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特許7477607熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240423BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20240423BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240423BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20240423BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20240423BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L31/04 S
C08K3/013
C08L55/02
C08L25/12
C08L69/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022530983
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 KR2021013764
(87)【国際公開番号】W WO2022085998
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0135221
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0130783
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨンミン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ファ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジュン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・イル・カン
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-241552(JP,A)
【文献】特開2004-196967(JP,A)
【文献】特開2015-160900(JP,A)
【文献】国際公開第2005/037927(WO,A1)
【文献】特開2015-209497(JP,A)
【文献】特開2002-105332(JP,A)
【文献】特表2014-501314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)非再生熱可塑性樹脂20~90重量%及び(B)再生熱可塑性樹脂10~80重量%を含むベース樹脂100重量部と、
(C)エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体1~10重量部と、
(D)無機顔料0.01~10重量部とを含み、
前記(B)再生熱可塑性樹脂は、再生ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、再生ポリカーボネート樹脂、及び再生芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体からなる群から選択された1種以上を含み、
前記(D)無機顔料は、屈折率が1.65以上であり、平均粒径(BET径)が10~500nmであることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
下記数式1で計算される溶融指数維持率が80%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[数式1]
溶融指数維持率(%)=[MIn+5/MI]×100
(前記数式1において、MIは、前記熱可塑性樹脂組成物を200~250℃及び250~400rpmの条件で押出加工をn回行った後、ASTM D1238に準拠して220℃、10kgの条件下で測定した溶融指数の値(g/10分)であり、MIn+5は、前記と同じ条件で押出加工をn+5回繰り返して行った後に測定した溶融指数の値(g/10分)を意味し、ここで、nは1~10の整数である。)
【請求項3】
下記数式2で計算される衝撃強度維持率が80%以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[数式2]
衝撃強度維持率(%)=[ImStn+5/ImSt]×100
(前記数式2において、ImStは、前記熱可塑性樹脂組成物を200~250℃及び250~400rpmの条件で押出加工をn回行った後、ASTM D256に準拠して試験片の厚さ1/8”の条件下で測定したアイゾット衝撃強度の値(kgf・cm/cm)であり、ImStn+5は、前記と同じ条件で押出加工をn+5回繰り返して行った後に測定したアイゾット衝撃強度の値(kgf・cm/cm)を意味し、ここで、nは1~10の整数である。)
【請求項4】
前記(A)非再生熱可塑性樹脂は、(A-1)非再生ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20~70重量%、及び(A-2)非再生芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体30~80重量%を含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A-1)グラフト共重合体は、共役ジエンゴム50~80重量%、ビニルシアン化合物5~20重量%及び芳香族ビニル化合物10~40重量%を含んでなることを特徴とする、請求項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A-2)共重合体は、ビニルシアン化合物20~40重量%及び芳香族ビニル化合物60~80重量%を含んでなることを特徴とする、請求項又はに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)再生熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が60~180℃であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(C)共重合体は、エチレン化合物50~95重量%及びビニルアセテート化合物5~50重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(D)無機顔料は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、カーボンブラック及びホワイトカーボンからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
(A)非再生熱可塑性樹脂20~90重量%及び(B)再生熱可塑性樹脂10~80重量%を含むベース樹脂100重量部と、(C)エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体1~10重量部と、(D)無機顔料0.01~10重量部とを含んで、200~280℃で混練及び押出するステップを含み、前記(B)再生熱可塑性樹脂は、再生ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、再生ポリカーボネート樹脂、及び再生芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体からなる群から選択された1種以上を含み、前記(D)無機顔料は、屈折率が1.65以上であり、平均粒径(BET径)が10~500nmであることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【請求項12】
光学顕微鏡を通じて表面で観測される直径100μm以上の異物の個数が15個/100cm未満であることを特徴とする、請求項1に記載の成形品。
【請求項13】
(A)非再生熱可塑性樹脂20~90重量%及び(B)再生熱可塑性樹脂10~80重量%を含むベース樹脂100重量部と、
(C)エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体1~10重量部と、
(D)屈折率が1.65以上である無機顔料0.01~10重量部とを含み、
前記(A)非再生熱可塑性樹脂は、(A-1)非再生ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20~70重量%、及び(A-2)非再生芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体30~80重量%を含み、
前記(B)再生熱可塑性樹脂は、再生ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、再生ポリカーボネート樹脂、及び再生芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体からなる群から選択された1種以上を含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2020年10月19日付の韓国特許出願第10-2020-0135221号及びこれに基づいて2021年10月01日付で再出願された韓国特許出願第10-2021-0130783号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関し、より詳細には、ABS系熱可塑性樹脂組成物に再生樹脂を過量含むにもかかわらず、既存の機械的物性及び耐化学性は維持しながら、繰り返し加工による物性の低下が防止されて物性維持率が大きく改善された熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂に代表されるビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体(以下、「ABS系樹脂」という)は、加工性、機械的物性及び外観特性に優れるため、電気・電子製品の部品、自動車、小型玩具、家具、建築資材など広範囲に用いられている。
