(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】水素化化合物およびその製造方法、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、それを含む感光性樹脂組成物、それを硬化してなる硬化物、その硬化物を構成成分として含むタッチパネルおよびカラーフィルター
(51)【国際特許分類】
C08G 59/14 20060101AFI20240425BHJP
C08G 59/17 20060101ALI20240425BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20240425BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240425BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20240425BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
C08G59/14
C08G59/17
C08F299/02
G02B5/20 101
G03F7/027 502
G06F3/041 450
G06F3/041 490
G06F3/041 495
(21)【出願番号】P 2020035012
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 寛之
(72)【発明者】
【氏名】滑川 崇平
(72)【発明者】
【氏名】清水 健博
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-071359(JP,A)
【文献】特開2017-122797(JP,A)
【文献】特開2008-249822(JP,A)
【文献】特開2014-067063(JP,A)
【文献】国際公開第2006/109572(WO,A1)
【文献】特開2007-131772(JP,A)
【文献】特開2004-292801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/14
C08G 59/17
C08F 299/02
G02B 5/20
G03F 7/027
G06F 3/041
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される水素化化合物。
【化1】
(式(1)中、R
1は独立して炭素数2~4の炭化水素基を示し、R
2は独立して炭素数1~3の炭化水素基を示し、R
3はグリシジル基または下記一般式(2)を示すが、R
3のうち少なくとも1つはグリシジル基を示し、aは独立して平均値が0~10の数を示し、bは独立して平均値が0~4の数を示し、nは平均値が0~10の数を示し、A
1、A
2は、独立して下記一般式(3)または一般式(4)を示し、A
3およびA
4は、独立して下記一般式(5)または一般式(6)を示し、前記一般式(4)および一般式(6)の存在率は、A
1、A
2、A
3およびA
4の合計に対して1mol%以上100mol%以下である。)
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
(式(5)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【化6】
(式(6)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【請求項2】
下記一般式(7)で示されるジオールまたはポリオール。
【化7】
(式(7)中、R
1は独立して炭素数2~4の炭化水素基を示し、R
2は独立して炭素数1~3の炭化水素基を示し、R
4は水素原子またはメチル基を示し、aは独立して平均値が0~10の数を示し、bは独立して平均値が0~4の数を示し、nは平均値が0~10の数を示し、A
1、A
2は、独立して下記一般式(3)または一般式(4)を示し、A
3およびA
4は、独立して下記一般式(5)または一般式(6)を示し、前記一般式(4)および一般式(6)の存在率は、A
1、A
2、A
3およびA
4の合計に対して1mol%以上100mol%以下である。)
【化8】
【化9】
【化10】
(式(5)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【化11】
(式(6)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【請求項3】
前記一般式(1)で表される構造において、前記一般式(4)および一般式(6)の存在率は、A
1、A
2、A
3およびA
4の合計に対して10mol%以上80mol%以下である、請求項
1に記載の水素化化合物。
【請求項4】
前記一般式(7)で表される構造において、前記一般式(4)および一般式(6)の存在率は、A
1
、A
2
、A
3
およびA
4
の合計に対して10mol%以上80mol%以下である、
請求項2に記載のジオールまたはポリオール。
【請求項5】
下記一般式(8)で表される重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂。
【化12】
(式(8)中、R
1は独立して炭素数2~4の炭化水素基を示し、R
2は独立して炭素数1~3の炭化水素基を示し、R
4は水素原子またはメチル基を示し、R
5はグリシジル基に(メタ)アクリル酸を反応させた一価の基または当該一価の基に酸無水物を付加してなる一価の基を示し、A
1、A
2は、独立して下記一般式(3)または一般式(4)を示し、A
3およびA
4は、独立して下記一般式(5)または一般式(6)を示し、前記一般式(4)および一般式(6)の存在率は、A
1、A
2、A
3およびA
4の合計に対して1mol%以上100mol%以下であり、Yは4価のカルボン酸残基を示し、Gは水素原子または一般式(9)で表される置換基を示し、aは独立して平均値が0~10の数を示し、bは独立して平均値が0~4の数を示し、mは平均値が0~10の数を示す。)
【化13】
【化14】
【化15】
(式(5)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【化16】
(式(6)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【化17】
(式(9)中、R
6は独立して水素原子またはメチル基を示し、R
7は独立して炭素数2~4の炭化水素基を示し、cは0または1である。)
【請求項6】
下記の成分(A)および(B)、
(A)請求項
5に記載の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、
(B)光重合開始剤と、
を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項7】
下記の工程(i)および(ii)、
(i)下記一般式(10)で表される化合物を準備する工程と、
(ii)前記化合物のフェニレン基またはフルオレン基を水素化させる工程と、
を有することを特徴とする水素化化合物の製造方法。
【化18】
(式(10)中、R
1は独立して炭素数2~4の炭化水素基を示し、aは独立して平均値が0~10の数を示し、nは平均値が0~10の数を示す。)
【請求項8】
更に下記の工程(iii)および(iv);
(iii)請求項
7に記載の方法で製造された前記水素化化合物と不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させる工程と、
(iv)前記工程(iii)の後に、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸又はそれらの酸一無水物およびテトラカルボン酸またはその酸二無水物を前記水素化化合物と反応させる工程と、
を有すること特徴とする水素化化合物の製造方法。
【請求項9】
請求項
6に記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項10】
請求項
9に記載の硬化物を構成成分として含む、タッチパネル。
【請求項11】
請求項
9に記載の硬化物を構成成分として含む、カラーフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化化合物およびその製造方法、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、それを含む感光性樹脂組成物、それを硬化してなる硬化物、その硬化物を構成成分として含むタッチパネルおよびカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル端末の発達により、屋外や車載にて使用するタッチパネルおよび液晶パネル等の表示装置が増加している。上記表示装置において、タッチパネル外枠には背面の液晶パネル周辺部の光漏れを遮光するために遮光膜が設けられ、上記液晶パネルには黒色表示時に画面から光が漏れるのを抑制するため、および隣接し合うカラーレジスト同士の混色を抑制するために、ブラックマトリックスが設けられている。
【0003】
