(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】窒化物蛍光体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 11/59 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
C09K11/59
(21)【出願番号】P 2023066924
(22)【出願日】2023-04-17
(62)【分割の表示】P 2019171370の分割
【原出願日】2019-09-20
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木下 晋平
(72)【発明者】
【氏名】細川 昌治
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-59071(JP,A)
【文献】特開2018-2837(JP,A)
【文献】特開2013-185011(JP,A)
【文献】特開2009-173905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表される組成を有し、発光スペクトルにおける発光ピーク波長が575nm以上600nm以下の範囲内にある、窒化物蛍光体。
(Ba
vSr
wEu
x)
2Si
5N
8-y
(式中、v、w、x、yは、0.800≦v≦0.995、0≦w≦0.120、0.005≦x≦0.02、0.9<v+w+x≦1.0、0≦y≦0.5を満たす数である。)
【請求項2】
レーザー回折散乱式粒度分布測定法による窒化物蛍光体の体積平均粒径が、20.0μm以上35.0μm以下である、請求項1に記載の窒化物蛍光体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の窒化物蛍光体と、発光ピーク波長が、350nm以上500nm以下の範囲内にある発光素子とを有する発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物蛍光体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light Emitting Diode:以下「LED」という。)と蛍光体とを組み合わせた発光装置は、照明装置、液晶表示装置のバックライト、車載用光源等へと盛んに応用されており、普及が進んでいる。このような発光装置から赤色を含む光を発光させるために、赤色を含む光を発する蛍光体として、570nm以上670nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する蛍光体が求められている。このような蛍光体として、例えば、特許文献1には、(Ba,Sr,Ca)2Si5N8を母体結晶とし、賦活元素としてユウロピウムを用いた窒化物蛍光体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示される組成の窒化物蛍光体は、比較的発光スペクトルの半値幅が広い。この窒化物蛍光体を車載用の発光装置に使用しようとする場合、色純度の更なる改善が求められる。
そこで、本発明の一実施態様は、発光スペクトルの半値幅が狭い窒化物蛍光体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を包含する。
下記式で表される組成を有し、発光スペクトルにおける発光ピーク波長が575nm以上600nm以下の範囲内にあり、半値幅が64nm以上82nm以下である、窒化物蛍光体。
(BavSrwEux)2Si5N8-y
(式中、v、w、x、yは、0.800≦v≦0.995、0≦w≦0.120、0.005≦x≦0.02、0.9<v+w+x≦1.0、0≦y≦0.5を満たす数である。)
【0006】
BaおよびSrを含む第一の化合物と、Euを含む化合物と、Siを含む化合物と、を、窒素を含む雰囲気中で熱処理して原料焼成物を得る工程と、上記原料焼成物と、Baを含む化合物と、Siを含む化合物と、Euを含む化合物と、必要に応じてSrを含む第二の化合物と、を、窒素を含む雰囲気中で熱処理して窒化物蛍光体を得る工程とを含み、上記原料焼成物を得る工程における上記原料焼成物に含有させる上記第一の化合物の合計の仕込みモル量に対するBaの仕込みモル量の比(B1)が、0.5以上0.7未満であり、上記窒化物蛍光体を得る工程後における上記窒化物蛍光体に含有させる上記第一の化合物の合計の仕込みモル量中のBaのモル量の比(B2)が、0.9以上1.0未満である、窒化物蛍光体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、発光スペクトルの半値幅が狭い窒化物蛍光体及び製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例と比較例にかかる蛍光体の発光スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る窒化物蛍光体及びその製造方法を実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、窒化物蛍光体及び窒化物蛍光体の製造方法を例示するものであって、本発明は、以下の窒化物蛍光体及び窒化物蛍光体の製造方法に限定されない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。
