(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240423BHJP
B23D 5/02 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
H01L21/92 604Z
H01L21/92 604A
H01L21/92 604S
B23D5/02
(21)【出願番号】P 2020039304
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 曄
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 雅之
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-140940(JP,A)
【文献】特開2019-029543(JP,A)
【文献】特開2015-220303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
B23D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数のバンプを有した被加工物の加工方法であって、
該バンプの高さよりも大きい値の厚みを有した樹脂シートで被加工物の上面を覆い、該樹脂シートと被加工物の間を減圧し、隣接する該バンプの間に該樹脂シートを進入させて該樹脂シートを被加工物の表面に密着させるシート密着ステップと、
該シート密着ステップを実施した後、被加工物を保持テーブルで保持して該樹脂シートを露出させる保持ステップと、
該保持ステップを実施した後、該保持テーブルで保持された被加工物の該表面を覆う該樹脂シートを該バンプとともに切削バイトで切削して、該バンプの高さを揃える切削ステップと、
該切削ステップが施された該樹脂シートの上面及び該バンプの上面に表面保護テープを貼着する表面保護テープ貼着ステップと、
該表面保護テープとともに該樹脂シートを該被加工物の該表面から剥離する剥離ステップと、
を備えた加工方法。
【請求項2】
該樹脂シートは、被加工物に対応した領域に糊層が形成されていない、請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
被加工物は複数のバンプが形成された中央領域と、該中央領域を囲繞する外周余剰領域と、を有し、
該樹脂シートは被加工物の該中央領域に対応した領域には糊層が形成されず、被加工物の該外周余剰領域に対応した領域に糊層が形成されている、請求項1に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に複数のバンプを有した被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物は、デバイスの突起電力であるバンプの上端部がバイト切削装置により切削されることで、バンプの高さを揃えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1等のように、バンプの上端部をバイト切削装置により切削すると、切削によってバンプが引き伸ばされてバリが生じたり、バンプ間に切削屑が落下するという問題が生じる。
【0005】
そこでバリを低減する加工方法として、特許文献1に示された加工方法が提案されているが、復路の切削時にバリが生じるおそれがあった。また、バンプ間に落下した切削屑は、特許文献1に示された加工方法では防止することは難しい。バンプ間は、非常に狭いため、切削屑が入り込むと後の洗浄でも完全に除去することは非常に難しい。また、バリがバンプに残存したり、バンプ間に切削屑が入り込むと、被加工物から個片化されたデバイスの実装時に短絡等の不具合を生じかねない。
【0006】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被加工物から個片化されたデバイスの実装時の不具合を抑制することができる加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工方法は、表面に複数のバンプを有した被加工物の加工方法であって、該バンプの高さよりも大きい値の厚みを有した樹脂シートで被加工物の上面を覆い、該樹脂シートと被加工物の間を減圧し、隣接する該バンプの間に該樹脂シートを進入させて該樹脂シートを被加工物の表面に密着させるシート密着ステップと、該シート密着ステップを実施した後、被加工物を保持テーブルで保持して該樹脂シートを露出させる保持ステップと、該保持ステップを実施した後、該保持テーブルで保持された被加工物の該表面を覆う該樹脂シートを該バンプとともに切削バイトで切削して、該バンプの高さを揃える切削ステップと、該切削ステップが施された該樹脂シートの上面及び該バンプの上面に表面保護テープを貼着する表面保護テープ貼着ステップと、該表面保護テープとともに該樹脂シートを該被加工物の該表面から剥離する剥離ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
