(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 7/04 20060101AFI20240424BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240424BHJP
B24B 49/04 20060101ALI20240424BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240424BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
B24B7/04 A
B24B41/06 L
B24B49/04 Z
B24B49/12
H01L21/304 622S
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2020000270
(22)【出願日】2020-01-06
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 宏平
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-037022(JP,A)
【文献】特開2015-009295(JP,A)
【文献】特開2011-093017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/04
B24B 41/06
B24B 49/04
B24B 49/12
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面に被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルの下における該保持面の中心を中心とする円周上の等間隔な位置に配置される
少なくとも1つが高さ調整可能である少なくとも3つの支持柱と、該支持柱を立設させるスライダと、該スライダを該保持面に平行な水平方向に移動させる水平移動手段と、研削砥石を環状に配置した研削ホイールを回転させて該チャックテーブルに保持された被加工物を該研削砥石を用いて研削する研削手段と、該保持面に垂直な上下方向に該研削手段を移動させる上下移動手段と、該保持面に保持された被加工物の厚みを測定する厚み測定手段と、を備える研削装置であって、
該チャックテーブルの下面と該スライダの上面との間隔を測定する間隔測定器と、
該研削砥石を徐々に下降させたことにより被加工物を所定の厚みに研削した該研削砥石を被加工物から離間させる際に、研削荷重を受けて小さくなった該間隔が、該研削荷重を小さくして研削荷重を受けていないときの該間隔に戻ろうとするスプリングバックによって予め設定した値になるときの該研削砥石の高さに研削砥石を上昇させ停止させた状態で予め設定した時間、該研削砥石の下面を該被加工物に接触させて該被加工物の被研削面を研削することと、該上下移動手段を用いて該予め設定した時間を経過した該研削砥石を上昇させて該研削砥石の下面を該被研削面から離間させることとを制御する制御手段と、
を備える、研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物を研削砥石を用いて研削加工する研削装置は、保持面に被加工物を保持する保持手段と、研削砥石を環状に配置した研削ホイールを回転させて、研削砥石を用いて保持手段に保持された被加工物を研削する研削手段と、研削手段を保持面に垂直な上下方向に移動させる上下移動手段とを備えている。
【0003】
研削加工は、研削手段を保持手段に接近させる下方向に移動させて、被加工物に研削砥石を押し付けながら研削している。特許文献1に開示のように研削荷重によって変化する保持面と研削面との平行度を監視して、平行度が低下しないように上下移動手段の移動速度を制御するという発明がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、研削砥石を被加工物に強く押し付けたくても押し付けられないために研削加工時間が大きくなるという問題がある。また、研削砥石を強く押し付けたことにより発生した研削荷重によって撓んだ保持手段および保持手段を支持する少なくとも3つの支持柱にかかる研削荷重が、被加工物を所定の厚みに研削した後にゆっくり研削砥石を上昇させることでなくなっていく。このときに撓んでいた保持手段などが元の形に戻ろうとして、ゆっくり上昇している研削砥石に接触することとなる。また、それぞれの支持柱にかかる研削荷重の大きさは異なるため、元に戻ろうとする力にも差が生じており、被加工物の径方向において研削砥石の当たる強さは異なる。その強さの違いによって被加工物の厚み精度が悪くなるという問題がある。
