(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ノズルを構成する中栓及び点眼剤容器
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20240423BHJP
B65D 47/18 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61J1/05 313C
B65D47/18
(21)【出願番号】P 2020033261
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】田中 良到
(72)【発明者】
【氏名】金澤 麻子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豊明
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-016871(JP,A)
【文献】国際公開第2010/079693(WO,A1)
【文献】特開2014-57723(JP,A)
【文献】特開2017-197524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
B65D 47/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に装着されてノズルを構成する中栓であって、
前記中栓は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)とポリエチレン樹脂とを含む樹脂組成物からなり、
前記樹脂組成物の100重量部に対して、前記環状オレフィン共重合体(コポリマー)
として、COP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)又はCOC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)の割合が40~80重量部、前記ポリエチレン樹脂の割合が20~60重量部、前記環状オレフィン共重合体(コポリマー)
として、COP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)又はCOC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)と前記ポリエチレン樹脂との合計が100重量部であることを特徴とする中栓。
【請求項2】
前記中栓は、前記口部の先端面に接触するフランジ部と、前記口部の内面に接触する脚部とを有することを特徴とする請求項1に記載の中栓。
【請求項3】
前記ノズルは、前記中栓を貫通するノズル孔を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の中栓。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の中栓と、前記中栓が装着される口部を有する容器本体とを備えることを特徴とする点眼剤容器。
【請求項5】
前記容器本体は、少なくとも内容液に接する面に環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層を有することを特徴とする請求項
4に記載の点眼剤容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルを構成する中栓及びこれを備える点眼剤容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、点眼剤を収容した点眼剤容器としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂製容器が広く用いられている。特許文献1には、樹脂成形品からなる容器本体を備えた点眼剤容器を、所定の積層フィルムに密封包装することが記載されている。容器本体は、点眼剤の収容部と、収容部から突出したノズル部とを備え、ノズル部を目に向けて収容部を手指で押圧することにより、点眼剤容器から点眼剤を点眼することができるように構成されている。
【0003】
従来の点眼剤容器の構成樹脂において、ポリエチレン等は、安価であるが薬剤(有効成分等)が吸着しやすい欠点がある。包装袋等の包装容器において、内容成分の非吸着性に優れた樹脂として、環状オレフィン共重合体(コポリマー)が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-107322号公報
【文献】国際公開第2003/043895号
【文献】国際公開第2004/080370号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
