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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】水素ステーションの気密試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/28 20060101AFI20240424BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20240424BHJP
   F17C 13/12 20060101ALI20240424BHJP
   F17C 5/06 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
G01M3/28 C
F17C13/02 301Z
F17C13/12 301Z
F17C5/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019182648
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021060203
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永冨 眞司
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-336795(JP,A)
【文献】特開2009-036213(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159314(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/151387(WO,A1)
【文献】特開2007-051917(JP,A)
【文献】特開2017-040502(JP,A)
【文献】特開2017-090104(JP,A)
【文献】特開2007-329105(JP,A)
【文献】国際公開第2007/004719(WO,A1)
【文献】特開2004-095425(JP,A)
【文献】特開2005-054963(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0010178(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00 - 3/40
F17C 1/00 - 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスが充填された蓄圧器と、
前記蓄圧器に接続されたガス配管と、
前記ガス配管の経路に設けられた出口弁と、
前記ガス配管の経路における前記出口弁よりも下流側に設けられた流量調整弁と、を備えるガス充填システムを有する水素ステーションにおいて、ガス漏れの有無を調べる気密試験方法であって、
第1の均圧工程と第2の均圧工程とを含み、
前記第1の均圧工程は、前記出口弁を開く第1の開弁処理と、前記ガス配管における前記出口弁の上流側と下流側で均圧が取れてから前記出口弁を閉じる第1の閉弁処理とを含み、
前記第2の均圧工程は、前記流量調整弁を開く第2の開弁処理と、前記ガス配管における前記流量調整弁の上流側と下流側で均圧が取れてから前記流量調整弁を閉じる第2の閉弁処理とを含み、
前記第1の均圧工程と前記第2の均圧工程をこの順に1回以上行って前記ガス配管内を加圧することを特徴とする水素ステーションの気密試験方法。
【請求項2】
前記第2の均圧工程で前記ガス配管の前記流量調整弁よりも下流側が予め設定した所定の圧力を超えた後に行う、第3の均圧工程と第4の均圧工程とをさらに含み、
前記第3の均圧工程は、前記出口弁を開く第3の開弁処理と、前記ガス配管における前記出口弁の上流側と下流側で均圧が取れてから前記出口弁を閉じる第3の閉弁処理とを含み、
前記第4の均圧工程は、前記流量調整弁を前記第2の開弁処理よりも小さい開度で開く第4の開弁処理と、前記ガス配管における前記流量調整弁の上流側と下流側で均圧が取れてから前記流量調整弁を閉じる第4の閉弁処理とを含み、
前記第3の均圧工程と前記第4の均圧工程をこの順に1回以上行って前記ガス配管内を加圧する、請求項1に記載の水素ステーションの気密試験方法。
【請求項3】
前記第4の均圧工程において、前記ガス配管の前記流量調整弁よりも下流側の圧力に応じて前記流量調整弁の開度を調整する、請求項2に記載の水素ステーションの気密試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ステーションの気密試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の自動車として、水素ガスを燃料として用いる燃料電池搭載車両(以下、「水素自動車」とも称する。)の開発が進められている。水素自動車は、CO、NO、SO等の排出がなく、水が排出されるだけの環境にやさしい自動車とされている。
