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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】精子保存液及び精子保存方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/076 20100101AFI20240425BHJP
   C12N 1/04 20060101ALI20240425BHJP
   A01K 67/02 20060101ALN20240425BHJP
【FI】
C12N5/076
C12N1/04
A01K67/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019222047
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2020092703
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2018231140
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(72)【発明者】
【氏名】酒井 則良
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-500327(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049985(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103314951(CN,A)
【文献】国際公開第2013/018545(WO,A1)
【文献】特開2014-128219(JP,A)
【文献】特開2015-082987(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0031583(US,A1)
【文献】Biology of Reproduction,2005年,72,444-450
【文献】Theriogenology,2004年,61,1455-1469
【文献】神奈川県水産総合研究所研究報告,2002年,7,23-28
【文献】Aquaculture,2009年,290,165-171
【文献】Cryobiology,2012年,65,335-337
【文献】Cryobiology,2006年,53,51-57
【文献】Cryobiology,2013年,67,1-6
【文献】低温生物工学会誌,2008年,54(1),29-32
【文献】Zoological Science,1997年,14,641-644
【文献】Biology of Reproduction,2015年,93(4),Article 104
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00-5/28
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚類から採取した精子を精子保存液に懸濁して得た精子懸濁液を室温で保存する精子の保存方法であって、
前記精子保存液は、無機塩類、アミノ酸、ビタミン類、ウシ胎児血清、ウシ血清アルブミン、及び0.06mM~mMの乳酸を含有する、精子の保存方法。
【請求項2】
前記精子保存液は、さらに、緩衝剤を含有し、pHが6.5~10.0である請求項1に記載の精子の保存方法。
【請求項3】
前記精子保存液は、さらに、グルコースを含有する請求項1又は2に記載の精子の保存方法。
【請求項4】
前記精子保存液は、さらに、抗酸化剤を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の精子の保存方法。
【請求項5】
前記精子保存液は、さらに、ペニシリン及び/又はストレプトマイシンを含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の精子の保存方法。
【請求項6】
前記魚類は、ゼブラフィッシュであり
前記精子保存液は、終濃度として、塩化カルシウム二水和物0.1g/L~0.25g/L、塩化マグネシウム六水和物0.15g/L~0.25g/L、無水硫酸マグネシウム0.06g/L~0.12g/L、塩化カリウム0.3g/L~0.6g/L、無水リン酸二水素カリウム0.04g/L~0.08g/L、塩化ナトリウム6.0g/L~10.0g/L、及び無水リン酸水素二ナトリウム0.15g/L~0.25 g/Lを含む無機塩類と、
