(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240423BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20240423BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240423BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01L23/36
B23K26/21 G
B23K26/00 N
H05K7/20 N
(21)【出願番号】P 2020081970
(22)【出願日】2020-05-07
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173598
【氏名又は名称】高梨 桜子
(72)【発明者】
【氏名】伊川 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】岸 正幸
(72)【発明者】
【氏名】金井 俊典
(72)【発明者】
【氏名】平野 智哉
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-061399(JP,A)
【文献】特開2001-191190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
B23K 26/21
B23K 26/00
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を保持するヒートシンクと、
前記ヒートシンクとともに、冷却媒体が流通する空間を形成する空間形成部材と、
前記ヒートシンクと前記空間形成部材とに接触して前記空間を密封する密封部材と、
を備え、
前記ヒートシンクは、前記空間内に収容されるフィンを有するとともに前記被冷却物を保持するベース部材と、溶接が施されることにより当該ベース部材が固着しているとともに前記空間形成部材に締め付けられる被締付部材とを有し、当該ベース部材の材質は、当該被締付部材の材質よりも熱伝導性が大き
く、
前記ベース部材と前記被締付部材とが重ね合わされた状態でレーザ溶接が施され、当該レーザ溶接による溶融部が、当該ベース部材と当該被締付部材の内、レーザ光が照射されない方の部材を貫通しており、当該溶融部は、前記密封部材に対して、前記空間とは反対側に形成されている
冷却装置。
【請求項2】
前記被締付部材の上に前記ベース部材が重ねられた状態でレーザ溶接が施されている
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記レーザ溶接は、前記ベース部材側からレーザ光が照射され、溶融部が前記被締付部材を貫通するように施されている
請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記ベース部材の材質が1000系のアルミニウム又は銅、前記被締付部材の材質が6000系のアルミニウムである
請求項1から3のいずれか1項に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置、構造物、溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載された冷却装置は、四角形のベース板の一方の面の中央部に多数のピン状のフィンがベース板と一体に立設されたヒートシンクを有している。ヒートシンクのベース板のフィン群の周囲がフランジとなされ、フランジの四隅にジャケット取付用の孔が穿設されている。ジャケットは、フィン群を収容する凹部を有する四角形の箱型であり、ジャケットの一つの側壁に孔が穿設され、その側壁に対向する側壁に孔が穿設され、各孔に連通して冷却媒体の導管を接続するジョイントが取り付けられている。また、ジャケットの上面において、凹部の開口縁の近傍に溝が設けられ、この溝にOリングが嵌め込まれている。溝の外側に4つの雌ねじ部が形成されている。そして、被冷却物である半導体モジュールが、伝熱層を介してヒートシンクのベース板にろう付されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷却性能を向上させるにはヒートシンクの材料は熱伝導性の良い材料であることが望ましい。一方で、ヒートシンクは、ジャケットにボルトにて締め付けられることから、ボルトを通すための孔の周囲は締め付け力に耐え得るような強度が必要となる。一般的に、強度が大きいと、熱伝導性が悪くなることから、強度の大きさを維持しつつ、冷却性能を向上させることは難しい。
