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特許7477443硬化性樹脂組成物、その硬化物、硬化膜の製造方法、及びマイクロレンズの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、その硬化物、硬化膜の製造方法、及びマイクロレンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/04 20060101AFI20240423BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240423BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240423BHJP
   C08F 212/14 20060101ALI20240423BHJP
   C08F 220/12 20060101ALI20240423BHJP
   C08F 220/32 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G02B1/04
G02B3/00 A
G02B5/20 101
C08F212/14
C08F220/12
C08F220/32
G02B3/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020214871
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100724
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 武広
(72)【発明者】
【氏名】磯部 信吾
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】井上 朋之
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/122109(WO,A1)
【文献】特開2004-45803(JP,A)
【文献】国際公開第2009/051234(WO,A1)
【文献】特開2004-59770(JP,A)
【文献】特開2009-242801(JP,A)
【文献】特開2012-173583(JP,A)
【文献】特開2012-227478(JP,A)
【文献】特開2013-83844(JP,A)
【文献】特開2011-227449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/00- 1/08
G02B 3/00- 3/14
G02B 5/20- 5/28
C08F212/14
C08F220/12
C08F220/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(A)と、熱酸発生剤(B)と、溶剤(S)と、を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記樹脂(A)は、カルボキシル基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位と、エポキシ基を有する構成単位と、を有
カルボキシル基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位が、下記式(C2-3)~(C2-5)のいずれかで表される単位である、
硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式(C2-3)~(C2-5)中、R c6 、及びR c10 ~R c15 は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、フッ素原子、又は炭素原子数1~6の直鎖状若しくは分岐状のフッ素化アルキル基を表し、R c7 ~R c9 は、それぞれ独立に炭素原子数1~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素原子数1~6の直鎖状若しくは分岐状のフッ素化アルキル基を表し、R c8 及びR c9 は互いに結合して、両者が結合している炭素原子とともに炭素原子数5~20の炭化水素環を形成してもよく、Y は、置換基を有していてもよい脂肪族環式基又はアルキル基を表し、pは0~4の整数を表し、qは0又は1を表す。)
【請求項2】
含窒素化合物含有層の主面の少なくとも一部に永久膜を製造するために用いられる請求項1に記載の硬化性樹脂組成物であって、
前記含窒素化合物含有層は、孤立電子対を有する窒素原子を含む含窒素化合物を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
マイクロレンズを形成するために用いられる請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂(A)は、カルボキシル基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位と、エポキシ基を有する構成単位と、の共重合体を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項6】
含窒素化合物含有層の主面の少なくとも一部に、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物からなる塗膜を形成することと、
前記塗膜を加熱して硬化膜を形成することと、
を含む硬化膜の製造方法。
【請求項7】
マイクロレンズの製造方法であって、
前記製造方法は、
基板上に、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物からなる塗膜を形成することと、
前記塗膜を加熱して硬化膜を形成することと、
前記硬化膜上に、形成されるレンズの形状に応じた形状のマスクを形成することと、
前記マスクとともに前記硬化膜をエッチングすることにより、前記マスクの形状が転写されたレンズを形成することと、
を含む、製造方法。
【請求項8】
前記基板の表層が緑色カラーフィルター、青色カラーフィルター、又は赤色カラーフィルターからなる群から選択されるカラーフィルターにより構成され、前記カラーフィルター上に前記塗膜を形成することを特徴とする、請求項7に記載のマイクロレンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、その硬化物、該硬化性樹脂組成物を用いた硬化膜の製造方法、及び該硬化性樹脂組成物を用いたマイクロレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ、ビデオカメラ等には、固体撮像素子が用いられている。この固体撮像素子には、CCD(charge-coupled device)イメージセンサや、CMOS(complementary metal-oxide semiconductor)イメージセンサが用いられている。イメージセンサには集光率の向上を目的とした微細な集光レンズ(以下、マイクロレンズと呼ぶ)が設けられている。
【0003】
CCD又はCMOSイメージセンサ用マイクロレンズの作製方法の1つとして、エッチバック法が知られている(特許文献1及び2)。即ち、カラーフィルター上に形成したマイクロレンズ用樹脂層上にレジストパターンを形成し、熱処理によってこのレジストパターンをリフローさせることによりレンズパターンを形成する。このようにして形成したレンズパターンをエッチングマスクとして下層のマイクロレンズ用樹脂層をエッチバックし、レンズパターン形状をマイクロレンズ用樹脂層に転写することによってマイクロレンズを作製する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-10666号公報
【文献】特開平6-112459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