DL-アラニン0.3g/L~0.6g/L、L-アルギニン(塩基フリー)0.35g/L~0.65g/L、無水L-アスパラギン0.15g/L~0.35g/L、L-システイン(塩基フリー)0.08g/L~0.2g/L、L-グルタミン0.2 g/L~0.4 g/L、グリシン0.15g/L~0.35g/L、L-ヒスチジン0.15g/L~0.35g/L、DL-イソロイシン0.13g/L~0.35g/L、L-ロイシン0.08g/L~0.2g/L、L-リジン0.055g/L~0.095g/L、DL-メチオニン0.08g/L~0.25g/L、DL-フェニルアラニン0.15g/L~0.35 g/L、L-セリン0.15g/L~0.3g/L、DL-スレオニン0.4g/L~0.8g/L、L-トリプトファン0.015g/L~0.035g/L、L-チロシン(塩基フリー)0.2g/L~0.4g/L、及びDL-バリン0.15g/L~0.35g/Lを含むアミノ酸と、
塩化コリン0.0008g/L~0.0012g/L、フラビンモノヌクレオチドナトリウム塩0.00008g/L~0.00012g/L、葉酸0.0008g/L~0.0012g/L、ミオイノシトール0.0015g/L~0.0025g/L、ニコチンアミド0.0008g/L~0.0012g/L、DL-パントテン酸ヘミカルシウム塩0.0008g/L~0.0012g/L、ピリドキシン塩酸塩0.0008g/L~0.0012g/L、及びチアミン一リン酸塩酸塩0.0008g/L~0.0012g/Lを含むビタミン類と、
D-ガラクトース0.7g/L~1.2g/Lと、
フェノールレッドナトリウム塩0.008g/L~0.013 g/Lと、
ピルビン酸ナトリウム塩0.45g/L~0.6g/Lと、
ウシ胎児血清(FBS)2%(v/v)~4%(v/v)と、
ウシ血清アルブミン(BSA)0.3%(w/v)~0.6%(w/v)と、
Hepes8mM~15mM (pH7~8)と、
グルコース3g/L~5.5g/Lと、
乳酸0.06mM~0.15mMと、
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の精子の保存方法。
【請求項7】
前記魚類は、メダカであり
前記精子保存液は、終濃度として、塩化カルシウム二水和物0.1g/L~0.25g/L、塩化マグネシウム六水和物0.15g/L~0.25g/L、無水硫酸マグネシウム0.06g/L~0.12g/L、塩化カリウム0.3g/L~0.6g/L、無水リン酸二水素カリウム0.04g/L~0.08g/L、塩化ナトリウム6.0g/L~10.0g/L、及び無水リン酸水素二ナトリウム0.15g/L~0.25g/L含む無機塩類と、
DL-アラニン0.07g/L~0.6g/L、L-アルギニン(塩基フリー)0.15g/L~0.65g/L、無水L-アスパラギン0.08g/L~0.35g/L 、L-システイン(塩基フリー)0.045g/L~0.2g/L、L-グルタミン0.085g/L~0.4 g/L、グリシン0.08g/L~0.35g/L、L-ヒスチジン0.07g/L~0.35g/L、DL-イソロイシン0.07g/L~0.35g/L、L-ロイシン0.04g/L~0.2g/L、L-リジン0.02g/L~0.095g/L、DL-メチオニン0.045g/L~0.25g/L、DL-フェニルアラニン0.085g/L~0.35g/L、L-セリン0.08g/L~0.3g/L、DL-スレオニン0.2~0.8g/L、L-トリプトファン0.01~0.02g/L、L-チロシン(塩基フリー)0.085~0.4g/L、DL-バリン0.085~0.35g/L含むアミノ酸と、
塩化コリン0.0004g/L~0.0012g/L、フラビンモノヌクレオチドナトリウム塩0.00004g/L~0.00012g/L、葉酸0.0004g/L~0.0012g/L、ミオイノシトール0.0007g/L~0.0025g/L、ニコチンアミド0.0004g/L~0.0012g/L、DL-パントテン酸ヘミカルシウム塩0.0004g/L~0.0012g/L、ピリドキシン塩酸塩0.0004g/L~0.0012g/L、及びチアミン一リン酸塩酸塩0.0004g/L~0.0012g/L含むビタミン類と、
D-ガラクトース0.3g/L~1.2g/Lと、
フェノールレッドナトリウム塩0.004g/L~0.013g/Lと、
ピルビン酸ナトリウム塩0.2g/L~0.6g/Lと、
ウシ胎児血清(FBS) 2(v/v)~4%(v/v)と、
ウシ血清アルブミン(BSA) 0.3(w/v)~0.6%(w/v)と、
Hepes8mM~15mM (pH 7~8)と、
グルコース3g/L~5.5g/Lと、
乳酸0.06mM~0.35mMと、
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の精子の保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精子保存液及び精子保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
治療目的や研究目的で精子を輸送する場合、精子を凍結することが一般的である。しかし、凍結精子の凍結融解後の受精能が著しく低下することが問題であった。
【0003】