表示装置等において、光漏れ等を抑制して上記表示装置等の画面の視認性を改善するために、遮光膜中の黒色顔料の濃度を高くして、遮光膜の遮光性を上げる(遮光膜の光透過性を下げる)ことがある。透明基材や硬化性樹脂の屈折率と比較して、黒色顔料の屈折率は高いため、遮光膜中の黒色顔料濃度を高くしていくと、透明基材の遮光膜が形成された面、および遮光膜が形成された反対の面側から見たときの反射率が高くなってしまう。そのため、透明基材上に形成した遮光膜と透明基材の界面における反射が増加し、遮光膜上への映り込みや、カラーフィルター着色部との反射率の差異でブラックマトリックス境界が目立つという不具合が生じる。また、高精細のブラックマトリックス形成用レジストに用いられる樹脂は屈折率が高い。そのため、黒色顔料の濃度調整だけでは、遮光性と低反射性の両立を図るのは困難である。
【0004】
このため、低屈折率のブラックレジスト用感光性樹脂組成物が要望されている。
【0005】
たとえば、特許文献1では、少なくとも2種以上の樹脂と、着色剤と、光酸発生剤とを含む樹脂膜であって、樹脂膜の光散乱測定において、横軸に散乱角、縦軸に散乱光強度をプロットしたスペクトルにおけるピークの半値幅をA1、上記ピークの最大光強度の散乱角をA2とするとき、A1/A2の値が0.1超2.5以下であるピークを有する樹脂膜が開示されている。上記樹脂膜は、2種以上の樹脂によって相分離構造を形成することができるので低反射性に優れるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載の樹脂膜では、反射率は低減できるものの、表面の凹凸の影響で表面平滑性の低下や拡散反射の増加等による外観不良が生じる可能性があることがわかった。そこで、樹脂自体の屈折率を低減して所望する反射率を達成でき、感光性樹脂組成物に用いる場合に要求される現像性、また硬化物としたときの耐熱性、密着性等の特性も具備できる感光性樹脂組成物に対するニーズが高まってきている。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、低屈折率であり、かつ、耐光性を有する現像特性に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる水素化化合物およびその製造方法を提供することを第1の目的とする。また、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、それを含む感光性樹脂組成物、およびそれを硬化してなる硬化物、その硬化物を構成成分として含むタッチパネル、およびカラーフィルターを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の水素化化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0010】
【0011】
(式(1)中、R1は独立して炭素数2~4の炭化水素基を示し、R2は独立して炭素数1~3の炭化水素基を示し、R3はグリシジル基または下記一般式(2)を示すが、R3のうち少なくとも1つはグリシジル基を示し、aは独立して平均値が0~10の数を示し、bは独立して平均値が0~4の数を示し、nは平均値が0~10の数を示し、A1、A2は、独立して下記一般式(3)または一般式(4)を示し、A3およびA4は、独立して下記一般式(5)または一般式(6)を示し、前記一般式(4)および一般式(6)の存在率は、A1、A2、A3およびA4の合計に対して1mol%以上100mol%以下である。)
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
(式(5)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【0017】
【0018】
(式(6)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【0019】
また、本発明のジオールまたはポリオールは、下記一般式(7)で示される重合性不飽和基を含有する化合物である。
【0020】
【0021】
(式(7)中、R1は独立して炭素数2~4の炭化水素基を示し、R2は独立して炭素数1~3の炭化水素基を示し、R4は水素原子またはメチル基を示し、aは独立して平均値が0~10の数を示し、bは独立して平均値が0~4の数を示し、nは平均値が0~10の数を示し、A1、A2は、独立して下記一般式(3)または一般式(4)を示し、A3およびA4は、独立して下記一般式(5)または一般式(6)を示し、前記一般式(4)および一般式(6)の存在率は、A1、A2、A3およびA4の合計に対して1mol%以上100mol%以下である。)
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
(式(5)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【0026】
【0027】
(式(6)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【0028】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、一般式(8)で表される(A)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(B)光重合開始剤と、を含む。
【0029】
【0030】
(式(8)中、R1は独立して炭素数2~4の炭化水素基を示し、R2は独立して炭素数1~3の炭化水素基を示し、R4は水素原子またはメチル基を示し、R5はグリシジル基に(メタ)アクリル酸を反応させた一価の基または当該一価の基に酸無水物を付加してなる一価の基を示し、A1、A2は、独立して下記一般式(3)または一般式(4)を示し、A3およびA4は、独立して下記一般式(5)または一般式(6)を示し、前記一般式(4)および一般式(6)の存在率は、A1、A2、A3およびA4の合計に対して1mol%以上100mol%以下であり、Yは4価のカルボン酸残基を示し、Gは水素原子または一般式(9)で表される置換基を示し、aは独立して平均値が0~10の数を示し、bは独立して平均値が0~4の数を示し、mは平均値が0~10の数を示す。)
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
(式(5)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【0035】
【0036】
(式(6)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【0037】
【0038】
(式(9)中、R6は独立して水素原子またはメチル基を示し、R7は独立して炭素数2~4の炭化水素基を示し、cは0または1である。)
【0039】
また、本発明の水素化化合物の製造方法は、(i)下記一般式(10)で表される化合物を準備する工程と、(ii)前記化合物のフェニレン基またはフルオレン基を水素化させる工程と、を有する。
【0040】
【0041】
(式(10)中、R1は独立して炭素数2~4の炭化水素基を示し、aは独立して平均値が0~10の数を示し、nは平均値が0~10の数を示す。)
【0042】
また、本発明の硬化物は、上記感光性樹脂組成物を硬化してなる。
【0043】
また、本発明のタッチパネルは、上記硬化物を構成成分として含む。
【0044】
また、本発明のカラーフィルターは、上記硬化物を構成成分として含む。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、低屈折率であり、かつ、耐光性を有する現像特性に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる水素化化合物およびその製造方法を提供することができる。また、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、それを含む感光性樹脂組成物、およびそれを硬化してなる硬化物、その硬化物を構成成分として含むタッチパネル、およびカラーフィルターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る硬化膜の屈折率と芳香環の数との関係を示すグラフである。
【
図2】
図2は、本発明の一実施の形態に係る硬化膜の露光前後の硬化膜の黄変度(ΔYI)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0048】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(以下、アルカリ可溶性樹脂ともいう)と、(B)光重合開始剤と、を含む。下記一般式(8)で表される(A)アルカリ可溶性樹脂は、1分子内に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と、不飽和基含有モノカルボン酸との反応物に対して、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)、およびテトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)を反応させることにより得られる。
【0049】
【0050】
