(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】粒子の製造方法および成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20240423BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20240423BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20240423BHJP
C08F 214/18 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CEW
C08J5/00
C08L27/12
C08F214/18
(21)【出願番号】P 2020563388
(86)(22)【出願日】2019-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2019051019
(87)【国際公開番号】W WO2020138239
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2018245705
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019168193
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】細田 朋也
(72)【発明者】
【氏名】田口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 充眞
(72)【発明者】
【氏名】尾澤 紀生
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/005743(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/199681(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/012036(WO,A1)
【文献】特開2003-002979(JP,A)
【文献】特開2009-230986(JP,A)
【文献】特開2018-178073(JP,A)
【文献】国際公開第2017/209133(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0157324(US,A1)
【文献】特開2001-64317(JP,A)
【文献】特表2006-505680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28、5/00-5/02、
5/12-5/22、99/00
C08L 1/00-101/14
C08F 6/00-246/00、301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂を含む粒子Aを、中間点ガラス転移温度以上の温度であって補外融解開始温度以下の温度で熱処理して、前記フッ素樹脂を含む粒子Bを得る粒子の製造方法であって、
前記フッ素樹脂が溶融成形可能であり、
前記粒子Aは、前記フッ素樹脂を含むスラリーを乾燥して、前
記フッ素樹脂を含む造粒物を得た後、前記造粒物を乾燥して得られる粒子であり、
前記粒子Aが低沸成分を含み、低沸成分の含有量が、粒子Aの全質量に対して、0質量%超0.5質量%以下であり、
前記熱処理が、前記粒子B中の低沸成分の含有量が粒子Bの全質量に対して0~0.1質量%になるまで行われ、
前記粒子Aおよび前記粒子Bに含まれる低沸成分の含有量を用いて、下記式で計算した熱処理前後の低沸成分の減少割合が20~100%であり、
前記熱処理の前に、前記粒子Aに対して、前記粒子Aに含まれる前記フッ素樹脂の補外融解開始温度を超える温度での加熱が実施されないことを特徴とする、粒子の製造方法。
熱処理前後の低沸成分の減少割合[%]=100×(粒子Aに含まれる低沸成分の含有量-粒子Bに含まれる低沸成分の含有量)/(粒子Aに含まれる低沸成分の含有量)
【請求項2】
前記熱処理の温度が、中間点ガラス転移温度よりも10℃以上高い温度であって、補外融解開始温度よりも10℃以上低い温度であることを特徴とする、請求項1に記載の粒子の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理の時間が、30分~10時間である、請求項1または2に記載の粒子の製造方法。
【請求項4】
前記フッ素樹脂が、ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロフルオロエーテルの存在下、含フッ素単量体と、非フッ素単量体と、を重合して得られる、請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子の製造方法。
【請求項5】
含フッ素単量体が、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、及びフッ化ビニルから成る群から選択される少なくとも一種であり、
非フッ素単量体が、エチレン、プロピレン、無水イタコン酸、及び酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも一種である、請求項4に記載の粒子の製造方法。
【請求項6】
前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレンに基づく単位とエチレンに基づく単位とを含む共重合体、クロロトリフルオロエチレンに基づく単位とエチレンに基づく単位とを含む共重合体、テトラフルオロエチレンに基づく単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位とを含む共重合体、および、テトラフルオロエチレンに基づく単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを含む共重合体のいずれかである、請求項1~5のいずれか一項に記載の粒子の製造方法。
【請求項7】
前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレンに基づく単位とエチレンに基づく単位とを含む共重合体であり、前記共重合体は、下記式(F1)で表される単量体F1をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の粒子の製造方法。