このような問題に対し、凍結融解後の精子の受精能を維持するための凍結保存剤の改良がなされてきた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-022214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、凍結保存した精子を輸送する場合には、ドライジッパーを用いて液体窒素中に凍結保存した精子を入れ、高額な容器とともに荷物として輸送する方法を取らざるを得なかったため、高額の輸送コストを要した。
【0006】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、室温で精子を長期間保存できる精子保存液及び精子保存方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、精子保存液の組成を検討した結果、室温でも魚類の精子は1週間以上、ほ乳類の精子は3日以上保存できる精子保存液を同定し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
[1]無機塩類、アミノ酸、ビタミン類、及びウシ胎児血清を含有することを特徴とする精子保存液。
[2]さらに、ウシ血清アルブミンを含有する[1]に記載の精子保存液。
[3]さらに、緩衝剤を含有し、pHが6.5~10.0である[1]又は[2]に記載の精子保存液。
[4]さらに、グルコースを含有する[1]~[3]のいずれか一つに記載の精子保存液。
[5]さらに、乳酸を含有する[1]~[4]のいずれか一つに記載の精子保存液。
[6]さらに、抗酸化剤を含有する[1]~[5]のいずれか一つに記載の精子保存液。
[7]さらに、ペニシリン及び/又はストレプトマイシンを含有する[1]~[6]のいずれか一つに記載の精子保存液。
[8][1]~[7]のいずれか一つに記載の精子保存液を用いることを特徴とする精子保存方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、室温でも魚類の精子を1週間以上、ほ乳類の精子は4日以上保存できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】比較例1~2の培地を用いて保存した精子の受精率を示したグラフである。
図2】比較例2及び実施例1の培地を用いて保存した精子の受精率を示したグラフである。
図3】実施例1~2の培地を用いて保存した精子の受精率を示したグラフである。
図4】実施例2~3の培地を用いて保存した精子の受精率を示したグラフである。
図5】実施例3~4の培地を用いて保存した精子の受精率を示したグラフである。
図6】実施例4の培地を用いて、7日間、28日間保存した精子の受精率を示したグラフである。
図7】実施例4~6の培地を用いて、7日間、8日間保存した精子の受精率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<<精子保存液>>
本発明の精子保存液は、無機塩類、アミノ酸、ビタミン類、及びウシ胎児血清を含有する。
【0012】
無機塩類としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、これらの無水物、これらの水和物が挙げられる。
中でも、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、及びリン酸二水素カリウム、並びに、これらの無水物、及びこれらの水和物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、塩化ナトリウム、及びリン酸水素二ナトリウム、並びに、これらの無水物、及びこれらの水和物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することがより好ましく、塩化カルシウム二水和物、塩化マグネシウム六水和物、無水硫酸マグネシウム、塩化カリウム、無水リン酸二水素カリウム、塩化ナトリウム、及び無水リン酸水素二ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが更に好ましい。
【0013】
亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、これらの無水物、又はこれらの水和物としては、精子保存液1L中に0.005g~2g含有することが好ましく、0.01g~1g含有することがより好ましく、0.02g~0.5g含有することが更に好ましい。
塩化ナトリウムとしては、精子保存液1L中に1g~40g含有することが好ましく、2g~20g含有することがより好ましく、5g~10g含有することが更に好ましい。
【0014】
