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特許7476903フィルム状接着剤及びその分断性評価方法、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及びその製造方法、並びに半導体装置
<図1>
  • 特許-フィルム状接着剤及びその分断性評価方法、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及びその製造方法、並びに半導体装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】フィルム状接着剤及びその分断性評価方法、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及びその製造方法、並びに半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240423BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20240423BHJP
   C09J 7/35 20180101ALN20240423BHJP
   C09J 7/38 20180101ALN20240423BHJP
   C09J 163/04 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/52 E
C09J7/35
C09J7/38
C09J163/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021554056
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013478
(87)【国際公開番号】W WO2021084778
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2019195277
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】山中 大輔
(72)【発明者】
【氏名】彼谷 美千子
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-29465(JP,A)
【文献】特開2009-283925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/52
C09J 7/35
C09J 7/38
C09J 163/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却エキスパンドが実施される低温条件下におけるフィルム状接着剤の分断性評価方法であって、
フィルム状接着剤から断面積A(mm)の試料を準備する工程と、
-15℃~0℃の範囲の低温条件下において割断試験によって前記試料の割断仕事W(N・mm)、割断強度P(N)及び割断伸びL(mm)を求める工程と、
下記式(1)で表される割断係数mを求める工程と、
下記式(2)で表される割断抵抗R(N/mm)を求める工程と、
を含む、分断性評価方法。
m=W/[1000×(P×L)]・・・(1)
R=P/A・・・(2)
【請求項2】
基材層と、前記基材層と対面する第1の面及びその反対側の第2の面を有する粘着剤層と、前記粘着剤層の前記第2の面上に設けられた接着剤層とを備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの製造方法であって、
基材層と粘着剤層の積層体であるダイシングフィルムを準備する工程と、
以下の条件下で実施される請求項1に記載の分断性評価方法において、割断係数mが0超70以下であり且つ割断抵抗Rが0N/mm超40N/mm以下であるフィルム状接着剤を選定する工程と、
前記フィルム状接着剤からなる接着剤層を前記ダイシングフィルムの前記粘着剤層側の表面に形成する工程と、
を含むダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの製造方法。
<条件>
試料の幅:5mm
試料の長さ:23mm
押し込み冶具と試料の相対速度:10mm/分
【請求項3】
冷却エキスパンドが実施される半導体装置の製造プロセスに適用さるフィルム状接着剤であって、
以下の条件下で実施される請求項1に記載の分断性評価方法において、割断係数mが0超70以下であり且つ割断抵抗Rが0N/mm超40N/mm以下であるフィルム状接着剤。
<条件>
試料の幅:5mm
試料の長さ:23mm
押し込み冶具と試料の相対速度:10mm/分
【請求項4】
基材層と、
前記基材層と対面する第1の面及びその反対側の第2の面を有する粘着剤層と、
前記粘着剤層の前記第2の面上に設けられた接着剤層と、
を備え、
前記接着剤層が請求項3に記載のフィルム状接着剤からなる、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム。
【請求項5】