前記加工方法において、該樹脂シートは、被加工物に対応した領域に糊層が形成されていても良い。
【0009】
前記加工方法において、被加工物は複数のバンプが形成された中央領域と、該中央領域を囲繞する外周余剰領域と、を有し、該樹脂シートは被加工物の該中央領域に対応した領域には糊層が形成されず、被加工物の該外周余剰領域に対応した領域に糊層が形成されていても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、被加工物から個片化されたデバイスの実装時の不具合を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る加工方法の加工対象の被加工物を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示された被加工物の要部の断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図4に示された加工方法のシート密着ステップにおいて互いに密着される樹脂シートと被加工物とを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図4に示された加工方法のシート密着ステップにおいて密着装置の支持台上の被加工物の表面上に樹脂シートが載置された状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示された密着装置のチャンバの第1室と第2室との双方を減圧した状態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示された密着装置のチャンバの第1室を大気開放して被加工物の表面に樹脂シートを密着した状態を示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示された樹脂シートと被加工物の要部の断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態1に係る加工方法の保持ステップ及び切削ステップを実施するバイト切削装置の構成例を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、
図4に示された加工方法の切削ステップ後の被加工物の要部の断面図である。
【
図14】
図14は、
図4に示された加工方法の表面保護テープ貼着ステップを示す断面図である。
【
図15】
図15は、
図4に示された加工方法の裏面研削ステップを示す側面図である。
【
図17】
図17は、実施形態1の変形例に係る加工方法のシート密着ステップにおいて被加工物の表面に密着される樹脂シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る加工方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る加工方法の加工対象の被加工物を示す斜視図である。
図2は、
図1中のII部を拡大して示す平面図である。
図3は、
図2に示された被加工物の要部の断面図である。
図4は、実施形態1に係る加工方法の流れを示すフローチャートである。
【0014】
実施形態1に係る加工方法は、
図1に示す被加工物1の加工方法である。実施形態1に係る加工方法の加工対象の被加工物1は、シリコン(Si)、サファイア(Al
2O
3)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基板2とする円板状の半導体ウエーハ、光デバイスウエーハ等のウエーハである。被加工物1は、
図1に示すように、中央領域3と、外周余剰領域4とを上面である表面5に備える。
【0015】
中央領域3は、表面5に互いに交差する複数の分割予定ライン6が設定され、分割予定ライン6によって区画された各領域にデバイス7が形成されている。各デバイス7は、各デバイス7の電極に接続して、表面5よりも突出した