ゼブラフィッシュ用又はメダカ用の精子保存液における無機塩類としては、塩化カルシウム二水和物0.1g/L~0.25g/L、塩化マグネシウム六水和物0.15g/L~0.25g/L、無水硫酸マグネシウム0.06g/L~0.12g/L、塩化カリウム0.3g/L~0.6g/L、無水リン酸二水素カリウム0.04g/L~0.08g/L、塩化ナトリウム6.0g/L~10.0g/L、及び無水リン酸水素二ナトリウム0.15g/L~0.25g/Lを含むことが好ましく、塩化カルシウム二水和物0.1g/L~0.25g/L、塩化マグネシウム六水和物0.15g/L~0.25g/L、無水硫酸マグネシウム0.06g/L~0.12g/L、塩化カリウム0.3g/L~0.6g/L、無水リン酸二水素カリウム0.04g/L~0.08g/L、塩化ナトリウム6.0g/L~10.0g/L、及び無水リン酸水素二ナトリウム0.15g/L~0.25g/Lからなることがより好ましい。
【0015】
マウス用の精子保存液における無機塩類としては、塩化カルシウム二水和物0.04g/L~0.075g/L、塩化マグネシウム六水和物0.15g/L~0.25g/L、無水硫酸マグネシウム0.06g/L~0.12g/L、塩化カリウム0.09g/L~0.18g/L、無水リン酸二水素カリウム0.04g/L~0.08g/L、塩化ナトリウム6.0g/L~10.0g/L、及び無水リン酸水素二ナトリウム0.15g/L~0.25g/Lを含むことが好ましく、塩化カルシウム二水和物0.04g/L~0.075g/L、塩化マグネシウム六水和物0.15g/L~0.25g/L、無水硫酸マグネシウム0.06g/L~0.12g/L、塩化カリウム0.09g/L~0.18g/L、無水リン酸二水素カリウム0.04g/L~0.08g/L、塩化ナトリウム6.0g/L~10.0g/L、及び無水リン酸水素二ナトリウム0.15g/L~0.25g/Lからなることがより好ましい。
【0016】
精子保存液中の無機塩類の総量としては、0.01~10%含有することが好ましく、0.1~10%含有することがより好ましく、0.1~5%含有することが更に好ましい。
【0017】
アミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、これらのL体、D体、DL体、塩基フリー体、これらの無水物が挙げられる。
中でも、アラニン、アルギニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリン、並びに、これらのL体、D体、DL体、塩基フリー体、及びこれらの無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、DL-アラニン、L-アルギニン(塩基フリー)、無水L-アスパラギン、L-システイン(塩基フリー)、L-グルタミン、グリシン、L-ヒスチジン、DL-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、DL-メチオニン、DL-フェニルアラニン、L-セリン、DL-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン(塩基フリー)、及びDL-バリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することがより好ましい。
【0018】
アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、これらのL体、D体、DL体、塩基フリー体、又はこれらの無水物としては、精子保存液1L中に0.0005g~4g含有することが好ましく、0.001g~2g含有することがより好ましく、0.003g~1g含有することが更に好ましい。
【0019】
ゼブラフィッシュ用又はマウス用の精子保存液におけるアミノ酸としては、DL-アラニン0.3g/L~0.6g/L、L-アルギニン(塩基フリー)0.35g/L~0.65g/L、無水L-アスパラギン0.15g/L~0.35g/L、L-システイン(塩基フリー)0.08g/L~0.2g/L、L-グルタミン0.2g/L~0.4g/L、グリシン0.15g/L~0.35g/L、L-ヒスチジン0.15g/L~0.35g/L、DL-イソロイシン0.13g/L~0.35g/L、L-ロイシン0.08g/L~0.2g/L、L-リジン0.055g/L~0.095g/L、DL-メチオニン0.08g/L~0.25g/L、DL-フェニルアラニン0.15g/L~0.35g/L、L-セリン0.15g/L~0.3g/L、DL-スレオニン0.4g/L~0.8g/L、L-トリプトファン0.015g/L~0.035g/L、L-チロシン(塩基フリー)0.2g/L~0.4g/L、及びDL-バリン0.15g/L~0.35g/Lを含むことが好ましく、DL-アラニン0.3g/L~0.6g/L、L-アルギニン(塩基フリー)0.35g/L~0.65g/L、無水L-アスパラギン0.15g/L~0.35g/L、L-システイン(塩基フリー)0.08g/L~0.2g/L、L-グルタミン0.2g/L~0.4g/L、グリシン0.15g/L~0.35g/L、L-ヒスチジン0.15g/L~0.35g/L、DL-イソロイシン0.13g/L~0.35g/L、L-ロイシン0.08g/L~0.2g/L、L-リジン0.055g/L~0.095g/L、DL-メチオニン0.08g/L~0.25g/L、DL-フェニルアラニン0.15g/L~0.35g/L、L-セリン0.15g/L~0.3g/L、DL-スレオニン0.4g/L~0.8g/L、L-トリプトファン0.015g/L~0.035g/L、L-チロシン(塩基フリー)0.2g/L~0.4g/L、及びDL-バリン0.15g/L~0.35g/Lからなることがより好ましい。