請求項3に記載のフィルム状接着剤を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルム状接着剤及びその分断性評価方法、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及びその製造方法、並びに半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC等の半導体装置は、例えば、以下の工程を経て製造される。まず、ダイシング用粘着シートに半導体ウェハを貼り付け、その状態で半導体ウェハを半導体チップに個片化する(ダイシング工程)。その後、ピックアップ工程、圧着工程及びダイボンディング工程等が実施される。特許文献1は、ダイシング工程において半導体ウェハを固定する機能と、ダイボンディング工程において半導体チップを基板と接着させる機能とを併せ持つダイシング・ダイボンディングフィルムを開示する。ダイシング工程において、半導体ウェハ及びダイボンディングフィルム(フィルム状接着剤)を個片化することで、接着剤片付きチップが得られる。
【0003】
従来、半導体ウェハ及び接着剤層のダイシングは、ブレード等による物理的な切断によって実施されてきた。近年、半導体パッケージの高集積化に伴ってウェハの薄膜化が進展している。これに起因して、ダイシング工程中のチップ割れ等の不具合が発生しやすくなっている。厚さ50μm以下のウェハを対象とするダイシング工程においては、高い歩留まりを維持する観点から、従来の物理的な切断方法に替わる新たな加工方法が開発されている。
【0004】
新しい加工方法の一つとして、加工対象物にレーザによって切断予定ラインを形成した後、加工対象物を切断予定ラインに沿って切断する方法が知られている(特許文献2,3参照)。この方法でウェハを個片化するプロセスはステルスダイシングと称される。特許文献4,5では、ステルスダイシングに適用されるダイシングフィルム(粘着剤層)の機械特性又は熱特性について検討がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-218571号公報
【文献】特開2002-192370号公報
【文献】特開2003-338467号公報
【文献】特開2015-211080号公報
【文献】特開2016-115775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステルスダイシングに適用されるダイシングフィルムについては、その機械特性又は熱特性を評価することで、ステルスダイシングへの適用性をある程度見積もることができる。(特許文献4,5参照)。一方、本発明者らの検討によると、ダイボンディングフィルム(フィルム状接着剤)については、その機械特性又は熱特性に関する測定値のばらつきが大きいため、ステルスダイシングへの適用性を評価することが困難であり、また、フィルム状接着剤の改良の方向性を導くこともできていない。例えば、引張試験によってフィルム状接着剤の破断強度を測定しても、試料の取り付け時の歪み等に起因して破断点がばらついて測定値が安定しない。また、複数のフィルム状接着剤をラミネートして厚みを増す加工をして試料を準備すると、この準備に手間がかかるし、試料の良否が測定値に影響してフィルム状接着剤の正確な分断性を評価することができない。
【0007】
本開示は、冷却エキスパンドが実施される低温条件下におけるフィルム状接着剤の分断性を簡便且つ優れた再現性で評価できる方法を提供する。また、本開示は、冷却エキスパンドによって良好に分断されるフィルム状接着剤を提供するとともに、これを接着剤層として備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及びその製造方法、並びに半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面は、冷却エキスパンドが実施される低温条件下におけるフィルム状接着剤の分断性評価方法である。この分断性評価方法は、フィルム状接着剤から断面積A(mm)の試料を準備する工程と、-15℃~0℃の範囲の低温条件下において割断試験によって試料の割断仕事W(N・mm)、割断強度P(N)及び割断伸びL(mm)を求める工程と、下記式(1)で表される割断係数mを求める工程と、下記式(2)で表される割断抵抗R(N/mm)を求める工程とを含む。
m=W/[1000×(P×L)]・・・(1)
R=P/A・・・(2)
【0009】
本発明者らの検討によれば、低温条件下(-15℃~0℃)において、比較的簡便な手法である割断試験(抗折強度試験)によって割断係数m及び割断抵抗Rを求めることができるとともに、割断試験の結果の再現性が高い。このため、分断性を評価すべき複数のフィルム状接着剤について実際に分断性を評価しなくても、割断係数m及び割断抵抗Rのデータを取得するだけでフィルム状接着剤の分断性を評価することができる。
【0010】
本開示の一側面は、基材層と、基材層と対面する第1の面及びその反対側の第2の面を有する粘着剤層と、粘着剤層の第2の面上に設けられた接着剤層とを備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの製造方法に関する。この製造方法は、基材層と粘着剤層の積層体であるダイシングフィルムを準備する工程と、以下の条件下で実施される上記分断性評価方法において、割断係数mが0超70以下であり且つ割断抵抗Rが0N/mm超40N/mm以下であるフィルム状接着剤を選定する工程と、上記フィルム状接着剤からなる接着剤層をダイシングフィルムの粘着剤層側の表面に形成する工程とを含む。
<条件>
試料の幅:5mm
試料の長さ:23mm
押し込み冶具と試料の相対速度:10mm/分
【0011】
上記製造方法によれば、低温条件下における分断性が良好なフィルム状接着剤を接着剤層として使用するため、ステルスダイシングに適したダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを得ることができる。
【0012】