(式(8)中、R1は独立して炭素数2~4の炭化水素基を示し、R2は独立して炭素数1~3の炭化水素基を示し、R4は水素原子またはメチル基を示し、R5はグリシジル基に(メタ)アクリル酸を反応させた一価の基または当該一価の基に酸無水物を付加してなる一価の基を示し、A1、A2は、独立して下記一般式(3)または一般式(4)を示し、A3およびA4は、独立して下記一般式(5)または一般式(6)を示し、前記一般式(4)および一般式(6)の存在率は、A1、A2、A3およびA4の合計に対して1mol%以上100mol%以下であり、Yは4価のカルボン酸残基を示し、Gは水素原子または一般式(9)で表される置換基を示し、aは独立して平均値が0~10の数を示し、bは独立して平均値が0~4の数を示し、mは平均値が0~10の数を示す。)
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
(式(5)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【0055】
【0056】
(式(6)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【0057】
【0058】
(式(9)中、R6は独立して水素原子またはメチル基を示し、R7は独立して炭素数2~4の炭化水素基を示し、cは0または1である。)
【0059】
上記一般式(8)で表される、1分子内にカルボキシ基および重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂の製造方法について詳細に説明する。
【0060】
先ず、一般式(10)で表されるエポキシ樹脂のフェニレン基またはフルオレン基を水素化して、1分子内に2個の水素化されたフェニレン基および水素化されたフルオレン基を有する一般式(1)で表されるエポキシ化合物(a-1)を得る。
【0061】
【0062】
(式(10)中、R1は独立して炭素数2~4の炭化水素基を示し、aは独立して平均値が0~10の数を示す。)
【0063】
【0064】
(式(1)中、R1は独立して炭素数2~4の炭化水素基を示し、R2は独立して炭素数1~3の炭化水素基を示し、R3はグリシジル基または下記一般式(2)を示すが、R3のうち少なくとも1つはグリシジル基を示し、aは独立して平均値が0~10の数を示し、bは独立して平均値が0~4の数を示し、nは平均値が0~10の数を示し、A1、A2は、独立して下記一般式(3)または一般式(4)を示し、A3およびA4は、独立して下記一般式(5)または一般式(6)を示し、前記一般式(4)および一般式(6)の存在率は、A1、A2、A3およびA4の合計に対して1mol%以上100mol%以下である。)
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
(式(5)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【0070】
【0071】
(式(6)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【0072】
また、一般式(1)で表される構造において、上記一般式(4)および一般式(6)の存在率は、A1、A2、A3およびA4の合計に対して、1mol%以上100mol%未満であることが好ましく、10mol%以上80mol%以下であることがより好ましく、30mol%以上60mol%以下であることがさらに好ましい。上記一般式(4)および一般式(6)の存在率が、A1、A2、A3およびA4の合計に対して、100mol%未満であると、耐熱性等において芳香族化合物の特性を生かすことができる。また、上記一般式(4)および一般式(6)の存在率が、A1、A2、A3およびA4の合計に対して、1mol%以上であると、感光性樹脂組成物の屈折率を低減することができるとともに、耐光性に優れた感光性樹脂組成物の構成成分として有用なものとすることができる。
【0073】
また、本実施の形態において、上記一般式(10)で表されるエポキシ化合物(a-1)の水素化され、開環したエポキシ基の存在率は、水素化されていないエポキシ基の存在率に対して10mol%以下であることが好ましく、1mol%以下であることがより好ましい。水素化され、開環したエポキシ基の存在率が、10mol%以下であると、本発明の感光性樹脂組成物に使用する重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂として、適切な分子量の樹脂とすることが可能である。
【0074】
なお、上記一般式(10)で表されるエポキシ化合物(a-1)の水素化は、公知の方法(例えば、特開平11-217379号公報、特開2002-097251号公報など)で行うことができる。また、上記一般式(10)で表されるエポキシ化合物(a-1)の水素化率は、反応時間、反応温度で調整することができる。
【0075】
次に、上記一般式(10)で表されるエポキシ化合物(a-1)に不飽和基含有モノカルボン酸(例えば(メタ)アクリル酸)を反応させ、エポキシ(メタ)アクリレートを得る。
【0076】
上記不飽和基含有モノカルボン酸化合物の例には、アクリル酸、メタクリル酸以外に、アクリル酸やメタクリル酸に無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等の酸一無水物を反応させた化合物などが含まれる。
【0077】
上記一般式(10)で表されるエポキシ化合物(a-1)と(メタ)アクリル酸との反応は、公知の方法を使用することができる。たとえば、特開平4-355450号公報には、2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用することにより、重合性不飽和基を含有するジオールまたはポリオール化合物が得られることが記載されている。本発明において、上記反応で得られる化合物は、一般式(7)で表されるジオールまたはポリオール(d)である。
【0078】
【0079】
(式(7)中、R1は独立して炭素数2~4の炭化水素基を示し、R2は独立して炭素数1~3の炭化水素基を示し、R4は水素原子またはメチル基を示し、aは独立して平均値が0~10の数を示し、bは独立して平均値が0~4の数を示し、nは平均値が0~10の数を示し、A1、A2は、独立して一般式(3)または一般式(4)を示し、A3およびA4は、独立して下記一般式(5)または一般式(6)を示し、前記一般式(4)および一般式(6)の存在率は、A1、A2、A3およびA4の合計に対して1mol%以上100mol%以下である。)
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
(式(5)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【0084】
【0085】
(式(6)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【0086】
一般式(7)で表されるジオールまたはポリオール(d)の合成、およびそれに続く多価カルボン酸またはその無水物の付加反応、さらに必要に応じてカルボキシル基との反応性を有する重合性不飽和基を有する単官能エポキシ化合物等を反応させて、一般式(8)で表されるアルカリ可溶性樹脂の製造においては、通常、溶媒中で必要に応じて触媒を用いて反応を行う。
【0087】
上記溶媒の例には、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒;ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の高沸点のエーテル系もしくはエステル系の溶媒;シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒等が含まれる。なお、使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、例えば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いることが好ましい。
【0088】
また、カルボキシル基とエポキシ基との反応においては触媒を使用することが好ましく、特開平9-325494号公報には、テトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類等が記載されている。
【0089】
次に、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応で得られる一般式(7)で表されるジオールまたはポリオール(d)と酸成分であるジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)およびテトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)とを反応させて、一般式(11)で表されるアルカリ可溶性樹脂を得ることができる。
【0090】
【0091】
(式(11)中、R1は独立して炭素数2~4の炭化水素基を示し、R2は独立して炭素数1~3の炭化水素基を示し、R4は水素原子またはメチル基を示し、A1、A2は、独立して一般式(3)または一般式(4)を示し、A3およびA4は、独立して下記一般式(5)または一般式(6)を示し、前記一般式(4)および一般式(6)の存在率は、A1、A2、A3およびA4の合計に対して1%以上100%以下であり、Yは4価のカルボン酸残基を示し、Zは水素原子または下記一般式(12)で表される置換基を示す。ただし、aは平均値が0~10であり、bは平均値が0~4であり、mは平均値が0~10である。)