【0004】
一方、環境への関心が高まるにつれ、二酸化炭素の排出量の抑制のための規制が強化されており、特に、最近はプラスチックの使用量の増加による環境汚染が深刻な問題として台頭しており、米国を中心に再生樹脂の使用を義務化するなど製造段階での規制が強化されている。これによって、製造メーカーは、樹脂成形品などの製造時に再生樹脂を一定含量以上添加しなければならず、再生樹脂の含量によってエコ等級がつけられる。
【0005】
しかし、再生樹脂は既に加工された樹脂であるため、着色剤、滑剤、離型剤などの添加剤を含み、高温の加工工程を経ながら既にその性質が変化してしまい、既存のバージン(VIRGIN)樹脂に比べて衝撃強度、引張強度、耐化学性及び熱安定性が劣り、異物によって外観品質が低下するという問題がある。
【0006】
このような問題を解決するために、再生樹脂を含む組成物にバージン樹脂の含量を一定レベル以上含む方式が試みられた。しかし、これを通じて機械的物性の低下はある程度緩和され得るが、耐化学性は依然として満足できず、射出や押出加工時に表面の異物による外観品質が低下する問題は依然として解決されていない。さらに、加工回数が増えるほど、このような問題はさらに深刻となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0144185号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の従来技術の問題点を解決するために、本発明は、再生樹脂を過量含むにもかかわらず、従来のABS系樹脂固有の機械的物性、耐化学性及び外観品質は維持しながら、繰り返される成形加工に対する物性の低下の問題が改善された熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法及びそれを含んで製造された成形品を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、(A)非再生熱可塑性樹脂20~90重量%及び(B)再生熱可塑性樹脂10~80重量%を含むベース樹脂100重量部と;(C)エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体1~10重量部と;(D)無機顔料0.01~10重量部と;を含み、前記(D)無機顔料は、屈折率が1.65以上であり、平均粒径が10~500nmであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0012】
本発明はまた、(A)非再生熱可塑性樹脂20~90重量%及び(B)再生熱可塑性樹脂10~80重量%を含むベース樹脂100重量部と;(C)エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体1~10重量部と;(D)屈折率が1.65以上である無機顔料0.01~10重量部と;を含み、前記(A)非再生熱可塑性樹脂は、(A-1)非再生ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20~70重量%、及び(A-2)非再生芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体30~80重量%を含み、前記(B)再生熱可塑性樹脂は、再生ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、再生ポリカーボネート樹脂、及び再生芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体からなる群から選択された1種以上を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0013】
本発明はまた、(A)非再生熱可塑性樹脂20~90重量%及び(B)再生熱可塑性樹脂10~80重量%を含むベース樹脂100重量部と;(C)エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体1~10重量部と;(D)無機顔料0.01~10重量部と;を含み、下記数式1で計算される溶融指数維持率が80%以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0014】
[数式1]
溶融指数維持率(%)=[MIn+5/MI]×100
(前記数式1において、MIは、前記熱可塑性樹脂組成物を200~250℃及び250~400rpmの条件で押出加工をn回行った後、ASTM D1238に準拠して220℃、10kgの条件下で測定した溶融指数の値であり、MIn+5は、前記と同じ条件で押出加工をn+5回繰り返して行った後に測定した溶融指数の値を意味し、ここで、nは1~10の整数である。)
【0015】
本発明はまた、(A)非再生熱可塑性樹脂20~90重量%及び(B)再生熱可塑性樹脂10~80重量%を含むベース樹脂100重量部と;(C)エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体1~10重量部と;(D)無機顔料0.01~10重量部と;を含み、下記数式2で計算される衝撃強度維持率が80%以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0016】
[数式2]
衝撃強度維持率(%)=[ImStn+5/ImSt]×100
(前記数式2において、ImStは、前記熱可塑性樹脂組成物を200~250℃及び250~400rpmの条件で押出加工をn回行った後、ASTM D256に準拠して試験片の厚さ1/8”の条件下で測定したアイゾット衝撃強度の値であり、ImStn+5は、前記と同じ条件で押出加工をn+5回繰り返して行った後に測定したアイゾット衝撃強度の値を意味し、ここで、nは1~10の整数である。)
【0017】
また、本発明は、(A)非再生熱可塑性樹脂20~90重量%及び(B)再生熱可塑性樹脂10~80重量%を含むベース樹脂100重量部と、(C)エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体1~10重量部と、(D)無機顔料0.01~10重量部とを含んで、200~280℃で混練及び押出するステップ;を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0018】
前記(D)無機顔料は、好ましくは、屈折率が1.65以上であり、平均粒径が10~500nmであってもよい。
【0019】
また、本発明は、前記熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、再生樹脂を過量含むにもかかわらず、機械的物性、耐化学性及び外観品質に優れ、特に、成形加工工程の繰り返しによる物性の低下が防止され、複数回加工しても優れた物性を示すことができる熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品を提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例及び比較例の耐化学性試験の結果を示す。
図2】本発明の実施例及び比較例の表面異物の発生地点を記録した結果を示す。
図3】本発明の実施例及び比較例の表面異物を光学顕微鏡で観察した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本記載の熱可塑性樹脂組成物を詳細に説明する。
【0023】
本発明者らは、ABS系樹脂組成物に再生樹脂を混合する際に特定の化合物を所定の含量で共に添加する場合、機械的物性及び耐化学性が改善され、繰り返し加工による機械的物性及び外観品質の低下の問題が大きく改善されることを確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するようになった。
【0024】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)非再生熱可塑性樹脂20~90重量%及び(B)再生熱可塑性樹脂10~80重量%を含むベース樹脂100重量部と;(C)エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体1~10重量部と;(D)無機顔料0.01~10重量部と;を含み、前記(D)無機顔料は、屈折率が1.65以上であり、平均粒径が10~500nmであることを特徴とし、この場合、再生樹脂を過量含みながらも、衝撃強度及び引張強度などの機械的強度、成形加工性及び耐化学性に優れると共に、繰り返される成形加工に対する物性維持率に優れるという利点がある。
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂組成物はまた、(A)非再生熱可塑性樹脂20~90重量%及び(B)再生熱可塑性樹脂10~80重量%を含むベース樹脂100重量部と;(C)エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体1~10重量部と;(D)屈折率が1.65以上である無機顔料0.01~10重量部と;を含み、前記(A)非再生熱可塑性樹脂は、(A-1)非再生ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20~70重量%、及び(A-2)非再生芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体30~80重量%を含み、前記(B)再生熱可塑性樹脂は、再生ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、再生ポリカーボネート樹脂、及び再生芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体からなる群から選択された1種以上を含むことを特徴とし、この場合、再生樹脂を過量含みながらも、衝撃強度及び引張強度などの機械的強度、成形加工性及び耐化学性に優れると共に、繰り返される成形加工に対する物性維持率に優れるという利点がある。