本開示の一側面は、冷却エキスパンドが実施さる半導体装置の製造プロセスに適用されるフィルム状接着剤に関する。このフィルム状接着剤は、以下の条件下で実施される上記分断性評価方法において、割断係数mが0超70以下であり且つ割断抵抗Rが0N/mm超40N/mm以下である。
<条件>
試料の幅:5mm
試料の長さ:23mm
押し込み冶具と試料の相対速度:10mm/分
【0013】
本開示の一側面はダイシング・ダイボンディング一体型フィルムに関する。すなわち、このダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、基材層と、基材層と対面する第1の面及びその反対側の第2の面を有する粘着剤層と、粘着剤層の第2の面上に設けられた接着剤層とを備え、接着剤層が上記フィルム状接着剤からなる。本開示の一側面は上記フィルム状接着剤を含む半導体装置である。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、冷却エキスパンドが実施される低温条件下におけるフィルム状接着剤の分断性を簡便且つ優れた再現性で評価できる方法が提供される。また、本開示によれば、冷却エキスパンドによって良好に分断されるフィルム状接着剤が提供されるとともに、これを接着剤層として備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及びその製造方法、並びに半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(a)は本開示に係るダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの一実施形態を模式的に示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)のB-B線に沿った模式断面図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、接着剤片付きチップを製造する過程を模式的に示す断面図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、接着剤片付きチップを製造する過程を模式的に示す断面図である。
図4図4は冶具に固定された状態の試料を模式的に示す斜視図である。
図5図5は押し込み冶具によって試料に荷重を加えている状態を模式的に示す断面図である。
図6図6は割断試験の結果の一例を模式的に示すグラフである。
図7図7は実施例及び比較例の結果をプロットしたグラフである。
図8図8は実施例4及び比較例4においてそれぞれ8回ずつ実施した割断試験の結果をプロットしたグラフである。
図9図9は低温環境下においてフィルム状接着剤の試料について3回の引張試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。「A又はB」とは、AとBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。
【0017】
本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0018】
本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、例示材料は特に断らない限り単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0019】
本実施形態に係るフィルム状接着剤は、半導体装置の製造プロセスにおいて、半導体ウェハWaの回路面F1の反対側の面F2に貼り付けられるものである(図1(a)及び図1(b)参照)。ここでは、フィルム状接着剤からなる接着剤層を備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムについて説明する。
【0020】
図1(a)は、本実施形態に係るダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)のB-B線に沿った模式断面図である。ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム10(以下、場合により、単に「フィルム10」という。)は、基材層1と、基材層1と対面する第1の面2a及びその反対側の第2の面2bを有する粘着剤層2と、粘着剤層2の第2の面2bの中央部を覆うように設けられた接着剤層5とをこの順序で備える。フィルム10は、レーザによって半導体ウェハWaに切断予定ラインを形成する工程と、その後の冷却エキスパンドによって半導体ウェハWa及び接着剤層5を個片化する工程と、これによって形成された接着剤片付きチップをピックアップする工程とを含む半導体装置の製造プロセスに適用されるものである。
【0021】
接着剤片付きチップ8の作製方法の一例について説明する。まず、半導体ウェハWaの回路面F1に保護フィルム20を貼り付ける。半導体ウェハWaにレーザを照射して複数本の切断予定ラインを形成する(ステルスダイシング)。その後、半導体ウェハWaに対してバックグラインディング及びポリッシングの処理をする。次いで、図2(a)に示すように、半導体ウェハWaの面F2に接着剤層5が接するようにフィルム10を貼り付ける。また、粘着剤層2の第2の面2bに対してダイシングリングDRを貼り付ける。その後、-15℃~0℃の温度条件下での冷却エキスパンドによって、半導体ウェハWa及び接着剤層5を個片化する。図2(b)に示すように、基材層1におけるダイシングリングDRの内側領域1aをリングRaで突き上げることによって基材層1に張力を付与する。これにより、半導体ウェハWaが切断予定ラインに沿って分断されるとともに、これに伴って接着剤層5も分断され、粘着剤層2の表面上に複数の接着剤片付きチップ8が得られる。