本発明は、冷却性能を向上させることができる冷却装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、被冷却物を保持するヒートシンクと、前記ヒートシンクとともに、冷却媒体が流通する空間を形成する空間形成部材と、を備え、前記ヒートシンクは、前記空間内に収容されるフィンを有するとともに前記被冷却物を保持するベース部材と、溶接が施されることにより当該ベース部材が固着しているとともに前記空間形成部材に締め付けられる被締付部材とを有し、当該ベース部材の材質は、当該被締付部材の材質よりも熱伝導性が大きい冷却装置である。
ここで、前記被締付部材の上に前記ベース部材が重ねられた状態でレーザ溶接が施されていても良い。
また、前記レーザ溶接は、前記ベース部材側からレーザ光が照射され、溶融部が前記被締付部材を貫通するように施されていても良い。
また、前記ヒートシンクと前記空間形成部材とに接触して前記空間を密封する密封部材をさらに備え、前記溶融部は、前記密封部材に対して、前記空間とは反対側に形成されていても良い。
また、前記ベース部材の材質が1000系のアルミニウム又は銅、前記被締付部材の材質が6000系のアルミニウムであっても良い。
また、他の観点から捉えると、本発明は、材質がアルミニウムの第1部材と、材質がアルミニウム又は銅の第2部材とが重ね合わされた状態でレーザ溶接が施されることにより接合された構造物であって、前記レーザ溶接による溶融部が、前記第1部材及び前記第2部材の内、レーザ光が照射されない方の部材を貫通している構造物である。
また、他の観点から捉えると、本発明は、材質がアルミニウムの第1部材と、材質がアルミニウム又は銅の第2部材とを重ね合わせてレーザ光を照射する溶接方法であって、溶接による溶融部が、前記第1部材及び前記第2部材の内、前記レーザ光が照射されない方の部材を貫通するように施す溶接方法である。
ここで、前記溶融部が、前記レーザ光が照射されない部材を貫通しないように施す場合と比べて、当該レーザ光を照射するレーザヘッドの移動速度を小さくするか、又は、レーザ出力を大きくするか、の少なくともいずれかにより貫通するように施しても良い。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、冷却性能を向上させることができる冷却装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態に係る冷却装置を構成する部品を分解した図である。
【
図3】ベース部材とフランジ部材との重ね合わせ部の溶接部の断面形状の一例を示す図である。
【
図5】冷却装置の第1変形例の一例を示す図である。
【
図6】冷却装置の第2変形例の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る冷却装置1を構成する部品を分解した図である。
図2は、冷却装置1の断面図である。
実施の形態に係る冷却装置1は、フィン112を有するヒートシンク10と、フィン112を収容する凹部21が形成されたジャケット20とを備えている。冷却装置1は、半導体モジュール3を冷却する装置である。ジャケット20、半導体モジュール3は、それぞれ、特許文献1に記載された、ジャケット20、半導体モジュール3と同様であり、同じ形状、機能を有する部材及び部位については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0009】
ヒートシンク10は、ベース部材11と、ベース部材11の周囲に設けられたフランジ部材12とを有している。
ベース部材11は、四角形の板状の板状部111と、板状部111から板面に直交する方向に突出した複数の円柱状のフィン112とを有している。なお、フィン112は、円柱状に限定されない。直方体状であっても良いし、板状であっても良い。
【0010】
フランジ部材12は、中央に直方体状の中央孔121が形成された四角形の板状の部材である。フランジ部材12の四隅には、それぞれ、ボルト28を通すための孔122が形成されている。また、フランジ部材12には、中央孔121の周囲に、上面123から凹んだ凹部124が形成されている。凹部124の底面125に、ベース部材11の板状部111の外周部が載せられた状態で両者はレーザ溶接されることにより接合されている。このレーザ溶接の方法については後で詳述する。
【0011】
ジャケット20には、凹部21、孔22、孔23、溝25、及び、4つの雌ねじ部27が形成されている。そして、ジャケット20は、孔22、孔23、それぞれに取り付けられたジョイント24と、溝25に嵌め込まれたOリング26とを有している。
半導体モジュール3は、絶縁基板30と、配線層31と、半導体素子32と、はんだ層33と、伝熱層34とを有している。そして、半導体モジュール3は、伝熱層34を介してヒートシンク10のベース部材11にろう付されている。
【0012】
以上のように構成された冷却装置1と半導体モジュール3とは、以下のように組み立てられる。