【0010】
窒化物蛍光体の製造方法
本発明の一実施形態に係る窒化物蛍光体を得るための製造方法は、少なくとも以下の(1)および(2)の工程を含む。(1)Ba及びSrを含む第一の化合物と、Euを含む化合物と、Siを含む化合物とを、窒素を含む雰囲気中で熱処理して原料焼成物を得る工程、(2)上記原料焼成物と、Baを含む化合物と、Siを含む化合物と、Euを含む化合物と、必要に応じてSrを含む第二の化合物を、窒素を含む雰囲気中で熱処理して窒化物蛍光体を得る工程。さらに、上記原料焼成物を得る工程において、上記原料焼成物に含有させるBa及びSrの合計の仕込みモル量に対するBaの仕込みモル量の比が、上記窒化物蛍光体を得る工程における上記窒化物蛍光体に含有させるBa及びSrの合計の仕込みモル量に対するBaの仕込みモル量の比よりも小さい。
【0011】
原料焼成物を得る工程
原料焼成物を得る工程では、Ba及びSrを含む第一の化合物と、Euを含む化合物と、Siを含む化合物とを、窒素を含む雰囲気中で熱処理して原料焼成物を得る。
【0012】
本発明の一実施形態の窒化物蛍光体の製造方法は、原料焼成物を得るために含有させるBa及びSrの合計の仕込みモル量に対するBaの仕込みモル量の比(B1)(以下、「Baの仕込みモル量の比(B1)」と称する場合がある。)が、目的とする組成の窒化物蛍光体を得るために含有させるBa及びSrの合計の仕込みモル量に対するBaの仕込みモル量の比(B2)(以下、「Baの仕込みモル量の比(B2)」)と称する場合がある。)がよりも小さくなるように原料を混合する。
Baの仕込みモル量の比(B1)が、Baの仕込みモル量の比(B2)より小さいことにより、原料焼成物は、反応性高く、結晶成長が進んだ状態で得られており、粒径が大きく、粒子形状が良好である。
Baは、原料混合物中の他の元素よりも高温で飛散しやすい傾向がある。また、Baの反応性は、他の元素よりも反応性が低い傾向がある。このようなBaの特性のため、従来の製造方法で得られたBaを比較的多く含む窒化物蛍光体は、粒子サイズが不揃となる傾向がある。このような窒化物蛍光体は、分級等により粒子サイズをある程度揃えたとしても、粒子中には、微細粒子が凝集した二次粒子が含まれていたり、粒径が大きい粒子に微粒子が付着したりする粒子が含まれる場合がある。
【0013】
本発明の一実施形態の窒化物蛍光体の製造方法は、目的の組成を有する最終的に得ようとする窒化物蛍光体とは異なる組成を有する原料焼成物を予め製造する。Baの仕込みモル量の比(B1)は、Baの仕込みモル量の比(B2)よりも小さい。このように原料焼成物は、Baのモル比を調節して得ているため、粒径が大きく、粒子形状も良好である。この原料焼成物と、目的とする組成となるように他の原料と混合して再度焼成を行うことで、最終的な窒化物蛍光体を得る。原料焼成物は元々、粒径が大きく、粒子形状も良好なので、目的とする組成の窒化物蛍光体も、高い収率で粒径が大きく、粒子形状も良好となる。
本明細書において、窒化物蛍光体の粒子形状が良好であるとは、微細粒子が凝集した二次粒子の含有量が少なく、一次粒子の含有量が多いことをいう。また、本明細書において、窒化物蛍光体の粒子形状が良好であるとは、粒子の表面に微細粒子等が付着しておらず、粒子の表面が滑らかなことをいう。
【0014】
本明細書において、原料焼成物に含有させるBa及びSrの合計モル量、及び原料焼成物に含有させるBaのモル量は、得られた原料焼成物の組成比に示されるモル量ではなく、原料焼成物を得る前の仕込み組成におけるモル量をいう。
また、窒化物蛍光体のBa及びSrの合計モル量、及び窒化物蛍光体のBaのモル量は、得られた窒化物蛍光体の組成比に示されるモル量ではなく、目的となる組成の窒化物蛍光体を得るために原料となる原料焼成物及びその他の化合物の仕込み組成におけるモル量をいう。
【0015】
本実施形態の蛍光体の製造方法は、原料焼成物に含有させるBa及びSrの仕込みモル量に対するBaの仕込みモル量の比(B1)が、0.5以上0.7未満であり、窒化物蛍光体に含有させるBa及びSrの合計の仕込みモル量に対するBaの仕込みモル量の比(B2)が、0.9以上1.0未満である。
Baの仕込みモル量の比(B1)は、Baの仕込みモル量の比(B2)よりも小さく、Baの仕込みモル量の比(B1)が、原料焼成物に含有させるBa及びSrの合計の仕込みモル量に対して0.5以上0.7未満であると、原料焼成物の反応性が高くなり、結晶成長が進み、最終的に得られる窒化物蛍光体の粒径が大きくなり、粒子形状も良好となる傾向がみられる。
Baの仕込みモル量の比(B1)は、原料焼成物に含有させるBa及びSrの合計の仕込みモル量に対して、好ましくは0.50以上0.70未満であり、より好ましくは0.53以上0.67以下であり、さらに好ましくは0.55以上0.65以下である。