【0026】
本発明の熱可塑性樹脂組成物はまた、(A)非再生熱可塑性樹脂20~90重量%及び(B)再生熱可塑性樹脂10~80重量%を含むベース樹脂100重量部と;(C)エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体1~10重量部と;(D)無機顔料0.01~10重量部と;を含み、下記数式1で計算される溶融指数維持率が80%以上であることを特徴とし、この場合、再生樹脂を過量含みながらも、衝撃強度及び引張強度などの機械的強度、成形加工性及び耐化学性に優れると共に、繰り返される成形加工に対する物性維持率に優れるという利点がある。
【0027】
[数式1]
溶融指数維持率(%)=[MIn+5/MI]×100
(前記数式1において、MIは、前記熱可塑性樹脂組成物を押出温度200~250℃及びスクリュー回転速度250~400rpmの条件下で押出加工をn回行った後、ASTM D1238に準拠して220℃、10kgの条件下で測定した溶融指数の値であり、MIn+5は、前記と同じ条件で押出加工をn+5回繰り返して行った後に測定した溶融指数の値を意味し、ここで、nは1~10の整数である。)
【0028】
本発明の熱可塑性樹脂組成物はまた、(A)非再生熱可塑性樹脂20~90重量%及び(B)再生熱可塑性樹脂10~80重量%を含むベース樹脂100重量部と;(C)エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体1~10重量部と;(D)無機顔料0.01~10重量部と;を含み、下記数式2で計算される衝撃強度維持率が80%以上であることを特徴とし、この場合、再生樹脂を過量含みながらも、衝撃強度及び引張強度などの機械的強度、成形加工性及び耐化学性に優れると共に、繰り返される成形加工に対する物性維持率に優れるという利点がある。
【0029】
[数式2]
衝撃強度維持率(%)=[ImStn+5/ImSt]×100
(前記数式2において、ImStは、前記熱可塑性樹脂組成物を押出温度200~250℃及びスクリュー回転速度250~400rpmの条件下で押出加工をn回行った後、ASTM D256に準拠して試験片の厚さ1/8”の条件下で測定したアイゾット衝撃強度の値であり、ImStn+5は、前記と同じ条件で押出加工をn+5回繰り返して行った後に測定したアイゾット衝撃強度の値を意味し、ここで、nは1~10の整数である。)
【0030】
前記数式1のn値と前記数式2のn値は、独立して、同一または異なってもよい。
【0031】
本記載において、(共)重合体の組成比は、前記(共)重合体を構成する単位体の含量を意味するか、または前記(共)重合体の重合時に投入される単位体の含量を意味してもよい。
【0032】
本記載において、再生熱可塑性樹脂は、本発明の定義に従う限り、本発明の属する技術分野で一般的に再生熱可塑性樹脂として認められる場合、特に制限されず、一例として、回収された廃プラスチックから再生された熱可塑性樹脂であり、具体例としては、回収された廃プラスチックから選別、洗浄及び粉砕を経て利用可能な原料の状態で準備されたものを意味する。また、必要に応じて、押出工程を経てペレット状に加工されたものを使用することができ、この場合、追加で精製などの別途の加工が不要であるという利点がある。このような再生熱可塑性樹脂は、1回以上の加工を経たものであるため、着色剤、滑剤、及び/又は離型剤などの添加剤を含み得る。
【0033】
本記載において、非再生熱可塑性樹脂は、前記で定義した再生熱可塑性樹脂と対比されるものであって、熱可塑性樹脂を構成する単量体を重合させて直接製造して準備するか、またはこれに相当する入手可能な製品であってもよい。
【0034】
以下、本記載の熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分を詳細に説明すると、次の通りである。
【0035】
(A)非再生熱可塑性樹脂
前記(A)非再生熱可塑性樹脂は、前記ベース樹脂の総重量に対して20~90重量%含まれ、この場合、機械的物性、成形加工性、耐化学性及び外観品質に優れるという利点がある。前記ベース樹脂の総重量に含まれる前記(A)非再生熱可塑性樹脂の含量は、好ましい一例として20~80重量%、より好ましくは25~75重量%、より一層好ましくは25~70重量%であってもよく、この範囲内で、機械的物性、成形加工性、外観品質及び物性バランスがより優れ得る。
【0036】
前記(A)非再生熱可塑性樹脂は、一例として、(A-1)非再生ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体(以下、‘(A-1)グラフト共重合体’という)20~70重量%、及び(A-2)非再生芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体(以下、‘(A-2)共重合体’という)30~80重量%を含むことができ、この範囲内で、機械的物性、成形加工性、耐化学性及び外観品質がより優れるという利点がある。
【0037】
前記(A)非再生熱可塑性樹脂は、好ましくは、その総重量に対して(A-1)グラフト共重合体20~60重量%及び(A-2)共重合体40~80重量%を含むことができ、より好ましくは、(A-1)グラフト共重合体20~50重量%及び(A-2)共重合体50~80重量%を含むことができる。
【0038】
前記(A-1)グラフト共重合体は、一例として、共役ジエン化合物を含んでなる共役ジエンゴム50~80重量%、ビニルシアン化合物5~20重量%及び芳香族ビニル化合物10~40重量%を含んでなるものであってもよく、この範囲内で、機械的物性、成形加工性、外観品質及び物性バランスに優れるという利点がある。
【0039】
前記(A-1)グラフト共重合体は、好ましい一例として、共役ジエンゴム50~70重量%、ビニルシアン化合物5~15重量%及び芳香族ビニル化合物20~40重量%を含んでなるものであってもよく、より好ましくは、共役ジエンゴム55~65重量%、ビニルシアン化合物10~15重量%及び芳香族ビニル化合物20~30重量%を含んでなるものであってもよく、この範囲内で、耐衝撃性及び物性バランスがより優れるという効果がある。
【0040】
前記(A-1)グラフト共重合体に含まれる共役ジエンゴムの平均粒径は、一例として2,000~5,000Å、好ましくは2,000~4,000Å、より好ましくは2,500~3,500Åであってもよく、この範囲内で、他の物性の低下なしに衝撃強度がより優れるという効果がある。
【0041】
本記載において、共役ジエンゴムの平均粒径は、特に言及がない限り、動的光散乱法(dynamic light scattering)を用いて測定することができ、詳細には、粒度分布分析器(製品名:Nicomp380、製造社:PSS)を用いて、ガウス(Gaussian)モードでインテンシティ(intensity)値で測定する。このとき、具体的な測定例として、サンプルは、ラテックス(TSC35~50wt%)0.1gを脱イオン水又は蒸留水で1,000~5,000倍希釈し、すなわち、強度セットポイント(Intensity Setpoint) 300kHzを大きく外れないように適切に希釈し、ガラス管(glass tube)に入れて準備し、測定方法は、自動希釈(Auto-dilution)してフローセル(flow cell)で測定し、測定モードは、動的光散乱法(dynamic light scattering)/インテンシティ(Intensity) 300KHz/強度荷重ガウス分析(Intensity-weight Gaussian Analysis)とし、設定(setting)値は、温度23℃、測定波長632.8nm、channel width 10μsecとして測定することができる。
【0042】
前記(A-1)グラフト共重合体は、一例としてグラフト率が20~70%、好ましくは20~55%、より好ましくは20~45%であってもよく、この範囲内で、相溶性及び成形加工性を適切に確保すると共に、他の機械的物性とのバランスに優れるという効果がある。
【0043】
本記載において、グラフト率は、グラフト(共)重合体の乾燥粉末0.5gにアセトン30gを加えた後、常温で210rpmで12時間撹拌(SKC-6075、Lab companion社)し、これを遠心分離機(Supra R30、ハンイル科学社)を用いて0℃で18,000rpmで3時間遠心分離して、アセトンに溶けていない不溶分のみを採取した後、強制循環方式で85℃で12時間乾燥(OF-12GW、Lab companion社)させた後の重量を測定し、下記数式3で計算して求めることができる。
【0044】
[数式3]
グラフト率(%)=[グラフトされた単量体の重量(g)/ゴム質の重量(g)]×100
【0045】
前記数式3において、グラフトされた単量体の重量(g)は、グラフト共重合体をアセトンに溶解させ、遠心分離して得た不溶分(gel)の重量からゴム質の重量(g)を引いた重量であり、ゴム質の重量(g)は、グラフト共重合体粉末中の理論上投入されたゴム成分の重量である。
【0046】
前記乾燥は、これ以上重量の変化がなくなるまで行われ得る。
【0047】
