと解釈されるべきである。その結果、本発明の概念は、以下に説明される特定の実施形態又は実施例には限定されず、特許請求の範囲及びそれらの均等物によって限定される。
【0021】
図1は、例示的な実施形態における印刷システム100の図である。印刷システム100は、プリンタ120と不良検出システム150とを含む。通常の印刷動作では、プリンタ120は、印刷ジョブを受け取り、印刷コントローラ126により印刷ジョブのためのラスタライズされた印刷データを生成し、印刷ジョブのためのラスタライズされた印刷データを1つ以上の印刷エンジン127-128に送信する。印刷エンジン127-128は、ラスタライズされた印刷データに従って、印刷媒体(例えば、紙、布地、印刷可能な基板)のウェブ130にインク(例えば、マーキング材料、着色剤など)でマーキングし、印刷出力を生成する。
【0022】
時折、印刷エンジン127-128が正常に動作していることを確認するために、印刷コントローラ126は、手動で又は不良検出システム150によって印刷不良に関して分析されることが可能なテスト・チャート印刷データに基づくテスト・チャート140をウェブ130上に印刷することを、印刷エンジン127-128に指示する。不良検出システム150は、インターフェース152、不良コントローラ154、及び1つ以上の撮像デバイス156を含む。撮像デバイス156は、カメラ、スキャナ、濃度計、分光光度計、又は印刷内容の画像を取得するための適切な他の構成要素を含んでもよい。テスト・チャート140は、印刷ジョブとは別に、又は印刷ジョブとともにウェブ130上に(例えば、印刷ジョブで印刷されるウェブ130のセクションとは別のウェブ130のセクション上に)印刷されることが可能である。
【0023】
撮像デバイス156によりテスト・チャート140の画像を取得した後に、不良コントローラ154は、吐出不良について画像を分析する。例えば、不良コントローラ154は、テスト・チャート140内の不良の位置に基づいて、どのプリントヘッド又はノズルが不良を印刷したかを決定するように構成されることが可能である。不良検出システム150及びプリンタ120は、インターフェース122/152(例えば、イーサーネット・インターフェース、無線インターフェースなど)を介して通信してもよい。例えば、印刷コントローラ126は、テスト・チャート140の画像との比較のために、テスト・チャート140に対応する印刷データのラスタライズされたバージョンを不良検出システム150に送信し、印刷エラーを示す何らかの不一致が存在するかどうかを判断することが可能であり、不良検出システム150は、メンテナンス手順を知らせるために、印刷不良データをプリンタ120又は他のシステムに報告(例えば、送信)することが可能である。
【0024】
以下で詳細に説明されるように、不良コントローラ154は、カテゴリ又はタイプによって印刷不良を分類するように強化される。図2A-Dは様々なタイプの印刷不良を示す。図2Aは、テスト・チャート140における吐出不足不良201を示す。吐出不足不良201は、ノズルの完全な閉塞によって引き起こされうる(例えば、インクが吐出されないこと)。図2Bは、テスト・チャート140における吐出曲がり不良202を示す。吐出曲がり不良202は、ノズルの部分的な閉塞により引き起こされうる(例えば、ウェブ130における意図しない位置にインクが少なくとも部分的に吐出されること)。図2Cは、テスト・チャート140における剥離プリントヘッド不良203を示す。ヘッド剥離不良203は、プリントヘッド・アレイ上のフィルムが損耗により剥がれることにより引き起こされうる(例えば、複数の隣り合うノズルが部分的に閉塞される、又は完全に閉塞されること)。図2Dは、テスト・チャート140における未知不良204を示す。未知不良204は、他の印刷不良カテゴリに分類されることが可能なもの以外の不良のカテゴリを含むことが可能である。当業者は、更なるノズル不良タイプ又はサブ・タイプが定義される可能性があることを理解するであろう。
【0025】
図3は、例示的な実施形態におけるプリンタ300のブロック図である。プリンタ300は、特定の印刷不良のタイプ又はカテゴリを決定するように強化された不良検出システム150を含む。即ち、不良検出システム150は、吐出不足不良201、吐出曲がり不良202、ヘッド剥離不良203、又は未知不良204のうちの1つとして、印刷不良を分類するように構成される。印刷不良をタイプで分類することにより、不良検出システム150は、プリンタ300の動作のヘルス・データを提供し、印刷品質を効率的に改善するために取るべき是正措置を促すことができる。当業者は、不良検出システム150が、他の不良タイプに使用されてもよいことを理解するであろう。
【0026】
