(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
C07F7/18 U
C07F7/18 M
C07F7/18 T
(21)【出願番号】P 2020197919
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 雅人
(72)【発明者】
【氏名】殿村 洋一
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-182815(JP,A)
【文献】特開2019-182787(JP,A)
【文献】特開2010-285405(JP,A)
【文献】特表2015-502357(JP,A)
【文献】特表2013-514875(JP,A)
【文献】国際公開第2020/070984(WO,A1)
【文献】SPERLICH,J. et al.,Zwitterionic bis[vic-arenediolato(2-)][(morpholino)alkyl]silicates: synthesis and structural characterization in solution and in the crystal,Zeitschrift fuer Naturforschung, B: Chemical Sciences,1993年,Vol.48, No.12,pp.1693-706
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子、または酸素、窒
素もしくはケイ素原子を含んでいてもよい炭素数1~10の1価炭化水素基を表し、これらは互いに結合して窒素原子と共に環を形成していてもよい。ただし、R
1およびR
2が共に水素原子である場合は除く。)
で表されるアミン化合物と、下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
3は、炭素数1~8の非置換の2価炭化水素基を表し、R
4およびR
5は、非置換の炭素数1~6の1価炭化水素基を表し、Xは、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子から成る群より選ばれるハロゲン原子を表し、mは、0、1または2の整数である。)
で表されるハロアルキルオルガノキシシラン化合物とを反応させる、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
1~R
5およびmは、前記と同じ意味を表す。)
で表される含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法において、
下記一般式(4)
【化4】
(式中、R
6は、非置換の炭素数2~5の2価炭化水素基を表し、Aは、単結合、-NH-、または-NCH
3-を表す。)
で表される含窒素化合物を、前記一般式(2)で表されるハロアルキルオルガノキシシラン化合物中のハロゲン原子1モルに対して0.1モル以上1モル未満の量で用い、反応系内で生成した前記一般式(1)で表されるアミン化合物のハロゲン化水素塩と、前記一般式(4)で表される含窒素化合物のハロゲン化水素塩との混合物を、
アルコール化合物、アルコール化合物と(イソ)パラフィン化合物との混合溶媒、アルコール化合物と芳香族炭化水素化合物との混合溶媒、アセトニトリル、酢酸エチル、およびジメチルホルムアミドから選ばれる溶媒の存在下で液状化させて前記式(3)で表される含窒素オルガノキシシラン化合物と分離させ、前記混合物を除去する工程を備える含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記
(イソ)パラフィン化合物が、
ヘキサンまたはイソオクタンである請求項1記載の含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記
芳香族炭化水素化合物が、
トルエンである請求項
1記載の含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(1)で表されるアミン化合物が、前記一般式(2)で表されるハロアルキルオルガノキシシラン化合物中のハロゲン原子1モルに対して、1.4モル以上用いられる請求項1~3のいずれか1項記載の含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法。
【請求項5】
前記一般式(4)で表される含窒素化合物が、前記一般式(2)で表されるハロアルキルオルガノシラン化合物中のハロゲン原子1モルに対して、0.6モル以上1モル未満用いられる請求項1~4のいずれか1項記載の含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法。
【請求項6】
前記一般式(4)で表される含窒素化合物が、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、または1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エンである請求項1~5のいずれか1項記載の含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含窒素オルガノキシシラン化合物は、シランカップリング剤、表面処理剤、樹脂添加剤、塗料添加剤、接着剤等として有用である。
このような含窒素オルガノキシシラン化合物としては、アミノプロピルトリメトキシシラン等の1級アミノ基を有するオルガノキシシラン化合物、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等の2級アミノ基を有するオルガノキシシラン化合物、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン等の3級アミノ基を有するオルガノキシシラン化合物等が知られている。
【0003】
含窒素オルガノキシシラン化合物は、一般的にアミン化合物とハロアルキルオルガノキシシラン化合物との反応によって製造される。この際、原料として用いたアミン化合物のハロゲン化水素塩が副生する。多くの場合、このハロゲン化水素塩は固体であることから、目的とする含窒素オルガノキシシラン化合物を単離するには、アミン化合物のハロゲン化水素塩を除去しなければならない。ハロゲン化水素塩の除去方法としては、ろ過、水で溶解して分液除去等の方法が挙げられる。
【0004】
しかし、ろ過によって分離する方法の場合、目的物である含窒素オルガノキシシラン化合物は、アミン化合物のハロゲン化水素塩に吸着していることから、残渣を繰り返し溶媒で洗浄しなければ目的物を収率良く得ることができず、工程が複雑化する。