したがって、研削装置には、研削荷重で保持手段が撓んだとしても、被加工物を高精度の厚み精度で研削するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、保持面に被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルの下における該保持面の中心を中心とする円周上の等間隔な位置に配置される少なくとも1つが高さ調整可能である少なくとも3つの支持柱と、該支持柱を立設させるスライダと、該スライダを該保持面に平行な水平方向に移動させる水平移動手段と、研削砥石を環状に配置した研削ホイールを回転させて該チャックテーブルに保持された被加工物を該研削砥石を用いて研削する研削手段と、該保持面に垂直な上下方向に該研削手段を移動させる上下移動手段と、該保持面に保持された被加工物の厚みを測定する厚み測定手段と、を備える研削装置であって、該チャックテーブルの下面と該スライダの上面との間隔を測定する間隔測定器と、該研削砥石を徐々に下降させたことにより被加工物を所定の厚みに研削した該研削砥石を被加工物から離間させる際に、研削荷重を受けて小さくなった該間隔が、該研削荷重を小さくして研削荷重を受けていないときの間隔に戻ろうとするスプリングバックによって予め設定した値になるときの該研削砥石の高さに研削砥石を上昇させ停止させた状態で予め設定した時間、該研削砥石の下面を該被加工物に接触させて該被加工物の被研削面を研削することと、該上下移動手段を用いて該予め設定した時間を経過した該研削砥石を上昇させて該研削砥石の下面を該被研削面から離間させることとを制御する制御手段と、を備える、研削装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、スプリングバックを考慮して、研削砥石を離間させるときに被加工物から僅かに上昇させたZ軸方向の高さ位置で研削砥石を停止させて、回転する研削砥石を用いて被研削面の面精度を整えるスパークアウト研削を実施するため、保持手段のスプリングバックがなくなってから研削砥石を被加工物から離間させることができ、被加工物の厚み精度を高精度に仕上げることが可能になる。
また、スプリングバックを考慮して、研削砥石を高速で上昇させた位置でスパークアウト研削を実施するため、研削時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】研削装置を側方からみた様子を表す断面図である。
【
図3】本研削加工における研削砥石の下降速度の変化を表すグラフである。
【
図4】本研削加工におけるスパークアウト、及びエスケープカットの際の研削砥石の下降速度について表したグラフである。
【
図5】従来の研削加工における研削砥石の下降速度の変化を表すグラフである。
【
図6】従来の研削加工におけるスパークアウト、及びエスケープカットの際の研削砥石の下降速度について表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1 研削装置の構成
図1に示す研削装置1は、被加工物Wを研削加工する研削装置である。以下、研削装置1の構成について説明する。
研削装置1は、
図1に示すように、Y軸方向に延設されたベース10と、ベース10の上における+Y方向側に立設されたコラム11とを備えている。
【0010】
ベース10の上には、チャックテーブル2が配設されている。チャックテーブル2は、円板状の吸引部20と吸引部20を支持する環状の枠体21と枠体21と枠体21を支持する基台22とを備えている。吸引部20の上面は被加工物Wが吸引保持される保持面20aであり、枠体21の上面21aは、保持面20aに面一に形成されている。基台22の下部には、Z軸方向の回転軸25を軸にして基台22を回転させる機能を有する回転手段24が連結されている。回転手段24を用いて回転軸25を軸にして基台22を回転させることによって、基台22に支持されているチャックテーブル2が回転軸25を軸にして回転することとなる。
