(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】薄層で用いられたときに向上した膨張挙動を有する新規発泡材
(51)【国際特許分類】
C08J 9/06 20060101AFI20240422BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
C08J9/06 CES
C09K3/10 J
(21)【出願番号】P 2021518154
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019078510
(87)【国際公開番号】W WO2020083811
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-05-13
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥル マルフィナティ
(72)【発明者】
【氏名】ジオゴ エミリオ シルベーロ
【審査官】馳平 憲一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-219257(JP,A)
【文献】特表2018-529823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0378567(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00- 44/60
C09K 3/10- 3/12
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む
、キャビティ又は中空若しくは開放構造をシール又はバッフルするための熱膨張性組成物であって:
(a)ラジカル開始剤によって架橋可能な少なくとも一種のポリマーP、及び
(b)少なくとも一種の固体ブチルゴムBRuであって、前記組成物の総重量に基づいて、5重量%~16重量%の量で前記組成物に含まれる固体ブチルゴム、及び
(c)少なくとも一種のラジカル開始剤、及び
(d)少なくとも一種の膨張剤、及び
(e)少なくとも一種の粘着付与剤TA、
ここで、
前記少なくとも一種の固体ブチルゴムBRuは、ハロゲン化ブチルゴムであり、
硬化後の膨張した前記組成物は、未硬化の前記組成物と比べて、1300%未満の体積増加を有し、
前記体積増加は、密度測定のDIN EN ISO 1183法(アルキメデスの原理)を用いて決定される、
熱膨張性組成物。
【請求項2】
前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて、12重量%~30重量%の量で前記粘着付与剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱膨張性組成物。
【請求項3】
前記粘着付与剤は、炭化水素樹脂であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱膨張性組成物。
【請求項4】
前記組成物はさらに、芳香族油、ナフテン油、又はポリ(イソ)ブチレンからなる群から選択される少なくとも一種のプロセスオイルPOを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物。
【請求項5】
前記組成物は、前記組成物の前記総重量に基づいて、18重量%~35重量%の量で前記プロセスオイルPOを含むことを特徴とする、請求項4に記載の熱膨張性組成物。
【請求項6】
前記膨張剤はアゾジカルボンアミドであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物。
【請求項7】
前記組成物は、2.5重量%~6重量%の量で前記膨張剤を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物。
【請求項8】
前記ラジカル開始剤は、過酸化物又は過酸エステルであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物。
【請求項9】
前記組成物はさらに、少なくとも一種のアクリレートAを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物。
【請求項10】
前記少なくとも一種の固体ブチルゴムBRuは、塩素化ブチルゴム又は臭素化ブチルゴムであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物。
【請求項11】
開放又は中空構造用のバッフル部材であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物を含むことを特徴とするバッフル部材。
【請求項12】
前記熱膨張性組成物は、0.5~10mmの厚さを有するシート状構造を有することを特徴とする、請求項11に記載のバッフル部材。
【請求項13】
前記熱膨張性組成物は、5~30cmの長さ、及び5~30cmの幅、又は1~20cmの幅を有するシート状構造を有することを特徴とする、請求項11又は12に記載のバッフル部材。
【請求項14】
陸上乗物、船舶、若しくは航空機のキャビティ若しくは中空若しくは開放構造、及び/又は建築物のキャビティをシール又はバッフルし、それによって、騒音、振動、湿度、及び/又は熱の伝導を低減するための、請求項11~13のいずれか一項に記載のバッフル部材の使用。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物を含む部材をキャビティ又は中空構造中に導入し、その後、熱膨張させ、これにより、膨張した前記組成物によって前記キャビティ又は中空構造を少なくとも部分的に充填することを特徴とする、キャビティ又は中空構造をシール又はバッフルする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性組成物、及び、このような熱膨張性組成物を含む中空構造用のバッフル部材、このようなバッフル部材の製造プロセス、中空構造をシール又はバッフルするためのその使用、並びに、中空構造をシール又はバッフルするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生産された製品は、多くの場合、オリフィス及びキャビティ、又は、製造プロセスに起因する、及び/若しくは、軽量化などの種々の目的のために製品において設計されている他の中空部を含む。自動車の車両は例えば、数々のこのようなオリフィス及びキャビティを、車両の構造ピラー内及び車両ドアの金属シート内を含む車両全体に含んでいる。このようなオリフィス及びキャビティを、オリフィス又はキャビティ内に構築されたシール部材によって、車両内において一領域から他の領域への騒音、振動、煙霧、ホコリ、水、湿度等の通過が最低限となるようシールすることが度々望ましい。
【0003】
シール又はバッフルに用いられるこのような部材は多くの場合、プラスチック製、金属製又は他の剛性材料製のキャリアと、これに設けられた1つ以上の層の熱可塑性材料であって、加熱された場合、又は、他の物理的若しくは化学的形態のエネルギーが適用された場合に、体積が増大可能である材料とからなる。
【0004】
適切な設計を用いることにより、製造プロセスの最中にバッフル又は補強部材を構造の中空部に挿入しながらも、構造の内壁を例えば液体がアクセス可能であるままとしておく(又は、キャビティを液体が通過可能なままとしておく)ことも可能である。例えば、車両の製造プロセスの最中において、バッフル部材が既に挿入されていても金属フレームの中空部の大部分をエレクトロコーティング液で被覆することがまだ可能であり、その後、熱処理ステップの最中に、バッフル部材の膨張性熱可塑性材料が膨張して、キャビティが意図されるとおりに充填される。
【0005】
しかしながら、キャリアを含むこのような部材を、車体における到達/アクセスが容易ではない領域に配置することは困難である可能性がある。このような事例においては、自己接着性シート状熱可塑性材料が好ましくは用いられる。熱可塑性材料上の追加の接着性層によって基材への接着を保護可能であるが、しかしながら、特に平らではない基材上においては、熱可塑性材料からの接着層の層剥離が度々生じてしまう。
【0006】