【0020】
メダカ用の精子保存液におけるアミノ酸としては、DL-アラニン0.07g/L~0.6g/L、L-アルギニン(塩基フリー)0.15g/L~0.65g/L、無水L-アスパラギン0.08g/L~0.35g/L、L-システイン(塩基フリー)0.045g/L~0.2g/L、L-グルタミン0.085g/L~0.4g/L、グリシン0.08g/L~0.35g/L、L-ヒスチジン0.07g/L~0.35g/L、DL-イソロイシン0.07g/L~0.35g/L、L-ロイシン0.04g/L~0.2g/L、L-リジン0.02g/L~0.095g/L、DL-メチオニン0.045g/L~0.25g/L、DL-フェニルアラニン0.085g/L~0.35g/L、L-セリン0.08g/L~0.3g/L、DL-スレオニン0.2g/L~0.8g/L、L-トリプトファン0.075g/L~0.035g/L、L-チロシン(塩基フリー)0.085g/L~0.4g/L、及びDL-バリン0.085g/L~0.35g/Lを含むことが好ましく、DL-アラニン0.07g/L~0.6g/L、L-アルギニン(塩基フリー)0.15g/L~0.65g/L、無水L-アスパラギン0.08g/L~0.35g/L、L-システイン(塩基フリー)0.045g/L~0.2g/L、L-グルタミン0.085g/L~0.4g/L、グリシン0.08g/L~0.35g/L、L-ヒスチジン0.07g/L~0.35g/L、DL-イソロイシン0.07g/L~0.35g/L、L-ロイシン0.04g/L~0.2g/L、L-リジン0.02g/L~0.095g/L、DL-メチオニン0.045g/L~0.25g/L、DL-フェニルアラニン0.085g/L~0.35g/L、L-セリン0.08g/L~0.3g/L、DL-スレオニン0.2g/L~0.8g/L、L-トリプトファン0.075g/L~0.035g/L、L-チロシン(塩基フリー)0.085g/L~0.4g/L、及びDL-バリン0.085g/L~0.35g/Lからなることがより好ましい。
【0021】
精子保存液中のアミノ酸の総量としては、0.3~200mM含有することが好ましく、1~100mM含有することがより好ましく、3~50mM含有することが更に好ましい。
【0022】
ビタミン類としては、ビオチン、コリン、葉酸、イノシトール、ニコチン酸、パントテン酸、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、パラアミノ安息香酸(PABA)、アスコルビン酸、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、ビタミンA、α-トコフェロール、これらの誘導体、これらの塩、これらの水和物が挙げられる。
中でも、塩化コリン、フラビンモノヌクレオチドナトリウム塩、葉酸、ミオイノシトール、ニコチンアミド、DL-パントテン酸ヘミカルシウム塩、ピリドキシン塩酸塩、及びチアミン一リン酸塩酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することがより好ましく、塩化コリン、フラビンモノヌクレオチドナトリウム塩、葉酸、ミオイノシトール、ニコチンアミド、DL-パントテン酸ヘミカルシウム塩、ピリドキシン塩酸塩、及びチアミン一リン酸塩酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが更に好ましい。
【0023】
ビオチン、コリン、葉酸、イノシトール、ニコチン酸、パントテン酸、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、パラアミノ安息香酸(PABA)、アスコルビン酸、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、ビタミンA、α-トコフェロール、これらの誘導体、これらの塩、又はこれらの水和物としては、精子保存液1L中に0.01mg~5mg含有することが好ましく、0.02mg~2mg含有することがより好ましく、0.03mg~1mg含有することが更に好ましい。
【0024】