【0011】
ベース10の上には、厚み測定手段100が配設されている。厚み測定手段100は、例えば研削装置1のベース10の上の-X方向側に配設された筐体103を備えている。筐体103の側面には、研削手段3の下方に向けて略水平に延びる2本のアームが連結されており、2本のアームの筐体103に連結されていない側の端部には、それぞれ保持面ハイトゲージ101及び上面ハイトゲージ102が配設されている。
保持面ハイトゲージ101の接触子を枠体21の上面21aの上に接触させることにより、枠体21の上面21aに面一な吸引部20の保持面20aの高さを測定することができる。また、例えば保持面20aに被加工物Wが保持されている状態で、上面ハイトゲージ102の接触子を被加工物Wの上面Waに接触させることにより、被加工物Wの上面Waの高さを測定することができる。
筐体103は、算出手段104に接続されている。算出手段104においては、保持面ハイトゲージ101によって測定された保持面20aの高さから、上面ハイトゲージ102によって測定された被加工物Wの上面Waの高さを差し引いて、被加工物Wの厚みを算出することが可能となっている。
【0012】
コラム11の-Y方向側の側面には、例えば、研削手段3を支持する上下移動手段4が配設されている。研削手段3は、Z軸方向の回転軸35を有するスピンドル30と、スピンドル30を回転可能に支持するハウジング31と、回転軸35を軸にしてスピンドル30を回転駆動するスピンドルモータ32と、スピンドル30の下端に接続された円環状のマウント33と、マウント33の下面に着脱可能に装着された研削ホイール34とを備えている。研削ホイール34は、ホイール基台341と、ホイール基台341の下面に環状に配列された略直方体形状を有する複数の研削砥石340とを備えており、研削砥石340の下面340aは被加工物Wを研削する研削面となっている。
スピンドルモータ32を用いて、回転軸35を軸にしてスピンドル30を回転させることにより、スピンドル30に接続されているマウント33及びマウント33に装着されている研削砥石340が、回転軸35を軸にして回転することとなる。
【0013】
上下移動手段4は、Z軸方向の回転軸45を有するボールネジ40と、ボールネジ40に対して平行に配設された一対のガイドレール41と、ボールネジ40の上端に連結され回転軸45を軸にしてボールネジ40を回動させるモータ42と、内部のナットがボールネジ40に螺合し側部がガイドレール41に摺接する昇降板43と、昇降板43に連結されスピンドル30を保持するホルダ44とを備えている。
モータ42を用いてボールネジ40を駆動することにより、ボールネジ40が回転軸45を軸にして回転すると、これに伴って、昇降板43がガイドレール41に案内されてZ軸方向に昇降移動するとともにホルダ44に保持されている研削手段3が、保持面20aに垂直な上下方向であるZ軸方向に移動することとなる。
【0014】
チャックテーブル2の周囲にはカバー28が配設されており、カバー28は蛇腹29に伸縮可能に連結されている。
チャックテーブル2がY軸方向に移動すると、カバー28がチャックテーブル2と一体的にY軸方向に移動して、蛇腹13が伸縮することとなる。
【0015】
研削装置1は、チャックテーブル2の下における保持面20aの中心Oを中心とする円周上に等間隔に配設された少なくとも3つ(
図1においては2つの支持柱6が示されている)の支持柱6を備えている。
【0016】
研削装置1は、直方体状のスライダ7を備えている。スライダ7の上面7aには、支持柱6が立設されている。
なお、スライダーは、ターンテーブルであってもよい。
【0017】
研削装置1は、間隔測定器8を1つ備えてもよいし、複数備えていてもよい。複数の間隔測定器8は、保持面20aの中心Oを中心とする円周上における等間隔に離れた少なくとも3箇所において、チャックテーブル2の基台22の下面22bとスライダ7の上面7aとの間隔を測定することができる。なお、間隔測定器8が1つの場合は、研削砥石の円周と保持面20aの外周とが交差する部分の直下で測定するとよい。