CH
2=CX(CF
2)
nY (F1)
(XおよびYはそれぞれ独立に水素原子またはフッ素原子であり、nは2~8の整数である。)
【請求項8】
前記粒子Aの平均粒子径が、100μm~10.0mmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の粒子の製造方法。
【請求項9】
前記粒子Bを粉砕処理して粒子Cを得る、請求項1~8のいずれか1項に記載の粒子の製造方法。
【請求項10】
前記粒子Bを粉砕処理して得られた粒子Cの平均粒子径が、10~1000μmである、請求項9に記載の粒子の製造方法。
【請求項11】
前記粒子Bを粉砕処理して得られた粒子Cの見掛け密度が、0.3~1.2g/cm
3である、請求項9または10に記載の粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の製造方法にて製造される粒子を、前記フッ素樹脂の融点以上で溶融させて、前記フッ素樹脂を含む成形体を得ることを特徴とする、成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂を含む、粒子の製造方法および成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性、耐薬品性、耐候性等に優れるフッ素樹脂は、半導体産業、自動車産業、化学産業等の種々の分野で使用されている。例えば、静電塗装法、流動浸漬法、回転成形法等の方法によって、基材表面にフッ素樹脂を含む粒子から構成される粉体を塗装すれば、基材表面の保護や耐薬品性に優れた塗膜を形成できる。
近年、低沸成分の含有量が少ないフッ素樹脂が求められている。フッ素樹脂を含む粒子に低沸成分が多く含まれていると、この粒子を用いて塗膜等の成形体を製造した際に、低沸成分の蒸発によって白煙が発生する場合がある。そのため、特許文献1では、二軸押出機によってETFE等のフッ素樹脂を溶融混練する際に、フッ素樹脂の溶融容量流速を制御して、フッ素樹脂に含まれる低沸成分を除去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らが特許文献1の記載された方法で得られたフッ素樹脂のペレットを粉砕処理したところ、フィブリル化した粉砕物が生じてしまい、粉体として使用できるような粒子が得られない場合があった。そのため、低沸成分の除去性に優れつつ、粉砕処理を実施した場合であっても、フィブリル化の抑制されたフッ素樹脂を含む粒子の製造方法が求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、低沸成分の除去性に優れ、かつ、粉砕処理を実施した場合であってもフィブリル化を抑制できる粒子の製造方法および成形体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、溶融成形可能なフッ素樹脂を含む粒子Aを、中間点ガラス転移温度以上の温度であって補外融解開始温度以下の温度で熱処理すれば、低沸成分の除去性に優れつつ、粉砕処理を実施した場合であってもフィブリル化を抑制できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
[1]溶融成形可能なフッ素樹脂を含む粒子Aを、中間点ガラス転移温度以上の温度であって補外融解開始温度以下の温度で熱処理して、前記フッ素樹脂を含む粒子Bを得ることを特徴とする、粒子の製造方法。
[2]前記熱処理の温度が、中間点ガラス転移温度よりも10℃以上高い温度であって、補外融解開始温度よりも10℃以上低い温度であることを特徴とする、[1]に記載の粒子の製造方法。
[3]前記熱処理の時間が、30分~10時間である、[1]または[2]に記載の粒子の製造方法。
[4]前記フッ素樹脂が、ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロフルオロエーテルの存在下、含フッ素単量体と、非フッ素単量体と、を重合して得られる、[1]~[3]のいずれか一項に記載の粒子の製造方法。
[5]含フッ素単量体が、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、及びフッ化ビニルから成る群から選択される少なくとも一種であり、
非フッ素単量体が、エチレン、プロピレン、無水イタコン酸、及び酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも一種である、[4]に記載の粒子の製造方法。
[6]前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレンに基づく単位とエチレンに基づく単位とを含む共重合体、クロロトリフルオロエチレンに基づく単位とエチレンに基づく単位とを含む共重合体、テトラフルオロエチレンに基づく単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位とを含む共重合体、および、テトラフルオロエチレンに基づく単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを含む共重合体のいずれかである、[1]~[5]のいずれか一項に記載の粒子の製造方法。
[7]前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレンに基づく単位とエチレンに基づく単位とを含む共重合体であり、前記共重合体は、下記式(F1)で表される単量体F1をさらに含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載の粒子の製造方法。
CH2=CX(CF2)nY (F1)
(XおよびYはそれぞれ独立に水素原子またはフッ素原子であり、nは2~8の整数である。)
[8]前記粒子Aの平均粒子径が、100μm~10.0mmである、[1]~[7]のいずれか一項に記載の粒子の製造方法。
[9]前記粒子Aが低沸成分を含み、低沸成分の含有量が、粒子Aの全質量に対して、0質量%超0.5質量%以下である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の粒子の製造方法。
