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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】複合ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20240423BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01B7/00 310
H01B7/18 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020189320
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078569
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 得天
(72)【発明者】
【氏名】渡部 考信
(72)【発明者】
【氏名】小室 隆徳
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105321612(CN,A)
【文献】特開平10-125138(JP,A)
【文献】特開2015-138751(JP,A)
【文献】特開2011-086458(JP,A)
【文献】特開2019-204732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル長手方向に対して互いに平行となるように配置され、互いに接触するように配置された一対の信号線、及び、前記一対の信号線を一括して覆うシールド層を有する信号伝送用ケーブルと、
互いに接触するように配置されると共に、前記シールド層に接触するように配置された一対の電源線と、
前記信号伝送用ケーブルと前記一対の電源線とからなるケーブルコアの周囲を一括して覆う一括編組シールドと、
前記一括編組シールドの周囲を覆うシースと、を備え、
前記一括編組シールドは、前記シールド層の外形に沿うように、前記シールド層に密接して設けられており、
前記一対の信号線は、信号導体の周囲を被覆している絶縁体、を有し、
前記絶縁体は、前記信号導体の周囲を被覆している内層絶縁体と、前記内層絶縁体の周囲を被覆している外層絶縁体と、を有し、
前記シールド層と前記一括編組シールドとの間に、ドレイン線が設けられていない、
複合ケーブル。
【請求項2】
前記一対の電源線は、前記一対の信号線よりも外径が小さく、
前記ケーブルコアは、ケーブル長手方向に垂直な断面視において、前記一対の信号線の中心と前記一対の電源線の中心とを結んだ仮想線が台形をなすように構成されている、
請求項1に記載の複合ケーブル。
【請求項3】
前記シールド層は、前記一対の信号線の配列方向に沿って直線状に伸びる一対の平坦部と、前記一対の平坦部の端部同士を連結する湾曲した一対の湾曲部と、を一体に有し、
前記一対の電源線は、一方の前記平坦部に接触するように配置されており、
前記一括編組シールドは、前記一対の電源線が接触していない側の前記平坦部の全体と、当該平坦部の両側の前記一対の湾曲部の一部とに密接するように設けられている、
請求項1または2に記載の複合ケーブル。
【請求項4】
記外層絶縁体は、前記内層絶縁体よりも融点が低い、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の複合ケーブル。
【請求項5】
前記内層絶縁体は、前記外層絶縁体よりも誘電率が低い、
請求項4に記載の複合ケーブル。
【請求項6】
前記信号伝送用ケーブルは、前記一対の信号線の周囲に螺旋状に巻き付けられた樹脂テープをさらに有し、
前記シールド層は、樹脂層の一方の面に金属層が形成され、前記樹脂層の他方の面に接着層が形成された金属テープからなり、前記接着層が前記樹脂テープ側となるように、前記金属テープを前記樹脂テープの周囲に螺旋状に巻き付けて構成されている、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の複合ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のケーブルとして、電源線と信号線とが複合された複合ケーブルが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-90866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動車等において、自動運転技術の開発が進んでいる。自動運転に使用するカメラの画質は近年大きく向上しており、このようなカメラ用の複合ケーブルには、大容量の画像情報の伝送を可能とする、非常に高い信号伝送速度が求められる。また、自動車に使用されるカメラ用の複合ケーブルは、数メートルにわたって配線されることもあり、長距離にわたって高速信号を伝送可能な良好な高周波特性が求められる。自動運転の安全性確保の観点から、安定した高速伝送が可能な複合ケーブルが求められる。