このようなバッフル部材の開発は、膨張性材料が1800%以下又は1800%を超えて体積が増大されて、キャビティを充填し、及び、シール又はバッフルされることが意図されている構造の壁に接着する発泡材状構造を形成することが可能である高度に進歩したシステムをもたらした。しかしながら、小さなキャビティにおいては、このような高膨張性の材料は、発泡プロセスの最中に、充填されるべきキャビティからあふれる発泡材の望ましくない溢流/越流がもたらされる可能性がある。さらに、膨張率の高い組成物におけるセル構造及び膨張挙動は時々、劣ったセル構造、波打った発泡材の表面、及び、不規則/無向性の発泡材の膨張のような不十分な品質のものである。
【0007】
現在採用されている熱膨張性組成物は多くの場合、エチレン-酢酸ビニルポリマーなどの過酸化物によって架橋可能なポリマーと、これと組み合わされる、硬化時に架橋ネットワークに組み込まれる比較的小さく、高官能性のアクリレートとからなる。これらの組成物はさらに膨張剤を含有する。高温などの活性化条件下で、架橋性ネットワークの硬化が行われ、これと同時に、膨張剤が分解されて、ガスを放出する。このようなシステムは、例えば、独国特許出願公開第10 2011 080 223 A1号明細書に開示されている。
【0008】
それ故、特に小さなキャビティ内であって、特に互いに4~150mm、20~100mm、好ましくは40~80mm離間した対向する側壁同士の境界によって形成されるキャビティ内において用いられた場合に、これらの制限を受けず、且つ:
- 好ましくは良好な発泡材セル構造/熱安定性発泡材構造
- 低い座屈性、及び
- 好ましくは均一な膨張パターン/有向性膨張
について良好な膨張挙動を示す熱膨張性組成物を得ることが望ましい。
【0009】
組成物は、特に平らではない、湾曲した、又は、尖った表面といった特に油が付着した金属基材といった金属基材に対する、未硬化の組成物の良好な接着をもたらすべきである。接着は、熱可塑性材料の膨張の前後両方において保証されるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、特に小さなキャビティにおいて用いられた場合に:
- 好ましくは良好な発泡材セル構造/熱安定性発泡材構造
- 低い座屈性、及び
- 好ましくは均一な膨張パターン/有向性膨張、
について良好な膨張挙動を示す熱膨張性組成物を提供することを目的とする。この組成物はまた、特に平らではない、湾曲した、又は、尖った表面といった特に油が付着した金属基材といった金属基材に対する、未硬化の組成物の良好な接着を提供するべきである。接着はまた、熱可塑性材料の膨張の前後両方において保証されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
意外なことに、本発明は、
(a)ラジカル開始剤によって架橋可能な少なくとも一種のポリマーP、及び
(b)少なくとも一種の固体ブチルゴムBRuであって、組成物の総重量に基づいて、5重量%~16重量%、好ましくは5重量%~15重量%、6重量%~12重量%、8重量%~10重量%の量で組成物に含まれる前記固体ブチルゴム、及び
(c)少なくとも一種のラジカル開始剤、及び
(d)少なくとも一種の膨張剤であって、組成物に、好ましくは6重量%未満、好ましくは1重量%~5.5重量%、2重量%~5重量%の量で含まれる前記膨張剤、及び
(e)少なくとも一種の粘着付与剤TA
を含む熱膨張性組成物を提供することによりこの問題を解決する。
【0012】
硬化後の膨張した組成物は、未硬化の組成物と比べて、1300%未満、好ましくは500~1300%、より好ましくは600~1200%、800~1200%、もっとも好ましくは900~1100%の体積増加を有し、体積増加は密度測定のDIN EN ISO 1183法(アルキメデスの原理)を用いて決定される。
【0013】
本発明による組成物は、例えば自動車用途といったシール又はバッフル部材における使用に特に好適である。本発明のさらなる態様は、他の独立請求項の主題である。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
単位「重量%」という用語は、他に記載のない限りは対応する総組成の重量に基づく、重量による割合を意味する。「重量」及び「質量」という用語は、本明細書全体を通して同義的に用いられている。
【0015】
分子との関連において、「官能価」という用語は、本書面において、1分子当たりの化学官能基の数を表す。「多官能」という用語は、所与の種類の官能基を1個以上有する分子を表す。例えば、3の官能価を有する多官能アクリレートは、3個のアクリレート基を有する分子を表す。「平均官能価」という用語は、工業銘柄の化学薬品において時に当てはまるとおり、個々に官能価がわずかに異なるが、平均で所与の官能価を示す分子の混合物が存在する場合に用いられる。
【0016】
本明細書において用いられる「ラジカル」という用語は、化学分野における当業者には公知であるとおり、不対原子価電子を有する化学種を表す。本発明のポリマー系の硬化又は硬質化に関与する架橋反応はラジカルメカニズムに従う。
【0017】
メルトフローインデックス(MFI)は、190℃及び2.16kgの重量で細管レオメーターを使用してASTM D1238標準法により判定される。MFI値は、規定の重量による圧力下、及び、規定の温度で、所与の時間でキャピラリからあふれ出るポリマーの量を表す。
【0018】
硬化後の膨張した組成物は、未硬化の組成物と比して、1300%未満、好ましくは500~1300%、より好ましくは600~1200%、800~1200%、もっとも好ましくは900~1100%の体積増加を有し、ここで、体積増加は、密度計測のDIN EN ISO 1183法(アルキメデスの原理)を用いて判定される。
【0019】
好ましくは、未硬化で膨張していない組成物に比した膨張して硬化した組成物の体積増加は、脱イオン水において密度計測のDIN EN ISO 1183法(アルキメデスの原理)を、精密てんびんによって測定されたサンプル質量と併用することにより判定される。
【0020】
より好ましくは、体積増加(膨張)に係る値は実験の項に記載されているとおり判定され、組成物は、180℃で20分間、好ましくは実験の項において記載されているとおり硬化される。
【0021】
このような体積増加は、発泡材構造の品質並びに規則的で有向性の膨張挙動における向上という利点を有する。
【0022】
意外なことに、1500%を超えて膨張する組成物は、発泡材構造品質の低下、波打った発泡材表面、及び、不規則/無向性の発泡材の膨張を示すことが見出された。これは、例えば実施例R3において見ることが可能である。
【0023】
好ましくは、未硬化の組成物は室温で粘着性であり、より具体的には、5kgの圧力を1秒間印加して親指で未硬化の組成物の表面を押した後に、50gの固有重量を有する未硬化の組成物を少なくとも5秒間持ち上げることが可能である。
【0024】
親指で押圧することで発泡材に圧力を5kgの圧力、室温で1秒間印加した場合に、硬化して膨張した組成物が、元の体積の80%超、好ましくは90%超、95%超、もっとも好ましくは98%超の復元性を有していることがさらに有利である。
【0025】
膨張性組成物が、30 1/10mm未満、好ましくは5~25 1/10mm、7.5~20 1/10mm、10~15 1/10mmのJIS K 6830に準拠したコンシステンシーを有しているとさらに好ましい。このようなコンシステンシーは、特にバッフル部材としてのその形状を維持するために、材料の取り扱い及び輸送に際して有利である。
【0026】
本発明は、第1の必須コンポーネントとして、ラジカル開始剤によって架橋性である少なくとも1種のポリマーPを含む。主に、ラジカル開始剤を伴って架橋反応可能であるすべての熱可塑性ポリマー又は熱可塑性エラストマーが好適である。当業者は、ポリマーが、例えば過酸化物といったラジカル開始剤の影響下で主鎖又は側鎖から水素原子を放出し、これにより、ラジカルは、その後のステップにおいて他のポリマー鎖へのラジカル攻撃を可能なままとし、ラジカル連鎖反応架橋プロセス、及び、最終的にポリマーネットワークをもたらす官能基(例えばC-C単結合又はC-C二重結合)を含有する場合には、これらのポリマーを「ラジカル開始剤によって架橋性である」と表す。
【0027】