図1においては、スライダ7の上面7aにおける支持柱6に隣接する位置に配設された2つの間隔測定器8が示されており、間隔測定器8のうちの単数又は複数が省略されている。
間隔測定器8は、例えば筐体80、筐体80に設けられた投光部81及び受光部82を有するレーザー変位計等(例えばLK-G5000、キーエンス社製)である。間隔測定器8は、投光部81からレーザー光線を投光して、チャックテーブル2の基台22の下面22bにおいて反射した反射光を受光部において受光することにより、チャックテーブル2の基台22の下面22bとスライダ7の上面7aとの間隔を測定することができる。
【0018】
ベース10の内部には、内部ベース12が配設されている。内部ベース12の上には、スライダ7を保持面20aに平行な水平方向(Y軸方向)に移動させる水平移動手段5が配設されている。
【0019】
水平移動手段5は、Y軸方向の回転軸55を有するボールネジ50と、ボールネジ50に対して平行に配設された一対のガイドレール51と、ボールネジ50に連結され回転軸55を軸にしてボールネジ50を回動させるY軸モータ52と、底部のナットがボールネジ50に螺合してガイドレール51に沿ってY軸方向に移動するスライダ7とを備えている。Y軸モータ52によりボールネジ50が駆動されてボールネジ50が回転軸55を軸として回転すると、これに伴い、スライダ7がガイドレール51に案内されてY軸方向に移動することとなる。
【0020】
支持柱6は、
図2に示すように、固定支持部6A及び可動支持部6Bを備えている。固定支持部6Aは、スライダ7の上面7aに立設された柱状の部材であり、基台22を支持している。
【0021】
可動支持部6Bは、例えば、筒部61と軸部62とモータ63とを備えるボールシリンダ機構である。筒部61は、例えばその底面61bが基台22の下面22bに連結された有底円筒状のシリンダ等であり、その内側面には雌ネジ61aが形成されている。
軸部62は、例えばスライダ7に設けられた穴70に回転可能に埋設された小径の下部620と、筒部61の雌ネジ61aに対応する雄ネジ62aが形成された大径の上部621とを有するボールネジ等である。
図2においては、上部621の雄ネジ62aが筒部61の雌ネジ61aに螺合して上部621の上側半分程度が筒部61に収容されている。
モータ63は、軸部62に接続されている。モータ63は、回転軸65を軸にして軸部62を回転させる機能を有している。
【0022】
モータ63を用いて軸部62を駆動することにより、軸部62が回転軸65を軸にして回転すると、その上部621の雄ネジ62aが筒部61の雌ネジ61aに螺合して、筒部61が軸部62に対してZ軸方向に昇降するとともに、筒部61に連結されている基台22の+Y方向側がZ軸方向に昇降して、チャックテーブル2の傾きが調整される。
例えば、軸部62が回転軸65を軸にして所定の回転方向に回転して、軸部62の上部621が筒部61に螺入していくと、チャックテーブル2の+Y方向側が-Z方向に引き下げられることとなる。一方で、例えば、軸部62が回転軸65を軸にして上記の回転方向と反対の方向に回転して、軸部62の上部621が筒部61から-Z方向に突出していくとチャックテーブル2の+Y方向側が+Z方向に押し上げられることとなる。
【0023】
研削装置1は、制御手段9を備えている。制御手段9は、研削装置1の各種の機構の動作を制御することができる。
【0024】
2 研削装置の動作
上記の研削装置1を用いて被加工物Wを研削加工する際の研削装置1の動作について、以下に説明する。
まず、
図1に示したチャックテーブル2の保持面20aに被加工物Wを載置してから、図示しない吸引手段を用いて吸引力を発揮して、生み出された吸引力を保持面20aに伝達することによって、保持面20aに被加工物Wを吸引保持する。
【0025】
次に、保持面20aに被加工物Wが吸引保持されている状態で、水平移動手段5を用いて保持面20aに被加工物Wが保持されているチャックテーブル2を+Y方向に移動させて、研削手段3の下方に位置付ける。これにより、
図2に示すように、研削砥石340の下面340aの外周が、被加工物Wの上面Waの中心を通るように、チャックテーブル2が位置付けられる。
【0026】
その後、回転手段24を用いて回転軸25を軸にしてチャックテーブル2を回転させることによって、回転軸25を軸にしてチャックテーブル2の保持面20aに吸引保持されている被加工物Wを回転させる。