【0005】
しかしながら、従来の複合ケーブルでは、特に複合ケーブルを曲げた際等に高周波特性が劣化しやすく、さらなる高周波特性の改善が求められていた。
【0006】
そこで、本発明は、高周波特性の改善を図った複合ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、ケーブル長手方向に対して互いに平行となるように配置され、互いに接触するように配置された一対の信号線、及び、前記一対の信号線を一括して覆うシールド層を有する信号伝送用ケーブルと、互いに接触するように配置されると共に、前記シールド層に接触するように配置された一対の電源線と、前記信号伝送用ケーブルと前記一対の電源線とからなるケーブルコアの周囲を一括して覆う一括編組シールドと、前記一括編組シールドの周囲を覆うシースと、を備え、前記一括編組シールドは、前記シールド層の外形に沿うように、前記シールド層に密接して設けられている、複合ケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高周波特性の改善を図った複合ケーブルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係る複合ケーブルの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
図2図1の複合ケーブルの端末処理を説明する斜視図である。
図3】シールド層に用いる金属テープの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る複合ケーブルの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。図1に示す複合ケーブル1は、例えば、自動車に搭載されたカメラ(例えば、自動運転に用いられるカメラ)の配線に用いられるものである。
【0012】
図1に示すように、複合ケーブル1は、一対の信号線21、及び一対の信号線21を一括して覆うシールド層22を有する信号伝送用ケーブル2と、一対の電源線3と、信号伝送用ケーブル2と一対の電源線3とを撚り合わせたケーブルコア4の周囲を一括して覆う一括編組シールド5と、一括編組シールド5の周囲を覆うシース6と、を備えている。
【0013】
(電源線3)
一対の電源線3は、カメラ等への電源供給のために用いられる。一対の電源線3は、導体31と、導体31の周囲を被覆している絶縁体32と、をそれぞれ有している。導体31は、複数本の金属素線を撚り合わせた撚線導体からなる。導体31に用いる金属素線としては、軟銅線や銅合金線を用いることができ、めっきを施したものを用いることもできる。本実施の形態では、外径0.16mmの錫めっき軟銅線からなる金属素線を7本同心撚りして導体31を構成した。絶縁体32としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂組成物からなるものを用いることができる。導体31の外径は、例えば、0.40mm以上0.50mm以下である。2本の電源線3は、ケーブル長手方向に対して互いに平行となるように配置されることがよい。
【0014】
(信号伝送用ケーブル2)
信号伝送用ケーブル2は、カメラからの画像信号等を伝送するために用いられる。信号伝送用ケーブル2は、ケーブル長手方向に対して互いに平行となるように配置され、互いに接触するように配置された一対の信号線21と、一対の信号線21を一括して覆うシールド層22と、を有する。
【0015】
