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特許7477287気体濃度算出装置の製造方法、気体濃度算出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】気体濃度算出装置の製造方法、気体濃度算出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/61 20060101AFI20240423BHJP
   G01J 1/04 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G01N21/61
G01J1/04 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019222115
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021092416
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-09-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ウィグ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング ヤンオッケ
(72)【発明者】
【氏名】ヘッド カールヨハン
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-049793(JP,A)
【文献】特開昭61-116645(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0270536(US,A1)
【文献】特開2013-120154(JP,A)
【文献】特開2013-083527(JP,A)
【文献】特開2012-031634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01J 1/00 - G01J 1/60
G01J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から発せられる光を気体に照射し、特定波長の赤外線を測定する方式で前記気体の濃度を算出する気体濃度算出装置の製造方法であって、
前記気体濃度算出装置は、合成樹脂製で両端に第一の開口部および第二の開口部を含む筒状部を有する筐体と、前記第一の開口部および前記第二の開口部にそれぞれ対向配置されて前記筒状部の内部に赤外線の光路を形成する第一のミラーおよび第二のミラーと、
前記筐体内に配置された赤外線発光素子および赤外線検出素子と、
を備え、
前記筒状部の軸方向両端面とは異なる位置にのみ気体取り込み穴が配置され、
前記筒状部の軸方向両端面を形成する前記第一のミラーおよび前記第二のミラーは、気体を通す貫通穴および光を通す貫通穴のいずれも有さず、
前記筐体の前駆体であって、前記筒状部の前記第一のミラーおよび前記第二のミラーの各設置位置より外側に食み出す、前記合成樹脂製の食み出し部をそれぞれ有する前駆体を用意する第一の工程と、
前記前駆体の前記各設置位置に前記第一のミラーおよび前記第二のミラーをそれぞれ配置した後に、前記食み出し部を熱で溶かしながら折り曲げて前記第一のミラーおよび前記第二のミラーに付着させることで、前記各設置位置に前記第一のミラーおよび前記第二のミラーを固定する第二の工程と、
を備える気体濃度算出装置の製造方法。
【請求項2】
前記第一のミラーおよび前記第二のミラーは、前記筒状部を形成する合成樹脂とは異なる合成樹脂で形成されるミラー本体に鏡面層が形成されるものであり、
前記第二の工程では、熱で溶かされた前記食み出し部を前記第一のミラーおよび前記第二のミラーの前記ミラー本体に付着させる請求項1記載の気体濃度算出装置の製造方法。
【請求項3】
前記気体濃度算出装置は、表面に赤外線発光素子および赤外線検出素子を含む基板を有し、
前記筒状部は、前記第一の開口部および前記第二の開口部を貫く軸に平行な板面を含む板状部を有し、
前記前駆体は、前記筒状部となる部分に一体に形成された合成樹脂製の枠状部であって、前記板状部の前記板面から外側に突出する枠状部と、前記板面から外側に突出する合成樹脂製の位置決めピンと、を有し、