半導体モジュール3が接合されたヒートシンク10を、半導体モジュール3が外部に位置し、フィン112が凹部21に収容されるように、ジャケット20に被せ、ヒートシンク10で凹部21の開口部を閉じる。そして、ヒートシンク10のフランジ部材12に形成された孔122に通したボルト28を、ジャケット20に形成された雌ねじ部27に締め付ける。これにより、ヒートシンク10とジャケット20の凹部21との間に囲まれた空間に冷却媒体が流通する冷却媒体流通空間29が形成される。冷却媒体流通空間29は、ジャケット20の溝25に嵌め込まれたOリング26にて密封される。
【0013】
以下にヒートシンク10について詳述する。
本実施の形態に係るヒートシンク10においては、ベース部材11の材質は、フランジ部材12の材質よりも、熱伝導性が大きい材質が選定されている。これは、ベース部材11の材質の熱伝導性が大きい方が、半導体モジュール3を冷却する性能が高くなるからである。一方、フランジ部材12の材質は、ベース部材11の材質よりも、強度が大きい材質が選定されている。これは、フランジ部材12が、ボルト28にて、ジャケット20に形成された雌ねじ部27に締め付けられるからであり、強度が大きい方が座屈等し難くなるからである。
【0014】
一般的に、熱伝導性が大きい材質は柔らかく強度が小さい。それゆえ、特許文献1のヒートシンクのように、ベース部材11とフランジ部材12とを一体的に構成し、その材質として熱伝導性が大きい材質を選定すると、特に、フランジ部材12のボルト28による締め付け部の強度が小さくなり、破損するおそれがある。一方、ベース部材11とフランジ部材12の材質として、ともに強度が大きい材質を選定すると、熱伝導性が小さくなり、半導体モジュール3を冷却する性能が低下するおそれがある。
【0015】
以上のことに鑑み、本実施の形態に係るヒートシンク10においては、一体的ではなく、ベース部材11とフランジ部材12とにより構成し、ベース部材11の材質として熱伝導性が大きい材質を選定し、フランジ部材12の材質として強度が大きい材質を選定した。ベース部材11の材質は、純アルミニウムのA1000系や、銅であることを例示することができる。また、フランジ部材12の材質は、アルミニウム合金のA6000系であることを例示することができる。A1000系のアルミニウムとしては、A1100、6000系のアルミニウムとしては、A6063であることを例示することができる。なお、ベース部材11、フランジ部材12は、鍛造にて成形されることを例示することができる。
【0016】
そして、本実施の形態に係るヒートシンク10においては、これら別体のベース部材11とフランジ部材12とをレーザ溶接にて接合している。
次に、ベース部材11とフランジ部材12とをレーザ溶接する手法について説明する。
先ず、フランジ部材12の凹部124の底面125に、ベース部材11の板状部111の外周部を載せる(フランジ部材12とベース部材11とを重ね合わせる)。そして、フランジ部材12とベース部材11とを重ね合わせた状態で、重ね合わせ部のベース部材11に向けて、レーザ装置(不図示)のレーザヘッド(不図示)からレーザ光を照射する。そして、レーザヘッドを、フランジ部材12の中央孔121の周囲の、ベース部材11の板状部111の端部形状に沿って移動させることで、レーザ光を連続的に照射する。重ね合わせ部にレーザ光が照射されることで、照射された位置と略同一位置に溶接部50が形成される。
なお、レーザ装置のレーザ源は特に限定されない。YAGレーザ、CO2レーザ、ファイバレーザ、ディスクレーザ、半導体レーザであることを例示することができる。また、レーザ光の照射方向は、重ね合わせ部の板状部111の板面に対して直交する方向でも良いし、直交方向に対して傾斜した方向であっても良い。
【0017】
図3は、ベース部材11とフランジ部材12との重ね合わせ部の溶接部50の断面形状の一例を示す図である。
レーザ装置のレーザヘッドからベース部材11の板状部111に対してレーザ光が照射され、レーザ光のエネルギーが熱に変換されることによって、重ね合わせ部を構成している、ベース部材11とフランジ部材12の母材自体が溶融し、その後急速に冷却される。この急速加熱・急速冷却により溶接部50に組織変化が生じ、溶接部50は、溶けて固まった溶融部51と、溶接熱により組織変化の生じた熱影響部52とにより構成される。
【0018】
そして、本実施の形態に係るヒートシンク10においては、溶融部51が、フランジ部材12を貫通するようにレーザ溶接が施されている。これは、以下の理由による。レーザ光が照射されることで融解した金属の蒸発がはじまり、これにより形成されたキーホールがフランジ部材12を貫通することで、プルーム等の蒸発金属がフランジ部材12における、ベース部材11が載せられた面とは反対側の面である下面126から外側に発生する。それゆえ、溶接部50に空洞が発生し難くなる。その結果、溶接部50から破断することが抑制され、信頼性の高い溶接部50となる。