プリンタ300は、一般に、複数のカラー・プレーン330(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラック)及び印刷エンジン332を含む。各々の印刷エンジン332は、1つ又は複数のカラー・プレーン330に対する印刷データを処理し、印刷データに基づいて1つ又は複数のプリントヘッド334を制御することができる。各プリントヘッド334は、印刷用のインク滴338を吐出するノズル336のアレイを含む。各プリントヘッド334のノズル336は、1つのカラー・プレーンに割り当てられてもよいし、又は複数のカラー・プレーン330の間で分割されてもよい。プリントヘッド334は、ウェブ方向に及び/又はウェブ方向に垂直に、物理的に構成されてもよい。上述したように、通常の印刷動作の過程において、1つ以上のノズル336がインクで詰まってしまい、その結果、印刷不良を生じる可能性がある。更に、各プリントヘッド334は、何百ものノズル336を含む可能性がある。ノズル336によって吐出されるインク滴338の量、インク滴338の個々の小さなサイズ、及び異なる不良タイプの類似性における人間の眼に対する類似性に起因して、印刷されたテスト・チャートを不良タイプについて分析することは、熟練した印刷オペレータにとってさえ困難であり且つ時間がかかる。
【0027】
不良検出システム150は、画像と印刷データ356との比較に基づいて画像内のノズル不良を検出し、ノズル不良と不良参照データとの比較に基づいてノズル不良のタイプを決定するように構成された不良コントローラ154によって強化される。そうする際に、不良コントローラ154は、現在のノズル不良情報351、不良参照データ352、及び印刷システム設定353の任意の組み合わせを含む、データ記憶装置350に記憶されたデータを考慮に入れることができる。現在のノズル不良情報351の具体例は、ノズル不良タイプ、対応するノズル336の位置、対応するプリントヘッド334の識別子、対応する印刷エンジン332、対応するプリンタ300及び/又はカラー・プレーン330の任意の組み合わせを含む。印刷システム設定353の具体例は、印刷解像度、選択されたテスト・パターン・タイプ、媒体の種類、及び/又は印刷エンジン・パラメータ(例えば、印刷エンジン・モデル、印刷幅、印刷エンジンにおける用紙ハンドリング方向、プリントヘッド・タイプ、インク・タイプなど)を含む。
【0028】
データ記憶装置350はまた、撮像デバイス156によってキャプチャーされたテスト・チャート140の画像データ355、及び/又はテスト・チャート140に対応する印刷データ356を記憶することができる。更に、データ記憶装置350は、印刷位置、ノズル336、プリントヘッド334、印刷エンジン332、カラー・プレーン330、及び/又はインクのタイプ(例えば、インク・セット又は特定のインク色)を関連付ける情報を含み得るプリンタ設定情報354を記憶することができる。不良コントローラ154は、ユーザー入力を受けるため、及び/又はプリンタ300のユーザーへの通知を表示するために、インターフェース346及び/又はグラフィカル・ユーザー・インターフェース348に通信可能に接続されてもよい。
【0029】
不良コントローラ154の特定のハードウェア実装は設計選択に左右されるが、1つの特定の実施形態は、メモリ344に接続された1つ以上のプロセッサ342を含んでもよい。プロセッサ342は、機能を実行することが可能な任意の電子回路及び/又は光回路を含む。例えば、プロセッサは、1つ以上の中央処理ユニット(CPU)、グラフィックス処理ユニット(GPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、制御回路などを含むことができる。プロセッサの幾つかの例は、インテル・コア・プロセッサ、アドバンスト縮小命令セット・コンピューティング(RISC)マシン(ARM)プロセッサ等を含む。メモリ344は、データを格納することが可能な任意のハードウェア・デバイスを含む。メモリ344は、1つ以上の揮発性又は不揮発性のダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)デバイス、フラッシュ・デバイス、揮発性又は不揮発性のスタティックRAMデバイス、ハード・ドライブ、ソリッド・ステート・ディスク(SSD)等を含むことができる。不揮発性DRAM及びSRAMの幾つかの例は、バッテリ・バックアップDRAM及びバッテリ・バックアップSRAMを含む。データ記憶装置350は、同様に、メモリ・デバイス又は構成要素の任意の組み合わせによって実現することができる。
【0030】
図3に関して説明される構成要素の特定の配置、数、及び設定は、説明の目的のための例であり、限定するものではない。例えば、不良検出システム150は、プリンタ300に組み込まれるように示されているが、不良検出システム150の一部又は全体、及びそれによって実行される機能は、プリンタ300の近辺にある別個のシステム(例えば、デジタル・フロント・エンド(DFE))に実装されてもよいし、又はプリンタ300と通信するスタンドアロン・システム(例えば、クラウド実装)として遠隔的に実装されてもよい。不良検出システム150の動作の例示的な詳細は、図4-5に関連して議論される。
【0031】
