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特許7478386プラズマ療法によるがんまたは腫瘍の治療効果を増強
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】プラズマ療法によるがんまたは腫瘍の治療効果を増強
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/197 20060101AFI20240425BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20240425BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20240425BHJP
   A61K 33/26 20060101ALI20240425BHJP
   A61K 33/30 20060101ALI20240425BHJP
   A61K 33/34 20060101ALI20240425BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240425BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20240425BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20240425BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240425BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
A61K31/197
A61K33/06
A61K33/24
A61K33/26
A61K33/30
A61K33/34
A61K35/12
A61K41/00
A61P13/10
A61P35/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018004271
(22)【出願日】2018-01-15
(65)【公開番号】P2019123682
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-10-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】508123858
【氏名又は名称】SBIファーマ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
(73)【特許権者】
【識別番号】513067727
【氏名又は名称】高知県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】原 武史
(72)【発明者】
【氏名】井上 啓史
(72)【発明者】
【氏名】福原 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】八田 章光
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】石井 徹
【審判官】田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-16753(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103695(WO,A1)
【文献】Clinical Plasma Medicine,2017年,Volumes7-8,Pages46-51
【文献】Plasma Processes and Polymers,2010年,Volume7,Pages264-273
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDREAMIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ照射されることにより活性化された溶液の投与による膀胱んの治療効果を増強するための、
下記式(I):
【化1】
(式中、Rは、水素原子を表し、Rは、水素原子または炭素数1~8の直鎖状アルキル基を表す)
で示される化合物、またはその塩を含む、医薬組成物であって、
プラズマ照射されることにより活性化された溶液の投与に先立って投与されることを特徴とする、
医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物であって、
プラズマ照射されることにより活性化された溶液は、プラズマ照射されることにより活性化された体液、組織液、または培養液である、
医薬組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の医薬組成物であって、
前記投与は、がんへの注入によって行われる、
医薬組成物。
【請求項4】
請求項1~いずれか1項に記載の医薬組成物であって、
およびRが、水素原子である、
医薬組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、
一種または二種以上の金属含有化合物をさらに含有する、
医薬組成物。
【請求項6】
請求項に記載の医薬組成物であって、