図2に示すバンプ8を複数有している。中央領域3は、デバイス7が表面5よりも突出したバンプ8を有しているために、表面5に複数のバンプ8が形成されて、表面5に凹凸が形成されている。また、被加工物1は、デバイス7が表面5よりも突出したバンプ8を有しているために、表面5に複数のバンプ8を有している。バンプ8は、導電性の金属により構成されている。実施形態1に係る加工方法が施される前の被加工物1のバンプ8は、
図3に示すように、上面9の表面5からの高さ10がバンプ8毎に異なるものが多い。なお、バンプ8の上面9の表面5からの高さ10を、以下、バンプ8の高さと記す。なお、上面9は、バンプ8の表面5から被加工物1の厚み方向に最も離れた箇所である。
【0016】
デバイス7は、例えば、IC(Integrated Circuit)、あるいやLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ等である。外周余剰領域4は、中央領域3を全周に亘って囲繞し、デバイス7等が形成されていない領域である。
【0017】
実施形態1において、被加工物1は、表面5の裏側の裏面11側が研削されて仕上げ厚みまで薄化されるとともに、複数のバンプ8の表面5からの高さ10(
図8に示す)が揃わされた後、分割予定ライン6に沿って個々のデバイス7に分割される。
【0018】
実施形態1に係る加工方法は、1枚の被加工物1を加工する方法であって、
図4に示すように、シート密着ステップ1001と、保持ステップ1002と、切削ステップ1003と、表面保護テープ貼着ステップ1004と、裏面研削ステップ1005と、剥離ステップ1006とを備える。
【0019】
(シート密着ステップ)
図5は、
図4に示された加工方法のシート密着ステップにおいて互いに密着される樹脂シートと被加工物とを示す斜視図である。
図6は、
図4に示された加工方法のシート密着ステップにおいて密着装置の支持台上の被加工物の表面上に樹脂シートが載置された状態を示す断面図である。
図7は、
図6に示された密着装置のチャンバの第1室と第2室との双方を減圧した状態を示す断面図である。
図8は、
図7に示された密着装置のチャンバの第1室を大気開放して被加工物の表面に樹脂シートを密着した状態を示す断面図である。
図9は、
図8に示された樹脂シートと被加工物の要部の断面図である。
【0020】
シート密着ステップ1001は、バンプ8の高さ10よりも大きい値の厚み21を有した
図5に示す樹脂シート20で被加工物1の表面5を覆い、樹脂シート20と被加工物1の間を減圧し、隣接するバンプ8の間に樹脂シート20を進入させて樹脂シート20を被加工物1の表面5に密着させるステップである。
【0021】
なお、実施形態1において、被加工物1の表面5に密着される樹脂シート20は、熱圧着性を有し、非粘着性でかつ非通気性の合成樹脂により構成された基材シート22のみで構成されている。なお、実施形態1では、樹脂シート20を構成する基材シート22は、例えば、ポリオレフィン系の合成樹脂により構成されている。樹脂シート20は、平面形状が被加工物1の平面形状よりも大きく形成され、実施形態1では、矩形状に形成されている。樹脂シート20の厚み21は、最も高いバンプ8の高さ10よりも厚い。実施形態1の加工方法で用いられる樹脂シート20は、熱圧着性を有し、非粘着性でかつ非通気性の合成樹脂により構成された基材シート22のみで構成されていることで、被加工物1に対応した領域に粘着性の糊層が形成されていないものである。なお、被加工物1に対応した領域とは、樹脂シート20の表面のうち被加工物1の表面5に重ねられる領域である。
【0022】
実施形態1において、シート密着ステップ1001では、
図6に示すように、密着装置30の内部に空間31を有するチャンバ32を構成する第1ケース体33と第2ケース体34とを互いに離し、空間31をチャンバ32の外部と連通させた後、ケース体33,34間を通して被加工物1がチャンバ32内に挿入されて、第2ケース体34内の支持台35上に被加工物1の裏面11が載置される。シート密着ステップ1001では、ケース体33,34間に樹脂シート20が挿入され、樹脂シート20を支持台35上の被加工物1の表面5上に載置するとともに、樹脂シート20の外縁部を全周に亘って第2ケース体34の外縁に載置する。
【0023】
なお、
図6に示すケース体33,34間に樹脂シート20が挿入される状態では、開閉弁38,39を開いて、ケース体33,34と開閉弁38,39とに接続された筒状の解放管40,41を大気解放し、開閉弁42,43を閉じて、ケース体33,34に接続された筒状の連通管46,47と吸引源44,45とを遮断する。