一方、ハロゲン化水素塩を水で溶解して分液除去する方法の場合、上記のような洗浄工程がないために、工程を簡略化できる。しかし、目的とする含窒素オルガノキシシラン化合物は、分子内に加水分解性シリル基を有しており、水と接触すると容易に加水分解されてしまう。このため、アミン化合物のハロゲン化水素塩を水で溶解して分液除去する方法では、目的とする含窒素オルガノキシシラン化合物を収率良く得られない。
【0005】
上記の問題を解決するために、水を用いずにアミン化合物のハロゲン化水素塩を液状化させ、分液させる方法が報告されている。目的とする含窒素オルガノキシシラン化合物を含む層と、液状化したハロゲン化水素塩を含む層に分離し、ハロゲン化水素塩を分液除去する方法が種々提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、アミン化合物とハロアルキルオルガノキシシラン化合物を非プロトン性極性溶媒存在下、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(以下、「DBU」ともいう。)等の3級アミン化合物の存在下で反応させ、含窒素オルガノキシシラン化合物を製造する方法が記載されている。DBUは、原料であるアミン化合物よりも塩基性が高いため、生じたハロゲン化水素はDBUとハロゲン化水素塩を形成する。
【0007】
また、特許文献2では、NH構造を有する含窒素オルガノキシシラン化合物と、Si-Cl構造を有するクロロシラン化合物とをアセトニトリルとDBU等の3級アミン存在下において反応させて、NHをN-Si構造へと変換する方法が記載されている。この反応でも、DBUは、原料である含窒素オルガノキシシラン化合物よりも塩基性が高いため、生じたハロゲン化水素はDBUとハロゲン化水素塩を形成する。さらに、この反応で生じたDBUのハロゲン化水素塩がアセトニトリルに溶解し、分液除去できることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-182787号公報
【文献】特開2018-070488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1および2の方法では、DBUをクロロシラン化合物やハロアルキルオルガノキシシラン化合物に対して過剰に用いることから、生成物の他にDBUが残存してしまい、目的物の単離や精製が難しく、その純度が低くなるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、ハロゲン化水素塩を分液除去でき、この分液除去に用いる塩基をハロアルキルオルガノキシシラン化合物に対して過剰に用いる必要がなく、単離精製が容易な含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、アミン化合物とハロアルキルオルガノキシシラン化合物との反応において、特定の含窒素化合物を所定量用いることで、副生物であるアミンハロゲン化水素塩の除去が容易となり、純度の良好な目的物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、
1. 下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子、または酸素、窒素、硫黄もしくはケイ素原子を含んでいてもよい炭素数1~10の1価炭化水素基を表し、これらは互いに結合して窒素原子と共に環を形成していてもよい。ただし、R
1およびR
2が共に水素原子である場合は除く。)
で表されるアミン化合物と、下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
3は、炭素数1~8の非置換の2価炭化水素基を表し、R
4およびR
5は、非置換の炭素数1~6の1価炭化水素基を表し、Xは、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子から成る群より選ばれるハロゲン原子を表し、mは、0、1または2の整数である。)
で表されるハロアルキルオルガノキシシラン化合物とを反応させる、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
1~R
5およびmは、前記と同じ意味を表す。)
で表される含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法において、
下記一般式(4)
【化4】
(式中、R
6は、非置換の炭素数2~5の2価炭化水素基を表し、Aは、単結合、-NH-、または-NCH
3-を表す。)
で表される含窒素化合物を、前記一般式(2)で表されるハロアルキルオルガノキシシラン化合物中のハロゲン原子1モルに対して0.1モル以上1モル未満の量で用い、反応系内で生成した前記一般式(1)で表されるアミン化合物のハロゲン化水素塩と、前記一般式(4)で表される含窒素化合物のハロゲン化水素塩との混合物を、溶媒の存在下で液状化させて前記式(3)で表される含窒素オルガノキシシラン化合物と分離させ、前記混合物を除去する工程を備える含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法、
2. 前記溶媒が、プロトン性極性溶媒である1の含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法、
3. 前記プロトン性極性溶媒が、アルコール化合物である2の含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法、
4. 前記一般式(1)で表されるアミン化合物が、前記一般式(2)で表されるハロアルキルオルガノキシシラン化合物中のハロゲン原子1モルに対して、1.4モル以上用いられる1~3のいずれかの含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法、
5. 前記一般式(4)で表される含窒素化合物が、前記一般式(2)で表されるハロアルキルオルガノシラン化合物中のハロゲン原子1モルに対して、0.6モル以上1モル未満用いられる1~4のいずれかの含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法、
6. 前記一般式(4)で表される含窒素化合物が、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、または1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エンである1~5のいずれかの含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の含窒素オルガノキシシラン化合物の製造方法では、目的物を含む層と、ハロゲン化水素塩を含む2層に分離するため、反応により生じたアミン化合物のハロゲン化水素塩を効率的に除去できる。