金属含有化合物が、鉄、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、バナジウム、銅、クロム、モリブデンまたはコバルトを含有する化合物である、
医薬組成物。
【請求項7】
請求項に記載の医薬組成物であって、
金属含有化合物が、鉄、マグネシウムまたは亜鉛を含有する化合物である、
医薬組成物。
【請求項8】
請求項に記載の医薬組成物であって、
金属含有化合物が、鉄を含有する化合物である、
医薬組成物。
【請求項9】
請求項に記載の医薬組成物であって、
前記鉄を含有する化合物が、クエン酸第一鉄ナトリウムである、
医薬組成物。
【請求項10】
プラズマ照射されることにより活性化された溶液の投与によるがんの治療効果を増強するための医薬の製造における下記式(I):
【化2】
(式中、Rは、水素原子を表し、Rは、水素原子または炭素数1~8の直鎖状アルキル基を表す)
で示される化合物またはその塩の使用であって、
前記医薬は、プラズマ照射されることにより活性化された溶液の投与に先立って投与され、
前記がんは膀胱がんであることを特徴とする、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-アミノレブリン酸(以下、単に「ALA」とも称する)またはその誘導体の新規用途、具体的には、プラズマ療法によるがんまたは腫瘍の治療効果を増強するためのALAまたはその誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、がん治療の新たな可能性として、プラズマ技術を応用する試みがなされている。例えば、プラズマが照射された溶液(例えば培養液)は、腫瘍やがんの治療に有用であることが示唆されている(非特許文献1~4)。具体的に、プラズマを照射した溶液で、シスプラチンまたはパクリタキセルといった抗がん剤に耐性のがん細胞を培養した場合には、いずれの抗がん剤耐性がん細胞株においても、コントロールに比べて、細胞増殖率が低下したことが示されている。また、抗がん剤耐性がん細胞株担がんマウスの腫瘍付近にプラズマを照射した溶液を皮下注射したところ、プラズマを照射した溶液を皮下注射していない腫瘍と比べて、プラズマを照射した溶液を皮下注射した腫瘍では、腫瘍の体積、重量が有意に減少したことが示されている(以上、非特許文献2)。
【0003】
プラズマによる抗腫瘍効果または抗がん効果のメカニズムは、完全に理解されているわけではないが、プラズマを照射した溶液に活性酸素を消去する試薬を添加して培養した場合に、がん細胞の細胞増殖率の低下が起こらなかったことから、プラズマ溶液によるがんまたは腫瘍の抑制効果には、少なくとも活性酸素が関与していることが分かっている(非特許文献2および3)。また、プラズマを照射した溶液を用いて培養したサンプルでは、免疫蛍光染色により、細胞死誘導に係る活性型のCaspase-3/7が確認されている(非特許文献2~4)。
【0004】
また、プラズマによる細胞増殖の抑制は、腫瘍細胞またはがん細胞に特異的に認められる効果であることが示唆されている。例えば、プラズマを照射した溶液で培養した正常星状グリア細胞では、プラズマを照射していない溶液で培養したコントロールと比べて細胞増殖率に変化はないこと、および、プラズマを照射した溶液で培養した神経膠芽腫と正常星状グリア細胞とを比べると、神経膠芽腫で有意に細胞増殖率が低下したことが示されている(非特許文献4)。
【0005】
さらには、がんまたは腫瘍への直接的なプラズマ照射でも治療効果があることも確認されている。このような背景から、プラズマを用いたがんまたは腫瘍の治療が、今後、化学療法、免疫療法または放射線療法といった既存のがん治療とともに、新たな選択肢の一つとなることが期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】J. Plasma Fusion Res. Vol.91, No.12 (2015)776‐779
【文献】PLoS One.2013;8(12):e81576.
【文献】Gastric Cancer.2015 Jul;18(3):635-43.
【文献】Plasma Medicine,1(3-4):265-277(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、プラズマ療法は、がんまたは腫瘍に対する有効な治療方法としての可能性が示されているが、これまでに腫瘍またはがんを完全に消失させたとの報告はなく、プラズマ療法によるがんまたは腫瘍の治療効果を増強することが望まれている。
そこで、本願発明は、プラズマ療法によるがんまたは腫瘍の治療効果を効果的に増強することができる医薬組成物を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ALAが、プラズマ処置によるがん細胞の死滅効果を効果的に増強できることを見出した。
ALAは、それ自体、がんの治療に有用であることが報告されている一方で(特開2011-16753)、抗酸化物質であるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)やグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)の活性を増強することが知られている(特開2006-69963号)。既に説明したとおり、活性酸素を消去する試薬の存在下ではプラズマによるがんまたは腫瘍の抑制が認められないことから、プラズマ療法とALAとを組み合わせても、有効な結果は得られないであろうと考えられた。したがって、プラズマ処置によるがん細胞の死滅がALAによって効果的に増強されたことは、驚くべきことであった。
