IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特許7478344電気コネクタ、加熱部材、定着装置及び画像形成装置
<>
  • 特許-電気コネクタ、加熱部材、定着装置及び画像形成装置 図1
  • 特許-電気コネクタ、加熱部材、定着装置及び画像形成装置 図2A
  • 特許-電気コネクタ、加熱部材、定着装置及び画像形成装置 図2B
  • 特許-電気コネクタ、加熱部材、定着装置及び画像形成装置 図2C
  • 特許-電気コネクタ、加熱部材、定着装置及び画像形成装置 図2D
  • 特許-電気コネクタ、加熱部材、定着装置及び画像形成装置 図3
  • 特許-電気コネクタ、加熱部材、定着装置及び画像形成装置 図4
  • 特許-電気コネクタ、加熱部材、定着装置及び画像形成装置 図5
  • 特許-電気コネクタ、加熱部材、定着装置及び画像形成装置 図6
  • 特許-電気コネクタ、加熱部材、定着装置及び画像形成装置 図7
  • 特許-電気コネクタ、加熱部材、定着装置及び画像形成装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】電気コネクタ、加熱部材、定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240425BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20240425BHJP
   H05B 3/02 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G03G15/20 510
H01R13/03 D
H05B3/02 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020070459
(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公開番号】P2021167859
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-078666(JP,U)
【文献】特開平06-188533(JP,A)
【文献】特開2003-084603(JP,A)
【文献】特開2015-191734(JP,A)
【文献】米国特許第06285006(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 15/20
H05B 3/02- 3/18
H05B 3/40- 3/82
H01R 13/03
H01R 19/00-23/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング側の給電部と、通電により発熱する抵抗部材を有する基材側の一面上に形成された被給電部を有する電気コネクタであって、
前記ハウジングは断面U字状に形成されると共に当該断面U字状の開口に対して前記基材を挿抜可能に構成され、前記断面U字状の対向する内面の一面側にのみ前記給電部が設けられ
前記給電部と前記被給電部はそれぞれの接点部が互いに接触し、
前記給電部と前記被給電部の少なくとも一方が、
前記接点部を含む第1の導電性金属で形成された表層と、
当該表層の下に形成された第2の導電性金属で形成された下地層とを有し、
当該下地層が前記接点部とは異なる部分で大気に露出した露出部を有することを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
ハウジング側の給電部と、通電により発熱する抵抗部材を有する基材側の一面上に形成された被給電部を有する電気コネクタであって、
前記ハウジングは断面U字状に形成されると共に当該断面U字状の開口に対して前記基材を挿抜可能に構成され、前記断面U字状の対向する内面の一面側にのみ前記給電部が設けられ
前記給電部と前記被給電部はそれぞれの接点部が互いに接触し、
前記給電部と前記被給電部の少なくとも一方が、
前記接点部を含む第1の導電性金属で形成された表層と、
当該表層の下に形成された第2の導電性金属で形成された下地層とを有し、
前記給電部と前記被給電部の他方が、前記第2の導電性金属で形成され前記接点部とは異なる部分で大気に露出した露出部を有することを特徴とする電気コネクタ。
【請求項3】
前記接点部を中心とする6mm四方の範囲内における前記露出部の面積割合が1%~50%であることを特徴とする請求項1又は2の電気コネクタ。
【請求項4】
第3の導電性金属で形成された基材の表面の一部が前記下地層で覆われると共に、当該下地層の表面の一部が前記表層で覆われていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項の電気コネクタ。