また、反応系を分液させるために必要な化学物質が反応液中に残存しないため、所望の含窒素オルガノキシシラン化合物の単離および精製が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の下記一般式(3)
【0015】
【0016】
で表される含窒素オルガノキシシラン化合物(以下、「含窒素オルガノキシシラン化合物(3)」という。)の製造方法は、下記一般式(1)
【0017】
【0018】
で表されるアミン化合物(以下、「アミン化合物(1)」という。)と、下記一般式(2)
【0019】
【0020】
で表されるハロアルキルオルガノキシシラン化合物(以下、「ハロアルキルオルガノキシシラン化合物(2)」という。)を反応させる上記含窒素オルガノキシシラン化合物(3)の製造方法において、下記一般式(4)
【0021】
【0022】
で表される含窒素化合物(以下、「含窒素化合物(4)」という。)を、上記ハロアルキルオルガノキシシラン化合物(2)中のハロゲン原子1モルに対して0.1モル以上1モル未満の量で用い、反応系内で生成したアミン化合物(1)のハロゲン化水素塩と、含窒素化合物(4)のハロゲン化水素塩との混合物を、溶媒の存在下で液状化させて含窒素オルガノキシシラン化合物(3)と分離させ、ハロゲン化水素塩の混合物を除去する工程を備えるものである。
【0023】
上記一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、または酸素、窒素、硫黄もしくはケイ素原子を含んでいてもよい炭素数1~10、好ましくは2~9、より好ましくは2~5の1価炭化水素基を表すが、R1およびR2は共に水素原子となることはない。
R1およびR2の1価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-へプチル、n-オクチル、デシル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、テキシル、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;ビニル、アリル(2-プロペニル)、1-プロペニル、ブテニル、ペンテニル、オクテニル基等のアルケニル基;フェニル、トリル基等のアリール基;ベンジル、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
なお、これら1価炭化水素基の水素原子の一部または全部は、メチル基、エチル基またはプロピル基等の炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよい。
【0024】
また、R1およびR2の1価炭化水素基は、酸素、窒素、硫黄またはケイ素原子を含んでいてもよい。
このような1価炭化水素基の具体例としては、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、エトキシエチル、メトキシプロピル基等のオキシアルキル基;メルカプトエチル、メルカプトプロピル、メチルチオエチル、メチルチオプロピル基等のチオアルキル基;アミノエチル、アミノプロピル基等のアミノアルキル基;2,2,6,6-テトラメチルピペリジル、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル基等の環状アミノ基を有するアルキル基;トリメトキシシリルメチル、トリメトキシシリルプロピル、トリメトキシシリルオクチル、トリエトキシシリルメチル、トリエトキシシリルプロピル、トリエトキシシリルオクチル、メチルジメトキシシリルプロピル、ジメチルメトキシシリルプロピル基等のアルコキシシリルアルキル基等が挙げられる。
【0025】
また、R1とR2とが互いに結合する窒素原子と共に環を形成して、下記一般式(5)で表される環構造を形成していてもよい。
【0026】
【0027】
一般式(5)において、R1とR2とが環を形成した場合の環中に含まれる炭素数は、好ましくは3~6である。
このような環構造としては、ピペリジン環、ピロリジン環、ピペラジン環、メチルピペラジン環、モルホリン環等が挙げられる。
【0028】
アミン化合物(1)の具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、アリルアミン、ヘキセニルアミン、オクテニルアミン、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、トリメトキシシリルプロピルアミン、トリエトキシリルプロピルアミン、メチルジメトキシシリルプロピルアミン、メチルジエトキシシリルプロピルアミン、N-トリメトキシシリルプロピル-エチレンジアミン、N-トリエトキシシリルプロピル-エチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N-アミノエチルピペラジン等の1級アミン化合物;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン等の2級アミン化合物;ピペリジン、ピロリジン、ピペラジン、メチルピペラジン、モルホリン等の環状2級アミン化合物等が挙げられる。
【0029】
上記一般式(2)において、R3は、炭素数1~8、好ましくは1~5、より好ましくは1~3の非置換の2価炭化水素基を表す。
R3の2価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン基等の直鎖状アルキレン基;メチルエチレン(プロピレン)、メチルトリメチレン等の分岐鎖状アルキレン基;シクロヘキシレン、メチレンシクロヘキシレンメチレン等の環状アルキレン基;プロペニレン、ブテニレン、ヘキセニレン、オクテニレン等の直鎖状アルケニレン基;イソプロペニレン、イソブテニレン基等の分岐状アルケニレン基;フェニレン等のアリーレン基;メチレンフェニレン、メチレンフェニレンメチレン等のアラルキレン基等が挙げられる。
これらの中でも、原料の調達容易性の観点から、直鎖状アルキレン基が好ましく、炭素数1~3の直鎖状アルキレン基がより好ましい。
【0030】
R4およびR5は、炭素数1~6、好ましくは1~3の非置換の1価炭化水素基を表す。
R4およびR5の1価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、テキシル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基等が挙げられる。
【0031】
Xは、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子であり、mは、0、1または2の整数である。