下層のマイクロレンズ用樹脂層は、カラーフィルター上に、硬化性樹脂組成物からなる塗膜を形成し、この塗膜を硬化させることにより形成される。一般に、硬化性樹脂組成物中の樹脂に硬化性を付与するために、樹脂中の構成単位として、熱による硬化を生じさせるエポキシ基を有する構成単位が広く用いられている。しかし、本発明者らが検討したところ、エポキシ基を有する構成単位を用いるだけでは、硬化性が不十分であることが判明した。
【0006】
エポキシ基を有する構成単位による硬化は、酸を用いることで促進させることができる。しかし、本発明者らが検討したところ、孤立電子対を有する窒素原子を含む含窒素化合物を含有する層上、例えば、フタロシアニンを含むグリーンカラーフィルター上では、上記含窒素化合物又はフタロシアニンが酸を失活させてしまうため、十分な硬化性が得られないことが判明した。
【0007】
本発明者らは、孤立電子対を有する窒素原子を含む含窒素化合物を含有する層上での硬化性を向上させるため、エポキシ基を有する構成単位を有する樹脂中において、カルボキシ基等の酸基を有する構成単位の量を増やしたところ、硬化性は改善されたものの、硬化性樹脂組成物は、保存時でも酸基とエポキシ基との反応性が高く、ポットライフが短いことが判明した。
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、例えば、孤立電子対を有する窒素原子を含む含窒素化合物を含有する層上においても優れた硬化性を示し、かつ、ポットライフが長い硬化性樹脂組成物、その硬化物、該硬化性樹脂組成物を用いた硬化膜の製造方法、及び該硬化性樹脂組成物を用いたマイクロレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、硬化性樹脂組成物に含まれる樹脂が、フェノール性水酸基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位及びカルボキシル基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位の少なくとも一方と、エポキシ基を有する構成単位と、を有することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の第一の態様は、樹脂(A)と、熱酸発生剤(B)と、溶剤(S)と、を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記樹脂(A)は、フェノール性水酸基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位及びカルボキシル基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位の少なくとも一方と、エポキシ基を有する構成単位と、を有する。
【0011】
本発明の第二の態様は、第一の態様に係る硬化性樹脂組成物の硬化物である。
【0012】
本発明の第三の態様は、
含窒素化合物含有層の主面の少なくとも一部に、第一の態様に係る硬化性樹脂組成物からなる塗膜を形成することと、
前記塗膜を加熱して硬化膜を形成することと、
を含む硬化膜の製造方法である。
【0013】
本発明の第四の態様は、マイクロレンズの製造方法であって、
前記製造方法は、
基板上に、第一の態様に係る硬化性樹脂組成物からなる塗膜を形成することと、
前記塗膜を加熱して硬化膜を形成することと、
前記硬化膜上に、形成されるレンズの形状に応じた形状のマスクを形成することと、
前記マスクとともに前記硬化膜をエッチングすることにより、前記マスクの形状が転写されたレンズを形成することと、
を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えば、孤立電子対を有する窒素原子を含む含窒素化合物を含有する層上においても優れた硬化性を示し、かつ、ポットライフが長い硬化性樹脂組成物、その硬化物、該硬化性樹脂組成物を用いた硬化膜の製造方法、及び該硬化性樹脂組成物を用いたマイクロレンズの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<硬化性樹脂組成物>
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、樹脂(A)と、熱酸発生剤(B)と、溶剤(S)と、を含有し、前記樹脂(A)は、フェノール性水酸基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位及びカルボキシル基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位の少なくとも一方と、エポキシ基を有する構成単位と、を有する。本発明に係る硬化性樹脂組成物は、例えば、孤立電子対を有する窒素原子を含む含窒素化合物を含有する層上においても優れた硬化性を示し、かつ、ポットライフが長い。
【0016】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、含窒素化合物含有層の主面の少なくとも一部に永久膜を製造するために好適に用いることができる。ここで、前記含窒素化合物含有層は、孤立電子対を有する窒素原子を含む含窒素化合物を含有する。また、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、マイクロレンズを形成するためにも好適に用いることができる。
【0017】
[含窒素化合物含有層]
含窒素化合物含有層は、孤立電子対を有する窒素原子を含む含窒素化合物を含有する層である。含窒素化合物層において、含窒素化合物を分散させるマトリックスである基材成分は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
基材成分としては、種々の樹脂や、種々の硬化性化合物の硬化物が挙げられる。
【0018】
基材成分として使用され得る樹脂の具体例としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート等)、FR-AS樹脂、FR-ABS樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミドビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾチアゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、シリコーン樹脂、BT樹脂、ポリメチルペンテン、超高分子量ポリエチレン、FR-ポリプロピレン、(メタ)アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、カルド系樹脂、及びポリスチレン等が挙げられる。これらの樹脂は、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0019】
基材成分としての硬化物を与える硬化性化合物としては、2官能以上の多官能エポキシ化合物、及び2官能以上の多官能オキセタン化合物等が挙げられる。多官能エポキシ化合物や多官能オキセタン化合物は、必要に応じて硬化剤や硬化促進剤を使用したうえで、露光及び/又は加熱により硬化し、耐熱性や機械的特性に優れる硬化物を与える。
【0020】
含窒素化合物含有層の厚さは特に限定されない。典型的には、含窒素化合物含有層の厚さは、例えば、0.1μm以上10μm以下であり、0.2μm以上5μm以下が好ましく、0.3μm以上2μm以下がより好ましい。
【0021】
[含窒素化合物]
含窒素化合物は、孤立電子対を有する窒素原子を含む含窒素化合物であれば特に限定されない。孤立電子対を有する窒素原子を含む含窒素化合物は、塩であってもよく、錯体であってもよい。
以下、孤立電子対を有する窒素原子を含む含窒素化合物について、単に「含窒素化合物」と記載する場合がある。本出願の明細書及び特許請求の範囲において、特段説明がない限り「含窒素化合物」は、孤立電子対を有する窒素原子を含む含窒素化合物を意味する。
