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特許7478659硬化性樹脂組成物、その硬化物およびプリント配線板
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  • 特許-硬化性樹脂組成物、その硬化物およびプリント配線板 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、その硬化物およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
H05K3/28 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020509898
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2019010560
(87)【国際公開番号】W WO2019188344
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2018069536
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】金沢 康代
(72)【発明者】
【氏名】野口 智崇
【合議体】
【審判長】篠原 功一
【審判官】井上 信一
【審判官】小池 秀介
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-257469(JP,A)
【文献】特開2001-203463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と磁性フィラーとを少なくとも含んでなる硬化性樹脂組成物であって、
前記磁性フィラーの含有量が、硬化性樹脂組成物全体に対して40~70体積%であり、
前記硬化性樹脂組成物をJIS-Z8803:2011に準拠して円すい-平板形回転粘度計(コーン・プレート形)により測定した5.0rpmの粘度が100~3000(dPa・s)であり、かつ、
前記硬化性樹脂組成物を、IPC-TM-650に記載のIPC-B-24くし型電極が形成されたFR-4基板上にスクリーン印刷により硬化後の膜厚が20~40μmになるように全面塗布し、150℃、30分で硬化させて硬化物とした際に、絶縁抵抗計を用いて、温度20~25℃、湿度50~60%RHの環境雰囲気下で、DC100V、1分値をN=6で測定した当該硬化物の絶縁抵抗値1.0×10Ω以上であることを特徴とする、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記磁性フィラーが、磁性粒子の表面を絶縁材料で被覆した磁性材料を含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
プリント配線板の貫通孔または凹部の充填材として使用される、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られることを特徴とする、硬化物。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化物を有することを特徴とする、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関し、より詳細には、プリント配線板のスルーホール等の貫通孔や凹部の穴埋め用充填材として好適に使用できる硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器に対する小型化・高機能化の要求に伴い、配線板の分野においても更なる多層化や高密度化求められている。例えば、一つの基板上に電源回路、高周波回路、デジタル回路等の複数の回路要素を実装した配線板等も提案されている。
【0003】
このような複数の回路要素を実装する基板では、各回路要素から発生するノイズが隣接する回路要素に影響を与えるため、各回路要素を一定の間隔を設けて実装するか或いは各回路間にシールドを設ける必要がある。そのため、複数の回路要素を実装する基板を小型化、高密度化するのが困難であった。
【0004】
上記問題に対して、例えば特許文献1には、多層配線基板において各基板の間に磁性体層を設けたり、貫通ビアを磁性材料で充填することで、複数の回路要素を多層基板上に実装した場合であっても、小型かつ低コストでノイズを低減できることが提案されている。また、特許文献2には、多層配線板において、電気的な層間接続のために貫通孔やバイアホールに、磁性フィラーを含む導電性ペーストを用いて穴埋めすることが提案されている。
【0005】
一方、プリント配線板の高機能化に伴い、スルーホールやビアホールの壁面のめっき膜のうち、層間の導通に関係のない余剰な部分を除去することで、周波数特性を向上させることが行われている。例えば、特許文献3には、バックドリル工法と呼ばれる手法を用いてスルーホールやビアホールを途中まで掘削した穴部を備えたプリント配線板が提案されている。また、特許文献4には、スルーホールやビアホールの壁面の一部のみにめっき膜を設けることも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-017175号公報
【文献】特開2001-203463号公報
【文献】特表2007-509487号公報