図4は、例示的な実施形態において印刷不良のタイプを決定する方法400を例示するフローチャートである。方法400のステップは、図3のプリンタ300及び不良検出システム150に関連して説明されるが、当業者は、方法400が他のシステムで実行されてもよいことを理解するであろう。本願で説明されるフローチャートのステップは、全てを包含するものではなく、図示されていない他のステップを含む可能性がある。また、本願で説明されるステップは、選択的に実行されてもよいし、或いは別の順序で実行されてもよい。
【0032】
ステップ402において、不良コントローラ154は、印刷データ(例えば、印刷データ356)及び印刷データで印刷された媒体の画像(例えば、画像データ355)を、(例えば、インターフェース346を介して)受信する及び/又は(データ記憶装置350又はメモリに)記憶することができる。印刷データ356は、テスト・チャート140の印刷を指示するソース印刷データに対応し、ビットマップ、印刷記述言語又は印刷ジョブなどの処理に適した任意のフォーマットであってもよい。幾つかの実施形態では、テスト・チャートのための印刷データ356が不良参照データ352内に組み込まれ、利用可能である。ステップ404において、不良コントローラ154は、プリンタ300のプリントヘッド334に属するノズル336の不良参照データ352を(データ記憶装置350又はメモリに)記憶する。不良参照データ352は、不良コントローラ154が、入力画像を解釈し、不良タイプを判別するために使用するルール及び/又は特徴(例えば、不良画像パターン)を含んでもよい。幾つかの実施形態において、不良参照データ352は、テスト・チャート140に基づいてテンプレートを使用して画像データ355の位置における閾値を超える光濃度変化を判定するためのルール(例えば、欠落した、又は意図されていないインクの配置)を含む。不良参照データ352は、事前に定義された印刷不良タイプの特性を示す画像から導出されてもよい。例えば、不良参照データ352は、手動で又は不良コントローラ154によって既に分類されている事例の印刷不良画像に基づいてもよい。不良参照データ352は、印刷不良の各々のカテゴリ(例えば、吐出不足不良カテゴリ、曲がり不良カテゴリ、ヘッド剥離不良カテゴリ、及び未知カテゴリ)に対して利用可能であってもよい。
【0033】
ステップ406において、不良コントローラ154は、画像と印刷データ356との比較に基づいて、画像内のノズル不良を検出する。それを行う際、不良コントローラ154は、印刷データ356との不一致についてテスト・チャート140の画像データ355を分析し、現在のノズル不良情報351をデータ記憶装置350に記憶することができる。更に、不良コントローラ154は、記憶装置350に記憶されているプリンタ設定情報354及び/又は印刷データ356に基づいて、テスト・チャート140又は画像データ355内の不良位置を、不良を印刷した個々のノズル336、プリントヘッド334、印刷エンジン332及び/又はプリンタ300と関連付けることができる。
【0034】
ステップ408において、不良コントローラ154は、ノズル不良画像特性と不良参照データ352との比較に基づいて、ノズル不良のタイプを判別する。例えば、不良コントローラ154は、同じカテゴリにおける不良の中で共通する特性又は不良参照データ352内の一致する又は類似するパターンを識別し、ノズル不良の特徴と不良参照データ352で規定されるパターン又は共通性におけるものとの一致性に基づいて、ノズル不良が属するカテゴリを決定することができる。前述したように、不良コントローラ154は、ノズル不良が、吐出不足(ノズルの完全な閉塞により引き起こされる)か、吐出曲がり(ノズルの部分的な閉塞により引き起こされる)か、ヘッド剥離(プリントヘッド・アレイ上のフィルムが損耗により剥がれることで引き起こされる)か、さらに未知の理由(他の要因)のうちの一つかどうかを判断しうる。幾つかの実施形態では、不良コントローラ154は、ルックアップ・テーブル、プログラムされたロジック、及び/又は訓練された機械学習プロセッサにより、ノズル不良のタイプを判別する。本方法400は、熟練した人間のオペレータに依存することなく、印刷不良を、インクジェット・ノズル不良の特定の分類に指定することによって、従来技術を上回る利点を提供する。
【0035】
図5は、別の例示的な実施形態における印刷不良のタイプを決定する方法500を示すフローチャートである。方法500のステップは、図3のプリンタ300及び不良検出システム150に関連して説明されるが、当業者は、方法500が他のシステムで実行されてもよいことを理解されるであろう。本願で説明されるフローチャートのステップは、全てを包含するものではなく、図示されていない他のステップを含む可能性がある。また、本願で説明されるステップは、選択的に実行されてもよいし、或いは別の順序で実行されてもよい。
【0036】