【0032】
ハロアルキルオルガノキシシラン化合物(2)の具体例としては、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルメチルジメトキシシラン、クロロプロピルジメチルメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、クロロプロピルメチルジエトキシシラン、クロロプロピルジメチルエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルメチルジメトキシシラン、クロロメチルジメチルメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルジメチルエトキシシラン、クロロオクチルトリメトキシシラン、クロロオクチルメチルジメトキシシラン、クロロオクチルジメチルメトキシシラン、クロロオクチルトリエトキシシラン、クロロオクチルメチルジエトキシシラン、クロロオクチルジメチルエトキシシラン等のクロロアルキルアルコキシシラン化合物;ブロモプロピルトリメトキシシラン、ブロモプロピルメチルジメトキシシラン、ブロモプロピルジメチルメトキシシラン、ブロモプロピルトリエトキシシラン、ブロモプロピルメチルジエトキシシラン、ブロモプロピルジメチルエトキシシラン等のブロモアルキルアルコキシシラン化合物;ヨードプロピルトリメトキシシラン、ヨードプロピルメチルジメトキシシラン、ヨードプロピルジメチルメトキシシラン、ヨードプロピルトリエトキシシラン、ヨードプロピルメチルジエトキシシラン、ヨードプロピルジメチルエトキシシラン等のヨードアルキルアルコキシシラン化合物等が挙げられる。
【0033】
一般式(4)において、R6は、炭素数2~5の非置換の2価炭化水素基を表し、Aは、単結合、-NH-または-NCH3-を表す。
R6の2価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン基等の直鎖状アルキレン基;メチルエチレン、メチルトリメチレン基等の分岐状アルキレン基;シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン基等の環状アルキレン基;プロペニレン、ブテニレン、ペンテニレン等の直鎖状アルケニレン基;イソプロペニレン、イソブテニレン基等の分岐状アルケニレン基等が挙げられる。
これらの中でも、原料の調達容易性の観点から、直鎖状アルキレン基が好ましい。
【0034】
含窒素化合物(4)の具体例としては、DBU、1,5-ジアザビシクロ-[4,3,0]ノナ-5-エン(以下、「DBN」という。)、1,5,7-トリアザビシクロ[4,4,0]デカ-5-エン(TBD)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4,4,0]デカ-5-エン(MTBD)等が挙げられる。
【0035】
本発明において、含窒素化合物(4)の使用量は、ハロアルキルオルガノキシシラン化合物(2)中に含まれるハロゲン原子1モルに対して、0.1モル以上1モル未満であるが、好ましくは0.5モル以上1モル未満、より好ましくは0.6~0.8モルである。使用量が0.1モル未満であると、ハロゲン化水素塩の溶媒に対する溶解性が悪くなる一方、使用量が1モル以上であると、含窒素化合物(4)が残存してしまい、目的物である含窒素オルガノキシシラン化合物(3)を高純度で単離することが困難となる。
なお、本発明の製造方法を実施する際に、含窒素化合物(4)は、アミン化合物(1)とハロアルキルオルガノキシシラン化合物(2)と同時に配合しても、アミン化合物(1)とハロアルキルオルガノキシシラン化合物(2)との反応後、得られた含窒素オルガノキシシラン化合物(3)に配合してもよい。
【0036】
本発明の含窒素オルガノキシシラン化合物(3)の製造方法では、反応により生じたアミン化合物(1)のハロゲン化水素塩と、含窒素化合物(4)のハロゲン化水素塩との混合物を溶解させるために溶媒を用いる。
用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール化合物や、液体アンモニア等のプロトン性極性溶媒;アセトニトリル、アセトン、ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン、炭酸プロピレン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられ、これらの溶媒は、それぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、反応により生じたアミン化合物(1)のハロゲン化水素塩と含窒素化合物(4)のハロゲン化水素塩との混合物の溶解性が高く、得られる液状化物の取り扱いの容易さの観点から、アルコール化合物が好ましく、メタノール、エタノールがより好ましい。
溶媒の使用量は特に限定されないが、ハロアルキルオルガノキシシラン化合物(2)中に含まれるハロゲン原子1モルに対して、好ましくは5~200g、より好ましくは10~100gである。
【0037】
また、上記溶媒と併用して、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン、イソドデカン等の(イソ)パラフィン化合物;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物を用いてもよい。
これらの化合物を用いることによって、含窒素オルガノキシシラン化合物(3)を含む層の極性が下がり、アミン化合物(1)のハロゲン化水素塩と含窒素化合物(4)のハロゲン化水素塩との混合物が溶解している層と分層しやすくなる。
【0038】
本発明の製造方法において、アミン化合物(1)およびハロアルキルオルガノキシシラン化合物(2)の配合比は特に限定されないが、ハロアルキルオルガノキシシラン化合物(2)中に含まれるハロゲン原子1モルに対して、アミン化合物(1)が好ましくは1~10モル、より好ましくは1~7モル、より一層好ましくは1.4~5モルである。
【0039】
上記反応の反応温度は特に限定されないが、好ましくは70~200℃、より好ましくは100~150℃である。
また、反応時間も特に限定されないが、好ましくは1~40時間、より好ましくは1~20時間である。
なお、上記反応は、ハロアルキルオルガノキシシラン化合物(2)および含窒素オルガノキシシラン化合物(3)の加水分解を防ぐために、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0040】
上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。