【0024】
なお、解放管40及び連通管46は、第1ケース体33に接続し、解放管40は、開閉弁38に接続し、連通管46は、開閉弁42を介して吸引源44に接続している。解放管41及び連通管47は、第2ケース体34に接続し、解放管41は、開閉弁39に接続し、連通管47は、開閉弁43を介して吸引源45に接続している。
【0025】
シート密着ステップ1001では、ケース体33,34同士を近づけて、空間31を密閉し、
図7に示すように、ケース体33,34の外縁間に樹脂シート20の外縁部を挟む。すると、樹脂シート20が非通気性の合成樹脂により構成された基材シート22のみで構成されているので、樹脂シート20は、チャンバ32内の空間31を第1ケース体33内の第1室36と第2ケース体34内の第2室37とに仕切る。シート密着ステップ1001では、開閉弁38,39を閉じて、解放管40,41とチャンバ32の外部とを遮断する。シート密着ステップ1001では、開閉弁42,43を開いて、連通管46,47を介してチャンバ32内の空間31と吸引源44,45とを連通する。なお、解放管40及び連通管46は、第1室36と連通し、解放管41及び連通管47は、第2室37と連通する。また、各連通管46,47には、それぞれ、連通管46,47内即ち各室36,37内の気圧を検出する気圧計48が設けられている。
【0026】
シート密着ステップ1001では、チャンバ32内の空間31の第1室36と第2室37との双方を吸引源44,45により減圧するとともに、支持台35内の面状ヒータ49を駆動して、支持台35上の被加工物1及び樹脂シート20を加熱する。シート密着ステップ1001では、気圧計48の検出結果に基づいて、各室36,37の気圧が所定の気圧まで減圧されると、
図8に示すように、第2室37内を減圧したまま、開閉弁42を閉じ、開閉弁38を開いて、第1室36内の減圧を停止し、第1室36を大気解放する。
【0027】
すると、被加工物1及び樹脂シート20が面状ヒータ49により加熱されているとともに、第2室37が減圧されかつ第1室36が大気解放されて生じた第1室36内の気圧が第2室37内の気圧よりも高くなり、第1室36と第2室37との気圧差により樹脂シート20が被加工物1の表面5に向けて押圧される。そして、樹脂シート20が、
図9に示すように、互いに隣り合うバンプ8間に侵入して、被加工物1の表面5及びバンプ8の表面に隙間なく密着する。加工方法は、
図9に示すように、樹脂シート20が被加工物1の表面5及びバンプ8の表面に隙間なく密着すると、樹脂シート20が表面5及びバンプ8の表面5に密着した被加工物1をチャンバ32外に搬出して、保持ステップ1002に進む。なお、被加工物1の表面5及びバンプ8の表面に隙間なく密着した樹脂シート20の上面23は、
図9に示すように、バンプ8同士の高さ10が異なるものが多いために、凸凹している。
【0028】
(バイト切削装置)
次に、保持ステップ1002及び切削ステップ1003を実施するバイト切削装置60(
図10に示す)を説明する。
図10は、実施形態1に係る加工方法の保持ステップ及び切削ステップを実施するバイト切削装置の構成例を示す斜視図である。
【0029】
実施形態1に係るバイト切削装置60は、被加工物1の表面5及びバンプ8の表面に密着した樹脂シート20の上層を平坦に旋回切削加工するとともに、バンプ8の上端部を平坦に旋回切削加工してバンプ8の高さ10を揃える(バンプ8の高さ10を等しくする)装置である。
【0030】
バイト切削装置60は、
図10に示すように、装置基台61と、保持テーブル70と、切削ユニット80と、加工送りユニット90と、切り込み送りユニット91と、制御ユニット92とを備える。
【0031】
保持テーブル70は、被加工物1の裏面11側を保持面71で保持するものである。保持テーブル70は、ステンレス鋼等の金属材により構成され、かつ円盤状の基台72と、基台72の外周部に形成された外周環状保持部73とを備え、外周環状保持部73の内側に吸引凹部74が形成されている。また、保持テーブル70は、吸引凹部74内に設けられた複数の円柱状の図示しない支持ピンを備えている。吸引凹部74に設けられた複数の支持ピンは、等間隔に配置されている。このように構成された保持テーブル70の外周環状保持部73および複数の支持ピンは、母材がステンレス鋼に構成され、外周環状保持部73の上面及び支持ピンの上面にニッケルにより構成されたメッキ層が形成されている。外周環状保持部73の上面及び支持ピンの上面は、被加工物1を保持する水平方向と平行な保持面71を構成する。