前記枠状部は、前記基板の表面の周縁部を接触させる接触面と、前記基板の側面を覆う部分と、前記覆う部分に連続して前記接触面とは反対側に延びる突出片と、を有し、
前記板状部は、前記赤外線発光素子および赤外線検出素子が前記筒状部の内部に配置されるための第一の穴を有し、前記第一の穴は前記板状部を貫通し、
前記基板に、前記位置決めピンを貫通させる第二の穴を設け、
前記基板を前記前駆体の前記枠状部と係合させて、前記板状部の前記第一の穴に前記赤外線発光素子および赤外線検出素子を配置し、前記枠状部の前記接触面に前記基板の前記表面の周縁部を接触させ、前記基板の側面を前記枠状部の前記覆う部分で覆うとともに、前記前駆体の前記位置決めピンを前記基板の前記第二の穴に貫通させた後、
前記位置決めピンおよび前記枠状部の前記突出片の先端部を熱で溶かしながら変形させることにより、前記位置決めピンの先端部を前記第二の穴に付着させて固定するとともに、前記突出片の先端部を前記基板の裏面の周縁部に付着させて前記枠状部に前記基板を固定する第三の工程、を含む請求項1または2記載の気体濃度算出装置の製造方法。
【請求項4】
光源から発せられる光を気体に照射し、特定波長の赤外線を測定する方式で前記気体の濃度を算出する気体濃度算出装置であって、
合成樹脂製で両端に第一の開口部および第二の開口部を含む筒状部を有する筐体と、
前記第一の開口部および前記第二の開口部にそれぞれ対向配置されて前記筒状部の内部に赤外線の光路を形成する第一のミラーおよび第二のミラーと、
前記筐体内に配置された赤外線発光素子および赤外線検出素子と、
を備え、
前記筒状部の軸方向両端面とは異なる位置にのみ気体取り込み穴が配置され、
前記筒状部の軸方向両端面を形成する前記第一のミラーおよび前記第二のミラーは、気体を通す貫通穴および光を通す貫通穴のいずれも有さず、
前記第一のミラーおよび前記第二のミラーは、
前記第一の開口部および前記第二の開口部から前記第一のミラーおよび前記第二のミラーの外面周縁部に回り込むように付着している前記筒状部を構成する合成樹脂により、前記筒状部に固定されている気体濃度算出装置。
【請求項5】
前記第一のミラーおよび前記第二のミラーは、
前記筒状部を形成する合成樹脂とは異なる合成樹脂で形成されたミラー本体に鏡面層が形成されたものであり、
前記第一の開口部および前記第二の開口部から前記第一のミラーおよび前記第二のミラーの前記ミラー本体の外面周縁部に回り込むように付着している前記筒状部をなす合成樹脂により、前記筒状部に固定されている請求項4記載の気体濃度算出装置。
【請求項6】
表面に赤外線発光素子および赤外線検出素子を含む基板を有し、
前記筒状部は、前記第一の開口部および前記第二の開口部を貫く軸に平行な板面を含む板状部を有し、
前記筐体は、前記筒状部に一体に形成された合成樹脂製の枠状部であって、前記板状部の前記板面から外側に突出する枠状部と、前記板面から外側に突出する合成樹脂製の位置決めピンと、を有し、
前記枠状部は、前記基板の表面の周縁部を接触させる接触面と、前記基板の側面を覆う部分と、を有し、
前記赤外線発光素子および赤外線検出素子は、前記板状部の前記板面を貫通する第一の穴に配置され、
前記基板の前記表面の周縁部が前記枠状部の前記接触面に接触し、前記基板の側面が前記枠状部の前記覆う部分で覆われ、前記基板を貫通する第二の穴を前記筐体の前記位置決めピンが貫通し、
前記枠状部から前記基板の裏面の周縁部に回り込むように付着している前記枠状部を構成する合成樹脂と、前記第二の穴に付着している前記位置決めピンを構成する合成樹脂とにより、前記筐体に前記基板が固定されている請求項4または5記載の気体濃度算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体濃度算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源から発せられた光を分散させずに検体試料に照射し、特定波長の赤外線強度の変化を測定する方式(NDIR方式:Non-dispersive Infrared)で気体濃度算出装置としては、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された気体濃度算出装置は、被験者の呼気サンプルに含まれる複数の揮発性物質の検出および分析システムであって、上記揮発性物質の特定の吸光ピークの波長レンジに調整された少なくとも1つの赤外線光源と、コリメーション用に構成された赤外線の複数の反射面と、上記吸光ピークに相当する波長間隔における上記赤外線の透過光に対応する複数の電気出力信号を提供する少なくとも1つの検出器と、を含んでいる。さらに、上記赤外線光源、反射面および検出器の位置を決定する機械的な支持構造を含み上記呼気サンプルの受取および廃棄を行うよう構成され呼気サンプルを上記赤外線に曝す少なくとも1つの測定セルと、上記揮発性物質の赤外線吸収スペクトルに関する予めプログラムされた情報に従って上記電気出力信号を分析可能な少なくとも1つの電子信号処理装置と、を含んでいる。