Baの仕込みモル量の比(B2)は、結晶構造の安定性の観点から、窒化物蛍光体に含有させるBa及びSrの合計のモル量に対して、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.92以上、さらに好ましく0.94以上である。
【0016】
原料焼成物を得る工程において、Euを含む化合物は、得られる窒化物蛍光体の発光中心となる賦活元素を含む化合物である。ユウロピウム(Eu)には、主に2価と3価にエネルギー順位を有するが、本実施形態の製造方法において得られる窒化物蛍光体は、Eu2+を賦活元素として用いることが好ましい。
本実施形態の製造方法において、Euを含む化合物は、十分な発光強度を有する窒化物蛍光体を得ることができ、励起光を吸収して所望の色度を発光するものであれば、得られる窒化物蛍光体がEuのみを含むものであっても、EuとEu以外の二種以上の賦活元素を含むものであってもよい。Eu以外の他の賦活元素として、例えば、Ce、Tb及びMnからなる群から選択される少なくとも一種の元素が挙げられる。
【0017】
本実施形態の窒化物蛍光体の製造方法において、上記原料焼成物を得る工程後における原料焼成物が、下記式(I)で表される仕込み組成を有することが好ましい。
(BaqSrsEut)2Si5N8 (I)
ただし、式(I)中、q、s、tは、0.500≦q≦0.700、0.200≦s≦0.400、0.01≦t≦0.03、0.9<q+s+t≦1.0を満たす数である。
【0018】
上記式(I)において変数qの2倍は、Siを5とするBaのモル組成比であり、変数sの2倍は、Siを5とするSrのモル組成比である。
上記式(I)において、変数qは、より好ましくは0.530≦q≦0.670、さらに好ましくは0.550≦q≦0.650を満たす数である。また、上記式(I)において、変数sは、より好ましくは0.210≦s≦0.390であり、さらに好ましくは0.220≦s≦0.380であり、よりさらに好ましくは0.230≦s≦0.370である。
【0019】
上記式(I)において、変数tの2倍は、Siを5とするEuのモル組成比である。変数tが0.01≦t≦0.03を満たす数であると、後述する窒化物蛍光体を得る工程において、十分な発光強度を有し、所定の発光ピーク波長を有する励起光源からの光によって所望の色度を発光する窒化物蛍光体を得ることができる。
上記式(I)において、変数tは、より好ましくは0.012≦t≦0.028、さらに好ましくは0.014≦t≦0.026、さらにより好ましくは0.016≦t≦0.024を満たす数である。
【0020】
第一の化合物
第一の化合物は、Ba及びSrを含む窒化物、フッ化物、水素化物、酸化物、炭酸塩、塩化物等が挙げられる。原料焼成物中の不純物が少なく、十分な発光強度を有する窒化物蛍光体が得られることから、Ba及びSrを含む窒化物、フッ化物又は水素化物であることが好ましく、窒化物であることがより好ましい。第一の化合物として、窒化物を用いることにより、所望の組成以外の組成の原料焼成物の形成を抑制することが可能である。第一の化合物は、微量のLi、Na、K、B及びAlからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含んでいてもよい。第一の化合物は、具体的には、Ba3N2、BaF2、BaH2、Sr2N、SrN、Sr3N2、SrF2、SrH2等が挙げられる。
第一の化合物は、十分な発光強度を有する窒化物蛍光体を得ることができ、励起光を吸収して所望の色度を発光するものであれば、得られる窒化物蛍光体がBa及びSrのみを含むものであっても、Ba及びSr以外の二種以上の元素を含むものであってもよい。Ba及びSr以外の他の元素として、例えば、Ca及びMgからなる群から選択される少なくとも一種の元素が挙げられる。
【0021】
Euを含む化合物
Euを含む化合物は、Euを含む窒化物、フッ化物、水素化物、酸化物、炭酸塩、塩化物等が挙げられる。原料焼成物中の不純物が少なく、十分な発光強度を有する窒化物蛍光体が得られることから、Euを含む窒化物、フッ化物又は水素化物であることが好ましく、窒化物であることがより好ましい。Euを含む化合物として、窒化物を用いることにより、所望の組成以外の組成の原料焼成物の形成を抑制することができる。Euを含む化合物は、具体的には、EuN、EuF3、EuH3等が挙げられる。
【0022】
Siを含む化合物
Siを含む化合物は、実質的にSiのみを含む金属であってもよく、Siの一部がGe、Sn、Ti、Zr、Hf、B、Al、Ga及びInからなる群から選択される少なくとも一種の金属で置換された合金であってもよい。また、Siを含む化合物は、窒化物、酸化物、イミド化合物、アミド化合物等が挙げられる。原料焼成物中の不純物が少なく、十分な発光強度を有する窒化物蛍光体が得られることから、窒化物、イミド化合物又はアミド化合物であることが好ましく、窒化物であることがより好ましい。原料として窒化物を用いることにより、所望の組成以外の組成の原料焼成物の形成を抑制することができる。Siを含む化合物は、具体的には、Si3N4、SiO2、Si(NH)2、Si2N2NH、Si(NH2)4等が挙げられる。
【0023】