【文献】特開2012-256636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3および4に記載されているような配線基板のスルーホール等は、穴部の内壁面の一部にめっき膜等が形成されていない、あるいはめっき膜の一部が除去されており、配線板の絶縁層が露出している箇所が存在する。このような構造を有するスルーホール等の穴部を、特許文献2に記載されているような磁性フィラーを含む導電性ペーストで穴埋めすると、電気的な接続を所望しない配線層どうしが導電性ペーストを介して電気的に接続しまうことも想定されるため、配線基板中の配線形成が制約される場合があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、複数の回路要素を実装した場合であってもノイズ抑制等の特性に優れ、かつ配線形成の自由度が高いプリント配線板の穴埋め充填材として好適に使用できる硬化性樹脂組成物を提供することである。また、本発明の別の目的は、前記硬化性樹脂組成物を用いて形成された硬化物および前記硬化物を有するプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、磁性フィラーを使用し、硬化性樹脂組成物の硬化物の絶縁抵抗値を一定値以上とすることにより、ノイズ抑制等の特性に優れ、かつ配線形成の自由度が高いプリント配線板の穴埋め充填材として好適に使用できる硬化性樹脂組成物を実現できるとの知見を得た。本発明は係る知見によるものである。
【0010】
すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂と磁性フィラーとを少なくとも含んでなる硬化性樹脂組成物であって、
前記硬化性樹脂組成物をJIS-Z8803:2011に準拠して円すい-平板形回転粘度計(コーン・プレート形)により測定した5.0rpmの粘度が100~3000(dPa・s)であり、かつ、
前記硬化性樹脂組成物を150℃、30分で硬化させた硬化物が1.0×10Ω以上の絶縁抵抗値を有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の実施態様においては、前記磁性フィラーの含有量が、硬化性樹脂組成物全体に対して30~70体積%であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の実施態様においては、前記磁性フィラーが、磁性粒子の表面を絶縁材料で被覆した磁性材料を含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明の実施態様においては、硬化性樹脂組成物が、プリント配線板の貫通孔または凹部の充填材として使用されるものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明の別の態様による硬化物は、上記硬化性樹脂組成物を硬化させて得られることを特徴とするものある。
【0015】
また、本発明の別の態様によるプリント配線板は、上記硬化物を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の回路要素を実装した場合であってもノイズ抑制等の特性に優れ、かつ配線形成の自由度が高いプリント配線板の穴埋め充填材として好適に使用できる硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該硬化性樹脂組成物を用いて形成された硬化物および該硬化物を有するプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1a】本発明の硬化性樹脂組成物により穴埋めされるプリント配線板の製造工程を説明する概略図である。
図1b】本発明の硬化性樹脂組成物により穴埋めされるプリント配線板の製造工程を説明する概略図である。
図1c】本発明の硬化性樹脂組成物により穴埋めされるプリント配線板の製造工程を説明する概略図である。
図1d】本発明の硬化性樹脂組成物により穴埋めされるプリント配線板の製造工程を説明する概略図である。
図2a】本発明の硬化性樹脂組成物により穴埋めされるプリント配線板の一実施形態を示した概略断面図である。
図2b】本発明の硬化性樹脂組成物により穴埋めされるプリント配線板の一実施形態を示した概略断面図である。
図3】本発明の硬化性樹脂組成物により穴埋めされるプリント配線板の別の実施形態を示した概略断面図である。
図4】本発明の硬化性樹脂組成物により穴埋めされるプリント配線板の別の実施形態を示した概略断面図である。
図5】本発明の硬化性樹脂組成物により穴埋めされるプリント配線板の別の実施形態を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂と磁性フィラーとを少なくとも含む。本発明の硬化性樹脂組成物によれば、硬化性樹脂組成物を150℃、30分で硬化させた硬化物が1.0×10Ω以上の絶縁抵抗値とすることによって、単層のプリント配線板のスルーホール等の貫通孔や凹部はもとより、特許文献3および4に記載されているような多層プリント配線板の貫通孔や凹部の充填材として使用した場合であっても、基板中の導電部どうしが電気的に接続してしまうことを防止できるため配線形成の自由度が高いプリント配線板ができるとともに、充填材に磁性を有する成分が含まれているためにノイズ抑制等の特性を向上させることができる。また、絶縁抵抗値が高すぎると周辺部材とのミスマッチが起きてしまうため、上限としては、3.0×1019Ω以下の絶縁抵抗値であることが好ましい。なお、硬化物の絶縁抵抗値とは、硬化性樹脂組成物を、熱風循環式乾燥炉を用いて150℃、30分で硬化させて得られた硬化物の絶縁抵抗値であり、熱風循環式乾燥炉として、例えば、ヤマト科学株式会社製DF610を使用できる。また、硬化物の絶縁抵抗値は、IPC-TM-650に記載のテストメソッドIPC-B-24に準拠した電極基板(FR-4)を用いて、株式会社アドバンテスト製、R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METERの装置により、室温(20~25℃)、50~60%RHの環境下で測定した抵抗値をいうものとする。以下、本発明の硬化性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0019】