一対の信号線21は、信号導体211と、信号導体211の周囲を被覆している絶縁体212と、をそれぞれ有している。信号導体211は、複数本の金属素線を撚り合わせた撚線導体からなる。信号導体211に用いる金属素線としては、軟銅線や銅合金線を用いることができ、錫めっきや銀めっき等のめっきを施したものを用いることもできる。本実施の形態では、導電性の高い銀めっきを施した銀めっき軟銅線からなる金属素線を用いて信号線21を構成した。また、信号導体211は、撚線導体を断面円形状となるように軽圧縮を行った圧縮撚線導体であってもよい。信号導体211を圧縮撚線導体で構成することで、金属素線間の隙間を小さくして信号導体211の導体抵抗を大幅に抑制し、かつ耐屈曲性に優れた信号導体211を実現できる。信号導体211の導体断面積は、電源線3の導体31の導体断面積と同じか、それよりも大きいとよい。これにより、カメラからの画像信号等の信号を高速伝送することが容易になる。なお、導体31の導体断面積は、例えば0.12mm以上0.20mm以下である。
【0016】
絶縁体212としては、高周波特性を良好に維持するために、できるだけ誘電率が低いものを用いることが望ましい。また、信号線21の特性インピーダンスを所望の値とするように、絶縁体212の厚さを調整するとよい。本実施の形態では、信号線21の特性インピーダンスを50Ω(信号伝送用ケーブル2全体の特性インピーダンスを100Ω)に設定すべく絶縁体212の厚さを調整した。なお、信号伝送用ケーブル2の特性インピーダンスは、100±5Ωとするとよい。特性インピーダンスの測定は、例えば、TDR(Time Domain Reflectometry:時間領域反射)法によって求めることができる。ここで、信号線21の特性インピーダンスを50Ωとするように絶縁体212の厚さを調整すると、絶縁体212が厚く信号線21の外径が大きくなり、既存のコネクタへの接続が困難となるおそれが生じる。そこで、本実施の形態では、絶縁体212を、信号導体211の周囲を被覆している内層絶縁体212aと、内層絶縁体212aの周囲を被覆している外層絶縁体212bと、で構成した。
【0017】
これにより、図2に示すように、端末処理時に、内層絶縁体212aから外層絶縁体212bを剥がし除去することで、ケーブル端末における信号線21の外径を小さくし、内層絶縁体212aが露出した部分をコネクタへ接続させることが可能になるため、既存の汎用性の高いコネクタへの接続を容易とすることが可能になる。すなわち、カメラからの信号を高速伝送するために信号線21の絶縁体212の厚さを厚くして(信号線21の外径が大きくして)特性インピーダンスを高くすることと、信号線21の大径化に合わせてコネクタの構造を変更することなく(例えば、信号導体211を接続するためのコネクタピンの位置を信号線21の大径化に合わせて変更することをせずに)ケーブル端末をコネクタに接続することとの両立が可能になる。内層絶縁体212aの外径は、電源線3の外径以上であるとよい。例えば、内層絶縁体212aの外径は、電源線3の外径の1倍以上1.5倍以下であるとよい。
【0018】
内側絶縁体212aは、充実押出またはチューブ押出で形成されるとよい。特に、チューブ押出で内層絶縁体212aを形成することで、信号導体211から内側絶縁体212aを剥離しやすくなり、ケーブル端末にコネクタ等を接続するための端末処理の作業性が向上する。また、チューブ押出で内層絶縁体212aを形成することで、複合ケーブル1が屈曲や捻回されたときに信号導体211が内側絶縁体212aの内部で動きやすくなるため、屈曲や捻回に対する耐性が向上する。
【0019】
外側絶縁体212bは、チューブ押出で形成されるとよい。これにより、外側絶縁体212bの内面が内側絶縁体212aの外面に接着しにくくなるため、ケーブル端末にコネクタ等を接続するための端末処理をする際に、内側絶縁体212aの外面から外側絶縁体212bを剥離しやすくなり、端末処理の作業性が向上する。
【0020】
外層絶縁体212bの形成時(押出成形時)に外層絶縁体212bが内層絶縁体212aに溶着してしまわないように、外層絶縁体212bに用いる樹脂としては、内層絶縁体212aに用いる樹脂よりも融点が低いものを用いるとよい。内層絶縁体212aに用いる樹脂の融点としては、例えば、250℃以上330℃以下である。外層絶縁体212bに用いる樹脂の融点としては、例えば、90℃以上170℃以下である。また、高周波特性を維持するために、より信号導体211に近い内層絶縁体212aは、外層絶縁体212bよりも誘電率が低いとよい。内層絶縁体212aの誘電率は、例えば、2.0以上2.8以下(より好ましくは、2.1以上2.6以下)である。