ステップ502において、撮像デバイス156は、印刷されたテスト・チャートをスキャン又はキャプチャーして、グレースケール画像(例えば、画像データ355)を作成する。画像データ355がデータ記憶装置350に記憶されている場合、ステップ502はオプションとしてスキップされてもよい。ステップ504において、不良コントローラ154は、グレースケール画像を印刷データ356に整合させる。アライメントは、印刷エンジン332(例えば、中央、左、又は右寄せ)及び/又は斜めのエッジ位置合わせを考慮するための比較入力の調整を含んでもよい。例えば、印刷されたテスト・マスターが媒体の全幅で印刷されていない場合、不良コントローラ154は、第1印刷エンジンがチャートを印刷した場合には画像を左に位置合わせし、第2印刷エンジンがテスト・チャートを印刷した場合には画像を右に位置合わせすることができる。更に、不良コントローラ154は、印刷された媒体における伸縮に対して画像データ355を調整することが可能であり、各プリントヘッドについて変動する位置補正を適用して、特定のプリントヘッド各々について、より良好にグレースケール画像を印刷データ356に位置合わせすることが可能である。
【0037】
ステップ506において、不良コントローラ154は、グレースケール画像における1つ以上の印刷不良の不良情報を決定する。そして、ステップ508において、不良コントローラ154は、不良情報を機械学習機能への入力として用いて、機械学習機能によりノズル不良のタイプを決定する。図6は、例示的な実施形態における機械学習機能を実装する不良検出システム150のブロック図である。不良検出システム150は、訓練されたディープ・ニューラル・ネットワーク(DNN)プロセッサ610を含み、個々のノズル・レベルで複数のタイプの吐出不良を自動的に検出して突き止める。
【0038】
DNNプロセッサ610は、モデル614及び不良情報616を考慮したトレーニング入力612を介して訓練入力を受信する。訓練DNNプロセッサ610は、グレースケール画像622内の画素を分析し、パターン認識に基づいて不良タイプ624を個々の画素に指定する推論620をもたらすように構成される。幾つかの実施形態では、訓練DNNプロセッサ610は、畳み込みニューラル・ネットワーク(CNN)と呼ばれるクラスのニューラル・ネットワークとして実現される。幾つかの実施形態では、DNNプロセッサ610は、方法500のテスト・チャート140を含むトレーニング入力612で訓練される。
【0039】
図5に戻り、ステップ508は、更なるステップ510-512を含んでもよい。ステップ510において、訓練DNNプロセッサ610は、グレースケール画像622と印刷データ356との比較に基づいて、また訓練DNNプロセッサ610に入力された不良情報616に基づいて、印刷不良のタイプを検出する。不良情報616は、不良参照データ352、不良位置、及び/又は印刷システム設定353を含んでもよい。例えば、訓練DNNプロセッサ610は、不良を印刷した印刷エンジン332と、印刷エンジン332に対する不良の位置とに少なくとも部分的に基づいて、印刷不良のタイプを決定してもよい。幾つかの実施形態では、モデル614は、プリンタ300の構成/仕様を変更することに適応してより高い検出精度を得るために、印刷エンジン332、プリントヘッド334、媒体の種類などに特化して訓練されてもよい。
【0040】
ステップ512において、訓練DNNプロセッサ610は、印刷不良のカテゴリのうちの1つ又は各々について、グレースケール画像622において検出されたノズル不良と不良参照データ352との間の一致度を決定する。一致度は、ノズル不良が不良参照データ352において特定の予め定められたノズル不良の1つに属する予測又は信頼性レベルを示すゼロから100の間のパーセンテージを含んでもよい。ステップ514において、不良コントローラ154は、指定されたタイプの不良がノズル不良に対して妥当であることの信頼性レベル及びノズル不良位置を報告する。
【0041】
ステップ516において、不良コントローラ154は、ノズル不良について一致度が不確かであるかどうか(例えば、一致度が不良の各カテゴリに対する閾値を超えているかどうか)を判定する。そうである場合、方法500はステップ518に進み、不良コントローラ154は、ノズル不良のマニュアル・レビューを実行することを指示する表示用のメッセージを生成する。次に、ステップ520において、不良コントローラ154は、ノズル不良についての受け取ったマニュアル・レビュー・データ(例えば、GUI348及び/又はI/F346を介して受け取ったレビューされたノズル不良データ)に基づいて、不良参照データ352を更新し、方法500はステップ508に戻る。従って、訓練DNNプロセッサ610は、手作業でラベル付けされたデータセットにより訓練された異なる不良カテゴリに対する画素マスクを生成することができる。これは、訓練DNNプロセッサ610が、オリジナルのトレーニング・セットにおけるノイズ及び実世界の入力変動に適応し、不良タイプ予測精度を継続的に改善することを可能にする。更に、トレーニング・データセットを成長させるために、低い信頼スコアを有する困難なケースが自動的に収集されてもよく、未知不良の他のサブカテゴリが発見され、将来的に組み込まれることが可能である。
【0042】