好適なポリマーPとしては、例えば、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-イソプレンコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-メタクリレートコポリマー、エチレン-エチルアクリレートコポリマー、エチレンブチルアクリレートコポリマー、エチレン-(メタ)アクリル酸コポリマー、エチレン-2-エチルヘキシルアクリレートコポリマー、エチレン-アクリル酸エステルコポリマー、ポリオレフィン系ブロックコポリマー、及び、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィンが挙げられ得る。
【0028】
2種以上の種類のモノマーから形成されるポリマーを意味するコポリマーは、ブロックタイプコポリマー又はランダムコポリマーであることが可能である。
【0029】
ポリマーPはまた、さらに官能基化されることが可能であり、これは、これらが、ヒドロキシル、カルボキシ、無水物、アクリレート、及び/又は、グリシジルメタクリレート基などのさらなる官能基を含有することが可能であることを意味する。
【0030】
1~200g/10分間、好ましくは10~100g/10分間、より好ましくは25~75g/10分間、もっとも好ましくは35~55g/10分間の平均メルトフローインデックス(MFI)を有する1種以上のポリマーPが本発明について好ましい。
【0031】
好ましくは、ポリマーPは、エチレン-酢酸ビニル(EVA)を含むか、又は、実質的にエチレン-酢酸ビニル(EVA)からなる。この場合、EVA中の酢酸ビニルモノマーの含有量は、EVAポリマーの総重量に基づいて、8~45重量%、好ましくは15~30重量%であるべきである。
【0032】
2種以上の種類のポリマーが用いられる場合には、個々のMFIが組み合わされて用いられるポリマー混合物の平均MFIとされ、これは、ASTM D1238に準拠して測定されなければならない。
【0033】
好ましい実施形態においては、2種以上の種類のポリマーがポリマーPとして用いられる。互いに異なっており、一方が他方よりもかなり高いメルトフローインデックス(MFI)を有する少なくとも2種類のポリマー(本明細書において、P1及びP2と命名)を用いることが、本発明の組成物の特性のために有益であることが見出された。例えば、特に好ましい実施形態では、100~200g/10分間のMFIを有する第1のポリマーP1と、0.1~60g/10分間、好ましくは0.1~10g/10分間のMFIを有する第2のポリマーP2とが用いられ、ここで、好ましくは、組成物中の2種のポリマーP1:P2の重量比は0.2~0.9、好ましくは0.4~0.7である。
【0034】
好ましいEVAポリマーとしては、例えば、Elvax(登録商標)150、Elvax(登録商標)240A、Elvax(登録商標)260A、Elvax(登録商標)420A(すべて、DuPont製)、又は、対応するEvatane(登録商標)コポリマー(Arkema製)が挙げられる。
【0035】
さらに好ましい実施形態において、本発明の組成物としてはまた、Lotader(登録商標)ADX 1200S、Lotader(登録商標)AX8840、Lotader(登録商標)3210、Lotader(登録商標)3410(Arkema製)又はLotryl(登録商標)コポリマー(Arkema製)などのエチレン-グリシジルメタクリレートコポリマーである、ポリマーP3が挙げられる。
【0036】
このポリマーP3は、本発明に係る組成物において、組成物の総重量に基づいて、2~10重量%、好ましくは4~10重量%、より好ましくは5~7重量%の量で用いられることが好ましい。
【0037】
本発明の組成物の第2の必須コンポーネントは、少なくとも1種の固体ブチルゴムBRuである。
【0038】
組成物は、前記固体ブチルゴムを、組成物の総重量に基づいて、5重量%~16重量%、好ましくは5重量%~15重量%、6重量%~12重量%、8重量%~10重量%の量で含む。
【0039】
「ブチルゴム」という用語は、多量のイソオレフィンモノマーと少量のマルチオレフィンモノマーとを反応させることにより調製されるポリマーを意味することが意図される。
【0040】
好ましくは、ブチルゴムは、C4~C8モノオレフィンモノマー及びC4~C14マルチオレフィンモノマーのコポリマーを含む。
【0041】
好ましいC4~C8モノオレフィンは、イソモノオレフィンを含む。有用なモノオレフィンモノマーの非限定的な例は、イソブチレン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、及び、これらの混合物を含む群から選択され得る。
【0042】
好ましいC4~C14マルチオレフィンは、C4~C10共役ジオレフィンを含む。有用な共役ジオレフィンの非限定的な例は、イソプレン、ブタジエン、2,4-ジメチルブタジエン、ピペリリン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2-ネオペンチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、2-メチル-1,6-ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1-ビニル-シクロヘキサジエン、及び、これらの混合物を含む群から選択され得る。
【0043】
ブチルゴムは、約70~約99.5重量部のC4~C8モノオレフィンモノマー、及び、約30~約0.5重量部のC4~C14マルチオレフィンモノマーを含む混合物に由来し得る。より好ましくは、ブチルゴムは、約80~約99.5重量部のC4~C8モノオレフィンモノマー、及び、約20~約0.5重量部のC4~C14マルチオレフィンモノマーを含む混合物に由来する。
【0044】
もっとも好ましいブチルゴムは、約97~約99.5重量部のイソブチレン及び約3~約0.5重量部のイソプレンを含む混合物に由来する。
【0045】
ブチルターポリマーを生成するために任意選択の第3のモノマーを含んでいることが可能である。例えば、モノマー混合物中において、好ましくは、モノマー混合物の約15重量パーセント以下の量でスチレンモノマーを含んでいることが可能である。好ましいスチレンモノマーは、p-メチルスチレン、スチレン、α-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-メトキシスチレン、インデン、インデン誘導体、及び、これらの混合物を含む群から選択され得る。もっとも好ましいスチレンモノマーは、スチレン、p-メチルスチレン、及び、これらの混合物を含む群から選択され得る。他の好適な共重合性ターモノマーは当業者に明らかであろう。
【0046】
少なくとも1種の固体ブチルゴムBRuがハロゲン化ブチルゴムであることが特に好ましく、好ましくは塩素化ブチルゴム又は臭素化ブチルゴム、特に好ましくは臭素化ブチルゴムである。
【0047】
好ましくは、ハロゲン化ブチルゴムは、ゴムの約0.1~約8重量%の量でハロゲンを含む。より好ましくは、ハロゲン化ブチルゴムは、ゴムの約0.5~約4重量%の量でハロゲンを含む。もっとも好ましくは、ハロゲン化ブチルゴムは、ゴムの約1.5~約3.0重量%の量でハロゲンを含む。
【0048】
ハロゲン化エラストマーの粘度は、好ましくは、ASTM試験法D 1646(ML(1+8)125°)を用いたムーニー粘度による計測で65MU未満である。粘度は45MU未満、又は、さらには35MU未満であり得る。
【0049】
好ましくは、固体ブチルゴムBRuは、組成物の総重量に基づいて、5重量%~15重量%、6重量%~12重量%、好ましくは8重量%~10重量%の量で本発明の組成物中に含まれる。
【0050】
既述の固体ブチルゴムBRuは、特に油が付着した金属基材といった金属基材に対する、未硬化の組成物の良好な接着をもたらす。さらに、これらは、均一/均等な水平及び垂直方向の膨張をもたらすと共に、発泡した組成物の座屈、並びに、硬化/発泡した組成物の粘着性破壊パターンの低減をもたらす。
【0051】
これは、実施例E1とR1、R6及びR7との比較において見ることが可能である。
【0052】
5重量%未満の量の固体ブチルゴムを有する組成物は、特に油が付着した金属基材といった金属基材に対する不十分な接着、低品質の発泡材セル構造、並びに、波打った表面を有する。
【0053】
これは実施例R4において見ることが可能である。
【0054】