【0032】
保持テーブル70に形成された吸引凹部74は、図示しない吸引源に接続されており、吸引源により吸引されることにより、保持面71上に載置された被加工物1を吸引保持する。保持テーブル70は、Z軸方向と平行な軸心回りに回転自在な図示しない支持基台に支持されている。なお、Z軸方向は、鉛直方向と平行であり保持面71と直交する方向である。実施形態1において、保持テーブル70は、保持面71が支持ピンの上面により構成される所謂ピン保持テーブルである。
【0033】
切削ユニット80は、スピンドル83の下端に装着された切削バイトであるバイト工具81を含むバイトホイール82で保持テーブル70に保持された被加工物1の表面5側の樹脂シート20及びバンプ8の上端部を旋回切削するものである。切削ユニット80は、切り込み送りユニット91を介して装置基台61に立設するコラム62に支持され、かつスピンドル83を軸心回りに回転させるモータ84を備える。切削ユニット80のスピンドル83の軸心は、Z軸方向に沿って配置されている。
【0034】
加工送りユニット90は、装置基台61上に設置され、保持テーブル70を切削ユニット80に対して保持面71と平行な加工送り方向であるX軸方向に相対移動させるものである。加工送りユニット90は、保持テーブル70を支持した支持基台をX軸方向に移動させることで、保持テーブル70を切削ユニット80から離間して保持テーブル70に被加工物1が搬入出される搬入出位置と切削ユニット80の下方に位置して切削ユニット80により被加工物1が旋回切削される加工位置とに亘って移動させる。
【0035】
切り込み送りユニット91は、装置基台61に立設するコラム62に固定され、切削ユニット80を保持面71と直交する切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させるものである。切り込み送りユニット91は、切削ユニット80を下降させてバイト工具81を加工位置の保持テーブル70に保持された被加工物1に近付け、切削ユニット80を上昇させてバイト工具81を加工位置の保持テーブル70に保持された被加工物1から遠ざける。
【0036】
加工送りユニット90及び切り込み送りユニット91は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ及び保持テーブル又は切削ユニットをY軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
【0037】
また、バイト切削装置60は、装置基台61にカセット63,64が設置される。バイト切削装置60は、位置合わせユニット65と、カセット63,64から保持テーブル70との間で被加工物1を搬送する搬送手段である搬送ユニット93と、旋回切削加工後の被加工物1を洗浄する洗浄ユニット66とを備える。
【0038】
カセット63,64は、被加工物1を複数枚収容する収容器であり、装置基台61の搬入出位置寄りの端部に設置される。一方のカセット63は、旋回切削加工前の被加工物1を収容し、他方のカセット64は、旋回切削加工後の被加工物1を収容する。また、位置合わせユニット65は、カセット63から取り出された被加工物1が仮置きされて、その中心位置合わせを行うためのテーブルである。
【0039】
搬送ユニット93は、搬入出ユニット94と、搬入ユニット95と、搬出ユニット96とを備える。搬入出ユニット94は、例えばU字型ハンドを備えるロボットピックであり、U字型ハンドによって被加工物1を吸着保持して搬送する。具体的には、搬入出ユニット94は、旋回切削加工前の被加工物1をカセット63から位置合わせユニット65へ搬出するとともに、旋回切削加工後の被加工物1を洗浄ユニット66からカセット64へ搬入する。
【0040】
搬入ユニット95は、カセット63から搬出し位置合わせユニット65で位置合わせされた旋回切削加工前の被加工物1を搬入出位置に位置する保持テーブル70上に搬入する。搬出ユニット96は、搬入出位置に位置する保持テーブル70上に保持された旋回切削加工後の被加工物1を保持テーブル70から搬出して洗浄ユニット66に搬入する。
【0041】
制御ユニット92は、バイト切削装置60を構成する上述した各構成要素をそれぞれ制御するものである。即ち、制御ユニット92は、被加工物1に対する加工動作をバイト切削装置60に実行させるものである。制御ユニット92は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インタフェース装置とを有し、コンピュータプログラムを実行可能なコンピュータである。