【請求項5】
前記給電部と前記被給電部が、前記第1の導電性金属で形成された表層を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項の電気コネクタ。
【請求項6】
前記給電部が、銀メッキによる前記表層と、ニッケルメッキによる前記下地層と、銅基材とを有する三層構造であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項の電気コネクタ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項の電気コネクタを備え、通電により発熱する抵抗部材が前記被給電部に接続されていることを特徴とする加熱部材。
【請求項8】
前記加熱部材が長手方向を有するステンレス製の基材を有し、当該基材の長手方向の端部が大気に露出すると共に、当該長手方向の端部に請求項1から6のいずれか1項の電気コネクタを備えたことを特徴とする請求項7の加熱部材。
【請求項9】
請求項7又は8の加熱部材を備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項9の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタ、加熱部材、当該加熱部材を備えた定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の定着装置に使用する加熱部材(面状ヒータなど)は、コネクタを通じて電力が供給される(特許文献1~3参照)。コネクタのコネクタ端子は相手側の電極に対して弾性圧で接触する。画像形成装置の本体マシンは稼働により振動するので、この振動でコネクタ端子と電極との間の接点部に微小な位置ズレが繰り返し生じ、これにより接点部が徐々に摩耗する。
【0003】
接点部は密閉が困難なため大気に露出(暴露)しているため、大気中の酸素や硫黄ガスで接点部が腐食(酸化、硫化)される。腐食した領域は電気抵抗が増大するので、コネクタ端子が腐食領域に接触すると抵抗上昇による導通不良が起こる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、コネクタ端子の表面は、耐食性と電気導通性を向上するため一般的に複数の金属材料でメッキされる。特許文献1(特開平06‐084584号公報)の電気コネクタは、コネクタ端子の銅基材に銀メッキまたはニッケルメッキを施し、電極の接点部にAg/Pt合金を使用し、接点部以外はAg/Pd合金を使用する。シングルヒータ(SH)の場合、一般的にコネクタ端子の銅基材にニッケルメッキと銀メッキを順に積層することが行われている。
【0005】
このような積層構造において、表層の銀メッキが本体マシンの振動摩擦で剥がれて下地層のニッケルメッキが露出することがある。表層と下地層は金属材料が異なるので腐食しやすいガスも異なる。このため、接点部の腐食を抑制しようとすると、各種金属に応じた防錆剤が必要となり、コネクタ端子の製造コストや端子サイズが大型化するという課題があった。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、簡単かつ低コストな構成でコネクタ端子の接点部に発生する腐食を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の電気コネクタは、給電部と被給電部を有する電気コネクタであって、前記給電部と前記被給電部はそれぞれの接点部が互いに接触し、前記給電部と前記被給電部の少なくとも一方が、前記接点部を含む第1の導電性金属で形成された表層と、当該表層の下に形成された第2の導電性金属で形成された下地層とを有し、当該下地層が前記接点部とは異なる部分で大気に露出した露出部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コネクタ端子の接点部に発生する腐食を簡単かつ低コストに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の原理図である。
図2A】本発明の実施形態に係る第1の定着装置の断面図である。
図2B】本発明の実施形態に係る第2の定着装置の断面図である。
図2C】本発明の実施形態に係る第3の定着装置の断面図である。
図2D】本発明の実施形態に係る第4の定着装置の断面図である。
図3】シングルヒータの(a)平面図と(b)断面図である。