16重量%超の量の固体ブチルゴムを有する組成物は、特に油が付着した金属基材といった金属基材に対する接着剤破壊パターン、波打った表面、及び、不均一/不均等な垂直方向の膨張を示す。これは、実施例R5において見ることが可能である。
【0055】
本発明に係る熱膨張性組成物の第3の必須コンポーネントは、好ましくは、組成物の総重量に基づいて、0.5~5重量%、好ましくは1~4重量%、より好ましくは1.5~3重量%、さらにより好ましくは2~2.5重量%の量である少なくとも1種のラジカル開始剤である。
【0056】
好ましくは、ラジカル開始剤は、過酸化物又は過酸エステル、より好ましくは過酸化物である。本発明の組成物には、室温で(23℃)不活性であると共に、意図される目的に好適な活性化温度を示す過酸化物を用いることが有利である。例えば、この組成物が自動車の製造におけるバッフル部材に用いられる場合、130~250℃の活性化温度が好ましい。さらに、膨張剤の分解温度に適合する活性化温度を有する過酸化物を選択することが望ましい。これらの2つの温度が大きく異なる場合には、最適な性能及び安定性を有する熱膨張性組成物を得ることがより困難となり得る。これとは別に、室温で固体である他のコンポーネントは、例えば軟化点又は融点の観点からも、これらのコンポーネントと適合性でなければならない。
【0057】
本発明の組成物に好ましい過酸化物は、ケトン過酸化物、ジアシル過酸化物、過酸エステル(perester)、ペルケタール(perketal)及びヒドロ過酸化物などの有機過酸化物である。このような好ましい過酸化物の例としては、クメンヒドロ過酸化物、t-ブチル過酸化物、ビス(t-ブチルペルオキシ)-ジイソプロピルベンゼン、ジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、t-ブチルペルオキシ安息香酸塩、ジ-アルキルペルオキシジカーボネート、ジペルオキシケタール(1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンなど)、ケトン過酸化物(メチルエチルケトン過酸化物など)及び4,4-ジ-t-ブチルペルオキシ-n-ブチルバレレートが挙げられる。
【0058】
3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、ジ-t-ブチル過酸化物、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミル過酸化物、ジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、ブチル-4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)バレレート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルペルオキシ安息香酸塩、ジ(4-メチルベンゾイル)過酸化物及び過酸化ジベンゾイルが特に好ましい。
【0059】
本発明の組成物についてもっとも好ましい過酸化物としては、例えば商品名Perkadox(登録商標)BC-40B-PD(Akzo Nobel製)又はPeroxan(登録商標)DC-40PK(Pergan製)で入手可能であるジクミルペルオキシド、及び/又は、例えば商品名Perkadox(登録商標)14-40B-PD(Akzo Nobel製)又はPeroxan(登録商標)BIB-40 P(Pergan)で入手可能であるジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが挙げられ、ここで、ジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが特に好ましい。
【0060】
本発明については、シリカ、カオリン及び/若しくは炭酸カルシウム、又は、他の好適な材料などの担持材料上に固定化された過酸化物を用いることが有利であり得る。このアプローチは、取り扱い、投与量、及び、組成物中における過酸化物の均等な分布を促進し得る。このような固定化された過酸化物の例としては、Perkadox(登録商標)BC-40B-PD(Akzo Nobel製)(炭酸カルシウム上の40重量%ジクミルペルオキシド)又はPerkadox(登録商標)14-40K-PD(Akzo Nobel製)(クレイ及びシリカ上の40重量%ジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン)が挙げられる。
【0061】
本発明の組成物の第4の必須コンポーネントは、少なくとも一種の膨張剤(発泡剤)である。
【0062】
好適な膨張剤は、化学又は物理膨張剤であり得る。化学膨張剤は、例えば温度又は湿度の影響下で分解され、形成された分解生成物の少なくとも一方が気体である、有機又は無機化合物である。物理膨張剤としては、これらに限定されないが、一定の温度で気体になる化合物が挙げられる。好ましくは、膨張剤は化学膨張剤である。
【0063】
好ましい化学膨張剤としては、これらに限定されないが、アゾ化合物、ヒドラジド、ニトロソ化合物、カルバメート及びカルバジドが挙げられる。
【0064】
好適な化学膨張剤は、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾイソブチトロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、ジニトロソペンタメチレンテトラアミン、アゾジアミノベンゼン、ベンゼン-1,3-スルホニルヒドラジド、カルシウムアジド、4,4’-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トリヒドラジノトリアジン及びN,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド、並びに、これらの組み合わせ等である。
【0065】
また、反応に際して気体を生成する酸/塩基系などの二重化学系が好適である。好ましい一例は、好適な媒体中において組み合わされると二酸化炭素を生成する系である、炭酸水素ナトリウム及びクエン酸である。
【0066】
好適な物理膨張剤としては、熱膨張性液体又は気体で満たされた熱可塑性シェルからなる膨張性微小球が挙げられる。このような好適な微小球の一例は、Expancel(登録商標)微小球(AkzoNobel製)である。
【0067】
好ましい実施形態において、膨張剤は、アゾジカルボンアミド、Expancel(登録商標)微小球、及び、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、もっとも好ましくはアゾジカルボンアミドの一覧から選択される1種又はその複数を含むか、又は、これらから構成される。
【0068】
好ましくは、好ましくはアゾジカルボンアミドである膨張剤は、本発明の組成物中に、組成物の総重量に基づいて、2.5重量%~6重量%、好ましくは3重量%~5.5重量%、3.5重量%~5重量%、4重量%~5重量%、もっとも好ましくは4.5重量%~5重量%の量で含まれる。
【0069】
特に膨張剤がアゾジカルボンアミドである場合には、このような量は、発泡材構造の向上した品質並びに均一/均等な膨張挙動という利点をもたらす。
【0070】
1300%を超えて膨張する組成物は、発泡材構造の品質の低減、並びに、不均一/不均等な水平及び垂直方向の膨張挙動を示す。これは、例えば、実施例E1及び実施例E6と実施例R3との比較において見ることが可能である。
【0071】
発泡(膨張)を生じさせる分解反応に必要とされる熱は、外部又は内部から加えることが可能であり、後者の場合、熱は例えば発熱反応から加えることが可能である。好ましくは、膨張剤は、160℃未満、特に80℃~150℃、より好ましくは90℃~140℃の温度で活性化(すなわち、ガス放出しながら分解)される。
【0072】
本発明の熱膨張性組成物が、例えば自動車の製造においてバッフル部材に用いられる場合、膨張剤の活性化温度は、バッフルが適用される自動車部品の製造条件について調節されることが好ましい。一例として、バッフル部材は、電着液による処理が必要とされる構造のキャビティに、未膨張の状態で構造の表面をアクセス可能なままに挿入可能であり、その後、自動車部品の熱処理(すなわち、電着液の硬化手法)の最中に、バッフル部材は同時に(又は、その直後に)意図される最終形状へ膨張して、キャビティを少なくとも部分的に閉じるか、又は、充填する。このような事例において、膨張温度は、前記熱処理の温度条件に相当すべきであり、すなわち90℃~200℃であるべきである。