収容部における点眼剤の収着(吸着又は吸収)を抑制するには、点眼剤の有効成分を収着しにくい材料を採用する必要がある。しかし、本発明者らの検討によれば、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を中栓に用いるとき、上述したPE、PP、PET等の樹脂に比べて環状オレフィン共重合体(コポリマー)が硬いことによる課題が判明した。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、点眼剤の収着(吸着、吸収)を抑制することが可能な中栓及びこれを備える点眼剤容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、容器本体の口部に装着されてノズルを構成する中栓であって、前記中栓は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)とポリエチレン樹脂とを含む樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物の100重量部に対して、前記環状オレフィン共重合体(コポリマー)の割合が25~85重量部、前記ポリエチレン樹脂の割合が15~75重量部、前記環状オレフィン共重合体(コポリマー)と前記ポリエチレン樹脂との合計が80~100重量部であることを特徴とする中栓を提供する。
【0008】
前記中栓は、前記口部の先端面に接触するフランジ部と、前記口部の内面に接触する脚部とを有してもよい。
前記ノズルは、前記中栓を貫通するノズル孔を有してもよい。
前記樹脂組成物が、ゴム又はエラストマーを含有してもよい。
前記樹脂組成物が、COP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)又はCOC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)の少なくとも1種を含んでもよい。
【0009】
また、本発明は、前記中栓と、前記中栓が装着される口部を有する容器本体とを備えることを特徴とする点眼剤容器を提供する。
前記容器本体は、少なくとも内容液に接する面に環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層を有してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の中栓は、非収着性に優れた環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層からなる接液部と、口部に接する外周部に設けられた緩衝部とを有することにより、点眼剤の収着(吸着、吸収)を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の中栓を容器本体の口部に装着した例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0013】
図1に、実施形態の中栓10を容器本体1の口部2に装着した例を示す。実施形態の点眼剤容器は、ノズル部11を有する中栓10と、中栓10が装着される口部2を有する容器本体1とを備える滴下容器からなる。容器本体1は、口部2からノズル部11が突出する方向とは反対方向に、内容物が収容される収容部5を有する。内容物は、液体からなる内容物、又は液体を含む内容物である。
【0014】
中栓10を口部2に装着すると、中栓10がノズル部11により容器本体1のノズルを構成する。
図1では、点眼剤容器の一般的な静置状態として、ノズル部11が上方、収容部5が下方に配置されている。点眼剤容器を使用する際、ノズル部11が下向き又は斜め下向きに配置される。また、点眼剤容器を保管する際、ノズル部11を横向きにしてもよい。
【0015】
ノズル部11は、収容部5に通じるノズル孔12を有する。収容部5に収容された内容物が、ノズル孔12を通じて容器本体1の外部に滴下される。実施形態の中栓10は、口部2の先端面2aに接触するフランジ部13と、外周面15において口部2の内面2bに接触する脚部14と、脚部14の内側においてノズル部11が収容部5に向けて延長された内筒部16を有する。ノズル孔12は、内筒部16の先端部16aまで連続して形成されている。脚部14の内面と内筒部16の外面との間には、空隙部17が形成されている。
【0016】
特に図示しないが、中栓10は、脚部14の内側がノズル孔12の内面まで樹脂で充填され、実施形態の内筒部16及び空隙部17を有しないように構成することも可能である。この場合、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む、後述の樹脂組成物から脚部14を成形することにより、脚部14が肉厚でも、成形不良を抑制することができる。ノズル部11、フランジ部13等は、脚部14と一体で成形することができる。
【0017】
中栓10は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)とポリエチレン樹脂とを含む樹脂組成物から構成されている。これにより、中栓10の接液部10aも、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む樹脂組成物から構成される。中栓10の接液部10aは、内容物の液体に接触し得る箇所の少なくとも一部又は全部である。接液部10aを構成し得る部位としては、ノズル孔12におけるノズル部11の内面、フランジ部13の内面、脚部14の内面及び外面、内筒部16の内面及び外面などが挙げられる。
【0018】
ここで、ノズル部11、脚部14、内筒部16の内面とは、ノズル孔12を中心とした径方向の内側の面である。また、フランジ部13の内面とは、ノズル部11が先端部11aに向けて突出する側とは反対側の面である。これらの外面とは、それぞれの内面とは反対側の面である。中栓10は、前記樹脂組成物から一体で成形されるため、接液部10a以外の部分を中栓本体部10bとして、全て環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む樹脂組成物から構成される。