【0003】
水素自動車に燃料を補給する際には、通常のガソリン自動車と同様に、燃料である水素ガスが蓄えられている水素ステーションまで走行し、水素ステーションで水素ガスを補給する。水素自動車の燃料タンクへの水素ガスの充填は、高圧且つ急速での圧縮充填で行う。高圧の可燃性ガスを取り扱うこのようなガス充填システムでは、ガス洩れの抑制が事故防止に非常に重要である。そのため、定期的に気密試験を行う必要がある。特に水素ステーションでの圧縮水素の使用開始時には、蓄圧器、蓄圧器の出口に設けられた出口弁(遮断弁)からディスペンサーに設けられた充填弁(遮断弁)までの配管、及びディスペンサーに設けられた充填弁(遮断弁)から充填ホースの先端カップリングまでの気密試験を、自動制御装置を使用して行うことが義務付けられている。
【0004】
従来、ガス充填システムの気密試験において、出口弁を開閉したときに、急激な圧力の増加によって圧力がオーバーシュートを起こし、安全弁が動作してしまう問題や、圧力衝撃が加わり、充填ホースが故障する懸念があった。
特許文献1には、ガス管に設けられた流量調整弁と、流量調整弁をバイパスするバイパスラインに設けられた流量絞り弁とを備えるガス充填システムが開示されている。前記ガス充填システムでは、流量調整弁と流量絞り弁によってガス流量を調整することで、気密試験の際にガス管内の圧力が急激に上昇することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-36213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、流量調整弁、流量絞り弁、圧力調整弁といった調整弁は高価である。そのため、流量調整弁と流量絞り弁を用いる特許文献1のガス充填システムのように、2つの調整弁を用いて急激な圧力上昇を抑制する方法は、装置の製造費用が高額になる。また、このような調整弁は比較的大型のため、設置スペースを確保する必要もある。
【0007】
本発明は、製造コストの削減、及び装置の小型化が可能で、ガス充填システムの気密試験における急激な圧力の上昇を抑制できる水素ステーションの気密試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]水素ガスが充填された蓄圧器と、
前記蓄圧器に接続されたガス配管と、
前記ガス配管の経路に設けられた出口弁と、
前記ガス配管の経路における前記出口弁よりも下流側に設けられた流量調整弁と、を備えるガス充填システムを有する水素ステーションにおいて、ガス漏れの有無を調べる気密試験方法であって、
第1の均圧工程と第2の均圧工程とを含み、
前記第1の均圧工程は、前記出口弁を開く第1の開弁処理と、前記ガス配管における前記出口弁の上流側と下流側で均圧が取れてから前記出口弁を閉じる第1の閉弁処理とを含み、
前記第2の均圧工程は、前記流量調整弁を開く第2の開弁処理と、前記ガス配管における前記流量調整弁の上流側と下流側で均圧が取れてから前記流量調整弁を閉じる第2の閉弁処理とを含み、
前記第1の均圧工程と前記第2の均圧工程をこの順に1回以上行って前記ガス配管内を加圧することを特徴とする水素ステーションの気密試験方法。
[2]前記第2の均圧工程で前記ガス配管の前記流量調整弁よりも下流側が予め設定した所定の圧力を超えた後に行う、第3の均圧工程と第4の均圧工程とをさらに含み、
前記第3の均圧工程は、前記出口弁を開く第3の開弁処理と、前記ガス配管における前記出口弁の上流側と下流側で均圧が取れてから前記出口弁を閉じる第3の閉弁処理とを含み、
前記第4の均圧工程は、前記流量調整弁を前記第2の開弁処理よりも小さい開度で開く第4の開弁処理と、前記ガス配管における前記流量調整弁の上流側と下流側で均圧が取れてから前記流量調整弁を閉じる第4の閉弁処理とを含み、
前記第3の均圧工程と前記第4の均圧工程をこの順に1回以上行って前記ガス配管内を加圧する、[1]に記載の水素ステーションの気密試験方法。
[3]前記第4の均圧工程において、前記ガス配管の前記流量調整弁よりも下流側の圧力に応じて前記流量調整弁の開度を調整する、[2]に記載の水素ステーションの気密試験方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造コストの削減、及び装置の小型化が可能で、ガス充填システムの気密試験における急激な圧力の上昇を抑制できる水素ステーションの気密試験方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態にかかる水素ステーションのガス充填システムを示した概略図である。
図2】本発明の第1実施形態にかかる気密試験方法を示すフローチャートである。