【0092】
【0093】
(式(12)中、Lは独立して2または3価のカルボン酸残基を示し、rは独立して1または2である。)
【0094】
一般式(8)で表されるアルカリ可溶性樹脂を合成するために使用される酸成分は、一般式(7)で表されるジオールまたはポリオール(d)分子中の水酸基と反応し得る多価の酸成分であり、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)とテトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)とを併用することが必要である。上記酸成分のカルボン酸残基は、飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基のいずれでもよい。また、これらのカルボン酸残基には-O-、-S-、カルボニル基等のヘテロ元素を含む結合を含んでいてもよい。
【0095】
ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)としては、鎖式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、脂環式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、芳香族炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、またはそれらの酸一無水物等を用いることができる。
【0096】
鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。また、脂環式ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。また、芳香族ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物が含まれる。
【0097】
ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の中では、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、トリメリット酸が好ましく、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸であることがより好ましい。また、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸においては、それらの酸一無水物を用いることが好ましい。上述したジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
また、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸、脂環式炭化水素テトラカルボン酸、芳香族炭化水素テトラカルボン酸、またはそれらの酸二無水物等を用いることができる。
【0099】
鎖式炭化水素テトラカルボン酸の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸、および脂環式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された鎖式炭化水素テトラカルボン酸等が含まれる。また、上記脂環式テトラカルボン酸の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸、および鎖式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された脂環式テトラカルボン酸等が含まれる。また、芳香族テトラカルボン酸の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等が含まれる。
【0100】
テトラカルボン酸またはその酸二無水物の中では、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸であることが好ましく、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸であることがより好ましい。また、テトラカルボン酸またはその酸二無水物においては、その酸二無水物を用いることが好ましい。なお、上述したテトラカルボン酸またはその酸二無水物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0101】
一般式(7)で表されるジオールまたはポリオール(d)と上記酸成分(b)および(c)との反応については、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。たとえば、特開平9-325494号公報には、反応温度が90~140℃でエポキシ(メタ)アクリレートとテトラカルボン酸二無水物を反応させる方法が記載されている。
【0102】
ここで、化合物の末端がカルボキシ基となるように、エポキシ(メタ)アクリレート(d)、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)とのモル比が(d):(b):(c)=1:0.01~1.0:0.2~1.0となるように反応させることが好ましい。
【0103】
たとえば、酸一無水物(b)、酸二無水物(c)を用いる場合には、重合性不飽和基を含有するジオールまたはポリオール化合物(エポキシ(メタ)アクリレート)(d)に対する酸成分の量〔(b)/2+(c)〕のモル比[(d)/〔(b)/2+(c)〕]が0.5~1.0となるように反応させることが好ましい。ここで、モル比が1.0以下である場合には、未反応の重合性不飽和基を含有するジオールまたはポリオール化合物の含有量を増大させることがないのでアルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性を高めることができる。一方、モル比が0.5を超える場合には、一般式(11)で表されるアルカリ可溶性樹脂の末端が酸無水物とならないので、未反応酸二無水物の含有量が増大することを抑制できることから、アルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性を高めることができる。なお、上記一般式(11)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価、分子量を調整する目的で、(d)、(b)および(c)の各成分のモル比は、上述の範囲で任意に変更することができる。
【0104】
一般式(7)で表されるジオールまたはポリオール(d)と上記酸成分(b)および(c)との反応で得られるアルカリ可溶性樹脂は、一般式(8)中のGが全て水素原子である、一般式(11)の構造を有する。さらに、一般式(11)のカルボキシル基に対して、一般式(13)で表される不飽和基含有エポキシ化合物を反応させたアルカリ可溶性樹脂として使用することもできる。一般式(11)と一般式(13)で表される不飽和基含有エポキシ化合物との反応は、公知の方法を使用することができ、例えば、一般式(11)で表されるようなエポキシ(メタ)アクリレートの製造方法を用いることができる。これにより、一般式(8)で表される重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を得ることができる。さらに、上記重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の水酸基に対して、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物を反応させてもよい。
【0105】
【0106】
(式(13)中、R6は水素原子またはメチル基を示し、R7は炭素数2~4の炭化水素基を示し、cは0または1である。)
【0107】
一般式(11)のカルボキシ基に対する一般式(13)で表される不飽和基含有エポキシ化合物のエポキシ基のモル比は、式(8)で表されるアルカリ可溶性樹脂の光反応の感度(重合性二重結合の量の大小による)や酸価を調整する目的で任意に変更できる。また、一般式(13)のモル数は、(b)成分のモル数と(c)成分のモル数の2倍の合計モル数に対して、90%以下であればアルカリ現像性の付与が可能であり、光パターニング性を有する感光性樹脂組成物に用いることができる。また、光反応の感度向上効果を付与したい場合は、10%以上にすることが必要であるので、10~90%であることが好ましく、30~70%であることがより好ましい。また、使用する一般式(8)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価は、20~180であることが好ましく、30~120であることがより好ましい。
【0108】