【0022】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、含窒素化合物中の窒素原子が有する孤立電子対が、共役によって含窒素化合物の分子内で非局在化されない場合に特に有効である。含窒素化合物含有層がこのような含窒素化合物を含む場合に、硬化性樹脂組成物の硬化不良の問題が顕著であるためである。
【0023】
硬化性樹脂組成物の硬化不良を生じさせやすい含窒素化合物の例としては、窒素原子に結合する芳香族基を有さないアミン類、窒素原子に結合する芳香族基を有さないイミン類、及び孤立電子対が芳香環系に組み込まれていない芳香族含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0024】
上記のような含窒素化合物において、孤立電子対を有する窒素原子が、所謂発色団、又は助色団を構成する場合がしばしばある。種々の積層体において、孤立電子対を有する窒素原子を含む色素化合物を含有する着色層が形成されることも多い。
含窒素化合物が色素化合物である場合の典型例としては、フタロシアニン顔料、及びジオキサジン顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料は、例えば、銅フタロシアニンのような金属フタロシアニン錯体であってもよい。
【0025】
含窒素化合物が色素化合物である場合、含窒素化合物含有層は着色される。かかる着色された含窒素化合物含有層は、各種方式の画像表示パネルや、CMOSイメージセンサー等において用いられるカラーフィルターであるのが好ましい。
カラーフィルターの色相は特に限定されない。含窒素化合物含有層がカラーフィルターである場合、当該カラーフィルターは、典型的には、緑色カラーフィルター、青色カラーフィルター又は赤色カラーフィルターであってよい。
【0026】
含窒素化合物含有層における、含窒素化合物の含有量は特に限定されない。含窒素化合物含有層における含窒素化合物の含有量は、典型的には、含窒素化合物含有層の質量に対して1質量%以上80質量%以下であり、5質量%以上75質量%以下が好ましく、40質量%以上70質量%以下がより好ましい。
【0027】
[樹脂(A)]
樹脂(A)は、フェノール性水酸基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位及びカルボキシル基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位の少なくとも一方と、エポキシ基を有する構成単位と、を有する。硬化性樹脂組成物の保存時、樹脂(A)において、フェノール性水酸基又はカルボキシル基は、酸解離性基で保護されているため、エポキシ基との反応性が抑制されており、硬化性樹脂組成物のポットライフが長くなりやすい。硬化性樹脂組成物を加熱すると、熱酸発生剤(B)から発生した酸により、樹脂(A)から酸解離性基が脱離し、生成したフェノール性水酸基又はカルボキシル基とエポキシ基とが反応して、硬化性樹脂組成物が優れた硬化性を示す。樹脂(A)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
樹脂(A)は、フェノール性水酸基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位及びカルボキシル基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位の少なくとも一方と、エポキシ基を有する構成単位と、の共重合体を含んでもよい。また、樹脂(A)を2種以上組み合わせて用いる場合、樹脂(A)は、フェノール性水酸基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位及びカルボキシル基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位の少なくとも一方を有し、エポキシ基を有する構成単位有しない重合体と、エポキシ基を有する構成単位を有し、フェノール性水酸基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位及びカルボキシル基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位のいずれも有しない重合体との組み合わせを含んでもよい。
【0029】
・フェノール性水酸基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位
フェノール性水酸基が酸解離性基で保護された化学構造とは、フェノール性水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された化学構造を意味する。フェノール性水酸基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位としては、例えば、下記一般式(a2-1)で表される構成単位が挙げられる。
【0030】
【化1】
(式中、Ra3は独立に水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換されたアルキル基を示し、Ra5は独立にアルキル基を示し、Ra4は酸解離性基を示し、rは独立に1~5の整数を示し、s及びtは独立に0~4の整数を示し、但し、r+s+tは独立に1~5の整数である。)
【0031】
a3が示すアルキル基は、例えば、炭素原子数1~5のアルキル基であり、直鎖又は分岐状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。工業的にはメチル基が好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。ハロゲン原子で置換されたアルキル基は、上述した炭素原子数1~5のアルキル基の一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換されたものであり、当該水素原子が全部ハロゲン原子で置換されていることが好ましい。ハロゲン原子で置換されたアルキル基としては、ハロゲン原子で置換された直鎖又は分岐状のアルキル基が好ましく、特に、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等のフッ素化アルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基(-CF)が最も好ましい。Ra3としては、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0032】
a5が示すアルキル基としては、例えば、炭素原子数1~5のアルキル基が挙げられ、Ra3が示すアルキル基と同様のものが挙げられる。s及びtは独立に0~4の整数であり、0又は1であることが好ましく、特に工業上0であることが好ましい。Ra5の置換位置は、tが1である場合には、o-位、m-位、p-位のいずれでもよく、更に、tが1~4の整数である場合には、任意の置換位置を組み合わせることができる。rは1~5の整数を示し、好ましくは1~3の整数であり、好ましくは1である。水酸基の置換位置は、sが1である場合、o-位、m-位、p-位のいずれでもよいが、容易に入手可能で低価格であることからp-位が好ましい。更に、sが2~4の整数である場合には、任意の置換位置を組み合わせることができる。
【0033】
上記Ra4で表される酸解離性基としては、下記式(a2-1-1)で表される基、下記式(a2-1-2)で表される基、ビニルオキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラフラニル基、又はトリアルキルシリル基が挙げられる。
【0034】
【化2】
【0035】
上記式(a2-1-1)及び(a2-1-2)中、Ra6及びRa7は独立に水素原子又はアルキル基を示し、Ra8及びRa10は独立にアルキル基又はシクロアルキル基を示し、Ra9は単結合又はアルキレン基を示し、但し、Ra6、Ra7、及びRa8の少なくとも2種は互いに結合して環を形成してもよい。
【0036】