【0003】
このシステムの応答は、表示その他の方法で通知され実質的に即座に知覚される。上記呼気サンプルは、被験者の近辺の自由空気中から収集され、上記測定セルは、十分な断面積を有する入口および出口を備え、上記測定セル内で呼気が実質的に層流とされる。また、上記揮発性物質の1つは二酸化炭素であり、被験者の近辺における二酸化炭素濃度の測定は、肺胞の二酸化炭素濃度の予測値と組み合わせて行い、上記呼気サンプルの希釈の程度を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5502269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気体濃度算出装置には小型化が求められている。高度な光学技術を用いた光路設計により反射を巧みに利用して、小さい筐体の内部に長い光路長を実現することにより、筐体内でのガスの光吸収量が増加し、小型化と高精度化を両立することができる。
しかし、合成樹脂製で軸方向両端に第一の開口部および第二の開口部をそれぞれ備えた筒状部と、第一の開口部および第二の開口部にそれぞれ対向配置されて筒状部の内部に赤外線の光路を形成する第一のミラーおよび第二のミラーと、を有する気体濃度算出装置においては、筒状部に第一のミラーおよび第二のミラーを固定する際に位置ズレが生じると、光路がゆがんで分析精度が低下する可能性がある。
【0006】
本発明の課題は、合成樹脂製で軸方向両端に第一の開口部および第二の開口部をそれぞれ備えた筒状部と、第一の開口部および第二の開口部にそれぞれ対向配置されて筒状部の内部に赤外線の光路を形成する第一のミラーおよび第二のミラーと、を有する気体濃度算出装置の製造方法として、筒状部に第一のミラーおよび第二のミラーを固定する際に位置ズレが生じにくい方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するための本発明の第一態様は、下記の構成(1)~(4)を有する気体濃度算出装置の製造方法である。
(1)光源から発せられた光を検体試料に照射し、特定波長の赤外線強度の変化を測定する方式で気体の濃度を算出する気体濃度算出装置の製造方法である。
(2)気体濃度算出装置は、合成樹脂製で軸方向両端に第一の開口部および第二の開口部をそれぞれ備えた筒状部を含む筐体と、第一の開口部および第二の開口部にそれぞれ対向配置されて筒状部の内部に赤外線の光路を形成する第一のミラーおよび第二のミラーと、を有する。
(3)筐体の前駆体であって、筒状部の第一のミラーおよび第二のミラーの各設置位置より軸方向外側に食み出す、合成樹脂製の食み出し部をそれぞれ有する前駆体を用意する工程を含む。
(4)前駆体の各設置位置に第一のミラーおよび第二のミラーをそれぞれ配置した後に、食み出し部を熱で溶かしながら折り曲げて第一のミラーおよび第二のミラーに付着させることで、各設置位置に第一のミラーおよび第二のミラーを固定する工程、を含む。
【0008】
本発明の第二態様は、下記の構成(11)~(13)を有する気体濃度算出装置である。
(11)光源から発せられた光を検体試料に照射し、特定波長の赤外線強度の変化を測定する方式で気体の濃度を算出する気体濃度算出装置である。
(12)合成樹脂製で軸方向両端に第一の開口部および第二の開口部をそれぞれ備えた筒状部を含む筐体と、第一の開口部および第二の開口部にそれぞれ対向配置されて筒状部の内部に赤外線の光路を形成する第一のミラーおよび第二のミラーと、を有する。
(13)第一の開口部および第二の開口部から第一のミラーおよび第二のミラーの外面周縁部に回り込むように付着している筒状部をなす合成樹脂により、筒状部に第一のミラーおよび第二のミラーが固定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の気体濃度算出装置の製造方法によれば、筒状部に第一のミラーおよび第二のミラーを固定する際に位置ズレが生じることが抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の気体濃度算出装置を示す概略斜視図である。