ここで用いる溶媒は、反応により生じるアミン化合物(1)のハロゲン化水素塩と含窒素化合物(4)のハロゲン化水素塩との混合物を溶解させる際に用いる溶媒と同様の溶媒が挙げられる。それらの溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよく、反応の際に使用しても、反応後に添加してもよい。
【0041】
上記反応は、無触媒でも進行するが、触媒を用いることで、反応時間を短縮することもできる。
触媒の具体例としては、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド等のテトラアルキルアンモニウム塩;テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラエチルホスホニウムブロミド、テトラプロピルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムヨージド、トリブチルメチルホスホニウムヨージド等のテトラアルキルホスホニウム塩等が挙げられる。
触媒の配合量は特に限定されないが、触媒の添加の効果または副反応の観点から、ハロアルキルオルガノキシシラン化合物(2)中に含まれるハロゲン原子1モルに対して、好ましくは0.001~0.1モル、より好ましくは0.005~0.1モルである。
【0042】
以上説明した一連の反応で得られる含窒素オルガノキシシラン化合物(3)の具体例としては、メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、オクチルアミノプロピルトリメトキシシラン、デシルアミノプロピルトリメトキシシラン、シクロヘキルアミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、オクテニアミノプロピルトリメトキシシラン、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、メチルピペラジノプロピルトリメトキシシラン、モルホリノプロピルトリメトキシシラン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、N-エチル-N,N’,N’-トリス(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’-トリス(トリメトキシシリルプロピル)アミノエチルピペラジン、
ブチルアミノメチルトリメトキシシラン、シクロヘキルアミノメチルトリメトキシシラン、フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルメチル)アミン、モルホリノメチルトリメトキシシラン、ブチルアミノオクチルトリメトキシシラン、シクロヘキルアミノオクチルトリメトキシシラン、フェニルアミノオクチルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルオクチル)アミン、モルホリノオクチルトリメトキシシラン、ブチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、シクロヘキルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、フェニルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アリルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ジエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、メチルピペラジノプロピルメチルジメトキシシラン、モルホリノプロピルメチルジメトキシシラン、
ブチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、シクロヘキルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、フェニルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、アリルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)アミノプロピルジメチルメトキシシラン、ジエチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、メチルピペラジノプロピルジメチルメトキシシラン、モルホリノプロピルジメチルメトキシシラン、ブチルアミノプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキルアミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、アリルアミノプロピルトリエトキシシラン、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)アミノプロピルトリエトキシシラン、ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、ジブチルアミノプロピルトリエトキシシラン、メチルピペラジノプロピルトリエトキシシラン、モルホリノプロピルトリエトキシシラン、
ブチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、フェニルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、アリルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ジエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、ジブチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルピペラジノプロピルメチルジエトキシシラン、モルホリノプロピルメチルジエトキシシラン、ブチルアミノプロピルジメチルエトキシシラン、シクロヘキルアミノプロピルジメチルエトキシシラン、フェニルアミノプロピルジメチルエトキシシラン、アリルアミノプロピルジメチルエトキシシラン、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)アミノプロピルジメチルエトキシシラン、ジエチルアミノプロピルジメチルエトキシシラン、ジブチルアミノプロピルジメチルエトキシシラン、メチルピペラジノプロピルジメチルエトキシシラン、モルホリノプロピルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0043】