a6又はRa7で表されるアルキル基としては、炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。Ra8で表されるアルキル基としては、例えば、炭素原子数1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、Ra8で表されるシクロアルキル基としては、例えば、炭素原子数3~10のシクロアルキル基が挙げられる。Ra9で表されるアルキレン基としては、例えば、炭素原子数1~3のアルキレン基が挙げられる。Ra10で表されるアルキル基としては、例えば、炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、Ra10で表されるシクロアルキル基としては、例えば、炭素原子数3~6のシクロアルキル基が挙げられる。
【0037】
上記直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。また、上記シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。上記アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、及びエチルメチレン基が挙げられる。
【0038】
ここで、上記式(a2-1-1)で表される酸解離性基として、具体的には、メトキシエチル基、エトキシエチル基、n-プロポキシエチル基、イソプロポキシエチル基、n-ブトキシエチル基、イソブトキシエチル基、tert-ブトキシエチル基、シクロヘキシロキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、1-メトキシ-1-メチル-エチル基、1-エトキシ-1-メチルエチル基等が挙げられる。また、上記式(a2-1-2)で表される酸解離性基として、具体的には、tert-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。また、上記トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリ-tert-ブチルジメチルシリル基等の各アルキル基の炭素原子数1~6のものが挙げられる。
【0039】
フェノール性水酸基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0040】
・カルボキシル基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位
カルボキシル基が酸解離性基で保護された化学構造とは、カルボキシル基の水素原子が酸解離性基で置換された化学構造を意味する。カルボキシル基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位としては、例えば、下記式(C2-3)~(C2-5)で表される単位が挙げられる。
【0041】
【化3】
【0042】
上記式(C2-3)~(C2-5)中、Rc6、及びRc10~Rc15は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、フッ素原子、又は炭素原子数1~6の直鎖状若しくは分岐状のフッ素化アルキル基を表し、Rc7~Rc9は、それぞれ独立に炭素原子数1~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素原子数1~6の直鎖状若しくは分岐状のフッ素化アルキル基を表し、Rc8及びRc9は互いに結合して、両者が結合している炭素原子とともに炭素原子数5~20の炭化水素環を形成してもよく、Yは、置換基を有していてもよい脂肪族環式基又はアルキル基を表し、pは0~4の整数を表し、qは0又は1を表す。
【0043】
なお、上記直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。また、フッ素化アルキル基とは、上記アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたものである。
【0044】
上記Rc8及びRc9が互いに結合して炭化水素環を形成しない場合、上記Rc7、Rc8、及びRc9としては、炭素原子数2~4の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。上記Rc11、Rc12、Rc14、Rc15としては、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0045】
上記R1c8及びRc9は、両者が結合している炭素原子とともに炭素原子数5~20の脂肪族環式基を形成してもよい。このような脂肪族環式基の具体例としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。特に、シクロヘキサン、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0046】
さらに、上記Rc8及びRc9が形成する脂肪族環式基が、その環骨格上に置換基を有する場合、当該置換基の例としては、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、酸素原子(=O)等の極性基や、炭素原子数1~4の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。極性基としては特に酸素原子(=O)が好ましい。
【0047】
上記Yは、脂肪族環式基又はアルキル基であり、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。特に、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0048】
さらに、上記Yの脂肪族環式基が、その環骨格上に置換基を有する場合、当該置換基の例としては、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、酸素原子(=O)等の極性基や、炭素原子数1~4の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。極性基としては特に酸素原子(=O)が好ましい。
【0049】
また、Yがアルキル基である場合、炭素原子数1~20、好ましくは6~15の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。このようなアルキル基は、特にアルコキシアルキル基であることが好ましく、このようなアルコキシアルキル基としては、1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基、1-n-プロポキシエチル基、1-イソプロポキシエチル基、1-n-ブトキシエチル基、1-イソブトキシエチル基、1-tert-ブトキシエチル基、1-メトキシプロピル基、1-エトキシプロピル基、1-メトキシ-1-メチル-エチル基、1-エトキシ-1-メチルエチル基等が挙げられる。
【0050】
上記式(C2-3)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式(C2-3-1)~(C2-3-33)で表されるものを挙げることができる。
【0051】
【化4】
【0052】
上記式(C2-3-1)~(C2-3-33)中、Rc16は、水素原子又はメチル基を表す。
【0053】
上記式(C2-4)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式(C2-4-1)~(C2-4-25)で表されるものを挙げることができる。
【0054】
【化5】
【0055】
上記式(C2-4-1)~(C2-4-25)中、Rc16は、水素原子又はメチル基を表す。
【0056】
上記式(C2-5)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式(C2-5-1)~(C2-5-15)で表されるものを挙げることができる。
【0057】
【化6】
【0058】
上記式(C2-5-1)~(C2-5-15)中、Rc16は、水素原子又はメチル基を表す。