また、各元素を含む化合物を含む各原料は、それぞれ平均粒径が約0.1μm以上15μm以下、より好ましくは約0.1μmから10μmの範囲であることが、他の原料との反応性、熱処理時及び熱処理後の粒径制御等の観点から好ましく、各原料の上記範囲以上の粒径は、各原料の粉砕を行うことで達成できる。
【0024】
また、各原料は精製したものであることが好ましい。精製した各原料を用いることにより、精製工程を必要としないため、製造工程を簡略化でき、安価な蛍光体を提供することができるからである。
【0025】
フラックス
原料を混合し、原料混合物を得る。原料混合物は、フラックスを含んでいてもよい。原料混合物がフラックスを含むことで、原料間の反応がより促進され、更には固相反応がより均一に進行するために粒径が大きく、発光特性により優れた蛍光体を得るために用いる原料焼成物を製造することができる。これは例えば、原料焼成物を得るための熱処理の温度が1300℃以上2100℃以下で行われ、この温度がフラックスであるハロゲン化物等の液相の生成温度とほぼ同じであるためと考えられる。ハロゲン化物としては、希土類金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属の塩化物、フッ化物等を利用できる。フラックスとしては、フラックスに含まれる陽イオンの元素比率を得たい原料焼成物の組成になるように調節して窒化物蛍光体の原料の一部としてフラックスを加えることもできるし、得たい原料焼成物の組成となるように各原料を加えた後に、更に添加する形でフラックスを加えることもできる。
【0026】
原料混合物がフラックスを含む場合、フラックス成分は反応性を促進するが、多すぎると発光強度の低下につながるため、その含有量は原料混合物中に例えば10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下がより好ましい。
フラックスとしてフッ化物を用いた場合であっても、1300℃以上2100℃以下の熱処理によって、フッ素元素はほとんど焼成物中に残存せず、フッ素元素を含むフラックスを用いた場合であっても熱処理後に得られる焼成物中のフッ素元素は、通常0.1質量%以下、好ましくは0.08質量%以下である。
【0027】
原料混合物
計量した原料は、混合機を用いて湿式又は乾式で混合し、原料混合物を得る。混合機は工業的に通常用いられているボールミルの他、振動ミル、ロールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて粉砕して比表面積を大きくすることもできる。また、粉末の比表面積を一定範囲とするために、工業的に通常用いられている沈降槽、ハイドロサイクロン、遠心分離器等の湿式分離機、サイクロン、エアセパレータ等の乾式分級機を用いて分級することもできる。
【0028】
原料混合物は、黒鉛等の炭素、窒化ホウ素(BN)、アルミナ(Al2O3)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の材質の坩堝やボートに載置して、炉内で熱処理し焼成物を得ることができる。
【0029】
熱処理
本発明の一実施形態の窒化物蛍光体の製造方法は、窒素を含む雰囲気中で熱処理して原料焼成物を得る。熱処理する雰囲気は、窒素を含む雰囲気中であればよい。窒素を含む雰囲気は、窒素ガスを好ましくは70体積%以上、より好ましくは80体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上含有する。窒素を含む雰囲気は、還元性を有する雰囲気であることが好ましい。還元性を有する雰囲気は、還元性のある水素ガスを含む雰囲気であることがより好ましい。窒素と還元性のある水素ガスを含む雰囲気は、水素ガスを好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%以上、さらに好ましくは10体積%以上含有する。
【0030】
本実施形態の製造方法は、窒素を含む雰囲気中で原料混合物を熱処理することで、所望の窒化物蛍光体を得るための原料焼成物を製造することができる。窒素を含む雰囲気が、窒素と還元性のある水素ガスを含む雰囲気である場合には、より発光強度の高い窒化物蛍光体を得るための原料焼成物を得ることができる。これは、発光に寄与する2価のEuが占める割合が原料焼成物中で増大することに起因している。2価のEuは酸化されて3価のEuとなりやすいが、水素及び窒素を含む還元力の高い還元雰囲気で焼成することにより、3価のEuが2価のEuに還元されるため、2価のEuが占める割合が増大し、高い発光強度を有する窒化物蛍光体を形成するための原料焼成物が得られる。
【0031】
原料焼成物を得るための熱処理温度は、好ましくは1300℃以上2100℃以下、より好ましくは1500℃以上2000℃以下、さらに好ましくは1600℃以上1950℃以下である。熱処理温度が1300℃以上2100℃以下であれば、熱による分解が抑制され、目的とする組成を有し、安定した結晶構造を有し、十分な発光強度を有する蛍光体を得るための原料焼成物が得られる。
【0032】
