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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】オニウム塩を含む半導体ウェハの処理液
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20240423BHJP
   C23F 1/40 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01L21/308 F
C23F1/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020572319
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2020005663
(87)【国際公開番号】W WO2020166677
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2019024016
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019045761
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019093194
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019110984
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 由樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伴光
(72)【発明者】
【氏名】下田 享史
(72)【発明者】
【氏名】根岸 貴幸
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/068183(WO,A1)
【文献】特開2003-324091(JP,A)
【文献】特開2009-016854(JP,A)
【文献】特開2017-028257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
C23F 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オニウムイオン及びアニオンから成るオニウム塩、並びに次亜塩素酸イオンを含む半導体ウェハ用ルテニウムエッチング液であって、
前記オニウム塩が、式(2)で示される第四級オニウム塩又は式(3)で示される第三級オニウム塩であり、前記オニウム塩のルテニウムエッチング液中における濃度が、0.0001~20質量%である、ルテニウムエッチング液。
【化1】

【化2】

(式(2)中、Aはアンモニウムイオン、又はホスホニウムイオンであり、R、R、R、Rは独立して、炭素数1~25のアルキル基、アリル基、炭素数1~25のアルキル基を有するアラルキル基、又はアリール基である。ただし、R、R、R、Rがアルキル基である場合、R、R、R、Rのうち少なくとも1つのアルキル基の炭素数が2以上である。また、アラルキル基中のアリール基及びアリール基の環において少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~1
0のアルケニル基、炭素数1~9のアルコキシ基、又は炭素数2~9のアルケニルオキシ基で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素又は塩素で置き換えられてもよい。式(3)中、Aはスルホニウムイオンであり、R、R、Rは独立して、炭素数1~25のアルキル基、アリル基、炭素数1~25のアルキル基を有するアラルキル基、又はアリール基である。ただし、R、R、Rがアルキル基である場合、R、R、Rのうち少なくとも1つのアルキル基の炭素数が2以上である。また、アラルキル基中のアリール基及びアリール基の環において少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~9のアルコキシ基、又は炭素数2~9のアルケニルオキシ基で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素又は塩素で置き換えられてもよい。式(2)又は式(3)中、Xはフッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、オルト過ヨウ素酸イオン、メタ過ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、フルオロホウ酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンである。)
【請求項2】
前記第四級オニウム塩が、アンモニウム塩である、請求項1に記載のルテニウムエッチング液。
【請求項3】
記次亜塩素酸イオンの濃度が0.05~20.0質量%である、請求項1又は2に記載のルテニウムエッチング液。
【請求項4】
さらに、有機溶媒を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のルテニウムエッチング液。
【請求項5】
前記有機溶媒の比誘電率が45以下である、請求項4に記載のルテニウムエッチング液。
【請求項6】
前記有機溶媒が、スルホラン類、アルキルニトリル類、ハロゲン化アルカン類、エーテル類である、請求項4又は5に記載のルテニウムエッチング液。
【請求項7】
25℃でのpHが7以上14以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のルテニウムエッチング液。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のルテニウムエッチング液と、ルテニウムを含む半導体ウェハとを接触させる工程を含む、半導体ウェハのエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の製造工程において使用される、半導体ウェハ上に存在する金属ルテニウムをエッチングするための新規な処理液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子のデザインルールの微細化が進んでおり、配線抵抗が増大する傾向にある。配線抵抗が増大した結果、半導体素子の高速動作が阻害されることが顕著になっており、対策が必要となっている。そこで、配線材料としては、従来の配線材料よりも、エレクトロマイグレーション耐性や抵抗値の低減された配線材料が所望されている。
【0003】
従来の配線材料であるアルミニウム、銅と比較して、ルテニウムは、エレクトロマイグレーション耐性が高く、配線の抵抗値を低減可能という理由で、特に、半導体素子のデザインルールが10nm以下の配線材料として、注目されている。その他、配線材料だけでなく、ルテニウムは、配線材料に銅を使用した場合でも、エレクトロマイグレーションを防止することが可能なため、銅配線用のバリアメタルとして、ルテニウムを使用することも検討されている。
【0004】
ところで、半導体素子の配線形成工程において、ルテニウムを配線材料として選択した場合でも、従来の配線材材料と同様に、ドライ又はウェットのエッチングによって配線が形成される。しかしながら、ルテニウムはエッチングガスによるドライでのエッチングやCMP研磨によるエッチング、除去が難しいため、より精密なエッチングが所望されており、具体的には、ウェットエッチングが注目されている。
【0005】
そこで、配線材料やバリアメタルとしてルテニウムを使用する場合は、ウェットエッチングによる精密なルテニウムの微細加工が必要となる。精密なルテニウムの微細加工を実現するためには、ルテニウムの正確なエッチング速度の制御が求められる。さらに、多層配線を実現するためには、各ルテニウム層の平坦性が必要不可欠であり、エッチング後のルテニウム表面の平坦性も所望されている。
【0006】
特許文献1には、ルテニウム膜のエッチング方法として、pH12以上かつ酸化還元電位300mVvsSHE以上の薬液、具体的には、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩又は臭素酸塩のようなハロゲンの酸素酸塩溶液を用いてルテニウム膜をエッチングする方法が提案されている。しかしながら、特許文献1は、付着したルテニウムを確実にエッチング除去できるようにした薬液であり、ルテニウムの除去を目的とした薬液である。
【0007】
また、特許文献2には、オルト過ヨウ素酸を含むpH11以上の水溶液により、ルテニウムを酸化させ、溶解、除去する方法が提案されている。さらに、特許文献3には、臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物及び水を含むpH10以上12未満のルテニウム金属のエッチング液が提案されている。
【0008】
その他、特許文献4には、硝酸セリウム(IV)アンモニウムに、さらに硝酸などの強酸を添加した除去液を用いて、ルテニウムを酸化して溶解、除去する洗浄方法が提案されている。
【0009】
一方、ルテニウムをアルカリ性条件下でウェットエッチングする場合、ルテニウムは、例えばRuO4 -やRuO4 2-として処理液中に溶解する。RuO4 -やRuO4 2-は、処理液中でRuO4へと変化し、その一部がガス化して気相へ放出される。RuO4は強酸化性であるため人体に有害であるばかりでなく、容易に還元されてRuO2パーティクルを生じる。一般的に、パーティクルは歩留まり低下を招くため半導体形成工程において非常に問題となる。このような背景から、RuO4ガスの発生を抑制することは非常に重要となる。
【0010】
特許文献5には、ルテニウム膜のエッチング液として、pHが12以上、かつ酸化還元電位が300mV vs.SHE以上である薬液が示されている。さらに、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、又は臭素酸塩のようなハロゲンの酸素酸塩溶液を用いてルテニウム膜をエッチングする方法が提示されている。
【0011】
また、特許文献6には、オルト過ヨウ素酸を含むpH11以上の水溶液により、ルテニウムを酸化させ、溶解、除去する方法が提案されている。
【0012】
特許文献7には、ルテニウムの化学機械研磨(CMP)において、RuO4ガスを発生しないようなルテニウム配位酸化窒素配位子(N-O配位子)を含むCMPスラリーが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2002-161381号公報
【文献】国際公開第2016/068183号
【文献】国際公開第2011/074601号
【文献】特開2001-234373号公報
【文献】特開2002-161381号公報
【文献】国際公開第2016/068183号
【文献】特許第5314019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、本発明者の検討によれば、先行技術文献1~4に記載された従来のエッチング液では、以下の点で改善の余地があることが分かった。
【0015】
例えば、特許文献1や4に記載のルテニウムをエッチングする方法は、半導体基板の裏面やベベルに付着したルテニウム残渣の除去を目的としており、ルテニウムを溶解、除去することは可能である。しかしながら、特許文献1や4に記載のエッチング液では、配線工程で所望されているエッチング処理後のルテニウム表面の平坦性を維持することは難しかった。したがって、特許文献1や4に記載の方法では、半導体素子の配線を形成する工程でルテニウムのエッチング液として使用することが困難であった。
【0016】
また、特許文献2に記載のエッチング液では、特許文献1と同様に、ルテニウムが含まれるエッチング残渣を対象としたエッチング液であり、エッチング処理後のルテニウム表面の平坦性を維持することは難しく、配線を形成する工程で使用することが困難であった。
【0017】
その他、特許文献3に記載のエッチング液では、半導体ウェハ等の基板に構成される半導体素子、配線、バリアメタルの製造工程で使用されたルテニウムをエッチングすることが記載されている。しかしながら、特許文献1、特許文献4と同様に半導体ウェハ等の基板の裏面及びベベル洗浄を行うことが目的であり、特許文献3に記載のエッチング液でルテニウムをエッチングした場合は、エッチング処理後のルテニウム表面の平坦性を維持することが出来ず、さらなる改善の余地があった。
【0018】
したがって、本発明の第一の目的は、半導体ウェハ上に存在するルテニウムをウェットでエッチング可能な処理液を提供することにある。さらに、エッチング処理後のルテニウム表面の平坦性を維持することが出来る処理液を提供することにある。
【0019】
また、本発明者の検討によれば、先行技術文献5~7に記載された従来の処理液では、以下の点で改善の余地があることが分かった。
【0020】
例えば、特許文献5に記載のルテニウムをエッチングする方法は、半導体基板の裏面やベベルに付着したルテニウム残渣の除去を目的としており、ルテニウムを溶解、除去することは可能である。しかしながら、特許文献5ではRuO4ガスの抑制について何ら言及されておらず、実際に特許文献5に記載の方法では安定性に欠け、RuO4ガスが多量に発生し、RuO4ガスの発生を抑制することは出来なかった。また、RuO2(粒子)が多量に発生する問題があった。
【0021】
また、特許文献6では、オルト過ヨウ素酸を含むルテニウム除去組成物が開示されており、ルテニウムが含まれるエッチング残渣をエッチング可能であることが示されている。しかしながら、特許文献6ではRuO4ガスの抑制について何ら言及されておらず、エッチング処理中に発生するRuO4ガスを抑制することは出来なかった。
【0022】
その他、特許文献7には、CMPにおいてルテニウム配位酸化窒素配位子(N-O配位子)を含むCMPスラリーを使用することで、毒性のあるRuO4ガスを抑制可能であることが示されている。しかし、特許文献7で示されているCMPスラリーは酸性であり、ルテニウムの溶解機構が異なるアルカリ性条件下では、特許文献7に示されるCMPスラリー組成によるRuO4ガスの抑制は難しい。事実、次亜塩素酸を含むアルカリ性のルテニウムエッチング液に、特許文献7に記載のルテニウム配位酸化窒素配位子を添加したところ、RuO4ガスが発生し、RuO4ガス抑制効果が無いことが確認された。
【0023】
したがって、本発明の第二の目的は、ルテニウムを含む半導体ウェハと処理液をアルカリ性条件下において接触させる際に、RuO4ガスの発生を抑制可能な半導体ウェハ用処理液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らは、上記の第一の課題を解決するために鋭意検討を行った。そして、特定のアルキルアンモニウム塩を、次亜塩素酸イオンを含む処理液に添加することを検討した。単に、次亜塩素酸イオンのみを含む処理液では、エッチング処理後のルテニウム表面の平坦性を維持することが出来ないため、様々な添加成分を組み合せた。その結果、特定のアルキルアンモニウム塩を添加することにより、エッチング処理後のルテニウム表面の平坦性を維持することが可能となることを見出し、第一の発明を完成するに至った。
また、本発明者らは、上記の第二の課題を解決するために鋭意検討を行った。そして、ルテニウムを含む半導体ウェハ用処理液に、種々のオニウム塩を添加することを検討した。単にルテニウムを含む半導体ウェハ用処理液だけでは、RuO4ガスを抑制することが出来ないため、様々な添加成分を組み合せた。その結果、特定のオニウム塩を添加することにより、RuO4ガス発生を抑制することが可能になることを見出し、第二の発明を完成するに至った。
【0025】
上記の第一の課題を解決するための本発明の第一の態様は、以下の(1)~(7)を含む。
(1) 半導体形成工程において使用される金属をエッチングするための処理液であって、
(A)次亜塩素酸イオン、
(B)下記式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩
を含む処理液。
【化1】
【0026】
(式中、aは、6~20の整数であり、R1、R2、R3は水素原子、又は炭素数1~20のアルキル基である。X-は、フッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、酢酸イオン、フルオロホウ酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンである。)
である。
【0027】
本発明の第一の態様の処理液がエッチング処理後のルテニウム表面の平坦性を維持するメカニズムとしては、以下のことが考えられる。つまり、処理液に含まれているアルキルアンモニウム塩のアルキルアンモニウムイオンがエッチングの対象であるルテニウムの表面に吸着し、保護層を形成する。アルキルアンモニウムイオンによって形成された保護層が、ルテニウムを酸化、溶解させる次亜塩素酸イオンとの接触を妨げるため、次亜塩素酸イオンのみの処理液でエッチング処理するよりも、エッチング処理後のルテニウム表面の平坦性を維持することが可能になると考えられる。
【0028】
また、本発明の第一の態様では、以下の実施形態をとることもできる。エッチング処理後のルテニウム表面荒れをより抑制するためには、
(2) 上記(B)上記式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩の濃度が、0.0001~10質量%である(1)に記載の処理液とすることが好ましい。
【0029】
さらに、ルテニウムのエッチング速度を向上させるためには、
(3) 上記(A)次亜塩素酸イオンの濃度が、0.05~20.0質量%である(1)又は(2)記載の処理液とすることが好ましい。
【0030】
また、処理液に含まれるナトリウムなどの不純物を低減させるためには、
(4) (C)テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、又はテトラブチルアンモニウムイオンのいずれかより選択される少なくとも1種のアンモニウムイオンを含む(1)~(3)のいずれかに記載の処理液とすることが好ましい。
【0031】
同様に、エッチング処理後のルテニウム表面荒れを抑制とルテニウムのエッチング速度を両立させるためには、
(5) 25℃でのpHが7を超え14.0未満である(1)~(4)のいずれかに記載の処理液とすることが好ましい。
【0032】
その他、
(6) 上記半導体ウェハが含む金属がルテニウムである(1)~(5)のいずれかに記載の処理液を提供することもできる。
【0033】
さらに、
(7) (1)~(6)のいずれかに記載の処理液と半導体ウェハとを接触させる工程を含むエッチング方法を提供することもできる。
【0034】
次に、上記の第二の課題を解決するための本発明の第二の態様は、以下の(8)~(23)を含む。
(8)オニウムイオンとアニオンから成るオニウム塩を含む半導体ウェハ用処理液であって、上記オニウム塩が、式(2)で示される第四級オニウム塩又は式(3)で示される第三級オニウム塩である、処理液である。
【0035】
【化2】
【0036】
【化3】
(式(2)中、A+はアンモニウムイオン、又はホスホニウムイオンであり、R1、R2、R3、R4は独立して、炭素数1~25のアルキル基、アリル基、炭素数1~25のアルキル基を有するアラルキル基、又はアリール基である。ただし、R1、R2、R3、R4がアルキル基である場合、R1、R2、R3、R4のうち少なくとも1つのアルキル基の炭素数が2以上である。また、アラルキル基中のアリール基及びアリール基の環において少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~9のアルコキシ基、又は炭素数2~9のアルケニルオキシ基で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素又は塩素で置き換えられてもよい。式(3)中、A+はスルホニウムイオンであり、R1、R2、R3は独立して、炭素数1~25のアルキル基、アリル基、炭素数1~25のアルキル基を有するアラルキル基、又はアリール基である。ただし、R1、R2、R3がアルキル基である場合、R1、R2、R3のうち少なくとも1つのアルキル基の炭素数が2以上である。また、アラルキル基中のアリール基及びアリール基の環において少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~9のアルコキシ基、又は炭素数2~9のアルケニルオキシ基で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素又は塩素で置き換えられてもよい。式(2)又は式(3)中、X-はフッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、オルト過ヨウ素酸イオン、メタ過ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、フルオロホウ酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンである。)
【0037】
本発明の第二の態様の処理液がRuO4ガス発生を抑制するメカニズムは、次のように推測される。すなわち、アルカリ性の処理液中では、ルテニウムの溶解により発生したRuO4 -やRuO4 2-のようなアニオン(以下、RuO4 -等と記すこともある)は、処理液に含まれるオニウムイオンと静電的に相互作用し、その一部がイオン対として安定に存在するようになる。これにより、RuO4 -等からRuO4への変化が妨げられ、結果としてRuO4ガスの発生が抑制される。さらに、RuO4の生成が妨げられるため、RuO4が還元することで生じるRuO2パーティクルの発生も抑制される、と推測される。