【0009】
すなわち、本願発明は以下の特徴を包含する:
[1] プラズマ療法によるがんまたは腫瘍の治療効果を増強するための医薬組成物であって、
下記式(I):
【化1】
(式中、Rは、水素原子またはアシル基を表し、Rは、水素原子、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す)
で示される化合物またはその塩もしくはエステルを含む、
医薬組成物。
【0010】
[2] [1]に記載の医薬組成物であって、
前記プラズマ療法は、対象のがんまたは腫瘍に対するプラズマ照射、または対象のがんまたは腫瘍に対する、プラズマ照射されることにより活性化された溶液の適用である
医薬組成物。
【0011】
[3] [1]または[2]に記載の医薬組成物であって、
前記プラズマ療法は、がんまたは腫瘍に対する、プラズマ照射されることにより活性化された溶液の適用である
医薬組成物。
【0012】
[4] [1]または[2]に記載の医薬組成物であって、
プラズマ照射されることにより活性化された溶液は、プラズマ照射されることにより活性化された体液、組織液、または培養液である、
医薬組成物。
【0013】
[5] [2]~[4]のいずれかに記載の医薬組成物であって、
前記適用は、がんまたは腫瘍への注入によって行われる、
医薬組成物。
【0014】
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の医薬組成物であって、
前記プラズマ療法の実施と同時または異時に投与されるものである
ことを特徴とする
医薬組成物。
【0015】
[7] [6]に記載の医薬組成物であって、
前記プラズマ療法に先だって投与されることを特徴とする、
医薬組成物。
【0016】
[8] [3]~[5]のいずれかに記載の医薬組成物であって、
前記式(I)で示される化合物が、前記のプラズマ照射されることにより活性化された溶液に溶解または分散されている
医薬組成物。
【0017】
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の医薬組成物であって、
が、水素原子、炭素数1~8のアルカノイル基、および、炭素数7~14のアロイル基からなる群から選択され、
が、水素原子、直鎖または分岐状の炭素数1~8のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、および、炭素数7~15のアラルキル基からなる群から選択される
ことを特徴とする、
医薬組成物。
【0018】
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の医薬組成物であって、
およびRが、水素原子である、
医薬組成物。
【0019】
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の医薬組成物であって、
一種または二種以上の金属含有化合物をさらに含有する、
医薬組成物。
【0020】
[12] [11]に記載の医薬組成物であって、
金属含有化合物が、鉄、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、バナジウム、銅、クロム、モリブデンまたはコバルトを含有する化合物である、
医薬組成物。
【0021】
[13] [12]に記載の医薬組成物であって、
金属含有化合物が、鉄、マグネシウムまたは亜鉛を含有する化合物である、
医薬組成物。
【0022】
[14] [13]に記載の医薬組成物であって、
金属含有化合物が、鉄を含有する化合物である、
医薬組成物。
【0023】
[15] [14]に記載の医薬組成物であって、
前記鉄を含有する化合物が、クエン酸第一鉄ナトリウムである、
医薬組成物。
【0024】
[16] [1]~[15]のいずれかに記載の医薬組成物であって、
前記がんは膀胱がんである、
医薬組成物。
【0025】
[17] プラズマ療法によるがんまたは腫瘍の治療効果を増強するための医薬の製造における下記式(I):
【化2】
(式中、Rは、水素原子またはアシル基を表し、Rは、水素原子、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す)
で示される化合物またはその塩もしくはエステルの使用。
【0026】
[18] プラズマ療法によるがんまたは腫瘍の治療効果を増強するための方法であって、下記式(I):
【化3】
(式中、Rは、水素原子またはアシル基を表し、Rは、水素原子、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す)
で示される化合物またはその塩もしくはエステルを、プラズマ療法が施されるまたは施されている対象に投与することを含む、
方法。
【0027】
なお、上記に述べた本発明の一または複数の特徴を任意に組み合わせた発明も、本発明の範囲に含まれる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、プラズマ療法によるがんまたは腫瘍の治療効果を効果的に増強することができる医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、MTTアッセイを用いた正常細胞HBEC-Aによる、プラズマを照射した培養液の安全性試験の結果を示す。CTLはコントロールを指す。