また、スピンドルモータ32を用いて回転軸35を軸にして研削砥石340を回転させる。
【0027】
チャックテーブル2の保持面20aに吸引保持されている被加工物Wが回転軸25を軸にして回転しており、かつ、研削砥石340が回転軸35を軸にして回転している状態で、研削砥石340を-Z方向に下降させていき、被加工物Wを研削加工する。
【0028】
具体的には、まず、制御手段9を用いて上下移動手段4を制御して、研削手段3を駆動することにより、研削手段3の研削砥石340を
図3に示す加工準備の下降速度Voで-Z方向に下降させる。これにより、研削砥石340の下面340aがエアーカット位置Z1に位置づけられる。
【0029】
次いで、制御手段9を用いて上下移動手段4を制御して、研削砥石340を第1研削速度V1でさらに-Z方向に下降させていき、エアーカットを行う。これにより、研削砥石340の下面340aが、研削面接触位置Zcに位置づけられて、被加工物Wの上面Waに接触する。第1研削速度V1は、例えば上記の加工準備の下降速度Voよりも小さいものとする。
【0030】
研削砥石340の下面340aが被加工物Wの上面Waに接触している状態で、さらに、研削砥石340を第1研削速度V1で-Z方向に徐々に下降させていき、被加工物Wの粗研削を行う。被加工物Wの粗研削終了時、研削砥石340の下面340aは粗研削終了位置Z2に位置づけられる。
【0031】
そして、研削砥石340の下面340aが粗研削終了位置Z2に位置づけられている状態で、制御手段9を用いて上下移動手段4を制御して、研削砥石340を第2研削速度V2で、さらに-Z方向に下降させていき、被加工物Wの仕上げ研削を行う。第2研削速度V2は、例えば上記の第1研削速度V1よりも小さいものとする。
被加工物Wの研削加工中には、
図1に示した厚み測定手段100によって被加工物Wの厚みが測定される。被加工物Wの厚みが所定の厚みになったら仕上げ研削を終了する。仕上げ研削終了時、研削砥石340の下面340aは仕上げ研削終了位置Z3に位置づけられる。
【0032】
研削加工中、
図1及び
図2に示した間隔測定器8を用いて、保持面20aの中心Oを中心とする円周上の等間隔な3箇所における、チャックテーブル2の基台22の下面22bとスライダ7の上面7aとの間隔を測定する。
上記のように、研削砥石340の下面340aが被加工物Wの上面Waに接触している状態で、研削砥石340を-Z方向に移動させて被加工物Wの上面Waに対して押し下げていくと、被加工物Wが保持されているチャックテーブル2が研削砥石340から-Z方向への押力等である研削荷重を受けて、研削荷重を受けていないときよりも基台22の下面22bの高さ位置が低くなる。
そのため、被加工物Wの仕上げ研削終了時には、基台22の下面22bとスライダ7の上面7aとの間隔が、
図3に示すように、研削荷重によってチャックテーブル2が沈み込んだ量Dの分小さくなっている。
【0033】
研削加工後、上下移動手段4を用いて研削砥石340を+Z方向に上昇させることにより、研削砥石340を被加工物Wから離間させる。その際、チャックテーブル2の基台22にスプリングバックが生じることにより、研削荷重を受けて小さくなっている基台22の下面22bとスライダ7の上面7aとの間隔が、研削荷重を受けていないときの大きさに戻ろうとする。
【0034】
そこで、まず、制御手段9を用いて上下移動手段4を制御して、チャックテーブル2の基台22の下面22bとスライダ7の上面7aとの間隔が予め設定した値になるときの研削砥石340の下面340aの高さZ4に研削砥石340を上昇させて、研削砥石340の上昇を停止させる。
その状態で、予め設定した時間T、研削砥石340の下面340aを被加工物Wに接触させて、スパークアウトを行う。
【0035】
そして、予め設定した時間Tが経過した後、制御手段9を用いて上下移動手段4を制御して、研削砥石340をエスケープ速度V3で+Z方向に上昇させて、研削砥石340の下面340aを被加工物Wの上面Waである被研削面から離間させる。エスケープ速度V3は、例えば約0.3μm/secとする。