図4】シングルヒータの電極に接続する電気コネクタの(a)斜視図、(b)コネクタ端子の側面図、(c)コネクタ端子の拡大断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係るコネクタ端子の(a)摩耗前の断面図と(b)摩耗後の断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るコネクタ端子の(a)摩耗前の断面図と(b)摩耗後の断面図である。
図7】本発明の第3実施形態に係るコネクタ端子の(a)摩耗前の断面図、(b)摩耗後の断面図、(c)電極の平面図である。
図8】従来のコネクタ端子の(a)摩耗前の断面図、(b)摩耗後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る加熱装置と、当該加熱装置を使用した定着装置及び画像形成装置(レーザプリンタ)について図面を参照して説明する。レーザプリンタは画像形成装置の一例であり、当該画像形成装置はレーザプリンタに限定されないことは勿論である。すなわち、画像形成装置は複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、及びインクジェット記録装置のいずれか一つ、またはこれらの少なくとも2つ以上を組み合わせた複合機として構成することも可能である。
【0011】
なお、各図中の同一または相当する部分には同一の符号を付し、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。また各構成部品の説明にある寸法、材質、形状、その相対配置などは例示であって、特に特定的な記載がない限りこの発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
【0012】
以下の実施形態では「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は紙(用紙)だけでなくOHPシートや布帛、金属シート、プラスチックフィルム、或いは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。
【0013】
現像剤やインクを付着させることができる媒体、記録紙、記録シートと称されるものも、すべて「記録媒体」に含まれる。また「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等も含まれる。
【0014】
また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することも意味する。
【0015】
(画像形成装置)
図1は本発明に係る定着装置300を備えた画像形成装置の原理図である。画像形成装置は像担持体2(例えば感光体ドラム)と、ドラムクリーニング装置3と、像担持体2の表面を一様帯電する帯電手段としての帯電装置4と、像担持体2上に形成された静電潜像の可視像処理を行う現像手段としての現像装置5と、除電装置等を有している。
【0016】
像担持体2の上方に配設された露光器7は、画像情報に応じた書き込み走査、すなわち、画像データに基づいてレーザダイオードからレーザ光Lbをミラー7aで反射して像担持体2に照射するように構成されている。レーザ光Lbの照射で像担持体2に形成された静電潜像に、現像装置5から現像剤としてのトナーが供給されて像担持体2上にトナー画像が形成されるようになっている。
【0017】
一方、分離搬送手段としてのレジストローラ対250は、給紙トレイ50から給紙ローラ60で給紙された用紙を一旦停止し、この一旦停止により用紙の先端側に弛みが形成されて用紙の斜行(スキュー)が修正されるように構成されている。
【0018】
レジストローラ対250に突き当てられて先端部に弛みが形成された用紙は、像担持体2上に形成されたトナー像が正確な位置に転写されるタイミングに合わせ、転写ニップNに送り出される。像担持体2の下方には転写装置TMが配設され、転写ニップNにおいて印加されたバイアスによって、転写ニップNに送り出された用紙に像担持体2のトナー画像転写されるように構成されている。
【0019】
定着装置300は、加熱装置を内包する定着ベルト310と、この定着ベルト310に対して所定の圧力で当接しながら回転する加圧部材としての加圧ローラ320を備えている。定着装置300は後述する図2A図2Dのように各種の型式が可能であるが、ここでは図2Aの型式に沿って説明する。
【0020】
次に、画像形成装置の基本的動作について説明する。給紙ローラ60は画像形成装置の制御部からの給紙信号によって回転する。給紙ローラ60は、給紙トレイ50に積載された束状用紙の最上位の用紙のみを分離して給紙路の下流側へ送り出す。
【0021】