図2図2は、膀胱がん細胞株T24細胞に対するMTTアッセイにおける、ALAの添加によるプラズマ療法の増強効果を示す。
図3図3は、ALAを添加後、プラズマを照射した培養液で培養した膀胱がん細胞株T24細胞における形態観察を示す。
図4図4は、ALAを添加後、プラズマを照射した培養液で培養した膀胱がん細胞株253J-BV細胞における形態観察を示す。
図5図5は、膀胱がん細胞株T24細胞または253J-BV細胞に対するMTTアッセイにおける、ALAの添加によるプラズマ療法の増強効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、プラズマ療法によるがんまたは腫瘍の治療効果を増強するための医薬組成物に関する。
【0031】
プラズマは、正の電荷をもつイオンと負の荷電をもつ電子を含む混合物であり、全体として電気的に中性が保たれている状態を指す。本発明において、プラズマ療法とは、人工的に発生させたプラズマを用いた任意のがんまたは腫瘍の治療方法をいい、これに限定されるものではないが、がんまたは腫瘍に対する直接的なプラズマ照射や、プラズマ照射されることにより活性化された溶液の適用を含む。大気圧下の空間またはガス流体中で、気体を構成する分子から人工的にプラズマを発生させる技術および装置ならびにその医療への応用について、既に多くの報告が存在しているが(例示的に、特開平6-124795号、特願平4-225783号、WO2007/032172、WO2007/105411など)、本発明において、プラズマ発生技術または装置は特に制限されない。
【0032】
本発明の一実施形態において、前記プラズマ療法は、がんまたは腫瘍に対する直接的なプラズマ照射である。がんまたは腫瘍に対してプラズマ照射を適用する場合、がんまたは腫瘍の種類または状態によって異なり得るが、電圧1~20kV、周波数1~20kHz、ヘリウムガス流量1~10L/min、照射距離1~30cm、照射時間1~60分の条件、例えば電圧7kV、周波数10kHz、ヘリウムガス流量5L/min、照射距離1cm、照射時間5分の条件で照射すればよい。あるいは、プラズマ密度が1×1014cm-3~1×1017cm-3の範囲であるプラズマを、1~60分の時間にわたって照射することとしてもよい。
【0033】
本発明の別の実施形態において、前記プラズマ療法は、プラズマ照射により活性化された溶液の適用である。前記「プラズマ照射により活性化された溶液」とは、プラズマ照射によって、任意の活性種を含むことなった溶液をいう。このような溶液の調製方法は公知であり、例えば国際公開第2013/128905号に記載の条件に準じて任意の溶液にプラズマを適用することによって調製することができる。本発明の別の実施形態において、前記「プラズマ照射により活性化された溶液」は、溶液に対し、電圧1~20kV、周波数1~20kHz、ヘリウムガス流量1~10L/min、照射距離1~30cm、照射時間1~60分の条件、例えば電圧7kV、周波数10kHz、ヘリウムガス流量5L/min、照射距離1cm、照射時間5分の条件でプラズマを適用することによって調製することができる。本発明のさらに別の実施形態では、前記「プラズマ照射により活性化された溶液」は、溶液に対し、プラズマ密度が1×1014cm-3~1×1017cm-3の範囲であるプラズマを、1~60分の時間にわたって照射することによって調製することができる。
【0034】
プラズマ照射されるべき溶液は、液体である限り特に制限されず、これに限定されるものではないが、水、蒸留水、生理食塩水、体液、組織液、培養液などを使用することができる。本発明の一実施形態において、前記溶液は、乳酸を含むものである。
【0035】
前記「プラズマ照射により活性化された溶液」は、経口または非経口(例えば静脈内、腹腔内、鼻腔内、経腸など)のいずれの投与経路で適用してもよく、前記溶液を到達させるべき部位に応じて、適宜適切な投与経路を選択することができる。例えば、がんまたは腫瘍が、胃、大腸など消化器系のがんまたは腫瘍である場合には、前記溶液は経口投与されることが好ましく、がんまたは腫瘍が表皮などの局所に存在する場合には、がんまたは腫瘍に対して溶液を注入してもよい。
【0036】
例示的に、治療されるべきがんまたは腫瘍が膀胱がんである場合には、BCG膀注療法にならって膀胱内に直接注入したり、持続膀胱内潅流療法にならって、3wayバルーンを用いて前記溶液を膀胱がんに持続的に適用することが想定されよう。
【0037】
本発明の医薬組成物は、ALAまたはその誘導体、塩またはエステル(以下、単に「ALA類」とも称する)を有効成分とすることを特徴とする。
【0038】
本明細書において、ALAは、5-アミノレブリン酸を意味する。ALAは、δ-アミノレブリン酸ともいい、アミノ酸の1種である。
【0039】
ALAの誘導体としては、下記式(I)で表される化合物を例示することができる。式(I)において、Rは、水素原子またはアシル基を表し、Rは、水素原子、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。なお、式(I)において、ALAは、RおよびRが水素原子の場合に相当する。