【0059】
・エポキシ基を有する構成単位
エポキシ基を有する構成単位としては、下記式(b1-1)で表される構成単位が挙げられる。
【化7】
(式(b1-1)中、R1bは、水素原子又はメチル基を表し、R2bは、単結合、又は炭素原子数1以上5以下のアルキレン基を表し、R3bは、エポキシ基含有基を表す。
【0060】
2bが表すアルキレン基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状であるのが好ましい。アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、及びペンタン-1,5-ジイル基等が挙げられる。これらの基の中では、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、及びペンタン-1,5-ジイル基が好ましく、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、及びプロパン-1,3-ジイル基がより好ましく、メチレン基が特に好ましい。
【0061】
3bとしては、オキシラン-2-イル基、3,4-エポキシシクロヘキシル基、及び3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-1-イル基が好ましい。
【0062】
-R2b-R3bで表される基としては、グリシジル基(オキシラン-2-イルメチル基)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル基、及び3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-1-イル基が好ましい。
【0063】
・その他の構成単位
樹脂(A)は、フェノール性水酸基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位、カルボキシル基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位、及びエポキシ基を有する構成単位以外の単位(以下、「その他の構成単位」ともいう。)を含んでいてもよい。その他の構成単位の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の不飽和結合を有する単量体に由来する単位から適宜選択され得る。
【0064】
その他の構成単位を与える単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α-メチルヒドロキシスチレン、α-エチルヒドロキシスチレン等のビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニル等のビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド結合含有重合性化合物類;等を挙げることができる。これらの中でも、得られる硬化物の屈折率が向上しやすい点で、スチレン等のビニル基含有芳香族化合物類が好ましい。
【0065】
樹脂(A)中、フェノール性水酸基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位及びカルボキシル基が酸解離性基で保護された化学構造を有する構成単位の合計の割合は、樹脂(A)を構成する全構成単位に対し、10~90モル%であることが好ましく、20~80モル%がより好ましく、25~75モル%が更に好ましい。樹脂(A)がその他の構成単位を有する場合、樹脂(A)中、上記割合は、樹脂(A)を構成する全構成単位に対し、10~85モル%であることが好ましく、20~70モル%がより好ましく、25~60モル%が更に好ましい。上記割合が上記範囲内であると、得られる硬化性樹脂組成物は、孤立電子対を有する窒素原子を含む含窒素化合物を含有する層上において優れた硬化性を示しやすい。
【0066】
樹脂(A)中、エポキシ基を有する構成単位の割合は、樹脂(A)を構成する全構成単位に対し、10~90モル%であることが好ましく、20~80モル%がより好ましく、25~75モル%が更に好ましい。樹脂(A)がその他の構成単位を有する場合、樹脂(A)中、上記割合は、樹脂(A)を構成する全構成単位に対し、10~85モル%であることが好ましく、20~70モル%がより好ましく、25~60モル%が更に好ましい。上記割合が上記範囲内であると、得られる硬化性樹脂組成物は、孤立電子対を有する窒素原子を含む含窒素化合物を含有する層上において優れた硬化性を示しやすい。
【0067】
樹脂(A)がその他の構成単位を有する場合、樹脂(A)中その他の構成単位の割合は、樹脂(A)を構成する全構成単位に対し、5~50モル%であることが好ましく、10~47モル%がより好ましく、15~45モル%が更に好ましい。
【0068】
樹脂(A)の質量平均分子量は、特に限定されず、2000~50000であることが好ましく、5000~40000であることがより好ましい。上記質量平均分子量が上記範囲内であると、得られる硬化膜は、耐熱性及び膜強度が向上しやすく、ドライエッチングを行う場合は、良好にドライエッチングを行うことができる。なお、本明細書において、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算のものをいう。
【0069】
[熱酸発生剤(B)]
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、熱酸発生剤(B)を含有する。本発明に係る硬化性樹脂組成物を加熱することにより、上記硬化性樹脂組成物中の熱酸発生剤(B)は分解して、酸を発生する。このようにして酸により、樹脂(A)から酸解離性基が脱離し、生成したフェノール性水酸基又はカルボキシル基とエポキシ基とが反応して、硬化性樹脂組成物が優れた硬化性を示す。熱酸発生剤(B)としては、例えば、分解開始温度が120~200℃である熱酸発生剤が挙げられる。熱酸発生剤(B)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0070】
熱酸発生剤(B)は、カチオン部とアニオン部とからなり、上記カチオン部が下記式(c0-I)で表されるカチオンである熱酸発生剤を含むことが好ましい。かかる熱酸発生剤を用いることにより、樹脂(A)から酸解離性基がより脱離しやすくなるため、フェノール性水酸基又はカルボキシル基が生成しやすくなり、結果として、硬化性樹脂組成物の硬化性が向上しやすい。
【0071】
【化8】
(式(c0-I)中、Rc01、Rc02、及びRc03は、それぞれ独立に炭素原子数が1以上6以下であるアルキル基である。)
【0072】
式(c0-I)において、Rc01、Rc02、及びRc03としてのアルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、及びn-ヘキシル基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Rc01、Rc02、及びRc03が全てメチル基であるのが特に好ましい。
【0073】
つまり、式(c0-I)で表されるカチオンとしては、下記式(c0-II)で表されるカチオンが好ましい。
【化9】
【0074】
式(c0-I)で表されるカチオンへの対アニオンとしては、例えば、AsF 、SbF 、PF 、CFSO 、下記式(B2)で表されるアニオン、及び下記式(B3)で表されるアニオン等が挙げられる。
【0075】
【化10】
(式(B2)中、Rb3、Rb4、Rb5、及びRb6は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよい複素環基であり、Rb3、Rb4、Rb5、及びRb6のうちの少なくとも1つが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。)
【0076】
【化11】