給紙ローラ60によって送り出された用紙は、その先端がレジストローラ対250のニップに到達すると弛みを形成し、その状態で待機する。そして、像担持体2上に形成されたトナー画像を転写ニップNにおいて用紙に転写する最適なタイミング(同期)を図ると共に、用紙の先端スキューを補正する。
【0022】
帯電装置4は、像担持体2の表面を高電位に均一に帯電する。そして、露光器7は、画像データに基づいたレーザ光Lbを像担持体2の表面に照射する。
【0023】
レーザ光Lが照射された像担持体2の表面は、照射された部分の電位が低下して、静電潜像を形成する。現像装置5は、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体を有し、未使用のトナーを、現像剤担持体を介して、静電潜像が形成された像担持体2の表面部分に転移させる。
【0024】
トナーが転移した像担持体2は、その表面にトナー画像を形成(現像)する。そして、像担持体2上に形成されたトナー画像を転写ニップNで用紙に転写する。
【0025】
ドラムクリーニング装置3は、転写行程を経た後の像担持体2の表面に付着している残留トナーを除去する。除去された残留トナーは、廃トナー搬送手段によって廃トナー収容部へ送られ回収される。また、除電装置は、クリーニング装置3によって残留トナーが除去された像担持体2の残留電荷を除電する。
【0026】
トナー画像が転写された用紙は定着装置300へと搬送される。そして、定着装置300に搬送された用紙は、定着ベルト310と加圧ローラ320によって挟まれ、加熱・加圧することで未定着トナー画像が用紙に定着される。トナー画像が定着された用紙は、定着装置300から定着後搬送路へ送り出される。
【0027】
(定着装置)
次に、本発明の実施形態に係る第1~第4の定着装置300を図2A図2Dを参照して以下さらに説明する。第1の定着装置は図2Aに示すように、低熱容量の薄肉の定着ベルト310と加圧ローラ320で構成されている。定着ベルト310は、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。
【0028】
定着ベルト310の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。
【0029】
また、定着ベルト310の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト310の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0030】
加圧ローラ320は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金321と、この芯金321の表面に形成された弾性層322と、弾性層322の外側に形成された離型層323とで構成されている。弾性層322はシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。
【0031】
弾性層322の表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層323を形成するのが望ましい。定着ベルト310に対して加圧ローラ320が付勢手段により圧接している。
【0032】
定着ベルト310の内側に、ステー350及びヒータホルダ340が軸線方向に配設されている。ステー350は金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が加熱装置の両側板に支持されている。ステー350は加圧ローラ320の押圧力を確実に受けとめて定着ニップSNを安定的に形成する。
【0033】
ヒータホルダ340は加熱装置の基材341を保持するためのもので、ステー350によって支持されている。ヒータホルダ340は好ましくはLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成することができ、これによりヒータホルダ340への熱伝達が減って効率的に定着ベルト310を加熱することができる。
【0034】
ヒータホルダ340の形状は、基材341の高温部との接触を回避するために、基材341の短手方向両端部付近の各2箇所のみを支持する形状にしている。これにより、ヒータホルダ340へ流れる熱量をさらに低減して効率的に定着ベルト310を加熱することができる。
【0035】
加熱装置は抵抗発熱体で構成された抵抗部材370を有する。抵抗部材370は細長の金属製薄板部材を絶縁材料で被覆した基材341の上に形成される。
【0036】
基材341の材料としては低コストなアルミやステンレスなどが好ましい。基材341は金属製に限定されたものではなく、アルミナや窒化アルミなどのセラミックや、ガラス、マイカなどの耐熱性と絶縁性に優れた非金属材料で構成することも可能である。