[10]前記粒子Aおよび前記粒子Bに含まれる低沸成分の含有量を用いて、下記式で計算した熱処理前後の低沸成分の減少割合が20~100%である、[9]に記載の粒子の製造方法。
熱処理前後の低沸成分の減少割合[%]=100×(粒子Aに含まれる低沸成分の含有量-粒子Bに含まれる低沸成分の含有量)/(粒子Aに含まれる低沸成分の含有量)
[11]前記粒子Bを粉砕処理して粒子Cを得る、[1]~[10]のいずれか1項に記載の粒子の製造方法。
[12]
前記粒子Bを粉砕処理して得られた粒子Cの平均粒子径が、10~1000μmである、[11]に記載の粒子の製造方法。
[13]前記粒子Bを粉砕処理して得られた粒子Cの見掛け密度が、0.3~1.2g/cm3である、[11]または[12]に記載の粒子の製造方法。
[14][1]~[13]のいずれか1項に記載の製造方法にて製造される粒子を、前記フッ素樹脂の融点以上で溶融させて、前記フッ素樹脂を含む成形体を得ることを特徴とする、成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低沸成分の除去性に優れ、かつ、粉砕処理を実施した場合であってもフィブリル化を抑制できる、粒子の製造方法および成形体の製造方法を提供できる。
本発明の上記効果が得られるメカニズムは必ずしも明らかではないが、低沸成分の除去により、フッ素樹脂粒子が緻密化しフィルブル化が抑制されたことが一因と考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における用語の意味は以下の通りである。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
「溶融成形可能」であるとは、溶融流動性を示すことをいう。「溶融流動性を示す」とは、荷重49Nの条件下、樹脂の融点よりも20℃以上高い温度において、溶融容量流速が0.1~1000g/10分となる温度が存在することをいう。なお、「溶融容量流速」は、JIS K 7210:1999(ISO 1133:1997)に規定されるメルトマスフローレート(MFR)をいう。
中間点ガラス温度および補外融解開始温度はいずれも、JIS K7121(1987)の方法に準じて算出される値(℃)であり、示差走査熱量測定(DSC)法によって得られるDSC曲線に基づいて求められる。なお、中間点ガラス温度は「Tmg」ともいい、補外融解開始温度は「Tim」ともいう。
「単位」とは、単量体が重合して直接形成された、上記単量体1分子に由来する原子団と、上記原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。なお、以下において、場合により、個々の単量体に由来する単位をその単量体名に「単位」を付した名称で記す。
「粒子の平均粒子径」は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置を用いて測定して得られる体積基準のメジアン径である。
【0010】
本発明の粒子の製造方法は、溶融成形可能なフッ素樹脂を含む粒子Aを、中間点ガラス転移温度(Tmg)以上の温度であって補外融解開始温度(Tim)以下の温度で熱処理(以下、「特定熱処理」ともいう。)して、上記フッ素樹脂を含む粒子Bを得る製造方法である。
本発明の粒子の製造方法は、低沸成分の除去性に優れる。この理由の詳細は明らかになっていないが、Tmg以上の温度で粒子Aを熱処理すると、フッ素樹脂の分子鎖運動が起こりやすくなって、粒子Aから低沸成分を充分に除去できると推測される。また、Tim以下の温度で粒子Aを熱処理すると、フッ素樹脂の部分的な融解による粒子同士の融着を抑制できるので、粒子から低沸成分を充分に除去できると推測される。
また、Tim以下の温度で粒子Aを熱処理すれば、得られる粒子Bを粉砕処理する際に、粉砕処理が容易になること、フィブリル化した粉砕物が生じるのを抑制できること等の利点がある。
【0011】
[粒子A]
粒子Aは、溶融成形可能なフッ素樹脂(以下、「特定フッ素樹脂」ともいう。)を含む。特定フッ素樹脂は、常温(25℃)で固体であるのが好ましい。
【0012】
特定フッ素樹脂は、溶融成形可能であれば特に限定されず、公知のフッ素樹脂を用いることができるが、成形性に優れる点から、含フッ素単量体に基づく単位と、非フッ素単量体に基づく単位と、を有するのが好ましい。
【0013】
含フッ素単量体の具体例としては、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」ともいう。)、ヘキサフルオロプロピレン(以下、「HFP」ともいう。)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」ともいう。)、フッ化ビニリデン(以下、「VdF」ともいう。)、フッ化ビニルが挙げられる。含フッ素単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
非フッ素単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、無水イタコン酸、酢酸ビニルが挙げられる。非フッ素単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特定フッ素樹脂の具体例としては、TFEに基づく単位(以下、「TFE単位」ともいう。)とエチレンに基づく単位(以下、「E単位」ともいう。)とを含む共重合体(ETFE)、CTFEに基づく単位とエチレンに基づく単位とを含む共重合体(ECTFE)、TFE単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位(以下、「ペルフルオロアルキルビニルエーテル単位」ともいう。)とを含む共重合体(PFA)、および、TFE単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位(以下、「ヘキサフルオロプロピレン単位」ともいう。)とを含む共重合体(FEP)が挙げられ、成形性に優れる点から、ETFEおよびECTFEが好ましく、ETFEが特に好ましい。
【0014】
ETFEにおいて、E単位とTFE単位との合計含有量に対するE単位の含有量の割合は、20~70モル%が好ましく、25~60モル%がより好ましく、35~55モル%が特に好ましい。
E単位の含有量の割合が上記範囲の下限値以上であると機械強度に優れ、上限値以下であると耐薬品性に優れる。