図3】気密試験方法における各弁の操作と水素ステーション内の圧力変化とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0012】
[水素ステーション]
図1は、本発明の第1実施形態にかかる水素ステーションのガス充填システム1を示した図である。
ガス充填システム1は、ガスタンク室2と、自動車へガスを充填するディスペンサー4と、制御装置5と、を備えている。
ガスタンク室2内の各機器及びディスペンサー4内の各機器は、信号線7を介して、制御装置5に接続されている。
【0013】
ガスタンク室2内には、蓄圧器3が設けられている。この例では蓄圧器3の個数は1個であるが、蓄圧器3は1個には限定されず、2個以上設けてもよい。
蓄圧器3には、水素ガスが高圧(例えば90MPa)で貯留されている。
【0014】
蓄圧器3にはガス配管6が接続されている。ガスタンク室2のガス配管6の経路には出口弁8が設けられている。ガス配管6の出口弁8よりも下流側はディスペンサー4に挿通されている。ガス配管6における出口弁8よりも上流側(図1の左側)には、第1の圧力計9が設けられている。
【0015】
蓄圧器3が2個以上の場合、ガス配管6は、蓄圧器3の個数に応じて、ガスタンク室2内で分岐し、分岐したガス配管6の経路のそれぞれに第1の圧力計9及び出口弁8が設けられる。
【0016】
第1の圧力計9及び出口弁8は、それぞれ信号線7により制御装置5に接続されている。制御装置5からの信号線7を通じた制御信号により出口弁8の開閉が制御される。また、第1の圧力計9が検知した圧力信号が信号線7を通じて制御装置5に送られる。
【0017】
ガス配管6のディスペンサー4内に挿通されている部分の経路には、上流側から流量調整弁10と充填弁11がこの順に設けられている。流量調整弁10は、その開度に応じてガスの流量を調整することができる。
ガス配管6におけるディスペンサー4内の流量調整弁10よりも上流側(図1の左側)には、第2の圧力計12が設けられている。
【0018】
流量調整弁10、充填弁11及び第2の圧力計12は、それぞれ信号線7によって制御装置5に接続されている。制御装置5からの信号線7を通じた制御信号により流量調整弁10及び充填弁11の開閉が制御される。また、第2の圧力計12が検知した圧力信号が信号線7を通じて制御装置5に送られる。
【0019】
ガス配管6におけるディスペンサー4内の充填弁11よりも下流側(図1の右側)には、冷却装置18、第3の圧力計15、安全弁16、脱圧弁17がこの順に設けられている。
ガス配管6におけるディスペンサー4のガスタンク室2と反対側には、充填ホース13が接続されている。充填ホース13の先端には、例えば90MPa用の先端カップリング14(車両側のレセプタクルに対するノズル)が設けられている。
【0020】
安全弁16は、ガス配管6内が所定値以上に昇圧したときに、ガス配管6内の圧力を逃がし、ガス配管6内の圧力を充填圧力(例えば90MPa)以下に保つ弁である。これにより、ガス配管6内の圧力の昇圧に起因する事故を未然に防止できる。
【0021】
脱圧弁17は、充填ホース13の不使用時に充填弁11よりも下流側のガス圧を大気へ放出するための機器である。これにより、充填ホース13及び先端カップリング14が保護される。また、これにより法令などに基づいた、適正な圧力値での運用、例えば車両へ先端カップリングの着脱、が可能となる。
冷却装置18は、ガスを急速に充填した場合の断熱圧縮による温度上昇を抑制するための装置である。冷却装置18としては、例えば、プレクーラー等が挙げられる。
【0022】
冷却装置18、第3の圧力計15及び脱圧弁17は、それぞれ信号線7によって制御装置5に接続されている。制御装置5からの信号線7を通じた制御信号により脱圧弁17の開閉が制御される。また、第3の圧力計15が検知した圧力信号が信号線7を通じて制御装置5に送られる。さらに、制御装置5からの信号線7を通じた制御信号により、冷却装置18が起動又は停止する。
【0023】
[水素ステーションの気密試験方法]
本発明の水素ステーションの気密試験方法は、ガス充填システムを有する水素ステーションにおいて、ガス漏れの有無を調べる方法である。以下、本発明の水素ステーションの気密試験方法の一例として、図2及び図3を参照しつつ、ガス充填システム1を用いた気密試験方法について説明する。
【0024】
本実施形態の水素ステーションの気密試験方法は、下記の第1の均圧工程、第2の均圧工程、第3の均圧工程及び第4の均圧工程を含む。第3の均圧工程と第4の均圧工程は、第2の均圧工程でガス配管6の流量調整弁10よりも下流側が、予め設定した所定の圧力を超えた後に行う工程である。
【0025】
第1の均圧工程:出口弁8を開く第1の開弁処理と、ガス配管6における出口弁8の上流側と下流側で均圧が取れてから出口弁8を閉じる第1の閉弁処理とを含む工程。