【0022】
基材層1におけるダイシングリングDRの内側領域1aを加熱することによって内側領域1aを収縮させる。図3(a)は、ヒーターのブローによって内側領域1aを加熱している様子を模式的に示す断面図である。内側領域1aを環状に収縮させて基材層1に張力を付与することで、隣接する接着剤片付きチップ8の間隔を広げることができる。これにより、ピックアップエラーの発生をより一層抑制できるとともに、ピックアップ工程における接着剤片付きチップ8の視認性を向上させることができる。必要に応じて紫外線照射によって粘着剤層2の粘着力を低下させた後、図3(b)に示すように、突き上げ冶具42で接着剤片付きチップ8を突き上げることによって粘着剤層2から接着剤片付きチップ8をはく離させるとともに、接着剤片付きチップ8を吸引コレット44で吸引してピックアップする。ピックアップされた接着剤片付きチップ8は、半導体装置の組立装置(不図示)に搬送され、回路基板等に圧着される。
【0023】
フィルム10が備える接着剤層5は、以下の条件下で実施される割断試験の結果を利用した分断性評価方法において、割断係数mが0超70以下であり且つ割断抵抗Rが0N/mm超40N/mm以下である。
<条件>
試料の幅:5mm
試料の長さ:23mm
押し込み冶具と試料の相対速度:10mm/分
【0024】
以下、割断試験について説明する。割断試験は抗折強度試験に分類されるものであり、試料の両端を固定した状態で試料が破断するまで試料の中央部を押し込む工程を含む。図4に示すように、試料Sは一対の冶具12,12に挟まれて固定された状態で割断試験に供される。一対の冶具12,12は、例えば、十分な強度を有する厚紙からなり、中央に矩形の開口12aをそれぞれ有する。固定された状態の試料Sの中央部に押し込み冶具15によって荷重を加える(図5参照)。
【0025】
試料Sは評価対象のフィルム状接着剤を切り出したものであればよく、フィルム状接着剤から切り出した複数の接着剤片を積層して試料を作製しなくてもよい。すなわち、試料Sの厚さは、フィルム状接着剤の厚さと同じであってもよい。試料Sの幅(図4におけるWs)は、例えば、1~30mmであり、3~8mmであってもよい。測定装置の状況に応じて適当な幅に設定すればよい。試料Sの長さ(図におけるLs)は、例えば、5~50mmであり、10~30mm又は6~9mmであってもよい。試料Sの長さは冶具12の開口12aのサイズに依存する。なお、冶具12の形状及び試料Sのサイズは、割断試験を実施できる限り、上記のもの以外であってもよい。
【0026】
押し込み冶具15は、円錐状の先端部15aを有する円柱状部材からなる。押し込み冶具15の直径(図5におけるR)は、例えば、3~15mmであり、5~10mmであってもよい。先端部15aの角度(図5におけるθ)は、例えば、40~120°であり、60~100°であってもよい。
【0027】
割断試験は、所定の温度に設定された恒温槽内で実施される。恒温槽は、-15℃~0℃の範囲の一定の温度(想定される冷却エキスパンドの温度)に設定すればよい。恒温槽として、例えば、株式会社アイテック社製、TLF-R3-F-W-PL-Sを使用できる。オートグラフ(例えば、株式会社エーアンドデイ製のAZT-CA01、ロードセル50N、圧縮モード)を使用し、割断仕事W、割断強度P及び割断伸びLを得る。
【0028】
押し込み冶具15と試料Sの相対速度は、例えば、1~100mm/分であり、5~20mm/分であってもよい。この相対速度が速すぎると割断過程のデータが十分に取得できない傾向にあり、遅すぎると応力が緩和して割断に至りにくい傾向にある。冶具15の押し込み距離は、例えば、1~50mmであり、5~30mmであってもよい。押し込み距離が短すぎると割断に至らない傾向にある。評価対象のフィルム状接着剤について、複数の試料を準備し、割断試験を複数回行って試験結果の安定性を確認することが好ましい。
【0029】
図6は割断試験の結果の一例を示すグラフである。図6に示すように、割断仕事Wは、縦軸を荷重とし、横軸を試料Sが破断するまでの押し込み量でグラフを作成したときに囲まれた面積である。割断強度Pは、試料Sが破断したときの荷重である。割断伸びLは試料Sが破断したときの試料Sの伸び量である。割断伸びLは、試料Sが破断したときの押し込み距離と冶具12の開口12aの幅から三角関数を用いて算出すればよい。
【0030】
割断試験によって得られた割断仕事W(N・mm)、割断強度P(N)及び割断伸びL(mm)の値から、式(1)及び式(2)より割断係数m(無次元)及び割断抵抗R(N/mm)を求める。
m=W/[1000×(P×L)]・・・(1)
R=P/A・・・(2)
【0031】
本発明者らの検討によると、以下の条件下で割断試験を実施したとき、割断係数mが0超70以下であり且つ割断抵抗Rが0N/mm超40N/mm以下であるフィルム状接着剤は、実際にステルスダイシングにおいて冷却エキスパンドをしたときに優れた分断性を有する。
<条件>
試料の幅:5mm
試料の長さ:23mm
押し込み冶具と試料の相対速度:10mm/分
【0032】