図2】実施形態の気体濃度算出装置の製造方法で使用する、筐体の前駆体を示す斜視図である。
図3】実施形態の気体濃度算出装置の製造方法で使用する、筐体の前駆体を示す斜視図であって、基板を固定する側を示す斜視図である。
図4】実施形態の気体濃度算出装置の製造方法のうち、前駆体の筒状部にミラーを固定する工程を説明する図である。
図5】実施形態の気体濃度算出装置の製造方法のうち、前駆体の枠状部に基板を固定する工程を説明する図である。
図6図5(b)を基板側から見た図である。
図7】実施形態の気体濃度算出装置を示す側面図である。
図8図7のA-A断面図である。
図9図7のB-B断面図である。
図10】実施形態の気体濃度算出装置の一部を基板側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
[気体濃度算出装置の構成]
図1に示すように、本実施形態の気体濃度算出装置10は、光源から発せられた光を分散させずに検体試料に照射し、特定波長の赤外線強度の変化を測定する方式で気体の濃度を算出する気体濃度算出装置であって、筒状部11を含むLCP(合成樹脂)製の筐体1、第一のミラー2、第二のミラー3、および基板4を備えている。
【0012】
筒状部11の軸方向両端に、第一のミラー2および第二のミラー3がそれぞれ対向配置されている。第一のミラー2および第二のミラー3は、PPS(筒状部11を形成する合成樹脂とは異なる合成樹脂)で所定形状に形成されたミラー本体に鏡面層が形成されたものである。第一のミラー2および第二のミラー3は、筒状部11の内部に赤外線の光路を形成する。
基板4の表面401に赤外線発光素子5および赤外線検出素子6が設置されている。基板4は、筒状部11と一体に形成された枠状部12に固定されている。赤外線検出素子6から出た赤外線は、第一のミラー2と第二のミラー3との間で複数回反射された後に、赤外線検出素子6で受光される。
【0013】
本実施形態の気体濃度算出装置10では、筒状部11の内部に取り込まれた気体により、赤外線発光素子5から出た特定波長の赤外線が吸収されることで、赤外線検出素子6で検出される赤外線強度が低下する。この赤外線強度の変化を測定することで、例えば、呼気に含まれるアルコール濃度が検出できる。
本実施形態の気体濃度算出装置10は、例えば、呼気を分析して呼気中のアルコール濃度を検出できる装置であって、特許文献1に記載された「被験者の呼気サンプルに含まれる複数の揮発性物質の検出および分析システム」が適用された装置である。この装置であれば、マウスピース無しで、呼気取り込み穴から筒状部11内に導入された呼気を用いて、呼気中のアルコール濃度を適切に予測できる。
【0014】
[筐体の前駆体について]
本実施形態の気体濃度算出装置10の製造方法では、先ず、筐体1の前駆体として、図2および図3に示す前駆体100を用意する。
図2および図3に示すように、前駆体100は、筐体1の筒状部となる部分110と、筒状部となる部分110に一体に形成された枠状部12と、位置決めピン13とを有する。
筒状部となる部分110は、軸方向一端に第一の開口部111を、軸方向他端に第二の開口部112をそれぞれ備えている。第一の開口部111の内面に、第一のミラー2の設置位置の基準となる段差面111aが形成されている。段差面111aより軸方向外側は厚さの薄い部分である。第一の開口部111は、第一のミラー2の設置位置より外側に食み出す食み出し部111bを有する。第二の開口部112も、同様の形状を有している。筒状部となる部分110の軸方向に垂直な断面形状は、長方形の四つの角部が円弧状になっている形状である。
【0015】
筒状部となる部分110は、この長方形の長辺を含む平面(軸方向に平行な板面:第一の開口部111および第二の開口部112を貫く軸に平行な板面)を含む第一の板状部113および第二の板状部114を有し、第一の板状部113に複数の気体取り込み穴113aが形成されている。また、第二の板状部114に、基板4上に形成された赤外線発光素子5や赤外線検出素子6などを筒状部11内に配置するための四角形の配置穴(第一の穴)114aと、筒状部の外側と内側の気体が入れ替わる速度を上げるための六角形の穴114bと、前駆体100と基板4との位置決めに使用する位置決めピン13が形成されている。気体取り込み穴113aは第一の板状部113を貫通し、配置穴114aと六角形の穴114bは第二の板状部114を貫通している。
