(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】熱電モジュール
(51)【国際特許分類】
H10N 10/17 20230101AFI20240423BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H10N10/17 Z
H02N11/00 A
(21)【出願番号】P 2020022148
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】能川 玄也
(72)【発明者】
【氏名】東平 知丈
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-058613(JP,A)
【文献】特開2004-200270(JP,A)
【文献】特開2012-064913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/17
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
M個の金属電極と、熱電変換素子と、一方の面に金属層を有する絶縁基板のもう一方の面に配置された金属配線と、が接合層によって電気的に直列に接続され、
前記金属電極は、上面視して長手方向を有する形状であり、かつ、上面視して長手方向が全て平行になるように配列しており、
前記金属電極の長手方向に対して、上面視して直交する方向に長手方向を有する前記金属配線がN個配列し、N/Mは47%以上81%以下であ
り、
前記金属層は、前記金属配線に対する前記金属層の厚さの比を、前記金属層に対する前記金属配線の総面積比で除した値が0.35以上0.95以下である
ことを特徴とする熱電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排熱等を熱源として、熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換する熱電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー消費低減のために、例えばボイラー、焼却炉、自動車の排熱を電気として回収することが検討されている。特にゼーベック効果によって熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換できる熱電素子を用いて、効率よく電気エネルギーを回収できる熱電モジュールが注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された熱電モジュールは、対向させて配置した一対の四角板状の絶縁基板における対向する両面の所定箇所に長方形の電極を複数個形成し、前記対向する電極の所定の部分にそれぞれ熱電素子の端面を固定して構成される熱電モジュールにおいて、前記一対の絶縁基板に形成される電極の縦横の方向を適宜変更して、縦方向に形成される電極の数と、横方向に形成される電極の数とに所定値以上の差が生じないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の熱電モジュールは、熱電素子の数の増加や、絶縁基板の面積の拡大、さらに高温環境下などを想定すると、熱電モジュール全体の反り及び熱電素子にかかる応力が大きくなり、熱電素子や接合部の破断などにより熱電モジュールとして動作しなくなる、すなわち、機械的信頼性が低くなる課題があることが分かった。
【0006】
本発明の目的は、機械的信頼性の高い熱電モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱電モジュールは、
M個の金属電極と、熱電変換素子と、一方の面に金属層を有する絶縁基板のもう一方の面に配置された金属配線と、が接合層によって電気的に直列に接続され、
前記金属電極は、上面視して長手方向を有する形状であり、かつ、上面視して長手方向が全て平行になるように配列しており、
前記金属電極の長手方向に対して、上面視して直交する方向に長手方向を有する前記金属配線がN個配列し、N/Mは47%以上81%以下である
ことを特徴とする。
【0008】