【0019】
中栓10は、非収着性(非吸着性)に優れた樹脂として、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む樹脂組成物から成形される。環状オレフィン共重合体(コポリマー)としては、いわゆる一般的にCOP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)、COC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)等が挙げられる。これにより、内容物が中栓10に収着されることを抑制することができる。
【0020】
前記樹脂組成物に用いられるCOP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)としては、例えば2種以上の環状オレフィンの共重合体、またはその水素添加物が挙げられる。COP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)は、好ましくは非結晶性の重合体であり、より好ましくは、メタセシス等による環状オレフィンの開環重合体、又はその水素添加物である。COP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)は、COC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)等に比べて脂環式構造を含有する比率が高く、非収着性(非吸着性)に優れる。
【0021】
前記樹脂組成物に用いられるCOC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)としては、例えば少なくとも1種の環状オレフィンと、少なくとも1種の非環状オレフィンとの共重合体、またはその水素添加物が挙げられる。COC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)は、好ましくは非結晶性の重合体であり、より好ましくは、環状オレフィンとエチレンとの共重合体、又はその水素添加物である。
【0022】
前記環状オレフィン共重合体(コポリマー)の構成モノマーとして使用される環状オレフィンは、少なくとも1つの環構造を有する不飽和炭化水素(オレフィン)である。例えば、炭素原子数が3~20のシクロアルカンを有するビニルシクロアルカン及びその誘導体、炭素原子数が3~20のモノシクロアルケン及びその誘導体、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン(ノルボルネン系モノマー)等の少なくとも1種が挙げられる。
【0023】
前記ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン(ノルボルネン)及びその誘導体が挙げられる。ノルボルネン誘導体としては、アルキル基等の置換基を有する化合物、ノルボルナジエンのように不飽和結合を2以上有する化合物、3つ以上の環構造を有し、そのうち2つの環構造がノルボルネン骨格を構成する化合物が挙げられる。3つ以上の環構造を有するノルボルネン系モノマーとしては、トリシクロ[5.2.1.02,6]デセン(ジヒドロジシクロペンタジエン)や、ノルボルネンまたはジヒドロジシクロペンタジエンに1分子以上のシクロペンタジエンがディールス・アルダー反応により付加した化合物(例えばテトラシクロドデセン、ペンタシクロペンタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン等)、これらの水素添加物、二重結合の位置が異なる異性体、アルキル置換体等が挙げられる。
【0024】
前記COC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)の構成モノマーとして使用される非環状オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィン、3-デセン、3-ドデセン等のアルケン類が挙げられる。
【0025】
接液部10a及び中栓本体部10bを含む中栓10を構成する樹脂組成物のうち、樹脂成分は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)の少なくとも1種と、ポリエチレン樹脂の少なくとも1種とを含む混合物であることが好ましい。前記樹脂組成物の100重量部に対して、環状オレフィン共重合体(コポリマー)の割合は25~85重量部であることが好ましく、30重量部以上であることがより好ましい。
【0026】
前記樹脂組成物に用いられるポリエチレン樹脂としては、エチレンの単独重合体(エチレンホモポリマー)、エチレンと炭素数が4個のα-オレフィン(1-ブテン等)を共重合させた直鎖状低密度ポリエチレン(C4-LLDPE)、エチレンと炭素数が6個のα-オレフィン(1-ヘキセン等)を共重合させた直鎖状低密度ポリエチレン(C6-LLDPE)、エチレンと炭素数が8個のα-オレフィン(1-オクテン等)を共重合させた直鎖状低密度ポリエチレン(C8-LLDPE)、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン―ビニルアルコール共重合体(EVOH)などが挙げられる。
【0027】