【0037】
加熱装置の均熱性を向上し画像品位を高めるため、基材341を銅、グラファイト、グラフェンなどの高熱伝導率の材料で構成してもよい。本実施形態では、短手幅8mm、長手幅270mm、厚さ1.0mmのアルミナ基材を使用している。
【0038】
定着ニップSNとは反対側である基材341の裏面における最小紙の通紙幅の範囲内に、第1温度検出部材としてのサーミスタTH1が配置される。サーミスタTH1により、いずれのサイズの紙においても、紙に接触するエリアの定着ベルト310の温度を検知する。そして当該サーミスタTH1で検出される抵抗部材370ないし基材341の温度T1に基づいて、抵抗部材370の温度が制御される。
【0039】
また基材341の裏面における最小紙の範囲外における、抵抗部材370の長さ(幅)より大きい紙の中で最小の紙の端部付近に、第2温度検出部材としてのサーミスタTH2が配置される。当該サーミスタTH2で検出される抵抗部材370ないし基材341の温度T1に基づいて、定着ベルト310の端部温度過昇温を抑制するように抵抗部材370の温度が制御される。
【0040】
(定着装置の他の実施形態)
定着装置300は図2Aの第1の定着装置に限定されない。以下、図2B図2Dを参照して第2~第4の定着装置について説明する。第2の定着装置は、図2Bに示すように、加圧ローラ320と反対側に押圧ローラ390を有し、当該押圧ローラ390と加熱装置との間で定着ベルト310を挟んで加熱する。
【0041】
定着ベルト310の内側に前述した加熱装置が配設されてる。ステー350の片側に補助ステー351が取り付けられ、反対側にニップ形成部材381が取り付けられている。加熱装置はこの補助ステー351に保持されている。ニップ形成部材381は定着ベルト310を介して加圧ローラ320と当接して定着ニップSNを形成している。
【0042】
第3の定着装置は、図2Cに示すように、定着ベルト310の内側に加熱装置が配設されてる。この加熱装置は、前述した押圧ローラ390を省略する代わりに、定着ベルト310との周方向接触長さを長くするため、定着ベルト310の曲率に合わせて基材341と絶縁層385の横断面を円弧状に形成している。抵抗部材370は円弧状の基材341の中央に配置されている。その他は図2Bの第2定着装置と同じである。
【0043】
第4の定着装置は、図2Dに示すように、加熱ニップHNと定着ニップSNに分けて構成している。すなわち、加圧ローラ320の定着ベルト310とは反対側に、ニップ形成部材381と、金属製のチャンネル材で構成されたステー352を配置し、これらニップ形成部材381とステー352を内包するように加圧ベルト334を周回可能に配設している。そして当該加圧ベルト334と加圧ローラ320との間の定着ニップSNに用紙を通紙して加熱・定着する。その他は図2Aの第1定着装置と同じである。
【0044】
(定着用の面状ヒータ)
図3はシングルヒータ(SH)を使用した定着用の面状ヒータ330を示したもので、この面状ヒータ330は直線状の2本の抵抗部材370を有する。抵抗部材370は基材341の長手方向に平行二列で直列線状に形成される。二列の抵抗部材370の一端部は、基材341の一端側で長手方向に形成された小抵抗値の給電線379a、379cを介して、被給電部としての電極370c、370dにそれぞれ接続される。
【0045】
電極370c、370dは、後述する図4の電気コネクタ400を介して、本体マシンの交流電源を含む電力供給手段に接続される。電力供給手段は、CPU,ROM,RAM,I/Oインターフェース等を包含する制御装置(マイクロコンピュータ)を有し、前記サーミスタTH1、TH2の検知温度に基づいて定着ベルト310の温度を所望の温度に制御する。また通紙時などでは前記検知温度とは別に、通紙による抜熱分を考慮して、追加電力を適切に投入することで定着ベルト310の温度を適切に制御する。
【0046】
抵抗部材370の他端部は、基材341の他端側で短手方向に形成された小抵抗値の給電線379bを介して、基材341の長手方向反対側に向けて折り返す形で接続される。抵抗部材370、電極370c、370dおよび給電線379a~379cは、スクリーン印刷によって所定の線幅・厚みで形成される。
【0047】
抵抗部材370の材料は、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により塗工し、その後の焼成によって形成することができる。抵抗部材370の抵抗値は例えば常温で10Ωとすることができる。抵抗部材370の抵抗材料はこの他に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)などを使用することもできる。