【0073】
従って、本発明の組成物において用いられるラジカル開始剤、好ましくは、過酸化物は、その活性化温度が、膨張剤の分解温度と同一の範囲内であるか、又は、それよりもわずかに低くなるよう選択されることが望ましい。これにより、ポリマー架橋に至るラジカルメカニズムが、安定な発泡材状構造が形成可能である時点で確実に生起される。
【0074】
本発明の組成物の第5の必須コンポーネントは、少なくとも1種の粘着付与剤TAである。
【0075】
好ましくは、本書面において「粘着付与剤」という用語は、Roempp Chemie Lexikon,online version,Georg Thieme Verlag(2018年10月8日に検索)において粘着付与剤として記載されている化合物として定義される。
【0076】
このような粘着付与剤TAは、組成物の発泡の前後両方において、特に油が付着した金属基材といった金属基材に対して良好な接着をもたらす。さらに、これらは、均一/均等な膨張挙動の提供、発泡した組成物の座屈の低減、並びに、硬化/発泡した組成物の粘着性破壊パターンの低減において有利である。これは、実施例R2において見ることが可能である。
【0077】
好ましくは、粘着付与剤TAは、炭化水素樹脂、好ましくは芳香族変性炭化水素樹脂、もっとも好ましくは芳香族変性C5炭化水素樹脂である。
【0078】
既述の粘着付与剤TAは、特に油が付着した金属基材といった金属基材に対する、発泡していない組成物の良好な接着をもたらす。さらに、これらは、均一/均等な水平膨張挙動の提供において有利である。これは、実施例E2において見ることが可能である。
【0079】
炭化水素樹脂の例は、例えばNovares(登録商標)TL 90(Ruetgers,Germanyから入手可能)、Wingtack(登録商標)樹脂(Cray Valley製)、Escorez(登録商標)粘着性樹脂(例えば、Escorez(登録商標)1304、ExxonMobil製)、及び、Piccotac(登録商標)炭化水素樹脂(例えば、Piccotac(登録商標)1100又はPiccotac(登録商標)1100E、Eastman製)である。
【0080】
好ましくは、この組成物は、組成物の総重量に基づいて、12重量%~30重量%、14重量%~25重量%、16重量%~22重量%、好ましくは17.5重量%~20重量%の量で前記粘着付与剤TAを含む。
【0081】
このような量は、特に粘着付与剤TAが炭化水素樹脂である場合に、発泡した組成物の座屈の低減をもたらすという利点を提供する。これは、実施例E3において見ることが可能である。
【0082】
熱膨張性組成物が、芳香族油、ナフテン油又はポリ(イソ)ブチレン、好ましくはポリ(イソ)ブチレン、もっとも好ましくはポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種のプロセスオイルPOを含有することがさらに好ましい。
【0083】
既述のプロセスオイルPOはさらに、発泡材構造の向上した品質、並びに、均一/均等な水平及び垂直方向の膨張挙動という利点をもたらす。これは、実施例E1、E4及びE7と実施例E5との比較において見ることが可能である。
【0084】
好ましくは、この組成物は、組成物の総重量に基づいて、18重量%~35重量%、好ましくは20重量%~32重量%、もっとも好ましくは25重量%~30重量%の量で前記プロセスオイルPOを含む。
【0085】
意外なことに、このような量のプロセスオイルPOは、組成物が発泡する前における特に油が付着した金属基材といった金属基材に対する良好な接着をもたらすことが見出された。これは、実施例E1と実施例E4との比較において見ることが可能である。上記の高い接着性はまた、E4と10重量%のPO1のみを含有する組成物(E4中における24重量%のPO1と比較のこと)との比較において見ることが可能である。E4は、10重量%のPO1のみを含有する組成物と比してより良好な接着を示した(データは示さず)。
【0086】
熱膨張性組成物が少なくとも1種のアクリレートAを含有する場合、好ましくは、組成物の総重量に基づいて、0.1~1重量%、好ましくは0.2~0.8重量%、より好ましくは0.3~0.5重量%の量であることがさらに好ましい。
【0087】
アクリレートAは、好ましくは、2,500g/mol未満、より好ましくは1,000g/mol未満の分子量を有し、及び、好ましくは少なくとも2、少なくとも3、より好ましくは3~5のアクリレート官能価を示す。
【0088】
ポリマーP(上記のとおり)はアクリレート官能基を含んでいることが可能であるが、これらの2種のコンポーネントは同一の化学化合物ではないことが本発明の組成物では有益である。比較すると、アクリレートAは一般に、分子量の点でポリマーPよりも小さい。
【0089】
2の官能価を有する好ましいアクリレートAとしては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,10-ドデカンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジエオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート及びポリブチレングリコールジメタクリレートが挙げられる。
【0090】
3以上の官能価を有する好ましいアクリレートAとしては、グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジ-(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリ(2-メタクリルオキシエチル)トリメリテート、トリ(2-アクリルオキシエチル)イソシアヌレート、並びに、これらのエトキシル化又はプロポキシル化誘導体が挙げられる。
【0091】
さらに好ましいアクリレートとしては、6~16又はこれ以上の官能価を有する高官能性の多分岐アクリレートが挙げられる。このような好ましいアクリレートの例としては、例えばSartomer(登録商標)CN2303及びSartomer(登録商標)CN2305(共にArkema製)といった多分岐ポリエステル-ポリアクリレートが挙げられる。
【0092】
好ましくは、この組成物は、組成物の総重量に基づいて、2重量%未満のフェノール樹脂を含有する。
【0093】
より好ましくは、この組成物は、組成物の総重量に基づいて、1重量%未満、0.5重量%未満、0.1重量%未満、0.01重量%未満、もっとも好ましくは0重量%のフェノール樹脂を含有する。
【0094】
このようなフェノール樹脂は、フェノール-ホルムアルデヒドレゾール系樹脂であり得る。これらのフェノール樹脂は、フェノール及び置換フェノールとホルムアルデヒドとの反応から形成される。フェノール-ホルムアルデヒド樹脂は、メチル側基及び/又は末端基を有する化学構造がもたらされる、アルカリ触媒及び過剰量のホルムアルデヒドを用いる重合により入手され得る。当業者は、これらの種類のフェノール-ホルムアルデヒド樹脂をレゾールと称する。
【0095】
レゾール系フェノール樹脂の一例は、SI Group,Inc.,Schenectady,USAによって商品名SP-1045で市販されている。
【0096】
好ましくは、この組成物は、組成物の総重量に基づいて、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる群から選択されるコンポーネントを5重量%未満含有する。
【0097】
より好ましくは、この組成物は、組成物の総重量に基づいて、LDPE及びLLDPEからなる群から選択されるコンポーネントを、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.1重量%未満、0.01重量%未満、もっとも好ましくは0重量%含有する。
【0098】
低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる群から選択されるコンポーネント。
【0099】