【0016】
前駆体100の枠状部12は、筒状部となる部分110の第二の板状部114から外側に突出するように形成されている。枠状部12は、筒状部11の軸方向両端側に配置された一対の正面板121と、筒状部11の幅方向両端側に配置された一対の側板122と、両者の境界部123を有する。正面板121は側板122よりも突出寸法が小さい。境界部123は、側板122から連続して正面板121側に直角に回り込んだ部分であり、側板122と同じ突出寸法を有する。正面板121の筒状部となる部分110とは反対側の面である下面121aは、隣り合う境界部123の間に存在し、基板4の表面(素子が設置されている面)401の周縁部を接触させる面である。
【0017】
側板122の内面には、正面板121の下面121aと同じ面内にある縁面122aが、側板122の長手方向全体に形成されている。側板122の筒状部となる部分110の軸方向他端(以下、単に「軸方向」とも言う)側に、一対の切り込み部124を介して、側板122の他の部分よりも突出寸法が大きい突出片122bが形成されている。切り込み部124は、縁面122aの手前までの深さで形成されている。境界部123側の切り込み部124よりも軸方向他端側に、側板122の突出端から縁面122aまで至る突出部125が形成されている。突出部125の突出寸法は縁面122aの幅と同じである。
【0018】
[ミラーを固定する工程]
本実施形態の気体濃度算出装置10の製造方法では、次に、筒状部となる部分110に第一のミラー2および第二のミラー3を固定する工程を以下に示す方法で行う。この方法を、図4を用いて説明する。図4(a)は側面図であり、図4(b)~(d)は筐体1の幅方向中心に沿った断面図である。
図4(a)に示すように、先ず、第一の開口部111から第一のミラー2を筒状部となる部分110内に挿入し、第二の開口部112から第二のミラー3を筒状部となる部分110内に挿入する。その際に、図4(b)に示すように、第一のミラー2の反射面21とは反対側の端部に設けた外周突起部22を、第一の開口部111の食みだし部111bの内面に当てて押し入れる。同様に、第二のミラー3の反射面31とは反対側の端部に設けた外周突起部32を、第二の開口部112の食みだし部112bの内面に当てて押し入れる。
【0019】
これにより、図4(c)に示すように、第一のミラー2は、外周突起部22が段差面111aに当たるまで、筒状部となる部分110の第一の開口部111内に入る。同様に、第二のミラー3は、外周突起部32が段差面112aに当たるまで、筒状部となる部分110の第二の開口部112内に入る。その結果、食み出し部111bより内側の位置に第一のミラー2が設置され、第二の開口部112の食み出し部112bより内側の位置に第二のミラー3が設置される。
【0020】
次に、図4(c)の状態で、筒状部となる部分110の第一の開口部111側および第二の開口部112側から、金型を押し付けながら金型を加熱することで、食み出し部111b,112bを熱で溶かしながら折り曲げて、第一のミラー2および第二のミラーに付着させる。
これにより、前駆体100の筒状部となる部分110に第一のミラー2および第二のミラー3が固定される。つまり、図4(d)に示すように、第一の開口部111および第二の開口部112から第一のミラー2および第二のミラー3の外面周縁部に回り込むように、LCP(筒状部をなす合成樹脂)が付着して、LCPからなるフランジ部118が形成された状態になる。その結果、前駆体100の筒状部となる部分110が筐体1の筒状部11となる。
【0021】
[基板を固定する工程]
その後、前駆体100に基板4を固定する工程を以下に示す方法で行う。この方法を、図5および図6を用いて説明する。なお、図5(b)の破断部の断面は、図6のa-a断面および図6のb-b断面に対応する断面である。
図5(a)および図6に示すように、基板4の面内には、前駆体100の位置決めピン13に対応する位置に、位置決めピン13を貫通させる位置決め穴(第二の穴)41が形成されている。位置決め穴41は、位置決めピン13の直径より僅かに大きな直径を有する小径部411と、位置決めピン13の直径よりも十分に大きな直径を有する大径部412とからなり、小径部411と大径部412との間に段差面413を有する。