【0015】
ETFEは、E単位およびTFE単位のみからなる共重合体でもよく、これら以外の他の単量体単位の1種以上を含んでもよい。
他の単量体の好ましい例としては、下記式(F1)で表される単量体F1が挙げられる。
【0016】
CH2=CX(CF2)nY (F1)
式(F1)中、XおよびYはそれぞれ独立に水素原子またはフッ素原子であり、nは2~8(好ましくは3~7、より好ましくは4~6)の整数である。
単量体F1の具体例としては、CH2=CF(CF2)nF、CH2=CF(CF2)nH、CH2=CH(CF2)nF、CH2=CH(CF2)nHが挙げられ、CH2=CH(CF2)nFが好ましく、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)4F((パーフルオロブチル)エチレン、以下、PFBEという。)がより好ましい。
【0017】
ETFEが他の単量体単位を含む場合、その合計の含有量は、E単位とTFE単位との合計を100モルとするモル比で、0.1~10モルが好ましく、0.1~5モルがより好ましく、0.2~4モルが特に好ましい。他の単量体単位の含有量が上記範囲の下限値以上であると耐クラック性が良好であり、上限値以下であるとフッ素樹脂の融点が低下し、成形性が良好となる。
【0018】
PFAにおいて、TFE単位とペルフルオロアルキルビニルエーテル単位との合計含有量に対するTFE単位の含有量の割合は、9~99モル%が好ましく、80~99モル%がより好ましく、90~99モル%が特に好ましい。 PFAは、TFE単位とペルフルオロアルキルビニルエーテル単位とのみからなる共重合体でもよく、これら以外の他の単量体単位の1種以上を含んでもよい。 他の単量体の好ましい例としては、ヘキサフルオロプロピレンが挙げられる。 他の単量体単位を含む場合、その含有量は、TFE単位とペルフルオロアルキルビニルエーテル単位との合計を100モルとするモル比で、0.1~10モルが好ましく、0.1~6モルがより好ましく、0.2~4モルが特に好ましい。
【0019】
FEPにおいて、TFE単位とヘキサフルオロプロピレン単位との合計含有量に対するTFE単位の含有量の割合は、70~99モル%が好ましく、80~99モル%がより好ましく、90~99モル%が特に好ましい。
FEPは、TFE単位とヘキサフルオロプロピレン単位とのみからなる共重合体でもよく、これら以外の他の単量体単位の1種以上を含んでもよい。
他の単量体の好ましい例としては、ペルフルオロアルキルビニルエーテルが挙げられる。
他の単量体単位を含む場合、その合計の含有量は、TFE単位とヘキサフルオロプロピレン単位との合計を100モルとするモル比で、0.1~10モルが好ましく、0.1~6モルがより好ましく、0.2~4モルが特に好ましい。
【0020】
ECTFEにおいて、E単位とクロロトリフルオロエチレン単位との合計含有量に対するE単位の含有量の割合は2~98モル%が好ましく、10~90モル%がより好ましく、30~70モル%が特に好ましい。
ECTFEは、E単位とクロロトリフルオロエチレン単位とのみからなる共重合体でもよく、これら以外の他の単量体単位を含んでもよい。
他の単量体の好ましい例としては、ペルフルオロアルキルビニルエーテルが挙げられる。
他の単量体単位を含む場合、その合計の含有量は、E単位とクロロトリフルオロエチレン単位との合計を100モルとするモル比で、0.1~10モルが好ましく、0.1~5モルがより好ましく、0.2~4モルが特に好ましい。
【0021】
粒子Aは、低沸成分を含んでいてもよい。低沸成分の具体例としては、これに限定されないが、特定フッ素樹脂の重合のために使用する単量体のうち未反応の単量体、特定フッ素樹脂の重合の際に生じる低分子量の含フッ素重合体(オリゴマー等)、特定フッ素樹脂の重合に使用する重合溶媒が挙げられる。
粒子Aに含まれ得る低沸成分は、本発明の粒子の製造方法によって少なくとも一部が除去される。
粒子Aが低沸成分を含む場合、低沸成分の含有量は、粒子Aの全質量に対して、0質量%超0.5質量%以下が好ましく、0質量%超0.3質量%以下がより好ましく、0質量%超0.2質量%以下が特に好ましい。
低沸成分の含有量は、示差熱・熱重量同時測定機(例えば、TG/DTA7200(日立ハイテク社製)に準ずる装置)を用いて、60mgの粒子Aを乾燥空気中にて、50℃から10℃/分で昇温し、特定フッ素樹脂の融点よりも30℃低い温度で30分保持する処理を実施して、処理前後の粒子Aの質量に基づいて、以下の式によって算出される。
粒子A中の低沸成分の含有量[質量%]=100×(処理前の粒子Aの質量-処理後の粒子Aの質量)/処理前の粒子Aの質量)
【0022】
粒子Aの形状は、特に限定されず、球状(楕円体状も含む)、柱状(例えば、円柱状)等のいずれの形状であってもよい。
粒子Aの平均粒子径は、100μm~10.0mmが好ましく、0.5mm~10.0mmがより好ましく、0.8mm~8.0mmが特に好ましい。粒子Aの平均粒子径が上記範囲の下限値以上であれば取扱い性に優れ、上限値以下であれば粉砕性に優れる。
【0023】
<特定フッ素樹脂の製造方法>
特定フッ素樹脂の製造方法としては、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、塊状重合等の公知の方法が挙げられ、懸濁重合、溶液重合が好ましく、溶液重合が特に好ましい。
特定フッ素樹脂の製造方法の好適態様としては、ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロフルオロエーテルの存在下、含フッ素単量体に基づく単位と、非フッ素単量体に基づく単位と、を重合する方法が挙げられる。以下において、特定フッ素樹脂の製造方法として、本好適態様に基づいて説明する。
なお、含フッ素単量体、非フッ素単量体および特定フッ素樹脂については、上述した通りであるので、その説明を省略する。
【0024】
ハイドロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロエーテルは、重合溶媒や連鎖移動剤として使用される。ハイドロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロエーテルは、クロロフルオロカーボン(CFC)およびハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)等の塩素原子を含むフッ素溶媒と比較して、地球環境保護に優れる。