研削砥石340が、エスケープ速度V3で+Z方向に上昇しながら、被加工物Wの上面Waの上方において空転することにより、エスケープカットが行われる。エスケープカット終了時、研削砥石340の下面340aはエスケープカット終了位置Z5に位置づけられる。
研削砥石340の下面340aがエスケープカット終了位置Z5に位置づけられているとき、研削荷重が解消されている。
【0036】
上記のスパークアウト及びエスケープカットを行うことにより、被加工物Wの上面Waが平坦化されるとともに、研削加工時に上面ハイトゲージ102の接触子と被加工物Wの上面Waとの接触によって被加工物Wの上面Waに生じた接触痕が除去される。
【0037】
エスケープカット終了後、研削砥石340を上昇退避速度V4で+Z方向に上昇させて、被加工物Wの上面Waから退避させる。上昇退避速度V4は、例えばV1~V3と比べて大きな速度であるとする。
【0038】
図5及び
図6に示すように、従来の研削加工では、被加工物Wの仕上げ研削を行った後、研削砥石340の昇降移動を停止させた状態で、スパークアウトを行い、その後、エスケープカットを行っていた。そのため、チャックテーブル2等が大きな研削荷重を受けている状態でエスケープカットを行う必要があり、エスケープカットに多くの時間がかかっていた。また、エスケープカット終了時においても、研削荷重によって沈み込んだ量Dのすべてが解消されておらず、研削加工が厚み精度を欠くものであった。
なお、研削荷重によって沈み込んだ量Dは、チャックテーブル2の沈み込みのみを示すものではなく、研削手段3に対してチャックテーブル2が沈み込んだ量を示している。つまり、研削荷重によって、チャックテーブル2には下方向の力がかかっており、研削手段3には上方向の力がかかっている。
【0039】
それに対して、本研削装置による被加工物Wの研削加工では、スプリングバックを考慮して、研削砥石340を被加工物Wの上面Waから離間させる際に、被加工物WからZ軸方向に所定の高さ(
図3におけるZ4-Z3)上昇させてから、研削砥石340の上昇を停止させて、回転する研削砥石340を被加工物Wの上面Waである被研削面に接触させてスパークアウト研削を実施することにより、上面Waを整えている。これにより、チャックテーブル2のスプリングバックがなくなってから、研削砥石340を被加工物Wから離間させることができ、被加工物Wの厚み精度を高精度に仕上げることができる。
また、スプリングバックを考慮して、研削砥石340を上昇させた位置においてスパークアウト研削を実施するため、研削時間を短縮することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:研削装置 10:ベース 11:コラム 12:内部ベース
100:厚み測定手段 101:上面ハイトゲージ 102:保持面ハイトゲージ
103:筐体 104:算出手段
2:チャックテーブル 20:吸引部 20a:保持面
21:枠体 21a:枠体の上面
22:基台 22a:基台の上面 22b:基台の下面 24:回転手段
25:回転軸 28:カバー 29:蛇腹
3:研削手段 30:スピンドル 31:ハウジング 32:スピンドルモータ
33:マウント 34:研削ホイール 340:研削砥石 340a:研削砥石の下面
341:ホイール基台 35:回転軸
4:上下移動手段 40:ボールネジ 41:ガイドレール 42:Z軸モータ
43:昇降板 44:ホルダ 45:回転軸
5:水平移動手段 50:ボールネジ 51:ガイドレール 52:Y軸モータ
55:回転軸 6:支持柱 6A:固定支持部 6B:可動支持部
61:筒部 61a:雌ネジ 61b:筒部の底面 62:軸部 62a:雄ネジ
620:軸部の下部 621:軸部の上部 63:モータ
7:スライダ 7a:スライダの上面 70:穴
8:間隔測定器 80:筐体 81:投光部 82:受光部 9:制御手段
W:被加工物 Wa:被加工物の上面 O:保持面の中心
D:研削荷重によって沈み込んだ量 T:予め設定したスパークアウト研削の時間
Zo:研削砥石の初期位置 Z1:エアーカット位置 Z2:粗研削終了位置
Z3:仕上げ研削終了位置 Z4:チャックテーブルの下面とスライダの上面との間隔が予め設定した値になる研削砥石の下面の高さ Z5:エスケープカット終了位置
Vo:加工準備の下降速度 V1:第1研削速度 V2:第2研削速度
V3:エスケープ速度 V4:上昇退避速度