好ましい分子量範囲は、LDPEについては、150,000~400,000g/mol、及び、LLDPEについては、100,000~200,000g/molである。すべてのこれらの分子量値は、140℃、1,2,4-トリクロロベンゼン中において、1mL/分の流量で、ポリスチレン標準を基準として行われるMW計測値を指す。
【0100】
例示的な市販されているLDPEとしては、621i、772、993i、及び1017(Dow Chemical製)及びLD100 BW(ExxonMobil製)が挙げられる。例示的な市販されているLLDPEとしては、LL1102(ExxonMobil製)が挙げられる。
【0101】
本発明については、活性化剤、加速剤又は触媒を、膨張剤と併用することが有利である。この目的に好適な化合物の例としては、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛ビス(p-トルエンスルフィネート)若しくは亜鉛ビス(ベンゼンスルフィネート)などの亜鉛化合物、又は、酸化マグネシウム、及び/又は、(変性)尿素化合物が挙げられる。亜鉛化合物、特に酸化亜鉛がもっとも好ましい。
【0102】
本発明の熱膨張性組成物は、好ましくは、このような活性化剤を、組成物の総重量に基づいて、0.5~4重量%、好ましくは1~3重量%の量で前記膨張剤として含む。
【0103】
必須成分の他に、本発明の熱膨張性組成物は、このような組成物において通例用いられ、及び、この分野における当業者に公知である他のコンポーネントを含有していてもよい。これらとしては、例えば、充填材、着色剤、分散助剤又は均質化剤、定着剤、酸化防止剤、安定剤等が挙げられる。
【0104】
例えば、粉砕若しくは沈降炭酸カルシウム、炭酸カルシウム-マグネシウム、タルカム、石膏、グラファイト、バライト、シリカ、ケイ酸、雲母、珪灰石、カーボンブラック、又は、これらの混合物等が充填材として好適である。
【0105】
充填材は、存在する場合、組成物の総重量に基づいて1~15重量%の量で本発明の組成物に組み込まれていることが好ましい。
【0106】
例えばカーボンブラック系のものといった顔料などの着色剤又は染料が、本発明の組成物に含まれていてもよい。これらの量は、好ましくは、組成物の総重量に基づいて0~1重量%である。
【0107】
さらに潜在的に有用な添加剤としては、ポリマー系組成物において通例用いられ、及び、ポリマー系組成物配合物の当業者に公知である酸化防止剤及び安定剤が挙げられる。好適な酸化防止剤及び安定剤の例としては、ビス(3,3-ビス(4’-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)ブタン酸)グリコールエステルなどの、立体障害チオエーテル、立体障害芳香族アミン、及び/又は、立体障害フェノールが挙げられる。このような物質は、好ましくは、組成物の総重量に基づいて、0~0.5重量%、好ましくは0.1~0.3重量%の量で含まれる。
【0108】
本発明に係る組成物は、例えば分散ミキサ、遊星ミキサ、二重スクリューミキサ、連続ミキサ、押出し機又は二重スクリュー押出し機といった任意の好適な混合装置中においてコンポーネントを混合することにより製造可能である。
【0109】
粘度を低減させることにより、及び/又は、個々のコンポーネントを溶融することにより均質な混合物へのコンポーネントの処理を容易とするために、混合の前又はその最中に、外部熱源を適用することにより、又は、混合プロセス自体によって生じる摩擦によって、コンポーネントを加熱することが有利であり得る。しかしながら、膨張剤及び/又は過酸化物の活性化温度を超えないように、例えば温度の監視、及び、適切な場合には冷却デバイスの使用によって注意をしなければならない。最終組成物は好ましくは、室温で(23℃)実質的に固体であり、これは、少なくとも24時間の間は、この温度においては重力のみによっては視認可能な変形が生じないことを意味する。
【0110】
混合の後、得られた組成物は、例えば、押出し、ブロー成形、ペレット形成、射出成形、圧縮成形、打ち抜き若しくはスタンピング、又は、いずれかの他の好適なプロセスによって、その所望される形態に成型され得る。
【0111】
熱膨張性組成物は、すべてのコンポーネントの連続的及び/又は同時の添加が含まれる実質的に一段階のプロセスで生成され得る。しかしながら、2液系として、又は、多液系として組成物を配合し、及び、最後の段階でこれらの液を最終組成物に混合することもまた有利であり得る。このようなアプローチは、例えば、厳しい条件の場所(非常に高温であるなど)における組成物の保管寿命を延ばし得、保管倉庫における要求及び輸送重量を最適化し得、並びに、異なる用途に関する特注のモジュール式組成物を実現し得る。
【0112】
本発明に係る熱膨張性組成物の膨張は加熱により生起される。これは、それぞれの活性化温度を超える熱プロセスであって、さらに、膨張性材料が、意図された最終的な(十分に膨張し、及び、安定である)状態に膨張し、及び、硬化するまで、両方のプロセス(ラジカル開始剤によって開始されるラジカル重合及びガスの形成を伴う膨張剤の分解)が進行するのに十分な長さの時間にわたる熱プロセスによって、膨張剤及びラジカル開始剤コンポーネントの両方が活性化されることを意味する。
【0113】
本発明の他の態様は、バッフル部材を製造するためのこのような熱膨張性組成物の使用である。このような部材は、例えば自動車の開放若しくは中空構造部におけるキャビティといった開放若しくは中空構造をシール及び/又はバッフルするために用いられる。自動車における中空部としては、車体部品(例えばパネル)、フレーム部品(例えば液圧成形されたチューブ)、ピラー構造(例えば、A、B、C、又はD-ピラー)、バンパー等が挙げられ得る。自動車における開放部としては、屋根又はドアが挙げられ得る。
【0114】
従って、これらのバッフル部材が、例えば自動車産業、又は、白物家電品の生産における、輸送形態の構築において用いられることが可能である。
【0115】
本発明の他の態様は開放及び中空構造用のバッフル部材であり、ここで、前記部材は既述の熱膨張性組成物を含む。
【0116】
好ましくは、バッフル部材は、追加の接着性層を含まない。これは、膨張性組成物からこのような接着性層の層剥離が生じる可能性がないため、特に、バッフル部材が平らではない基材上において用いられる場合に有利である。可能な接着剤は例えばゴム系接着剤である。
【0117】
好ましくは、本発明の熱膨張性組成物がその上に付着又は取り付けられた追加のキャリア部材をバッフル部材は含まない。
【0118】
前記キャリア部材は、熱膨張性組成物が付着又は取り付けられるために使用可能である形状に加工されることが可能であるいずれかの材料から構成され得る。
【0119】
可能な材料は、プラスチック、エラストマー、熱可塑性、熱硬化性ポリマー、ブレンド、又は、他のこれらの組み合わせなどの高分子材料である。他の好適な材料としては、金属、特にアルミニウム又は鋼鉄が挙げられる。また、ガラス状又はセラミック材料を用いることが可能である。このような材料のいずれかの組み合わせを用いることが可能である。
【0120】
このような材料は充填され(例えば、繊維、ミネラル、クレイ、ケイ酸、炭酸塩、これらの組み合わせ等で)、又は、発泡されることが可能であることも予期される。
【0121】
このようなキャリア部材は、いずれかの形状又は幾何学的形状をさらに示すことが可能である。数々の間接的に接続された部品から構成されていることも可能である。例えば、塊状、中空状若しくは発泡状であることが可能であり、又は、グリッド状構造を示すことが可能である。キャリア部材の表面は、バッフル及び/又は補強部材の意図される使用に従って、典型的には、平坦面、粗面又は構造化面であることが可能である。
【0122】
さらに、キャリアは、0.5~5mm、0.5~3mm、0.5~2mm、好ましくは0.75~1.5mmの厚さを有するシート状構造を有していることが可能である。
【0123】
バッフル部材が、本発明の熱膨張性組成物上に直接配置される剥離可能な保護層(特に剥離ライナ又は剥離紙)を含むことが有利であることが可能である。このような保護層は、意図される基材上に配置される前において、製造、保管又は輸送の最中にバッフル部材の付着を防止する。
【0124】
このような剥離可能な保護層は、典型的には、表面エネルギーが低いシリコーン及び材料を含む。好ましくは、これらは、Roempp Chemie Lexikon,online version,Georg Thieme Verlag(2018年10月8日に検索)において「離型剤」と記載されているものなどのコンポーネントを含む。