ハイドロフルオロカーボンの具体例としては、1,1,2,2-テトラフルオロシクロブタン、CF3CFHCF2CF2CF3、CF3(CF2)4H、CF3CF2CFHCF2CF3、CF3CFHCFHCF2CF3、CF2HCFHCF2CF2CF3、CF3(CF2)5H、CF3CH(CF3)CF2CF2CF3、CF3CF(CF3)CFHCF2CF3、CF3CF(CF3)CFHCFHCF3、CF3CH(CF3)CFHCF2CF3、CF3CF2CH2CH3、CF3(CF2)3CH2CH3が挙げられる。
ハイドロフルオロエーテルの具体例としては、CF3CH2OCF2CF2H、(CF3)2CFCF(CF2CF3)OCH3、(CF3)2CFCF2OCH2CH3、(CF3)2CFCF2OCH3、CF3(CF2)3OCH2CH3、CF3(CF2)3OCH3、C3F7OCH3が挙げられる。
重合溶媒としてのハイドロフルオロカーボンまたはハイドロフルオロエーテルの使用量はそれぞれ、重合溶媒と連鎖移動剤の全質量(100質量部)に対して、20~99.99質量部が好ましく、99~99.9質量部が特に好ましい。
連鎖移動剤としてのハイドロフルオロカーボンまたはハイドロフルオロエーテルの使用量はそれぞれ、重合溶媒と連鎖移動剤の全質量(100質量部)に対して、0.01~80質量部が好ましく、0.1~1質量部が特に好ましい。
【0025】
特定フッ素樹脂の重合では、上述の単量体、ハイドロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロエーテル以外の公知の成分を使用してもよく、例えば、重合溶媒(例えば、ハイドロフルロカーボンおよびハイドロフルオロエーテル以外の有機溶媒、ならびに、水)、連鎖移動剤(ハイドロフルロカーボンおよびハイドロフルオロエーテル以外の連鎖移動剤。例えば、アルコール、ハイドロカーボン)、重合開始剤、重合禁止剤が挙げられる。
特定フッ素樹脂の重合条件(例えば、反応温度、反応時間)は、公知の条件を採用できる。
【0026】
<粒子Aの製造方法>
粒子Aは、例えば、上記のようにして得られた特定フッ素樹脂を含むスラリーを用いた造粒処理によって得られる。スラリーとは、特定フッ素樹脂が上述の重合溶媒に溶解または膨潤して懸濁状態にある溶液である。
特定フッ素樹脂の含有量は、造粒性に優れる点から、スラリーの全質量に対して1~40質量%が好ましく、3~35質量%が特に好ましい。
重合溶媒の含有量は、造粒性に優れる点から、スラリーの全質量に対して60~99質量%が好ましく、65~97質量%が特に好ましい。
【0027】
スラリーは、造粒性に優れる点から、水と混合して使用するのが好ましい。
水とスラリーとを混合して使用する場合、水の含有量は、造粒性に優れる点から、スラリー100質量部に対して100~700質量部が好ましく、150~550質量部が特に好ましい。
【0028】
造粒処理としては、公知の造粒処理が挙げられる。造粒処理の具体例としては、スラリーを造粒槽内で攪拌する処理が挙げられる。造粒処理は、加熱しながら実施してもよい。
造粒処理における温度(以下、「造粒温度」ともいう。)は、特定フッ素樹脂の溶融温度未満であればよく、具体的には、10~130℃が好ましく、20~110℃が特に好ましい。
造粒処理の時間、攪拌の条件(例えば、攪拌翼の回転数)は特に限定されず、公知の条件にしたがって適宜設定される。
【0029】
粒子Aの製造後、後述の粒子Bを得るための特定熱処理までの間において、粒子Aに対して、粒子Aに含まれる特定フッ素樹脂の補外融解開始温度を超える温度での加熱が実施されないのが好ましい。これにより、粒子Aの一部分が融解することを抑制できるので、融解した部分によって生じ得る粉砕性の低下を抑制できる結果、粉砕後の粒子径が均一になりやすいためである。具体的には、粒子Aの溶融混錬が実施されないのがより好ましい。これにより、後述の粒子Bを粉砕処理する際に、フィブリル状の粉砕物が生じるのを抑制できる。
【0030】
[特定熱処理]
特定熱処理は、中間点ガラス転移温度(Tmg)以上の温度であって補外融解開始温度(Tim)以下の温度で粒子Aを加熱する処理である。これにより、粒子Bが得られる。この加熱温度の範囲内で加熱処理を実施すれば、上述した理由によって、粒子Aから低沸成分を効果的に除去できる。また、得られる粒子Bを粉砕処理する際に、粉砕処理が容易になること、フィブリル化した粉砕物が生じるのを抑制できること等の利点がある。
特定熱処理は、中間点ガラス転移温度以上で実施されるが、粒子Aから低沸成分をより効果的に除去できる点から、中間点ガラス転移温度よりも10℃以上高い温度で実施されるのが好ましく(すなわち、Tmg+10≦特定熱処理の加熱温度[℃])、中間点ガラス転移温度よりも30℃以上高い温度で実施されるのがより好ましく(すなわち、Tmg+30≦特定熱処理の加熱温度[℃])、中間点ガラス転移温度よりも50℃以上高い温度で実施されるのが特に好ましい(すなわち、Tmg+50≦特定熱処理の加熱温度[℃])。
特定熱処理は、補外融解開始温度以下で実施されるが、粒子Aから低沸成分をより効果的に除去できる点からは、補外融解開始温度に近い温度で実施されるのが好ましく、補外融解開始温度で実施されるのが特に好ましい。ここで、補外融解開始温度に近い温度とは、例えば、Tim-10<特定熱処理の加熱温度[℃]≦Timの範囲内の温度を指す。
また、得られる粒子Bを粉砕処理する際に機械的粉砕処理がより容易になる点、および、得られる粒子Bを粉砕処理する際にフィブリル化した粉砕物が生じるのをより抑制できる点から、補外融解開始温度よりも10℃以上低い温度で実施されるのが好ましく(すなわち、特定熱処理の加熱温度[℃]≦Tim-10)、補外融解開始温度よりも20℃以上低い温度で実施されるのがより好ましく(すなわち、特定熱処理の加熱温度[℃]≦Tim-20)、補外融解開始温度よりも30℃以上低い温度で実施されるのが特に好ましい(すなわち、特定熱処理の加熱温度[℃]≦Tim-30)。
なお、特定熱処理として、他の好適範囲も挙げられる。例えば、特定熱処理は、中間点ガラス転移温度よりも10℃以上高い温度であって補外融解開始温度よりも10℃以上低い温度で実施されるのが好ましく(すなわち、Tmg+10≦特定熱処理の加熱温度[℃]≦Tim-10)、中間点ガラス転移温度よりも30℃以上高い温度であって補外融解開始温度よりも20℃以上低い温度で実施されるのがより好ましく(すなわち、Tmg+30≦特定熱処理の加熱温度[℃]≦Tim-20)、中間点ガラス転移温度よりも50℃以上高い温度であって補外融解開始温度よりも30℃以上低い温度で実施されるのが特に好ましい(すなわち、Tmg+50≦特定熱処理の加熱温度[℃]≦Tim-30)。