上記一連の反応により、含窒素オルガノキシシラン化合物(3)、アミン化合物(1)のハロゲン化水素塩と含窒素化合物(4)のハロゲン化水素塩および溶媒の混合物の他、場合によっては、過剰に用いたアミン化合物(1)をさらに含んだ混合物が得られる。この混合物は、含窒素オルガノキシシラン化合物(3)を含む層と、アミン化合物(1)のハロゲン化水素塩と含窒素化合物(4)のハロゲン化水素塩が溶媒に溶解した層とに分離し、多くの場合は前者が上層、後者が下層となる。この下層を除去することにより、アミン化合物(1)のハロゲン化水素塩と含窒素化合物(4)のハロゲン化水素塩を除去することができる。なお、ハロゲン化水素塩を溶媒に確実に溶解させるため、例えば、50℃以上に加熱して下層の除去を行ってもよい。
【0044】
目的物である含窒素オルガノキシシラン化合物(3)の単離や精製は、減圧ストリップや各種クロマトグラフィー、吸着剤を用いた処理、ろ過、蒸留等の通常の有機合成における精製方法から適宜選択して用いることができる。特に、スケールアップの容易性から蒸留が好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0046】
[実施例1]モルホリノプロピルメチルジメトキシシランの合成
【化10】
(式中、Meは、メチル基を表す。以下同様。)
【0047】
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、モルホリン122.1g(1.402モル)、メタノール19.8g、DBU91.6g(0.602モル、クロロプロピルメチルジメトキシシランの塩素原子1モルに対して、0.603モル)を仕込み、80℃に加温した。これに、クロロプロピルメチルジメトキシシラン182.4g(0.998モル)を3.5時間で滴下し、110℃で3時間撹拌した。この時点で反応液は2層に分離していた。上層をガスクロマトグラフィー(以下、「GC」という。)分析すると、モルホリノプロピルメチルジメトキシシランの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
80℃で下層を除去し、上層を蒸留した。105℃/0.2kPaの留分としてモルホリノプロピルメチルジメトキシシラン164.8g(収率71%)を得た。なお、留分中にDBUは混入しなかった。
【0048】
[実施例2]モルホリノプロピルメチルジメトキシシランの合成
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、モルホリン261.3g(3.000モル)、メタノール40.0g、DBU182.6g(1.200モル、クロロプロピルメチルジメトキシシラン中の塩素原子1モルに対して、0.600モル)を仕込み、90℃に加温した。これに、クロロプロピルメチルジメトキシシラン365.4g(2.000モル)を2時間で滴下し、110℃で4時間撹拌した。この時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、モルホリノプロピルメチルジメトキシシランの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
80℃で下層を除去し、上層を蒸留した。105℃/0.2kPaの留分としてモルホリノプロピルメチルジメトキシシラン375.0g(収率80%)を得た。なお、留分中にDBUは混入しなかった。
【0049】
[実施例3]
モルホリン104.5g(1.200モル)、DBU121.7g(0.800モル、クロロプロピルメチルジメトキシシランの中のハロゲン原子1モルに対して、0.800モル)とする以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了の時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、モルホリノプロピルメチルジメトキシシランの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
【0050】
[実施例4]
モルホリン130.6g(1.500モル)、DBU76.1g(0.500モル、クロロプロピルメチルジメトキシシランの中のハロゲン原子1モルに対して、0.500モル)とする以外は、実施例1と同様にして反応行った。反応終了の時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、モルホリノプロピルメチルジメトキシシランの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
【0051】
[実施例5]
モルホリン139.4g(1.600モル)、DBU61.0g(0.401モル、クロロプロピルメチルジメトキシシランの中のハロゲン原子1モルに対して、0.401モル)とする以外は、実施例1と同様にして反応行った。反応終了の時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、モルホリノプロピルメチルジメトキシシランの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
【0052】
[実施例6]
メタノール19.8gをメタノール39.6gとした以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了の時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、モルホリノプロピルメチルジメトキシシランの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
【0053】
[実施例7]
メタノール19.8gをアセトニトリル39gとした以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了の時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、モルホリノプロピルメチルジメトキシシランの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
【0054】
[実施例8]
メタノール19.8gを酢酸エチル45gとした以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了の時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、モルホリノプロピルメチルジメトキシシランの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
【0055】
[実施例9]