熱処理は二段階以上の複数回の熱処理を行なってもよい。例えば二段階の熱処理を行なう場合には、一回目の熱処理を1000℃以上1500℃未満で行い、二回目の焼成を1500℃以上2100℃以下の温度で行なうことが好ましい。一回目の熱処理温度が1000℃以上1500℃未満であると、目的とする組成を有する原料焼成物を得やすくなるためである。二回目の熱処理温度が1500℃以上2100℃以下であると、得られる原料焼成物の分解が抑制され、安定した結晶構造を有し、十分な発光強度を有する窒化物蛍光体を得るための原料焼成物を得やすいためである。
【0033】
窒素を含む雰囲気の圧力は、ゲージ圧で、0.1MPa以上200MPa以下の加圧雰囲気で行なうことが好ましい。熱処理によって得られる原料焼成物は、熱処理温度が高温になるほど結晶構造が分解され易くなるが、加圧雰囲気にすることによって、結晶構造の分解が抑制され、発光強度の低下を抑制することができる。熱処理雰囲気の圧力は、ゲージ圧で、より好ましくは0.1MPa以上100MPa以下であり、さらに好ましくは0.5MPa以上10MPa以下であり、製造の容易さの点から、よりさらに好ましくは1.0MPa以下である。
【0034】
熱処理時間は、熱処理温度、熱処理時の雰囲気の圧力によって適宜選択することができ、0.5時間以上20時間以下であることが好ましく、多段階の熱処理を行なう場合であっても、一回の熱処理時間は0.5時間以上20時間以下であることが好ましい。熱処理時間が0.5時間以上20時間以下であると、得られる焼成物の分解が抑制され、安定した結晶構造を有し、十分な発光強度を有する蛍光体を得るための焼成物が得られるとともに、生産コストも低減でき、製造時間を比較的短くすることができる。熱処理時間は、より好ましくは1時間以上10時間以下であり、さらに好ましくは1.5時間以上9時間以下である。
【0035】
熱処理後の後工程
本実施形態の製造方法において、熱処理をした後に、得られる原料焼成物に対して、粉砕、湿式分散、固液分離、乾燥、分級等の後処理を行ってもよい。固液分離は濾過、吸引濾過、加圧濾過、遠心分離、デカンテーション等の工業的に通常用いられる方法により行うことができる。乾燥は、真空乾燥機、熱風加熱乾燥機、コニカルドライヤー、ロータリーエバポレーターなどの工業的に通常用いられる装置により行うことができる。分級は、沈降分級、機械的分級、水力分級、遠心分級等の湿式分級、ふるい分け分級等の工業的に通常用いられる方法により行うことができる。
【0036】
本実施形態の製造方法によって得られる原料焼成物は、少なくとも一部に結晶性が高い構造を有していることが好ましい。例えばガラス体(非晶質)は構造が不規則であり結晶性が低いため、その生産工程における反応条件が厳密に一様になるよう管理できなければ、窒化物蛍光体を用いた発光装置が色度ムラ等を生じる傾向がある。本実施形態の製造方法によって得られる原料焼成物は、少なくとも一部に結晶性が高い構造を有していることが好ましい。少なくとも一部に結晶性が高い構造を有している原料焼成物は、製造及び加工が行い易くなる傾向がある。
【0037】
本実施形態の製造方法において、原料焼成物は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による原料焼成物の体積平均粒径が5.0μm以上20.0μm以下であることが好ましい。体積平均粒径は、より好ましくは5.5μm以上19.0μm以下、さらに好ましくは6.0μm以上18.0μm以下、よりさらに好ましくは6.5μm以上17.0μm以下である。原料焼成物の体積平均粒径が上記範囲内であることにより、後の窒化物蛍光体を得る工程において、得られた原料焼成物の反応性が高いため、所望の粒径の窒化物蛍光体を得ることができ、粒子形状が揃った窒化物蛍光体を得ることができる。
【0038】
本実施形態の製造方法において、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって体積平均径が測定される原料焼成物は、分級等によって例えば粒径が50.0μmを超える粗大粒子や例えば粒径が1.0μm未満の微細粒子が除去されたものであってもよい。このような粗大粒子や微細粒子が除去された場合であっても、本実施形態の製造方法によって得られる窒化物蛍光体は、結晶が大きく成長し、一次粒子の含有率が高いため、粒径が大きく、粒子形状が良好な窒化物蛍光体を高い収率で得られる。
【0039】
窒化物蛍光体を得る工程
本発明の一実施形態の窒化物蛍光体の製造方法は、上述した原料焼成物と、Baを含む化合物と、Siを含む化合物と、Euを含む化合物と、必要に応じてSrを含む第二の化合物とを、窒素を含む雰囲気中で熱処理して窒化物蛍光体を得る工程を含む。
【0040】
原料焼成物に含有させるBa及びSrの仕込み合計モル量に対するBaの仕込みモル量の比(B1)は、目的とする窒化物蛍光体の組成にするために、原料焼成物と他の化合物の混合物に含有させるBa及びSrの仕込み合計モル量に対するBaの仕込みモル量の比(B2)よりも小さい。そのため、原料焼成物と少なくともBaを含む化合物とを窒素を含む雰囲気中で熱処理することによって、反応性の高い原料焼成物に、目的とする窒化物蛍光体の組成に対して不足しているBaを補うと共に結晶成長を促進させ、得られる窒化物蛍光体の粒径を大きくし、粒子形状を良好にすることができる。
【0041】
Baを含む化合物