本発明の一般式(8)で表されるアルカリ可溶性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定(HLC-8220GPC、東ソー株式会社製)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常1000~100000であり、2000~20000であることが好ましい。重量平均分子量が1000以上の場合には、アルカリ現像時のパターンの密着性の低下を抑制することができる。また、重量平均分子量が100000未満である場合には、塗布に好適な感光性樹脂組成物の溶液粘度に調整しやすく、アルカリ現像に時間を要しすぎることがない。上記アルカリ可溶性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定は、「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製)を用いて測定することができる。
【0109】
本実施の形態における感光性樹脂組成物は、(B)光重合開始剤を含む。上記(B)光重合開始剤の例には、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2、4,5-トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類;2-トリクロロメチル-5-スチリル-1,3,4-オキサジアゾ-ル、2-トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルジアゾール化合物類;2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4、6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル-s-トリアジン系化合物類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾア-ト、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-O-アセタート等のO-アシルオキシム系化合物類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2-イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物;2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物;2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンなどが含まれる。なお、これら光重合開始剤は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0110】
特に、後述する着色剤等の分散質を含む感光性樹脂組成物とする場合には、O-アシルオキシム系化合物類(ケトオキシムを含む)を用いることが好ましい。具体的化合物群としては、一般式(14)または一般式(15)で示されるO-アシルオキシム系光重合開始剤がある。それらの中でも、着色剤を高顔料濃度で用いる場合および遮光膜パターンを形成する場合には、365nmにおけるモル吸光係数が10000L/mol・cm以上であるO-アシルオキシム系光重合開始剤を用いることが好ましい。なお、本発明でいう「光重合開始剤」とは、増感剤を含む意味で使用される。
【0111】
【0112】
(式(14)中、R8およびR9は、それぞれ独立してC1~C15のアルキル基、C6~C18のアリール基、C7~C20のアリールアルキル基またはC4~C12の複素環基を示し、R10はC1~C15のアルキル基、C6~C18のアリール基、C7~C20のアリールアルキル基を示す。ここで、アルキル基およびアリール基はC1~C10のアルキル基、C1~C10のアルコキシ基、C1~C10のアルカノイル基、ハロゲンで置換されていてもよく、アルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。また、アルキル基は直鎖、分岐、または環状のいずれのアルキル基であってもよい。)
【0113】
【0114】
(式(15)中、R11およびR12はそれぞれ独立して、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であるか、炭素数4~10のシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基もしくはアルキルシクロアルキル基であるか、または炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。R13は独立して炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基であり、当該アルキル基またはアルケニル基中の-CH2-基の一部が-O-基で置換されていてもよい。さらに、これらR11~R13の基中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0115】
本実施の形態における感光性樹脂組成物には、溶剤を含むことができる。上記溶剤の例には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;α-もしくはβ-テルピネオール等のテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類が含まれる。これらを単独または2種類以上を併用して溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、感光性樹脂組成物溶液中60~90質量%の範囲が好ましい。
【0116】
本発明の感光性樹脂組成物には、上述したような(A)特定構造のアルカリ可溶性樹脂と(B)光重合開始剤に加えて、必要に応じて、(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーや、(D)エポキシ基を2つ以上含むエポキシ化合物またはエポキシ樹脂を添加することができ、これら(C)成分と(D)成分を併用して使用することができる。
【0117】
(C)光重合性モノマーの例には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、またはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;デンドリマー型多官能アクリレートが含まれる。これらの光重合性モノマーは、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0118】
また、当該少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーは、光重合性基を2個以上有して不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の分子同士を架橋することができるものを用いることが好ましい。なお、(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーは遊離のカルボキシル基を有しない。
【0119】
(D)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂またはエポキシ化合物の例には、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物、エポキシシリコーン樹脂等が含まれる。これらは、1種類の化合物のみを用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
上述の感光性樹脂組成物は、(E)分散質を加えた感光性樹脂組成物として使用することもできる。分散質入りの感光性樹脂組成物として使用する場合の好ましい配合比率は、光硬化により固化する成分を含めた固形分中に(A)成分の含有量は1~55質量%であり、(C)成分は(A)成分の100質量部に対して0~100質量部であり、(B)成分は(A)成分と(C)成分の合計量100質量部に対して0.1~40質量部であり、(E)は固形分中1~95質量%であり、(D)成分を使用する場合は(A)成分と(C)成分の合計量100質量部に対し5~30質量部であることが好ましい。
【0121】
本発明で使用できる(E)分散質としては、1~1000nmの平均粒径(レーザー回折・散乱法粒径分布計または動的光散乱法粒径分布計測定された平均粒径)で分散されたものであれば、従来感光性樹脂組成物に用いられている公知の分散質を特に制限なく使用することができる。
【0122】
ここで、黒色顔料の例には、ペリレンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、カーボンブラック、チタンブラックなどが含まれる。混色有機顔料の例には、アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾメチン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、スレン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料などの有機顔料から選択される少なくとも2色が混合された顔料が含まれる。白色顔料の例には、酸化チタン顔料、複合酸化物顔料;ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機フィラーが含まれる。これらの(E)成分は、目的とする感光性樹脂組成物の機能に応じて、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0123】