【0038】
したがって、本発明の第二の態様の処理液において、オニウム塩の添加によるRuO4ガス抑制効果は、処理液に含まれてもよい酸化剤やその他の添加剤の種類や量、処理方法、処理条件等に限定されるものではない。例えば、第二の態様の処理液中に含まれてもよい酸化剤は、半導体用処理液に用いられる酸化剤として一般に公知の酸化剤を用いることができる。一例を挙げれば、ハロゲン酸素酸、過マンガン酸、及びこれらの塩又はイオン、過酸化水素、オゾン、セリウム(IV)塩等を好適に用いることができる。これらの酸化剤を含む場合、本発明の第二の態様の処理液は、処理液に含まれるオニウム塩によりRuO4ガス抑制効果が得られる。また、本発明の第二の態様の処理液による半導体ウェハの処理方式は、ウェットエッチングに限定されるものではなく、洗浄用途や残渣除去用途の処理液としても好適に利用できる。さらに、本発明の第二の態様の処理液をCMP研磨に用いれば、CMP研磨工程においてもRuO4ガスの発生を抑制することが可能である。本発明の第二の態様の処理液によるルテニウムを含むウェハの処理は、枚葉処理でもよく、浸漬処理でも良い。また、処理液の温度は特に制限されることはなく、いずれの処理温度においても、処理液に含まれるオニウム塩によりRuO4ガス抑制効果が発揮される。
【0039】
さらに、RuO4 -等とオニウム塩との反応性を上げる事で、よりRuO4ガスの発生を抑制するためには、下記が好ましい。
(9)上記第四級オニウム塩が、アンモニウム塩である、(8)に記載の処理液であることが好ましい。
(10)上記第四級オニウム塩が、テトラアルキルアンモニウム塩である、(8)又は(9)に記載の処理液であることが好ましい。
(11)上記第四級オニウム塩が、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、又はテトラペンチルアンモニウムイオンから選ばれる少なくとも1種のアンモニウムイオンからなる塩である、(8)~(10)のいずれかに記載の処理液であることが好ましい。
【0040】
また、オニウム塩の添加量を上げる事で、よりRuO4ガスを抑制するためには、
(12)上記オニウム塩の処理液中における濃度が、0.0001~50質量%である、(8)~(11)のいずれかに記載の処理液とすることが好ましい。
【0041】
また、RuO2パーティクルの発生を抑制し、RuO4ガスの発生をより抑制するためには、
(13)上記処理液が酸化剤を含む、(8)~(12)いずれかに記載の処理液であることが好ましい。
【0042】
その他、ルテニウム含有ウェハの処理速度とRuO4ガスの抑制を両立するためには、
(14)上記処理液が、次亜塩素酸イオンを含み、かつ次亜塩素酸イオンの濃度が0.05~20.0質量%である、(8)~(13)のいずれかに記載の処理液であることが好ましい。
【0043】
上述のように、本発明の第二の態様ではルテニウムの溶解により生じたRuO4 -等が、処理液に含まれるオニウム塩によりトラップされる事でRuO4ガスの発生を抑制している。この場合、RuO4 -等とオニウムイオンはイオン対の状態で処理液中に溶解しているが、溶解度を超えた場合は沈殿物となる。この沈殿物は半導体形成工程においてパーティクルの原因となるため、歩留まりの低下を招く。そこで、沈殿物を溶解させるためには溶解度を上げる必要があり、この方法として有機溶媒の添加が有効である。そこで、本発明の第二の態様では次のような実施形態をとる事が望ましい。すなわち、上記処理液が、
(15)さらに、有機溶媒を含む、(8)~(14)のいずれかに記載の処理液であることが好ましい。
【0044】
ここで、沈殿物が処理液に溶解する際、イオン対(RuO4 -等とオニウムイオン間の電気的な相互作用を保った状態)として処理液中に存在する場合と、RuO4 -等とオニウムイオン間の相互作用が失われて、それぞれのイオンが独立して処理液中に存在する場合がある。前者であれば、RuO4 -等はオニウムイオンによりトラップされているためRuO4ガスは発生しないが、後者の場合はRuO4 -等がRuO4へと変化し、RuO4ガスが発生する。この場合、前者と後者の違いは、添加する有機溶媒の比誘電率に依存する。一般的に、溶媒の比誘電率が低いほどイオン対として存在しやすいため、比誘電率の低い有機溶媒を添加することでRuO4ガスの発生を抑制することが可能である。
すなわち、
(16)上記有機溶媒の比誘電率が45以下である、(15)に記載の処理液であることが好ましい。
【0045】
さらに、上記処理液が強力な酸化剤を含む場合、添加する有機溶媒は処理液と反応しないものが望ましい。そこで、
(17)上記有機溶媒が、スルホラン類、アルキルニトリル類、ハロゲン化アルカン類、エーテル類である、(15)又は(16)に記載の処理液であることが好ましい。
【0046】
さらに、生成された沈殿物を十分に溶解するためには、
(18)上記有機溶媒の処理液における濃度が0.1質量%以上である、(15)~(17)のいずれかに記載の処理液とすることが好ましい。
【0047】
また、RuO4ガスの発生を抑制しつつ、ルテニウム含有ウェハの処理速度及び保存安定性を維持するためには、
(19)25℃でのpHが7以上14以下である、(8)~(18)のいずれかに記載の処理液であることが好ましい。
【0048】
さらに、
(20)ルテニウムを含む半導体ウェハのエッチングに用いるための、(8)~(19)のいずれかに記載の処理液を提供することができる。
また、
(21)ルテニウムを含む半導体ウェハのエッチングに用いるための、(8)~(19)のいずれかに記載の処理液の使用を提供することができる。
【0049】
さらに、
(22)(8)~(19)のいずれかに記載の処理液と、ルテニウムを含む半導体ウェハとを接触させる工程を含む、半導体ウェハのエッチング方法を提供できる。
【0050】
さらに、
(23)オニウムイオンとアニオンから成るオニウム塩を含む、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤であって、
上記オニウム塩が、式(2)で示される第四級オニウム塩、又は式(3)で示される第三級オニウム塩である、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤を提供できる。
【化4】
【化5】
(式(2)中、A+はアンモニウムイオン、又はホスホニウムイオンであり、R1、R2、R3、R4は独立して、炭素数1~25のアルキル基、アリル基、炭素数1~25のアルキル基を有するアラルキル基、又はアリール基である。ただし、R1、R2、R3、R4がアルキル基である場合、R1、R2、R3、R4のうち少なくとも1つのアルキル基の炭素数が2以上である。また、アラルキル基中のアリール基及びアリール基の環において少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~9のアルコキシ基、又は炭素数2~9のアルケニルオキシ基で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素又は塩素で置き換えられてもよい。式(3)中、A+はスルホニウムイオンであり、R1、R2、R3は独立して、炭素数1~25のアルキル基、アリル基、炭素数1~25のアルキル基を有するアラルキル基、又はアリール基である。ただし、R1、R2、R3がアルキル基である場合、R1、R2、R3のうち少なくとも1つのアルキル基の炭素数が2以上である。また、アラルキル基中のアリール基及びアリール基の環において少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~9のアルコキシ基、又は炭素数2~9のアルケニルオキシ基で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素又は塩素で置き換えられてもよい。式(2)又は式(3)中、X-はフッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、オルト過ヨウ素酸イオン、メタ過ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、フルオロホウ酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンである。)
さらに、
【0051】
(24)(23)に記載のルテニウム含有ガスの発生抑制剤を用いる、ルテニウム含有ガスの発生を抑制する方法を提供できる。
【0052】
さらに、上記の第二の課題を解決するための本発明の第三の態様は、以下の(25)~(40)を含む。
(25)オニウムイオンとアニオンから成るオニウム塩を含む半導体ウェハ用処理液であって、上記オニウム塩が、式(4)で示されるオニウム塩である、処理液である。
【化6】
(式(4)中、Zは、窒素、硫黄、酸素原子を含んでもよい芳香族基又は脂環式基であり、該芳香族基又は該脂環式基において、炭素又は窒素は、
塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、
少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基、
少なくとも1つの炭素数2~9のアルケニルオキシ基、
少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい芳香族基、
又は、少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい脂環式基
を有していてもよい。
Aは、窒素又は硫黄である。
Rは塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、炭素数1~15のアルキル基、アリル基、少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい芳香族基、又は少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい脂環式基である。
-は、有機又は無機アニオンである。
nは1又は2の整数であり、Rの数を示す。
nが2の場合、Rは同一又は異なっていてもよく、環を形成してもよい。)
【0053】
また、本発明は、以下の態様をとることもできる。
(26)酸化剤と、オニウムイオンとアニオンから成るオニウム塩を含む半導体ウェハ用処理液であって、
上記オニウム塩が、式(4)で示されるオニウム塩である、処理液。
【化7】
(式(4)中、Zは、窒素、硫黄、酸素原子を含んでもよい芳香族基又は脂環式基であり、該芳香族基又は該脂環式基において、炭素又は窒素は、
塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、
少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基、
少なくとも1つの炭素数2~9のアルケニルオキシ基、
少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい芳香族基、
又は、少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい脂環式基
を有していてもよい。
Aは、窒素又は硫黄である。
Rは塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、炭素数1~15のアルキル基、アリル基、少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい芳香族基、又は少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい脂環式基である。
-は、有機又は無機アニオンである。
nは1又は2の整数であり、Rの数を示す。
nが2の場合、Rは同一又は異なっていてもよく、環を形成してもよい。)
【0054】
また、本発明は、以下の態様をとることもできる。
本発明の第三の態様の処理液がRuO4ガス発生を抑制するメカニズムは、次のように推測される。すなわち、アルカリ性の処理液中では、ルテニウムの溶解により発生したRuO4 -やRuO4 2-のようなアニオン(以下、RuO4 -等と記すこともある)は、処理液に含まれるオニウムイオンと静電的に相互作用し、その一部がイオン対として安定に存在するようになる。これにより、RuO4 -等からRuO4への変化が妨げられ、結果としてRuO4ガスの発生が抑制される。さらに、RuO4の生成が妨げられるため、RuO4が還元することで生じるRuO2パーティクルの発生も抑制される、と推測される。
したがって、本発明の第三の態様の処理液において、オニウム塩の添加によるRuO4ガス抑制効果は、処理液に含まれてもよい酸化剤やその他の添加剤の種類や量、処理方法、処理条件等に限定されるものではない。例えば、処理液中に含まれてもよい酸化剤は、半導体用処理液に用いられる酸化剤として一般に公知の酸化剤を用いることができる。一例を挙げれば、ハロゲン酸素酸、過マンガン酸、及びこれらの塩又はイオン、過酸化水素、オゾン、セリウム(IV)塩等を好適に用いることができる。これらの酸化剤を含場合、本発明の第三の態様の処理液は、処理液に含まれるオニウム塩によりRuO4ガス抑制効果が得られる。また、本発明の第三の態様の処理液による半導体ウェハの処理方式は、ウェットエッチングに限定されるものではなく、洗浄用途や残渣除去用途の処理液としても好適に利用できる。さらに、本発明の第三の態様の処理液をCMP研磨に用いれば、CMP研磨工程においてもRuO4ガスの発生を抑制することが可能である。本発明の第三の態様の処理液によるルテニウムを含むウェハの処理は、枚葉処理でもよく、浸漬処理でも良い。また、処理液の温度は特に制限されることはなく、いずれの処理温度においても、処理液に含まれるオニウム塩によりRuO4ガス抑制効果が発揮される。
【0055】
さらに、RuO4 -等とオニウム塩との反応性を上げる事で、よりRuO4ガスの発生を抑制するためには、下記が好ましい
(27)オニウム塩が、イミダゾリウム塩、ピロリジニウム塩、ピリジニウム塩、オキサゾリウム塩、又はピペリジニウム塩である、(25)又は(26)に記載の処理液であることが好ましい。
【0056】
(28)上記有機又は無機アニオンが、フッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、オルト過ヨウ素酸イオン、メタ過ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、フルオロホウ酸イオン、フルオロリン酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンである、(25)~(27)のいずれかに記載の処理液であることが好ましい。
【0057】
また、オニウム塩の添加量を上げる事で、よりRuO4ガスを抑制するためには、
(29)上記オニウム塩の処理液中における濃度が、0.0001~50質量%である、(25)~(28)のいずれかに記載の処理液とすることが好ましい。
【0058】
また、RuO2パーティクルの発生を抑制し、RuO4ガスの発生をより抑制するとともに、その他、ルテニウム含有ウェハの処理速度とRuO4ガスの抑制を両立するためには、
(30)上記処理液が、次亜塩素酸イオンを含み、かつ次亜塩素酸イオンの濃度が0.05~20.0質量%である、(25)~(29)のいずれかに記載の処理液であることが好ましい。
【0059】
上述のように、本発明の第三の態様ではルテニウムの溶解により生じたRuO4 -等が、処理液に含まれるオニウム塩によりトラップされる事でRuO4ガスの発生を抑制している。この場合、RuO4 -等とオニウムイオンはイオン対の状態で処理液中に溶解しているが、溶解度を超えた場合は沈殿物となる。この沈殿物は半導体形成工程においてパーティクルの原因となるため、歩留まりの低下を招く。そこで、沈殿物を溶解させるためには溶解度を上げる必要があり、この方法として有機溶媒の添加が有効である。そこで、本発明の第三の態様は次のような実施形態をとる事が望ましい。すなわち、上記処理液が、
(31)さらに、有機溶媒を含む、(25)~(30)のいずれかに記載の処理液であることが好ましい。
【0060】
ここで、沈殿物が処理液に溶解する際、イオン対(RuO4 -等とオニウムイオン間の電気的な相互作用を保った状態)として処理液中に存在する場合と、RuO4 -等とオニウムイオン間の相互作用が失われて、それぞれのイオンが独立して処理液中に存在する場合がある。前者であれば、RuO4 -等はオニウムイオンによりトラップされているためRuO4ガスは発生しないが、後者の場合はRuO4 -等がRuO4へと変化し、RuO4ガスが発生する。この場合、前者と後者の違いは、添加する有機溶媒の比誘電率に依存する。一般的に、溶媒の比誘電率が低いほどイオン対として存在しやすいため、比誘電率の低い有機溶媒を添加することでRuO4ガスの発生を抑制することが可能である。
すなわち、
(32)上記有機溶媒の比誘電率が45以下であることを特徴とする、(31)に記載の処理液であることが好ましい。
【0061】
さらに、上記処理液が強力な酸化剤を含む場合、添加する有機溶媒は処理液と反応しないものが望ましい。そこで、
(33)上記有機溶媒が、スルホラン類、アルキルニトリル類、ハロゲン化アルカン類、エーテル類である、(31)又は(32)に記載の処理液であることが好ましい。
さらに、生成された沈殿物を十分に溶解するためには、
(34)上記有機溶媒の処理液における濃度が0.1質量%以上である、(31)~(33)のいずれかに記載の処理液とすることが好ましい。
【0062】
また、RuO4ガスの発生を抑制しつつ、ルテニウム含有ウェハの処理速度及び保存安定性を維持するためには、
(35)25℃でのpHが7以上14以下である、(25)~(34)のいずれかに記載の処理液であることが好ましい。
【0063】
さらに、
(36)ルテニウムを含む半導体ウェハのエッチングに用いるための(25)~(35)のいずれかに記載の処理液の使用を提供できる。
【0064】
さらに、
(37)(25)~(35)のいずれかに記載の処理液と、ルテニウムを含む半導体ウェハとを接触させる工程を含む、半導体ウェハのエッチング方法を提供できる。
【0065】
さらに、
(38)オニウムイオンとアニオンから成るオニウム塩を含む、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤であって、上記オニウム塩が、式(4)で示されるオニウム塩である、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤であることが好ましい。
【化8】
(式(4)中、Zは、窒素、硫黄、酸素原子を含んでもよい芳香族基又は脂環式基であり、該芳香族基又は該脂環式基において、炭素又は窒素は、
塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、
少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基、
少なくとも1つの炭素数2~9のアルケニルオキシ基、
少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい芳香族基、
又は、少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい脂環式基
を有していてもよい。
Aは、窒素又は硫黄である。
Rは塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、炭素数1~15のアルキル基、アリル基、少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい芳香族基、又は少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい脂環式基である。
-は、有機又は無機アニオンである。
nは1又は2の整数であり、Rの数を示す。
nが2の場合、Rは同一又は異なっていてもよく、環を形成してもよい。)
【0066】
さらに、
(39)酸化剤と、オニウムイオンとアニオンから成るオニウム塩を含む、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤であって、上記オニウム塩が、式(4)で示されるオニウム塩である、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤であることが好ましい。
【化9】
(式(4)中、Zは、窒素、硫黄、酸素原子を含んでもよい芳香族基又は脂環式基であり、該芳香族基又は該脂環式基において、炭素又は窒素は、
塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、
少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基、
少なくとも1つの炭素数2~9のアルケニルオキシ基、
少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい芳香族基、
又は、少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい脂環式基
を有していてもよい。
Aは、窒素又は硫黄である。
Rは塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、炭素数1~15のアルキル基、アリル基、少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい芳香族基、又は少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい脂環式基である。
-は、有機又は無機アニオンである。
nは1又は2の整数であり、Rの数を示す。