前記(A-1)グラフト共重合体に含まれるビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、一例として、重量平均分子量が50,000~200,000g/mol、または65,000~180,000g/molであってもよく、この範囲内で、流動性が適切であるため加工性に優れ、耐衝撃性に優れ得るが、これに限定されるものではない。ここで、前記(A-1)グラフト共重合体に含まれるビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記(A-1)グラフト共重合体の共役ジエンゴムにグラフトされたビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を意味する。
【0048】
本記載において、重量平均分子量は、別途に定義しない限り、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)、waters breeze)を用いて測定することができ、具体例として、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPC(Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を通じて、標準PS(標準ポリスチレン(standard polystyrene))試料に対する相対値として測定することができる。このとき、具体的な測定例として、溶媒:THF、カラム温度:40℃、流速:0.3ml/分、試料の濃度:20mg/ml、注入量:5μl、カラムモデル:1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B Guard(50×4.6mm)、装備名:Agilent 1200シリーズシステム、屈折率検出器(Refractive index detector):Agilent G1362 RID、RI温度:35℃、データの処理:Agilent ChemStation S/W、試験方法(Mn、Mw及びPDI):OECD TG 118の条件で測定することができる。
【0049】
前記(A-1)グラフト共重合体は、一例として、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などを含む公知の重合方法により製造可能であり、好ましくは乳化重合により製造されたものであってもよい。
【0050】
前記(A-1)グラフト共重合体は、一例として、前記グラフト共重合体に含まれる共役ジエンゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の総100重量部を基準として、共役ジエンゴムラテックス50~80重量部(固形分基準)、乳化剤0.1~5重量部、分子量調節剤0.1~3重量部及び開始剤0.05~1重量部からなる混合溶液に、ビニルシアン化合物5~20重量部と芳香族ビニル化合物10~40重量部を含む単量体混合物を連続又は一括投入して重合するステップを含んで製造されたものであってもよい。
【0051】
他の一例として、前記(A-1)グラフト共重合体は、共役ジエンゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の総100重量部を基準として、共役ジエンゴムラテックス50~80重量部(固形分基準)及びイオン交換水60~150重量部に、別途の混合装置で混合されたビニルシアン化合物5~20重量部、芳香族ビニル化合物10~40重量部、イオン交換水10~50重量部、開始剤0.09~1.5重量部、乳化剤0.1~2重量部及び分子量調節剤0.05~1.5重量部を含む混合溶液を65~75℃で2~4時間投入した後、開始剤0.01~0.5重量部を投入し、30分~90分かけて75~80℃に昇温させた後、重合転化率93~99重量%でグラフト重合を終了して製造されてもよく、この場合に、耐衝撃性、機械的強度及び成形加工性に優れるという効果がある。
【0052】
本記載において、重合転化率は、重合終了時まで投入される単量体の総和100重量%を基準として、測定時点まで共重合体に転化された単量体の重量%として定義することができ、前記重合転化率の測定方法は、このような定義に従って測定する重合転化率の測定方法であれば、特に制限されず、具体例として、製造された共重合体ラテックス1.5gを150℃の熱風乾燥機内で15分間乾燥させた後、重量を測定し、下記数式4で総固形分含量(Total Solid Content;TSC)を求め、これを下記数式5に代入して算出することができる。下記数式5は、投入された単量体の総重量が100重量部であることを基準とする。
【0053】
【数1】
【0054】
[数式5]
重合転化率(%)=[総固形分含量(TSC)×(投入された単量体、イオン交換水及び副原料を合わせた総重量)/100]-(単量体及びイオン交換水以外に投入された副原料の重量)
【0055】
前記数式5において、副原料は、開始剤、乳化剤及び分子量調節剤を指し、電解質を使用した場合、電解質を含む。
【0056】
前記共役ジエン化合物は、一例として、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン、クロロプレン及びピペリレンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0057】
前記ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル及びこれらの誘導体からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0058】
前記芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、ρ-メチルスチレン、m-メチルスチレン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t-ブチルスチレン、ο-ブロモスチレン、ρ-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、ο-クロロスチレン、ρ-クロロスチレン、m-クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、フルオロスチレン及びビニルナフタレンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0059】
前記共役ジエンゴムは、好ましい実施例としては、ブタジエン重合体、ブタジエン-スチレン共重合体、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、及びエチレン-プロピレン共重合体からなる群から選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではないことを明示する。
【0060】
本記載において、誘導体は、原化合物の水素原子又は原子団が他の原子又は原子団で置換された化合物であり、一例として、ハロゲン又はアルキル基で置換された化合物を意味する。
【0061】
前記乳化剤は、一例として、アリルアリールスルホネート、アルカリメチルアルキルスルホネート、スルホン化アルキルエステル、脂肪酸石鹸及びロジン酸アルカリ塩からなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合、重合反応の安定性に優れるという効果がある。
【0062】
前記分子量調節剤は、一例として、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン及び四塩化炭素からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはt-ドデシルメルカプタンであってもよい。
【0063】
前記開始剤は、一例として、水溶性過硫酸重合開始剤、脂溶性重合開始剤、または酸化-還元系触媒などを使用することができ、前記水溶性過硫酸重合開始剤としては、一例として、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸アンモニウムからなる群から選択された1種以上であってもよく、前記脂溶性重合開始剤としては、一例として、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、t-ブチルヒドロペルオキシド、パラメタンヒドロペルオキシド及びベンゾイルペルオキシドからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0064】
前記乳化重合により収得されたラテックスは、一例として、硫酸、MgSO、CaClまたはAl(SOなどの凝集剤で凝集した後、熟成、脱水及び乾燥して粉末状態で得ることができる。
【0065】
前記(A-1)グラフト共重合体は、一例として、酸化-還元系触媒をさらに含んで製造されてもよく、前記酸化-還元系触媒は、一例として、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第一鉄、デキストロース、ピロリン酸ナトリウム及び亜硫酸ナトリウムからなる群から選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではなく、一般的にABS系グラフト共重合体の製造時に使用される種類であれば限定されず、必要に応じて選択して使用することができる。
【0066】
本記載で具体的に言及していない電解質などのその他の添加物は、必要に応じて適宜選択することができ、ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体の重合に通常適用される範囲であれば、特に制限されない。
【0067】
上述した記載以外に、グラフト共重合体の製造方法における反応時間、反応温度、圧力、反応物の投入時点などのその他の反応条件は、本発明の属する技術分野で通用されている範囲内であれば、特に制限されず、必要に応じて適宜選択して行うことができる。
【0068】
他の一例として、前記(A-1)グラフト共重合体は、本発明の定義に従う限り、市販の製品を用いることもできる。
【0069】