さらに、高周波特性を維持するために、内層絶縁体212aの厚さは、外層絶縁体212bの厚さよりも厚いとよい。内層絶縁体212aの厚さは、例えば、外層絶縁体212bの厚さの1.5倍以上2.0倍以下(より好ましくは、1.6倍以上1.7倍以下)である。本実施の形態では、内層絶縁体212aとして、誘電率が低いFEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)やPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ素樹脂を用いた。また、外層絶縁体212bとして、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)等の比較的誘電率が低く、かつフッ素樹脂からなる内層絶縁体212aと溶着しにくい樹脂を用いた。
【0021】
また、内側絶縁体212a、外側絶縁体212bは、ともに伸びが150%以上であるとよい。これにより、2本の信号線21同士がケーブル長手方向に対して平行でかつ互いに接触するように配置されていて屈曲時に2本の信号線21同士が動きにくい構造とされていても、屈曲や捻回によって内側絶縁体212aや外側絶縁体212bに割れが発生しにくくなる。これにより、信号伝送用ケーブル2は、屈曲等を伴った配線がなされても安定した信号伝送を行うことができる。
【0022】
上述のように、本実施の形態では、信号線21の特性インピーダンスを所望の値に設定するために、信号線21の外径が比較的大きくなっている。そのため、電源線3は、信号線21よりも外径が小さい。より具体的には、電源線3の外径は、信号線21の外径の0.5倍以上1倍未満である。本実施の形態では、信号線21の外径を1.50mm以上1.80mm以下とし、電源線3の外径を1.00mm以上1.50mm未満とした。
【0023】
一対の信号線21は、互いに平行となるように配置され、互いに接触するように配置されている。つまり、信号伝送用ケーブル2は、2心平行ケーブルである。そして、一対の信号線21の周囲には、PET(ポリエチレンテレフタレート)等からなる樹脂テープが螺旋状に巻き付けられている。樹脂テープ23の周囲には、金属テープを螺旋状に巻き付けてシールド層22が構成されている。
【0024】
図3に示すように、シールド層22を構成する金属テープは、樹脂層221の一方の面に金属層222が形成され、樹脂層221の他方の面に接着層223が形成されている。本実施の形態では、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる樹脂層221の一方の面にAL(アルミニウム)からなる金属層222が形成され、樹脂層221の他方の面に熱硬化性樹脂からなる接着層223が形成されたAL/PETテープからなる金属テープを用いた。ただし、これに限らず、銅からなる金属層222を用いた金属テープを用いてもよい。また、樹脂層221がPET以外のポリエステル樹脂で構成された金属テープを用いてもよい。
【0025】
シールド層22は、接着層223が樹脂テープ23側となるように(金属層222が一括編組シールド5側となるように)、金属テープを樹脂テープ23の周囲に螺旋状に巻き付けて構成されている。金属テープを樹脂テープ23の周囲に巻き付けた後、加熱することで、金属テープ同士、及び金属テープと樹脂テープ23とが接着層223を構成する熱硬化性樹脂により接着される。このように構成することで、一対の信号線21をより強固に保持することが可能になる。また、シールド層22が信号線21から剥がれてしまうことを抑制でき、シールド層22の剥がれによる信号線21の位置ずれや、屈曲時の信号線21とシールド層22間の距離の変動を抑制して、高周波特性の劣化を抑制できる。また、シールド層22が直接信号線21に接着されない構成であるため、端末処理時に信号線21からシールド層22を容易に除去することが可能になり、端末処理時の作業性が向上する。
【0026】
シールド層22を構成する金属テープの巻き付け方向は、下地となる樹脂テープ23の巻き付け方向と異なる方向であることが好ましい。これにより、シールド層22を構成する金属テープと樹脂テープ23とを強固に接着することが可能になり、平行に配置された2本の信号線21の位置が屈曲や捻回によって変化しにくくなる。また、信号線21同士が捩れにくくもなるので、信号線21間の距離を一定にすることができ、ケーブル長手方向にわたって特性インピーダンスを安定させることができる。なお、金属テープや樹脂テープ23の巻き付け方向とは、信号伝送用ケーブル2の一端から見たときに、他端から一端にかけて金属テープや樹脂テープ23が回転している方向である。