【0048】
抵抗部材370と給電線379a~379cの表面は、薄いオーバーコート層ないし絶縁層385で覆われている。当該絶縁層385によって、定着ベルト310の摺動性が確保されると共に、定着ベルト310と抵抗部材370、給電線379a~379cとの間の絶縁性が確保される。
【0049】
この絶縁層385の材料は、例えば厚さ75μmの耐熱性ガラスを用いることができる。抵抗部材370は図3(b)上側の絶縁層385に接触する定着ベルト310を伝熱により加熱してその温度を上昇させ、定着ニップSNに搬送される用紙の未定着画像を加熱して定着する。
【0050】
(電気コネクタ)
前述した被給電部としての電極370c、370dに対して、図4の電気コネクタ400が水平方向から挿抜可能に接続される。電気コネクタ400は耐熱性樹脂により断面U字状に形成されたハウジング410と、当該ハウジング410の後端に差し込まれたハーネス420を有する。
【0051】
ハーネス420の電線は、ハウジング410の内面に配設された給電部としての一対のコネクタ端子430に接続される。これらコネクタ端子430が電極370c、370dに弾性的に接触することでコネクタ端子430と電極370c、370dが電気的に導通する。
【0052】
コネクタ端子430は図4(c)に示すように先端部がV字状に屈曲され、基端部は前記ハーネス420に接続されている。コネクタ端子430の先端部のV字状の屈曲部が、電極370c、370dに対する接点部となる。
【0053】
面状ヒータ330は、ステンレス(SUS)で構成される基材341と、当該基材の表裏両面に形成されたガラス製の絶縁層386を有する。表側絶縁層386の上に電極370c、370dが形成され、当該電極370c、370dにコネクタ端子430のV字状屈曲部が弾性的に接触する。コネクタ端子430のV字状屈曲部(接点部)を通じて電極370c、370dに電力が供給される。
【0054】
(第1実施形態のコネクタ端子)
図5は第1実施形態に係る電気コネクタ400のコネクタ端子430の断面を示したものである。給電部としてのコネクタ端子430は、銅製の基材431と、ニッケルメッキの下地層432と、銀メッキの表層433を有する。
【0055】
従来のコネクタ端子は、図8(a)のように、基材431の全表面が下地層432で覆われ、当該下地層432の全表面が表層433で覆われていた。下地層432の全表面が表層433で覆われている場合、図4の電気コネクタ400の挿抜により前述したように電極370c(370d)との接点部で表層433が摩耗して図8(b)のように下地層432が露出すると、当該露出した下地層432の接点部432bが電極370c(370d)と直接接触するほか大気にも晒される。このため接点部432bで下地層432であるニッケルの腐食(酸化)が始まる。
【0056】
しかし、図5の第1実施形態では、接点部432bとは異なる位置において予め下地層432を露出部分432aで大気に露出させている。このため、接点部432bだけでなく露出部分432aでも腐食(酸化)が進行する。すなわち、露出部分432aでも腐食ガス(酸素ガス)が消費される結果、接点部432bの周囲における酸素濃度が、従来の図8(b)の接点部432bの周囲における酸素濃度よりも低下し、接点部432bの腐食(酸化)の進行が抑制される。
【0057】
露出部分432aが接点部432bから遠く離れるほど、接点部432bの周囲における酸素濃度が低下しにくくなる。また、接点部432bの摩耗が少なく表層433が残っている場合には、露出部分432aが増えると接点部432b以外の表層433の面積が減るため、表層433の腐食低減効果が小さくなる。本発明者らが行った試験によれば、接点部432bを中心とする6mm四方の範囲内における露出部分432aの面積割合が1%~50%の範囲であるとき、表層433の腐食(硫化)と接点部432bの腐食(酸化)の進行を有効に抑制可能であることが分かった。
【0058】
ここで、金属の種類、ガスの種類、腐食のしやすさを以下の表1に示す。表1から分かるよう、銀は酸化しにくいが硫化しやすい。これとは反対に、ニッケル、銅、ステンレスは硫化しにくいが酸化しやすい。したがって、大気に露出した接点部432bがニッケルの場合、接点部432bの近傍(6mm四方の範囲内)にニッケルによる露出部分432aを形成するほか、銅やステンレスの露出部分を別途形成して接点部432bの腐食(酸化)の進行を抑制することも可能である。
【表1】
【0059】
(第2実施形態のコネクタ端子)