【0042】
制御ユニット92の演算処理装置は、ROMに記憶されているコンピュータプログラムをRAM上で実行して、バイト切削装置60を制御するための制御信号を生成する。制御ユニット92の演算処理装置は、生成した制御信号を入出力インタフェース装置を介してバイト切削装置60の各構成要素に出力する。また、制御ユニット92は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示手段や、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力手段と接続されている。入力手段は、表示手段に設けられたタッチパネルと、キーボード等とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0043】
前述したバイト切削装置60は、オペレータ等により旋回切削加工前の被加工物1を収容したカセット63と、被加工物1を収容していないカセット64が装置基台61に設置され、オペレータ等により入力された加工内容情報を制御ユニット92が受け付ける。バイト切削装置60は、オペレータが入力した加工動作の開始指示を制御ユニット92が受け付けると、加工動作を開始し、モータ84を駆動してスピンドル83及びバイトホイール82の軸心回りの回転を開始し、保持ステップ1002を実施する。
【0044】
(保持ステップ)
図11は、
図4に示された加工方法の保持ステップを示す側面図である。保持ステップ1002は、シート密着ステップ1001を実施した後、被加工物1を保持テーブル70で保持して樹脂シート20を露出させるステップである。
【0045】
実施形態1において、保持ステップ1002では、バイト切削装置60は、制御ユニット92が搬入出ユニット94を制御してカセット63から被加工物1を1枚取り出させ、位置合わせユニット65へ搬出させる。保持ステップ1002では、バイト切削装置60は、制御ユニット92が位置合わせユニット65を制御して被加工物1の中心位置合わせを行わさせ、搬入ユニット95を制御して位置合わせユニット65により位置合わせされた被加工物1を搬入出位置に位置する保持テーブル70上に搬入させる。保持ステップ1002では、バイト切削装置60は、制御ユニット92が吸引源を動作させて保持テーブル70の保持面71に被加工物1の裏面11側を吸引保持させて、表面5に密着した樹脂シート20を上方に露出させて、切削ステップ1003に進む。
【0046】
(切削ステップ)
図12は、
図4に示された加工方法の切削ステップを示す側面図である。
図13は、
図4に示された加工方法の切削ステップ後の被加工物の要部の断面図である。切削ステップ1003は、保持ステップ1002を実施した後、保持テーブル70で保持された被加工物1の表面5を覆う樹脂シート20をバンプ8とともにバイト工具81で切削して、バンプ8の高さ10を揃えるステップである。
【0047】
実施形態1において、切削ステップ1003では、バイト切削装置60は、制御ユニット92が切り込み送りユニット90を制御して保持面71からの距離がバンプ8の高さ10が所定の高さとなる位置にバイト工具81の先端を位置付け、
図12に示すように、加工送りユニット91を制御して被加工物1を吸引保持した保持テーブル70を軸心回りに回転させながら加工位置に搬送する。なお、所定の高さは、旋回切削加工前の全てのバンプ8の高さ10以下である。切削ステップ1003では、バイト切削装置60が、保持テーブル70を軸心回りに回転させながら加工位置で被加工物1の表面5に密着した樹脂シート20及びバンプ8に上端部にバイト工具81を切り込ませて、樹脂シート20及び全てのバンプ8の上端部に旋回切削加工を施す。切削ステップ1003では、バイト切削装置60が、
図13に示すように、被加工物1の表面5に密着した樹脂シート20の上面23及び全てのバンプ8の上面9を平坦に形成するとともに、複数のバンプ8の高さ10を所定の高さに揃える。
【0048】