さらに、前記金属層は、前記金属配線に対する前記金属層の厚さの比を、前記金属層に対する前記金属配線の総面積比で除した値が0.35以上0.95以下であると好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機械的信頼性の高い熱電モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】熱電モジュールの一部を拡大し、熱電素子を側面視した断面模式図。
【
図2】熱電モジュールの一部を拡大した金属電極の上面模式図。
【
図3】熱電モジュールの一部を拡大し、熱電素子を上面視した断面模式図。
【
図4】比較例2の熱電モジュールにおける、(a)金属配線を上面視した断面模式図と、(b)金属電極の上面模式図である。
【
図5】実施例1の熱電モジュールにおける金属配線を上面視した断面模式図である。
【
図6】実施例1の熱電モジュールにおける金属配線を上面視し、電気的な経路を加えた断面模式図。
【
図7】比較例1の熱電モジュールにおける金属配線を上面視し、電気的な経路を加えた断面模式図。
【
図8】実施例2の熱電モジュールにおける金属配線を上面視した断面模式図である。
【
図9】実施例2の熱電モジュールにおける金属配線を上面視し、電気的な経路を加えた断面模式図。
【
図10】実施例3の熱電モジュールにおける金属配線を上面視した断面模式図である。
【
図11】実施例3の熱電モジュールにおける金属配線を上面視し、電気的な経路を加えた断面模式図。
【
図12】比較例2の熱電モジュールにおける金属配線を上面視し、電気的な経路を加えた断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の熱電モジュールは、M個の金属電極と、熱電変換素子と、一方の面に金属層を有する絶縁基板のもう一方の面に配置された金属配線と、が接合層によって電気的に直列に接続され、前記金属電極は、上面視して長手方向を有する形状であり、かつ、上面視して長手方向が全て平行になるように配列しており、前記金属電極の長手方向に対して、上面視して直交する方向に長手方向を有する前記金属配線がN個配列し、N/Mは47%以上81%以下である。熱電モジュールの基本的な構造を踏まえて、本発明の構成例を以下に説明する。本発明では、特に明記していない限り、配線基板に対し、熱電素子を配置した側を上としている。
【0012】
まず、熱電モジュールの基本的な構造を説明する。熱電モジュールは、
図1に示すように金属電極11とP型熱電素子12a、N型熱電素子12b、金属配線が電気的に直列に接続されている。金属配線は、素子同士をつなぐための直列接続用金属配線17aと、熱電モジュールで得られた電力の取り出し口となる、すなわち直列接続の端部に位置する取り出し口用金属配線17bとを含む。P型熱電素子12a、N型熱電素子12bは、同じ向きに温度差が発生した際に、逆向きの起電力が発生するため、図に示すように直列接続することで、これらの熱電素子を用いて熱を電気に変換することができる。この図に示した熱電モジュールは、金属電極11と、熱電素子12a、12bの高温側と、の間は第一の接合層14で接合されており、金属配線と、熱電素子12a、12bの低温側との間は第二の接合層15によって、それぞれ接合されている。これらは、直列に接続されていればよく、第一の接合層14、及び、第二の接合層15をまとめて接合層と称してもよい。金属配線は絶縁基板16に対して熱電素子12a、12b側の一方の面に配置され、他方の面に金属層18が配置されている。この、一方の面に金属配線を有し、他方の面に金属層18が配置された絶縁基板16を、配線基板13とする。
このような構成の熱電モジュールにおいて、各部材間、特に絶縁基板16と金属配線及び金属層18との、熱膨張係数差が大きく、熱電モジュールを作製する際に熱電モジュールが反り、熱接触抵抗の増加や、内部応力増大により機械的信頼性が低下する可能性がある。
【0013】
反りの主要因は、絶縁基板と、絶縁基板に配置された金属配線、金属層、それぞれの間に生じる熱応力が不均一であるために発生する。金属配線は、金属電極、熱電素子と電気的に直列に接続するよう回路パターンを形成している。一方、金属層は熱接触を取るために、パターンを形成せず、一枚板のように形成したほうが好ましい。そのため、金属層と金属配線とで形状が異なり、熱応力の大きさ、方向ともに異なる状態となるため、反りが発生する。そこで、熱電モジュールの反りを抑制するためには、熱応力の釣り合いを3次元として取る必要がある。
【0014】