また、上記(E)分散質は目的とする感光性樹脂組成物の機能に応じて単独でまたは複数組み合わせて用いることができる。たとえば、カラーフィルターのブラックマトリクスの製造に用いられる遮光レジストとしては、カーボンブラック、チタンブラック、黒色有機顔料等を用いることができ、カラーフィルターの画素の製造に用いられる着色レジストとしては、赤色、橙色、黄色、緑色、青色、紫色の有機顔料等を用いることができ、プリント配線板の絶縁膜の製造に用いられるソルダーレジストとしては、有機顔料、無機顔料、無機フィラー等を用いることができ、タッチパネルの前面ガラスの意匠に用いられる加飾レジストとしては、カーボンブラック、チタンブラック、黒色有機顔料、白色顔料等を、高硬度、高耐久性の透明レジストとしてはシリカ等の透明フィラーを用いることができ、それぞれ適宜選定して使用することができる。
【0124】
なお、(E)成分として使用可能な有機顔料の例には、カラーインデックス名で以下のナンバーのものが含まれるが、これに限定されない。
ピグメント・レッド2、3、4、5、9、12、14、22、23、31、38、112、122、144、146、147、149、166、168、170、175、176、177、178、179、184、185、187、188、202、207、208、209、210、213、214、220、221、242、247、253、254、255、256、257、262、264、266、272、279等
ピグメント・オレンジ5、13、16、34、36、38、43、61、62、64、67、68、71、72、73、74、81等
ピグメント・イエロー1、3、12、13、14、16、17、55、73、74、81、83、93、95、97、109、110、111、117、120、126、127、128、129、130、136、138、139、150、151、153、154、155、173、174、175、176、180、181、183、185、191、194、199、213、214等
ピグメント・グリーン7、36、58等
ピグメント・ブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、80等
ピグメント・バイオレット19、23、37等
【0125】
(E)成分の着色剤の配合割合については、所望の遮光度によって任意に決めることができるが、感光性樹脂組成物中の固形成分に対して1~80質量%であることが好ましい。
【0126】
上記(E)成分は溶剤に分散させた着色剤分散体として他の配合成分と混合するのが通常であり、この際には分散剤(E’成分)を添加することができる。分散剤は、顔料(着色剤)分散に用いられている公知の化合物(分散剤、分散湿潤剤、分散促進剤等の名称で市販されている化合物等)等を特に制限なく使用することができる。
【0127】
分散剤の例には、カチオン性高分子系分散剤、アニオン性高分子系分散剤、ノニオン性高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤(分散助剤)が含まれる。特に、分散剤は、着色剤への吸着点としてイミダゾリル基、ピロリル基、ピリジル基、一級、二級または三級のアミノ基等のカチオン性の官能基を有し、アミン価が1~100mgKOH/g、数平均分子量が1千~10万の範囲にあるカチオン性高分子系分散剤であることが好ましい。この分散剤の配合量は、着色剤に対して1~35質量%であることが好ましく、2~25質量%であることがより好ましい。なお、樹脂類のような高粘度物質は、一般に分散を安定させる作用を有するが、分散促進能を有しないものは分散剤として扱わない。しかし、分散を安定させる目的で使用することを制限するものではない。
【0128】
上述のように、本発明の感光性樹脂組成物は様々な(E)分散質を加えた感光性樹脂組成物として、例えば耐光性の要求のある用途に使用することができる。
【0129】
本実施の形態において、上記(E)成分を含まない場合には、(C)成分および/または(D)成分の好ましい配合比率は、(C)成分が(A)成分100質量部に対して0~100質量部であり、(D)成分は(A)成分と(C)成分の合計量100質量部に対して5~30質量部であることが好ましい。(C)成分を使用する目的は、感光性樹脂組成物の光硬化反応の感度を向上させることであり、添加量を増せば感度は高くなる。ただし、(A)成分よりも多量に添加すると感光性樹脂組成物のアルカリ可溶性が不足して現像性が低下することになる。一方、(D)成分を添加する目的は、光硬化反応、アルカリ現像に引き続き、熱硬化により光パターニングした膜の物性を向上させることであり、特にエポキシ基を2つ以上有す売るエポキシ化合物を用いた場合、樹脂成分を架橋することにより表面硬度等を改善することができる。ただし、光硬化成分に対して量が多すぎると光パターニング性に悪影響を及ぼすことになる。
【0130】
なお、本発明では、必要に応じて、光または熱によって重合または硬化するその他の樹脂成分を併用してもよい。その他の樹脂成分の例には、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック類から誘導されるノボラックエポキシ樹脂に(メタアクリル酸および酸無水物を反応させて得られるアルカリ可溶性樹脂、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル類との共重合体中のカルボキシ基にエポキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるアルカリ可溶性樹脂等が含まれる。
【0131】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて硬化剤、硬化促進剤、熱重合禁止剤および酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、界面活性剤、カップリング剤等の添加剤を配合することができる。ここで、硬化剤の例には、エポキシ樹脂の硬化に寄与するアミン系化合物、多価カルボン酸系化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等が含まれ、硬化促進剤の例には、エポキシ樹脂の硬化に寄与する三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール類等が含まれる。熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。消泡剤やレベリング剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物が含まれる。界面活性剤の例には、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが含まれる。カップリング剤の例には、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。
【0132】
本実施の形態における組成物は、上記エポキシ化合物(a-1)1molあたり1個以上5個以下の芳香環を有することが好ましく、2個以上4個以下の芳香環を有することがより好ましい。芳香環数が1個以上5個以下となることにより、エポキシ化合物(a-1)、そのエポキシアクリレートおよびさらに酸無水物付加した重合性不飽和基含有化合物を含む感光性樹脂組成物を用いた硬化物は、耐熱性等の芳香族化合物の特性を一定以上維持した上で屈折率を低減することができ、光劣化を抑制することができる。これは、分極率が大きい芳香環を多く含む骨格を低減しているためであると考えられる。また、当該感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物が光劣化等により変色するのを抑制することができる。なお、分子中に残存する芳香環数は、(各基本骨格構成成分中のベンゼン環の数)×(仕込み量(mol))の総和から算出することができる。基本骨格構成成分とは、一般式(11)の樹脂を合成する際に用いる構成成分であり、一般式(7)のエポキシアクリレートと酸無水物である。
【0133】
本発明の硬化物は、本発明の感光性樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィー法により形成される。その製造工程としては、先ず、感光性樹脂組成物溶液を基板表面に塗布し、次いで溶媒を乾燥させた(プリベーク)後、このようにして得られた被膜の上にフォトマスクをあて、紫外線を照射して露光部を硬化させ、さらにアルカリ水溶液を用いて未露光部を溶出させる現像を行ってパターンを形成し、さらに後硬化としてポストベークを行う方法が挙げられる。ここで、感光性樹脂組成物溶液を塗布する基板としては、ガラス、透明フィルム(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン等)等を用いることができる。
【0134】