nが2の場合、Rは同一又は異なっていてもよく、環を形成してもよい。)
【0067】
さらに、
(40)(38)又は(39)に記載のルテニウム含有ガスの発生抑制剤を用いる、ルテニウム含有ガスの発生を抑制する方法であることが好ましい。
【0068】
さらに、上記の第二の課題を解決するための本発明の第四の態様は、以下の(41)~(53)を含む。
(41)オニウムイオンとアニオンから成るオニウム塩を含む、半導体ウェハ用処理液であって、上記オニウム塩が、式(5)で示されるオニウム塩である、半導体ウェハ用処理液である。
【化10】
(式(5)中、A+は独立して、アンモニウムイオン、又はホスホニウムイオンであり、R1、R2、R3、R4、R5、R6は独立して、炭素数1~25のアルキル基、アリル基、炭素数1~25のアルキル基を有するアラルキル基、又はアリール基である。アラルキル基中のアリール基及びアリール基の環において少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~9のアルコキシ基、又は炭素数2~9のアルケニルオキシ基で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素又は塩素で置き換えられてもよい。式(5)中、X-はフッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、オルト過ヨウ素酸イオン、メタ過ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、フルオロホウ酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンであり、aは1~10の整数である。)
【0069】
本発明の第四の態様の処理液がRuO4ガス発生を抑制するメカニズムは、次のように推測される。すなわち、アルカリ性の処理液中では、ルテニウムの溶解により発生したRuO4 -やRuO4 2-のようなアニオン(以下、RuO4 -等と記すこともある)は、処理液に含まれるオニウムイオンと静電的に相互作用し、その一部がイオン対として安定に存在するようになる。これにより、RuO4 -等からRuO4への変化が妨げられ、結果としてRuO4ガスの発生が抑制される。さらに、RuO4の生成が妨げられるため、RuO4が還元することで生じるRuO2パーティクルの発生も抑制される、と推測される。
【0070】
したがって、本発明の第四の態様の処理液において、オニウム塩の添加によるRuO4ガス抑制効果は、処理液に含まれてもよい酸化剤やその他の添加剤の種類や量、処理方法、処理条件等に限定されるものではない。例えば、第四の態様の処理液中に含まれてもよい酸化剤は、半導体用処理液に用いられる酸化剤として一般に公知の酸化剤を用いることができる。一例を挙げれば、ハロゲン酸素酸、過マンガン酸、及びこれらの塩又はイオン、過酸化水素、オゾン、セリウム(IV)塩等を好適に用いることができる。これらの酸化剤を含む場合、本発明の第四の態様の処理液は、処理液に含まれるオニウム塩によりRuO4ガス抑制効果が得られる。また、本発明の第四の態様の処理液による半導体ウェハの処理方式は、ウェットエッチングに限定されるものではなく、洗浄用途や残渣除去用途の処理液としても好適に利用できる。さらに、本発明の第四の態様の処理液をCMP研磨に用いれば、CMP研磨工程においてもRuO4ガスの発生を抑制することが可能である。本発明の第四の態様の処理液によるルテニウムを含むウェハの処理は、枚葉処理でもよく、浸漬処理でも良い。また、処理液の温度は特に制限されることはなく、いずれの処理温度においても、処理液に含まれるオニウム塩によりRuO4ガス抑制効果が発揮される。
【0071】
また、オニウム塩の添加量を上げる事で、よりRuO4ガスを抑制するためには、
(42)処理液中における上記オニウム塩の濃度が、0.0001~50質量%である、(41)に記載の処理液とすることが好ましい。
【0072】
また、RuO2パーティクルの発生を抑制し、RuO4ガスの発生をより抑制するためには、
(43)上記処理液が、酸化剤を含む、(41)又は(42)に記載の処理液とすることが好ましい。
【0073】
その他、ルテニウム含有ウェハの処理速度とRuO4ガスの抑制を両立するためには、
(44)上記処理液が、次亜塩素酸イオンを含み、かつ次亜塩素酸イオンの濃度が0.05~20.0質量%である、(41)~(43)のいずれかに記載の処理液とすることが好ましい。
【0074】
上述のように、本発明の第四の態様ではルテニウムの溶解により生じたRuO4 -等が、処理液に含まれるオニウム塩によりトラップされる事でRuO4ガスの発生を抑制している。この場合、RuO4 -等とオニウムイオンはイオン対の状態で処理液中に溶解しているが、溶解度を超えた場合は沈殿物となる。この沈殿物は半導体形成工程においてパーティクルの原因となるため、歩留まりの低下を招く。そこで、沈殿物を溶解させるためには溶解度を上げる必要があり、この方法として有機溶媒の添加が有効である。そこで、本発明の第四の態様では次のような実施形態をとる事が望ましい。すなわち、上記処理液が、
(45)さらに、有機溶媒を含む、(41)~(44)のいずれかに記載の処理液とすることが好ましい。
【0075】
ここで、沈殿物が処理液に溶解する際、イオン対(RuO4 -等とオニウムイオン間の電気的な相互作用を保った状態)として処理液中に存在する場合と、RuO4 -等とオニウムイオン間の相互作用が失われて、それぞれのイオンが独立して処理液中に存在する場合がある。前者であれば、RuO4 -等はオニウムイオンによりトラップされているためRuO4ガスは発生しないが、後者の場合はRuO4 -等がRuO4へと変化し、RuO4ガスが発生する。この場合、前者と後者の違いは、添加する有機溶媒の比誘電率に依存する。一般的に、溶媒の比誘電率が低いほどイオン対として存在しやすいため、比誘電率の低い有機溶媒を添加することでRuO4ガスの発生を抑制することが可能である。
すなわち、
(46)上記有機溶媒の比誘電率が45以下である、(45)に記載の処理液とすることが好ましい。
【0076】
さらに、上記処理液が強力な酸化剤を含む場合、添加する有機溶媒は処理液と反応しないものが望ましい。そこで、
(47)上記有機溶媒が、スルホラン類、アルキルニトリル類、ハロゲン化アルカン類、エーテル類である、(45)又は(46)に記載の処理液とすることが好ましい。
【0077】
さらに、生成された沈殿物を十分に溶解するためには、
(48)処理液における上記有機溶媒の濃度が0.1質量%以上である、(45)~(47)のいずれかに記載の処理液とすることが好ましい。
【0078】
また、RuO4ガスの発生を抑制しつつ、ルテニウム含有ウェハの処理速度及び保存安定性を維持するためには、
(49)25℃でのpHが7以上14以下である、(41)~(48)のいずれかに記載の処理液とすることが好ましい。
【0079】
さらに、
(50)ルテニウムを含む半導体ウェハのエッチングに用いるための(41)~(49)のいずれかに記載の処理液の使用を提供できる。
【0080】
さらに、
(51)(41)~(49)のいずれかに記載の処理液と、ルテニウムを含む半導体ウェハとを接触させる工程を含む、半導体ウェハのエッチング方法を提供できる。
【0081】
さらに、
(52)オニウムイオンとアニオンから成るオニウム塩を含む、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤であって、上記オニウム塩が、式(5)で示されるオニウム塩である、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤を提供できる。
【化11】
(式(5)中、A+は独立して、アンモニウムイオン、又はホスホニウムイオンであり、R1、R2、R3、R4、R5、R6は独立して、炭素数1~25のアルキル基、アリル基、炭素数1~25のアルキル基を有するアラルキル基、又はアリール基である。アラルキル基中のアリール基及びアリール基の環において少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~9のアルコキシ基、又は炭素数2~9のアルケニルオキシ基で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素又は塩素で置き換えられてもよい。式(5)中、X-はフッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、オルト過ヨウ素酸イオン、メタ過ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、フルオロホウ酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンであり、aは1~10の整数である。)
【0082】
さらに、
(53)(52)に記載のルテニウム含有ガスの発生抑制剤を用いる、ルテニウム含有ガスの発生を抑制する方法を提供できる。
【0083】
また、第二課題を解決する本発明によれば、
(54)オニウムイオンとアニオンから成るオニウム塩を含む、ルテニウム含有廃液の処理剤であって、上記オニウム塩が、式(2)で示される第四級オニウム塩、式(3)で示される第三級オニウム塩、式(4)で示されるオニウム塩、又は式(5)で示されるオニウム塩である、ルテニウム含有廃液の処理剤を提供できる。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
(式(2)中、A+はアンモニウムイオン、又はホスホニウムイオンであり、R1、R2、R3、R4は独立して、炭素数1~25のアルキル基、アリル基、炭素数1~25のアルキル基を有するアラルキル基、又はアリール基である。ただし、R1、R2、R3、R4がアルキル基である場合、R1、R2、R3、R4のうち少なくとも1つのアルキル基の炭素数が2以上である。また、アラルキル基中のアリール基及びアリール基の環において少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~9のアルコキシ基、又は炭素数2~9のアルケニルオキシ基で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素又は塩素で置き換えられてもよい。
式(3)中、A+はスルホニウムイオンであり、R1、R2、R3は独立して、炭素数1~25のアルキル基、アリル基、炭素数1~25のアルキル基を有するアラルキル基、又はアリール基である。ただし、R1、R2、R3がアルキル基である場合、R1、R2、R3のうち少なくとも1つのアルキル基の炭素数が2以上である。また、アラルキル基中のアリール基及びアリール基の環において少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~9のアルコキシ基、又は炭素数2~9のアルケニルオキシ基で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素又は塩素で置き換えられてもよい。
式(2)又は式(3)中、X-はフッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、オルト過ヨウ素酸イオン、メタ過ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、フルオロホウ酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンである。
式(4)中、Zは、窒素、硫黄、酸素原子を含んでもよい芳香族基又は脂環式基であり、該芳香族基又は該脂環式基において、炭素又は窒素は、
塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、
少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基、
少なくとも1つの炭素数2~9のアルケニルオキシ基、
少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい芳香族基、
又は、少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい脂環式基
を有していてもよい。
Aは、窒素又は硫黄である。
Rは塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、炭素数1~15のアルキル基、アリル基、少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい芳香族基、又は少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい脂環式基であり、
-は、有機又は無機アニオンであり、
nは1又は2の整数であり、Rの数を示し、
nが2の場合、Rは同一又は異なっていてもよく、環を形成してもよい。
式(5)中、A+は独立して、アンモニウムイオン、又はホスホニウムイオンであり、R1、R2、R3、R4、R5、R6は独立して、炭素数1~25のアルキル基、アリル基、炭素数1~25のアルキル基を有するアラルキル基、又はアリール基である。アラルキル基中のアリール基及びアリール基の環において少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~9のアルコキシ基、又は炭素数2~9のアルケニルオキシ基で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素又は塩素で置き換えられてもよい。式(5)中、X-はフッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、オルト過ヨウ素酸イオン、メタ過ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、フルオロホウ酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンであり、aは1~10の整数である。)
【0084】
さらに、
(55)(54)に記載のルテニウム含有廃液の処理剤を用いる、ルテニウム含有廃液の処理方法を提供できる。
【発明の効果】
【0085】
本発明の第一の態様の処理液によれば、半導体素子の形成工程において、ルテニウムをウェットでエッチングすることが出来、さらに、エッチング処理後のルテニウム表面の平坦性を維持することが出来る。したがって、各層の平坦性が求められる多層配線構造を有する半導体素子を形成する場合に、好適に使用することが出来る。
【0086】
また、本発明の第一の態様の処理液は、エッチング処理後のルテニウム表面の平坦性に優れているため、処理液と接触したルテニウム表面を、ムラなく均一にエッチングすることが出来る。特に、数nmレベルの精密なルテニウムのエッチングが要求される10nm以下の配線構造を有する半導体素子の形成において、特に、処理液と接触したルテニウム表面を均一にエッチングすることが出来るため、好適に使用することが出来る。
【0087】
さらに、本発明の第一の態様の処理液は、ルテニウムを20Å/分以上のエッチング速度で、エッチングすることが可能である。20Å/分以上のエッチング速度があれば、半導体素子を形成する工程において、十分に使用することが出来る。
【0088】
一方、本発明の第二~第四の態様の処理液によれば、オニウム塩の効果によって、半導体製造工程においてパーティクル、及び歩留まり低下の原因となるルテニウム含有ガスの発生を抑制することが出来る。また、選択可能なpH範囲と酸化剤の種類が増えるため、適切な酸化剤を選択する事により安定な処理液の実現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1】本発明の第一の態様の処理液が好適に採用できる配線形成工程の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の第一の態様の処理液で処理した後の配線形成工程の一例を示す概略断面図である。
図3】実施例1に示すエッチング処理後のルテニウム表面を100000倍の電子顕微鏡にて観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0090】
本明細書において、ルテニウム(Ruとも表記)は、ルテニウム金属に限定されず、ルテニウム元素を含んでいればよい。
【0091】
(第一の態様の処理液)
本発明の第一の態様の処理液は、半導体ウェハにダメージを与えることなく、半導体ウェハ上に存在するルテニウムをエッチングできる処理液である。そのため、本発明の第一の態様の処理液は、半導体製造工程における配線形成工程で好適に用いることができる処理液である。
【0092】
本発明の第一の態様の処理液が適用されるルテニウムは、主に、半導体素子工程で使用されるCVD、ALD、スパッタ法などの公知の方法によって形成され、形成されたルテニウムをエッチングすることにより、半導体における配線が形成される。図1、2に配線形成工程の一例を示す。
【0093】
まず、半導体(例えばSi)からなる基体1を用意する。用意した基体に対して、酸化処理を行い、基体上に酸化シリコン膜を形成する。その後、低誘電率(Low-k)膜からなる層間絶縁膜2を成膜し、所定の間隔でビアホールを形成する。形成後、熱CVDによって、ルテニウム3をビアホールに埋め込み、さらにルテニウム膜を成膜する(図1)。これを、ドライエッチング、又は、ウェットエッチングにて、ルテニウム膜をエッチングし平坦化し、ルテニウム配線が形成される(図2)。
【0094】
本発明の第一の態様の処理液は、(A)次亜塩素酸イオン、(B)下記式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩を含むものである。以下、順を追って説明する。
【0095】
【化16】
【0096】
(式中、aは、6~20の整数であり、R1、R2、R3は独立して、水素原子、又は炭素数1~20のアルキル基である。X-は、フッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、酢酸イオン、フルオロホウ酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンである。)
【0097】
(A)次亜塩素酸イオン
本発明の第一の態様で使用される次亜塩素酸イオンは、次亜塩素酸塩を水に溶解させることにより、次亜塩素酸及び次亜塩素酸イオンを発生させることが可能である。次亜塩素酸イオンは強酸化性を有する酸化剤であり、次亜塩素酸イオンを含む本発明の処理液は、半導体ウェハが含む金属をエッチングすることができる。
【0098】
本発明の第一の態様において、次亜塩素酸イオン濃度の範囲は、処理液全体に対して、好ましくは0.05~20質量%である。上記範囲内であれば、処理液中の次亜塩素酸イオンの分解反応を抑制し、該次亜塩素酸イオン濃度の低下を抑制し(以下、処理液中の次亜塩素酸イオンの分解反応を抑制し、該次亜塩素酸イオン濃度の低下を抑制する効果を、「保存安定性」がよいとする場合もある。)、20Å/分以上のエッチング速度でルテニウムをエッチングすることが可能である。そのため、次亜塩素酸イオン濃度の範囲は、好ましくは0.1~15質量%であり、より好ましくは0.3~10質量%であり、さらに好ましくは0.5~6質量%であり、特に好ましくは0.5~4質量%である。
【0099】
また、本発明の第一の態様の処理液における次亜塩素酸イオンの濃度は、処理液の製造時に計算で求めることもできるし、処理液を直接分析することにより確認することもできる。下記の実施例で記載した次亜塩素酸イオンの濃度は、処理液の有効塩素濃度を測定することにより求めた。具体的には、厚生労働省告示第三百十八号(最終改正平成17年3月11日)を参考に、次亜塩素酸イオンを含む溶液にヨウ化カリウムと酢酸を加え、遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウム水溶液で酸化還元滴定して有効塩素濃度を算出した。算出した該有効塩素濃度から換算して、本発明の次亜塩素酸イオン濃度とした。
【0100】
(B)下記式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩
本発明の第一の態様の処理液に含まれるアルキルアンモニウム塩は、下記式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩である。
【0101】
【化17】
【0102】
(式中、aは、6~20の整数であり、R1、R2、R3は独立して、水素原子、又は炭素数1~20のアルキル基である。X-は、フッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、酢酸イオン、フルオロホウ酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンである。)
【0103】
上記式(1)における整数aは、メチレン基の数をあらわしており、整数aが6~20であれば、特に制限されず、使用することが出来るが、整数aが6~15であることがより好ましく、整数aが8~13であることがさらに好ましい。前述した範囲内のメチレン基を有するアルキルアンモニウム塩であれば、ルテニウム表面に吸着し、適切な保護層を形成するため、好適に使用することが出来る。また、アルキルアンモニウム塩の整数aが大きいほど、ルテニウム表面に対するアルキルアンモニウム塩のアルキルアンモニウムイオンの吸着量が増加するため、ルテニウムのエッチング速度が低下する傾向になる。一方、アルキルアンモニウム塩の整数aが小さいほど、ルテニウム表面への吸着量が少なくなり、ルテニウム表面に適切な保護層が形成されず、エッチング処理後のルテニウム表面の平坦性が維持できない傾向にある。
【0104】