前記樹脂組成物におけるポリエチレン樹脂の割合は、前記樹脂組成物の100重量部に対して、15~75重量部が好ましく、70重量部以下であることがより好ましい。前記樹脂組成物において、環状オレフィン共重合体(コポリマー)とポリエチレン樹脂との合計は、80~100重量部であることが好ましく、85重量部以上であることがより好ましく、90重量部以上であることが更に好ましく、95重量部以上であることが特に好ましい。
【0028】
中栓10を構成する樹脂組成物は、他の樹脂成分として、ゴム、エラストマー等を含有してもよい。これらのゴム又はエラストマーとしては、例えば天然ゴム、合成ゴム、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。中栓10を構成する樹脂成分は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)及びポリエチレン樹脂のみでもよく、環状オレフィン共重合体(コポリマー)及びポリエチレン樹脂と、他の樹脂等との混合物でもよい。さらに前記樹脂組成物に配合し得る他の樹脂としては、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0029】
前記樹脂組成物における、環状オレフィン共重合体(コポリマー)及びポリエチレン樹脂以外の樹脂成分(ゴム、エラストマー、ポリプロピレン樹脂等)の割合は、前記樹脂組成物の100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましく、15重量部以下であることがより好ましく、10重量部以下であることが更に好ましく、5重量部以下であることが特に好ましい。
【0030】
中栓10の製造は、前記樹脂組成物を射出成形等により、一体で成形する方法が好ましい。前記樹脂組成物は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)及びポリエチレン樹脂を混合し、混練によりブレンドして調製することができる。前記樹脂組成物には、上述したように、他の樹脂成分を添加することができる。そのほか、前記樹脂組成物の効果を損ねない範囲内で、所望の目的により、樹脂以外の添加剤、例えば、各種の無機物質、低分子の有機化合物等を配合することも可能である。中栓10は、全体が無色透明でもよく、厚さ方向又は面方向の一部又は全部が着色されてもよい。中栓10が透明の場合は、内容物に対する光線の影響を抑制するため、紫外線吸収剤等を添加することが好ましい。
【0031】
実施形態の中栓10は、ノズル部11に、中栓10を貫通するノズル孔12を有する。このノズル孔12及びノズル部11の先端部は、点眼剤容器においては、点眼剤を安定的に滴下するために適切な精度で加工される。ノズル孔12の直径は、点眼剤の液滴の容積等から適宜設定され、例えば、1~3mm程度が挙げられる。ノズル孔12の長さとしては、例えば、1~10mm程度が挙げられる。
【0032】
ノズル孔12を成形するには、例えば、射出成形の金型において、ピン状の部材を差し込み、その周囲で溶融樹脂を固化させてノズル部11を形成した後、ピン状の部材をノズル部11から抜去する方法が挙げられる。また、ノズル孔12は、後述するキャップCをノズル部11に保持させるために用いられる場合もある。このため、中栓10は、ノズル孔12に応力がかかっても、ノズル孔12に生じたひずみをきっかけにして割れることがない耐久性を備えることが好ましい。
【0033】
容器本体1は、中栓10が装着される口部2と、収容部5を囲む胴部4とを有する。口部2と胴部4との間には、段階的に縮径する肩部3を有してもよい。少なくとも容器本体1は、少なくとも内容液に接する面に、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層を有することが好ましい。容器本体1に用いられる環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む樹脂は、上述した中栓10に用いられる環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む樹脂と同様の選択肢から適宜設計してもよいが、これらの樹脂が同一でもよく、異なる樹脂でもよい。
【0034】
容器本体1は、補強層、ガスバリア層、紫外線吸収層、酸素吸収層、印刷層等を有してもよい。容器本体1を構成する各層の積層方法としては、ドライラミネート、押出ラミネート、共押出、塗布等が挙げられる。積層方法は、各層の材料、組み合わせ等に応じて適宜選択することができる。容器本体1は、全体が無色透明でもよく、厚さ方向又は面方向の一部又は全部が着色されてもよい。容器本体1の成形方法としては、特に限定されないが、例えばブロー成形等が挙げられる。容器本体1の容器種類としては、特に限定されないが、例えばボトル容器が挙げられる。
【0035】
実施形態の点眼剤容器は、ノズル部11を保護するため、キャップCを有してもよい。キャップCは、中栓10のノズル部11又は容器本体1の口部2、肩部3、胴部4の少なくともいずれかに対して、開閉又は着脱可能に連結されることが好ましい。収容部5の容量は、特に限定されないが、例えば20ml以下であり、3ml、5ml、10ml、15ml、20ml等が挙げられる。
【0036】
実施形態の点眼剤容器に充填される点眼剤としては、水性点眼剤、油性点眼剤、用時溶解点眼剤、懸濁性点眼剤などが挙げられる。点眼剤は、有効成分以外の添加剤として、可溶化剤、安定化剤、等張化剤、緩衝剤、pH調節剤、防腐剤、粘稠化剤などを含有してもよい。
【0037】