【0019】
溶融部51がフランジ部材12を貫通するようにレーザ溶接するためには、単位時間当たりのエネルギー密度を調整すれば良い。単位時間当たりのエネルギー密度が大きくなるのに応じて、より深い溶融部51を成形することが可能となる。単位時間当たりのエネルギー密度を大きくするには、レーザヘッドの移動速度を小さくすれば良い。また、単位時間当たりのエネルギー密度を大きくするには、レーザ出力を大きくすれば良い。それゆえ、レーザヘッドの移動速度を小さくするか、又は、レーザ出力を大きくするか、の少なくともいずれかの手法を採用することで、溶融部51がフランジ部材12を貫通するようにレーザ溶接を施すことが可能となる。
【0020】
図4は、
図2のIV部の拡大図である。
本実施の形態に係るヒートシンク10においては、ベース部材11とフランジ部材12とを溶接した後に、溶接部50における、フランジ部材12の下面126から突出した部分を切削加工により削除している。これにより、ヒートシンク10とジャケット20との合わせ面における両者間に生じる隙間を小さくしている。
【0021】
以上説明したように、冷却装置1は、被冷却物の一例としての半導体モジュール3を保持するヒートシンク10と、ヒートシンク10とともに、冷却媒体が流通する空間の一例としての冷却媒体流通空間29を形成する空間形成部材の一例としてのジャケット20と、を備える。そして、ヒートシンク10は、冷却媒体流通空間29内に収容されるフィン112を有するとともに半導体モジュール3を保持するベース部材11と、溶接が施されることによりベース部材11が固着しているとともにジャケット20に締め付けられる被締付部材の一例としてのフランジ部材12とを有し、ベース部材11の材質は、フランジ部材12の材質よりも熱伝導性が大きい。これにより、例えば、ヒートシンク10のベース部材11とフランジ部材12とを一体的に構成するとともに、フランジ部材12の材質を用いる構成と比較して、半導体モジュール3を保持するベース部材11の熱伝導性が大きくなるので、冷却性能を向上させることができる。
【0022】
冷却装置1においては、フランジ部材12の上にベース部材11が重ねられた状態でレーザ溶接が施されている。そして、レーザ溶接は、ベース部材11側からレーザ光が照射され、溶融部51がフランジ部材12を貫通するように施されている。その結果、溶接部50に空洞が発生し難くなり、溶接部50から破断することが抑制され、信頼性の高い溶接部50とすることが可能となる。
【0023】
また、本実施の形態に係るヒートシンク10においては、溶融部51が、冷却媒体流通空間29を密封する密封部材の一例としてのOリング26よりも外側、言い換えれば、Oリング26に対して冷却媒体流通空間29とは反対側に設けられている。これにより、溶融部51がフランジ部材12を貫通するように施されていることに起因して、溶接部50から発生した異物が冷却媒体流通空間29に入り込むことが抑制される。
【0024】
また、本実施の形態に係る冷却装置1においては、ヒートシンク10を、熱伝導性が大きい材質を用いて成形されたベース部材11と、強度が大きい材質を用いて成形されたフランジ部材12とにより構成している。そして、この構成を、ベース部材11とフランジ部材12とをレーザ溶接により接合することで実現している。
【0025】
なお、本実施の形態に係るヒートシンク10においては、フランジ部材12の上にベース部材11が重ねられた状態でベース部材11にレーザ光が照射されているが、特にかかる態様に限定されない。ベース部材11の上にフランジ部材12が重ねられた状態でフランジ部材12にレーザ光が照射されていても良い。かかる場合には、レーザ光による溶融部がベース部材11を貫通していると良い。
【0026】
また、冷却性能を向上させる観点からは、ベース部材11とフランジ部材12との接合は、レーザ溶接以外の他の溶接であっても良い。また、ベース部材11とフランジ部材12との接合は、圧着、接着、ろう付等の溶着であっても良い。
また、フランジ部材12の上にベース部材11を重ねた状態でレーザ溶接する場合には、溶融部51がフランジ部材12を貫通していなくても良い。ただし、ベース部材11とフランジ部材12との溶融部51がフランジ部材12を貫通していることで、溶接部50に空洞が発生し難くなっており、信頼性の高い溶接部50となる。
【0027】
これは、本発明者等の鋭意検討の結果、重ね合わされた2つの部材であって材質がアルミニウム又は銅の2つの部材のレーザ溶接における溶融部が、レーザ光が照射されない方の部材を貫通するようにレーザ溶接を施す方が、貫通しないようにレーザ溶接を施すよりも、溶接部に空洞が発生し難くなり、信頼性が高くなる、との知見を得たことによるものである。
【0028】