本実施形態の製造方法において、原料焼成物と共に熱処理するBaを含む化合物は、原料焼成物を得る工程において用いたBaを含む化合物と同様に、Baを含む窒化物、フッ化物、水素化物、酸化物、炭酸塩、塩化物等が挙げられる。不純物が少なく、十分な発光強度を有する窒化物蛍光体が得られることから、Baを含む窒化物、フッ化物又は水素化物であることが好ましく、窒化物であることがより好ましい。Baを含む化合物として、窒化物を用いることにより、所望の組成以外の原料焼成物の形成を抑制することが可能である。Baを含む化合物としては、具体的には、Ba3N2、BaF2、BaH2等が挙げられる。
【0042】
Siを含む化合物
Siを含む化合物は、原料焼成物を得る工程において用いるSiを含む化合物と同様のものを用いることが好ましい。
【0043】
各組成元素を含む化合物は、それぞれ平均粒径が約0.1μm以上15μm以下、より好ましくは約0.1μmから10μmの範囲であることが好ましい、また、各組成元素を含む化合物は、精製した各原料を用いることが好ましい。また、原料焼成物と少なくともBaを含む化合物を共に混合した混合物には、フラックスを含んでいてもよい。フラックスは、原料焼成物を得る工程において使用したフラックスを用いることができる。
【0044】
本実施形態の製造方法によって得られる窒化物蛍光体は、後述の式(II)で表される組成を有することが好ましい。
【0045】
混合・熱処理
原料焼成物と少なくともBaを含む化合物との混合は、原料焼成物を得る工程において用いた装置等を用いることが好ましい。
【0046】
原料焼成物と少なくともBaを含む化合物とを混合した混合物の熱処理は、原料焼成物を得る工程における窒素を含む雰囲気、熱処理温度及び熱処理条件によって行うことが好ましい。また、熱処理は、各元素を含む化合物と混合を繰り返し、複数回行うことが好ましい。これにより、窒化物蛍光体の粒径を大きくすることができる。
【0047】
熱処理後の後工程
本実施形態の窒化物蛍光体の製造方法において、熱処理をした後に、得られる窒化物蛍光体に対して、湿式分散、固液分離、乾燥、分級等の後処理を行ってもよい。固液分離は濾過、吸引濾過、加圧濾過、遠心分離、デカンテーション等の工業的に通常用いられる方法により行うことができる。乾燥は、真空乾燥機、熱風加熱乾燥機、コニカルドライヤー、ロータリーエバポレーターなどの工業的に通常用いられる装置により行うことができる。分級は、沈降分級、機械的分級、水力分級、遠心分級等の湿式分級、ふるい分け分級等の工業的に通常用いられる方法により行うことができる。
【0048】
窒化物蛍光体
本実施形態の窒化物蛍光体は、上記窒化物蛍光体を得る工程後における下記式(II)で表される組成を有する。
(BavSrwEux)2Si5N8-y (II)
ただし、式(II)中、v、w、x、yは、0.800≦v≦0.995、0≦w≦0.120、0.005≦x≦0.02、0.9<v+w+x≦1.0、0≦y≦0.5を満たす数である。
【0049】
上記式(II)で表される組成を有する窒化物蛍光体を、以下では便宜的に「窒化物蛍光体(II)」ともいう。
上記式(II)において変数vの2倍は、窒化物蛍光体(II)におけるBaのモル組成比である。結晶構造の安定性の観点から、変数vは、より好ましくは0.820≦v≦0.995を満たす数であり、さらに好ましくは0.840≦v≦0.995を満たす数である。
また、上記式(II)において、変数wの2倍は、窒化物蛍光体(II)おけるSrのモル組成比である。原料焼成物の結晶構造の安定性と、Baを含む化合物との反応性の観点から、変数wは、好ましくは0≦w≦0.115、より好ましくは0≦w≦0.110を満たす数である。
【0050】
上記式(II)において、変数xの2倍は、窒化物蛍光体(II)におけるEuの賦活量である。変数xが0.005≦x≦0.02を満たす数であると、十分な発光強度を有し、所定の発光ピーク波長を有する励起光源からの光によって所望の色度を発光する窒化物蛍光体を得ることができる。
上記式(II)において、変数xは、より好ましくは0.005≦x≦0.015、さらに好ましくは0.005≦x≦0.010を満たす数である。
【0051】
本実施形態の窒化物蛍光体は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積平均粒径が、20.0μm以上35.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは21.0μm以上34.0μm以下、さらに好ましくは22.0μm以上33.0μm以下である。体積平均粒径が上記範囲内であると、十分な発光強度を有する。
【0052】
窒化物蛍光体は、粒子形状が良好であり、粒子サイズが整っていることが好ましい。本実施形態の窒化物蛍光体は、例えばレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した蛍光体粒子の体積基準の粒度分布の標準偏差が小さい数値であれば、粒度分布の半値幅が狭く、粒度分布のスペクトル形状が、よりシャープであり、粒子サイズが整っていることが分かる。