第2の均圧工程:流量調整弁10を開く第2の開弁処理と、ガス配管6における流量調整弁10の上流側と下流側で均圧が取れてから流量調整弁10を閉じる第2の閉弁処理とを含む工程。
【0026】
第3の均圧工程:出口弁8を開く第3の開弁処理と、ガス配管6における出口弁8の上流側と下流側で均圧が取れてから出口弁8を閉じる第3の閉弁処理とを含む。
第4の均圧工程:流量調整弁10を第2の開弁処理よりも小さい開度で開く第4の開弁処理と、ガス配管6における流量調整弁10の上流側と下流側で均圧が取れてから流量調整弁10を閉じる第4の閉弁処理とを含む。
【0027】
なお、「均圧が取れる」とは、ガス配管における基準となる弁の両側で実質的に圧力が等しいことを意味し、例えば、圧力差が±0.5MPaの範囲内の状態である。また後述する「圧力計の測定値が等しくなる」点についても、同様の範囲内である。範囲の表現は、他にも差分の絶対値、例えば|P1-P2|≦0.5MPaなどでもよい。なお、誤差の範囲は、圧力を測定する計器の性能に依存する場合が多く、例えば圧力計のフルスケールの数%である。
【0028】
(第1の均圧工程)
出口弁8を開き(ST1)、ガス配管6における出口弁8の上流側と下流側で均圧が取れるまで、すなわち第1の圧力計9の計測値と第2の圧力計12の計測値とが等しくなるまで待機する(ST2の「NO」のルート)。第1の圧力計9の計測値と第2の圧力計12の計測値とが等しくなったら(ST2の「YES」のルート)、出口弁8を閉じる(ST3)。
【0029】
(第2の均圧工程)
次いで、流量調整弁10と充填弁11とを開く(ST4)。ガス配管6における流量調整弁10の上流側と下流側で均圧が取れるまで、すなわち第2の圧力計12の計測値と第3の圧力計15の計測値とが等しくなるまで待機する(ST5の「NO」のルート)。第2の圧力計12の計測値と第3の圧力計15の計測値とが等しくなったら(ST5の「YES」のルート)、流量調整弁10及び充填弁11を閉じる(ST6)。
なお、先端カップリング14は予め閉止されている。
【0030】
第1の均圧工程と第2の均圧工程をこの順に1回以上行ってガス配管内6を加圧する。そして、第2の均圧工程でガス配管6の流量調整弁10よりも下流側が予め設定した所定の圧力(第1の閾値圧力)を超えたら、第3の均圧工程と第4の均圧工程に進む。
【0031】
第2の均圧工程で第3の圧力計15の計測値が予め設定された第1の閾値圧力を超えた場合は、ST8に進む(ST7の「YES」のルート)。第3の圧力計15の計測値が予め設定された第1の閾値圧力を超えなかった場合は、ST1に戻る(ST7の「NO」のルート)。
【0032】
第1の均圧工程と第2の均圧工程の実施回数は、第3の圧力計15の計測値が予め設定された第1の閾値圧力を超えるか否かによって決まる。第1の均圧工程と第2の均圧工程を1回ずつ実施したときに第3の圧力計15の計測値が予め設定された第1の閾値圧力を超えれば、第1の均圧工程と第2の均圧工程の実施回数は1回とする。第1の均圧工程と第2の均圧工程を1回ずつ実施したときに第3の圧力計15の計測値が予め設定された第1の閾値圧力を超えなければ、第1の閾値圧力を超えるまで第1の均圧工程と第2の均圧工程を交互に繰り返す。
【0033】
このように、第1の閾値圧力までは、流量調整弁10による流量の調整を行わずに、ガス配管6内の昇圧を行う。そのため、第1の閾値圧力は、ガス配管6内への急激な圧力の増加による、安全弁16の作動や充填ホース13への圧力衝撃の発生が起こらない範囲で設定する必要がある。
第1の閾値圧力の値は、例えば、蓄圧器3に90MPaの水素を充填した場合は、70MPaとすることができる。
【0034】
(第3の均圧工程)
再び、出口弁8を開き(ST8)、ガス配管6における出口弁8の上流側と下流側で均圧が取れるまで、すなわち第1の圧力計9の計測値と第2の圧力計12の計測値とが等しくなるまで待機する(ST9の「NO」のルート)。第1の圧力計9の計測値と第2の圧力計12の計測値とが等しくなったら(ST9の「YES」のルート)、出口弁8を閉じる(ST10)。
【0035】
(第4の均圧工程)
次いで、充填弁11を開き(ST11)、流量調整弁10も徐々に開く(ST12)。そして、ガス配管6における流量調整弁10の上流側と下流側で均圧が取れているか、すなわち第2の圧力計12の計測値と第3の圧力計15の計測値とが等しいかどうかを確認する(ST13)。
【0036】
第4の均圧工程の第4の開弁処理(ST12)では、流量調整弁10を第2の開弁処理(ST4)よりも小さい開度で開く。
ST12における流量調整弁10の開度の調整方法としては、例えば、流量調整弁10を閉の状態から少しずつ開いていき、第3の圧力計15の計測値がわずかに上昇し始めた際に、流量調整弁10の操作を停止する方法が挙げられる。この方法では、急激な圧力上昇を抑制しつつ圧力を上昇させることができる。
【0037】