【0031】
ETFEの中間点ガラス転移温度および補外融解開始温度は、ETFEに含まれる各単位の含有量等によって変化するが、通常、ETFEの中間点ガラス転移温度は40~100℃であり、ETFEの補外融解開始温度は160~250℃である。
【0032】
特定熱処理の時間(粒子Aの熱処理時間)は、特定熱処理における加熱温度によって適宜設定されるが、粒子Aから低沸成分をより効果的に除去できる点、得られる粒子Bを粉砕処理する際に、粉砕処理が容易になる点およびフィブリル化した粉砕物が生じるのを抑制できる点から、30分~10時間が好ましく、40分~6時間がより好ましく、60分~3時間が特に好ましい。
【0033】
特定熱処理の時間は、特定熱処理における加熱温度が補外融解開始温度よりも40℃低い温度以上であれば30分~10時間が好ましく、60分~5時間が好ましく、60分~3時間が好ましい。
また、特定熱処理熱風乾燥等の直接加熱方式の場合、加熱温度が補外融解開始温度よりも60℃低い温度以上であれば、特定熱処理の時間は30分~10時間が好ましく、60分~8時間が好ましく、60分~5時間が好ましい。中でも、熱風が粒子Aの間を通り抜けるような熱風乾燥方式は、加熱温度が低く熱処理時間が短くても、低沸成分を効率的に除去できる。
なお、コニカルドライヤー等の間接加熱方式の場合、加熱温度が補外融解開始温度よりも60℃低い温度以上であれば、特定熱処理の時間は1~20時間が好ましく、5~10時間が好ましい。間接加熱方式の場合、特定熱処理時に粒子Aが一部壊れた場合も、直接加熱方式のように風で飛ばされることがないため、粒子Bをほぼ全量回収できる。
【0034】
特定熱処理は、成形時に低沸成分の蒸発による白煙の発生がより低減できる点、および、表面に発泡痕の少ない成形体が得られる点から、以下の式で表される特定熱処理前後の低沸成分の減少割合が20~100%となるように実施されるのが好ましく、40~100%となるように実施されるのがより好ましく、50~100%となるように実施されるのが特に好ましい。
特定熱処理前後の低沸成分の減少割合[%]=100×(粒子Aに含まれる低沸成分の含有量-粒子Bに含まれる低沸成分の含有量)/(粒子Aに含まれる低沸成分の含有量)
【0035】
特定熱処理は、公知の加熱処理装置を用いて実施できる。特定加熱処理は、低沸成分がより効果的に除去できる点から、粒子Aを攪拌しながら実施してもよい。
加熱処理装置としては、直接加熱方式、間接加熱方式のどちらも用いることができ、直接加熱方式としては、棚式オーブン(熱風循環式恒温器)や、熱処理槽のような固相重合装置、流動層乾燥機を用いることができる。間接加熱方式としては、バキュームタンブルドライヤーのようなコニカルドライヤー、パドルドライヤー、スチームチューブドライヤー、リボコーン、ナウターミキサーなどを用いることができる。また直接加熱方式と間接加熱方式を組み合わせて使用することもできる。上記の熱風やジャケットを介した加熱以外に赤外線ヒーターなども用いることができる。
【0036】
[粒子B]
粒子Bは、特定フッ素樹脂を含む粒子であって、粒子Aの特定加熱処理によって得られる。
粒子Bは、上述の低沸成分を含んでいてもよい。ただし、特定熱処理によって少なくとも一部の低沸成分が粒子Aから除去されているため、粒子Aに含まれ得る低沸成分の含有量よりも少ない。
粒子Bが低沸成分を含む場合、粒子B中の低沸成分の含有量は、粒子Bの全質量に対して、0~0.1質量%が好ましく、0~0.05質量%がより好ましく、0~0.03質量%が特に好ましい。
粒子Bに含まれ得る低沸成分の含有量の算出方法は、粒子Bを用いる以外は、粒子Aに含まれ得る低沸成分の含有量の算出方法と同様である。
【0037】
粒子Bの形状および平均粒子径は、特に限定されず、粒子Aと同様であるのでその説明を省略する。
【0038】
[粉砕処理]
本発明の粒子の製造方法は、粒子Bの粉砕を行う粉砕処理を含んでいてもよい。これにより、粒子Bよりも粒子径の小さい粒子Cが得られる。
粒子Bは、上述の特定加熱処理によって得られた粒子であるため、機械的粉砕処理による粉砕が容易であり、また、粉砕時にフィブリル化した粉砕物が生じるのを抑制できる。
粉砕は、せん断または切断によって実施するのが好ましい。せん断を用いる方法の具体例としては、粒子Bに圧力をかけて、せん断力を加えることにより粉砕する方法である。切断を用いる方法の具体例としては、ナイフ等の切断具による粒子Bの切断によって粉砕する方法が挙げられる。
粉砕は、例えば、粉砕機等を用いた機械的粉砕処理で実施できる。粉砕機としては、ターボミル、クロスビターミル、ロータービターミル、カッティングミル等が挙げられる。
粉砕は、常温で実施してもよいし、加熱しながら実施してもよい。
【0039】
[粒子C]
粒子Cは、粒子Bの粉砕処理によって得られ、特定フッ素樹脂を含む粒子である。
粒子Cの平均粒子径は、10~1000μmが好ましく、20~500μmがより好ましく、25~400μmが特に好ましい。粒子Cの平均粒子径が上記範囲の下限値以上であれば取扱い性に優れ、上限値以下であれば溶融後の表面平滑性に優れる。
粒子Cの見掛け密度は、0.3~1.2g/cm3が好ましく、0.4~1.1g/cm3がより好ましく、0.5~1.0g/cm3が特に好ましい。粒子Cの見掛け密度が上記範囲の下限値以上であれば取扱い性に優れ、上限値以下であれば表面平滑性に優れる。
【0040】
多数の粒子Cから構成される集合体は、粉体とも呼ばれ、例えば塗料分野では粉体塗料として使用される。
粉体は、粒子Cに含まれるフッ素樹脂以外の成分を含んでいてもよい。フッ素樹脂以外の成分の具体例としては、流動性向上剤(例えば、シリカ、アルミナ)、補強材(例えば、無機フィラー)、熱安定剤(例えば、酸化第一銅、酸化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅)、紫外線吸収剤、受酸剤(例えば、複合金属酸化物、金属化合物)等の添加剤が挙げられる。フッ素樹脂以外の成分は、例えば、粒子Cと混合して用いられる。
【0041】
[成形体の製造方法]