そうでない場合、一致度が信頼できれば、方法500はステップ522に進み、不良コントローラ154は、グレースケール画像622に追加の不良が存在するかどうかを判定する。存在する場合、方法500はステップ508に戻って反復する。そうでない場合、方法500は終了する。従って、本方法500は、高精度で様々なタイプの印刷不良を迅速かつ自動的に区別することにより、従来技術を上回る利点を提供する。方法500の特定のステップが、不良コントローラ154又は訓練DNNプロセッサ610に関連して説明されているが、方法500のステップは、オプションとして代替的なシステム又はタイプのプロセッサで実行されてもよいことが理解されるであろう。
【0043】
本願で開示される実施形態は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、又はそれらの様々な組み合わせの形態をとることが可能である。ある特定の実施形態では、本願で開示される種々の動作を実行することを不良検出システム150の処理システムに指示するために、ソフトウェアが使用される。図7は、例示的な実施形態において所望の機能を実行するようにプログラムされた命令を具現化するコンピュータ読み取り可能な媒体を実施するように動作することが可能な処理システム700を示す。処理システム700は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体712において実体的に具体化されたプログラムされた命令を実行することによって、上記の動作を実行するように動作することが可能である。この点に関し、本発明の実施形態は、コンピュータ又は他の任意の命令実行システムによって使用するためのプログラム・コードを提供する、コンピュータ読み取り可能な媒体712を介してアクセスすることが可能なコンピュータ・プログラムの形態をとることが可能である。この説明の目的のために、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体712は、コンピュータによる使用のためにプログラムを格納又は記憶することが可能な任意のものであるとすることが可能である。
【0044】
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体712は、電子デバイス、磁気デバイス、光学デバイス、電磁デバイス、赤外線デバイス、又は半導体デバイスであるとすることが可能である。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体712の例は、ソリッド・ステート・メモリ、磁気テープ、リムーバブル・コンピュータ・ディスケット、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリー・メモリ(ROM)、リジッド磁気ディスク、及び光ディスクを含む。光ディスクの現在の例は、コンパクト・ディスク・リード・オンリー・メモリ(CD-ROM)、コンパクト・ディスク・リード/ライト(CD-R/W)及びDVDを含む。
【0045】
処理システム700は、プログラム・コードを記憶及び/又は実行するのに適しており、システム・バス750を介してプログラム及びデータ・メモリ704に接続された少なくとも1つのプロセッサ702を含む。プログラム及びデータ・メモリ704は、プログラム・コードの実際の実行中に使用されるローカル・メモリ、バルク・ストレージ、及びキャッシュ・メモリを含むことが可能であり、キャッシュ・メモリは、コード及び/又はデータが実行中にバルク・ストレージから検索される回数を減らすために、少なくとも一部のプログラム・コード及び/又はデータの一時的なストレージを提供する。
【0046】
入力/出力又はI/Oデバイス706(キーボード、ディスプレイ、ポインティング・デバイスなどを含むが、これらに限定されない)は、直接的に又は介在するI/Oコントローラを介して接続されることが可能である。また、ネットワーク・アダプタ・インターフェース708は、処理システム700が、介在する私的な又は公的なネットワークを介して他のデータ処理システム又は記憶装置に接続されることを可能にするために、システムに統合されてもよい。モデム、ケーブル・モデム、IBMチャネル・アタッチメント、SCSI、ファイバ・チャネル、及びイーサーネット・カードは、現在利用可能なタイプのネットワーク又はホスト・インターフェース・アダプタのほんの数例である。ディスプレイ・デバイス・インターフェース710は、プロセッサ702により生成されるデータの提示のための印刷システム及びスクリーンなどの1つ以上のディスプレイ・デバイスとのインターフェースのために、システムに統合されてもよい。
【0047】
特定の実施形態が本願で説明されたが、本発明の範囲はこれらの特定の実施形態に限定されない。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲及びその任意の均等物によって定められる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7