(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】高分子凝集剤の溶解システム
(51)【国際特許分類】
B01D 21/01 20060101AFI20240423BHJP
B01D 21/30 20060101ALI20240423BHJP
B01F 21/00 20220101ALI20240423BHJP
B01F 23/40 20220101ALI20240423BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20240423BHJP
B01F 25/10 20220101ALI20240423BHJP
【FI】
B01D21/01 B
B01D21/01 C
B01D21/01 D
B01D21/30 E
B01F21/00 101
B01F23/40
B01F25/40
B01F25/10
(21)【出願番号】P 2020070482
(22)【出願日】2020-04-09
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】岡野 仁史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中村 顕大
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-183314(JP,A)
【文献】特開2016-129878(JP,A)
【文献】特開2017-080686(JP,A)
【文献】特開平10-176064(JP,A)
【文献】特開2020-025932(JP,A)
【文献】国際公開第2010/050416(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00-21/34
C02F 11/00-11/20
C02F 1/52-1/56
B01F 21/00-25/90
B01F 27/00-27/96
B01F 35/00-35/95
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子凝集剤が添加された水を撹拌する撹拌機を備えた高分子凝集剤溶解槽と、
該高分子凝集剤溶解槽内の液を送液する高分子凝集剤溶解液の送液ポンプ及び送液配管と、
該送液ポンプの吐出側の該送液配管に設けられた渦流ポンプと、
を有する高分子凝集剤の溶解システムにおいて、
前記送液ポンプと渦流ポンプとの間の前記送液配管に希釈水を供給する希釈水添加手段を備えた
高分子凝集剤の溶解システムであって、
前記渦流ポンプの吐出側の前記送液配管と、前記渦流ポンプの吸込側の前記送液配管とを接続する循環配管を備えたことを特徴とする高分子凝集剤の溶解システム。
【請求項2】
前記渦流ポンプの吐出側の前記送液配管から前記循環配管に分流される液の分流比を調節する調節手段を備えたことを特徴とする請求項
1の高分子凝集剤の溶解システム。
【請求項3】
前記渦流ポンプの吐出側の前記送液配管に固定式乱流発生装置を備えたことを特徴とする請求項1
又は2の高分子凝集剤の溶解システム。
【請求項4】
前記固定式乱流発生装置はラインミキサであることを特徴とする請求項
3の高分子凝集剤の溶解システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子凝集剤(ポリマー凝集剤)を水に溶解させて対象系に添加するための高分子凝集剤の溶解システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
用水・排水処理設備における凝集剤を溶解するには、水槽状溶解槽に攪拌装置を設置して溶解するシステムが採用されている。高分子凝集剤の溶解濃度は、溶解槽に供給される水の量と、高分子凝集剤の供給量で決まる。
【0003】
高分子凝集剤は水に溶解しにくいものが多い。高分子凝集剤の溶解を促進させるシステムとして、特許文献1には、混合槽内の高分子凝集剤の半溶解液を送液ポンプで送液し、該送液ポンプ下流側の渦流ポンプに通して高分子凝集剤を溶解させるシステムが記載されている。特許文献1では、渦流ポンプとして、第1渦流ポンプ及び第2渦流ポンプを2段に設置し、高分子凝集剤が溶解するのに適した圧力にまで加圧することによって、高分子凝集剤を溶解する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、高分子凝集剤の溶解に用いる水の全量が混合槽に供給される。そのため、混合槽及び送液ポンプの容量が大きい。
【0006】