(式(B3)中、Rb7、Rb8、Rb9、及びRb10は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよい複素環基であり、Rb7、Rb8、Rb9、及びRb10のうちの少なくとも1つが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。)
【0077】
式(B2)中のRb3~Rb6としての炭化水素基又は複素環基の炭素原子数は特に限定されないが、1以上50以下が好ましく、1以上30以下がより好ましく、1以上20以下が特に好ましい。
【0078】
b3~Rb6としての炭化水素基の具体例としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及びアラルキル基等が挙げられる。
前述の通り、Rb3~Rb6のうちの少なくとも1つは置換基を有してもよい芳香族基であり、Rb3~Rb6の3つ以上が置換基を有してもよい芳香族基であるのがより好ましく、Rb3~Rb6の全てが置換基を有してもよい芳香族基であるのが特に好ましい。
【0079】
b3~Rb6としての炭化水素基、又は複素環基が有していてもよい置換基としては、炭素原子数1以上18以下のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3以上18以下のハロゲン化脂肪族環式基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、炭素原子数1以上18以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリールオキシ基、炭素原子数2以上19以下の脂肪族アシル基、炭素原子数7以上15以下の芳香族アシル基、炭素原子数2以上19以下の脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数7以上15以下の芳香族アシルオキシ基、炭素原子数1以上18以下のアルキルチオ基、炭素原子数6以上14以下のアリールチオ基、窒素原子に結合する1又は2の水素原子が炭素原子数1以上18以下の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、及びハロゲン原子が挙げられる。
b3~Rb6としての炭化水素基が芳香族炭化水素基である場合、当該芳香族炭化水素基は、炭素原子数1以上18以下のアルキル基、炭素原子数2以上18以下のアルケニル基、及び炭素原子数2以上18以下のアルキニル基からなる群から選択される1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0080】
b3~Rb6としての炭化水素基が置換基を有する場合、置換基の数は特に限定されず,1であっても2以上の複数であってもよい。置換基の数が複数である場合、当該複数の置換基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0081】
b3~Rb6がアルキル基である場合の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、及びn-イコシル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、及び1,1,3,3-テトラメチルブチル基等の分岐鎖アルキル基が挙げられる。
【0082】
b3~Rb6がアルケニル基、又はアルキニル基である場合の好適な例としては、アルキル基として好適な上記の基に対応するアルケニル基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0083】
b3~Rb6が芳香炭化水素基である場合の好適な例としては、フェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、ビフェニル-4-イル基、ビフェニル-3-イル基、ビフェニル-2-イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。
【0084】
b3~Rb6が脂環式炭化水素基である場合の好適な例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、及びシクロデシル基等のシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、及びピナニル基等の架橋式脂肪族環式炭化水素基が挙げられる。
【0085】
b3~Rb6がアラルキル基である場合の好適な例としては、ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、α-ナフチルエチル基、及びβ-ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0086】
b3~Rb6が複素環基である場合の好適な例としては、チエニル基、フラニル基、セレノフェニル基、ピラニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェノチアジニル基、フェナジニル基、キサンテニル基、チアントレニル基、フェノキサジニル基、フェノキサチイニル基、クロマニル基、イソクロマニル基、ジベンゾチエニル基、キサントニル基、チオキサントニル基、及びジベンゾフラニル基等が挙げられる。
【0087】
式(B3)中のRb7~Rb10としては、式(B2)中のRb3~Rb6について前述した基と同様の基が挙げられる。
【0088】
以上説明した式(B2)で表されるアニオン部の好適な具体例としては、
テトラキス(4-ノナフルオロビフェニル)ガリウムアニオン、
テトラキス(1-ヘプタフルオロナフチル)ガリウムアニオン、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウムアニオン、
テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレートアニオン、
テトラキス(2-ノナフェニルビフェニル)ガリウムアニオン、
テトラキス(2-ヘプタフルオロナフチル)ガリウムアニオン、
テトラキス(7-ノナフルオロアントリル)ガリウムアニオン、
テトラキス(4’-(メトキシ)オクタフルオロビフェニル)ガリウムアニオン、
テトラキス(2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)フェニル)ガリウムアニオン、
テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ガリウムアニオン、
テトラキス(2,3-ビス(ペンタフルオロエチル)ナフチル)ガリウムアニオン、
テトラキス(2-イソプロポキシ-ヘキサフルオロナフチル)ガリウムアニオン、
テトラキス(9,10-ビス(ヘプタフルオロプロピル)ヘプタフルオロアントリル)ガリウムアニオン、
テトラキス(9-ノナフルオロフェナントリル)ガレートアニオン、
テトラキス(4-[トリ(イソプロピル)シリル]-テトラフルオロフェニル)ガリウムアニオン、
テトラキス(9,10-ビス(p-トリル)-ヘプタフルオロフェナントリル)ガリウムアニオン、
テトラキス(4-[ジメチル(t-ブチル)シリル]-テトラフルオロフェニル)ガリウムアニオン、
モノフェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ガリウムアニオン、及び
モノパーフルオロブチルトリス(ペンタフルオロフェニル)ガリウムアニオン等が挙げられ、より好ましくは、以下のアニオンが挙げられる。
【0089】
【化12】
【0090】
また、式(B3)で表されるアニオン部の好適な具体例としては、
テトラキス(4-ノナフルオロビフェニル)ホウ素アニオン、
テトラキス(1-ヘプタフルオロナフチル)ホウ素アニオン、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素アニオン、
テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ホウ素アニオン、
テトラキス(2-ノナフェニルビフェニル)ホウ素アニオン、
テトラキス(2-ヘプタフルオロナフチル)ホウ素アニオン、