本発明の成形体の製造方法は、上述の粒子の製造方法にて製造される粒子(具体的には、粒子Bまたは粒子C)を、上記特定フッ素樹脂の融点以上で溶融させて、上記特定フッ素樹脂を含む成形体を得る方法である。
本発明の成形体の製造方法では、上述した特定熱処理を経て得られた粒子Bまたはこれを粉砕して得られる粒子Cを用いるので、成形体の製造時における白煙の発生を抑制できる。また、低沸成分等による発泡痕が抑制された成形体が得られる。
【0042】
粒子Bまたは粒子Cの溶融は、溶融混錬可能な公知の装置を用いて実施できる。このような装置としては、二軸押出機が挙げられる。
二軸押出機は、2本のスクリューと、2本のスクリューを内蔵したバレルと、バレルに設けられた真空ベントと、バレルに設けられた原料供給口と、バレルの下流端に設けられたダイと、を有するのが好ましい。
二軸押出機は、貫通孔が形成されたバレルのシリンダに通した2本のスクリューを同方向に回転させる同方向回転二軸押出機であってもよく、2本のスクリューを異方向に回転させる異方向回転押出機でもよい。二軸押出機としては、搬送能力、溶融・混練能力、分離(脱水)能力に優れ、また、連続的な樹脂の処理が可能であり、処理プロセスの効率化にも優れる点から、同方向回転二軸押出機が好ましい。
【0043】
2本のスクリューの噛み合わせは、非噛合型であってもよく、部分噛合型であってもよく、完全噛合型であってもよい。
スクリューとしては、複数のスクリューエレメントをシャフトに装着したスクリューが挙げられる。
スクリューエレメントは、軸直角方向に同一の断面形状を有するのが好ましい。スクリューエレメントにおいては、フライトの数を意味する条数と、軸直角方向の断面形状がシャフトを中心として回転する捩れ角とに応じて固有の機能が生じる。スクリューエレメントとしては、機能別に、ロータリーエレメント、ニーディングエレメント、ミキシングエレメントが挙げられる。
ロータリーエレメントとしては、シャフトを中心として連続的に回転する捩れ角を有し、搬送能力のあるスクリューエレメントが挙げられる。
ニーディングエレメントとしては、捩れ角がない複数の板状のディスクで構成されるスクリューエレメントが挙げられる。
ミキシングエレメントとしては、正ねじのフルフライトエレメントに切り欠きを形成したスクリューエレメント、または逆ねじのフルフライトエレメントに切り欠きを形成したスクリューエレメントが挙げられる。ミキシングエレメントは、セルフクリーニング性を有していてもよく、セルフクリーニング性を有していなくてもよい。
二軸押出機のスクリューとしては、ロータリーエレメント、ニーディングエレメントおよびミキシングエレメントで構成されたスクリューが好適に用いられる。
【0044】
バレルは、複数のバレルブロックが直列に連結された構造を有するのが好ましい。
バレルブロックには、スクリューの断面形状に対応した貫通孔が形成されているのが好ましい。
【0045】
真空ベントは、粒子Bまたは粒子Cを二軸押出機のスクリューによって溶融混練する際に、特定フッ素樹脂に含まれ得る低沸成分をさらに除去できる。
真空ベントは、例えば、真空ベントが付属したバレルブロックを用いることによって二軸押出機に設置できる。真空ベントは、複数のバレルブロックに設けてもよい。
【0046】
ダイは、特定フッ素樹脂を押出してストランドを形成できる構造を有するのが好ましい。
ダイにおける吐出口の数は、1個であってもよく、複数個であってもよい。ダイとしては、複数本のストランドが形成され、生産性がよい点から、数個~数十個の吐出口を有するのが好ましい。
【0047】
溶融混錬の温度は、特定フッ素樹脂の融点よりも10~150℃高い温度が好ましく、20~130℃高い温度がより好ましく、30~100℃高い温度が特に好ましい。
本発明における特定フッ素樹脂の融点とは、示差走査熱量計(例えば、DSC 7020(セイコーインスツル社製)に準ずる装置)を用い、特定フッ素樹脂を10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークを記録し、特定フッ素樹脂の融解ピークの最大値に対応する温度(℃)である。
【0048】
特定フッ素樹脂は、二軸押出機のダイから吐出され、所望の形状に成形される。特定フッ素樹脂を含む成形体の形状としては、ペレット状、フィルム状等のいずれの形状であってもよい。
成形体としてペレットを製造する場合、溶融状態の特定フッ素樹脂を二軸押出機の吐出口に取り付けられたダイから押し出してストランドとして、次いでペレタイザによってストランドを切断して、ペレットを得る方法が挙げられる。
また、成形体としてフィルムを製造する場合、溶融状態の特定フッ素樹脂を二軸押出機の吐出口に取り付けられたダイから押し出して、フィルム状に成形する方法が挙げられる。なお、上記のようにして得られたペレットを用いて、フィルムを製造してもよい。
【0049】
粒子Bまたは粒子Cを二軸押出機で溶融して成形体を得る方法を示したが、以下の方法によって成形体を製造してもよい。
例えば、多数の粒子Cから構成された粉体を粉体塗料として用いる場合には、粉体を基材上に塗装(例えば、静電塗装)して、粉体から構成される塗装層を形成した後、塗装層を加熱によって溶融して、塗膜(成形体の一態様)を基材上に形成してもよい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、後述する表中における各成分の配合量は、質量基準を示す。
【0051】
[単位の割合]
フッ素樹脂における各単位の割合は、溶融NMR分析、フッ素含有量分析および赤外吸収スペクトル分析によって測定したデータから算出した。
【0052】
[中間点ガラス温度および補外融解開始温度]
フッ素樹脂の中間点ガラス温度および補外融解開始温度は、JIS K7121(1987)の方法に準じて、示差走査熱量計(DSC 7020、セイコーインスツル社製)を用いて測定したDSC曲線に基づいて求めた。
【0053】
[融点]
示差走査熱量計(DSC 7020、セイコーインスツル社製)を用い、フッ素樹脂を10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークを記録し、フッ素樹脂の融解ピークの最大値に対応する温度(℃)を求め、この値をフッ素樹脂の融点とした。
【0054】
[低沸成分の含有量]