本発明は、混合槽及び送液ポンプの容量を小さくすることができ、また高分子凝集剤を効率よく溶解させることが可能な高分子凝集剤の溶解システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の高分子凝集剤の溶解システムは、高分子凝集剤が添加された水を撹拌する撹拌機を備えた高分子凝集剤溶解槽と、該高分子凝集剤溶解槽内の液を送液する高分子凝集剤溶解液の送液ポンプ及び送液配管と、該送液ポンプの吐出側の該送液配管に設けられた渦流ポンプとを有する高分子凝集剤の溶解システムにおいて、前記送液ポンプと渦流ポンプとの間の前記送液配管に希釈水を供給する希釈水添加手段を備える。
【0008】
本発明の一態様では、前記渦流ポンプの吐出側の前記送液配管に固定式乱流発生装置を備える。
【0009】
本発明の一態様では、前記固定式乱流発生装置はラインミキサである。
【0010】
本発明の一態様では、前記渦流ポンプの吐出側の前記送液配管と、前記渦流ポンプの吸込側の前記送液配管とを接続する循環配管を備える。
【0011】
本発明の一態様では、前記渦流ポンプの吐出側の前記送液配管から前記循環配管に分流される液の分流比を調節する調節手段を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高分子凝集剤の溶解システムによると、高分子凝集剤を溶解するための水の一部を希釈水として送液ポンプの下流側の送液配管に添加するので、高分子凝集剤溶解槽及び送液ポンプの容量が小さくて足りる。
【0013】
本発明の高分子凝集剤の溶解システムによると、送液ポンプからの高分子凝集剤の半溶解液を渦流ポンプに通すことにより、高分子凝集剤の溶解が促進される。送液ポンプと渦流ポンプとの間に希釈水(二次希釈水)を添加することにより、高分子凝集剤が十分に溶解し、規定濃度となった高分子凝集剤溶解液(水溶液)が供給される。
【0014】
本発明の一態様では、渦流ポンプの吐出側から高分子凝集剤溶解液の一部を渦流ポンプの吸込側に循環させることにより、高分子凝集剤がさらに十分に溶解した高分子凝集剤溶解液が供給される。
【0015】
本発明の一態様では、渦流ポンプの吐出側に固定式乱流発生装置を設置することにより、高分子凝集剤がさらに十分に溶解した高分子凝集剤溶解液が供給される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態に係る高分子凝集剤の溶解システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
【0018】
高分子凝集剤溶解槽3に対し、一次希釈水が配管1を介して、また高分子凝集剤が供給手段2を介して、それぞれ供給される。一次希釈水の供給量を測定するために、配管1に流量計1aが設けられている。
【0019】
高分子凝集剤は、アニオン系、カチオン系、ノニオン系などのいずれのポリマー凝集剤であってもよい。高分子凝集剤は液状であってもよく、粉末状であってもよい。高分子凝集剤の供給手段としては、定量給粉フィーダー、定量軸ネジポンプ、定量ダイヤフラムポンプなどのいずれでもよく、特に限定されない。
【0020】
溶解槽3には撹拌機3aが設けられている。溶解槽3内において、高分子凝集剤と一次希釈水とが撹拌されることにより、高分子凝集剤の少なくとも一部が水に溶解し、高分子凝集剤の半溶解液となる。この半溶解液は、バルブ4を有する配管5、送液ポンプ6、流量計7aを有する配管7、渦流ポンプ8、バルブ9を有する配管10、固定式乱流発生装置としてのラインミキサ11、配管12の順に流れる。配管12はバルブ13を介して薬注配管14に接続されている。なお、ラインミキサ以外の固定式乱流発生装置を用いてもよい。
【0021】
この実施の形態では、配管7のうち、流量計7aの設置箇所よりも下流側に二次希釈水が配管20を介して添加される。この配管20には、流量計20aとバルブ21が設置されている。
【0022】
また、この実施の形態では、配管12と、配管7とを接続するように循環配管23が設けられている。配管23には流量計23aとバルブ24が設けられている。配管23は、配管7のうち、二次希釈水用配管20の接続ポイントよりも渦流ポンプ8側に接続されている。
【0023】
渦流ポンプ8は、特許文献1にも記載の通り、水の吸入口及び吐出口を有するケーシング内に円板状羽根車が配置され、該円板状羽根車の外周縁の全周にわたって、多数の溝が放射状に形成されたものである。この羽根車は回転シャフトを介してモータによって回転駆動される。モータの回転数はインバータ等によって制御される。羽根車が回転することによって細かい渦流が形成され、高分子凝集剤の水への溶解が促進される。
【0024】