前記(A-2)共重合体は、一例として、ビニルシアン化合物20~40重量%及び芳香族ビニル化合物60~80重量%を含んでなるものであってもよく、この場合、機械的物性、成形加工性及び耐化学性がより優れるという利点がある。
【0070】
前記(A-2)共重合体は、好ましい一例として、ビニルシアン化合物20~35重量%及び芳香族ビニル化合物65~80重量%、より好ましくは、ビニルシアン化合物23~33重量%及び芳香族ビニル化合物67~77重量%を含んでなるものであってもよく、この範囲内で、耐化学性及び物性バランスがより優れるという効果がある。
【0071】
前記(A-2)共重合体は、一例として重量平均分子量が70,000~200,000g/mol、好ましくは80,000~180,000g/mol、より好ましくは90,000~160,000g/molであってもよく、この範囲内で、耐化学性に優れると共に、加工性及び物性バランスに優れるという効果がある。
【0072】
前記(A-2)共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、エチルスチレン、ο-ブロモスチレン、ρ-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、ο-クロロスチレン、ρ-クロロスチレン、m-クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、フルオロスチレン及びビニルナフタレンからなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくはスチレンであってもよい。
【0073】
前記ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチルアクリロニトリル及びイソプロピルアクリロニトリルからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアクリロニトリルであってもよい。
【0074】
前記(A-2)共重合体は、一例として、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物及びマレイミド系単量体からなる群から選択された1種以上を0~30重量%、好ましくは1~20重量%、より好ましくは5~10重量%さらに含んでなるものであってもよく、このような共単量体が追加されて重合された共重合体の場合、耐熱性及び加工性がより優れるという効果がある。
【0075】
前記不飽和カルボン酸は、一例として、マレイン酸、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選択された1種以上であってもよく、前記不飽和カルボン酸無水物は、一例として、前記不飽和カルボン酸の無水物であってもよく、マレイミド系単量体は、一例として、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基でN置換されたマレイミドであってもよく、具体例としては、N-フェニルマレイミド、マレイミドまたはこれらの混合物であってもよい。
【0076】
前記(A-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、連続塊状重合などの方法を行って製造することができ、特に乳化重合及び懸濁重合を行って製造されたものを使用することが好ましく、本発明の定義に従う限り、市販の製品を用いることもできる。
【0077】
(B)再生熱可塑性樹脂
前記(B)再生熱可塑性樹脂は、前記ベース樹脂の総重量に対して10~80重量%含まれ、この場合、機械的物性、成形加工性、耐化学性及び外観品質に優れるという利点がある。前記ベース樹脂の総重量に含まれる前記(B)再生熱可塑性樹脂の含量は、好ましい一例として20~80重量%、より好ましくは25~75重量%、より一層好ましくは30~75重量%であってもよく、この範囲内で、機械的物性、成形加工性、外観品質及び物性バランスがより優れ得る。
【0078】
前記(B)再生熱可塑性樹脂は、一例として、再生ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体(以下、‘再生ABS系樹脂’という)、再生ポリカーボネート樹脂(以下、‘再生PC系樹脂’という)、及び再生芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体(以下、‘再生SAN系樹脂’という)からなる群から選択された1種以上を含むことができ、この場合、機械的物性、成形加工性、耐化学性及び外観品質に優れるという利点があるが、これに限定されるものではない。
【0079】
前記再生ABS系樹脂及び再生SAN系樹脂をなす単位体は、好ましい一例として、前記(A)非再生熱可塑性樹脂で言及されたものと同じ範囲内で選択されてもよい。
【0080】
前記再生PC系樹脂の種類は、特に制限しないが、一例として、ビスフェノール系モノマーとカーボネート前駆体を含んで重合された樹脂であってもよい。
【0081】
前記ビスフェノール系モノマーは、一例として、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA;BPA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ;BPZ)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、及びα,ω-ビス[3-(ο-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0082】
前記カーボネート前駆体は、一例として、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、カルボニルクロライド(ホスゲン)、トリホスゲン、ジホスゲン、カルボニルブロマイド及びビスハロホルメートからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0083】
前記再生PC系樹脂は、一例として、線状ポリカーボネート樹脂、分岐状(branched)ポリカーボネート樹脂及びポリエステルカーボネート共重合体樹脂からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは線状ポリカーボネート樹脂であってもよく、この場合、流動性が向上して外観特性がより優れるという効果がある。
【0084】
前記線状ポリカーボネート樹脂の具体例としては、ビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0085】
前記(B)再生熱可塑性樹脂は、一例として、再生ポリエチレン樹脂、再生ポリプロピレン樹脂、再生ポリエステル樹脂、再生ポリスチレン系樹脂、再生ポリアミド樹脂及び再生ポリ塩化ビニル樹脂からなる群から選択された1種以上をさらに含むことができ、この場合、より様々な再生樹脂を使用して、物性に優れた組成物を提供するという利点がある。
【0086】
前記(B)再生熱可塑性樹脂は、一例として、重量平均分子量が10,000~1,000,000g/mol、15,000~900,000g/mol、または20,000~900,000g/molであるものを使用することができ、この範囲内で、衝撃強度などの機械的物性に優れると共に、外観品質に優れ得るが、これに限定されるものではない。
【0087】
前記(B)再生熱可塑性樹脂は、一例としてガラス転移温度が60~180℃であってもよく、好ましくは63~170℃、より好ましくは65~160℃であってもよく、この範囲内で、機械的物性及び成形加工性がより優れるという効果がある。
【0088】
本記載において、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM D 3418に準拠して、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry;DSC、TAインスツルメント社製、Q100)を用いて10℃/分の昇温速度で測定することができる。
【0089】
前記(B)再生熱可塑性樹脂は、一例として、本発明の定義に従う限り、市販の製品を用いることもできる。
【0090】
(C)エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体
前記(C)エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体(以下、‘(C)共重合体’という)は、前記ベース樹脂100重量部に対して1~10重量部含まれてもよく、好ましくは1~8重量部、より好ましくは1~6重量部含まれてもよく、この場合、耐化学性及び外観品質がより優れ、繰り返される成形加工に対する物性維持率に優れるという利点がある。特に好ましい一例として、前記(C)共重合体は、前記ベース樹脂100重量部に対して1~5重量部、より好ましくは1~4重量部、他の好ましい一例として2~4重量部含まれてもよく、この場合、耐化学性及び外観品質がより優れ、繰り返される成形加工に対する物性維持率に優れ、成形品の断面で剥離が発生しないという利点がある。
【0091】
前記(C)共重合体は、好ましい一例として、結晶性単位を50重量%以上含むことができ、より好ましくは60~95重量%、より一層好ましくは65~90重量%含むことができ、この範囲内で、耐化学性及び外観品質に優れ、特に、繰り返される成形加工に対する物性維持率がより優れるという利点がある。ここで、前記結晶性単位は、結晶をなし得る単量体由来の単位を意味するもので、具体的にはエチレン化合物由来の単位を指す。
【0092】