感光性樹脂組成物溶液を基板に塗布する方法としては、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコーター機やスピナ-機を用いる方法等の何れの方法を採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、被膜が形成される。プリベークはオーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。プリベークにおける加熱温度および加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば80~120℃で、1~10分間行われることが好ましい。
【0135】
露光に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができるが、放射線の波長の範囲は、250~450nmであることが好ましい。また、このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の水溶液を用いることができる。これらの現像液は、樹脂層の特性に合わせて適宜選択されうるが、必要に応じて界面活性剤を添加することも有効である。現像温度は、20~35℃であることが好ましく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗される。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
【0136】
露光後のアルカリ現像は、露光されない部分の感光性樹脂組成物を除去する目的で行われ、この現像によって所望のパターンが形成される。このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができるが、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩を0.03~1重量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて23~27℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。
【0137】
このようにして現像した後、180~250℃で、20~100分間、熱処理(ポストベーク)が行われる。ただし、製膜する基板等の耐熱性が低い場合には、80~180℃で、30~100分間のポストベーク条件にできるように組成物の配合を設計することもできる。このポストベークは、パターニングされた塗膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプレベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。本発明のパターニングされた硬化物は、以上のフォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。
【実施例】
【0138】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0139】
[エポキシ当量の測定]
電位差滴定装置を用い、溶剤としてメチルエチルケトンを使用し、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、電位差滴定装置にて0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液を用いて測定した。
【0140】
[酸価]
樹脂溶液をテトラヒドロフランに溶解させ、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して、固形分1gあたりに必要となったKOHの量を酸価とした。
【0141】
[固形分濃度]
合成例および比較合成例中で得られた樹脂溶液、感光性樹脂組成物等の1gをガラスフィルター〔質量:W0(g)〕に含浸させて秤量し〔W1(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の質量〔W2(g)〕から下記式(1)より求めた。
固形分濃度(質量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0)
【0142】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuperH-2000(2本)+TSKgelSuperH-3000(1本)+TSKgelSuperH-4000(1本)+TSKgelSuper-H5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS-オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0143】
[屈折率の測定方法]
プリズムカップラー膜厚・屈折計「モデル2010/M」(メトリコン社製)を用いて、633nmの光線における硬化物の屈折率を測定した。
【0144】
[黄色度(YI)の測定]
分光光度計「UH-4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、YI値を測定した。
【0145】
また、合成例および比較合成例で使用する略号は次のとおりである。
BPEF:一般式(16)で表されるビスフェノールフルオレンエポキシ(エポキシ当量254g/eq、重量平均分子量(Mw)508)
【0146】
【0147】
(式(16)中、nは0以上である。)
【0148】
BPF-EA:BPEFとアクリル酸との反応物(エポキシ基とカルボキシル基の等当量反応物)
BPDA :3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
HPMDA :1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
THPA :1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
TEAB :臭化テトラエチルアンモニウム
PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
TPP :トリフェニルホスフィン
BHT :2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール
【0149】
[水素化化合物の合成]
(合成例1)
攪拌装置を備えた内容積1Lのオートクレーブに、BPEFを50g、溶媒としてPGMEAを450g、水素化触媒として5%Rh/CをBPEFに対し5.0wt%加え、水素雰囲気下、ゲージ圧力4.5MPaのもと100℃で5時間反応させた後、120℃で更に5時間反応させた。触媒を除き、水素化化合物1を得た。
【0150】
[水素化率の算出]
(水素化化合物1の13C-NMR測定)
水素化化合物1の水素化率は、以下の手順で算出した。まず、約50mg水素化化合物1を600μlの重クロロホルム(CDCl3)に溶解させ、測定用のサンプルを調製した。上記サンプルに対し、FT-NMR装置「JNMECA400」(日本電子株式会社製)を使い、室温にて13C-NMR測定を行った。
【0151】
(水素化率の算出方法)
また、水素化化合物1の水素化率の算出に当たり、下記一般式(17)に示すモデル化合物を基準にして、各炭素原子のナンバリングC1~C14を行った。モデル化合物が水素化反応によって分解しないと仮定すると、反応前後における中心の4級炭素(C8)の積分値は一定となる。そこで、13C-NMRの定量測定の結果を用いて、上記C8を基準とし、フェノール残基とフルオレン残基それぞれの存在率を求め、それぞれの水素化体の存在率を算出した。フェノール残基の存在率の算出には、4級炭素(C4)の積分値を用いた。また、フルオレン残基の存在率の算出には、芳香族領域全体の積分値から、算出したフェノール残基の積分値を差し引くことで算出した。加えて、エポキシ基開環体の存在率についても同様に、上記C8を基準とし、開環エポキシ中の-CH3基(C1)の積分値を用いて算出した。
【0152】
【0153】
水素化化合物1の13C-NMR中、57~67ppmに見られるビスフェノールフルオレンの中心にある4級炭素(C8)の積分値(W:0.208)を基準として、水素化後のフェニレン基とフルオレン基それぞれの存在率を求め、水素化率を算出した。フェニレン基の存在率は、156ppmに見られる4級炭素(C4)の積分値(X:0.209)を用いて算出した。これらの値を下記数式(1)および数式(2)を用いて水素化フェニレン基の存在率を算出した。
フェニレン基の存在率[mol%]=X/(2×W)×100 (1)
水素化フェニレン基の存在率[mol%]=100-(フェニレン基の存在率) (2)
【0154】
フルオレン基の存在率は、110~160ppmに見られる芳香族領域全体の積分値(Y:2.925)からフェニレン基の積分値を差し引くことで算出した。これらの値を下記数式(3)および数式(4)を用いて、フルオレン基の存在率および水素化フルオレン基の存在率を算出した。
フルオレン基の存在率[mol%]=(Y-6×X)/(12×W)×100 (3)
水素化フルオレン基の存在率[mol%]=100-(フルオレン基の存在率) (4)
【0155】
開環エポキシ基の存在率は、4級炭素(C8)の積分値(W)を基準として、18~20ppmに見られるCH3基由来の積分値(Z:0.0366)から算出し、下記数式(5)および数式(6)を用いて、開環エポキシ基およびエポキシ基の存在率を算出した。