ここで、これまで説明した熱電モジュールにおいて、金属電極の数をM個とする。このとき、金属配線は直列回路を形成する金属配線17aと電力の取り出し口となる金属配線17bに分かれ、金属配線17aの数はM-1個、金属配線17bの数は2個となり、金属配線はM+1個となる。このような個数になる理由として、熱電モジュールの単位体積当たりの出力を最も上げるためには、熱電素子を空間中に緻密に配列するのが好ましい。また、ゼーベック効果により発生する電圧は小さいため、直列接続して用いるのが望ましい。例えば、直方体の熱電素子を緻密に配列する場合、金属電極や金属配線なども上面視して矩形形状とし、さらに絶縁基板も同様にすることが好ましい。但し、応力集中などを考慮して、矩形形状の角にフィレットなどを設けてもよい。さらに、反りなどを考慮すると矩形の縦横が同等である正方形状の熱電素子や絶縁基板を用いることが好ましくい。
【0015】
ここで、たとえば
図4(a)のように形成した配線基板の回路パターン、熱電素子の配列に対し、
図4(b)のように金属電極の配置パターンを設け、反りを抑制すると、金属電極の熱膨張の向きが配置パターンに依存して複雑化し、ねじれの応力を熱電素子に負荷することになり、信頼性低下の原因となる。そのため熱電モジュールは金属電極が平行に並ぶ構造をとることが好ましい。以上より、金属電極の配列ではなく配線基板上の金属配線の配置や金属層の厚みを制御するほうが、構造由来の応力を熱電素子に負荷することなく熱電モジュールの反りを低減することができ、望ましい構造だといえる。
【0016】
以下、本発明のM=32、N=19の場合の、実施形態の一例を、図を用いて説明する。
図5および
図6は本実施形態における熱電モジュールに用いられる配線基板に形成された回路パターン及び回路の接続経路を示す。この熱電モジュールにおいて上面から見た図は
図2と同様である。金属電極は、隣り合う熱電素子を上面視して十分に電流路を形成できる形状、すなわち隣り合う熱電素子を接続するように長手方向を有する形状であればよく、たとえば矩形状の板状としてもよく、必要に応じて、角にフィレットを形成したり、一部に凹凸や曲線部などを設けてもよい。このことは、金属配線についても同様である。熱電素子上に配置される金属電極は上面視して長手方向が全て平行になるように配置されている。
図5に示すように、配線基板の回路パターン(金属配線)は直列回路を形成するため、同様に上面視して矩形状を有している。この金属配線の長手方向が一方向へ平行に配列するのではなく、一定数金属電極とねじれの位置を有する。すなわち上面視して、金属電極の長手方向に対して、その長手方向が直交となる金属配線が19個含まれる構成となっている。ねじれの位置となる金属配線が一定数量含まれることで、熱応力の方向のバランスをとることができ、特定方向への反りの助長を抑制できる。この時、ねじれの位置を取る数量比N/Mは47%以上81%以下であり、さらに50%以上70%以下であれば好ましい。
【0017】
さらに、熱応力の大きさは金属配線と金属層18の表面積比と厚さ比を調整することで釣り合いを取ってもよい。この時、釣り合いを取るためには金属層の面積を絶縁基板に対して可能な限り広くすることが好ましい。そのため、絶縁基板を矩形としたとき、同様の矩形形状とすることが好ましい。例えば、金属配線に対する金属層18の厚さの比を、金属層18に対する金属配線の総面積比で除した値が0.35以上0.95以下とすることで、熱応力の大きさのつり合いがとりやすくなるため好ましい。さらに、0.55以上、0.95以下とするのが好ましい。以後
【0018】
絶縁基板16は、熱電モジュールの使用環境下に耐えられる材料であればよく、たとえばSi3N4、SiO2、AlN、Al2O3、BN、エポキシ樹脂等の樹脂を用いてもよい。また、金属配線と金属層18は同じ材質が望ましく、たとえばアルミニウム、銅、銀、ニッケルとしてもよい。熱電素子の材質は任意に選択でき、たとえばBi2Te3系、PbTe系、ホイスラー合金、ハーフホイスラー合金、スクッテルダイト、フィルドスクッテルダイト、ジントル相、SnSe系、シリサイドなどを用いてもよい。金属電極11は受熱温度に対する耐熱性、電気伝導性がある材料であればよく、たとえば銅、ニッケル、モリブテンフィラー等を含む銅モリブデン複合材料、銅タングステン複合材料、銅クロム複合材料、銅インバークラッド材料等を用いてもよい。接合層は耐熱性のある導電性材料であればよく、たとえば銀ろう、銅ろうを代表とするろう接や、銀、銅、ニッケル等のナノ粒子接合などを用いてもよい。
【実施例】
【0019】