メタノール19.8gをジメチルホルムアミド47.2gとした以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了の時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、モルホリノプロピルメチルジメトキシシランの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
【0056】
[実施例10]
メタノール19.8gに加え、ヘキサン33.3gを使用した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了の時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、モルホリノプロピルメチルジメトキシシランの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
【0057】
[実施例11]
メタノール19.8gに加え、トルエン43.5gを使用した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了の時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、モルホリノプロピルメチルジメトキシシランの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
【0058】
[実施例12]モルホリノプロピルトリメトキシシランの合成
【化11】
【0059】
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、モルホリン488.3g(5.606モル)、メタノール79.2g、DBU365.0g(2.398モル、クロロプロピルトリメトキシシラン中の塩素原子1モルに対して、0.600モル)を仕込み、80℃に加温した。これに、クロロプロピルトリメトキシシラン794.1g(3.996モル)を6時間で滴下し、110℃で1.5時間撹拌した。この時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、モルホリノプロピルトリメトキシシランの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
80℃で下層を除去し、上層を蒸留した。105℃/0.2kPaの留分としてモルホリノプロピルトリメトキシシラン735.9g(収率74%)を得た。なお、留分中にDBUは混入しなかった。
【0060】
[実施例13]モルホリノプロピルメチルジエトキシシランの合成
【化12】
(式中、Etは、エチル基を表す。以下同様。)
【0061】
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、モルホリン261.3g(3.000モル)、エタノール92.2g、DBU182.6g(1.200モル、クロロプロピルメチルジエトキシシラン中の塩素原子1モルに対して、0.600モル)を仕込み、90℃に加温した。これに、クロロプロピルメチルジエトキシシラン421.6g(2.000モル)を2時間で滴下し、110℃で4時間撹拌した。この時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、モルホリノプロピルメチルジエトキシシランの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
80℃で下層を除去し、上層を蒸留した。118℃/0.4kPaの留分としてモルホリノプロピルメチルジエトキシシラン432.1g(収率83%)を得た。なお、留分中にDBUは混入しなかった。
【0062】
[実施例14]モルホリノプロピルトリエトキシシランの合成
【化13】
【0063】
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、モルホリン261.3g(3.000モル)、エタノール92.2g、DBU182.6g(1.200モル、クロロプロピルトリエトキシシラン中の塩素原子1モルに対して、0.600モル)を仕込み、90℃に加温した。これに、クロロプロピルトリエトキシシラン481.6g(2.000モル)を2時間で滴下し、110℃で6時間撹拌した。この時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、モルホリノプロピルメチルトリエトキシシランの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
80℃で下層を除去し、上層を蒸留した。125℃/0.4kPaの留分としてモルホリノプロピルメチルジエトキシシラン469.6g(収率81%)を得た。なお、留分中にDBUは混入しなかった。
【0064】
[実施例15]メチルピペラジノプロピルトリメトキシシランの合成
【化14】
【0065】
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、メチルピペラジン140.2g(1.399モル)、メタノール19.8g、DBU91.3g(0.600モル、クロロプロピルトリメトキシシラン中の塩素原子1モルに対して、0.600モル)を仕込み、80℃に加温した。これに、クロロプロピルトリメトキシシラン198.5g(1.000モル)を2.5時間で滴下し、110℃で4時間撹拌した。この時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、メチルピペラジノプロピルトリメトキシシランの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
80℃で下層を除去し、上層を蒸留した。119℃/0.2kPaの留分としてメチルピペラジノプロピルトリメトキシシラン193.9g(収率74%)を得た。なお、留分中にDBUは混入しなかった。
【0066】
[実施例16]モルホリノオクチルトリメトキシシランの合成
【化15】
【0067】
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、モルホリン13.1g(0.150モル)、メタノール2.3g、DBU9.2g(0.060モル、クロロオクチルトリメトキシシラン中の塩素原子1モルに対して、0.600モル)を仕込み、80℃に加温した。これに、クロロオクチルトリメトキシシラン26.9g(0.100モル)を2.5時間で滴下し、110℃で4時間撹拌した。この時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、モルホリノオクチルトリメトキシシランの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