実施形態の点眼剤容器に充填される点眼剤の有効成分の具体例としては、プロスタグランジン関連薬として、イソプロピルウノプロストン、ラタノプロスト、トラボプロスト、タフルプロスト、ビマトプロスト;非ステロイド性抗炎症薬として、ジクロフェナクナトリウム、プラノプロフェン、ブロムフェナクナトリウム水和物、ネパフェナク;ビタミンB製剤として、シアノコバラミン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム;抗アレルギー成分として、アシタザノラスト水和物、アンレキサノクス、イブジラスト、エピナスチン塩酸塩、オロパタジン塩酸塩、クロモグリク酸ナトリウム、ケトチフェンフマル酸塩、トラニラスト、ペミロラストカリウム、レボカバスチン塩酸塩;免疫抑制薬として、シクロスポリン、タクロリムス水和物;β遮断薬として、カルテオロール塩酸塩、チモロールマレイン酸塩、ニプラジロール、ベタキソロール塩酸塩、レボブノロール塩酸塩;α1遮断薬として、ブナゾシン塩酸塩;α2刺激薬として、ブリモニジン酒石酸塩;副交感神経刺激薬として、ピロカルピン塩酸塩;交感神経刺激薬として、ジピベフリン塩酸塩;コリンエステラーゼ阻害薬として、ジスチグミン臭化物;白内障治療薬として、グルタチオン、ピレノキシン;抗菌薬として、ガチフロキサシン水和物、ジベカシン硫酸塩、トスフロキサシントシル酸塩水和物、トブラマイシン、バンコマイシン塩酸塩、モキシフロキサシン塩酸塩、レボフロキサシン水和物、塩酸ロメフロキサシン、オフロキサシン、クロラムフェニコール、ノルフロキサシン;β遮断薬・炭酸脱水酵素阻害薬配合剤として、ドルゾラミド塩酸塩、ブリンゾラミド等が挙げられる。
【0038】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0039】
実施形態の中栓を有する滴下容器は、点眼剤容器に限らず、他の内容物を収容する容器に適用することも可能である。例えば点鼻剤、点耳剤、その他、投与に際して薬液を患部に滴下する方式の薬剤または化粧水などの容器が挙げられる。
環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む樹脂組成物において、環状オレフィン共重合体(コポリマー)に代えて、又は環状オレフィン共重合体(コポリマー)と共に、環状オレフィンの単独重合体、又はその水素添加物を配合することも可能である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0041】
(中栓の作製)
表1及び表2に示す組成の樹脂組成物を用いて、ノズルを有する中栓を作製した。樹脂組成物の製造には、COP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)と、ポリエチレン樹脂(PE)を用いた。
【0042】
(残存率の測定)
直径24mm、高さ45mmの褐色ガラス瓶に中栓をそれぞれ1個と、内容液として株式会社資生堂の化粧水「リバイタル(登録商標)ローションEX I」を3ml入れ、アルミテープで封をした。中栓全体を内容液に浸漬させ、蓋にアルミテープを用いて褐色ガラス瓶の口を密封して、温度40℃、相対湿度75%の環境下で保管した。中栓を浸漬する前の内容液における酢酸トコフェロール(ビタミンE)の濃度(初期濃度)は、約477ppmであった。所定期間保管した後の内容液における酢酸トコフェロール(ビタミンE)の濃度(浸漬後濃度)を測定した。初期濃度と浸漬後濃度とから、残存率を次の式1のように算出した。
(式1) 残存率(%)=(浸漬後濃度/初期濃度)×100(%)
【0043】
【0044】
表1に、残存率(%)の測定結果を示す。残存率(%)は、初期濃度に対応する割合を100%として、28日経過後、60日経過後、90日経過後の3回測定した。COPが40重量%以上ブレンドされている樹脂組成物を用いて成形した番号1-1~1-5の中栓では、成分の残存率が高かった。これに対して、COPの割合が20重量%以下である樹脂組成物を用いて成形した番号1-6~1-7の中栓では、成分の残存率が極端に低下した。
【0045】
(割れ応力耐久性の試験)
中栓のノズル部に対し、作業者の手で工具の先端部を差し込んだ後、作業者が手で下向きに押し込み、前記工具の先端部を介して、ノズル孔に径方向の応力を加えた。前記工具の先端部は、ノズル孔の内面に接するテーパー面を有し、下向きの力を径方向の外向きに変換することができる。中栓が応力に耐久した場合を「○」、中栓が応力により2つに割れた場合を「×」と評価した。
【0046】
【0047】
表2に、割れ応力耐久性の試験結果を示す。ポリエチレン樹脂(PE)としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いた。COP100%で成形した番号2-1の中栓では、応力による割れが発生しなかった。LLDPEが10重量%ブレンドされている樹脂組成物を用いて成形した番号2-2の中栓では、応力による割れが発生した。LLDPEが20重量%以上ブレンドされている樹脂組成物を用いて成形した番号2-3~2-7の中栓では、応力による割れが発生しなかった。
【符号の説明】
【0048】
C…キャップ、1…容器本体、2…口部、2a…口部の先端面、2b…口部の内面、3…肩部、4…胴部、5…収容部、10…中栓、10a…接液部、10b…中栓本体部、11…ノズル部、11a…ノズル部の先端部、12…ノズル孔、13…フランジ部、14…脚部、15…脚部の外周面、16…内筒部、16a…内筒部の先端部、17…空隙部。