【化4】
【0040】
ALA類は、生体内で式(I)のALAまたはその誘導体の状態で有効成分として作用すればよく、生体内の酵素で分解されるプロドラッグ(前駆体)として投与することもできる。
【0041】
式(I)のRにおけるアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ベンジルカルボニル基等の直鎖または分岐状の炭素数1~8のアルカノイル基や、ベンゾイル、1-ナフトイル、2-ナフトイル基等の炭素数7~14のアロイル基を挙げることができる。
【0042】
式(I)のRにおけるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等の直鎖または分岐状の炭素数1~8のアルキル基を挙げることができる。
【0043】
式(I)のRにおけるシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロドデシル、1-シクロヘキセニル基等の飽和、または一部不飽和結合が存在してもよい、炭素数3~8のシクロアルキル基を挙げることができる。
【0044】
式(I)のRにおけるアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル基等の炭素数6~14のアリール基を挙げることができる。
【0045】
式(I)のRにおけるアラルキル基としては、アリール部分は上記アリール基と同じ例示ができ、アルキル部分は上記アルキル基と同じ例示ができ、具体的には、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、ベンズヒドリル、トリチル、ナフチルメチル、ナフチルエチル基等の炭素数7~15のアラルキル基を挙げることができる。
【0046】
好ましいALA誘導体としては、Rが、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル基等である化合物が挙げられる。また、好ましいALA誘導体としては、上記Rが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル基等である化合物が挙げられる。また、好ましいALA誘導体としては、上記RとRの組合せが、(ホルミルとメチル)、(アセチルとメチル)、(プロピオニルとメチル)、(ブチリルとメチル)、(ホルミルとエチル)、(アセチルとエチル)、(プロピオニルとエチル)、(ブチリルとエチル)の各組合せである化合物が挙げられる。
【0047】
ALA類のうち、ALAまたはその誘導体の塩としては、薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩等を挙げることができる。酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の各無機酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、トルエンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、メタンスルホン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩等の各有機酸付加塩を例示することができる。金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の各アルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム塩等の各アルカリ土類金属塩、アルミニウム、亜鉛等の各金属塩を例示することができる。アンモニウム塩としては、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩等を例示することができる。有機アミン塩としては、トリエチルアミン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩、トルイジン塩等の各塩を例示することができる。なお、これらの塩は使用時において溶液としても用いることができる。
【0048】
ALA類のうち、エステルとしては、これに限定されるものではないが、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル等を挙げることができる。
【0049】
以上のALA類のうち、もっとも望ましいものは、ALA、および、ALAメチルエステル、ALAエチルエステル、ALAプロピルエステル、ALAブチルエステル、ALAペンチルエステル等の各種エステル類、並びに、これらの塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩である。とりわけ、ALA塩酸塩、ALAリン酸塩を特に好適なものとして例示することができる。
【0050】
上記ALA類は、例えば、化学合成、微生物による生産、酵素による生産など公知の方法によって製造することができる。また、上記ALA類は、水和物または溶媒和物を形成していてもよく、またALA類を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0051】
上記ALA類を水溶液として調製する場合には、ALA類の分解を防ぐため、水溶液がアルカリ性とならないように留意する必要がある。アルカリ性となってしまう場合は、酸素を除去することによって分解を防ぐことができる。