図6は第2実施形態に係る電気コネクタ400のコネクタ端子430の断面を示したものである。この第2実施形態ではニッケルの下地層432を露出するだけでなく銅の基材431も露出させている。
【0060】
すなわち、下地層432の露出部分432aだけでなく、基材431の露出部分431aでも腐食ガス(酸素ガス)が消費されることで腐食ガス(酸素ガス)の消費量がいっそう増加し、接点部432bの周囲における酸素濃度をさらに低下させ、腐食(酸化)の進行をさらに抑制することができる。なお、接点部432bを中心とする6mm四方の範囲内における露出部分432a(431a)の面積割合は、前述と同様に1%~50%の範囲にするのが望ましい。
【0061】
(第3実施形態のコネクタ端子)
図7の第3実施形態は、コネクタ端子430が接触する電極370c(370d)側に第2の導電性金属(Ni)による露出部分432cを形成したものである。当該露出部分432cは、図7(c)に示すように電極370c(370d)の両端に形成することができる。
【0062】
露出部分432cの形成位置が接点部432bに近いと、接点部432bだけでなく露出部分432cでも腐食ガス(酸素ガス)が消費される結果、接点部432bの周囲における酸素濃度が低下し、接点部432bの腐食(酸化)の進行が抑制される。なお、接点部432bを中心とする6mm四方の範囲内における露出部分432cの面積割合は、前述と同様に1%~50%の範囲にするのが望ましい。
【0063】
また図7において、基材341をステンレス(SUS)で形成し、当該基材341の長手方向の端部に大気に露出した露出部341aを形成した場合、当該露出部341aの腐食(酸化)によっても接点部432bの周囲における腐食ガス濃度(酸素濃度)を低下することができる。したがって、露出部341aによっても、前記露出部分431a、431cと同様に、接点部432bの腐食の進行を抑制することができる。
【0064】
前述した第1~3実施形態において、コネクタ端子430の表層433の金属と、電極370c(370d)の表層金属は同種類の金属であるのが望ましい。これらが異種金属の場合、コネクタ端子430と電極370c(370d)の接触界面で異種金属同士の接触が生じ、電気化学反応である腐食(異種金属接触腐食)が促進されるからである。
【0065】
表層の金属メッキ材料としては金、銀、銅、白金、ニッケル、スズ、亜鉛、クロム等が使用可能であるが、耐熱性や摺動性の観点から銀メッキが最も望ましい。したがって、コネクタ端子430の表層433と電極370c(370d)の表層を共に銀メッキで形成するのが最も望ましい。
【0066】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば前記実施形態は、定着用ヒータの電気コネクタに本発明を適用したものであるが、本発明はヒータの電気コネクタに限らず、各種スイッチやリレーの電気コネクタなど電気器具一般の電気コネクタにも適用可能である。また、表層433、下地層432および露出部432aの構成を被給電部である電極370c、370d側に形成してもよい。また、定着用ヒータはシングルタイプの面状ヒータ330に限らず、複数の抵抗が並列接続された面状ヒータでもよく、当該並列接続タイプのヒータにも前記電気コネクタ400を使用可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
2:像担持体 3:ドラムクリーニング装置
4:帯電装置 5:現像装置
7:露光器 7a:ミラー
50:給紙トレイ 60:給紙ローラ
250:レジストローラ対 300:定着装置
310:定着ベルト 320:加圧ローラ
321:芯金 322:弾性層
323:離型層 330:面状ヒータ
334:加圧ベルト 340:ヒータホルダ
341:基材 341a:露出部
350、352:ステー 351:補助ステー
370:抵抗部材 370c、370d:電極
379a~379c:給電線 381:ニップ形成部材
385、386:絶縁層 390:押圧ローラ
400:電気コネクタ 410:ハウジング
420:ハーネス 430:コネクタ端子
431:基材 431a:露出部分
432:下地層 432a:露出部分
432b:接点部 432c:露出部分
433:表層 HN:加熱ニップ
Lb:レーザ光 N:転写ニップ
SN:定着ニップ TH1、TH2:サーミスタ
TM:転写装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【文献】特開平06‐084584号公報
【文献】特開2011-18572号公報
【文献】特開2000-113931号公報
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8