切削ステップ1003では、バイト切削装置60は、制御ユニット92が加工送りユニット91を制御して旋回切削加工を施した被加工物1を吸引保持した保持テーブル70を搬入出位置まで搬送させかつ保持テーブル70の軸心回りの回転を停止するとともに、搬入出位置において保持テーブル70の吸引保持を停止させる。切削ステップ1003では、バイト切削装置60は、制御ユニット92が搬出ユニット96を制御して洗浄ユニット66に搬送させ、洗浄ユニット66に洗浄させた後、搬入出ユニット94を制御して被加工物1をカセット64に収容させて、表面保護テープ貼着ステップ1004に進む。なお、バイト切削装置60は、カセット63内の被加工物1に順に保持ステップ1002及び切削ステップ1003を実施し、カセット63内の全ての被加工物1に保持ステップ1002及び切削ステップ1003を実施すると、加工動作を終了する。
【0049】
なお、切削ステップ1003では、バイト工具81がバンプ8の上端部に切り込む際に、バンプ8の一部分を被加工物1の表面5に沿って引き延ばそうとする。しかしながら、実施形態1において、バンプ8の表面5に樹脂シート20が密着しているので、被加工物1の表面5に沿って引き延ばされそうとなるバンプ8の一部分を樹脂シート20が支えて、樹脂シート20が、バンプ8の一部分が被加工物1の表面5に沿って引き延ばされることを抑制する。また、切削ステップ1003後の樹脂シート20は、バンプ8が貫通して、上面23にバンプ8を露出させる開口24が形成されている。
【0050】
(表面保護テープ貼着ステップ)
図14は、
図4に示された加工方法の表面保護テープ貼着ステップを示す断面図である。表面保護テープ貼着ステップ1004は、切削ステップ1003が施された被加工物1の表面5側即ち平坦化された樹脂シート20の上面23及びバンプ8の上面9に表面保護テープ50を貼着するステップである。
【0051】
実施形態1において、表面保護テープ50は、被加工物1と同径の円板状に形成され、可撓性を有し非粘着性の合成樹脂により構成された基材層51と、基材層51に積層されかつ可撓性及び粘着性を有する合成樹脂により構成された糊層52とを備える。実施形態1において、表面保護テープ貼着ステップ1004では、
図14に示すように、周知のマウンタ等が被加工物1の表面5側即ち平坦化された樹脂シート20の上面23及びバンプ8の上面9に表面保護テープ50の糊層52を貼着して、裏面研削ステップ1005に進む。
【0052】
(裏面研削ステップ)
図15は、
図4に示された加工方法の裏面研削ステップを示す側面図である。裏面研削ステップ1005は、表面保護テープ貼着ステップ1004の実施後に、被加工物1の裏面11側を研削して、所定の仕上げ厚みまで薄化するステップである。
【0053】
裏面研削ステップ1005では、
図15に示すように、研削装置100がチャックテーブル101に表面保護テープ50を介して被加工物1の表面5側を吸引保持し、チャックテーブル101を軸心回りに回転させつつ研削ユニット102の研削砥石103を軸心回りに回転させて被加工物1の裏面11を接触させて、裏面11を研削する。裏面研削ステップ1005では、研削装置100が仕上げ厚みまで被加工物1を研削して薄化すると、剥離ステップ1006に進む。
【0054】
なお、実施形態1では、切削ステップ1003において樹脂シート20の上面23及びバンプ8の上面9が平坦化されている。このために、実施形態1において、裏面研削ステップ1005では、切削ステップ1003において平坦化された被加工物1の表面5側をチャックテーブル101に吸引保持して裏面11を研削するので、被加工物1の研削後の裏面11の粗さ精度を向上することができる。
【0055】
(剥離ステップ)
図16は、
図4に示された加工方法の剥離ステップを示す断面図である。剥離ステップ1006は、裏面研削ステップ1005の実施後に、表面保護テープ50を被加工物1の表面5側から剥離するステップである。実施形態1において、剥離ステップ1006では、表面保護テープ50を被加工物1の表面5側から剥離する。すると、糊層52が樹脂シート20に貼着し、樹脂シート20に開口24が形成されているが、開口24以外では樹脂シート20が一体になっているので、
図16に示すように、表面保護テープ50とともに樹脂シート20が、被加工物1の表面5側から剥離される。実施形態1では、剥離ステップ1006において表面保護テープ50を樹脂シート20とともに被加工物1の表面5側から剥離すると、加工方法を終了する。
【0056】
以上説明したように、実施形態1に係る加工方法は、シート密着ステップ1001において、被加工物1の表面5を樹脂シート20で覆い、樹脂シート20を被加工物1の表面5及びバンプ8の表面に密着させて、切削ステップ1003において、被加工物1の表面5側の樹脂シート20及びバンプ8の上端部を旋回切削加工する。このために、加工方法は、切削ステップ1003において樹脂シート20を被加工物1の表面5及びバンプ8の表面に密着させているので、バンプ8の上端部を旋回切削加工して生じた切削屑がバンプ間に落下することを抑制できる。