ST12における流量調整弁10の開度の調整方法の他の例としては、第3の圧力計15の計測値に対応して、流量調整弁10を予め設定された開度に調整する方法が挙げられる。本発明では、このように、第4の均圧工程において、ガス配管の流量調整弁よりも下流側の圧力に応じて流量調整弁の開度を調整することが好ましい。この方法では、急激な圧力上昇を抑制しつつ迅速に圧力を上昇させることができる。
【0038】
第3の圧力計15の計測値が第1の閾値圧力を超えた後は、ガス配管6内は高圧のガスが充填されているため、流量調整弁10の開度を調整して徐々に昇圧を行う。これにより、圧力のオーバーシュートの発生による安全弁16の作動や、充填ホース13への圧力衝撃の発生を防ぐことができる。
【0039】
ガス配管6における流量調整弁10の上流側と下流側で均圧が取れるまで、すなわち第2の圧力計12の計測値と第3の圧力計15の計測値とが等しくなるまで待機する(ST13の「NO」のルート)。第2の圧力計12の計測値と第3の圧力計15の計測値とが等しくなったら(ST13の「YES」のルート)、この時の第3の圧力計15の計測値が、予め設定された第2の閾値圧力を超えているかどうかを確認する(ST14)。
【0040】
この時の第3の圧力計15の計測値が、予め設定された第2の閾値圧力を超えなかった場合は(ST14の「NO」のルート)、充填弁11及び流量調整弁10を閉じ(ST15)、ST8に戻る。この時の第3の圧力計15の計測値が、予め設定された第2の閾値圧力を超えた場合は(ST14の「YES」のルート)、充填弁11を閉じる(ST16)。
【0041】
このように、第3の均圧工程と第4の均圧工程をこの順に1回以上行ってガス配管6内を加圧する。
第2の閾値圧力の値は、例えば、蓄圧器3に90MPaの水素を充填した場合は、75MPaとすることができる。
なお、図3における蓄圧器3の圧力は一定に見えるが、ガス配管6及び充填ホース13内の圧力が第2の閾値圧力以上になるまで、蓄圧器3に蓄圧されたガスをガス配管6及び充填ホース13内に移送するので、そのボリュームに応じて、若干低下する。
【0042】
第3の均圧工程と第4の均圧工程の実施回数は、第3の圧力計15の計測値が予め設定された第2の閾値圧力を超えるか否かによって決まる。第3の均圧工程と第4の均圧工程を1回ずつ実施したときに第3の圧力計15の計測値が予め設定された第2の閾値圧力を超えれば、第3の均圧工程と第4の均圧工程の実施回数は1回となる。第3の均圧工程と第4の均圧工程を1回ずつ実施したときに第3の圧力計15の計測値が予め設定された第2の閾値圧力を超えなければ、第2の閾値圧力を超えるまで第3の均圧工程と第4の均圧工程を交互に2回以上実施する。
【0043】
以上の操作(ST1~ST16)により、ガス配管6及び充填ホース13内の圧力を第2の閾値圧力以上にした後、所定の時間、ガス漏れが発生していないかの確認を行う。ガス漏れがなければ異常なしとして気密試験を終了する。
【0044】
以上説明したように、本発明の水素ステーションの気密試験方法においては、ガス配管に設けた出口弁と流量調整弁を用いて、それらの開閉を交互に繰り返することで、ガス配管内の圧力を徐々に高める。これにより、気密試験における急激な圧力の上昇を抑制できるため、圧力がオーバーシュートを起こすことによる安全弁の動作や、圧力衝撃の発生による充填ホースの故障を抑制できる。特に、第1の均圧工程と第2の均圧工程を実施した後、流量調整弁の開度を調整しながら行う第3の均圧工程と第4の均圧工程を実施すことで、急激な圧力の上昇をより安定して抑制することができる。
また、本発明では、気密試験における圧力の調整に出口弁と流量調整弁を用いており、調整弁が1つで済むため、ガス充填システム及びそれを備える水素ステーションの製造コストを削減でき、また装置の小型化も可能である。
【0045】
なお、本発明の技術範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
本発明は、出口弁及び流量調整弁を備えるガス充填システム1以外のガス充填システムを有する水素ステーションにおいてガス漏れの有無を調べる気密試験方法であってもよい。具体的には、例えば、冷却装置18が備えられていないガス充填システムを有する水素ステーションにおいてガス漏れの有無を調べる気密試験方法であってあってもよい。
本発明の本発明の水素ステーションの気密試験方法は、第3の均圧工程と第4の均圧工程を含まない方法であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…ガス充填システム、2…ガスタンク室、3…蓄圧器、4…ディスペンサー、5…制御装置、6…ガス配管、7…信号線、8…出口弁、9…第1の圧力計、10…流量調整弁、11…充填弁、12…第2の圧力計、13…充填ホース、14…先端カップリング、15…第3の圧力計、16…安全弁、17…脱圧弁、18…冷却装置。
図1
図2
図3