本実施形態の窒化物蛍光体は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法で測定した体積基準の粒度分布における標準偏差(σlog)が、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.38以下である。
【0053】
本実施形態の窒化物蛍光体は、ユウロピウム(Eu)で賦活され、紫外線から可視光領域の発光ピーク波長を有する光を吸収して赤色に発光する。窒化物蛍光体は、紫外線から可視光の領域である400nm以上570nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する光を吸収して、575nm以上600nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光を発する。本実施態様の窒化物蛍光体は、より好ましくは576nm以上595nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有することが好ましく、577nm以上590nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有することがより好ましい。窒化物蛍光体の発光スペクトルの半値幅は、64nm以上82nm以下であり、好ましくは64nm以上78nm以下であり、より好ましくは64nm以上74nm以下である。発光ピークの半値幅が小さい方が、色純度の高い窒化物蛍光体として好適に用いられる。
【0054】
本実施形態の窒化物蛍光体は、少なくとも一部に結晶性が高い構造を有していることが好ましい。例えばガラス体(非晶質)は構造が不規則であり結晶性が低いため、その生産工程における反応条件が厳密に一様になるよう管理できなければ、色度ムラ等を生じる傾向がある。本実施形態の窒化物蛍光体は、少なくとも一部に結晶性が高い構造を有していることが好ましい。少なくとも一部に結晶性が高い構造を有している窒化物蛍光体は、製造及び加工が行い易くなる傾向がある。また、少なくとも一部に結晶性の高い構造を有している窒化物蛍光体は、樹脂に均一に分散することが容易であるため、樹脂を含む蛍光部材を形成することが容易にできる。具体的に、窒化物蛍光体は、発光性を有する結晶相の割合が例えば50質量%以上、より好ましくは80質量%以上が結晶性を有する構造であることが好ましい。窒化物蛍光体が50質量%以上の結晶相を有していれば、実用に耐え得る強度の発光が得られる。
【0055】
発光装置
希土類アルミン酸塩蛍光体は、発光素子と組み合わせることによって、発光素子から発せられた光を変換し、発光素子からの光と希土類アルミン酸塩蛍光体で波長変換された混色光を発する発光装置を構成することが可能となる。発光素子の発光ピーク波長は、350nm以上500nm以下の範囲内であってもよく、380nm以上485nm以下の範囲内であり、390nm以上480nm以下の範囲内であることが好ましい。発光素子として、例えば、窒化物系半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いた半導体発光素子を用いることができる。励起光源として半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。原料焼成物の製造
Ba、Sr、Eu、Si及びNを含む組成を有する原料焼成物を製造した。具体的には、上記式(I)で表される組成を有する焼成物、Baを含む化合物としてBa3N2、Srを含む化合物としてSrNu(uが2/3相当、Sr2NとSrNの混合物)、Euを含む化合物としてEuN、Siを含む化合物として、Si3N4を用いた。
【0057】
仕込み組成として、Sr:Ba:Eu:Siのモル比が0.71:1.25:0.04:5.00となるように、各化合物を、実質的に窒素100体積%を含む窒素雰囲気のグローブボックス内で計量し、混合して原料混合物を得た。アルカリ土類金属元素(SrとBa)の仕込み合計モル量に対するBaの仕込みモル量の比(B1)を表1に示した。
【0058】
得られた原料混合物を坩堝に充填し、実質的に窒素100体積%を含む窒素雰囲気で、ガス圧力をゲージ圧で0.92MPa(絶対圧力が1.02MPa)とし、1800℃で5時間熱処理し、原料焼成物を得た。得られた原料焼成物は、粒子同士が焼結しているため、粉砕し、沈降分級し、目開き15μm程度のふるい分け分級を行って粉末状の原料焼成物1を得た。後述するレーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒径は10.0μmであった。
【0059】
実施例1
得られた原料焼成物1を用いて、さらにBaを含む化合物としてBa3N2を用い、Siを含む化合物としてSi3N4を用い、Euを含む化合物としてEuNを用いた。
仕込み組成として、Ba:Sr:Eu:Siのモル比が1.80:0.16:0.04:5.00となるように各化合物、10wt%の原料焼成物1、実質的に窒素100体積%を含む窒素雰囲気のグローブボックス内で計量し、混合して混合物を得た。上記仕込み組成におけるアルカリ土類金属元素(SrとBa)の仕込み合計モル量に対するBaの仕込みモル量の比(B2)を表1に記載した。なお、以下の実施例及び比較例においても同様に、目的とする組成の窒化物蛍光体を得るためのBaの仕込みモル量の比(B2)を表1に記載した。