前記(C)共重合体は、一例として、エチレン化合物50~95重量%及びビニルアセテート化合物5~50重量%を含んでなるものであってもよく、好ましくは、エチレン化合物70~95重量%及びビニルアセテート化合物5~30重量%、より好ましくは、エチレン化合物75~95重量%及びビニルアセテート化合物5~25重量%、より一層好ましくは、エチレン化合物80~90重量%及びビニルアセテート化合物10~20重量%を含んでなるものであってもよく、この範囲内で、耐化学性、外観品質、及び繰り返される成形加工に対する物性維持率がより優れるという利点がある。他の好ましい一例として、前記(C)共重合体は、エチレン化合物60~85重量%及びビニルアセテート化合物15~40重量%、より好ましくは、エチレン化合物60~80重量%及びビニルアセテート化合物20~40重量%、より一層好ましくは、エチレン化合物65~80重量%及びビニルアセテート化合物20~35重量%を含んでなるものであってもよく、この範囲内で、衝撃強度及び外観品質がより優れると共に、繰り返される成形加工に対する物性維持率がより優れるという利点がある。
【0093】
前記エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体の製造方法は、本発明の属する技術分野で通常用いられる製造方法であれば、特に制限されない。
【0094】
前記(C)共重合体は、一例として、エチレン化合物及びビニルアセテート化合物の合計100重量部を基準として、反応器にエチレン化合物50~95重量部、ビニルアセテート化合物5~50重量部、開始剤0.001~0.1重量部を投入して自由ラジカル重合させるステップを含んで製造されてもよい。
【0095】
前記(C)共重合体の重合反応は、一例として、500bar以上の圧力及び130~300℃の温度の条件下で行われてもよく、好ましくは、700~5,000bar及び150~300℃、より好ましくは、800~4,000bar及び150~250℃の条件下で行われてもよく、この範囲内で、高い重合転化率を得ることができ、重合反応の効率がより優れるという利点がある。
【0096】
本記載で具体的に言及していない開始剤や連鎖移動剤などのその他の添加物は、必要に応じて適宜選択することができ、エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体の製造に通常適用される範囲であれば、特に制限されない。
【0097】
一例として、前記(C)共重合体は、本発明の定義に従う限り、市販の製品を用いることもできる。
【0098】
前記(C)共重合体は、一例として、重量平均分子量が10,000~800,000g/mol、または30,000~700,000g/molであってもよく、この範囲内で、成形加工性及び耐化学性がより優れ得るが、これに限定されるものではない。
【0099】
前記(C)共重合体は、一例として、分子量分布度(PDI)が1.5~3.0であるものを使用することができ、好ましくは2.0~2.5であるものを使用することができ、この範囲内で、成形加工性及び外観品質がより優れ得るが、これに限定されるものではない。
【0100】
本記載において、分子量分布度(PDI)はM/Mとして定義され、ここで、M及びMは、それぞれ、重量平均分子量及び数平均分子量を意味する。
【0101】
前記(C)共重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、本発明の属する技術分野で通常行われる方法により測定することができ、具体的な一例として、溶出液としてTCB(トリクロロベンゼン)溶媒を用い、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)、waters breeze)を通じて、標準PS(standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。このとき、具体的な測定例として、溶媒:TCB+0.015重量%のBHT(ブチル化ヒドロキシトルエン(Butylated hydroxytoluene))、カラム温度:160℃、流速:1.0ml/分、試料の濃度:1.0mg/ml、注入量:200μl、カラムモデル:3×PLgel 10μm MIXED-B(300×7.5mm)、装備名:Agilent PL-PGC 220、屈折率検出器(Refractive index detector):Agilent G1362 RID、RI温度:160℃、データの処理:Agilent ChemStation S/W、試験方法(Mn、Mw及びPDI):OECD TG 118の条件で測定することができる。
【0102】
前記(C)共重合体は、一例として、ASTM D1238に準拠して190℃、2.16kgの条件下で測定した溶融指数が2~50g/10分であってもよく、好ましくは15~30g/10分であってもよく、この範囲内で、他の物性の低下なしに、外観品質がより優れるという利点がある。
【0103】
(D)無機顔料
前記(D)無機顔料は、前記ベース樹脂100重量部に対して、一例として0.01~10重量部含まれてもよく、好ましくは0.05~10重量部、より好ましくは0.1~10重量部、さらに好ましくは0.5~7重量部、より一層好ましくは1~5重量部、よりさらに好ましくは1~4重量部含まれてもよく、この範囲内で、他の物性の低下なしに、機械的物性及び外観品質がより優れるという利点がある。
【0104】
前記(D)無機顔料は、屈折率が1.65以上であるものを用いることが、外観品質の改善の観点でより有利である。前記(D)無機顔料の屈折率は、好ましくは1.65~3.0、より好ましくは1.7~2.8、よりさらに好ましくは1.75~2.75であるものを用いることができる。
【0105】
本記載において、無機顔料の屈折率は、ASTM D 542-50に準拠してREICHERT MARK 2 PLUSにより、25℃で測定することができる。
【0106】
前記(D)無機顔料は、平均粒径が10~500nmであるものを用いることが、機械的物性及び外観品質の改善の観点でより有利である。前記(D)無機顔料の平均粒径は、好ましくは50~400nm、より好ましくは50~300nmであるものを用いることができる。
【0107】
本記載において、無機顔料の平均粒径は、特に特定しない限り、BETにより測定された値であり得、詳細には、窒素ガス吸着法を用いて、BET分析装備(Surface Area and Porosity Analyzer ASAP 2020、Micromeritics社)を用いて測定することができる。
【0108】
前記(D)無機顔料は、一例として、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、カーボンブラック及びホワイトカーボンからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、二酸化チタン、酸化亜鉛及びカーボンブラックからなる群から選択された1種以上、より好ましくは、二酸化チタン及びカーボンブラックからなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合、他の物性の低下なしに、外観品質がより優れるという利点がある。
【0109】
熱可塑性樹脂組成物
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)非再生熱可塑性樹脂20~90重量%及び(B)再生熱可塑性樹脂10~80重量%を含むベース樹脂100重量部と、(C)エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体1~10重量部と、(D)無機顔料0.01~10重量部とを含み、この場合、従来のABS系樹脂の機械的物性、成形加工性及び耐化学性は維持しながら、成形加工の繰り返しによる物性の低下が防止されて物性維持率に優れるという効果がある。
【0110】
前記(D)無機顔料は、屈折率が1.65以上であり、平均粒径が10~500nmであるものを用いることが好ましい。
【0111】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、下記数式1で計算される溶融指数維持率が80%以上であってもよく、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上であってもよく、このように、押出加工などの高温の成形工程を繰り返して行っても、前記のように物性維持率に優れるため、品質の均一化にさらに有利であり、機械的物性、耐化学性及び外観品質に優れた再生樹脂組成物を提供することができる。
【0112】
[数式1]
溶融指数維持率(%)=[MIn+5/MI]×100
(前記数式1において、MIは、前記熱可塑性樹脂組成物を200~250℃及び250~400rpmの条件で押出加工をn回行った後、ASTM D1238に準拠して220℃、10kgの条件下で測定した溶融指数の値(g/10分)であり、MIn+5は、前記と同じ条件で押出加工をn+5回繰り返して行った後に測定した溶融指数の値(g/10分)を意味し、ここで、nは1~10の整数である。)
【0113】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、下記数式2で計算される衝撃強度維持率が80%以上であってもよく、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上であってもよく、このように、押出加工などの高温の成形工程を繰り返して行っても、前記のように物性維持率に優れるため、品質の均一化にさらに有利であり、機械的物性、耐化学性及び外観品質に優れた再生樹脂組成物を提供することができる。
【0114】
[数式2]
衝撃強度維持率(%)=[ImStn+5/ImSt]×100
(前記数式2において、ImStは、前記熱可塑性樹脂組成物を200~250℃及び250~400rpmの条件で押出加工をn回行った後、ASTM D256に準拠して試験片の厚さ1/8”の条件下で測定したアイゾット衝撃強度の値(kgf・cm/cm)であり、ImStn+5は、前記と同じ条件で押出加工をn+5回繰り返して行った後に測定したアイゾット衝撃強度の値(kgf・cm/cm)を意味し、ここで、nは1~10の整数である。)