【0022】
また、基板4の側面402には、前駆体100の枠状部12の突出片122bに対応する位置に、側面402から裏面403の周縁部に至る切欠き部42が形成されている。切欠き部42は、階段状に形成され、側面402からの切欠き寸法が大きくて裏面403からの切欠き寸法が小さい第一部分421と、側面402からの切欠き寸法が小さくて裏面403からの切欠き寸法が大きい第二部分422とからなる。
先ず、前駆体100の第一の板状部113の外側に板状の蓋7を設置して、気体取り込み穴113aを保護する。次に、基板4の表面401側を前駆体100の枠状部12側に向けて、基板4を枠状部12内に入れる。その際に、前駆体100の位置決めピン13を基板4の位置決め穴41内に入れるとともに、基板4の四つの角部43を、枠状部12の境界部123に設けた一対の突出部125でそれぞれ位置決めする。図5(b)および図6はこの状態を示す。
【0023】
次に、金型を用いた熱溶着法により、図5に示す状態から図7図10に示す状態に変化させる。
この工程で、枠状部12の突出片122bの側板122から食みだしている部分(突出片の先端部)122cを、熱で溶かしながら折り曲げて基板4の切欠き部42に入れることで、裏面403の周縁部に付着させる。これと同時に、前駆体100の位置決めピン13の基板4から出ている部分(位置決めピン13の先端部)131を、熱で溶かしながら押しつぶして、基板4の位置決め穴41の大径部412内に入れて、段差面413に付着させる。
【0024】
この状態で、図8に示すように、突出片の先端部122cを形成していた合成樹脂は、熱で溶かされて切欠き部42の形状に沿った形状の塊122dとして存在する。また、図9に示すように、位置決めピン13の先端部131は、熱で溶かされる際に径方向外側に広がって、位置決め穴41の段差面413に付着することで、リベット結合に似た結合状態が得られる。
このように、枠状部12および位置決めピン13をなす合成樹脂であるLCPが溶けて、基板4に付着した状態になることで、枠状部12に基板4が固定される。
【0025】
本実施形態の気体濃度算出装置の製造方法によれば、筒状部に対する第一のミラーおよび第二のミラーの固定を、接着剤を用いて行う場合と比較して、第一のミラーおよび第二のミラーの筒状部に対する位置ズレが抑制できる。また、筐体に基板をねじ止めで固定する場合と比較して、筐体に対する基板の位置ズレが抑制できる。
さらに、本実施形態の気体濃度算出装置の製造方法では、前駆体100をなす合成樹脂(結合対象物の材料)の熱溶着で、第一のミラー2、第二のミラー3、および基板4を筐体1に結合している。よって、結合対象物以外の材料を用いて結合を行う場合と比較して、結合対象物以外の材料が結合対象物間に存在することで生じる膨張係数差に起因する問題が生じない。加えて、本実施形態の方法は、迅速かつ簡単な製造技術で実施できるため、大量生産に適した方法である。
【符号の説明】
【0026】
10 気体濃度算出装置
1 筐体
100 前駆体
110 筒状部となる部分
11 筒状部
111 第一の開口部
111a 第一のミラーの設置位置の基準となる段差面
111b 食み出し部
112 第二の開口部
112b 食み出し部
113 第一の板状部
113a 気体取り込み穴
114 第二の板状部
114a 配置穴(第一の穴)
118 フランジ部(熱溶着で生じた部分)
12 枠状部
121 正面板
121a 正面板の下面(基板の表面を接触させる接触面)
122 側板
122a 縁面(基板の表面を接触させる接触面)
122b 突出片
122c 突出片の先端部
1221 基板の側面を覆う部分
123 境界部
124 切り込み部
125 突出部
13 位置決めピン
131 位置決めピンの先端部
2 第一のミラー
3 第二のミラー
4 基板
401 基板の表面
402 基板の側面
403 基板の裏面
41 位置決め穴(第二の穴)
411 小径部
412 大径部
413 段差面
42 切欠き部
421 切欠き部の第一部分
422 切欠き部の第二部分
5 赤外線発光素子
6 赤外線検出素子
7 蓋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10