【0027】
シールド層22は、ケーブル長手方向に垂直な断面視で略長円形状(角丸長方形状)に形成されており、一対の信号線21の配列方向に沿って直線状に伸びる一対の平坦部22aと、一対の平坦部22aの端部同士を連結する湾曲した一対の湾曲部22bと、を一体に有している。
【0028】
(ケーブルコア4)
ケーブルコア4は、信号伝送用ケーブル2と一対の電源線3とを一括して撚り合わせて(リジッド撚りして)構成されている。つまり、信号伝送用ケーブル2と電源線3とは、同じピッチで撚り合わされている。ケーブルコア4の撚り合わせ方向は、シールド層22を構成する金属テープの巻き付け方向と同じ方向であるとよい。これにより、ケーブルコア4の撚り合わせによってシールド層22を構成する金属テープが開いてしまう(ほどけてしまう)ことを抑制でき、安定した高周波特性を得ることが可能になる。なお、ケーブルコア4の撚り合わせ方向とは、ケーブルコア4の一端から見て、他端から一端にかけて信号伝送用ケーブル2及び電源線3が回転している方向である。
【0029】
一対の電源線3は、互いに平行となるように配置され、互いに接触するように配置されると共に、信号伝送用ケーブル2におけるシールド層22の外面にそれぞれ接触するように配置されている。つまり、ケーブル周方向において、一方の電源線3、他方の電源線3、信号伝送用ケーブル2が順次配置されており、両電源線3と信号伝送用ケーブル2とが互いに接触している。一対の電源線3のそれぞれは、シールド層22における一方の平坦部22aに接触するように配置されている。なお、2本の電源線3は撚り合わされていてもよいが、複合ケーブル1の小径化や、ケーブルコア4内での信号伝送用ケーブル2の位置を固定させる(動きにくくする)こと等の観点からは、ケーブル長手方向に対して2本の電源線3が互いに平行となるように配置されていることがよい。また、2本の電源線3は、絶縁体32が一括編組シールド5と接触するように配置されている。
【0030】
また、一対の電源線3の配列方向は、一対の信号線21の配列方向とほぼ等しくされ、一対の電源線3の中間位置(電源線3同士の接触位置)と一対の信号線21の中間位置(信号線21同士の接触位置)とが、電源線3や信号線21の配列方向に対して垂直方向に並ぶように配置されている。これにより、ケーブルコア4は、ケーブル長手方向に垂直な断面視において、一対の信号線21の中心と一対の電源線3の中心とを結んだ仮想線Vが台形をなすように構成されている。
【0031】
(一括編組シールド5)
一括編組シールド5は、ケーブルコア4の周囲を一括して覆うように設けられている。一括編組シールド5は、金属素線を編み組みして構成されている。一括編組シールド5に用いる金属素線としては、軟銅線、銅合金線、アルミニウム線、アルミニウム合金線等を用いることができる。また、一括編組シールド5に用いる金属素線としては、糸状体の周囲に銅箔を螺旋状に巻き付けた銅箔糸を用いることも可能である。
【0032】
本実施の形態に係る複合ケーブル1では、一括編組シールド5は、信号伝送用ケーブル2のシールド層22の外形に沿うように、シールド層22に対して密接して設けられている。より詳細には、一括編組シールド5は、その内面が、シールド層22における一対の電源線3が接触していない側の平坦部22aの全体の外面(金属層222の表面)と、当該平坦部22aの両側の一対の湾曲部22bの一部の外面(金属層222の表面)とにわたって、隙間無く密接するように設けられている。一括編組シールド5は、少なくとも、湾曲部22bの外面の半分以上と密接しているとよい。なお、ここでいう「密接」とは、隙間無く接触している状態に加え、後述する本発明の効果が満たされる範囲内で、多少の隙間が存在する場合も含まれる。すなわち、シールド層22と一括編組シールド5との間に、本発明の効果を阻害しない程度の僅かな隙間が存在しても許容される。
【0033】
また、複合ケーブル1では、シールド層22と一括編組シールド5との間に、ドレイン線が設けられていない。これは、シールド層22と一括編組シールド5との間にドレイン線を設けると、シールド層22と一括編組シールド5との間に隙間ができ、シールド層22と一括編組シールド5との間で電位差が生じたり、ケーブル屈曲時にこの隙間の大きさが変化したりすることにより、高周波特性が不安定になるおそれがあるためである。本実施の形態のように、一括編組シールド5をシールド層22の外形に沿うように接触させて設けることで、屈曲時にも安定した高周波特性を維持することが可能になる。