テトラキス(7-ノナフルオロアントリル)ホウ素アニオン、
テトラキス(4’-(メトキシ)オクタフルオロビフェニル)ホウ素アニオン、
テトラキス(2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ素アニオン、
テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ素アニオン、
テトラキス(2,3-ビス(ペンタフルオロエチル)ナフチル)ホウ素アニオン、
テトラキス(2-イソプロポキシ-ヘキサフルオロナフチル)ホウ素アニオン、
テトラキス(9,10-ビス(ヘプタフルオロプロピル)ヘプタフルオロアントリル)ホウ素アニオン、
テトラキス(9-ノナフルオロフェナントリル)ホウ素アニオン、
テトラキス(4-[トリ(イソプロピル)シリル]-テトラフルオロフェニル)ホウ素アニオン、
テトラキス(9,10-ビス(p-トリル)-ヘプタフルオロフェナントリル)ホウ素アニオン、
テトラキス(4-[ジメチル(t-ブチル)シリル]-テトラフルオロフェニル)ホウ素アニオン、
モノフェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素アニオン、及び
モノパーフルオロブチルトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素アニオン等が挙げられ、より好ましくは、以下のアニオンが挙げられる。
【0091】
【化13】
【0092】
以上で例示した対アニオンの中では、CFSO 及び((CB)が好ましい。なお、「C」は、ペンタフルオロフェニル基を表す。
【0093】
上記式(c0-I)で表されるカチオン部とアニオン部とからなる化合物として、市販品として入手可能な化合物を用いることができる。市販品としては、例えば、CXC-1821(King Industries社製)等が挙げられる。
【0094】
式(c0-I)で表されるカチオンからなるカチオン部と、アニオン部とからなる化合物の好適な具体例としては、式(c0-II)で表されるカチオンと、AsF とからなる四級アンモニウム塩、式(c0-II)で表されるカチオンと、SbF とからなる四級アンモニウム塩、式(c0-II)で表されるカチオンと、PF とからなる四級アンモニウム塩、式(c0-II)で表されるカチオンと、CFSO とからなる四級アンモニウム塩、及び式(c0-II)で表されるカチオンと、((CB)とからなる四級アンモニウム塩が挙げられる。これらの中では、式(c0-II)で表されるカチオンと、CFSO とからなる四級アンモニウム塩、及び式(c0-II)で表されるカチオンと、((CB)とからなる四級アンモニウム塩がより好ましい。
【0095】
硬化性樹脂組成物における熱酸発生剤(B)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。硬化性樹脂組成物における熱酸発生剤(B)の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、0.1質量部以上15量部以下が好ましく、0.3質量部以上10質量部以下がより好ましく、透明性の観点で0.4質量部以上5質量部以下が特に好ましい。
【0096】
[溶剤(S)]
硬化性樹脂組成物は、塗布性や粘度の調整等の目的で、溶剤(S)を含有する。溶剤(S)としては、典型的には有機溶剤が用いられる。有機溶剤の種類は、硬化性樹脂組成物に含まれる成分を、均一に溶解又は分散させることができれば特に限定されない。
【0097】
溶剤(S)として使用し得る有機溶剤の好適な例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチル部炭酸メチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。溶剤(S)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0098】
硬化性樹脂組成物における、溶剤(S)の使用量は特に限定されない。硬化性樹脂組成物の塗布性の点等から、溶剤(S)の使用量は、硬化性樹脂組成物全体に対して、例えば30質量%以上99.9質量%以下であり、好ましくは50質量%以上98質量%以下である。
【0099】
[その他の成分]
硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、界面活性剤、熱重合禁止剤、消泡剤、シランカップリング剤、着色剤(顔料、染料)、酸化防止剤、樹脂(A)以外の樹脂(熱可塑性樹脂、アルカリ可溶性樹脂等)、無機フィラー、有機フィラー等の添加剤を含有させることができる。いずれの添加剤も、従来公知のものを用いることができる。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の化合物が挙げられる。熱重合禁止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテル等が挙げられる。消泡剤としては、シリコーン系、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0100】
以上説明した各成分を所定の比率で均一に混合することにより、硬化性樹脂組成物を製造することができる。必要に応じて、不溶性の異物を除去するために、所望のサイズの開口を有するフィルターを用いて硬化性樹脂組成物をろ過してもよい。
【0101】
<硬化物>
本発明に係る硬化物は、例えば、本発明に係る硬化性樹脂組成物を加熱することにより得ることができる。加熱条件は、後述する、硬化膜の製造方法の中で説明するのと同様である。
【0102】
<硬化膜の製造方法>
本発明に係る、硬化膜の製造方法においては、まず、以上説明した含窒素有機化合物含有層の主面の少なくとも一部に、上記の硬化性樹脂組成物からなる塗膜を形成する。上記塗膜を形成する方法としては、特に限定ざれず、例えば、上記含窒素有機化合物含有層の主面の少なくとも一部に、上記硬化性樹脂組成物を塗布する方法が挙げられる。
【0103】
塗布方法は、特に限定されない。例えば、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター、スリットコーター等の接触転写型塗布装置や、スピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いて、上記の硬化性樹脂組成物を含窒素有機化合物含有層上に、所望の膜厚となるよう塗布する。
【0104】
形成された塗膜は、適宜、プレベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理して有機溶剤を除去してもよい。
【0105】
プレベークの方法としては、特に限定されず、例えば(i)ホットプレートを用いて80℃~120℃(好ましくは85~115℃、より好ましくは90~110℃)の温度において30秒~90秒間(好ましくは45秒~75秒間)乾燥する方法、(ii)室温において数時間~数日間放置する方法、(iii)温風ヒーターや赤外線ヒーター中に数十分~数時間入れて溶剤を除去する方法、のいずれでもよい。
【0106】
乾燥後の塗布膜の膜厚は、例えば、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.2μm以上5μm以下が好ましく、0.3μm以上2μm以下がより好ましい。
【0107】
本発明に係る、硬化膜の製造方法においては、次に、塗膜を加熱して硬化膜を形成する。加熱を行う際の温度は特に限定されず、180℃以上280℃以下が好ましく、180℃以上250℃以下がより好ましく、180℃以上230℃以下が特に好ましい。加熱時間は、典型的には、1分以上60分以下が好ましく、2分以上30分以下がより好ましく、3分以上10分以下が特に好ましい。
【0108】