そして、このことは、第1部材(例えばフランジ部材12)の上に、第2部材(例えばベース部材11)を重ね合わせ、第2部材に対してレーザ光を照射する場合に、第1部材の方が第2部材よりも強度が大きい材質、第2部材の方が第1部材よりも熱伝導性が大きい材質である場合に限定されない。例えば、第1部材と第2部材とは同じ材質であっても良い。また、第2部材の方が第1部材よりも強度が大きい材質、第1部材の方が第2部材よりも熱伝導性が大きい材質であっても良い。
例えば、第1部材の材質が6000系のアルミニウムで、第2部材の材質が3000系のアルミニウムであっても良い。また、第1部材と第2部材の材質がともに、6000系のアルミニウムであっても良い。
【0029】
以上、説明したように、上記溶接方法は、材質がアルミニウムの第1部材(例えばフランジ部材12)と、材質がアルミニウム又は銅の第2部材(例えばベース部材11)とを重ね合わせてレーザ光を照射する溶接方法であって、溶接による溶融部が、第1部材及び第2部材の内、レーザ光が照射されない方の部材(例えばフランジ部材12)を貫通するように施す。これにより、貫通しないようにレーザ溶接を施すよりも、信頼性が高い溶接部とすることができる。
【0030】
そして、溶融部が、レーザ光が照射されない部材(例えばフランジ部材12)を貫通しないように施す場合と比べて、当該レーザ光を照射するレーザヘッドの移動速度を小さくするか、又は、レーザ出力を大きくするか、の少なくともいずれかにより貫通するように施すと良い。これにより、確度高く、溶融部が、レーザ光が照射されない部材を貫通するように溶接を施すことが可能となる。
【0031】
また、上述した冷却装置1は、材質がアルミニウムの第1部材(例えばフランジ部材12)と、材質がアルミニウム又は銅の第2部材(例えばベース部材11)とが重ね合わされた状態でレーザ溶接が施されることにより接合された構造物であって、レーザ溶接による溶融部51が、第1部材及び第2部材の内、レーザ光が照射されない方の部材(例えばフランジ部材12)を貫通している構造物の一例である。この冷却装置1においては、レーザ光が照射されない方の部材(例えばフランジ部材12)を貫通しないようにレーザ溶接を施すよりも、信頼性が高い溶接部(例えば溶接部50)とすることができる。
【0032】
(変形例)
図5は、冷却装置1の第1変形例の一例を示す図である。
上述したヒートシンク10においては、ベース部材11とフランジ部材12との溶接部50における、フランジ部材12の下面126から突出した部分である突出部53が削除されているが、特にかかる態様に限定されない。
図5に示すように、突出部53を削除せずに、ジャケット20に、突出部53を収容する溝40を形成し、突出部53とジャケット20とが干渉しないようにしても良い。なお、溝40は、切削加工にて形成しても良いし、鍛造にて形成しても良い。
【0033】
図6は、冷却装置1の第2変形例の一例を示す図である。
図6に示すように、突出部53が生じることを考慮して、フランジ部材12に、下面126から凹み、突出部53を収容する溝127を形成することで、突出部53とジャケット20とが干渉しないようにしても良い。このように、フランジ部材12に溝127を形成することで、レーザ溶接を施す部位のフランジ部材12の厚さを薄くすることができる。これにより、溶融部51がフランジ部材12を貫通するようにレーザ溶接を施す際の単位時間当たりのエネルギー密度を小さくすることが可能となる。その結果、ボルト28による締め付け力に耐え得る強度を確保するために、ボルト28を通すための孔122の周囲の厚さを厚くしつつ、溶融部51がフランジ部材12を貫通するようにレーザ溶接を施すことを容易に実現することができる。
【0034】
なお、上述した実施の形態に係る冷却装置1においては、溶融部51がOリング26よりも外側に設けられている態様であるが、特にかかる態様に限定されない。Oリング26を、溶融部51よりも外側に設けても良い。ボルト28による締め付け部により近い方がヒートシンク10とジャケット20との間の接触圧力が大きいので、ボルト28による締め付け部により近い位置にOリング26を配置することで、Oリング26に生じる力を大きくすることができ、密封性能を向上させることができる。
また、上述した実施の形態に係る冷却装置1の構成に加えて、溶融部51よりも外側に、ヒートシンク10とジャケット20との間をシールするOリングを設けても良い。つまり、溶融部51の内側と外側の両方にOリングを設けても良い。これにより、溶接部50から発生した異物が冷却媒体流通空間29に入り込むことを抑制することができるとともに、密封性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0035】
1…冷却装置、3…半導体モジュール、10…ヒートシンク、11…ベース部材、12…フランジ部材、20…ジャケット、26…Oリング、28…ボルト、29…冷却媒体流通空間、50…溶接部、51…溶融部、52…熱影響部