ゼブラフィッシュ用、又はマウス用の精子保存液におけるビタミン類としては、塩化コリン0.0008g/L~0.0012g/L、フラビンモノヌクレオチドナトリウム塩0.00008g/L~0.00012g/L、葉酸0.0008g/L~0.0012g/L、ミオイノシトール0.0015g/L~0.0025g/L、ニコチンアミド0.0008g/L~0.0012g/L、DL-パントテン酸ヘミカルシウム塩0.0008g/L~0.0012g/L、ピリドキシン塩酸塩0.0008g/L~0.0012g/L、及びチアミン一リン酸塩酸塩0.0008g/L~0.0012g/Lを含むことが好ましく、塩化コリン0.0008g/L~0.0012g/L、フラビンモノヌクレオチドナトリウム塩0.00008g/L~0.00012g/L、葉酸0.0008g/L~0.0012g/L、ミオイノシトール0.0015g/L~0.0025g/L、ニコチンアミド0.0008g/L~0.0012g/L、DL-パントテン酸ヘミカルシウム塩0.0008g/L~0.0012g/L、ピリドキシン塩酸塩0.0008g/L~0.0012g/L、及びチアミン一リン酸塩酸塩0.0008g/L~0.0012g/Lからなることがより好ましい。
【0025】
メダカ用の精子保存液におけるビタミン類としては、塩化コリン0.0004g/L~0.0012g/L、フラビンモノヌクレオチドナトリウム塩0.00004g/L~0.00012g/L、葉酸0.0004g/L~0.0012g/L、ミオイノシトール0.0007g/L~0.0025g/L、ニコチンアミド0.0004g/L~0.0012g/L、DL-パントテン酸ヘミカルシウム塩0.0004g/L~0.0012g/L、ピリドキシン塩酸塩0.0004g/L~0.0012g/L、及びチアミン一リン酸塩酸塩0.0004g/L~0.0012g/Lを含むことが好ましく、塩化コリン0.0004g/L~0.0012g/L、フラビンモノヌクレオチドナトリウム塩0.00004g/L~0.00012g/L、葉酸0.0004g/L~0.0012g/L、ミオイノシトール0.0007g/L~0.0025g/L、ニコチンアミド0.0004g/L~0.0012g/L、DL-パントテン酸ヘミカルシウム塩0.0004g/L~0.0012g/L、ピリドキシン塩酸塩0.0004g/L~0.0012g/L、及びチアミン一リン酸塩酸塩0.0004g/L~0.0012g/Lからなることがより好ましい。
【0026】
精子保存液中の総量としては、精子保存液1L中に、0.1mg~40mg含有することが好ましく、0.3mg~20mg含有することがより好ましく、0.6mg~10mg含有することが更に好ましい。
【0027】
ウシ胎児血清としては、精子保存液中に0.2%(v/v)~15%(v/v)含有することが好ましく、0.5%(v/v)~10%(v/v)含有することがより好ましく、1%(v/v)~5%(v/v)含有することが更に好ましい。
ゼブラフィッシュ用、メダカ用又はマウス用の精子保存液は、ウシ胎児血清を、2%(v/v)~4%(v/v)含むことが好ましい。
【0028】
本発明の精子保存液は、さらに、ウシ血清アルブミンを含有することが好ましい。ウシ血清アルブミンとしては、精子保存液中に0.05%~10%含有することが好ましく、0.1%~5%含有することがより好ましく、0.2%~2%含有することが更に好ましい。
ゼブラフィッシュ用、メダカ用又はマウス用の精子保存液は、ウシ血清アルブミンを、0.3%(w/v)~0.6%(w/v)含むことが好ましい。
【0029】
本発明の精子保存液は、さらに、Hepes(2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazinyl]ethanesulfonic acid) 等の緩衝剤を含有してpHが6.5~10.0であることが好ましい。Hepesとしては、精子保存液中に1~100mM含有することが好ましく、2~50mM含有することがより好ましく、5~20mM含有することが更に好ましい。 pHとしては、6.5~10.0であり、7.0~9.5であることが好ましく、7.5~9.0であることがより好ましい。
ゼブラフィッシュ用、又はメダカ用の精子保存液は、Hepes(pH 7~8)を、8mM~15mM含むことが好ましい。
マウス用の精子保存液は、Hepes(pH 8~9)を、15mM~25mM含むことが好ましい。
【0030】
本発明の精子保存液は、さらに、グルコースを含有することが好ましい。グルコースとしては、精子保存液1L中に、0.5g~40g含有することが好ましく、1g~20g含有することがより好ましく、2g~10g含有することが更に好ましい。
ゼブラフィッシュ用、メダカ用又はマウス用の精子保存液は、グルコースを、3g/L~5.5g/L含むことが好ましい。
【0031】
本発明の精子保存液は、さらに、乳酸を含有することが好ましい。乳酸としては、精子保存液中に、0.01mM~2mM含有することが好ましく、0.02mM~1mM含有することがより好ましく、0.05mM~0.5mM含有することが更に好ましい。
ゼブラフィッシュ用、又はマウス用の精子保存液は、乳酸を、0.06mM~0.15mM含むことが好ましい。