【0052】
本発明の医薬組成物は、一実施形態において、一種または二種以上の金属含有化合物が併用される。したがって、本発明の医薬組成物は、一種または二種以上の金属含有化合物をさらに含有することができる。かかる金属含有化合物の金属部分としては、鉄、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、バナジウム、コバルト、銅、クロム、モリブデンを挙げることができる。好ましい実施形態では、金属含有化合物の金属部分は、鉄、マグネシウムまたは亜鉛であり、特に鉄であることが好ましい。
【0053】
本発明において、鉄化合物は、有機塩でも無機塩でもよい。無機塩としては、塩化第二鉄、三二酸化鉄、硫酸鉄、ピロリン酸第一鉄を挙げることができる。有機塩としては、ヒドロキシカルボン酸塩等のカルボン酸塩、クエン酸第一鉄、クエン酸鉄ナトリウム、クエン酸第一鉄ナトリウム(SFC)、クエン酸鉄アンモニウム等のクエン酸塩や、ピロリン酸第二鉄、ヘム鉄、デキストラン鉄、乳酸鉄、グルコン酸第一鉄、ジエチレントリアミン五酢酸鉄ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸鉄アンモニウム、エチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム、エチレンジアミン五酢酸鉄アンモニウム、ジカルボキシメチルグルタミン酸鉄ナトリウム、ジカルボキシメチルグルタミン酸鉄アンモニウム、フマル酸第一鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄、コハク酸第一鉄、コハク酸クエン酸鉄ナトリウム等の有機酸塩や、トリエチレンテトラアミン鉄、ラクトフェリン鉄、トランスフェリン鉄、鉄クロロフィリンナトリウム、フェリチン鉄、含糖酸化鉄、グリシン第一鉄硫酸塩を挙げることができる。
【0054】
本発明において、マグネシウム化合物としては、クエン酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、ジエチレントリアミン五酢酸マグネシウムジアンモニウム、エチレンジアミン四酢酸マグネシウムジナトリウム、マグネシウムプロトポルフィリンを挙げることができる。
【0055】
本発明において、亜鉛化合物としては、塩化亜鉛、酸化亜鉛、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛、硫酸亜鉛、ジエチレントリアミン五酢酸亜鉛ジアンモニウム、エチレンジアミン四酢酸亜鉛ジナトリウム、亜鉛プロトポルフィリン、亜鉛含有酵母を挙げることができる。
【0056】
対象への金属含有化合物の投与量は、対象へのALAの投与量に対してモル比で0~100倍であればよく、0.01倍~10倍が望ましく、0.1倍~8倍がより望ましい。
【0057】
本発明の医薬組成物に含有されるALA類と金属含有化合物は、ALA類と金属含有化合物とを含む組成物としても、あるいは、それぞれ単独でも投与することできるが、それぞれ単独で投与する場合でも同時に投与することが好ましく、ここで同時とは、同時刻に行われることのみならず、同時刻でなくともALA類と金属含有化合物との投与が相加的効果、好ましくは相乗的効果を奏することができるように、両者間で相当の間隔をおかずに行われることを意味する。
【0058】
本発明におけるALA類と金属含有化合物の投与経路は限定されず、全身投与であっても、局所投与であってもよい。投与経路としては、例えば、舌下投与も含む経口投与、あるいは吸入投与、点滴を含む静脈内投与、貼付剤等による経皮投与、座薬、または、経鼻胃管、経鼻腸管、胃ろうチューブ若しくは腸ろうチューブを用いる強制的経腸栄養法による投与等の非経口投与などを挙げることができる。また、上述のとおり、ALA類と、金属含有化合物とを、別々の経路から投与してもよい。
【0059】
本発明の医薬組成物の剤型は、前記投与経路に応じて適宜決定してよく、限定はされないが、注射剤、点滴剤、錠剤、カプセル剤、細粒剤、散剤、液剤、シロップ等に溶解した水剤、貼付剤、座薬剤等を挙げることができる。
【0060】
本発明に係る医薬組成物は、必要に応じて他の薬効成分、栄養剤、担体等の他の任意成分を加えることができる。任意成分として、例えば結晶性セルロース、ゼラチン、乳糖、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物性および動物性脂肪、油脂、ガム、ポリアルキレングリコール等の、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、溶剤、分散媒、増量剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。
【0061】
本発明の医薬組成物の投与対象は、プラズマ療法が施されるまたは施されている対象、典型的にはがんを患う対象である。治療対象のがん種は、プラズマ療法が適用可能ながん種であれば特に制限されない。
【0062】
本発明の医薬組成物によって投与されるべきALA類の投与量は、対象の身長、体重、年齢、および症状に応じて、対象の体重1kgあたり、ALA換算(すなわち、式(I)において、RおよびRが水素原子の場合の質量換算)で、1mg~1000mg、好ましくは5mg~100mg、より好ましくは10mg~30mg、さらに好ましくは15mg~25mgの範囲で投与することができる。