以上のように形成される硬化膜は種々の用途に適用される。特に、以上の方法によれば、フタロシアニン顔料のような含窒素有機化合物を含む、緑色カラーフィルター、青色カラーフィルター、又は赤色カラーフィルター上に良好に硬化膜を形成できる。緑色カラーフィルター、青色カラーフィルター、又は赤色カラーフィルター上に形成された硬化膜は、CCDイメージセンサー又はCMOSイメージセンサーにおけるマイクロレンズの形成に特に好ましく用いられる。
【0109】
<マイクロレンズの製造方法>
マイクロレンズの製造方法は、
基板上に、上記硬化性樹脂組成物からなる塗膜を形成することと、
塗膜を加熱して硬化膜を形成することと、
硬化膜上に、形成されるレンズの形状に応じた形状のマスクを形成することと、
マスクとともに硬化膜をエッチングすることにより、マスクの形状が転写されたレンズを形成することと、を含む。
マイクロレンズの形成に用いられる硬化膜は透明である。
【0110】
例えば、CCDイメージセンサー又はCMOSイメージセンサーにおけるマイクロレンズを形成する場合には、前記基板の表層が緑色カラーフィルター、青色カラーフィルター、又は赤色カラーフィルターからなる群から選択されるカラーフィルターにより構成され、前記カラーフィルター上に前記塗膜を形成することが好ましい。
【0111】
硬化膜の形成方法については前述した通りである。硬化膜上に、形成されるレンズの形状に応じた形状のマスクを形成する方法は特に限定されない。典型的には、レンズのサイズを考慮したドットパターンを、レジスト組成物を用いてフォトリソグラフィー法により形成した後、形成されたドットパターンを加熱によりフローさせて、形成されるレンズの形状と同様の形状のマスクが形成される。
ドットパターンを加熱によりフローさせる際の温度は、レジスト組成物の種類に応じて適宜設定される。
【0112】
次いで、マスクとともに硬化膜をエッチングすることにより、マスクの形状が転写されたレンズを形成することができる。エッチング方法は特に限定されないが、ドライエッチングが好ましい。ドライエッチングとしては、特に限定されず、例えば、プラズマ(酸素、アルゴン、CF等)、コロナ放電等によるドライエッチングが挙げられる。
【0113】
以上の方法により、緑色カラーフィルター、青色カラーフィルター、又は赤色カラーフィルター上に製造されたマイクロレンズは、前述の硬化性樹脂組成物が良好に硬化した硬化物からなり、耐熱性や耐溶剤性に優れる。
【実施例
【0114】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0115】
[硬化性樹脂組成物の調製]
樹脂として、下記の樹脂A-1~A-3を用いた。
なお、樹脂A-1~A-3を表す下記の各式において、各繰り返し単位に付された数字は、当該樹脂に含まれる全繰り返し単位に対する各繰り返し単位の比率(モル%)である。
また、各樹脂の質量平均分子量は、次の通りである。
A-1:7,000、A-2:35,000、A-3:35,000
【0116】
【化14】
【化15】
【0117】
熱酸発生剤として、下記の熱酸発生剤B-1及びB-2を用いた。
【化16】
【化17】
【0118】
溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」ともいう。)を用いた。
【0119】
表1に示す組み合わせで、上記の樹脂100質量部と、上記の熱酸発生剤0又は1質量部と、PGMEAとを均一に混合して、硬化性樹脂組成物(固形分濃度:20質量%)を得た。
【0120】
[カラーフィルター上での硬化性]
得られた硬化性樹脂組成物を、7000Å膜厚のグリーンレジストによる硬化物上に塗布した後、100℃で60秒間乾燥させて塗膜を得た。得られた塗膜を200℃で5分間加熱して硬化させ、膜厚1μmの硬化膜を得た。
形成された硬化膜を、アセトンに25℃で5分間浸漬した。浸漬後の硬化膜を乾燥させたのち、浸漬前の硬化膜の膜厚T1と、浸漬後の硬化膜の膜厚T2とから、下式に従い残膜率を算出した。
残膜率(%)=T2/T1×100
カラーフィルター上での硬化性を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
OK(良好):残膜率が95%以上であった。
NG(不良):残膜率が95%未満であった。
【0121】
なお、グリーンレジストは、10質量部のフタロシアニン化合物、12質量部の樹脂溶液(Mw:30,000のベンジルメタクリレート/メタクリル酸(70/30[モル比])共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分50質量%))、129質量部のプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、0.5質量部のフッ素系界面活性剤(商品名:メガファックF475 大日本インキ製)、12質量部のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、3質量部の光重合開始剤(2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾリル二量体)、2質量部の2-メルカプトベンゾチアゾール、0.001質量部のp-メトキシフェノール、及び30質量部の黄色顔料分散組成物(130質量部のPigment Yellow 138、15質量部樹脂溶液(Mw:5000のベンジルメタクリレート/メタクリル酸(70/30[モル比])共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分50質量%))、60質量部の分散剤(Disperbyk-161、ビックケミー・ジャパン(株)製)、795質量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを調製した混合溶液を分散処理したもの)を混合して調製した。
【0122】
[ポットライフ]
得られた硬化性樹脂組成物を室温にて3ヶ月間保管後、上述の「カラーフィルター上での硬化性」と同様にして、硬化膜を得た。上述のT1と、3ヶ月間保管後の硬化性樹脂組成物から得た硬化膜の膜厚T3とから、下式に従い膜厚の変動率を算出した。
膜厚の変動率(%)=(T1-T3)/T1×100
ポットライフを下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
OK(良好):膜厚の変動率が5%以下であった。
NG(不良):膜厚の変動率が5%超であった。
【0123】
【表1】
【0124】
表1から分かる通り、実施例の硬化性樹脂組成物は、孤立電子対を有する窒素原子を含む含窒素化合物を含有する層上において優れた硬化性を示し、かつ、ポットライフが長かったのに対し、比較例の硬化性樹脂組成物は、当該硬化性に劣り、又は、ポットライフが短かった。
【0125】
以上説明した硬化性樹脂組成物を用いることにより、下記の方法によりマイクロレンズを形成できる。以下、実施例1の硬化性樹脂組成物を用いてマイクロレンズを形成する方法について説明する。
まず、上記残膜率評価と同様にして、グリーンレジスト層上に、1μmの硬化膜を得る。その後、特開2016-133733号公報の実施例1に記載のポジ型感光性樹脂組成物を用いて、塗膜を形成し、ホットプレート上で100℃にて90秒プレベーク処理を行って上記塗膜を乾燥させることにより膜厚800nmのポジ型感光性樹脂組成物層を形成する。
次いで、KrF露光装置NSR-S203B(Nikon製、NA=0.68、S=0.75)を用いて、マスクを介して、上記ポジ型感光性樹脂組成物層にKrFエキシマレーザー(248nm)を選択的に照射する。その後、上記ポジ型感光性樹脂組成物層について、110℃で90秒間PEB処理を行い、次いで、23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間現像を行う。その後、純水を用いて、現像されたレジストパターンを30秒間リンスする。純水を振り切り、乾燥を行って、縦250nm×横250nmのサイズのドットからなるドットパターンを得た。得られたドットパターンを140℃でフローさせて半球状のパターンを得る。
フロー後の半球状のパターンをマスクとして、ドライエッチング装置にて、フロン系ガスであるCF含ガスを用いエッチング処理を行い、半球状の硬化物が得られる。