ところで、アルキルアンモニウム塩の整数aが大きいと、アルキルアンモニウム塩の水溶性が低下し、処理液中で、パーティクルが発生する原因となる。エッチング処理後のルテニウム表面にパーティクルが残存すれば、半導体素子の歩留まりを低下させるため、パーティクルが少ない方が好ましい。ルテニウム表面への吸着性、処理液への水溶性を考慮すると、上記式(1)における整数aが6~15であることがより好ましく、整数aが8~13であることがさらに好ましい。
【0105】
また、上記式(1)におけるR1、R2、R3は独立して、水素原子、又は炭素数が1~20のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R1、R2、R3は、炭素数が1~20のアルキル基であることが好ましい。さらに、R1、R2、R3の炭素数は、それぞれ整数aと同じかより小さいことが好ましく、より好ましくは、R1、R2、R3のいずれかが、メチル基であればよい。R1、R2、R3のいずれかをメチル基とすることで、ルテニウム表面により均一で緻密な保護層が形成されることになり、エッチング処理後のルテニウム表面の平坦性を維持することができる。
【0106】
上記式(1)におけるX-は、フッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、酢酸イオン、フルオロホウ酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンである。本発明において、アルキルアンモニウム塩のアニオンは、特に制限されず、処理液として使用することが出来る。
【0107】
本発明の第一の態様の処理液が、エッチング処理後のルテニウム表面の平坦性を維持することが出来るメカニズムとしては、以下のことが考えられる。つまり、処理液に含まれるアルキルアンモニウム塩のカチオン(アルキルアンモニウムイオン)がルテニウム表面上で、窒素原子を中心とした極性基の部分で吸着すると考えられる。吸着したカチオンの非極性基であるアルキル基は、ルテニウム表面から離れる方向に位置することになり、ルテニウム表面に疎水性の保護層が形成されることになる。形成された保護層が、処理液に含まれる次亜塩素酸イオンとルテニウムとを接触させることを阻害するため、結果として、ムラなく均一なルテニウムのエッチング処理されることとなり、エッチング処理後のルテニウム表面の平坦性が維持されると考えられる。
【0108】
本発明の第一の態様において、好適に使用できる式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩を具体的に挙げると、n-オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、テトラヘプチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。
【0109】
また、アルキルアンモニウム塩の添加量は、処理液全体に対して、0.001~10質量%の範囲が好ましい。この範囲であれば、ルテニウムのエッチング速度が低下せず、かつ、ルテニウム表面に十分な保護層を形成することが出来る。なお、アルキルアンモニウム塩を添加するに場合には、1種のみを添加してもよいし、2種以上を混合して添加しても良い。
【0110】
本発明の第一の態様の処理液において、(A)、(B)、下記に詳述する(C)及びその他の添加剤以外の残分は、水である。本発明の処理液に含まれる水は、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理などによって、金属イオンや有機不純物、パーティクル粒子などが除去された水が好ましく、特に純水、超純水が好ましい。
【0111】
(C)アンモニウムイオン
本発明の第一の態様の処理液において、次亜塩素酸イオンは、次亜塩素酸塩を水に溶解させる等により処理液に含まれるため、次亜塩素酸イオンの対イオンが処理液に含まれることになる。通常、次亜塩素酸塩は、次亜塩酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等であり、この場合は、対イオンとして、ナトリウムイオン、カルシウムイオンが含まれることになる。
【0112】
ところで、上記のナトリウムイオン、カルシウムイオンなどのアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンは、半導体ウェハ上に残留した場合、半導体ウェハに対して悪影響(半導体ウェハの歩留まり低下等の悪影響)を及ぼすことから、その配合割合は少ない方が好ましく、実際には限りなく含まれない方がよい。したがって、次亜塩素酸イオンの対イオンとしては、有機系の対イオンが好ましく、工業的な製造を考慮すると、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンのいずれかより選択される少なくとも1種のアンモニウムイオンであることが好ましく、特に、テトラメチルアンモニウムイオンが好ましい。したがって、対イオンとしてテトラメチルアンモニウムイオンを選択することによって、処理液中のナトリウムイオンやカルシウムイオンを低減することが出来るため、処理液にテトラメチルアンモニウムイオンが含まれることが好ましい。また、別途、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイドやテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド塩として含んでいてもよい。
【0113】
本発明の第一の態様において、処理液全体に対して、アンモニウムイオンの濃度範囲は、好ましくは0.1~30質量%である。アンモニウムイオンの濃度がこの範囲を満足することにより、長期保存安定に優れた処理液とすることが出来る。より保存安定性を高めるためには、アンモニウムイオンの濃度は、より好ましくは0.15~20質量%であり、さらに好ましくは0.3~15質量%であり、特に好ましくは0.5~8質量%である。
【0114】
本発明の第一の態様において、テトラメチルアンモニウムイオンは、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液をイオン交換樹脂に通液し、テトラメチルアンモニウムイオン型に交換したイオン交換樹脂を準備し、その後、次亜塩素酸イオンを含む溶液を接触、溶液中に含まれるカチオンとイオン交換することで、処理液にテトラメチルアンモニウムイオンを含ませることが可能である。
【0115】
本発明の第一の態様の処理液は、pHが7を越え、14未満であることが好ましい。処理液のpHが7未満の場合は、次亜塩素酸イオンの分解反応が生じ易くなり、次亜塩素酸イオン濃度が低下し易い傾向にある。したがって、処理液の保存安定性、及び、ルテニウムのエッチング速度を両立するためには、処理液のpHは、pHが7を越え、14未満が好ましく、8以上11未満がより好ましい。例えば、上記範囲内であれば、保存中に次亜塩素酸イオン濃度が低下し難く、例えば、23℃、不活性ガス雰囲気の暗所で、15日間保存した後でも、ルテニウムのエッチング性能が十分に発揮される処理液とすることが出来る。なお、本明細書において、pHは25℃のときの値として表記する。
【0116】
(その他の添加剤)
その他、本発明の第一の態様の処理液には、所望により本発明の目的を損なわない範囲で従来から半導体用処理液に使用されているその他の添加剤を配合してもよい。例えば、その他の添加剤として、酸、金属防食剤、水溶性有機溶剤、フッ素化合物、酸化剤、還元剤、錯化剤、キレート剤、ノニオン型界面活性剤、消泡剤、pH調整剤などを加えることができる。
【0117】
これらその他の添加剤に由来して、また、処理液の製造上、本発明の処理液には、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、例えば、ナトリウムイオン、カルシウムイオンが含まれてもよい。しかし、上記したように、これらアルカリ金属イオン、及びアルカリ土類金属イオンは、半導体ウェハ上に残留した場合、半導体ウェハに対して悪影響(半導体ウェハの歩留まり低下等の悪影響)を及ぼすことから、その配合割合は少ない方が好ましく、実際には限りなく含まれない方がよい。そのため、例えばpH調整剤としては、水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ金属や水酸化アルカリ土類金属ではなく、水酸化テトラアルキルアンモニウム等の有機アルカリであることが好ましい。
【0118】
具体的には、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンはその合計量が、1質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましく、10ppm以下であることが特に好ましく、500ppb以下であることが最も好ましい。
【0119】
(第一の態様の処理液の製造方法)
以下、本発明の第一の態様の処理液等について説明する。
本発明の第一の態様の処理液は、次亜塩素酸イオンを含む次亜塩素酸塩水溶液にアルキルアンモニウム塩を添加、混合することで製造することができる。次亜塩素酸水溶液は、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カルシウムなどの市販の次亜塩素酸塩を水に溶解することや、水酸化ナトリウム溶液や水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液などのアルカリ水溶液に塩素を吹き込むことで、製造出来る。その他、例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液をテトラメチルアンモニウム型としたイオン交換樹脂と接触させることで、次亜塩素酸イオンの対イオンを交換することが出来る。
【0120】
以下、イオン交換樹脂により次亜塩素酸イオンの対イオンを交換した次亜塩素酸塩水溶液を用いた処理液の製造方法により、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液として本発明の第一の態様の処理液を製造する方法について、詳細に説明する。
【0121】
まず、テトラメチルアンモニウムイオンを含む水溶液、具体的には、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液をイオン交換樹脂に接触させ、テトラメチルアンモニウム型としたイオン交換樹脂を準備する。
【0122】
使用するイオン交換樹脂は、公知の陽イオン交換樹脂であれば、特に制限なく使用できる。例えば、水素型イオン交換樹脂、ナトリウム型イオン交換樹脂でも使用することが出来る。中でも、ナトリウムが混入する可能性の低い水素型イオン交換樹脂が好ましい。また、水素型イオン交換樹脂でも、弱酸性、強酸性のイオン交換樹脂を特に制限なく使用することが出来る。
【0123】
上記テトラメチルアンモニウム型としたイオン交換樹脂を準備した後、該イオン交換樹脂に次亜塩素酸塩水溶液を接触させることで、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を製造することが出来る。
【0124】
次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、次亜塩素酸ナトリウムを水に溶解させることにより、準備することが出来る。また、ここでは保存安定性、ハンドリングが良好であるという点から、次亜塩素酸ナトリウムを用いたが、市販されており入手が容易であればよく、次亜塩素酸カルシウム等を用いることもできる。
【0125】
また、イオン交換する工程を繰り返し行ってもよい。イオン交換する工程を繰り返し行うことで、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液に含まれる次亜塩素酸イオンの対イオンとなるナトリウムやカルシウムといった金属イオンを低減することが出来る。
【0126】
得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液にアルキルアンモニウム塩及び必要に応じてその他の添加剤を混合、溶解することで、テトラメチルアンモニウムイオンを含む本発明の処理液を製造することができる。
【0127】
(ルテニウムのエッチング方法)
本発明の第一の態様の処理液を使用するエッチング条件は、温度は10~80℃、好ましくは20~70℃の範囲であり、使用するエッチング装置のエッチング条件にあわせて適宜選択すればよい。
【0128】
また、ルテニウムのエッチング速度は温度によって変化する。そのため、ルテニウムのエッチング速度を向上させる場合には、上記温度範囲の中でも40~70℃を選択すればよい。40~70℃の温度範囲であれば、エッチング速度を速めることができ、かつ簡易的な装置で操作性よく処理することができる。
【0129】
本発明の処理液を使用する時間は0.1~120分、好ましくは0.5~60分の範囲であり、エッチングの条件や使用される半導体素子により適宜選択すればよい。本発明の処理液を使用した後のリンス液としては、アルコールのような有機溶剤を使用することもできるが、脱イオン水でリンスするだけでも十分である。
【0130】
以上のように、本発明の第一の態様の処理液は、ルテニウムのエッチング速度を20Å/分以上、好ましくは50Å/分以上とすることができ、かつエッチング後のルテニウム表面の平坦性が優れている。このことから明らかな通り、本発明の処理液は、半導体素子形成工程においてルテニウムを使用する場合に、好適に使用することが出来る。
【0131】
(第二の態様の処理液)
以下、本発明の第二の態様の処理液等について説明する。
本発明の第二の態様の処理液は、RuO4ガスを発生させることなくルテニウムを含む半導体ウェハを処理できる処理液である。そのため、本発明の第二の態様の処理液は、半導体製造工程におけるエッチング工程、残渣除去工程、洗浄工程、CMP工程等で好適に用いることができる処理液である。
【0132】
本発明の第二の態様の処理液が適用される半導体ウェハに含まれるルテニウムは、いかなる方法により形成されていてもよい。ルテニウムの成膜には、半導体製造工程で広く公知の方法、例えば、CVD、ALD、スパッタ、めっき等を利用できる。これらのルテニウムは、金属ルテニウムであってもよいし、ルテニウム酸化物や、他の金属との合金、金属間化合物、イオン性化合物、錯体であってもよい。また、ルテニウムはウェハの表面に露出していてもよいし、他の金属や金属酸化膜、絶縁膜、レジスト等に覆われていてもよい。他の材料に覆われている場合であっても、ルテニウムが処理液に接触してルテニウムの溶解が起こる際、本発明の第二の態様の処理液に含まれるオニウム塩によりRuO4ガス発生抑制効果が発揮される。さらに、本発明の第二の態様の処理液は、ルテニウムを積極的に溶解させない場合、すなわち、ルテニウムが保護の対象である処理であっても、極僅かに溶解したルテニウムから発生するRuO4ガスを抑制することが可能である。
【0133】
例えば、ルテニウム配線形成工程において本発明の第二の態様の処理液を用いる場合は、次のようになる。まず、半導体(例えばSi)からなる基体を用意する。用意した基体に対して、酸化処理を行い、基体上に酸化シリコン膜を形成する。その後、低誘電率(Low-k)膜からなる層間絶縁膜を成膜し、所定の間隔でビアホールを形成する。ビアホール形成後、熱CVDによって、ルテニウムをビアホールに埋め込み、さらにルテニウム膜を成膜する。このルテニウム膜を本発明の処理液を用いてエッチングすることで、RuO4ガス発生を抑制しながら平坦化を行う。これにより、RuO2パーティクルが抑制された、信頼性の高いルテニウム配線を形成できる。
【0134】
本発明の第二の態様の処理液は、オニウムイオンとアニオンから成るオニウム塩を含むものである。以下、順を追って説明する。
【0135】
上記オニウム塩は、下記式(2)又は(3)で示される。
【0136】
【化18】
【0137】
【化19】
(式(2)中、A+はアンモニウムイオン、又はホスホニウムイオンであり、R1、R2、R3、R4は独立して、炭素数1~25のアルキル基、アリル基、炭素数1~25のアルキル基を有するアラルキル基、又はアリール基である。ただし、R1、R2、R3、R4がアルキル基である場合、R1、R2、R3、R4のうち少なくとも1つのアルキル基の炭素数が2以上である。また、アラルキル基中のアリール基及びアリール基の環において少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~9のアルコキシ基、又は炭素数2~9のアルケニルオキシ基で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素又は塩素で置き換えられてもよい。式(3)中、A+はスルホニウムイオンであり、R1、R2、R3は独立して、炭素数1~25のアルキル基、アリル基、炭素数1~25のアルキル基を有するアラルキル基、又はアリール基である。ただし、R1、R2、R3がアルキル基である場合、R1、R2、R3のうち少なくとも1つのアルキル基の炭素数が2以上である。また、アラルキル基中のアリール基及びアリール基の環において少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~9のアルコキシ基、又は炭素数2~9のアルケニルオキシ基で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素又は塩素で置き換えられてもよい。式(2)又は式(3)中、X-はフッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、オルト過ヨウ素酸イオン、メタ過ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、フルオロホウ酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンである。)
【0138】
上記式(2)又は(3)におけるR1、R2、R3、R4のアルキル基は独立して、炭素数1~25であれば特に制限されずに使用することが出来る。炭素数が大きいほどオニウムイオンがRuO4 -等とより強く相互作用するため、RuO4ガスは抑制されやすい。一方、炭素数が大きいほどオニウムイオンが嵩高くなるため、RuO4 -等と静電的相互作用を生じた際に生じるイオン対が処理液に溶けにくくなり、沈殿物が生じる。この沈殿物はパーティクルとなって半導体素子の歩留まり低下を引き起こす原因となる。また、炭素数が大きいものほど処理液に対する溶解度は小さく、処理液中に気泡を生成しやすい。逆に、炭素数が小さいと、オニウムイオンとRuO4 -等との相互作用が弱くなるため、RuO4ガス抑制効果が弱くなる。よって、式(2)又は(3)におけるアルキル基の炭素数は独立して、1~25であることが好ましく、2~10であることがより好ましく、3~6であることが最も好ましい。ただし、式(2)のR1、R2、R3、R4がアルキル基である場合、R1、R2、R3、R4のうち少なくとも1つのアルキル基の炭素数が3以上であってもよく、式(3)のR1、R2、R3がアルキル基である場合、R1、R2、R3のうち少なくとも1つのアルキル基の炭素数が3以上であってもよい。このような炭素数のアルキル基を有するオニウム塩であれば、RuO4 -等との相互作用によりRuO4ガス発生を抑制でき、かつ沈殿物を生成しにくいため、半導体用処理液として好適に使用できる。
【0139】
上記式(2)又は(3)におけるR1、R2、R3、R4のアリール基は独立して、芳香族炭化水素だけでなくヘテロ原子を含むヘテロアリールも含み、特に制限はないが、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0140】
上記式(2)又は式(3)におけるX-は、アニオンであれば特に制限がないが、フッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、オルト過ヨウ素酸イオン、メタ過ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、フルオロホウ酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンが好ましい。
【0141】
本発明の第二の態様の処理液が、RuO4ガスを抑制するメカニズムとしては、以下のことが考えられる。すなわち、ルテニウムの溶解により発生したRuO4 -等は、オニウムイオンとの静電的な相互作用によりトラップされる。トラップされたRuO4 -等はイオン対として処理液中で比較的安定に存在するため、容易にRuO4へと変化しない。これにより、RuO4ガスの発生が抑制されると共に、RuO2パーティクル発生も抑えられる。
【0142】
上記式(2)で示される第四級オニウム塩は、処理液内で安定に存在し得るアンモニウムイオン又はホスホニウムイオンからなる塩、すなわち、アンモニウム塩又はホスホニウム塩である。一般に、アンモニウムイオン又はホスホニウムイオンのアルキル鎖長は容易に制御でき、さらに、アリル基やアリール基を導入することも容易である。これにより、アンモニウムイオン又はホスホニウムイオンの大きさ、対称性、親水性、疎水性、安定性、溶解性、電荷密度、界面活性能等を制御することが可能であり、該イオンからなるアンモニウム塩又はホスホニウム塩もその大きさ、対称性、親水性、疎水性、安定性、溶解性、界面活性能等を制御し得る。このようなアンモニウム塩又はホスホニウム塩は、本発明の第二の態様の処理液の式(2)で表される第四級オニウム塩として用いることができる。
【0143】