割断係数m(無次元)は、上記のとおり、0超70以下であり、好ましくは10~60であり、より好ましくは15~55である。割断係数mは低温条件下におけるフィルム状接着剤の延伸性に関するパラメータである。割断係数mが70を超えると、フィルム状接着剤の過度な延伸性により、分断性が不十分となる。なお、割断係数mが15以上であると、応力の伝播性が良好となる。割断抵抗Rは、上記のとおり、0N/mm超40N/mm以下であり、好ましくは0N/mm超35N/mm以下であり、より好ましくは1~30N/mmである。割断抵抗Rが40N/mmを超えると、フィルム状接着剤の過度な強度により、分断性が不十分となる。なお、割断抵抗Rが20N/mm以上であると、低温エキスパンドにおいて良好な応力伝播によってより一層優れた分断性が得られる。フィルム状接着剤として、割断係数m及び割断抵抗Rが上記範囲であるものを選定することで、ステルスダイシングを良好に実施できる。
【0033】
以下、フィルム状接着剤について説明する。フィルム状接着剤の一例として、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体とを含有する接着剤について説明する。これらの成分を含むフィルム状接着剤は、チップと基板との間、チップとチップとの間の接着性に優れる。また、このフィルム状接着剤に対して電極埋め込み性及びワイヤー埋め込み性等を付与することも可能であるとともに、ダイボンディング工程における低温での接着性を付与することも可能である。
【0034】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、多官能フェノール類、アントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
エポキシ樹脂硬化剤は、例えば、フェノール樹脂であってよい。フェノール樹脂は、分子内にフェノール性水酸基を有するものであれば特に制限なく用いることができる。フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化ナフタレンジオール、フェノールノボラック、フェノール等のフェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体は、原料としてグリシジル(メタ)アクリレートを、得られる共重合体に対し0.5~6質量%となる量に調整された共重合体であってよい。当該量が0.5質量%以上であると、高い接着力が得られ易くなる傾向にあり、当該量が6質量%以下であると、ゲル化を抑制できる傾向にある。グリシジル(メタ)アクリレートの残部はメチル(メタ)アクリレート等の炭素数1~8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、及びスチレン、アクリロニトリル等の混合物であってよい。アルキル(メタ)アクリレートは、エチル(メタ)アクリレート及び/又はブチル(メタ)アクリレートを含んでいてよい。各成分の混合比率は、得られるエポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体のTg(ガラス転移点)を考慮して調整することができる。Tgが-10℃以上であると、Bステージ状態での接着フィルムのタック性が良好になる傾向にあり、取り扱い性に優れる傾向にある。エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体のTgの上限値は、例えば、30℃であってよい。
【0037】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は10万以上であってよく、30万~300万又は50万~200万であってよい。重量平均分子量が300万以下であると、半導体チップと支持基板との間の充填性の低下を制御できる傾向にある。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0038】
硬化促進剤は、必要に応じて、第三級アミン、イミダゾール類、第四級アンモニウム塩類等の硬化促進剤を更に含有していてもよい。硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
フィルム状接着剤は、必要に応じて、無機フィラーを更に含有してもよい。無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ホウ素、結晶質シリカ、非晶質シリカ等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
フィルム状接着剤は、上記成分を溶剤に溶解あるいは分散してワニスとし、支持体上に塗布、加熱し溶剤を除去することによって形成して得る。支持体としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリイミド等のプラスチックのフィルムを使用することができ、これら支持体は、表面を離型処理して使用することもできる。
【0041】
溶剤としては、特に限定されないが、フィルム作製時の揮発性等を考慮すると、メタノール、エタノール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、2-エトキシエタノール、トルエン、キシレンなどの比較的低沸点の溶剤を使用するのが好ましい。また、塗膜性を向上させるために、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノンなどの比較的高沸点の溶剤を加えることもできる。
【0042】
無機フィラーを含むワニスの製造には、無機フィラーの分散性を考慮して、らいかい機、三本ロール、ボールミル又はビーズミルなどを使用するのが好ましく、これらを組み合せて使用することもできる。また、無機フィラーと低分子量物をあらかじめ混合した後、高分子量物を配合することによって、混合する時間を短縮することも可能となる。また、ワニスとした後、真空脱気等によってワニス中の気泡を除去することもできる。