このように構成された実施の形態に係る高分子凝集剤の溶解システムにおいては、高分子凝集剤の少なくとも一部は溶解槽3内で一次希釈水に溶解し、半溶解液が送液ポンプ6によって配管7に送液される。この配管7の途中において配管20から二次希釈水が添加されると共に、循環配管23を介して配管12から高分子凝集剤溶解液の一部が添加される。これらの混合液は、渦流ポンプ8にてさらに撹拌され、高分子凝集剤の溶解が促進されて高分子凝集剤溶解液となる。この実施の形態では、この高分子凝集剤溶解液がラインミキサ11を通ることによって高分子凝集剤の溶解がさらに促進される。
【0025】
ラインミキサ11を通過した高分子凝集剤溶解液の一部は、配管23を介して配管7の高分子凝集剤溶解液に混合され、再度渦流ポンプ8に導入されて高分子凝集剤の溶解が促進される。なお、バルブ13,24の開度調整により、配管23への分流量(分流比)を調節することができる。
【0026】
このようにして高分子凝集剤が十分に溶解した高分子凝集剤溶解液が配管14を介して薬注対象水系に添加される。高分子凝集剤の供給量と、一次希釈水及び二次希釈水の供給量を規定量となるように制御することにより、規定濃度の高分子凝集剤溶解液が生成し、薬注される。
【0027】
この高分子凝集剤の溶解システムでは、希釈水の一部を二次希釈水として添加するので、高分子凝集剤溶解槽3及び送液ポンプ6の容量が小さくなる。そのため、難溶解性高分子凝集剤の溶解装置を新規設置する場合に比べて著しく(例えば30%以上)コストを低減できる。また、設備エリアを小型化できる。
【0028】
また、難溶解性高分子凝集剤の溶解装置の大型化が不要となり、溶解設備を大型化する場合よりも大幅に(例えば50%以上)コストを低減できる。
【0029】
高分子凝集剤を難溶解性のものに変更したときに、本システムを採用することで、溶解槽を変更せずに使用継続できる。本システムを追加採用することにより、既存の溶解設備での溶解液量を簡単に増やすことができる。本システムを採用することにより、溶解液使用量が増加しても、高濃度で一次溶解するため送液ポンプの容量は小さいままで使用でき、大型ポンプに変更する必要がなくなる。本システムを採用することにより、溶解槽で未溶解分が発生しても、渦流ポンプ等の機器で溶解できるため、高分子凝集剤を無駄なく活用でき、無駄な高分子凝集剤の使用を防止できる。
【0030】
なお、送液ポンプ6と渦流ポンプ8との間の配管7が高圧にも負圧にもならないように、渦流ポンプの羽根車回転数、吐出量、循環液量を調整することが好ましい。
【0031】
本実施の形態では、渦流ポンプの「(回転数×羽根枚数)/吐出量」で、溶解液1Lあたりが羽根に接する回数が計算できる。この回数が多いほど、溶解性が向上される。圧力を上昇させることにより溶解性が向上するが、それよりも羽根への接触回数を増やすことが有効である。
【実施例】
【0032】
[実験例1]
<実験条件>
1m3の溶解槽に0.2kW攪拌機を設置した。一次希釈水400Lに対し難溶解性高分子凝集剤(栗田工業株式会社製DP)を0.4重量%添加し、30分300rpmで撹拌して一次溶解したのち、二次希釈水400Lを入れて高分子凝集剤濃度を0.2重量%とした。次いで、溶解槽内の液を渦流ポンプ(吐出量30L/min)で送液し、二次溶解を行った。
【0033】
<結果・考察>
高分子凝集剤を一次希釈水と高濃度(0.4%)にて溶解槽で30分撹拌することにより、半溶解状態となった。この液を二次希釈した後、渦流ポンプを通過させることにより、完全溶解した。これは、渦流ポンプの吐出量を調整することにより、単位液量あたりの羽根に接する回数が増え半溶解状態のゲルの外膜の破壊が促進されるためである。
【0034】
なお、渦流ポンプの吐出側より送液の一部(約50~200%:配管14での送液量に対して)を吸込み側に循環させることにより、溶解槽での溶解時間を短くすることができた。渦流ポンプの吐出液を吸込み側に循環することにより、循環液は複数回羽根に接触することになり、羽根に接する回数が増え半溶解状態のゲルの外膜の破壊が促進されるためである。
【0035】
溶解槽での溶解濃度を高濃度(2倍)にすることにより、溶解槽の溶解時間を長く(例えば2倍に)することができる。
【0036】
[比較実験例1]
<実験条件>
実験例1で用いたものと同じ1m3の溶解槽に0.2kW攪拌機を設置した。希釈水800Lに対し、上記難溶解性高分子凝集剤を0.2重量%添加し、300rpmで撹拌して溶解させようとした。
【0037】
<結果・考察>
攪拌機を120分運転してもゲル状物質が残り、完全な溶解ができなかった。
【符号の説明】
【0038】
3 高分子凝集剤溶解槽
6 送液ポンプ
8 渦流ポンプ
11 ラインミキサ
23 循環配管