開環エポキシ基の存在率[mol%]=Z/(2×W)×100 (5)
エポキシ基の存在率[mol%]=100-(開環エポキシの存在率) (6)
【0156】
(合成例2)
反応温度を100℃から150℃に変更した以外は、合成例1と同様にして、水素化化合物2を得た。
【0157】
また、合成例2で得られた水素化化合物2について、合成例1で得られた水素化化合物1と同様にして、水素化フェニレン基の存在率、水素化フルオレン基の存在率、および開環エポキシ基の存在率を算出した。
【0158】
上記合成例1および合成例2で得られた水素化化合物1および水素化化合物2の各存在率を表1に示す。
【0159】
【0160】
また、表2には、水素化化合物1および水素化化合物2の、A1、A2、A3およびA4の合計に対する下記一般式(4)および一般式(6)の存在率を示す。
【0161】
【0162】
【0163】
(式(6)中、*は五員環との結合位置を示す。)
【0164】
【0165】
合成例1および合成例2で得られた、水素化化合物1および水素化化合物2の水素化フェニレン基の存在率の算出結果から、本発明の一般式(1)に示されるような構造を有する水素化化合物が得られることが分かった。
【0166】
[アルカリ可溶性樹脂の合成]
(合成例3)
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中に、水素化化合物1を溶解した150.0gの40%PGMEA溶液と、15.0gのアクリル酸と、1.1gのTPPと、0.2gのBHTと、を仕込み、100~105℃で8時間撹拌し、アクリレート基含有水素化化合物1(固形分濃度;44.1質量%、重量平均分子量;780)を得た。次いで、50.0gのアクリレート基含有水素化化合物1と、4.5gのBPDAと、2.3gのTHPAと、を仕込み、120~125℃で10時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)-1(固形分濃度:60.1質量%、重量平均分子量(Mw):1990、酸価(固形分換算):82.7mgKOH/g)を得た。
【0167】
(合成例4)
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中に、50.1gのアクリレート基含有水素化化合物1と、3.4gのHPMDAと、2.4gのTHPAと、を仕込み、120~125℃で10時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)-2(固形分濃度:61.3質量%、重量平均分子量(Mw):2520、酸価(固形分換算):86.0mgKOH/g)を得た。
【0168】
(合成例5)
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中に、150.0gの水素化化合物2の40%PGMEA溶液と、13.7gのアクリル酸と、1.0gのTPPと、0.2gのBHTと、を仕込み、100~105℃で8時間撹拌し、アクリレート基含有水素化化合物2(固形分濃度;45.2質量%、重量平均分子量;510)を得た。次いで、50.0gのアクリレート基含有水素化化合物2と、4.3gのBPDAと、2.2gのTHPAと、を仕込み、120~125℃で10時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)-3(固形分濃度:63.8質量%、重量平均分子量(Mw):1900、酸価(固形分換算):85.5mgKOH/g)を得た。
【0169】
(合成例6)
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中に、50.0gのアクリレート基含有水素化化合物2と、3.3gのHPMDAと、2.2gのTHPAと、を仕込み、120~125℃で10時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)-4(固形分濃度:55.2質量%、重量平均分子量(Mw):1480、酸価(固形分換算):89.0mgKOH/g)を得た。
【0170】
(比較合成例)
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中に、313.7gのBPF-EAの50%PGMEA溶液と、47.1gのBPDAと、24.3gのTHPAと、0.43gのTEABと、8.5gのPGMEAと、を仕込み、120~125℃で6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)-5(固形分濃度:56.6質量%、重量平均分子量(Mw):3600、酸価(固形分換算):89.4mgKOH/g)を得た。
【0171】
[芳香環数の算出]
合成例3~6および比較合成例で得られたアルカリ可溶性樹脂(i)-1~(i)-5の基本骨格中に存在するベンゼン環の数と定義した芳香環数を(各基本骨格構成成分中のベンゼン環の数)×(仕込み量(mol))の総和から算出した。表3に、合成例3~6および比較合成例における各構成成分の仕込みmol比から計算した芳香環数を示す。
【0172】
【0173】
次に、感光性樹脂組成物および硬化物に係る実施例および比較例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ここで、以降の実施例および比較例で用いた原料および略号は以下の通りである。
【0174】
(i)-1:合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂
(i)-2:合成例2で得られたアルカリ可溶性樹脂
(i)-3:合成例3で得られたアルカリ可溶性樹脂
(i)-4:合成例4で得られたアルカリ可溶性樹脂
(i)-5:比較合成例で得られたアルカリ可溶性樹脂
(ii) :IrgacureOXE01(BASF社製、「Irgacure」は同社の登録商標)
(iii):メガファック F-556(DIC株式会社製、「メガファック」は同社の登録商標)
(iv) :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0175】
[感光性樹脂組成物の評価]
表4に、実施例1~4および比較例の感光性樹脂組成物溶液の各成分の含有量(単位は質量%)を示す。
【0176】
【0177】
(サンプル作製)
実施例1~4および比較例の感光性樹脂組成物溶液を、ガラス板上にスピンコ-タ-を用いて1.5μmの乾燥膜厚になる条件で塗布・乾燥した後、フォトマスクを介さずに500Wの高圧水銀灯ランプを用いて波長365nmの照度10mW/cm2の紫外線を照射して露光した。その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、加熱硬化処理を行い、硬化膜(硬化膜を形成したガラス基板)を得た。
【0178】
上記硬化膜を形成したガラス基板について屈折率を評価した。
【0179】
(屈折率の測定方法)
プリズムカップラー膜厚・屈折計「モデル2010/M」(メトリコン社製)を用いて、633nmの光線における硬化物の屈折率を測定した。その結果を表5に示す。また、
図1に、芳香環数と屈折率の関係を示す。
【0180】
【0181】
[耐光性の評価]
感光性樹脂組成物からなる硬化膜の耐光性を確認するため、上記ガラス基板上の硬化膜である実施例1~4および比較例に低圧水銀ランプを用いて波長254nmの紫外線を1200、2400、3500mJ/cm2の露光量で照射し、分光光度計にて黄色度(YI)を測定した。なお、低圧水銀ランプによる露光前後の黄変度(ΔYI)は、下記数式(6)で算出した。
ΔYI=(露光後の硬化膜のYI)-(露光前の硬化膜のYI) (6)
【0182】
各露光量における黄変度(ΔYI)を表6に示す。また、
図2に露光量と硬化膜の黄変度との関係を示す。
【0183】
【0184】
図1および表5に示されるように、分子内に残存する芳香環の数を調整することにより、屈折率を低くすることができることがわかった。すなわち、水素化されたフェニル基およびフルオレン基を有するアルカリ可溶性樹脂((i)-1~(i)-4)を含む感光性樹脂組成物を用いることにより、屈折率がより低い硬化物が得られることが分かった。
【0185】
また、
図2および表6に示されるように、水素化されたフェニル基およびフルオレン基を有するアルカリ可溶性樹脂((i)-1~(i)-4)を含む感光性樹脂組成物を用いることにより、高い露光量で紫外線を照射した場合であっても、硬化物の変色を抑制できることがわかった。これは、本発明の感光性樹脂組成物は、紫外領域の光を吸収しやすい共役二重結合を有する芳香環数が少ないため、光による分解が起こりにくいためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明のアルカリ可溶性樹脂によれば、精細なパターン形成が可能であって、耐光性の要求に満足できる感光性樹脂組成物を得ることができる。そのため、例えば、タッチパネル、カラーフィルターなどに有用である。すなわち、フォトリソグラフィーでパターン形成できることから、既存のフォトリソグラフィー工程で形成できる利点が有り、さらには、薄膜で形成出来ることから、構造体の薄型化に寄与することが可能となり、タッチパネル、カラーフィルターの作製に好適である。