【0115】
前記数式1及び数式2において、nは、独立して、0~10、0~7、0~5、または0~3であってもよく、好ましい一例としては、1~8、1~6、1~5、または1~4であってもよい。
【0116】
本記載の熱可塑性樹脂組成物は、前記のように組成比を特定の範囲に調節することによって、再生樹脂を過量適用するにもかかわらず、機械的物性、耐化学性及び外観品質が大きく改善されるだけでなく、押出などの高温の成形加工を5回以上繰り返して行っても、物性の低下が防止されて、再生樹脂の使用量及び再生樹脂の再使用回数を大きく向上させることができる。
【0117】
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記特定された組成比の範囲内で、一例として、200mm×10.0mm×3.2mmのサイズの試験片を、1%の応力を有する曲率ジグに固定し、Nanox洗剤1ccを塗布した後、試験片の表面に直径3mm以上のクラックが発生する時間として測定される耐化学性(Environmental Stress-Cracking Resistance、ESCR)が20時間以上であって、耐化学性に優れるという効果がある。耐化学性が前記範囲を満たすとき、一例として、塗装や蒸着などの後加工工程で有機溶媒及び洗剤の使用によるクラックの発生を防止することができ、他の一例としては、車両のエアベント部品として使用時に、車両用芳香剤などの使用によるクラックの発生を防止することができるため、様々な分野に適用することができ、使用中にも製品の変質を防止する効果がある。
【0118】
本記載において、耐化学性は、具体的な一例として、液状タイプのNanox洗剤を用いて23℃の温度下で測定することができる。
【0119】
Nanox洗剤は、一般的に使用される家庭用洗濯洗剤に比べて高濃縮洗剤として広く知られている洗剤であって、家庭用洗濯洗剤の場合、界面活性剤の濃度が一般的に約20~30重量%であるのに反して、Nanox洗剤は50~60重量%であって、界面活性剤の濃度が非常に高いため、洗浄力が強いものと知られている。しかし、Nanox洗剤を、一例として一般の洗濯機に使用する場合、洗濯機の内部のプラスチック(熱可塑性樹脂)素材がNanox洗剤と直接的に当たる部分でクラックが発生するなど、家電製品に主に使用されるプラスチック素材に対する化学的劣化作用を引き起こすことがあり、ひどい場合、故障をもたらすという問題がある。本記載の熱可塑性樹脂組成物は、一例として、前記のように、Nanox洗剤に対する耐化学性に優れるという利点があり、これを通じて、洗濯機などの家電製品の素材に適用して使用する場合、長期間耐久性維持率に優れるため、製品の寿命を向上させるという利点がある。特に、洗濯機、食器洗い機などの内装材として使用する場合、より様々な洗剤を使用できるという利点がある。
【0120】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D1238に準拠して220℃、10kgの条件下で測定した溶融指数が15.0g/10分以上であってもよく、好ましくは15.0~40g/10分、より好ましくは17.0~40g/10分、より一層好ましくは20~38g/10分であってもよく、この範囲内で、他の物性の低下なしに、成形加工性及び外観品質がより優れるという効果がある。
【0121】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D256に準拠して、厚さ1/8”の試験片を用いて測定したアイゾット衝撃強度が17kgf・cm/cm以上であってもよく、好ましくは17~50kgf・cm/cm、より好ましくは20~45kgf・cm/cmであってもよく、この範囲内で、他の物性の低下なしに、機械的強度に優れるという効果がある。
【0122】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D638に準拠して、厚さ1/8”の試験片を用いて引張速度50mm/分の条件下で測定した引張強度が380kg/cm以上であってもよく、好ましくは380~500kg/cm、より好ましくは400~480kg/cmであってもよく、この範囲内で、他の物性の低下なしに、機械的強度に優れるという効果がある。
【0123】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)非再生熱可塑性樹脂20~90重量%及び(B)再生熱可塑性樹脂10~80重量%を含むベース樹脂100重量部と;(C)エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体1~10重量部と;(D)無機顔料0.01~10重量部と;を含んで、200~280℃で混練及び押出するステップを含んで製造されてもよい。この場合、再生樹脂を過量含むにもかかわらず、既存のABS系樹脂固有の物性は維持しながら、外観特性及び繰り返される成形加工に対する物性維持率がいずれも優れるという効果がある。
【0124】
前記(D)無機顔料は、屈折率が1.65以上であり、平均粒径が10~500nmであるものを用いることが好ましい。
【0125】
前記混練及び押出するステップは、一例として、温度及び押出機のスクリュー回転速度が、それぞれ200~280℃及び250~600rpm、好ましくは210~250℃及び300~550rpm下で行われてもよく、この場合、機械的物性、耐化学性、耐熱性及び外観品質に優れるという効果がある。
【0126】
前記混練及び押出するステップは、一例として、一軸押出機、二軸押出機及びバンバリーミキサーからなる群から選択された1種以上を用いて行われてもよく、組成物を均一に混合した後、押出して、一例としてペレット状の熱可塑性樹脂組成物を収得することができ、この場合、機械的物性の低下及び耐熱性の低下が発生することを防止し、外観品質に優れるという効果がある。
【0127】
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記混練及び押出させる過程において、必要に応じて選択的に滑剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、染料、着色剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、加工助剤、相溶化剤、金属不活性化剤、難燃剤、煙抑制剤、滴下防止剤、発泡剤、可塑剤、補強剤、充填剤、艶消し剤、耐摩擦剤及び耐摩耗剤からなる群から選択された1種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0128】
前記添加剤は、前記(A)非再生熱可塑性樹脂、(B)再生熱可塑性樹脂、(C)共重合体及び(D)無機顔料の合計100重量部を基準として、0.01~20重量部、好ましくは0.05~10重量部、0.05~5重量部、または0.05~3重量部さらに含むことができ、この範囲内で、前記熱可塑性樹脂組成物本来の物性を低下させないながらも、必要な物性が良好に実現されるという効果がある。
【0129】
前記滑剤は、一例として、エチレンビスステアロアミド、酸化ポリエチレンワックス、ステアリン酸マグネシウム、カルシウムステアルアミド、ステアリン酸及びシリコーンオイルから選択された1種以上であってもよいが、これに限定されない。
【0130】
前記シリコーンオイルは、一例として、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロゲンシリコーンオイル、エステル変性シリコーンオイル、ヒドロキシシリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、ビニルシリコーンオイル及びシリコーンアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0131】
前記酸化防止剤は、一例として、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0132】
前記帯電防止剤は、一例として、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤などを1種以上用いることができ、これに限定されるものではないことを明示する。
【0133】
前記離型剤は、一例として、グリセリンステアレート、ポリエチレンテトラステアレートなどから選択された1種以上を用いることができ、これに限定されるものではないことを明示する。
【0134】
成形品
本発明の成形品は、本記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とし、この場合、再生樹脂を含んで製造されたにもかかわらず、機械的物性、成形加工性、耐化学性及び外観品質に優れると共に、繰り返される成形加工に対する物性維持率に優れるという効果がある。
【0135】
前記成形品は、一例として、前記熱可塑性樹脂組成物またはそのペレットを射出加工して製造することができる。
【0136】
前記射出加工は、一例として、射出温度220~280℃及び保圧10~200barの射出条件下で行われてもよい。このとき、金型温度は、一例として50~120℃、好ましくは55~100℃であってもよい。
【0137】
前記成形品は、機械的強度、外観品質及び耐化学性に優れるため、一例として、家電やOA機器などの電子製品のハウジング及び部品などに使用することができる。
【0138】
前記成形品は、一例として、光学顕微鏡を通じて表面で観測される直径100μm以上の異物の個数が15個/100cm未満、好ましくは10個/100cm以下、より好ましくは8個/100cm以下、より一層好ましくは7個/100cm以下であってもよく、この範囲内で、外観品質に優れながらも、物性バランスに優れるという利点がある。
【0139】