80℃で下層を除去し、上層を蒸留した。158℃/0.2kPaの留分としてモルホリノオクチルトリメトキシシラ16.3g(収率51%)を得た。なお、留分中にDBUは混入しなかった。
【0068】
[実施例17]ジエチルアミノプロピルメチルジエトキシシランの合成
【化16】
【0069】
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、ジエチルアミン70.2g(0.960モル)、エタノール36.9g、DBU109.6g(0.7201モル、クロロプロピルメチルジエトキシシラン中の塩素原子1モルに対して、0.900モル)を仕込み、70℃に加温した。これに、クロロプロピルメチルジエトキシシラン168.6g(0.7998モル)を1時間で滴下し、その後還流下で18時間撹拌した。この時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、DBUは検出されなかった。
80℃で下層を除去し、上層を蒸留した。90℃/0.4kPaの留分としてジエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン114.1g(収率58%)を得た。なお、留分中にDBUは混入しなかった。
【0070】
[実施例18]ジエチルアミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシランの合成
【化17】
【0071】
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、ジエチルアミノエチレンジアミン69.7g(0.600モル)、メタノール4.6g、DBU18.3g(0.120モル、クロロプロピルメチルジメトキシシラン中の塩素原子1モルに対して、0.600モル)を仕込み、80℃に加温した。これに、クロロプロピルメチルジメトキシシラン36.5g(0.200モル)を2.5時間で滴下し、110℃で4時間撹拌した。この時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、ジエチルアミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシランの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
80℃で下層を除去し、上層を蒸留した。110℃/0.5kPaの留分としてジエチルアミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン23.5g(収率45%)を得た。なお、留分中にDBUは混入しなかった。
【0072】
[実施例19]3-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)アミノプロピルトリメトキシシランの合成
【化18】
【0073】
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン500g(3.20モル)、テトラブチルホスホニウムブロミド2.8g(0.0084モル)を仕込み、120℃に加温した。これに、クロロプロピルトリメトキシシラン159g(0.800モル)を2時間で滴下し、同じ温度で8時間撹拌した。得られた反応液に、メタノール18.4g、イソオクタン92.0g、DBN59.6g(0.480モル、クロロプロピルトリメトキシシラン中の塩素原子1モルに対して、0.600モル)を加え、80℃で1時間撹拌した。この時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、DBNは検出されなかった。
80℃で下層を除去し、上層を蒸留した。150℃/0.5kPaの留分として3-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)アミノプロピルトリメトキシシラン238.8g(収率75%)を得た。なお、留分中にDBNは混入しなかった。
【0074】
[実施例20]ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミンの合成
【化19】
【0075】
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン106.3g(0.4801モル)、エタノール6.6g、DBU18.3g(0.120モル、クロロプロピルトリエトキシシランの塩素原子1モルに対して、0.600モル)を仕込み、140℃に加温した。これに、クロロプロピルトリエトキシシラン48.2g(0.200モル)を1時間で滴下し、同じ温度で4時間撹拌した。この時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミンの生成が確認された。また、DBUは検出されなかった。
80℃で下層を除去し、上層を蒸留した。146℃/0.4kPaの留分としてビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン36.6g(収率43%)を得た。なお、留分中にDBUは混入しなかった。
【0076】
[比較例1]3-モルホリノプロピルメチルジメトキシシランの合成
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた四つ口ガラスフラスコの内部を窒素で置換し、モルホリン9.6g(0.110モル)、メタノール3.9g、DBU16.8g(0.110モル、クロロプロピルメチルジメトキシシラン中の塩素原子1モルに対して、1.100モル)を仕込み、80℃に加温した。これに、クロロプロピルメチルジメトキシシラン18.2g(0.100モル)を3.5時間で滴下し、110℃で3時間撹拌した。この時点で反応液は2層に分離していた。上層をGC分析すると、DBUが検出された。
実施例1と同様の条件で蒸留単離を行ったが、留分中にDBUが混入した。
【0077】
以上の実施例の結果から、本発明の製造方法では反応により生じるハロゲン化水素のアミン塩を分液操作によって除去できることがわかる。この際、ハロゲン化水素塩を液状化させる際に用いた含窒素化合物は、含窒素オルガノキシシラン化合物を含む層には含まれていないため、蒸留精製によって高純度な含窒素オルガノキシシランを単離することができる。
一方、比較例の結果から、反応により生じるハロゲン化水素の物質量よりも使用している含窒素化合物の物質量が多いため、含窒素オルガノキシシラン化合物を含む層に含窒素化合物が残存してしまい、望みの含窒素オルガノキシシラン化合物の純度が低くなることがわかる。