上記式(3)で示される第三級オニウム塩は、処理液内で安定に存在し得るスルホニウムイオンからなる塩、すなわち、スルホニウム塩である。一般に、スルホニウムイオンのアルキル鎖長は容易に制御でき、さらに、アリル基やアリール基を導入することも容易である。これにより、スルホニウムイオンの大きさ、対称性、親水性、疎水性、安定性、溶解性、電荷密度、界面活性能等を制御することが可能であり、該イオンからなるスルホニウム塩もその大きさ、対称性、親水性、疎水性、安定性、溶解性、界面活性能等を制御し得る。このようなスルホニウム塩は、本発明の第二の態様の処理液の式(3)で示される第三級オニウム塩として用いることができる。
【0144】
本発明の第二の態様の処理液に含まれる上記第四級オニウム塩は、安定性が高く、高純度品が工業的に入手しやすく、安価であるといった理由からアンモニウム塩であることが好ましい。
【0145】
上記第四級オニウム塩は、安定性に特に優れ、容易に合成可能なテトラアルキルアンモニウム塩であることが好ましい。該テトラアルキルアンモニウム塩は、水酸化物又は、ハロゲン化物であることがより好ましい。
【0146】
本発明の第二の態様において、好適に使用できる第四級オニウム塩として、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、又はテトラヘキシルアンモニウムイオンからなるアンモニウム塩を挙げることができる。さらに、これらの塩は、水酸化物又は、ハロゲン化物であることがより好ましい。これらの第四級オニウム塩を含む処理液は特に、半導体ウェハの処理において、RuO4ガスを抑制し、かつ、RuO2パーティクル発生を伴わずに処理を行う事が可能である。
【0147】
また、本発明の第二の態様の処理液中のオニウム塩の濃度は0.0001~50質量%であることが好ましい。オニウム塩の添加量が少なすぎると、RuO4 -等との相互作用が弱まりRuO4ガス抑制効果が低減するだけでなく、処理液中に溶解可能なRuO4 -等の量が少なくなるため、処理液の再使用(リユース)回数が少なくなる。一方、添加量が多すぎると、オニウム塩のルテニウム表面への吸着量が増大し、ルテニウム溶解速度の低下や、ルテニウム表面の不均一なエッチングの原因となる。したがって、本発明の第二の態様の処理液は、オニウム塩を0.0001~50質量%含むことが好ましく、0.01~35質量%含むことがより好ましく、0.1~20質量%含むことがさらに好ましい。なお、オニウム塩を添加する場合には、1種のみを添加してもよいし、2種以上を組み合わせて添加してもよい。2種類以上のオニウム塩を含む場合であっても、オニウム塩の濃度の合計が上記の濃度範囲であれば、RuO4ガスの発生を効果的に抑制することができる。
【0148】
(酸化剤)
本発明の第二の態様の処理液は、酸化剤を含有することができる。該酸化剤としては、例えばハロゲン酸素酸、過マンガン酸、及びこれらの塩、過酸化水素、オゾン、セリウム(IV)塩等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ここで、ハロゲン酸素酸は、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、メタ過ヨウ素酸、オルト過ヨウ素酸又はこれらのイオンを指す。酸化剤を含有することで、ルテニウムの溶解が促進されると共に、析出したRuO2パーティクルの再溶解が促進される。このため、オニウム塩と酸化剤を含有する処理液は、RuO4ガスとRuO2パーティクルの発生を抑制しながら効率的にRu含有ウェハの処理を行うことができる。上記の酸化剤のうち、アルカリ性で安定して使用でき、濃度範囲を広く選択できることから、ハロゲン酸素酸及びそのイオン、又は過酸化水素が酸化剤として好適であり、次亜塩素酸、メタ過ヨウ素酸、オルト過ヨウ素酸及びそのイオンがより好適であり、次亜塩素酸及び次亜塩素酸イオンが最も好適である。
【0149】
本発明の第二の態様の処理液が次亜塩素酸イオンを含む処理液である場合、次亜塩素酸イオンの濃度の範囲は、処理液全体に対して、0.05~20.0質量%であることが好ましい。上記範囲内であれば、処理液中の次亜塩素酸イオンの分解反応を抑制し、該次亜塩素酸イオンの濃度の低下を抑制し、20Å/分以上のエッチング速度でルテニウムをエッチングすることが可能である。そのため、次亜塩素酸イオンの濃度の範囲は、好ましくは0.1~15質量%であり、より好ましくは0.3~10質量%であり、さらに好ましくは0.5~6質量%であり、特に好ましくは0.5~4質量%である。
【0150】
本発明の第二の態様の処理液において、オニウム塩及び下記に詳述する有機溶媒及びその他の添加剤以外の残分は水である。本発明の第二の態様の処理液に含まれる水は、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理などによって、金属イオンや有機不純物、パーティクル粒子などが除去された水が好ましく、特に純水、超純水が好ましい。このような水は、半導体製造に広く利用されている公知の方法で得ることができる。
【0151】
(有機溶媒)
上記のように、本発明第二の態様では、ルテニウムが溶解する際に生成されたRuO4 -等が、オニウムイオンとの静電的相互作用により処理液中に保持される事で、RuO4ガスの発生を抑制している。この場合、RuO4 -等とオニウムイオンはイオン対の状態で溶液中に溶けているが、溶解度を超えた場合は沈殿物となる。この沈殿物は半導体形成工程においてパーティクルの要因となるため、歩留まりの低下を招く。そのため、沈殿物を生じさせないことが重要であり、それにはイオン対の溶解度を上げることが好ましい。この方法として有機溶媒の添加が有効である。
【0152】
一般に、溶媒の比誘電率が低いほど、電気的に中性である化学種を溶解しやすくなる。電気的に中性であるイオン対も溶媒の比誘電率が低い方が溶解しやすい。したがって、イオン対の溶解度を上昇させるためには、本発明の第二の態様の処理液に添加する有機溶媒として、水(比誘電率78)よりも低い比誘電率をもつ有機溶媒を添加することが望ましい。このようにすることで、処理液の比誘電率を水のみの場合に比べて低下させることができ、オニウムイオンとRuO4 -等とのイオン対の溶解度を上げ、RuO4ガスの発生を効果的に抑制することができる。添加する有機溶媒としては、水よりも低い有機溶媒であればどのような有機溶媒を用いてもよいが、比誘電率は45以下が好ましく、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。なお、これらの比誘電率は、25℃における値である。
【0153】
このような有機溶媒を具体的に挙げれば、スルホラン(比誘電率43)、アセトニトリル(比誘電率37)、四塩化炭素(比誘電率2.2)、1,4-ジオキサン(比誘電率2.2)等であるが、当然のことながら、有機溶媒はこれらに限定されるものではない。
比誘電率の低い有機溶媒を添加する場合、水と混和しにくい場合もあり得る。しかし、そのような場合であっても、水に僅かに溶解した有機溶媒によりイオン対の溶解度を高めることが可能であり、有機溶媒の添加はRuO4ガス発生の抑制に有効である。
【0154】
処理液中に酸化剤が含まれる場合、有機溶媒が酸化剤によって分解されることを防ぐため、両者は反応しないことが好ましいが、酸化剤との反応性が低いものであればどのような有機溶媒を用いてもよい。一例を挙げれば、酸化剤が次亜塩素酸イオンである場合には、スルホラン類、アルキルニトリル類、ハロゲン化アルカン類、エーテル類などは次亜塩素酸イオンとの反応性が低いため、本発明の第二の態様の処理液に添加する有機溶媒として好適に用いることができる。このような有機溶媒を具体的に挙げれば、スルホラン、アセトニトリル、四塩化炭素、1,4-ジオキサン等であるが、当然のことながら、有機溶媒はこれらに限定されるものではない。
【0155】
有機溶媒は、沈殿物生成を抑制するのに必要な量を添加すればよい。このため、本発明の第二の態様の処理液中の有機溶媒の濃度は0.1質量%以上であればよいが、イオン対の溶解量を増やし、RuO4 -等をイオン対として安定に溶液内に保持するため、有機溶媒の濃度は1質量%以上であることが好ましい。また、ルテニウムの溶解性や処理液の保存安定性を損なわない範囲であれば、有機溶媒の添加量が多いほど処理液中に溶解し得るイオン対の量が増えるため、沈殿物生成を抑制できるだけでなく、有機溶媒が少量蒸発した場合でもRuO4ガス抑制効果が低下しない、処理液を再利用した際にもRuO4ガス発生を抑制できるなど、利点が多い。さらに、添加する有機溶媒は1種類であっても、複数を組み合わせて添加してもよい。
【0156】
有機溶媒として揮発性の高い溶媒を用いると、半導体ウェハを処理している間に処理液中の有機溶媒が蒸発するため、有機溶媒の濃度が変化して処理液の比誘電率が変化し、安定した処理が難しくなる。また、保存安定性の観点からも有機溶媒は揮発性の低いものが好ましい。具体的には、20℃における蒸気圧が50mmHg以下である有機溶媒が好ましく、20mmHg以下である有機溶媒がより好ましい。
【0157】
本発明の第二の態様の処理液は、25℃におけるpHが、7以上14以下であることが好ましい。処理液のpHが7未満の場合は、ルテニウムの溶解はRuO4 -等のアニオンではなくRuО2やRu(ОH)3を経由して起こるようになるため、カチオン添加の効果が低下する。さらに、pH7未満では、RuО2パーティクルを生じやすくなり、RuО4ガスの発生量が多くなるといった問題も生じるようになる。したがって、本発明の第二の態様の処理液がRuО4ガス発生抑制能を十分に発揮するためには、処理液のpHは7以上14以下が好ましく、9以上13以下がより好ましい。このpH範囲であれば、処理液に溶解したルテニウムはRuO4 -又はRuO4 2-のアニオンとして存在するため、本発明の第二の態様の処理液に含まれるオニウムイオンとイオン対を形成しやすくなり、効果的にRuО4ガス発生を抑制し得る。
【0158】
(その他の添加剤)
本発明の第二の態様の処理液には、所望により本発明の目的を損なわない範囲で、従来から半導体用処理液に使用されているその他の添加剤を配合してもよい。例えば、その他の添加剤として、酸、金属防食剤、水溶性有機溶媒、フッ素化合物、酸化剤、還元剤、錯化剤、キレート剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、安定化剤などを加えることができる。これらの添加剤は単独で添加してもよいし、複数を組み合わせて添加してもよい。
【0159】
これらの添加剤に由来して、また、処理液の製造上の都合などにより、本発明の第二の態様の処理液には、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン等が含まれていてもよい。例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等が含まれてもよい。しかし、これらアルカリ金属イオン、及びアルカリ土類金属イオン等は、半導体ウェハ上に残留した場合、半導体素子に悪影響(半導体ウェハの歩留まり低下等の悪影響)を及ぼすことから、その量は少ない方が好ましく、実際には限りなく含まれない方がよい。そのため、例えばpH調整剤としては、水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ金属や水酸化アルカリ土類金属ではなく、アンモニア、アミン、コリン又は水酸化テトラアルキルアンモニウム等の有機アルカリであることが好ましい。
【0160】
具体的には、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンはその合計量が、1質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましく、10ppm以下であることが特に好ましく、500ppb以下であることが最も好ましい。
【0161】
(第三の態様の処理液)
以下、本発明の第三の態様の処理液等について説明する。
本発明の第三の態様の処理液は、RuO4ガスを発生させることなくルテニウムを含む半導体ウェハを処理できる処理液である。そのため、本発明の第三の態様の処理液は、半導体製造工程におけるエッチング工程、残渣除去工程、洗浄工程、CMP工程等で好適に用いることができる処理液である。
本発明の第三の態様の処理液が適用される半導体ウェハに含まれるルテニウムは、いかなる方法により形成されていてもよい。ルテニウムの成膜には、半導体製造工程で広く公知の方法、例えば、CVD、ALD、スパッタ、めっき等を利用できる。これらのルテニウムは、金属ルテニウムであってもよいし、ルテニウム酸化物や、他の金属との合金、金属間化合物、イオン性化合物、錯体であってもよい。また、ルテニウムはウェハの表面に露出していてもよいし、他の金属や金属酸化膜、絶縁膜、レジスト等に覆われていてもよい。他の材料に覆われている場合であっても、ルテニウムが処理液に接触してルテニウムの溶解が起こる際、本発明の第三の態様の処理液に含まれるオニウム塩によりRuO4ガス発生抑制効果が発揮される。さらに、本発明の処理液は、ルテニウムを積極的に溶解させない場合、すなわち、ルテニウムが保護の対象である処理であっても、極僅かに溶解したルテニウムから発生するRuO4ガスを抑制することが可能である。
例えば、ルテニウム配線形成工程において本発明の第三の態様の処理液を用いる場合は、次のようになる。まず、半導体(例えばSi)からなる基体を用意する。用意した基体に対して、酸化処理を行い、基体上に酸化シリコン膜を形成する。その後、低誘電率(Low-k)膜からなる層間絶縁膜を成膜し、所定の間隔でビアホールを形成する。ビアホール形成後、熱CVDによって、ルテニウムをビアホールに埋め込み、さらにルテニウム膜を成膜する。このルテニウム膜を本発明の処理液を用いてエッチングすることで、RuO4ガス発生を抑制しながら平坦化を行う。これにより、RuO2パーティクルが抑制された、信頼性の高いルテニウム配線を形成できる。
【0162】
本発明の第三の態様の処理液は、オニウム塩を含むものである。以下、順を追って説明する。
(オニウム塩)
オニウム塩は、ルテニウムの溶解により生成されたルテニウム原子を含むイオン(RuO4 -等)をトラップするために添加され、オニウムイオンとアニオンから形成される。
オニウムイオンは、単原子陰イオンに過剰のプロトン(水素陽イオン)が付加してできた多原子陽イオンの化合物である。また、オニウムイオンは、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、フルオロニウムイオン、クロロニウムイオン、ブロモニウムイオン、ヨードニウムイオン、オキソニウムイオン、スルホニウムイオン、セレノニウムイオン、テルロニウムイオン、アルソニムイオン、スチボニウムイオン、ビスムトニウムイオン等の陽イオンであり、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、オキサゾリウムイオンが好ましい。
アニオンは負に荷電したイオンのことで、有機又は無機アニオンである。有機又は無機アニオンは特に限定されないが、フッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、オルト過ヨウ素酸イオン、メタ過ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、フルオロホウ酸イオン、フルオロリン酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンが好ましく、水酸化物イオン、塩化物イオン、過塩素酸イオンが、より好ましい。
【0163】
上記オニウム塩は、下記式(4)で示される。
【化20】
(式(4)中、Zは、窒素、硫黄、酸素原子を含んでもよい芳香族基又は脂環式基であり、該芳香族基又は該脂環式基において、炭素又は窒素は、
塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、
少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基、
少なくとも1つの炭素数2~9のアルケニルオキシ基、
少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい芳香族基、
又は、少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい脂環式基
を有していてもよい。
Aは、窒素又は硫黄である。
Rは塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、炭素数1~15のアルキル基、アリル基、少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい芳香族基、又は少なくとも1つの炭素数1~15のアルキル基で置換されてもよい脂環式基である。
-は、有機又は無機アニオンである。
nは1又は2の整数であり、Rの数を示す。
nが2の場合、Rは同一又は異なっていてもよく、環を形成してもよい。)
【0164】
上記の構造を持つカチオンは、アルカリ性の半導体処理液の中で安定に存在しうる。また、上記式(4)中、Zの該芳香族基又は該脂環式基の炭素又は窒素を、適した炭素数を有する、アルキル基、アルケニルオキシ基で置換した芳香族基、又はアルキル基で置換した脂環式基とすることや、Rのアルキル基、アリル基、アルキル基で置換されてもよい芳香族基、アルキル基で置換されていてもよい脂環式基を適宜、選択することで、該カチオンを含むオニウム塩の処理液への溶解度、及び該カチオンとRuO4 -等とのイオン対の安定性を制御することが可能である。
【0165】
上記式(4)におけるX-は、有機又は無機アニオンであれば特に制限がないが、フッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、オルト過ヨウ素酸イオン、メタ過ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、フルオロホウ酸イオン、フルオロリン酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンが好ましく、水酸化物イオン、塩化物イオン、より好ましい。
本発明において、好適に使用できる式(4)で示されるオニウム塩を具体的に挙げると、1,3-ジメチルイミダゾリウムクロリド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムクロリド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-メチル-3-n-オクチルイミダゾリウムクロリド、1,3-ジメシチルイミダゾリウムクロリド、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾリウムクロリド、1,3-ジシクロヘキシルイミダゾリウムクロリド、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムクロリド、1-エチル-1-メチルピロリジニウムクロリド、1,1-ジメチルピペリジニウムクロリド、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムクロリド、5-アゾニアスピロ〔4,4〕ノナンクロリド、1-メチルピリジニウムクロリド、1-エチルピリジニウムクロリド、1-プロピルピリジニウムクロリド、1-フルオロピリジニウムテトラフルオロボラート、1-フルオロ-2,4,6-トリメチルピリジニウムテトラフルオロボラート、1-フルオロ-2,6-ジクロロピリジニウムテトラフルオロボラート、N-tert-ブチル-5-メチルイソオキサゾリウムパークロレート等を挙げることができる。
【0166】
本発明の第三の態様の処理液が、RuO4ガスを抑制するメカニズムとしては、以下のことが考えられる。すなわち、ルテニウムの溶解により発生したRuO4 -等は、オニウムイオンとの静電的な相互作用によりトラップされる。トラップされたRuO4 -等はイオン対として処理液中で比較的安定に存在するため、容易にRuO4へと変化しない。これにより、RuO4ガスの発生が抑制されると共に、RuO2パーティクル発生も抑えられる。
【0167】
また、本発明の第三の態様の処理液中のオニウム塩の濃度は0.0001~50質量%であることが好ましい。オニウム塩の添加量が少なすぎると、RuO4 -等との相互作用が弱まりRuO4ガス抑制効果が低減するだけでなく、処理液中に溶解可能なRuO4 -等の量が少なくなるため、処理液の再使用(リユース)回数が少なくなる。一方、添加量が多すぎると、オニウム塩のルテニウム表面への吸着量が増大し、ルテニウム溶解速度の低下や、ルテニウム表面の不均一なエッチングの原因となる。したがって、本発明の第三の態様の処理液は、オニウム塩を0.0001~50質量%含むことが好ましく、0.01~35質量%含むことがより好ましく、0.1~20質量%含むことがさらに好ましい。なお、オニウム塩を添加するに場合には、1種のみを添加してもよいし、2種以上を組み合わせて添加してもよい。2種類以上のオニウム塩を含む場合であっても、オニウム塩の濃度の合計が上記の濃度範囲であれば、RuO4ガスの発生を効果的に抑制することができる。
【0168】
(酸化剤)
本発明の第三の態様の処理液は、酸化剤を含有することができる。該酸化剤としては、例えばハロゲン酸素酸、過マンガン酸、及びこれらの塩、過酸化水素、オゾン、セリウム(IV)塩等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ここで、ハロゲン酸素酸は、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、メタ過ヨウ素酸、オルト過ヨウ素酸又はこれらのイオンを指す。酸化剤を含有することで、ルテニウムの溶解が促進されると共に、析出したRuO2パーティクルの再溶解が促進される。このため、オニウム塩と酸化剤を含有する処理液は、RuO4ガスとRuO2パーティクルの発生を抑制しながら効率的にRu含有ウェハの処理を行うことができる。上記の酸化剤のうち、アルカリ性で安定して使用でき、濃度範囲を広く選択できることから、ハロゲン酸素酸及びそのイオン、又は過酸化水素が酸化剤として好適であり、次亜塩素酸、メタ過ヨウ素酸、オルト過ヨウ素酸及びそのイオンがより好適であり、次亜塩素酸及び次亜塩素酸イオンが最も好適である。また、これらの酸化剤は塩として処理液中に存在していてもよく、該塩としては、例えば、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムが好適であり、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムがより好適である。