【0043】
支持体へのワニスの塗布方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等が挙げられる。なお、支持体上に形成した接着剤層5をホットロールラミネートによって粘着剤層2に貼り合わせてもよいし、粘着剤層2の表面上に印刷によって接着剤層5を形成してもよい。
【0044】
フィルム状接着剤(接着剤層5)の厚さは、特に限定されるものではないが、3~150μmが好ましく、より好ましくは4~140μmであり、更に好ましくは5~135μmである。フィルム状接着剤の厚さ(試料Sの厚さ)が3μm以下であると割断強度Pが小さすぎてデータの安定性が不十分となる傾向にあり、150μmを超えると試料Sの設置が難しいためにデータの安定性が不十分となる傾向にある。データの安定性と取り扱いの観点から、フィルム状接着剤の厚さは3~135μm程度であることが特に好ましい。
【0045】
本発明者らの検討によると、割断仕事W(N・mm)は、例えば、(メタ)アクリル共重合体の含有量を増減させることで調整することができる。割断強度P(N)は、例えば、無機フィラーの含有量を増減させることで調整することができる。割断伸びL(mm)は、例えば、(メタ)アクリル共重合体の含有量を増減させることで調整することができる。
【0046】
フィルム10が備える基材層1及び粘着剤層2はダイシングフィルムとも称される。基材層1は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムからなる。基材層1の表面は、必要に応じてプライマー塗布、ΜV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理等の表面処理が施されていてもよい。基材層1の厚さは、例えば、60~150μmであり、好ましくは70~130μmである。基材層1として、冷却エキスパンド時に破断しないものを適用する。
【0047】
粘着剤層2は、例えば、感圧型であっても紫外線硬化型であってもよい。粘着剤層2は、冷却エキスパンドの際には接着剤片付きチップ8が飛散しない粘着力を有し、その後のピックアップ工程においては優れた剥離性を有することが好ましい。
【0048】
上記実施形態においては、接着剤層5としてフィルム状接着剤を備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルム10を例示したが、フィルム状接着剤を単独で使用してもよい。
【実施例
【0049】
以下、本開示について実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
<フィルム状接着剤の分断性評価>
後述の実施例及び比較例に係るフィルム状接着剤から接着剤片(幅5mm×長さ100mm)を切り出した。接着剤片を一対の冶具(厚紙)に固定するとともに、冶具からはみ出している接着剤片の箇所を除去した。これにより、評価対象の試料(幅5mm×長さ23mm)を得た。所定の温度条件に設定された恒温槽(株式会社アイテック社製、TLF-R3-F-W-PL-S)内において割断試験を実施した。すなわち、オートグラフ(株式会社エーアンドデイ社製、AZT-CA01、ロードセル50N)を用いて圧縮モード、速度10mm/分、押し込み距離5mmの条件で割断試験を実施し、フィルム状接着剤が破断したときの割断仕事W、割断強度P及び割断伸びLを求めた。上記の式(1)及び式(2)により、割断係数m及び割断抵抗Rを算出した。なお、各実施例及び各比較例について8回以上の割断試験を実施した。表1,2に記載の値は複数回の割断試験によって得られた結果の平均値である。
【0051】
上記分断性評価が冷却エキスパンドにおける分断性とマッチしていることを確認するため、後述の実施例及び比較例に係るフィルム状接着剤を接着剤層として備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムをそれぞれ作製し、接着剤層の分断性を以下の条件で評価した。
・シリコンウェハの厚さ:30μm
・ステルスダイシングによって個片化するチップサイズ:縦10mm×横10mm
・冷却エキスパンドの温度:実施例及び比較例の割断試験の恒温槽と同じ温度
・エキスパンド用リングによる突き上げ:10mm
・評価基準:エキスパンド用リングによる突き上げ後のシリコンウェハに光を照射した。隣接する接着剤片付きチップの間を光が通るもの(シリコンウェハ及び接着剤層が分断されているもの)を「A」とし、光が通らない領域があるもの(シリコンウェハ及び接着剤層が分断されていないもの)を「B」とした。
【0052】
<フィルム状接着剤の作製>
(実施例1)
以下の成分を含む組成物を調製した。
[エポキシ樹脂]
・o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鐵住金化学株式会社製、商品名:YDCN-700-10、エポキシ当量210g/eq、軟化点80℃):22質量部
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名EXA-830CRP、エポキシ当量160g/eq、25℃で液状):20質量部
[エポキシ樹脂硬化剤]
・フェノール樹脂(三井化学株式会社製、商品名:XLC-LL、軟化点:75℃):32質量部
[シランカップリング剤]
・3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名:A-189):0.1質量部