【0057】
また、加工方法は、被加工物1の表面5に沿って引き延ばされそうとなるバンプ8の一部分を樹脂シート20が支えて、樹脂シート20が、バンプ8の一部分が被加工物1の表面5に沿って引き延ばされることを抑制するので、バンプ8に上面9にバリが生じることを抑制することができる。
【0058】
また、加工方法は、表面保護テープ貼着ステップ1004において表面保護テープ50を樹脂シート20の上面23及びバンプ8の上面9に貼着するので、仮にバンプ8の上面9に生じたバリを表面保護テープ50と樹脂シート20とで挟み込む。その結果、加工方法は、剥離ステップ1006において、樹脂シート20の上面23に貼着した表面保護テープ50を樹脂シート20とともに被加工物1の表面5から剥離するので、仮にバンプ8の上面9に生じたバリを表面保護テープ50及び樹脂シート20とともに被加工物1から除去することができる。
【0059】
したがって、加工方法は、バンプ8にバリが生じることを抑制でき、切削屑がバンプ8間に入り込むことを抑制できるので、被加工物1から個片化されたデバイス7の実装時の不具合を抑制することができるという効果を奏する。
【0060】
〔変形例〕
本発明の実施形態1の変形例に係る加工方法を図面に基づいて説明する。
図17は、実施形態1の変形例に係る加工方法のシート密着ステップにおいて被加工物の表面に密着される樹脂シートの断面図である。なお、変形例では、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明する。
【0061】
変形例に係る加工方法は、シート密着ステップ1001において被加工物1の表面5に密着される樹脂シート20-1の構成が、実施形態1と異なること以外、実施形態1と同じである。変形例に係る加工方法のシート密着ステップ1001において被加工物1の表面5に密着される樹脂シート20-1は、
図17示すように、熱圧着性を有し、
非粘着性でかつ非通気性の合成樹脂により構成された基材シート25と、基材シート25の表面上の被加工物1の外周余剰領域4に対応した領域に積層された糊層26とを備える。変形例では、基材シート25は、実施形態1の樹脂シート20の基材シート22と同等の厚み、大きさを有する。糊層26は、粘着性を有する合成樹脂により構成されている。こうして、変形例に係る加工方法で用いられる樹脂シート20は、基材シート25の表面の被加工物1の中央領域3に対応した領域には糊層26が形成されず、被加工物1の外周余剰領域4に対応した領域に糊層26が形成されている。
【0062】
なお、基材シート25の表面の被加工物1の中央領域3に対応した領域とは、樹脂シート20-1が被加工物1の表面5を覆う際に、被加工物1の中央領域3に重なる領域を示し、被加工物1の外周余剰領域4に対応した領域とは、樹脂シート20-1が被加工物1の表面5を覆う際に、被加工物1の外周余剰領域4に重なる領域を示している。
【0063】
変形例に係る加工方法は、シート密着ステップ1001において、樹脂シート20-1を被加工物1の表面5及びバンプ8の表面に密着させて、切削ステップ1003において樹脂シート20及びバンプ8の上端部を旋回切削加工するので、実施形態1と同様に、バンプ8にバリが生じることを抑制でき、切削屑がバンプ8間に入り込むことを抑制できるので、被加工物1から個片化されたデバイス7の実装時の不具合を抑制することができるという効果を奏する。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本発明では、表面保護テープ貼着ステップ1004と裏面研削ステップ1005と剥離ステップ1006とを順に実施して被加工物1を仕上げ厚みまで薄化した後、シート密着ステップ1001と保持ステップ1002と切削ステップ1003とを順に実施して、バンプ8の高さ10を揃えても良い。この場合、表面保護テープ貼着ステップ1004では、表面保護テープ50を被加工物1の表面5に直接貼着し、切削ステップ1003後に樹脂シート20を被加工物1から剥がせば良い。
【符号の説明】
【0065】
1 被加工物
3 中央領域
4 外周余剰領域
5 表面(上面)
8 バンプ
10 高さ
20,20-1 樹脂シート
21 厚み
26 糊層
70 保持テーブル
81 バイト工具(切削バイト)
1001 シート密着ステップ
1002 保持ステップ
1003 切削ステップ