以上に説明した実施形態において、以下に検討した条件を示す。まずは基準となる比較例1を説明し、続けて各実施例、比較例2を説明する。以下の比較例1、実施例及び比較例2はM=32の例である。
【0020】
[比較例1]
以下に
図4(a)に示す回路パターンを用いた熱電モジュールを比較例1として説明する。
図4(a)のパターンを用いて作製した熱電モジュールの電気的な接続経路は
図7のような配列とした。この回路パターンでは、金属配線の22%が金属電極とねじれの位置を取っている。
絶縁基板の寸法は40mm×40mm×0.32mmとし、Si
3N
4を用いた。金属配線には銅を用い、金属配線17aの寸法は4.6mm×9.6mm×0.2mmとし、金属配線17bの寸法は4.6mm×4.8mm×0.2mmとした。金属層18の寸法は39.6mm×39.6mm×0.2mmとした。絶縁基板と金属配線の接合は活性銀ろうで接合し、エッチングにより配線パターンを作製した。エッチングにより形成される金属配線間の距離は0.4mmであり、金属配線の角部には半径0.3mmのフィレットを形成した。熱電素子にはフィルドスクッテルダイトを用い、素子の寸法は4.0mm×4.0mm×4.0mmとした。金属電極には銅モリブデン複合体を用い、その寸法は4.6mm×9.6mm×1.0mmとした。接合層は銅のナノ粒子接合を用いた。この時の金属配線に対する金属層18の厚さの比を、金属層18に対する金属配線の総面積比で除した値は1.1である。
【0021】
熱電モジュール作製時に生じる熱歪や反りは有限要素法(FEM)を用いた熱応力解析から推測した。使用時についても、作製時の熱歪や反りなどの影響を受けることが分かっている。反り量は配線基板面積に比例して大きくなるため、熱電モジュールの反りを、モジュール全体に生じる反り量を配線基板の対角線の長さで除した値を用いて評価した。また熱電モジュール作製時に熱電素子にかかる相当応力を評価した。相当応力とはミーゼス応力をさし、ミーゼス応力とはフォン・ミーゼスの式をもとに応力テンソルをスカラー値化した金属の破壊指標の一種である。
【0022】
【0023】
表1に示す材料物性を用いて反り、相当応力を評価し、以下実施例の反り量及び相当応力は本比較例1を1として評価した。
【0024】
[実施例1]
以下に
図5に示す回路パターンを用いた熱電モジュールの実施例について説明する。
図5を用いて作製した熱電モジュールの電気的な接続経路は
図6のような配列である。ここで、金属電極はすべて平行に配列している。この回路パターンを用いた際、金属電極とねじれの位置を取っている数量比N/Mは59%である。
絶縁基板、金属配線17a、金属配線17b、熱電素子、金属電極、接合層は比較例1と同様の寸法、材質を用い、金属配線間の間隔、配線に形成されるフィレットも比較例1と同様の構成とした。金属層18は39.6mm×39.6mm×0.15mmの銅を用いた。金属配線に対する金属層の厚さの比を、金属層に対する金属配線の総面積比で除した値は0.83となる。
本実施例により生じる反りは0.49であり、反りが51%低減することが確認された。また熱電素子にかかる相当応力は配線基板との界面で最大値を取り、相当応力の評価値は1と計算され、熱電素子にかかる相当応力が増加しないことが確認された。
【0025】
[実施例2]
次に
図8に示す回路パターンを用いた熱電モジュールの実施例について説明する。
図8を用いて作製した熱電モジュールの電気的な接続経路は
図9のような配列である。ここで、金属電極はすべて平行に配列している。この回路パターンを用いた際、金属電極とねじれの位置を取っている数量比N/Mは81%である。
絶縁基板、金属配線17a、金属配線17b、金属層18、金属配線間の間隔、配線に形成されるフィレット、熱電素子、金属電極、接合層は実施例1と同様の材質、寸法の構成を用い、FEMにより評価した。金属配線に対する金属層の厚さの比を、金属層に対する金属配線の総面積比で除した値は0.83となる。
本実施例により生じる反りは0.42であり、反りが58%低減することが確認された。また熱電素子にかかる相当応力は配線基板との界面で最大値を取り、相当応力の評価値は0.92と計算され、熱電素子にかかる相当応力が8%低減することが確認された。
【0026】
[実施例3]
次に
図10に示す回路パターンを用いた熱電モジュールの実施例について説明する。
図10を用いて作製した熱電モジュールの電気的な接続経路は
図11のような配列である。ここで、金属電極はすべて平行に配列している。この回路パターンを用いた際、金属電極とねじれの位置を取っている数量比N/Mは47%である。