【0125】
このような剥離可能な保護層は、意図される基材上にバッフル部材を配置する前に手で容易に除去可能であるべきである。
【0126】
典型的には、このような剥離可能な保護層は、10~300μm、15~200μm、好ましくは20~150μmの厚さのシート状構造を有する。
【0127】
さらに、剥離可能な保護層は、熱膨張性組成物のシート状構造の幅及び長さに対して80%超、もっとも好ましくは90%超、特に好ましくは100%の幅及び長さを有することが好ましい。
【0128】
バッフル部材は、好ましくは既述の剥離可能な保護層とは反対側に、本発明の熱膨張性組成物に直接配置される剥離不可能な保護層を含むことが、さらに有利であることが可能である。このような保護層は、意図される基材上に配置される前において、製造、保管又は輸送の最中にバッフル部材の付着を防止する。
【0129】
このような剥離不可能な保護層は、典型的には、取り扱いフィルム(Promaflex Industrial Ltda社製(BR))として市販されているEVA系組成物、又は、PO EAA系取り扱いフィルム(Protechnic社製(FR))として市販されているPO EAA系組成物のような材料からなる。好ましくは、これらは、Roempp Chemie Lexikon,online version,Georg Thieme Verlag(2018年10月8日に検索)において「離型剤」として記載されているものなどのコンポーネントを含まない。
【0130】
このような剥離不可能な保護層は、バッフルが膨張/硬化のためにオーブンに入れられた際に100℃を超える温度で容易に溶融可能であるべきであり、及び、本発明の熱膨張性組成物によって吸収可能であって、従って、発泡した膨張した組成物がシール/バッフルされるべき中空構造の側部/壁と接触した際にその接着が剥離不可能な保護層の材料によって干渉されるべきではない。
【0131】
典型的には、このような剥離不可能な保護層は、10~300μm、15~200μm、好ましくは20~150μmの厚さを有するシート状構造を有する。
【0132】
さらに、剥離不可能な保護層は、熱膨張性組成物のシート状構造の幅及び長さに対して80%超、もっとも好ましくは90%超、特に好ましくは100%の幅及び長さを有することが好ましい。
【0133】
もっとも好ましくは、バッフル部材は、全体が熱膨張性組成物により形成されており、ここで、このバッフル部材は、既述の剥離可能及び/又は(好ましくは、及び)剥離不可能な保護層を含有していることが可能である。
【0134】
好ましい一実施形態において、開放及び中空構造のためのこのようなバッフル部材は、実質的に熱膨張性組成物から(好ましくは、熱膨張性組成物のみから)構成され、ここで、このバッフル部材は、既述の剥離可能な保護層を含有していることが可能である。この場合、バッフル及び/又は補強される開放又は中空構造の壁部に容易に嵌合及び取り付けが可能であるような部材の形状に設計されることが有利である。
【0135】
好ましくは、熱膨張性組成物は、0.5~10mm、好ましくは1~6mmの厚さを有するシート状構造を有する。
【0136】
熱膨張性組成物が、5~30cm、好ましくは10~25cmの長さ、及び、5~30cm、好ましくは5~15cmの幅を有するシート状構造を有することがさらに有利であり得る。このような形態では、部材は、例えばパッチとして大面積のシール又はバッフルに特に好適である。部材が1~20cm、好ましくは2~10cmの幅を有する場合、部材は、シール又はバッフルのためのストライプとして用いられることが特に好適である。
【0137】
製造は、この場合、型テンプレートを介した射出成形、打ち抜き若しくはスタンピング、又は、押出し成形により行われることが好ましい。
【0138】
本発明に係るバッフル部材の製造プロセスは、熱膨張性組成物の射出成形プロセス又は共有押出し成形プロセスであることが可能である。
【0139】
本発明の他の態様は、騒音、振動、湿度、及び/又は熱の伝導が低減されるよう、陸上乗物、船舶若しくは航空機、好ましくは自動車車両のキャビティ若しくは中空若しくは開放構造、及び/又は建築物のキャビティをシール又はバッフルするための上記のバッフル部材の使用である。
【0140】
本発明のさらなる態様は、上記の熱膨張性組成物を含む部材を前記キャビティ又は中空構造中に導入し、その後、熱膨張させ、これにより、膨張した組成物によって前記キャビティ又は中空構造を少なくとも部分的に充填することを特徴とする、キャビティ又は中空構造をシール又はバッフルする方法である。
【0141】
キャビティ又は中空構造は、好ましくは、金属から構成されるが、しかしながら、耐熱性プラスチックもまた可能である。好ましくは、基材は、特にシート状の金属基材であって、鋼鉄、特に電解亜鉛めっき鋼、溶融亜鉛めっき鋼、ボナジンク(bonazinc)でコーティングした鋼鉄、及び、その後リン酸塩処理される鋼鉄製、また、アルミニウム製のものであって、特に、典型的には自動車産業における変種であり、並びに、マグネシウム又はマグネシウム合金製のものである。
【0142】
好ましくは、これらの金属基材は油が付着した基材であり、これは、当業者に公知である腐食保護油で被覆されていることを意味する。このような腐食保護油の一例は、Anticorit PL 3802-39Sである。
【0143】
熱膨張プロセスに係る好ましい温度は、110℃~220℃、120~210℃、好ましくは140~200℃である。組成物に係る好ましい焼成時間は、5分間~90分間、好ましくは10~60分間、より好ましくは15~30分間である。
【0144】
本発明を以下の実験の部においてさらに説明するが、しかしながら、これは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0145】
1.例示的組成物の配合物
1.1組成物
本発明の組成物の実施例(E1~E7)、及び、本発明に係らない参照組成物(R1~R7)を、以下に示す手法に従って調製した。個々の組成物の総重量に基づく正確な個別の組成(重量%)を、表2及び3に示す。
【0146】
本明細書に記載されている、本発明の例示的組成物E1~E6及び本発明に係らない参照組成物R1~R5において用いた成分の詳細を表1に示す。
【0147】
【0148】
1.2混合及び成形手法
本書面における、本発明に係る及び本発明に係らない例示的組成物はすべて、以下の手法に従って調製した:
第1のステップにおいては、ポリマーP1、P2、P3、BRu、酸化防止剤及び粘着付与剤を混合し、7分間の間、36rpm(1分間当りの回転)の混合速度、110℃で溶融した。その後、POの半量を、チキソトロープ剤、カーボンブラック及び充填材と一緒に、第1のステップにおいて適用されたものと同一の速度及び時間で混合した。混合物の温度を85℃に設定し、膨張剤及び活性化剤を添加した。混合物を75℃の温度に冷却することで冷却して混合を36rpmで5分間継続した。次いで、硬化剤、アクリレートA、過酸化物を、POの残りの半量と共に添加し、続いて、36rpmで5分間混合した。
【0149】
この混合物の300gを取り出し、剥離紙の間に置き、電気プレスにより、50℃の温度及び60barの圧力で15秒間加圧して、2mmの厚さを有するシートとした。その後、これらのシートを100×10mm×2mmのクーポン(サンプル)に切断し、さらにテストした。
【0150】
2例示的組成物のテスト
2.1膨張安定性
膨張及び膨張安定性を、180℃で予熱したオーブン中において、20分間、種々の温度における個別のサンプルの熱処理(焼成)により、すべてのサンプルにおいてテストした。
【0151】
膨張を、膨張の前後に密度を計測することにより、各サンプルについて定量化した。密度を、DIN EN ISO 1183に従い、脱イオン水中における液浸法(アルキメデスの原理)及び質量を計測するための精密てんびんを用いて測定した。
【0152】
本発明の組成物の硬化した発泡材は、圧力が印加された場合に弾性挙動を示したことにさらに注目すべきである。例えば親指で押圧されて発泡材に圧力が印加された場合、発泡材は、圧力が解除されると数秒間以内に元の形状及び大きさに復元した。従って、本発明の組成物は、親指で押圧されて、室温で1秒間5kgの圧力が印加された場合に、形状回復を完了する。
【0153】