・3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名:A-1160):0.3質量部
[フィラー]
・シリカ(株式会社アドマテックス製):41質量部
[溶剤]
・シクロヘキサノン
【0053】
上記組成物に以下の成分を更に加えて混合した後、真空脱気することによってフィルム状接着剤用のワニスを調製した。
・アクリルゴム(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR-860P-3、重量平均分子量80万、ブチルアクリレート/エチルアクリレート/アクリロニトリル/グリシジルメタクリレート(質量比)=38.6/28.7/29.7/3.0、グリシジル基含有反復単位:3.0質量%):23質量部
・硬化促進剤(1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、四国化成工業株式会社、商品名:2PZ-CN):0.1質量部
【0054】
離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)の表面上にワニスを塗布した後、加熱によって溶剤を除去した。これにより、Bステージ状態のフィルム状接着剤(厚さ60μm)を得た。このフィルム状接着剤の分断性を温度0℃において評価した。表1に結果を示す。
【0055】
(実施例2)
厚さを60μmとする代わりに50μmとしたことの他は、実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。このフィルム状接着剤の分断性を温度0℃において評価した。表1に結果を示す。
【0056】
(実施例3)
以下の成分を含む組成物を調製した。
[エポキシ樹脂]
・o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鐵住金化学株式会社製、商品名:YDCN-700-10、エポキシ当量210g/eq、軟化点80℃):6質量部
[エポキシ樹脂硬化剤]
・フェノール樹脂(エア・ウォータ株式会社製、商品名:SKレジン-HE100-C):3質量部
・フェノール樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:GPH-103):3質量部
[シランカップリング剤]
・3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名:A-189):0.5質量部
・フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名:Y9669):1質量部
[フィラー]
・シリカ(株式会社アドマテックス製):30質量部
[溶剤]
・シクロヘキサノン
【0057】
上記組成物に以下の成分を更に加えて混合した後、真空脱気することによってフィルム状接着剤用のワニスを調製した。
・アクリルゴム(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR-860P-3、重量平均分子量80万、ブチルアクリレート/エチルアクリレート/アクリロニトリル/グリシジルメタクリレート(質量比)=38.6/28.7/29.7/3.0、グリシジル基含有反復単位:3.0質量%):57質量部
・硬化促進剤(1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、四国化成工業株式会社、商品名:2PZ-CN):0.01質量部
【0058】
離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)の表面上に上記ワニスを塗布した後、加熱によって溶剤を除去した。これにより、Bステージ状態のフィルム状接着剤(厚さ7μm)を得た。このフィルム状接着剤の分断性を温度-5℃において評価した。表1に結果を示す。
【0059】
(実施例4)
厚さを7μmとする代わりに20μmとしたことの他は、実施例3と同様にしてフィルム状接着剤を得た。このフィルム状接着剤の分断性を温度-10℃において評価した。表1に結果を示す。
【0060】
(比較例1)
以下の成分を含む組成物を調製した。
[エポキシ樹脂]
・o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鐵住金化学株式会社製、商品名:YDCN-700-10、エポキシ当量210g/eq、軟化点80℃):7質量部
[エポキシ樹脂硬化剤]
・フェノール樹脂(三井化学株式会社製、商品名:XLC-LL、軟化点:75℃):3質量部
[エポキシ樹脂硬化剤]
・フェノール樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:GPH-103):4質量部
[シランカップリング剤]
・3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名:A-189):0.4質量部
・フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名:Y9669):1質量部
[フィラー]
・シリカ(株式会社アドマテックス製):16質量部
[溶剤]
・シクロヘキサノン
【0061】
上記組成物に以下の成分を更に加えて混合した後、真空脱気することによってフィルム状接着剤用のワニスを調製した。