【0063】
本発明の医薬組成物の投与回数および投与頻度は、併用されるプラズマ療法の実施状況(実施態様、実施間隔、実施回数、および実施期間)に鑑み、当業者は適宜、適切な投与回数および投与頻度を決定することができる。本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、プラズマ療法の実施前、実施時、または実施後から連日投与される。
【0064】
本発明の医薬組成物の投与は、プラズマ療法によるがんまたは腫瘍の治療効果を効果的に増強することができる限り、プラズマ療法と同時であっても異時であってもよい。一実施形態において、本発明の医薬組成物の投与は、プラズマ療法に先だって開始され、連日投与される。
【0065】
別の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、プラズマ療法と同時に投与される。かかる実施形態において、プラズマ療法がプラズマ照射によって活性化された溶液の適用によって行われる場合には、本発明の医薬組成物は、前記溶液中に式(I)に示す化合物および任意の金属含有化合物が溶解または分散された注射剤、点滴剤、液剤またはシロップであることが好ましい。これにより、本発明の医薬組成物の有効成分とプラズマ療法とを同時に実施することが可能になる。
【0066】
本明細書において用いられる用語は、特に定義されたものを除き、特定の実施態様を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。
【0067】
また、本明細書において用いられる「含む」との用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記述された事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを排除しない。
【0068】
異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語および科学用語を含む。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書および関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、または、過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。
【0069】
以下において、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本発明はいろいろな態様により具現化することができ、ここに記載される実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。
【実施例
【0070】
[実施例1]
<プラズマ照射をした培養液の作製>
膀胱がん細胞株用:最終濃度が10%になるようにFBS(ウシ胎子血清;Fisher Scientific社製)を加えたDMEM(培養液)に、プラズマ照射装置を培養液面から10mm離し、10kHz-ac,7およびヘリウム5L/minでプラズマを5分間照射することでプラズマを照射した培養液を作製した。なお、前記のプラズマ照射装置としては、高電圧電源としてHigh voltage amplifier HEOPT-10B10(MATSUSADA)、信号発生器としてDigital function generate WF1943(NF)、オシロスコープとしてOscilloscope TDS2014B(Tektronix)、高電圧プローブとしてHigh voltage probe P6015A(Tektronix)、およびフローメーターとしてFlow meter(He) FS-25(YAMATO)をそれぞれ組み合わせて組成したものを用いた。
【0071】
正常膀胱細胞株用:クラボウ社製のUroLife A Comp kit(培養液)に、プラズマ照射装置を培養液面から10mm離し、10kHz-ac,7およびヘリウム5L/minでプラズマを5分間照射することでプラズマを照射した培養液を作製した。
【0072】
<プラズマ実験>
なお、以下の実施例では、以下の試薬、機器および条件を用いてプラズマ実験を行った。
【0073】
ALA
粉末(結晶)のALA塩酸塩を蒸留水に溶解してstock solutionを作製して用いた。
【0074】
培養液
T24細胞、253J-BV細胞用:DMEM Powder High Glucose(ThermoFisher:製品番号12100-046)およびFetal Bovine Serum(Fisher Scientific,Hycole:製品番号SH30910.03)
HBEC-Apex用:UroLife A Comp kit(クラボウ、LUC-LL0063)
【0075】
細胞数
T24,253J-BV細胞:5×10
HBEC-A細胞:1×10
【0076】
MTT試薬
Thiazolyl Blue Tetrazolium Bromide(SIGMA-ALDRICH,M5655)
測定波長:570nm
対照波長:650nm
【0077】
顕微鏡
OLYMPUS 倒立型培養顕微鏡(CKX41SF)、200倍で観察。