【0034】
また、一括編組シールド5は、一対の電源線3の外面(絶縁体32の外面)にも接触した状態でケーブルコア4全体を覆う。一括編組シールド5は、ケーブル長手方向に垂直な断面視で略台形状(角を丸めた台形状)に形成されている。一括編組シールド5は、本実施の形態のような略台形状の外形とすることで、作業者が、複合ケーブル1のどの位置に信号伝送用ケーブル2や電源線3が配置しているかを容易に判断可能になる。そのため、端末処理時の作業性を向上させることも可能になる。
【0035】
(シース6)
シース6は、一括編組シールド5の周囲を覆うように設けられている。シース6は、ケーブルコア4や一括編組シールド5を保護する役割を果たすと共に、一括編組シールド5を内方に押さえつけてシールド層22に密接させる役割を果たしている。
【0036】
シース6は、一括編組シールド5の周囲を覆うように形成されており、その内面は、一括編組シールド5の外形に沿うようケーブル長手方向に垂直な断面視で略台形状に形成されている。また、シース6の外面は、ケーブル長手方向に垂直な断面視で略円形状に形成されている。すなわち、シース6の外形(複合ケーブル1の外形)は、そのケーブル長手方向に垂直な断面視で略円形状となっている。シース6は、挿入押出で形成されるとよい。シース6を挿入押出で形成することで、シース6と一括編組シールド5との間に隙間が殆ど無い状態でシース6の外形を円形にすることが可能になる。シース6の厚さは、ケーブル周方向に沿って不均一になっている。具体的には、ケーブル長手方向に垂直な断面視で略台形状の一括編組シールド5における辺に相当する部分(図1で直線状になっている部分)を覆うシース6の厚さが大きく、当該一括編組シールド5における角に相当する部分(図1で湾曲している4角の部分)を覆うシース6の厚さが小さい。
【0037】
このような構造のシース6とすることにより、シース6が一括編組シールド5をケーブルコア4側へ締め付けるような作用が生じるため、複合ケーブル1に屈曲や捻回が生じさせた場合にも一括編組シールド5とシールド層22との間に隙間を生じさせないようにする(一括編組シールド5とシールド層22とが常に接した状態にする)ことができる。その結果、屈曲して配線した場合であっても、高周波特性の劣化が少ない複合ケーブル1を実現することが可能になる。また、本実施の形態のように略円形状の外形とすることで、狭い配線スペースにも配線しやすい複合ケーブル1を実現できる。なお、シース6は、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、チューブ押出で形成した横断面(ケーブル長手方向に垂直な断面視)が略円筒状のものであってもよい。
【0038】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る複合ケーブル1では、ケーブル長手方向に対して互いに平行となるように配置され、互いに接触するように配置された一対の信号線21、及び、一対の信号線21を一括して覆うシールド層22を有する信号伝送用ケーブル2と、互いに接触するように配置されると共に、シールド層22にそれぞれ接触するように配置された一対の電源線3と、信号伝送用ケーブル2と一対の電源線3とからなるケーブルコア4の周囲を一括して覆う一括編組シールド5と、一括編組シールド5の周囲を覆うシース6と、を備え、一括編組シールド5は、シールド層22の外形に沿うように、シールド層22に密接して設けられている。
【0039】
一括編組シールド5とシールド層22とを密接させることで、例えば、一括編組シールド5とシールド層22間にドレイン線を設けた場合のように屈曲時に一括編組シールド5とシールド層22間の隙間の大きさが変化するといった不具合が抑制され、屈曲して配線した場合であっても高周波特性の劣化が少ない複合ケーブル1を実現できる。また、信号伝送用ケーブル2として2心平行ケーブルを用いることで、信号線21同士の長さの差が生じることを抑制し、スキューによる高周波特性の劣化を抑制することができる。
【0040】