【0169】
本発明の第三の態様の処理液が次亜塩素酸イオンを含む処理液である場合、次亜塩素酸イオンの濃度の範囲は、処理液全体に対して、0.05~20.0質量%であることが好ましい。上記範囲内であれば、処理液中の次亜塩素酸イオンの分解反応を抑制し、該次亜塩素酸イオンの濃度の低下を抑制し、20Å/分以上のエッチング速度でルテニウムをエッチングすることが可能である。そのため、次亜塩素酸イオンの濃度の範囲は、好ましくは0.1~15質量%であり、より好ましくは0.3~10質量%であり、さらに好ましくは0.5~6質量%であり、特に好ましくは0.5~4質量%である。
本発明の第三の態様の処理液において、オニウム塩及び下記に詳述する有機溶媒及びその他の添加剤以外の残分は水である。本発明の処理液に含まれる水は、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理などによって、金属イオンや有機不純物、パーティクル粒子などが除去された水が好ましく、特に純水、超純水が好ましい。このような水は、半導体製造に広く利用されている公知の方法で得ることができる。
【0170】
(有機溶媒)
上記のように、本発明の第三の態様では、ルテニウムが溶解する際に生成されたRuO4 -等が、オニウムイオンとの静電的相互作用により処理液中に保持される事で、RuO4ガスの発生を抑制している。この場合、RuO4 -等とオニウムイオンはイオン対の状態で溶液中に溶けているが、溶解度を超えた場合は沈殿物となる。この沈殿物は半導体形成工程においてパーティクルの要因となるため、歩留まりの低下を招く。そのため、沈殿物を生じさせないことが重要であり、それにはイオン対の溶解度を上げることが好ましい。この方法として有機溶媒の添加が有効である。
【0171】
一般に、溶媒の比誘電率が低いほど、電気的に中性である化学種を溶解しやすくなる。電気的に中性であるイオン対も溶媒の比誘電率が低い方が溶解しやすい。したがって、イオン対の溶解度を上昇させるためには、本発明の処理液に添加する有機溶媒として、水(比誘電率78)よりも低い比誘電率をもつ有機溶媒を添加することが望ましい。このようにすることで、処理液の比誘電率を水のみの場合に比べて低下させることができ、オニウムイオンとRuO4 -等とのイオン対の溶解度を上げ、RuO4ガスの発生を効果的に抑制することができる。添加する有機溶媒としては、水よりも低い有機溶媒であればどのような有機溶媒を用いてもよいが、比誘電率は45以下が好ましく、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。なお、これらの比誘電率は、25℃における値である。
【0172】
このような有機溶媒を具体的に挙げれば、スルホラン(比誘電率43)、アセトニトリル(比誘電率37)、四塩化炭素(比誘電率2.2)、1,4-ジオキサン(比誘電率2.2)等であるが、当然のことながら、有機溶媒はこれらに限定されるものではない。
比誘電率の低い有機溶媒を添加する場合、水と混和しにくい場合もあり得る。しかし、そのような場合であっても、水に僅かに溶解した有機溶媒によりイオン対の溶解度を高めることが可能であり、有機溶媒の添加はRuO4ガス発生の抑制に有効である。
処理液中に酸化剤が含まれる場合、有機溶媒が酸化剤によって分解されることを防ぐため、両者は反応しないことが好ましいが、酸化剤との反応性が低いものであればどのような有機溶媒を用いてもよい。一例を挙げれば、酸化剤が次亜塩素酸イオンである場合には、スルホラン類、アルキルニトリル類、ハロゲン化アルカン類、エーテル類などは次亜塩素酸イオンとの反応性が低いため、処理液に添加する有機溶媒として好適に用いることができる。このような有機溶媒を具体的に挙げれば、スルホラン、アセトニトリル、四塩化炭素、1,4-ジオキサン等であるが、当然のことながら、有機溶媒はこれらに限定されるものではない。
【0173】
有機溶媒は、沈殿物生成を抑制するのに必要な量を添加すればよい。このため、処理液中の有機溶媒の濃度は0.1質量%以上であればよいが、イオン対の溶解量を増やし、RuO4 -等をイオン対として安定に溶液内に保持するため、有機溶媒の濃度は1質量%以上であることが好ましい。また、ルテニウムの溶解性や処理液の保存安定性を損なわない範囲であれば、有機溶媒の添加量が多いほど処理液中に溶解し得るイオン対の量が増えるため、沈殿物生成を抑制できるだけでなく、有機溶媒が少量蒸発した場合でもRuO4ガス抑制効果が低下しない、処理液を再利用した際にもRuO4ガス発生を抑制できるなど、利点が多い。さらに、添加する有機溶媒は1種類であっても、複数を組み合わせて添加してもよい。
【0174】
有機溶媒として揮発性の高い溶媒を用いると、半導体ウェハを処理している間に処理液中の有機溶媒が蒸発するため、有機溶媒の濃度が変化して処理液の比誘電率が変化し、安定した処理が難しくなる。また、保存安定性の観点からも有機溶媒は揮発性の低いものが好ましい。具体的には、20℃における蒸気圧が50mmHg以下である有機溶媒が好ましく、20mmHg以下である有機溶媒がより好ましい。
【0175】
本発明の第三の態様の処理液は、25℃におけるpHが、7以上14以下であることが好ましい。処理液のpHが7未満の場合は、ルテニウムの溶解はRuO4 -等のアニオンではなくRuО2やRu(ОH)3を経由して起こるようになるため、カチオン添加の効果が低下する。さらに、pH7未満では、RuО2パーティクルを生じやすくなり、RuО4ガスの発生量が多くなるといった問題も生じるようになる。したがって、本発明の第三の態様の処理液がRuО4ガス発生抑制能を十分に発揮するためには、処理液のpHは7以上14以下が好ましく、9以上13以下がより好ましい。このpH範囲であれば、処理液に溶解したルテニウムはRuO4 -又はRuO4 2-のアニオンとして存在するため、本発明の処理液に含まれるオニウムイオンとイオン対を形成しやすくなり、効果的にRuО4ガス発生を抑制し得る。
【0176】
(その他の添加剤)
本発明の第三の態様の処理液には、所望により本発明の目的を損なわない範囲で、従来から半導体用処理液に使用されているその他の添加剤を配合してもよい。例えば、その他の添加剤として、酸、金属防食剤、水溶性有機溶媒、フッ素化合物、酸化剤、還元剤、錯化剤、キレート剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、安定化剤などを加えることができる。これらの添加剤は単独で添加してもよいし、複数を組み合わせて添加してもよい。
これらの添加剤に由来して、また、処理液の製造上の都合などにより、本発明の第三の態様の処理液には、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン等が含まれていてもよい。例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等が含まれてもよい。しかし、これらアルカリ金属イオン、及びアルカリ土類金属イオン等は、半導体ウェハ上に残留した場合、半導体素子に悪影響(半導体ウェハの歩留まり低下等の悪影響)を及ぼすことから、その量は少ない方が好ましく、実際には限りなく含まれない方がよい。そのため、例えばpH調整剤としては、水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ金属や水酸化アルカリ土類金属ではなく、アンモニア、アミン、コリン又は水酸化テトラアルキルアンモニウム等の有機アルカリであることが好ましい。
具体的には、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンはその合計量が、1質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましく、10ppm以下であることが特に好ましく、500ppb以下であることが最も好ましい。
【0177】
(第四の態様の処理液)
以下、本発明の第四の態様の処理液等について説明する。
本発明の第四の態様の処理液は、RuO4ガスを発生させることなくルテニウムを含む半導体ウェハを処理できる処理液である。そのため、本発明の第四の態様の処理液は、半導体製造工程におけるエッチング工程、残渣除去工程、洗浄工程、CMP工程等で好適に用いることができる処理液である。
【0178】
本発明の第四の態様の処理液が適用される半導体ウェハに含まれるルテニウムは、いかなる方法により形成されていてもよい。ルテニウムの成膜には、半導体製造工程で広く公知の方法、例えば、CVD、ALD、スパッタ、めっき等を利用できる。これらのルテニウムは、金属ルテニウムであってもよいし、ルテニウム酸化物や、他の金属との合金、金属間化合物、イオン性化合物、錯体であってもよい。また、ルテニウムはウェハの表面に露出していてもよいし、他の金属や金属酸化膜、絶縁膜、レジスト等に覆われていてもよい。他の材料に覆われている場合であっても、ルテニウムが処理液に接触してルテニウムの溶解が起こる際、本発明の第四の態様の処理液に含まれるオニウム塩によりRuO4ガス発生抑制効果が発揮される。さらに、本発明の第四の態様の処理液は、ルテニウムを積極的に溶解させない場合、すなわち、ルテニウムが保護の対象である処理であっても、極僅かに溶解したルテニウムから発生するRuO4ガスを抑制することが可能である。
【0179】
例えば、ルテニウム配線形成工程において本発明の第四の態様の処理液を用いる場合は、上記の本発明の第二の態様の処理液を用いる場合と同じ手順、操作により、RuO2パーティクルが抑制された、信頼性の高いルテニウム配線を形成できる。
【0180】
本発明の第四の態様の処理液は、オニウムイオンとアニオンから成るオニウム塩を含むものである。以下、順を追って説明する。
【0181】
上記オニウム塩は、下記式(5)で示される。
【0182】
【化21】
(式(5)中、A+は独立して、アンモニウムイオン、又はホスホニウムイオンであり、R1、R2、R3、R4、R5、R6は独立して、炭素数1~25のアルキル基、アリル基、炭素数1~25のアルキル基を有するアラルキル基、又はアリール基である。アラルキル基中のアリール基及びアリール基の環において少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~9のアルコキシ基、又は炭素数2~9のアルケニルオキシ基で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素又は塩素で置き換えられてもよい。式(5)中、X-はフッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、オルト過ヨウ素酸イオン、メタ過ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、フルオロホウ酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンであり、aは1~10の整数である。)
【0183】
上記式(5)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6のアルキル基は独立して、1~25であれば特に制限されずに使用することが出来る。炭素数が大きいほどオニウムイオンがRuO4 -等とより強く相互作用するため、RuO4ガスは抑制されやすい。一方、炭素数が大きいほどオニウムイオンが嵩高くなるため、RuO4 -等と静電的相互作用を生じた際に生じるイオン対が処理液に溶けにくくなり、沈殿物が生じる。この沈殿物はパーティクルとなって半導体素子の歩留まり低下を引き起こす原因となる。また、炭素数が大きいものほど処理液に対する溶解度は小さく、処理液中に気泡を生成しやすい。逆に、炭素数が小さいと、オニウムイオンとRuO4 -等との相互作用が弱くなるため、RuO4ガス抑制効果が弱くなる。よって、式(5)におけるアルキル基の炭素数は独立して、1~25であることが好ましく、2~10であることがより好ましく、3~6であることが最も好ましい。このような炭素数のアルキル基を有するオニウム塩であれば、RuO4 -等との相互作用によりRuO4ガス発生を抑制でき、かつ沈殿物を生成しにくいため、半導体用処理液として好適に使用できる。
【0184】
上記式(5)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6のアリール基は独立して、芳香族炭化水素だけでなくヘテロ原子を含むヘテロアリールも含み、特に制限はないが、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0185】
上記式(5)におけるX-は、アニオンであれば特に制限がないが、フッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、オルト過ヨウ素酸イオン、メタ過ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、フルオロホウ酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンが好ましい。
【0186】
本発明の第四の態様の処理液が、RuO4ガスを抑制するメカニズムとしては、以下のことが考えられる。すなわち、ルテニウムの溶解により発生したRuO4 -等は、オニウムイオンとの静電的な相互作用によりトラップされる。トラップされたRuO4 -等はイオン対として処理液中で比較的安定に存在するため、容易にRuO4へと変化しない。これにより、RuO4ガスの発生が抑制されると共に、RuO2パーティクル発生も抑えられる。
【0187】
上記式(5)で示されるオニウム塩は、処理液内で安定に存在し得るアンモニウムイオン又はホスホニウムイオンからなる塩、すなわち、アンモニウム塩又はホスホニウム塩である。一般に、アンモニウムイオン又はホスホニウムイオンのアルキル鎖長は容易に制御でき、さらに、アリル基やアリール基を導入することも容易である。これにより、アンモニウムイオン又はホスホニウムイオンの大きさ、対称性、親水性、疎水性、安定性、溶解性、電荷密度、界面活性能等を制御することが可能であり、該イオンからなるアンモニウム塩又はホスホニウム塩もその大きさ、対称性、親水性、疎水性、安定性、溶解性、界面活性能等を制御し得る。
【0188】
本発明の第二の態様の処理液に含まれる上記式(5)で示されるオニウム塩は、安定性が高く、高純度品が工業的に入手しやすく、安価であるといった理由からアンモニウム塩であることが好ましい。
【0189】
上記式(5)で示されるオニウム塩は、安定性に特に優れ、容易に合成可能なヘキサメトニウム塩あるいはデカメトニウム塩であることが好ましい。該ヘキサメトニウム塩あるいはデカメトニウム塩は、水酸化物又は、ハロゲン化物であることがより好ましい。
【0190】
本発明の第四の態様において、好適に使用できるオニウム塩として、ヘキサメトニウムクロリド、デカメトニウムヨージドから選ばれるメトニウム塩を挙げることができる。さらに、これらの塩は、水酸化物又は、ハロゲン化物であることがより好ましい。これらのオニウム塩を含む処理液は特に、半導体ウェハの処理において、RuO4ガスを抑制し、かつ、RuO2パーティクル発生を伴わずに処理を行う事が可能である。
【0191】
また、本発明の第四の態様の処理液中のオニウム塩の濃度は0.0001~50質量%であることが好ましい。オニウム塩の添加量が少なすぎると、RuO4 -等との相互作用が弱まりRuO4ガス抑制効果が低減するだけでなく、処理液中に溶解可能なRuO4 -等の量が少なくなるため、処理液の再使用(リユース)回数が少なくなる。一方、添加量が多すぎると、オニウム塩のルテニウム表面への吸着量が増大し、ルテニウム溶解速度の低下や、ルテニウム表面の不均一なエッチングの原因となる。したがって、本発明の第二の態様の処理液は、オニウム塩を0.0001~50質量%含むことが好ましく、0.01~40質量%含むことがより好ましく、0.1~30質量%含むことがさらに好ましい。なお、オニウム塩を添加するに場合には、1種のみを添加してもよいし、2種以上を組み合わせて添加してもよい。2種類以上のオニウム塩を含む場合であっても、オニウム塩の濃度の合計が上記の濃度範囲であれば、RuO4ガスの発生を効果的に抑制することができる。
【0192】
(酸化剤)
本発明の第四の態様の処理液は、酸化剤を含有することができる。該酸化剤としては、例えばハロゲン酸素酸、過マンガン酸、及びこれらの塩、過酸化水素、オゾン、セリウム(IV)塩等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ここで、ハロゲン酸素酸は、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、メタ過ヨウ素酸、オルト過ヨウ素酸又はこれらのイオンを指す。酸化剤を含有することで、ルテニウムの溶解が促進されると共に、析出したRuO2パーティクルの再溶解が促進される。このため、オニウム塩と酸化剤を含有する処理液は、RuO4ガスとRuO2パーティクルの発生を抑制しながら効率的にRu含有ウェハの処理を行うことができる。上記の酸化剤のうち、アルカリ性で安定して使用でき、濃度範囲を広く選択できることから、ハロゲン酸素酸及びそのイオン、又は過酸化水素が酸化剤として好適であり、次亜塩素酸、メタ過ヨウ素酸、オルト過ヨウ素酸及びそのイオンがより好適であり、次亜塩素酸及び次亜塩素酸イオンが最も好適である。
【0193】
本発明の第四の態様の処理液が次亜塩素酸イオンを含む処理液である場合、次亜塩素酸イオンの濃度の範囲は、処理液全体に対して、0.05~20.0質量%であることが好ましい。上記範囲内であれば、処理液中の次亜塩素酸イオンの分解反応を抑制し、該次亜塩素酸イオンの濃度の低下を抑制し、20Å/分以上のエッチング速度でルテニウムをエッチングすることが可能である。そのため、次亜塩素酸イオンの濃度の範囲は、好ましくは0.1~15質量%であり、より好ましくは0.3~10質量%であり、さらに好ましくは0.5~6質量%であり、特に好ましくは0.5~4質量%である。
【0194】
本発明の第四の態様の処理液において、オニウム塩及び下記に詳述する有機溶媒及びその他の添加剤以外の残分は水である。本発明の第四の態様の処理液に含まれる水は、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理などによって、金属イオンや有機不純物、パーティクル粒子などが除去された水が好ましく、特に純水、超純水が好ましい。このような水は、半導体製造に広く利用されている公知の方法で得ることができる。
【0195】
(有機溶媒)
上記のように、本発明第四の態様では、ルテニウムが溶解する際に生成されたRuO4 -等が、オニウムイオンとの静電的相互作用により処理液中に保持される事で、RuO4ガスの発生を抑制している。この場合、RuO4 -等とオニウムイオンはイオン対の状態で溶液中に溶けているが、溶解度を超えた場合は沈殿物となる。この沈殿物は半導体形成工程においてパーティクルの要因となるため、歩留まりの低下を招く。そのため、沈殿物を生じさせないことが重要であり、それにはイオン対の溶解度を上げることが好ましい。この方法として有機溶媒の添加が有効である。
【0196】
一般に、溶媒の比誘電率が低いほど、電気的に中性である化学種を溶解しやすくなる。電気的に中性であるイオン対も溶媒の比誘電率が低い方が溶解しやすい。したがって、イオン対の溶解度を上昇させるためには、本発明の第四の態様の処理液に添加する有機溶媒として、水(比誘電率78)よりも低い比誘電率をもつ有機溶媒を添加することが望ましい。このようにすることで、処理液の比誘電率を水のみの場合に比べて低下させることができ、オニウムイオンとRuO4 -等とのイオン対の溶解度を上げ、RuO4ガスの発生を効果的に抑制することができる。添加する有機溶媒としては、水よりも低い有機溶媒であればどのような有機溶媒を用いてもよいが、比誘電率は45以下が好ましく、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。なお、これらの比誘電率は、25℃における値である。
【0197】
このような有機溶媒を具体的に挙げれば、スルホラン(比誘電率43)、アセトニトリル(比誘電率37)、四塩化炭素(比誘電率2.2)、1,4-ジオキサン(比誘電率2.2)等であるが、当然のことながら、有機溶媒はこれらに限定されるものではない。
比誘電率の低い有機溶媒を添加する場合、水と混和しにくい場合もあり得る。しかし、そのような場合であっても、水に僅かに溶解した有機溶媒によりイオン対の溶解度を高めることが可能であり、有機溶媒の添加はRuO4ガス発生の抑制に有効である。
【0198】
処理液中に酸化剤が含まれる場合、有機溶媒が酸化剤によって分解されることを防ぐため、両者は反応しないことが好ましいが、酸化剤との反応性が低いものであればどのような有機溶媒を用いてもよい。一例を挙げれば、酸化剤が次亜塩素酸イオンである場合には、スルホラン類、アルキルニトリル類、ハロゲン化アルカン類、エーテル類などは次亜塩素酸イオンとの反応性が低いため、本発明の第四の態様の処理液に添加する有機溶媒として好適に用いることができる。このような有機溶媒を具体的に挙げれば、スルホラン、アセトニトリル、四塩化炭素、1,4-ジオキサン等であるが、当然のことながら、有機溶媒はこれらに限定されるものではない。
【0199】