メダカ用の精子保存液は、乳酸を、0.06mM~0.35mM含むことが好ましい。
【0032】
本発明の精子保存液は、さらに、抗酸化剤を含有することが好ましい。抗酸化剤としては、ビタミンC、ハイドロキノン、アルブチン、アスタキサンチン、ジブチルヒドロキシトルエン、コエンザイムQ10、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、クエン酸、グルタチオン、セレン、リコペン、ビタミンA、ビタミンE等が挙げられる。
抗酸化剤としては、精子保存液中に、0.01mM~2mM含有することが好ましく、0.02mM~1mM含有することがより好ましく、0.05mM~0.5mM含有することが更に好ましい。
【0033】
本発明の精子保存液は、さらに、ペニシリン及び/又はストレプトマイシンを含有することが好ましく、ペニシリン及びストレプトマイシンを含有することがより好ましい。5,000ユニット/mlのペニシリン及び5,000μg/mlのストレプトマイシンにおいては、精子保存液中に、50~1000倍希釈して用いられることが好ましく、50~300倍希釈して用いられることがより好ましく、50~150倍希釈して用いられることが更に好ましい。
【0034】
その他、本発明の精子保存液は、D-ガラクトース、フェノールレッドナトリウム塩、ピルビン酸ナトリウム塩等を含有することが好ましい。
ゼブラフィッシュ用、又はマウス用の精子保存液は、D-ガラクトースを0.7g/L~1.2g/L含むことが好ましく、フェノールレッドナトリウム塩を0.008g/L~0.013g/L含むことが好ましく、ピルビン酸ナトリウム塩を0.45g/L~0.6g/L含むことが好ましい。
メダカ用の精子保存液は、D-ガラクトースを0.3g/L~1.2g/L含むことが好ましく、フェノールレッドナトリウム塩を0.004g/L~0.013g/L含むことが好ましく、ピルビン酸ナトリウム塩を0.2g/L~0.6g/L含むことが好ましい。
【0035】
<<精子保存方法>>
本発明の精子保存方法は、上述した精子保存液を用いる方法である。
保存対象の精子としては、例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、マウス、ラット、ハムスター等の哺乳動物の精子が挙げられる。更に、魚類、両生類、鳥類、爬虫類等の精子も挙げられる。魚類の精子としては、メダカ、ゼブラフィッシュの精子が挙げられる。
【0036】
本発明の精子保存液及び精子保存方法によれば、室温で精子を長期間保存できるため、少量の精子懸濁液をチューブに入れて封筒で輸送することができる。精子保存液そのものは、低価格で調整できるため、本発明によれば大幅な輸送コストの削減が可能となる。
【実施例
【0037】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
[抗生物質の検討]
2~3個体分のゼブラフィッシュから採取した精子を、氷冷した表1に示す比較例1及び比較例2の培地に懸濁して精子懸濁液を作製した。この精子懸濁液10μLをサンプリングし、精子数をカウントした。次いで、培地を用いて74000個/μLに調製した精子懸濁液を冷蔵庫で4日4℃保存した。受精当日、ゼブラフィッシュ雌から卵をガラス製ディッシュに絞り取り、この卵100個程度に、精子懸濁液40μLをかけた後、800μLの滅菌魚類飼育水をさらにかけ、1分半放置した。さらに、このチューブに、適量の滅菌魚類飼育水を入れ、この卵を嚢胚期まで培養した後、受精率をカウントした。結果を図1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
図1中、縦軸は受精率(%)を示す。図1に示すようにペニシリン/ストレプトマイシンを含有しても受精率に影響が無いことが確認された。
【0041】
[ウシ胎児血清(FBS)の検討]
表2に示す、氷冷した実施例1及び比較例2の培地を用いた以外は、[抗生物質の検討]と同じ方法で、FBS添加による受精率に対する影響を調べた。結果を図2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
図2中、縦軸は受精率(%)を示し、*:p<0.01である。図2に示すようにFBS添加により、受精率が劇的に増加することが確認された。
【0044】
[ウシ血清アルブミン(BSA)とpHの検討]
表3に示す、氷冷した実施例1及び実施例2の培地を用いた以外は、[抗生物質の検討]と同じ方法で、BSA添加とpH調整による受精率に対する影響を調べた。結果を図3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
図3中、縦軸は受精率(%)を示し、*:p<0.05である。図3に示すようにBSA添加により、受精率が更に増加することが確認された。
【0047】
[グルコースの検討]