【0078】
細胞株の由来
T24細胞:American Type Culture Collection (ATCC; Rockville, MD)より購入したヒトグレードIII膀胱がん細胞。
253JB-V細胞;Colin P. N. Dinney (University of Texas MD Anderson Cancer Center)より譲渡された高度に転移性のヒト膀胱がん細胞株。
HBEC-A細胞:クラボウより購入(製品番号KP-4109)した遺伝的に均一な細胞。2次培養後、凍結したApex(膀胱尖)側の細胞である。
【0079】
[実施例2]
膀胱がん細胞株である253J-BV細胞と正常細胞であるHBEC-A細胞をALA未含有のプラズマ照射をした培養液に交換し、24時間培養後にMTTアッセイを用いて、細胞の生存率を測定した。
【0080】
具体的に、UroLife A comp kitまたは最終濃度10%のFBSの入ったDMEMを加えた96ウェルプレートに、それぞれ1×10個の正常細胞株HBEC-A細胞または膀胱がん細胞株253J-BV細胞を播種し、37℃、5%COの条件で24時間培養した。次にプラズマを照射した培養液に交換し、37℃、5%COの条件で24時間培養した。その後、MTT(SIGMA-ALDRICH製)試薬を添加後に、マイクロプレートリーダーを用いて570nmの波長を測定することによって、細胞生存率測定を行った。
【0081】
その結果、HBEC-A細胞では細胞生存率の変化は少なく、安全性が確認され、253J-BV細胞では細胞生存率が低下し、プラズマ療法における抗腫瘍効果が認められた(図1)。
【0082】
[実施例3]
ALAを添加し、プラズマを照射した培養液で培養した膀胱がん細胞株であるT24細胞の生存率を測定した。
【0083】
具体的には、最終濃度10%のFBSの入ったDMEMを加えた96ウェルプレートに5×10個の膀胱がん細胞株T24細胞を播種し、37℃、5%COの条件で24時間培養した。次にALAを0、0.2、0.5、1.0、2.0mMの濃度で添加した培養液に交換し、T24細胞を37℃、5%COの条件で2時間培養し、T24細胞にALAを取り込ませた。そしてALA未含有のプラズマを照射した培養液に交換し、37℃、5%COの条件で24時間培養した。その後、MTT(SIGMA-ALDRICH製)試薬を添加後にマイクロプレートリーダーを用いて570nmの波長を測定することにより、細胞生存率測定を行った。なお、controlには、DMEMに最終濃度10%のFBSのみを加えた培養液で培養したサンプルを用いた。
【0084】
膀胱がん細胞株であるT24細胞において、ALA未添加でプラズマを照射していない培養液を用いて培養したコントロールと比べ、ALAを添加し、プラズマを照射した培養液で培養したサンプルの細胞生存率が低下した。さらにプラズマを照射した培養液を用いた培養では、ALAの濃度依存的に抗腫瘍効果の増強が認められた。(図2
【0085】
[実施例4]
ALAを添加し、プラズマを照射した培養液で培養した膀胱がん細胞株であるT24細胞を形態観察した。
【0086】
具体的に、最終濃度10%のFBSの入ったDMEMを加えた96ウェルプレートに5×10個の膀胱がん細胞株T24細胞または253J-BV細胞を播種し、37℃、5%COの条件で24時間培養した。次にALAを0、0.2、0.5、1.0、2.0mMの濃度で添加した培養液に交換し、T24細胞と253J-BV細胞を37℃、5%COの条件で2時間培養し、T24細胞と253J-BV細胞にALAを取り込ませた。そしてALA未含有のプラズマを照射した培養液に交換し、37℃、5%COの条件で24時間培養した。その後、倒立型培養顕微鏡(CKX41SF(OLYMPUS))を用いて200倍の明視野で観察を行った。
【0087】
ALAを加えた培養液で2時間培養をした後、プラズマを照射した培養液で培養した。その際に膀胱がん細胞株T24細胞の形態を観察すると、添加していたALAの濃度依存的に紡錘状である生細胞が減少し、細胞死を引き起こした球体の細胞が増加した。(図3
【0088】
また、T24細胞とは別の膀胱がん細胞株である253J-BV細胞でも同様にして形態を観察したところ、T24細胞と同様の形態を示した(図4)。
【0089】
[実施例5]
上記実施例[実施例3]と同様にして、MTTアッセイによって、ALAを加えた培養液で2時間の培養およびこれに次ぐプラズマを照射した培養液を用いた培養後の、T24細胞および253J-BV細胞の細胞生存率を測定した。
【0090】
その結果、T24細胞では形態観察の結果と同様にALAの濃度依存的に細胞の生存率が低下した。また253J-BV細胞ではT24細胞ほどではないが、濃度依存的に細胞の生存率が低下した(図5)。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、プラズマ療法によるがんまたは腫瘍の治療効果を効果的に増強することができる医薬組成物が提供される。したがって、プラズマ療法による治療に本発明に係る医薬組成物を併用することで、がんまたは腫瘍の患者の延命・寛解率の上昇につながることが期待される。
また、本発明に係る医薬組成物の有効成分であるALA類は、動物、植物、菌類など広く存在する、生体内に含まれる天然アミノ酸の一種であることから、生体に対して安全に使用できるという利点を有する。
図1
図2
図3
図4
図5