得られた混合物について一回目の熱処理を行う。すなわち、得られた混合物を坩堝に充填し、実質的に窒素100体積%を含む窒素雰囲気で、ガス圧力をゲージ圧で0.92MPa(絶対圧力が1.02MPa)とし、1770℃で5時間熱処理し、窒化物蛍光体を得た。得られた窒化物蛍光体は、粒子同士が焼結している場合があるので、湿式分散し、沈降分級し、脱水、乾燥、目開き25μm程度のふるい分け分級によって、窒化物蛍光体粉末を得た。
【0060】
得られた窒化物蛍光体粉末を用いて、さらにBaを含む化合物としてBa3N2を用い、Siを含む化合物としてSi3N4を用い、Euを含む化合物としてEuNを用いた。
仕込み組成として、Ba:Sr:Eu:Siのモル比が1.80:0.16:0.04:5.00となるように各化合物、8wt%の得られた蛍光体粉末、実質的に窒素100体積%を含む窒素雰囲気のグローブボックス内で計量し、混合して混合物を得た。上記仕込み組成におけるアルカリ土類金属元素(SrとBa)の仕込み合計モル量に対するBaの仕込みモル量の比(B2)を表1に記載した。なお、以下の実施例及び比較例においても同様に、目的とする組成の窒化物蛍光体を得るためのBaの仕込みモル量の比(B2)を表1に記載した。
得られた混合物について二回目の熱処理を行う。すなわち、得られた混合物を坩堝に充填し、実質的に窒素100体積%を含む窒素雰囲気で、ガス圧力をゲージ圧で0.92MPa(絶対圧力が1.02MPa)とし、1770℃で5時間熱処理し、窒化物蛍光体を得た。得られた窒化物蛍光体は、粒子同士が焼結している場合があるので、湿式分散し、沈降分級し、脱水、乾燥、目開き35μm程度のふるい分け分級によって、窒化物蛍光体粉末1を得た。
【0061】
実施例2
原料焼成物1を用いて、仕込み組成として、Ba:Eu:Siのモル比が1.96:0.04:5.00となるように、各化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、窒化物蛍光体粉末2を得た。
【0062】
実施例3
原料焼成物1を用いて、仕込み組成として、Ba:Eu:Siのモル比が1.98:0.02:5.00となるように、各化合物を用い、窒化物蛍光体粉末3を得た。
【0063】
実施例4
原料焼成物1を用いて、仕込み組成として、Ba:Eu:Siのモル比が1.99:0.01:5.00となるように、各化合物を用い、窒化物蛍光体粉末4を得た。
【0064】
比較例1
原料焼成物1を用いて、Ba:Sr:Eu:Siのモル比が1.25:0.71:0.04:5.00となるように、各化合物を用い、窒化物蛍光体粉末5を得た。
【0065】
比較例2
原料焼成物1を用いて、Ba:Sr:Eu:Siのモル比が1.60:0.36:0.04:5.00となるように、各化合物を用い、窒化物蛍光体粉末6を得た。
【0066】
評価
以下の方法により、窒化物蛍光体について各評価を行なった。
【0067】
体積平均粒径
原料焼成物、各実施例及び比較例の窒化物蛍光体について、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(製品名:MASTER SUZER(マスターサイザー)2000、MALVERN(マルバーン)社製)により、体積基準の累積頻度50%のメジアン径である粒径を測定した。各実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【0068】
発光特性
実施例および比較例について以下のように発光特性を測定した。量子効率測定装置(大塚電子株式会社製、QE-2000)を用いて、波長450nmの励起光を各蛍光体に照射し、室温(25℃±5℃)における発光スペクトルを測定した。各蛍光体について、発光強度が最大となる波長を発光ピーク波長(nm)として求めた。結果を表1に示す。また、実施例4と比較例1の発光スペクトルを
図1に示す。
【0069】
【0070】
表1に示されるように、実施例1から4は、比較例1および2よりも発光スペクトルにおける発光ピーク波長がより短くなり、発光スペクトルにおける半値幅もより狭くなっていることが分かる。
【0071】
組成分析
各実施例及び比較例の窒化物蛍光体について、誘導結合プラズマ発光分析装置(Perkin Elmer(パーキンエルマー)社製)を用いて、ICP発光分析法により、組成分析を行ない、各元素の含有量(組成比)を求めた。結果を表2に示す。表2に示す組成の数値は、Siの組成比を5として分析結果から算出した値である。表2に、原料焼成物の仕込み組成(モル量)と、各実施例及び比較例の窒化物蛍光体の仕込み組成(モル量)を分析値と合わせて記載した。
【0072】
【0073】
表2に示されるように、仕込み組成比および分析組成比とも、上述した式(I)および式(II)を満たすことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本実施形態の製造方法により得られる窒化物蛍光体は、発光素子と組み合わせられ、一般照明、車載照明、ディスプレイ、液晶用バックライト、信号機、照明式スイッチ等の幅広い分野での使用することができる。