表4に示す、氷冷した実施例2及び実施例3の培地を用いた以外は、[抗生物質の検討]と同じ方法で、グルコース添加による受精率に対する影響を調べた。結果を図4に示す。
【0048】
【表4】
【0049】
図4中、縦軸は受精率(%)を示す。図4に示すようにグルコース添加により、受精率が更に増加することが確認された。
【0050】
[乳酸の検討]
表5に示す、氷冷した実施例3及び実施例4の培地を用い、実施例4の培地を用いて作製した精子懸濁液を23℃で4日保存した以外は、[抗生物質の検討]と同じ方法で、乳酸添加による受精率に対する影響を調べた。結果を図5に示す。
【0051】
【表5】
【0052】
図5中、縦軸は受精率(%)を示す。図5に示すように乳酸を添加した培地を用い、23℃で保存することにより、受精率が更に増加することが確認された。
【0053】
[長期保存効果の検討]
氷冷した実施例4の培地を用い、実施例4の培地を用いて作製した精子懸濁液を23℃で7日、28日保存した以外は、[抗生物質の検討]と同じ方法で、乳酸添加による受精率に対する影響を調べた。結果を図6に示す。
【0054】
図6中、縦軸は受精率(%)を示す。図6に示すように、実施例4の培地を用い、23℃で保存することにより、7日保存の場合には約8割、28日保存の場合には約3割の受精率が確認された。
【0055】
[メダカ精子の保存]
表6に示すように、実施例4の培地に加え、乳酸のみを0.2mMに増やした培地を用意した(実施例5)。また、無機塩類(塩化カルシウム二水和物、塩化マグネシウム六水和物、無水硫酸マグネシウム、塩化カリウム、無水リン酸二水素カリウム、塩化ナトリウム、無水リン酸水素二ナトリウム)、ペニシリン/ストレプトマイシン、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清アルブミン(BSA)、10mM Hepes (pH 8.8)、グルコース、乳酸については、実施例4のゼブラフィッシュに用いた培地の分量と同じで、アミノ酸類、ビタミン類、D-ガラクトース、フェノールレッドナトリウム塩、ピルビン酸ナトリウム塩についてはゼブラフィッシュに用いた培地の分量の1/2量の培地を用意した(実施例6)。精巣(1つ)を取り出して、0.5%のbleachで30秒滅菌し、メダカのリンガー液(BSS)で2回wash後に、用意したそれぞれの培地(66μl)の中で、ピンセットを使って精子を絞り出した。その精子懸濁液10μlを1.5mlチューブに移し、そこに90μlの培地を加えて、精子の濃度は450,000/mlで保存した。
7日間室温または8日間4℃で保存した後、受精実験にはメダカ雌から準備した卵を用いて1チューブ分100μl(45,000精子)を用いて行った。この卵を嚢胚期まで培養した後、受精率をカウントした。結果を図7に示す。図7中、縦軸は受精率(%)を示す。実施例4の培地を用いて室温で保存したものは、一部、一週間目頃から精子保存液の色が黄色~オレンジ色っぽくなった。精巣に由来する体細胞が増殖したものと推測される。それ以外は、精子の受精能が維持されていることを確認した。
【0056】
【表6】
【0057】
[マウス精子の保存]
表7に示すように、塩化マグネシウム六水和物、無水硫酸マグネシウム、無水リン酸二水素カリウム、塩化ナトリウム、無水リン酸水素二ナトリウム、ペニシリン/ストレプトマイシン、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清アルブミン(BSA)、グルコース、乳酸、アミノ酸類、ビタミン類、D-ガラクトース、フェノールレッドナトリウム塩、ピルビン酸ナトリウム塩については、実施例4のゼブラフィッシュに用いた培地の分量と同じで、塩化カルシウム二水和物、塩化カリウムについては、実施例4のゼブラフィッシュに用いた培地の分量の1/3量で、20mM Hepes(pH 8.8)の培地を用意した(実施例7)。マウス精巣上体尾部を剪刀ばさみで切り、絞り出した精子を上記培養液0.5 mlに懸濁して精子懸濁液を作成した。
室温(22~23℃)で4日間保存した後、下層部約0.02 mlを、精子前培養用ディッシュ中のCARD FERTIUPマウス精子前培養培地 0. 2mlドロップに加えて、60分37℃で前培養し、その精子を、未受精卵を含む受精用mHTFドロップに加えて媒精した。媒精から3時間後、形態的に正常な卵子のみをmHTFドロップで洗浄した。翌日、2cellに発生した胚を胚培養用培地KSOMに移し、この卵を胚盤胞まで培養した後、受精率をカウントした。結果を表8に示す。
【0058】
【表7】
【0059】
【表8】
【0060】
表8中、実施例4-1~4-5は、実施例4の培地を用いて、5回の繰り返し実験を行った結果を示し、実施例7-1~7-5は、実施例7の培地を用いて、5回の繰り返し実験を行った結果を示し、
表8に示すように、5回の繰り返し実験で実施例7の培地は、保存能力に優れていることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7