示差熱・熱重量同時測定機(TG/DTA7200、日立ハイテク社製)を用いて、60mgの粒子(フッ素樹脂を含む粒子)を乾燥空気中にて、50℃から10℃/分で昇温し、フッ素樹脂の230℃で30分保持する処理を実施して、処理前後の粒子の質量に基づいて、以下の式によって算出した。
粒子中の低沸成分の含有量[質量%]=100×(処理前の粒子の質量-処理後の粒子の質量)/処理前の粒子の質量)
【0055】
[熱処理前後の低沸成分の減少割合]
熱処理前後の粒子中の低沸成分の減少割合[%]=100×(熱処理前の粒子に含まれる低沸成分の含有量-熱処理後の粒子に含まれる低沸成分の含有量)/熱処理前の粒子に含まれる低沸成分の含有量)
【0056】
[平均粒子径]
0.1質量%の界面活性剤(ニューコール 1308FA(90)、日本乳化剤社製)水溶液中に粒子を分散し、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(LA-920、堀場製作所社製)を用いて、体積基準のメジアン径を測定した。
【0057】
[見掛け密度]
JIS K6819に準拠して、粒子の見掛け密度を測定した。
【0058】
[盛置き試験]
スライドガラスに載置した2cm×5cmの長方形の型枠内に、実施例および比較例の粉砕処理後の粒子を、焼付け後の膜厚が約200μmとなるように充填した。型枠を静かに取り外した後、300℃で60分間電気炉中において焼成し、焼成後の塗膜の発泡状態を目視で観察し、次の基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:発泡痕が全く認められなかった。
○:発泡痕が殆ど認められなかった。
×:全面に発泡痕が認められた。
【0059】
[フィブリル化試験]
粉砕後の各粒子を目視で観察し、次の基準で評価した。
有:フィブリル化している
無:フィブリル化していない
【0060】
[フッ素樹脂1を含む粒子A1の製造]
内容積が430Lの攪拌機付き重合槽内を脱気した。重合槽内に、CF3(CF2)5Hの418.2kg、PFBEの2.12kg、メタノールの3.4kgを入れ、攪拌しながら66℃まで昇温した。重合槽内に、TFE/エチレン=84/16(モル比)の混合ガスを、重合槽内の圧力が1.5MPa[gage]になるまで導入した。重合槽内に、50質量%のtert-ブチルペルオキシピバレートのCF3(CF2)5H溶液の26gおよびCF3(CF2)5Hの4974gを混合した溶液を注入し、重合を開始した。重合中は、重合槽内の圧力が1.5MPa[gage]となるようにTFE/エチレン=54/46(モル比)の混合ガス、および該混合ガスの100モル%に対して1.4モル%に相当する量のPFBEを連続的に導入した。TFE/エチレン混合ガスの34kgを仕込んだ後、重合槽を冷却し、残留ガスをパージし、重合を終了させた。このようにして、フッ素樹脂1を含むスラリーを得た。なお、フッ素樹脂1は、溶融成形可能な樹脂であった。
【0061】
重合槽内のスラリーを850Lの造粒槽へ移し、340Lの水を加えて攪拌しながら、105℃で加熱し、溶媒および未反応の単量体を除去して、造粒物を得た。造粒物を150℃で5時間乾燥して、フッ素樹脂1を含む粒子A1(平均粒子径1.6mm)の34kgを得た。
フッ素樹脂1に含まれるエチレンに基づく単位とTFEに基づく単位とのモル比(E単位/TFE単位)は、45.0/55.0(モル比)であり、PFBEに基づく単位の含有量は、フッ素樹脂を構成する重合体の全単位に対して、1.7モル%であった。
フッ素樹脂1は、中間点ガラス温度が90℃であり、補外融解開始温度が240℃であり、融点が260℃であった。
【0062】
[実施例1]
熱処理槽内(熱風方式、大阪冷研社製)にフッ素樹脂1を含む粒子A1の25kgを保管して、150℃で1時間、粒子A1の熱処理を実施して、フッ素樹脂1を含む粒子B1を得た。
ターボミル粉砕機(ターボ工業社製)を用いて、得られた粒子B1を粉砕して、フッ素樹脂1を含む粒子C1を得た。
【0063】
[実施例2~6、比較例1~2]
粒子A1の熱処理条件(熱処理温度、熱処理時間)を表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、熱処理後の粒子B2~B8および粉砕処理後の粒子C2~C8を得た。
【0064】
【0065】
[実施例7~14]
フッ素樹脂1を含む粒子A1の20kgを日空工業社製バキュームタンブルドライヤー(50L)に入れ、回転速度10rpm、真空度5torrとし、表2に示す温度および時間で熱処理を行った。熱処理後は実施例1と同様に粉砕した。
【0066】
【0067】
[実施例15~17]
フッ素樹脂1を含む粒子A1の15kgを奈良機械製作所製 バッチ式流動層乾燥機(B-FBD)を用いて、熱処理温度200℃、表3に示す時間で熱処理した。熱処理後は実施例1と同様に粉砕した。
【0068】
【0069】
[実施例18~21]
フッ素樹脂1を含む粒子A1の15kgを、カトー製 小型熱風循環式恒温器TRO-52DPAを用いて表4に示す熱風温度、時間で熱処理した。熱処理後は実施例1と同様に粉砕した。
【0070】
【0071】
[実施例22]
粒子C1~C6、C9~C21について、下記の条件でライニング試験を行ったところ低沸成分由来の白煙は粒子C8に比べ大幅に低減していることが確認された。
ライニング試験:ロックンロール方式を用いて行った。外径20mmの鋼管に粒子を投入し、直火加熱にてライニングを行った。一定時間時間経過後、フランジの一部を開き、目視により低沸成分由来の白煙を観察した。
【0072】
表1~4に示す通り、溶融成形可能なフッ素樹脂を含む粒子を、中間点ガラス転移温度以上の温度であって補外融解開始温度以下の温度で熱処理すれば、低沸成分の除去性に優れるのが確認できた(実施例1~21)。
これに対して、溶融成形可能なフッ素樹脂を含む粒子を、補外融解開始温度を超える温度で熱処理した場合、粒子同士が融着してしまって、粉砕することができず、各種評価を実施できなかった(比較例1)。
また、溶融成形可能なフッ素樹脂を含む粒子を、中間点ガラス転移温度未満の温度で熱処理した場合、低沸成分の除去性に劣るのが確認できた(比較例2)。
【0073】
なお、2018年12月27日に出願された日本特許出願2018-245705号および2019年9月17日に出願された日本特許出願2019-168193号の明細書、特許請求の範囲及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。