本記載において、成形品の異物は、厚さが3mmであり、横及び縦がそれぞれ10cm(観測面積100cm)である試験片を100倍の倍率で光学顕微鏡(OM)を用いて観測する際に、目視で確認される直径100μm以上の異色異物の個数を観測して求めることができる。前記成形品の異物は、好ましい一例として3回以上、具体的な一例として5回観測した値の平均値で示すことができる。
【0140】
前記成形品は、本記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことによって、従来の再生樹脂組成物で製造された成形品に比べて、異物の発生量が大幅に減少するだけでなく、異物が成形品の表面に移行(migration)する現象を最小化する異物遮蔽効果に優れるため、異物が存在しても目立ちにくく、外観品質がさらに優れるという効果がある。
【0141】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0142】
[実施例]
下記の実施例、比較例及び参照例で使用された物質は、次の通りである。
【0143】
(A-1)ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体:共役ジエン化合物を含んでなる共役ジエンゴムの平均粒径が3,200Åであり、前記共役ジエンゴムの含量が60重量%であるABSグラフト共重合体(LG化学社のDP270)
(A-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体:アクリロニトリル由来の単位23重量%及びスチレン由来の単位77重量%であるSAN樹脂(重量平均分子量110,000g/mol;LG化学社の83SF)
(B-1)再生ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体:溶融指数(220℃、10kg)が22g/10分であり、色差計(機器名Ci7860、X-Rite社)で測定したカラーL値*が31である再生ABS樹脂(CN Tech Korea社のA204)
(B-2)再生ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体:溶融指数(220℃、10kg)が16g/10分であり、色差計(機器名Ci7860、X-Rite社)で測定したカラーL値*が85である再生ABS樹脂(CN Tech Korea社のA205LC)
(B-3)再生芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体:溶融指数(220℃、10kg)が37g/10分である再生SAN樹脂(CN Tech Korea社のS601)
(B-4)再生ポリカーボネート樹脂:溶融指数(300℃、1.2kg)が20g/10分であるビスフェノールA型再生ポリカーボネート樹脂(Easychem社のPC PW 20HT)
(C-1)エチレン化合物-ビニルアセテート化合物共重合体:溶融指数(190℃、2.16kg)が25g/10分であり、エチレン化合物由来の単位72重量%及びビニルアセテート化合物由来の単位28重量%を含んでなるEVA樹脂(LG化学社のEVEA28025)
(C-2)エチレン化合物-メチルアクリレート化合物共重合体:溶融指数(190℃、2.16kg)が2g/10分であり、エチレン化合物由来の単位76重量%及びメチルアクリレート化合物由来の単位24重量%を含んでなるEMA樹脂(Dupont社のElvaloy AC 1224)
(D-1)無機顔料:屈折率2.73であり、平均粒径250nmである二酸化チタン(Dupont社のR350)
(D-2)無機顔料:屈折率1.75であり、平均粒径58nmであるカーボンブラック(Orion Engineered Carbons社のHIBLACK170)
(D-3)無機顔料:屈折率1.46であり、平均粒径45μmである珪藻土(Dong-Sin社のSiOn HO、325mesh)
【0144】
*カラーL値:CIE1976 L*a*b*表色系に準拠した色座標のL値を意味するもので、Lは、0~100の値を有し、0に近いほど黒色を示し、100に近いほど白色を示す。
【0145】
実施例1~7、比較例1~11及び参照例
(A-1)非再生グラフト共重合体;(A-2)非再生共重合体;(B-1)~(B-4)の再生熱可塑性樹脂;(C-1)又は(C-2)共重合体;及び(D-1)又は(D-2)無機顔料;を、下記の表1及び表2に示された含量でスーパーミキサー(super mixer)を用いて混合し、二軸押出機(twin-screw extruder、スクリュー直径26mm、L/D=40)で押出温度230℃及びスクリュー回転速度320rpmの押出条件で押出してペレット状に製造した。
【0146】
製造されたペレット状の熱可塑性樹脂組成物を80℃で4時間以上乾燥させた後、射出機で射出温度240℃、金型温度60℃及び射出速度30mm/secの条件下で射出成形して試験片を製造し、これを常温(20~26℃)で48時間以上放置して製造された試験片をもって初期物性を測定した。
【0147】
また、前記製造されたペレットを前記と同じ押出条件下で押出工程を追加で5回繰り返して行って総6回の押出工程を経たペレットを製造した後、これを前記と同じ射出条件下で射出成形し、これを常温(20~26℃)で48時間以上放置して製造された試験片をもって物性維持率を測定した。
【0148】
[試験例]
前記実施例、比較例及び参照例で製造された試験片の物性を下記の方法で測定し、その結果を下記の表2に示した。
【0149】
*流動指数(melt flow index、g/10分):ASTM D1238に準拠して220℃、10kgの荷重下で10分間測定した。
【0150】
*アイゾット衝撃強度(kgf・cm/cm):ASTM D256に準拠して、厚さ1/8”の試験片を用いて23℃の温度下で測定した。
【0151】
*引張強度(kg/cm):ASTM D638に準拠して、厚さ1/8”の試験片を用いて試験速度50mm/分及び23℃の温度下で測定した。
【0152】
*表面異物(個/100cm):製造されたペレットで厚さ3mm、横及び縦がそれぞれ10cmである試験片を準備し、試験片の表面を光学顕微鏡(機器名:VHX-5000、KEYENCE CORPORATION社)で倍率×100下で5回観測し、直径100μm以上の異色異物の個数を平均値で測定した。
【0153】
*耐化学性(h):製造されたペレットで200mm×10.0mm×3.2mmのサイズの試験片を準備し、1%の応力を有する曲率ジグ(jig)に固定し、Nanox洗剤(LION社)1ccを塗布した後、試験片の表面に3mmのサイズのクラックが発生する時間(hour)を測定した。
【0154】
*剥離:200mm×10.0mm×3.2mmのサイズの試験片の上面中央に幅方向にカッターナイフを用いて表面に切り込みを入れて折った後、剥離の発生の有無を目視で確認し、剥離の発生の程度によって×、△、○で評価した。このとき、剥離が発生する場合、剥離されて浮き上がった薄皮を手で引っ張って容易に剥がれるか否かを観察した。(×:剥離の発生がない、△:断面の一部に剥離が観察されるが、薄皮が容易に剥がれない、○:断面に多数の剥離が観察され、薄皮が容易に剥がれる)
【0155】
*物性維持率:それぞれの物性に対して、押出工程を1回経た後の物性(初期物性)の測定値に対する、押出工程を5回追加して総6回の押出工程を経た後の物性(押出を5回追加した後の物性)の測定値をパーセンテージ(%)で表した。
【0156】
より具体的には、各物性測定値により下記数式Aを用いて計算した。
【0157】
[数式A]
物性維持率(%)=[(押出を5回追加した後の物性)/(初期物性)]×100
【0158】
前記数式Aにおいて、前記物性は、流動指数、衝撃強度または引張強度であってもよい。
【0159】
他の一例として、物性維持率は、前記数式1及び数式2を用いて計算することもできる。
【0160】
【表1】
【0161】
【表2】
【0162】
前記表1及び表2に示したように、本発明によって製造された実施例1~7の場合、本発明の範囲を外れた比較例1~11と比較して、流動性、衝撃強度、引張強度、耐化学性及び剥離特性に優れ、表面で観察される異物の数も半分以上減少した結果を示し、特に押出工程を追加で5回繰り返して行った後にも、初期物性に対する物性維持率が大きく改善されたことが確認できた。さらに、再生樹脂を適用していない参照例1と比較しても、比較例1~11に比べて再生樹脂の適用による物性の低下が大きく改善されたことが確認できた。
【0163】
また、実施例3の場合、再生樹脂の総含量が75重量部と高いにもかかわらず、機械的物性、耐化学性及び異物の個数が著しく改善されただけでなく、成形加工に対する物性維持率も大きく改善された結果を示し、実施例6の場合には、無機顔料の含量が7重量部と高いにもかかわらず、無機顔料を過量含むことによる物性の低下が大きく改善されたことが確認できた。さらに、実施例の1~7の場合、剥離特性も優れるものと示され、特に実施例1~6では、剥離が全く発生せず、剥離特性がさらに優れることが確認できた。
【0164】
下記の図1は、本発明の実施例及び比較例の耐化学性試験の結果を示すもので、試験片の表面にNanox洗剤を塗布した後、38時間が経過した時点で撮影した写真である。下記の図1を参照すると、本発明の実施例の場合、洗剤を塗布した後、38時間が経過するまでクラックが観察されなかった反面、比較例の場合、クラックが目視ではっきりと観察される結果を示しており、本発明によって製造された実施例の場合、耐化学性が大きく改善されたことを確認することができる。
【0165】
下記の図2は、本発明の実施例及び比較例の表面異物の発生地点を記録した結果を示し、下記の図3は、本発明の実施例及び比較例の表面異物を光学顕微鏡で観察した結果を示す。下記の図2及び図3を参照すると、本発明によって製造された実施例の場合、比較例に比べて異物の発生数が著しく減少しただけでなく、異物遮蔽効果に優れるので、異物が発生しても異物がぼやけて観察され、外観品質が大きく改善されたことを確認することができる。
図1
図2
図3