有機溶媒は、沈殿物生成を抑制するのに必要な量を添加すればよい。このため、本発明の第四の態様の処理液中の有機溶媒の濃度は0.1質量%以上であればよいが、イオン対の溶解量を増やし、RuO4 -等をイオン対として安定に溶液内に保持するため、有機溶媒の濃度は1質量%以上であることが好ましい。また、ルテニウムの溶解性や処理液の保存安定性を損なわない範囲であれば、有機溶媒の添加量が多いほど処理液中に溶解し得るイオン対の量が増えるため、沈殿物生成を抑制できるだけでなく、有機溶媒が少量蒸発した場合でもRuO4ガス抑制効果が低下しない、処理液を再利用した際にもRuO4ガス発生を抑制できるなど、利点が多い。さらに、添加する有機溶媒は1種類であっても、複数を組み合わせて添加してもよい。
【0200】
有機溶媒として揮発性の高い溶媒を用いると、半導体ウェハを処理している間に処理液中の有機溶媒が蒸発するため、有機溶媒の濃度が変化して処理液の比誘電率が変化し、安定した処理が難しくなる。また、保存安定性の観点からも有機溶媒は揮発性の低いものが好ましい。具体的には、20℃における蒸気圧が50mmHg以下である有機溶媒が好ましく、20mmHg以下である有機溶媒がより好ましい。
【0201】
本発明の第四の態様の処理液は、25℃におけるpHが、7以上14以下であることが好ましい。処理液のpHが7未満の場合は、ルテニウムの溶解はRuO4 -等のアニオンではなくRuО2やRu(ОH)3を経由して起こるようになるため、カチオン添加の効果が低下する。さらに、pH7未満では、RuО2パーティクルを生じやすくなり、RuО4ガスの発生量が多くなるといった問題も生じるようになる。したがって、本発明の第四の態様の処理液がRuО4ガス発生抑制能を十分に発揮するためには、処理液のpHは7以上14以下が好ましく、9以上13以下がより好ましい。このpH範囲であれば、処理液に溶解したルテニウムはRuO4 -又はRuO4 2-のアニオンとして存在するため、本発明の第四の態様の処理液に含まれるオニウムイオンとイオン対を形成しやすくなり、効果的にRuО4ガス発生を抑制し得る。
【0202】
(その他の添加剤)
本発明の第四の態様の処理液には、所望により本発明の目的を損なわない範囲で、従来から半導体用処理液に使用されているその他の添加剤を配合してもよい。例えば、その他の添加剤として、酸、金属防食剤、水溶性有機溶媒、フッ素化合物、酸化剤、還元剤、錯化剤、キレート剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、安定化剤などを加えることができる。これらの添加剤は単独で添加してもよいし、複数を組み合わせて添加してもよい。
【0203】
これらの添加剤に由来して、また、処理液の製造上の都合などにより、本発明の第四の態様の処理液には、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン等が含まれていてもよい。例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等が含まれてもよい。しかし、これらアルカリ金属イオン、及びアルカリ土類金属イオン等は、半導体ウェハ上に残留した場合、半導体素子に悪影響(半導体ウェハの歩留まり低下等の悪影響)を及ぼすことから、その量は少ない方が好ましく、実際には限りなく含まれない方がよい。そのため、例えばpH調整剤としては、水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ金属や水酸化アルカリ土類金属ではなく、アンモニア、アミン、コリン又は水酸化テトラアルキルアンモニウム等の有機アルカリであることが好ましい。
【0204】
具体的には、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンはその合計量が、1質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましく、10ppm以下であることが特に好ましく、500ppb以下であることが最も好ましい。
【0205】
(ルテニウム含有ガスの発生抑制剤)
ルテニウム含有ガスの発生抑制剤とは、ルテニウムを処理するための液に添加する事で、ルテニウム含有ガスの発生を抑制するものであり、上記式(2)~(5)で示されるオニウム塩を含む液を指す。
ルテニウムを処理するための液は、ルテニウムと接触し、該ルテニウムに物理的、化学的変化を与える成分を含む液であればどのような液でもよく、例えば、酸化剤を含む溶液が例示される。該酸化剤としては、本発明の第二の態様の処理液、第三の態様の処理液、及び第四の態様の処理液の説明で例示したような酸化剤を挙げることができる。ルテニウムを処理するための液で処理されたルテニウムは、その全部又は一部が該処理液中に溶解、分散、又は沈殿し、RuO4(ガス)及び/又はRuO2(粒子)を生じる原因となる。
ルテニウムを処理するための液と本発明のルテニウム含有ガスの発生抑制剤とを含む液(ガス発生抑制剤を含有する処理液とも表記する)では、該処理液中に存在するRuO4 -等と、オニウムイオンとが、該処理液に溶解するイオン対を形成することで、RuO4 -等からRuO4(溶液)及びRuO2(粒子)の生成を抑制する。これは、RuO4(溶液)から生じるRuO4(ガス)を大幅に低減するとともに、RuO4(ガス)により生じるRuO2(粒子)の生成を抑えるためである。
上記で説明したとおり、本発明の第二の態様の処理液、第三の態様の処理液、及び第四の態様の処理液は、上記式(2)~(5)で示されるいずれかのオニウム塩を含むため、RuO4ガスを発生させることなく、ルテニウムを含む半導体ウェハを処理できる処理液である。すなわち、本発明の第二の態様の処理液、第三の態様の処理液、及び第四の態様の処理液は、ルテニウムを処理するための液であると同時にルテニウム含有ガスの発生抑制剤でもある。そのため、これらの態様の処理液は、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤としても使用できる。
【0206】
ルテニウム含有ガスの発生抑制剤における、上記式(2)~(5)で示されるいずれかのオニウム塩の種類及びその含有量、その他の成分及びその含有量、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤のpH等の条件については、各態様の半導体ウェハ用処理液の説明で記載されている条件と同じ条件を適用できる。
また、それらの条件以外にも、例えば、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤における、上記式(2)~(5)で示されるいずれかのオニウム塩の含有量としては、0.0001~50質量%を挙げることができ、0.01~35質量%であることがより好ましく、0.1~20質量%である事がさらに好ましい。この濃度は、後述するように、ルテニウム含有ガスの発生を抑制する対象となる液、すなわち、ルテニウムを処理するための液と混合した際の混合液における上記のオニウム塩の濃度が所定量になるように、調整することができる。また、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤には、上記の第二~第四の態様で示したpH調整剤と同じものを適宜添加してもよい。pH調整剤の含有量については、後述するように、ルテニウムを処理するための液と混合した際の混合液のpHが所定範囲になるように、調整することができる。例えば、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤における、pH調整剤の含有量として、有効量であればよく、具体的には0.000001~10質量%を例示できる。
【0207】
(ルテニウム含有ガスの発生抑制方法)
ルテニウム含有ガスの発生抑制方法は、上記のルテニウム含有ガスの発生抑制剤を、ルテニウムを処理するための液に添加する工程を含む、ルテニウム含有ガスの発生抑制方法である。具体的には、たとえば、半導体製造工程におけるエッチング工程、残渣除去工程、洗浄工程、CMP工程等のルテニウムを処理する工程において使用する液(ルテニウムを処理するための液)に対して、本発明のルテニウム含有ガスの発生抑制剤を添加する事で、ルテニウム含有ガスの発生を抑制する事ができる。また、これら半導体製造工程に使用した各装置において、チャンバー内壁や配管等に付着したルテニウムを洗浄する際にも、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤を用いる事でルテニウム含有ガスの発生を抑制できる。例えば、物理蒸着(PVD)や化学蒸着(CVD)を用いてRuを形成する装置のメンテナンスにおいて、チャンバーや配管等に付着したRuを除去する際に使用する洗浄液へ、本発明のルテニウム含有ガスの発生抑制剤を添加する事により、洗浄中に発生するルテニウム含有ガスの抑制が可能となる。当該方法によれば、上記のルテニウム含有ガスの発生抑制剤の説明で示したメカニズムにより、ルテニウム含有ガスの発生を抑制できる。
なお、ルテニウム発生抑制方法においては、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤と、ルテニウムを処理するための液との混合液における、上記の式(2)~(5)のいずれかで示されるオニウム塩の1種以上の濃度が、0.0001~50質量%となるように、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤における上記オニウム塩の濃度と、その添加量を調整することが好ましい。また、ルテニウム含有ガスの発生抑制方法においては、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤に、上記の第二~第四の態様で示したpH調整剤と同じものを適宜添加してもよい。ルテニウム含有ガスの発生抑制剤におけるpH調整剤の含有量と、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤の添加量については、ルテニウムを処理するための液と混合した際の混合液のpHが、例えば7~14になるように、適宜調整することができる。
【0208】
ルテニウムを処理するための液に対する、ルテニウム含有ガスの発生抑制剤の添加量は、ガス発生抑制剤を含有する処理液に溶解されるルテニウム量による。ルテニウム含有ガスの発生抑制剤の添加量は特に制限されないが、例えば、ルテニウムを処理するための液に溶解されるルテニウム量を1としたときに、重量比で10~500000が好ましく、より好ましくは100~100000であり、さらに好ましくは1000~50000である。
【0209】
(ルテニウム含有廃液の処理剤)
ルテニウム含有廃液の処理剤とは、ルテニウム含有廃液に添加する事で、ルテニウム含有ガスの発生を抑制するものであり、上記式(2)~(5)で示すオニウム塩を含む液を指す。よって、上記の式(2)、(3)、(4)又は(5)で示されるオニウム塩を含有する処理液(第二の態様の処理液、第三の態様の処理液及び第四の態様の処理液)は、そのルテニウム含有ガスの発生抑制効果を利用して、ルテニウム含有廃液の処理剤としても用いることができる。
ここで、ルテニウム含有廃液とは、少量でもRuを含む溶液を意味する。ここで、Ruとは、ルテニウム金属に限定されず、ルテニウム元素を含んでいればよく、例えば、Ru、RuO4 -、RuO4 2-、RuO4、RuO2などが挙げられる。例えば、ルテニウムを含有する半導体ウェハのエッチング処理を、本発明の各態様とは異なる組成のエッチング液を用いて行った後の液や、本発明の各態様にかかる半導体ウェハ用の処理液を用いて処理を行った後の液などを挙げることができる。また、半導体ウェハのエッチングに限らず、上記のルテニウム含有ガスの発生抑制方法にて述べたような、半導体製造工程やチャンバー洗浄などにより発生したルテニウム含有液もその一例である。
廃液に微量でもRuが含まれると、RuO4ガスを経由してRuO2粒子が発生するため、タンクや配管を汚染するし、パーティクルの酸化作用によって装置類の劣化を促進する。また、廃液中から発生するRuO4ガスは低濃度でも人体に強い毒性を示す。このように、ルテニウム含有廃液は、装置類あるいは人体に対して様々な悪影響を及ぼすため、早急に処理してRuO4ガスの発生を抑制する必要がある。
本発明のルテニウム含有廃液の処理剤においては、上記式(2)~(5)で示されるオニウム塩のいずれかの種類及びその含有量や、その他の成分及びその含有量、pH等の条件については、各態様の半導体ウェハ用処理液の説明で記載されている条件と同じ条件を適用できる。
また、これらの条件以外にも、例えば、ルテニウム含有廃液の処理剤における、上記式(2)~(5)で示されるいずれかのオニウム塩の含有量としては、0.0001~50質量%を挙げることができ、0.001~35質量%であることがより好ましい。この濃度は、後述するように、ルテニウム含有廃液と混合した際の混合液における上記のオニウム塩の濃度が所定量になるように、調整することができる。また、ルテニウム含有廃液の処理剤には、上記の第二~第四の態様で示したpH調整剤と同じものを適宜添加してもよい。pH調整剤の含有量については、後述するように、ルテニウム含有廃液と混合した際の混合液のpHが所定範囲になるように、調整することができる。例えば、ルテニウム含有廃液の処理剤における、pH調整剤の含有量として、有効量であればよく、具体的には0.000001~10質量%を例示できる。
【0210】
(ルテニウム含有廃液の処理方法)
本発明のルテニウム含有廃液の処理方法は、上記のルテニウム含有廃液の処理剤を、後述するルテニウム含有廃液に添加する工程を含む、ルテニウム含有廃液の処理方法である。当該方法によれば、上記のルテニウム含有ガスの発生抑制剤の説明で示したメカニズムにより、ルテニウム含有廃液から発生するルテニウム含有ガスを抑制できる。そのため、ルテニウム含有廃液の取り扱いが容易になるだけでなく、排気設備や除外設備を簡素化でき、ルテニウム含有ガスの処理にかかる費用を削減できる。さらに、毒性の高いルテニウム含有ガスに作業者が晒される危険性が減り、安全性が大幅に向上する。
なお、ルテニウム含有廃液の処理方法においては、ルテニウム含有廃液の処理剤と、ルテニウム含有廃液との混合液における、上記の式(2)~(5)のいずれかで示されるオニウム塩の1種以上の濃度が、例えば、0.0001~50質量%となるように、ルテニウム含有廃液の処理剤における上記オニウム塩の濃度と、その添加量を調整することが好ましい。また、ルテニウム含有廃液の処理方法においては、ルテニウム含有廃液の処理剤に、上記の第二~第四の態様で示したpH調整剤と同じものを適宜添加してもよい。ルテニウム含有廃液の処理剤におけるpH調整剤の含有量と、ルテニウム含有廃液の処理剤の添加量については、ルテニウム含有廃液と混合した際の混合液のpHが、例えば7~14になるように、適宜調整することができる。
ルテニウム含有廃液に対する、ルテニウム含有廃液の処理剤の添加量は、ルテニウム含有廃液中のルテニウム量による。ルテニウム含有廃液の処理剤の添加量は特に制限されないが、例えば、ルテニウム含有廃液中のルテニウム量を1としたときに、重量比で10~500000が好ましく、より好ましくは100~100000であり、さらに好ましくは1000~50000である。
【実施例
【0211】
以下、実験例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実験例に制限されるものではない。
【0212】
<実験例1及び参考例1>
(pH測定方法)
実験例1及び参考例1で調製した処理液30mLを、卓上型pHメーター(LAQUA F―73、堀場製作所社製)を用いてpH測定した。pH測定は、処理液の温度が、25℃で安定した後に、実施した。
【0213】
(有効塩素濃度及び次亜塩素酸イオン濃度の算出方法)
実験例及び参考例の処理液を調製した後、100mL三角フラスコに処理液0.5mLとヨウ化カリウム(和光純薬工業社製、試薬特級)2g、10%酢酸8mL、超純水10mLを加え、固形物が溶解するまで撹拌し、褐色溶液を得る。調製した褐色溶液は0.02Mチオ硫酸ナトリウム溶液(和光純薬工業社製、容量分析用)を用いて溶液の色が褐色から極薄い黄色になるまで酸化還元滴定し、次いで、でんぷん溶液を加え薄紫色の溶液を得る。この溶液に更に0.02Mチオ硫酸ナトリウム溶液を続けて加え、無色透明になった点を終点として有効塩素濃度を算出した。また得られた有効塩素濃度から次亜塩素酸イオン濃度を算出した。例えば、有効塩素濃度1%であれば次亜塩素酸イオン濃度は0.73%となる。これは以下の実験例1~5において共通する。
【0214】
(テトラメチルアンモニウムイオン濃度の算出方法)
実験例及び参考例の処理液中のテトラメチルアンモニウムイオン濃度はpH、次亜塩素酸イオン濃度、ナトリウムイオン濃度から計算によって求めた。なお、ナトリウムイオン濃度は、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)によって測定した。
【0215】
(ルテニウムのエッチング速度の算出方法)
シリコンウェハ上にバッチ式熱酸化炉を用いて酸化膜を形成し、その上にスパッタ法を用いてルテニウムを1200Å(±10%)成膜した。四探針抵抗測定器(ロレスタ‐GP、三菱ケミカルアナリテック社製)によりシート抵抗を測定して膜厚に換算した。
【0216】
各実験例及び参考例の処理液30mLを蓋付きフッ素樹脂製容器(AsOne製、PFA容器94.0mL)に準備し、処理液中に10×20mmとした各サンプル片を、23℃で1分間浸漬し、処理前後の膜厚変化量を浸漬した時間で除した値をエッチング速度として算出した。
【0217】
また、算出したエッチング速度からルテニウムを50ű10Åエッチングする時間を算出し、ルテニウム膜を50ű10Åエッチングする時間で処理した後に、ルテニウム表面を100000倍の電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM;Field Emission Scanning Electron Microscope)にて観察した。この際に表面荒れが観察された場合を不良(C)、少し表面荒れが観察された場合を良(B)、何ら表面荒れが観察されなかった場合は、優(A)とした。
【0218】
<実験例1-1>
(エッチング対象のサンプルの準備)
表面を清浄にしたシリコンウェハを用意し、500nmの熱酸化膜を形成した。そうして得られたシリコンウェハ上にルテニウムをスパッタリング法で成膜することによって、シリコンウェハ上に1200Åの膜厚のルテニウムが積層されたサンプルを準備した。
【0219】
(処理液の製造)
<イオン交換樹脂の前処理 水素型イオン交換樹脂の調製>
内径約45mmのガラスカラム(AsOne社製、バイオカラムCF-50TK)に、ナトリウム型の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ社製、アンバーライトIR-120BNa)を200mL投入した。その後、水素型に交換するため1規定の塩酸(和光純薬工業社製、容量分析用)を1L、イオン交換樹脂カラムに通液し、イオン交換樹脂を水洗するため、超純水1Lを通液した。
【0220】
<(a)工程>
さらに、水素型に交換されたイオン交換樹脂209mLに、10%水酸化テトラメチルアンモニウム溶液を1L通液し、水素型からテトラメチルアンモニウム型にイオン交換した。イオン交換後、イオン交換樹脂を水洗するため、超純水1Lを通液した。
【0221】
<(b)工程>
次亜塩素酸ナトリウム五水和物(和光純薬工業社製、試薬特級)69gを2Lのフッ素樹脂容器に入れた後、超純水931gを添加して、3.11質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製した。調製した次亜塩素酸ナトリウム水溶液をテトラメチルアンモニウム型に交換したイオン交換樹脂に通液し、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液1000gを得た。得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液999.9gにテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド100mgを添加し、表1に記載された組成の処理液を得た。
【0222】
<評価>
得られた処理液のpH、有効塩素濃度及び次亜塩素酸イオン濃度を評価し、pHは10、次亜塩素酸イオン濃度は2.15質量%となっていることを確認した。また、上述の「ルテニウムのエッチング速度の算出方法」によりエッチング速度を評価した。算出したエッチング速度からルテニウムを50ű10Åエッチングする時間を算出し、50ű10Åエッチングする時間で処理したルテニウム膜を準備し、表面観察用のルテニウム膜とした。ルテニウム表面については、100000倍の電子顕微鏡にて観察した。観察した結果は図3に示す。
【0223】
<実験例1-2>
実験例1-1において、(a)工程のイオン交換樹脂量を564mLとし、10%水酸化テトラメチルアンモニウム溶液の通液量を2Lとし、(b)工程の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度を8.39質量%として、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を得た。さらにpH調整工程(c)として、該次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液に、pHが11になるまで25%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)溶液を添加した。得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液999gにデシルトリメチルアンモニウムクロリド1gを添加し、表1に記載にされた組成の処理液を得た。評価結果を表2に示す。