絶縁基板、金属配線17a、金属配線17b、金属層18、金属配線間の間隔、配線に形成されるフィレット、熱電素子、金属電極、接合層は実施例1と同様の材質、寸法の構成を用い、FEMにより評価した。金属配線に対する金属層の厚さの比を、金属層に対する金属配線の総面積比で除した値は0.83となる。
本実施例により生じる反りは0.52であり、反りが48%低減することが確認された。また熱電素子にかかる相当応力は配線基板との界面で最大値を取り、相当応力の評価値は0.94と計算され、熱電素子にかかる相当応力が6%低減することが確認された。
【0027】
[実施例4]
次に
図5に示す回路パターンを用いた熱電モジュールの実施例について説明する。
図5を用いて作製した熱電モジュールの電気的な接続経路は
図6のような配列である。ここで、金属電極はすべて平行に配列している。この回路パターンを用いた際、金属電極とねじれの位置を取っている数量比N/Mは59%である。
本実施例では金属配線17aの寸法は4.6mm×9.6mm×0.1mmとし、金属配線17bの寸法は4.6mm×4.8mm×0.1mmとした。金属層18の寸法は39.6mm×39.6mm×0.083mmとした。金属配線に対する金属層の厚さの比を、金属層に対する金属配線の総面積比で除した値は0.92となる。金属配線間の間隔、角部に形成されるフィレットは実施例1と同様である。また絶縁基板、熱電素子、金属電極、接合層は実施例1と同様の材質、寸法の構成を用い、FEMにより評価した。
熱電素子、金属電極、接合層も比較例1と同様の寸法、材質を用いて評価した。
本実施例により生じる反りは0.22であり、反りが78%低減することが確認された。また熱電素子にかかる相当応力は配線基板との界面で最大値を取り、相当応力の評価値は0.76と計算され、熱電素子にかかる相当応力が24%低減することが確認された。
【0028】
[実施例5]
次に
図5に示す回路パターンを用いた熱電モジュールの実施例について説明する。
図5を用いて作製した熱電モジュールの電気的な接続経路は
図6のような配列である。この回路パターンを用いた際、金属電極とねじれの位置を取っている数量比N/Mは59%である。
本実施例では金属配線17aの寸法は4.3mm×9.3mm×0.2mmとし、金属配線17bの寸法は4.3mm×4.65mm×0.2mmとした。金属層18の寸法は39.6mm×39.6mm×0.13mmとした。金属配線に対する金属層の厚さの比を、金属層に対する金属配線の総面積比で除した値は0.80となる。金属配線間の間隔、角部に形成されるフィレットは実施例1と同様である。また絶縁基板、熱電素子、金属電極、接合層は実施例1と同様の材質、寸法の構成を用い、FEMにより評価した。
熱電素子、金属電極、接合層も比較例1と同様の寸法、材質を用いて評価した。
本実施例により生じる反りは0.57であり、反りが43%低減することが確認された。また熱電素子にかかる相当応力は配線基板との界面で最大値を取り、相当応力の評価値は1と計算され、熱電素子にかかる相当応力が増加しないことが確認された。
【0029】
[比較例2]
比較例2として
図4(a)に示す回路パターンを用いた熱電モジュールの実施例について説明する。
図4(a)を用いて作製した熱電モジュールの電気的な接続経路は
図12のような配列である。これは、金属電極がすべて平行に配列していない点で、実施例と異なる。絶縁基板16、金属配線17a、金属配線17b、金属層18、金属配線間の間隔、配線に形成されるフィレット、熱電素子、金属電極、接合層は実施例1と同様の材質、寸法の構成を用い、FEMにより評価した。本実施例により生じる反りは0.49であり、反りが51%低減することが確認された。また熱電素子にかかる相当応力は配線基板との界面で最大値を取り、相当応力の評価値は1.11と計算され、熱電素子にかかる相当応力が11%増加した。
【0030】
以上に説明した通り、金属電極を平行に配置し、かつ配線基板の回路パターンにおいて、金属電極とねじれの位置になる金属配線を形成することにより、素子への熱応力を増加することなく、熱電モジュールに生じる反りを抑制することができた。
【符号の説明】
【0031】
11・・・金属電極
12a・・・P型熱電素子
12b・・・N型熱電素子
13・・・配線基板
14・・・第一の接合層
15・・・第二の接合層
16・・・絶縁基板
17a・・・直列接続用金属配線
17b・・・取り出し口用金属配線
18・・・金属層