・アクリルゴム(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR-860P-3、重量平均分子量80万、ブチルアクリレート/エチルアクリレート/アクリロニトリル/グリシジルメタクリレート(質量比)=38.6/28.7/29.7/3.0、グリシジル基含有反復単位:3.0質量%):68質量部
・硬化促進剤(1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、四国化成工業株式会社、商品名:2PZ-CN):0.01質量部
【0062】
離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)の表面上に上記ワニスを塗布した後、加熱によって溶剤を除去した。これにより、Bステージ状態のフィルム状接着剤(厚さ7μm)を得た。このフィルム状接着剤の分断性を温度-5℃において評価した。表2に結果を示す。
【0063】
(比較例2)
以下の成分を含む組成物を調製した。
[エポキシ樹脂]
・o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鐵住金化学株式会社製、商品名:YDCN-700-10、エポキシ当量210g/eq、軟化点80℃):13質量部
[エポキシ樹脂硬化剤]
・フェノール樹脂(三井化学株式会社製、商品名:XLC-LL、軟化点:75℃):11質量部
[シランカップリング剤]
・3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名:A-189):0.4質量部
・3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名:A-1160):1質量部
[フィラー]
・シリカ(日本アエロジル株式会社製):8質量部
[溶剤]
・シクロヘキサノン
【0064】
上記組成物に以下の成分を更に加えて混合した後、真空脱気することによってフィルム状接着剤用のワニスを調製した。
・アクリルゴム(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR-860P-3、重量平均分子量80万、ブチルアクリレート/エチルアクリレート/アクリロニトリル/グリシジルメタクリレート(質量比)=38.6/28.7/29.7/3.0、グリシジル基含有反復単位:3.0質量%):66質量部
・硬化促進剤(1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、四国化成工業株式会社、商品名:2PZ-CN):0.03質量部
【0065】
離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)の表面上に上記ワニスを塗布した後、加熱によって溶剤を除去した。これにより、Bステージ状態のフィルム状接着剤(厚さ10μm)を得た。このフィルム状接着剤の分断性を温度0℃において評価した。表2に結果を示す。
【0066】
(比較例3)
比較例1と同様にして得たフィルム状接着剤(厚さ7μm)の分断性を温度-10℃において評価した。表2に結果を示す。
【0067】
(比較例4)
厚さを7μmとする代わりに20μmとしたことの他は、比較例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。このフィルム状接着剤の分断性を温度-10℃において評価した。表2に結果を示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
表1に示すとおり、実施例1~4は、割断係数mが70以下であり且つ割断抵抗Rが40N/mm以下であり、冷却エキスパンドによる分断性評価が「A」であった。これに対し、表2に示すとおり、比較例1~4は、割断係数mが70超であり且つ割断抵抗Rが40N/mm超であり、冷却エキスパンドによる分断性評価が「B」であった。実施例及び比較例で実施した割断試験の結果を利用した分断性評価は、冷却エキスパンドによる分断性評価の結果とマッチしているといえる。図7は実施例及び比較例の結果をプロットしたグラフである。
【0071】
図8は、実施例4及び比較例4においてそれぞれ8回ずつ実施した割断試験の結果をプロットしたグラフである。このグラフから、上記割断試験の再現性は十分高いといえる。これに対し、図9は温度-15℃において、フィルム状接着剤の試料(幅10mm×長さ100mm×厚さ60μm)について3回の引張試験の結果を示すグラフである。図9に示すとおり、従来の低温引張試験では試験毎のバラツキが大きく、この結果からフィルム状接着剤の分断性を評価することは困難である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本開示によれば、冷却エキスパンドが実施される低温条件下におけるフィルム状接着剤の分断性を簡便且つ優れた再現性で評価できる方法が提供される。また、本開示によれば、冷却エキスパンドによって良好に分断されるフィルム状接着剤が提供されるとともに、これを接着剤層として備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及びその製造方法、並びに半導体装置が提供される。
【符号の説明】
【0073】
1…基材層、2…粘着剤層、5…接着剤層(フィルム状接着剤)、8…接着剤片付きチップ、10…ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム、12…試料固定用の冶具、12a…開口、15…押し込み冶具、S…試料、Wa…半導体ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9