【0224】
<実験例1-3>
実施例1において、(a)工程のイオン交換樹脂量を705mLとし、10%水酸化テトラメチルアンモニウム溶液の通液量を2Lとし、(b)工程の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度を10.49質量%として、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を得た。さらにpH調整工程(c)として、該次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液に、pHが12になるまで25%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)溶液を添加した。得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液999.5gにラウリルトリメチルアンモニウムクロリド500mgを添加し、表1に記載にされた組成の処理液を得た。評価結果を表2に示す。
【0225】
<実験例1-4>
実験例1-2と同様の操作を行い、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を得た後、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液999.5gにオクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド500mgを添加し、表1に記載にされた組成の処理液を得た。評価結果を表2に示す。
【0226】
<実験例1-5>
実験例1-1において、(a)工程のイオン交換樹脂量を282mLとし、(b)工程の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度を4.20質量%として、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を得た。さらにpH調整工程(c)として、該次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液に、pHが11になるまで25%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)溶液を添加した。得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液990gにn-オクチルトリメチルアンモニウムクロリド10gを添加し、表1に記載にされた組成の処理液を得た。評価結果を表2に示す。
【0227】
<実験例1-6>
実験例1-1と同様の操作を行い、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を得た後、さらにpH調整工程(c)として、水素型に交換したナトリウム型の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ社製、アンバーライトIR-120BNa)50mLを充填したガラスカラムに該次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を通液した。得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液999.9gにテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド100mgを添加し、表1に記載にされた組成の処理液を得た。評価結果を表2に示す。
【0228】
<実験例1-7>
実験例1-4と同様の操作を行い、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を得た後、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液999.9gにヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド100mgを添加し、表1に記載にされた組成の処理液を得た。評価結果を表2に示す。
【0229】
<実験例1-8>
次亜塩素酸イオンが2.15質量%となるように、次亜塩素酸ナトリウム五水和物(和光純薬工業社製、試薬特級)を水に溶解した。得られた次亜塩素酸ナトリウム水溶液999gにテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド1gを添加し、表1に記載にされた組成の処理液を得た。評価結果を表2に示す。
【0230】
<実験例1-9>
実験例1-1において、(a)工程のイオン交換樹脂量を282mLとし、(b)工程の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度を4.20質量%とした。得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液999.5gにジデシルジメチルアンモニウムクロリド500mgを添加し、表1に記載にされた組成の処理液を得た。評価結果を表2に示す。
【0231】
<実験例1-10>
実験例1-9と同様の操作を行い、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を得た後、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液999.9gにジドデシルジメチルアンモニウムクロリド100mgを添加し、表1に記載にされた組成の処理液を得た。評価結果を表2に示す。
【0232】
<参考例1-1>
式(1)で示されるアルキルアンモニウム塩を添加しなかった以外は、実験例1-1と同様に処理液を調製し、実験例1-1と同様の評価を行った。
【0233】
以上、実験例1、参考例1で調整した各処理液の組成を表1に、得られた結果を表2に示した。
【0234】
【表1】
【0235】
【表2】
【0236】
表2に示したように、本発明の処理液を適用した実験例1-1~1-10は、エッチング処理後のルテニウム表面の平坦性が維持されており、半導体ウェハ用処理液として、好適に使用することが出来る。また、図3に、実験例1-1にて得られたエッチング処理後のルテニウムについての100000倍の電子顕微鏡画像を示す。ウェハ表面へのRuO2(パーティクル)の生成が抑制され、平坦なルテニウム表面が得られている事が分かる。
【0237】
参考例1-1では界面活性剤が添加されていないため、実験例1-1~1-10と比較して、エッチング後の平坦性が低下していることがわかる。
【0238】
<実験例1-11>
実験例1-1と同様の操作を行い、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を得た後、得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液999gにテトラヘプチルアンモニウムクロリド1gを添加し、表3に記載にされた組成の処理液を得た。
【0239】
<参考例1-2~1-3>
実験例1-1の手順に準じて表3に記載した処理液を得た。
【0240】
【表3】
【0241】
表3に記載の結果から、界面活性剤として、アルキルアンモニウム塩の構造中に炭素数が7以上のアルキル基が存在しないものを用いた場合には、望ましい表面粗さは得られなかった。
【0242】
<実験例2及び参考例2>
(処理液の製造)
表4及び5に記載の組成となるよう、次の通り処理液を調製した。100mLのフッ素樹脂製容器に次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬製)又はオルト過ヨウ素酸(富士フィルム和光純薬製)、第四級オニウム塩又は第三級オニウム塩、有機溶媒、超純水を加え、15wt%のHCl水溶液又は1.0mol/LのNaOH水溶液を用いて表に記載のpHに調整した処理液を60mL調製した。(ただし、表4に示す実験例2-1~2-12及び参考例2-1~2-5では有機溶媒は添加しなかった。)得られた処理液の有効塩素濃度が2.0wt%となっていることを確認し、表4及び5に記載の処理液を得た。
【0243】
(pH測定方法)
各実験例及び各参考例で調製した処理液10mLを、卓上型pHメーター(LAQUA F―73、堀場製作所製)を用いてpH測定した。pH測定は、処理液の温度が、25℃で安定した後に、実施した。
【0244】
(RuO4ガスの定量分析)
RuO4ガスの発生量は、ICP-OESを用いて測定した。密閉容器に処理液を5mLとり、膜厚1200Åのルテニウムを成膜した10×20mmのSiウェハ1枚を、25℃又は50℃でルテニウムが全て溶解するまで浸漬させた。その後、密閉容器にAirをフローし、密閉容器内の気相を吸収液(1mol/L NaOH)の入った容器にバブリングして、浸漬中に発生したRuO4ガスを吸収液にトラップした。この吸収液中のルテニウム量をICP-OESにより測定し、発生したRuO4ガス中のRu量を求めた。処理液に浸漬したSiウェハ上のルテニウムが全て溶解したことは、四探針抵抗測定器(ロレスタ‐GP、三菱ケミカルアナリテック社製)により浸漬前及び浸漬後のシート抵抗をそれぞれ測定し、膜厚に換算することで確認した。
【0245】
(沈殿物の確認)
密閉容器に処理液を10mLとり、膜厚1200Åのルテニウムを成膜した10×20mmのSiウェハ5枚を、25℃で10分間浸漬させた。その後、処理液中に沈殿物が形成されていないかを目視で確認した。
【0246】
<実験例2-1~2-17及び参考例2-1~2-5>
表4及び5に、処理液の組成及び各評価結果を示す。なお、表4におけるRu量は、RuO4ガス吸収液中に含まれるRuの重量をRu付ウェハの面積で割った値である。
【0247】
【表4】
【0248】
実験例2-1と参考例2-1(pH7.0)、実験例2-2と参考例2-2(pH9.5)、実験例2-3と参考例2-3(pH12.0)をそれぞれ比べると、いずれのpHにおいても第四級オニウム塩の添加によりRuO4ガスの発生量を低減できていることが分かる。
【0249】
実験例2-4~2-10では実験例2-1~2-3とは異なる種類のオニウム塩を使用した。上記式(2)あるいは式(3)に示す第四級オニウム塩あるいは第三級オニウム塩において、炭素数、A+、X-が異なるオニウム塩を用いた際、オニウム塩のアルキル鎖の炭素数が10よりも大きい場合に処理液の発泡が確認されたが、実験例2-4~2-10のいずれにおいてもRuO4ガスの抑制効果が得られた。たとえば炭素数を例に挙げると、実験例2-3における第四級オニウム塩の処理液中濃度は8.8wt%であったのに対して実験例2-4では0.5wt%となっており、第四級オニウム塩の炭素数が大きい実験例2-4では、より少ない量の第四級オニウム塩の添加でガスの抑制効果が得られている。
【0250】
参考例2-4と実験例2-11を比較すると、50℃においても、オニウム塩の添加によりRuO4ガスの発生を抑制できている事が分かる。
【0251】
参考例2-5と実験例2-12を比較すると、酸化剤として1質量%のオルト過ヨウ素酸を用いた場合においても、オニウム塩の添加によりRuO4ガスの発生を抑制できている事が分かる。
【0252】
<参考例2-6>
表4に示す参考例2-2において、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(TEMPO)を1wt%添加した他は参考例2-2と同様にして、参考例2-6の処理液を調製した。この処理液を用いてRuO4ガスの定量分析を行ったところ、発生したRuO4ガス中のRu量は40μg/cm2であった。TEMPOは特許文献7においてRuO4ガス抑制効果があるとされているが、アルカリ性条件下では、RuO4ガスの抑制効果は確認できなかった。
【0253】
【表5】
【0254】
実験例2-17では、RuO4ガス発生を抑制できているが、Ru付Siウェハの浸漬処理後の処理液中にパーティクルの原因となる沈殿物が生成している。一方、水に比べて比誘電率の低いアセトニトリルあるいはスルホランを添加した実験例2-13~2-16では沈殿物の生成を抑制できている。
【0255】
表6~9に記載の組成となるよう、次の通り処理液を調製した。100mLのフッ素樹脂製容器に次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬製)、第四級オニウム塩又は第三級オニウム塩、超純水を加え、15wt%のHCl水溶液を用いて表に記載のpHとなるよう調整した処理液を60mL調製した。得られた処理液の有効塩素濃度が2.0wt%となっていることを確認し、表6~9に記載の処理液を得た。
【0256】
【表6】
【0257】
【表7】
【0258】
【表8】
【0259】
表6~8に記載の結果から、式(2)で示される第四級オニウム塩を含有する処理液を用いることにより、RuO4ガスの抑制効果が得られた。また、表6及び7の結果から、処理液におけるその濃度が増加する程、その抑制効果が高いことが分かった。
【0260】
【表9】
【0261】
表9に記載の結果から、式(2)で示される第四級オニウム塩を含有する処理液を用いることにより、処理液のpHが異なっていてもRuO4ガスの抑制効果が得られることが分かった。また、処理液における第四級オニウム塩の濃度が増加する程、その抑制効果が高いことが分かった。
【0262】
参考例として、式(2)及び(3)の規定を満たさないオニウム塩を含有する処理液を、以下の表10に記載の組成になるように調製した。調製法は上記の実験例及び参考例と同様である。
表10の結果から、式(2)及び(3)の規定を満たさないオニウム塩を含有する場合には、十分なガス発生抑制効果が得られなかった。
【0263】
【表10】
【0264】
<実験例3及び参考例3>
(処理液の製造)
表11に記載の組成となるよう、次の通り処理液を調製した。100mLのフッ素樹脂製容器に次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬製)、オニウム塩、超純水を加え、15wt%のHCl水溶液を用いてpH12.0の処理液を60mL調製した。得られた処理液の有効塩素濃度が2.0wt%となっていることを確認し、表11に記載の処理液を得た。
(pH測定方法)
実験例及び参考例で調製した処理液10mLを、卓上型pHメーター(LAQUA F―73、堀場製作所製)を用いてpH測定した。pH測定は、処理液の温度が、25℃で安定した後に、実施した。
(RuO4ガスの定量分析)
RuO4ガスの発生量は、ICP-OESを用いて測定した。密閉容器に処理液を5mLとり、膜厚1200Åのルテニウムを成膜した10×20mmのSiウェハ1枚を、25℃でルテニウムが全て溶解するまで浸漬させた。その後、密閉容器にAirをフローし、密閉容器内の気相を吸収液(1mol/L NaOH)の入った容器にバブリングして、浸漬中に発生したRuO4ガスを吸収液にトラップした。この吸収液中のルテニウム量をICP-OESにより測定し、発生したRuO4ガス中のRu量を求めた。処理液に浸漬したSiウェハ上のルテニウムが全て溶解したことは、四探針抵抗測定器(ロレスタ‐GP、三菱ケミカルアナリテック社製)により浸漬前及び浸漬後のシート抵抗をそれぞれ測定し、膜厚に換算することで確認した。
【0265】
<実験例3-1~3-4及び参考例3-1>
表11に、処理液の組成及び各評価結果を示す。なお、表11におけるRu量は、RuO4ガス吸収液中に含まれるRuの重量をRu付ウェハの面積で割った値である。
【表11】
【0266】
実験例3-1~3-4と参考例3-1を比べると、オニウム塩の添加によりRuO4ガスの発生量を低減できていることが分かる。
【0267】
オニウム塩の種類を変え、実験例3-1等と同じ手順により、以下の表12及び表13に記載の組成になるように処理液を調製した。
【0268】
【表12】
【0269】
【表13】
【0270】
表12及び13の結果から、実験例3-1~実験例3-4で用いたオニウム塩とは別の構造を有するオニウム塩であっても、式(4)で示される構造を有するオニウム塩であれば、それを含有する処理液を用いた場合にルテニウム含有ガスの発生を十分に抑制する効果が得られることが分かった。
【0271】
<実験例4及び参考例4>
実験例3及び参考例3で示した(処理液の製造)に従って、表14に記載の組成となるように処理液を調製した。また、処理液のpHの測定方法及びRuO4ガスの定量分析については、実験例3及び参考例3で示した(pHの測定方法)及び(RuO4ガスの定量分析)に従って行った。
【0272】
<実験例4-1~4-3及び参考例4-1>
表14に、処理液の組成及び各評価結果を示す。なお、表14におけるRu量は、RuO4ガス吸収液中に含まれるRuの重量をRu付ウェハの面積で割った値である。
【0273】
【表14】
【0274】
表14の結果から、式(5)で示されるオニウム塩を含有する処理液を用いた場合には、ルテニウム含有ガスの発生を十分に抑制できることが分かった。
【0275】
<実験例5及び参考例5>
<実験例5-1~5-11>
(ルテニウム含有廃液の処理剤と、ルテニウム含有廃液の混合液の調製)
フッ素樹脂製容器に次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬製)、超純水を加えた後、15wt%のHCl水溶液あるいは4wt%のNaOH水溶液を用いて表15に記載のpHに調整することで、有効塩素濃度2.0wt%のRuエッチング用処理液を得た。得られた処理液1Lへ膜厚1360Åのルテニウムを成膜した300mmのSiウェハを25℃にて10分間浸漬した後、廃液タンクに回収した。
次に、フッ素樹脂製容器に次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬製)、オニウム塩、超純水を加えた後、15wt%のHCl水溶液あるいは4wt%のNaOH水溶液を用いて表15に記載のpHに調整することで、有効塩素濃度2.0wt%のルテニウム含有廃液の処理剤を得た。得られたルテニウム含有廃液の処理剤1Lを、廃液タンクに25℃にて混合することで、6.0×10-4mol/Lのルテニウムを含む、表15に記載の、ルテニウム含有廃液の処理剤と、ルテニウム含有廃液の混合液(以下、単に混合液ともいう)を得た。
【0276】
(RuO4ガスの定量分析)
RuO4ガスの発生量は、ICP-OESを用いて測定した。密閉容器に混合液5mlを分取した。密閉容器にairを15分間フローし、密閉容器内の気相を吸収液(1mol/L NaOH)の入った容器にバブリングして、混合液から発生したRuO4ガスを吸収液にトラップした。この吸収液中のルテニウム量をICP-OESにより測定し、発生したRuO4ガス中のRu量を求めた。処理したSiウェハ上のルテニウムが全て溶解したことは、四探針抵抗測定器(ロレスタ-GP、三菱ケミカルアナリテック社製)により処理前及び処理後のシート抵抗をそれぞれ測定し、膜厚に換算することで確認した。
【0277】
<実験例5-12>
実験例5-1と同様の方法により、表15に記載のルテニウム含有廃液の処理剤と、ルテニウム含有廃液の混合液を得た。ただし、有効塩素濃度は、Ruエッチング用処理液では4.0wt%、ルテニウム含有廃液の処理剤では0%(酸化剤不含)となるように調製を行った。RuO4ガスの定量分析については、実験例5-1と同様の手順で行った。
【0278】
<実験例5-13~5-15>
実験例5-1と同様の方法により、有効塩素濃度4.0wt%のRuエッチング用処理液を得た。得られた処理液1Lを、膜厚2720Åのルテニウムを成膜した300mmのSiウェハ表面へ25℃にて10分間かけ流し、1Lの超純水にてリンスした後、廃液タンクに回収した。次に、実験例5-1と同様の方法により得られた、有効塩素濃度2.0wt%のルテニウム含有廃液の処理剤2Lを廃液タンクに混合することで、6.0×10-4mol/LのRuを含む、表15に記載のルテニウム含有廃液の処理剤と、ルテニウム含有廃液の混合液を得た。RuO4ガスの定量分析については、実験例5-1と同様の手順で行った。
【0279】
<参考例5-1~5-4>
フッ素樹脂製容器に次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬製)、超純水を加えた後、15wt%のHCl水溶液あるいは4wt%のNaOH水溶液を用いて表16に記載のpHに調整することで、有効塩素濃度2.0wt%のルテニウムエッチング用の処理液を得た。得られた処理液1Lへ膜厚680Åのルテニウムを成膜した300mmのSiウェハを25℃にて10分間浸漬した後、廃液タンクに回収することで、6.0×10-4mol/LのRuを含む、表16に記載のルテニウム含有廃液を得た。RuO4ガスの定量分析については、実験例5-1と同様の手順で行った。
【0280】
<参考例5-5>
参考例5-1と同様の方法により、有効塩素濃度4.0wt%のルテニウムエッチング用の処理液を得た。得られた処理液1Lを、膜厚1360Åのルテニウムを成膜した300mmのSiウェハ表面へ25℃にて10分間かけ流し、1Lの超純水にてリンスした後、廃液タンクに回収することで、6.0×10-4mol/LのRuを含む表16に記載のルテニウム含有廃液を得た。
【0281】
【表15】
【0282】
【表16】
【0283】
表15及び16の結果から、式(2)~(5)で示されるオニウム塩のいずれかを含有する処理液を、ルテニウム含有廃液に添加した場合には、ルテニウム含有ガスの発生が抑制されることが分かった。これにより、本発明の各態様にかかる処理液を、ルテニウム含有廃液の処理に用いた場合には、ルテニウム含有ガスの発生を抑制するので、ルテニウム含有廃液の処理に好適に用いることができることが分かった。
【符号の説明】
【0284】
1 基体
2 層間絶縁膜
3 ルテニウム
図1
図2
図3