組成物E1は、12 1/10mmのJIS K 6830に準拠したコンシステンシーを有することが見出された。
【0154】
2.2接着特性
接着特性を評価するために、上記のクーポンをキャリアプレート(300×30mm、厚さ0.8mm、鋼鉄製、クリーニングし、次いで、Anticorit PL 3802-39Sで油を付着させた)の真ん中に置き、キャリアプレートに対して強く押した。
【0155】
次いで、未硬化/未膨張の状態でキャリアプレートにクーポンが接着されるかを評価するために、このようなサンプルを90°の角度に曲げた。結果を表2及び3において、「湾曲し油が付着した鋼鉄に対する接着(未硬化)」に示し;接着されたクーポンを(+)とマークし、金属キャリアへの付着に失敗したクーポンを(-)とマークする。部分的な剥離を示すクーポンは「(+/-)」と格付けした。
【0156】
これらのサンプルの他のものを180℃で20分間硬化させ、次いで、硬化/膨張した状態でキャリアプレートにクーポンが接着されるかを評価するために、90°の角度に曲げた。結果を表2及び3において、「湾曲し油が付着した鋼鉄に対する接着(硬化)」に示し;接着された膨張したクーポンを(+)とマークし、金属キャリアへの付着に失敗した膨張したクーポンを(-)とマークする。
【0157】
破壊パターン:
これらのサンプルの他のものを180℃で20分間硬化させ、次いで、硬化/膨張した組成物を、キャリアプレートから手で剥がした。
【0158】
以下の得られた破壊の外観に係る視覚的アセスメントを用いた:結果を「粘着性」(粘着性破壊)及び「接着剤」(接着剤破壊)に分け、ここでは、粘着性破壊パターンが好ましい。
【0159】
2.3セル構造、膨張挙動及び座屈。
セル構造、膨張及び座屈挙動を評価するために、上記のサンプルを180℃で20分間硬化させ、キャリアプレート上の得られた硬化/膨張した組成物を視覚的に分析した。
【0160】
座屈:硬化/膨張した組成物がキャリアプレートから剥離した場合、サンプルを「座屈」と格付けし、焼成プロセスの最中に剥離が生じなかった場合、サンプルを「なし」と格付けした。
【0161】
セル構造:硬化/膨張した組成物が、小型のセル-サイズ、並びに、均一な平均セルサイズ及びセルの均一な分布(発泡材全体で)を有する閉鎖セル構造を表面に有していた場合、このサンプルを「(+)」と格付けした。
【0162】
硬化/膨張した組成物が、大型のセル-サイズ、不均一な平均セルサイズ及びセルの不均一な分布(発泡材全体で)を有する開放セル構造を表面に有していた場合、このサンプルを「(-)」と格付けした。中間の構造は「(+/-)」と格付けした。
【0163】
膨張(水平膨張/垂直膨張):硬化/膨張した組成物を、その水平膨張挙動並びに垂直膨張挙動により評価した。
【0164】
水平膨張(金属キャリアから離れる方向)が均一/均等であった場合、サンプルを「(均)」と格付けし、セル構造が波打っており/不均一であった場合、サンプルを「(波状、それぞれ、少し波状)」と格付けした。
【0165】
垂直/側方膨張(金属キャリアに沿う方向)が単一方向性/均等であった場合、サンプルを「(方)」と格付けし、セル構造が無方向性/不均等であった場合、サンプルを「(無方)」と格付けした。
【0166】
【0167】
【表3】
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む:
[1]以下を含む熱膨張性組成物であって:
(a)ラジカル開始剤によって架橋可能な少なくとも一種のポリマーP、及び
(b)少なくとも一種の固体ブチルゴムBRuであって、前記組成物の総重量に基づいて、5重量%~16重量%、好ましくは5重量%~15重量%、6重量%~12重量%、8重量%~10重量%の量で前記組成物に含まれる固体ブチルゴム、及び
(c)少なくとも一種のラジカル開始剤、及び
(d)少なくとも一種の膨張剤であって、好ましくは6重量%未満、好ましくは1重量%~5.5重量%、2重量%~5重量%の量で前記組成物に含まれる膨張剤、及び
(e)少なくとも一種の粘着付与剤TA、
ここで、
硬化後の膨張した前記組成物は、未硬化の前記組成物と比べて、1300%未満、好ましくは500~1300%、より好ましくは600~1200%、800~1200%、最も好ましくは900~1100%の体積増加を有し、
前記体積増加は、密度測定のDIN EN ISO 1183法(アルキメデスの原理)を用いて決定される、
熱膨張性組成物。
[2]前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて、12重量%~30重量%、14重量%~25重量%、16重量%~22重量%、好ましくは17.5重量%~20重量%の量で前記粘着付与剤を含むことを特徴とする、上記[1]に記載の熱膨張性組成物。
[3]前記粘着付与剤は、炭化水素樹脂、好ましくは芳香族変性炭化水素樹脂、最も好ましくは芳香族変性C5炭化水素樹脂であることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の熱膨張性組成物。
[4]前記組成物はさらに、芳香族油、ナフテン油、又はポリ(イソ)ブチレン、好ましくはポリ(イソ)ブチレン、最も好ましくはポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも一種のプロセスオイルPOを含むことを特徴とする、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の熱膨張性組成物。
[5]前記組成物は、前記組成物の前記総重量に基づいて、18重量%~35重量%、好ましくは20重量%~32重量%、最も好ましくは25重量%~30重量%の量で前記プロセスオイルPOを含むことを特徴とする、上記[4]に記載の熱膨張性組成物。
[6]前記膨張剤はアゾジカルボンアミドであることを特徴とする、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の熱膨張性組成物。
[7]前記組成物は、2.5重量%~6重量%、好ましくは3重量%~5.5重量%、3.5重量%~5重量%、4重量%~5重量%、最も好ましくは4.5重量%~5重量%の量で前記膨張剤を含むことを特徴とする、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の熱膨張性組成物。
[8]前記ラジカル開始剤は、過酸化物又は過酸エステル、好ましくは過酸化物であることを特徴とする、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の熱膨張性組成物。
[9]前記組成物はさらに、少なくとも一種のアクリレートAを含むことを特徴とする、上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の熱膨張性組成物。
[10]前記少なくとも一種の固体ブチルゴムBRuは、ハロゲン化ブチルゴム、好ましくは塩素化ブチルゴム又は臭素化ブチルゴム、特に好ましくは臭素化ブチルゴムであることを特徴とする、上記[1]~[9]のいずれか一つに記載の熱膨張性組成物。
[11]開放又は中空構造用のバッフル部材であって、上記[1]~[10]のいずれか一つに記載の熱膨張性組成物を含むことを特徴とするバッフル部材。
[12]前記熱膨張性組成物は、0.5~10mm、好ましくは1~6mmの厚さを有するシート状構造を有することを特徴とする、上記[11]に記載のバッフル部材。
[13]前記熱膨張性組成物は、5~30cm、好ましくは10~25cmの長さ、及び5~30cm、好ましくは5~15cmの幅、又は1~20cm、好ましくは2~10cmの幅を有するシート状構造を有することを特徴とする、上記[11]又は[12]に記載のバッフル部材。
[14]陸上乗物、船舶、若しくは航空機の、好ましくは自動車乗物のキャビティ若しくは中空若しくは開放構造、及び/又は建築物のキャビティをシール又はバッフルし、それによって、騒音、振動、湿度、及び/又は熱の伝導を低減するための、上記[11]~[13]のいずれか一つに記載のバッフル部材の使用。
[15]上記[1]~[10]のいずれか一つに記載の熱膨張性組成物を含む部材をキャビティ又は中空構造中に導入し、その後、熱膨張させ、これにより、膨張した前記組成物によって前記キャビティ又は中空構造を少なくとも部分的に充填することを特徴とする、キャビティ又は中空構造をシール又はバッフルする方法。