また、一対の電源線3同士を接触させ、かつ一対の電源線3それぞれを信号伝送用ケーブル2と接触させる構造とすることにより、例えば、信号伝送用ケーブル2を挟み込むように一対の電源線3を配置した場合と比較して、複合ケーブル1の小径化が可能になり、狭い配線スペースにも容易に配線可能な複合ケーブル1を実現できる。さらに、一括編組シールド5とシールド層22とを密接させることで、複合ケーブル1のさらなる小径化が可能になる。
【0041】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0042】
[1]ケーブル長手方向に対して互いに平行となるように配置され、互いに接触するように配置された一対の信号線(21)、及び、前記一対の信号線(21)を一括して覆うシールド層(22)を有する信号伝送用ケーブル(2)と、互いに接触するように配置されると共に、前記シールド層(22)に接触するように配置された一対の電源線(3)と、前記信号伝送用ケーブル(2)と前記一対の電源線(3)とからなるケーブルコア(4)の周囲を一括して覆う一括編組シールド(5)と、前記一括編組シールド(5)の周囲を覆うシース(6)と、を備え、前記一括編組シールド(5)は、前記シールド層(22)の外形に沿うように、前記シールド層(22)に密接して設けられている、複合ケーブル(1)。
【0043】
[2]前記ケーブルコア(4)は、ケーブル長手方向に垂直な断面視において、前記一対の信号線(21)の中心と前記一対の電源線(3)の中心とを結んだ仮想線(V)が台形をなすように構成されている、[1]に記載の複合ケーブル(1)。
【0044】
[3]前記シールド層(22)は、前記一対の信号線(21)の配列方向に沿って直線状に伸びる一対の平坦部(22a)と、前記一対の平坦部(22a)の端部同士を連結する湾曲した一対の湾曲部(22b)と、を一体に有し、前記一対の電源線(3)は、一方の前記平坦部(22a)に接触するように配置されており、前記一括編組シールド(5)は、前記一対の電源線(3)が接触していない側の前記平坦部(22a)の全体と、当該平坦部(22a)の両側の前記一対の湾曲部(22b)の一部とに密接するように設けられている、[1]または[2]に記載の複合ケーブル(1)。
【0045】
[4]前記一対の信号線(21)は、信号導体(211)と、前記信号導体(211)の周囲を被覆している絶縁体(212)と、を有し、前記絶縁体(212)は、前記信号導体(211)の周囲を被覆している内層絶縁体(212a)と、前記内層絶縁体(212a)の周囲を被覆している外層絶縁体(212b)と、を有し、前記外層絶縁体(212b)は、前記内層絶縁体(212a)よりも融点が低い、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の複合ケーブル(1)。
【0046】
[5]前記内層絶縁体(212a)は、前記外層絶縁体(212b)よりも誘電率が低い、[4]に記載の複合ケーブル(1)。
【0047】
[6]前記信号伝送用ケーブル(2)は、前記一対の信号線(21)の周囲に螺旋状に巻き付けられた樹脂テープ(23)をさらに有し、前記シールド層(22)は、樹脂層(221)の一方の面に金属層(222)が形成され、前記樹脂層(221)の他方の面に接着層(223)が形成された金属テープからなり、前記接着層(223)が前記樹脂テープ(23)側となるように、前記金属テープを前記樹脂テープ(23)の周囲に螺旋状に巻き付けて構成されている、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の複合ケーブル(1)。
【0048】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0049】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、信号線21の絶縁体212が2層で構成されている場合について説明したが、信号線21の絶縁体212が3層以上で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…複合ケーブル
2…信号伝送用ケーブル
21…信号線
211…信号導体
212…絶縁体
212a…内層絶縁体
212b…外層絶縁体
22…シールド層
22a…平坦部
22b…湾曲部
221…樹脂層
222…金属層
223…接着層
23…樹脂テープ
3…電源線
31…導体
32…絶縁体
4…ケーブルコア
5…一括編組シールド
6…シース
V…仮想線
図1
図2
図3