本発明の硬化性樹脂組成物は、JIS-Z8803:2011に準拠して円すい-平板形回転粘度計(コーン・プレート形)により測定した5.0rpmの粘度が100~3000(dPa・s)である。このような粘度範囲を有する硬化性樹脂組成物であれば、プリント配線板の貫通孔や凹部の穴部の穴埋めに使用する際の作業性が向上する。硬化性樹脂組成物の好ましい粘度範囲は、200~2500dPa・sであり、より好ましい粘度範囲は200~2000dPa・sである。上記範囲に粘度を調整する方法としては、例えば液状の樹脂を用いる、フィラー量を少なくする、溶剤を加えるなどが挙げられるが、これらの方法に限られるものではない。
【0020】
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂としては、熱により硬化し得るものや光により硬化しし得るもの何れであっても特に制限なく使用することができ、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂の両方が含まれていてもよい。そのなかでも、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0021】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、ビスフェノール型骨格を有するエポキシ樹脂を含むこともできる。ビスフェノール型骨格を有するエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE(AD)型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらのなかでも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE(AD)型エポキシ樹脂が好ましい。また、ビスフェノール型骨格を有するエポキシ樹脂は液状、半固形、固形のいずれも用いられるが、なかでも、充填性の観点から液状であることが好ましい。なお、液状とは、20℃で流動性を有する液体の状態にあることをいうものとする。
【0022】
これらビスフェノール型骨格を有するエポキシ樹脂は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の2種を併用して用いることが好ましい。これらの市販品としては、三菱ケミカル株式会社製jER828、同jER834、同jER1001(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、同jER807、同jER4004P(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、エア・ウォーター社製R710(ビスフェノールE型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0023】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、多官能エポキシ樹脂を含むこともできる。多官能エポキシ樹脂としては、ヒドロキシベンゾフェノン型液状エポキシ樹脂である株式会社ADEKA製のEP-3300E等、アミノフェノール型液状エポキシ樹脂(パラアミノフェノール型液状エポキシ樹脂)である三菱ケミカル株式会社製のjER630、住友化学株式会社製のELM-100等、グリシジルアミン型エポキシ樹脂である三菱ケミカル株式会社製のjER604、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のエポトートYH-434、住友化学工業株式会社製のスミ-エポキシELM-120、フェノールノボラック型エポキシ樹脂であるダウ・ケミカル社製のDEN-431等が挙げられる。これら多官能エポキシ樹脂は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
また、本発明の硬化性樹脂組成物において上記エポキシ樹脂との熱硬化反応を促進させる場合や、本発明の組成物をアルカリ現像型の硬化性樹脂組成物とする場合には、硬化性樹脂として、さらにカルボキシル基含有樹脂を用いてもよい。カルボキシル基含有樹脂は、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有感光性樹脂であってもよく、また、芳香環を有しても有さなくてもよい。
【0025】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂として上記した熱硬化性樹脂に代えて、または熱硬化性樹脂と併用して光硬化性樹脂を使用してもよい。光硬化性樹脂としては、活性エネルギー線によってラジカル性の付加重合反応により硬化し得る硬化性樹脂が挙げられる。分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するラジカル性の付加重合反応性成分の具体例としては、例えば、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げることができる。具体的には、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコールのジアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレート等のアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε-カプロラクトン付加物等の多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物等の多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルの多価アクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオール等のポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および前記アクリレートに対応する各メタクリレート類の少なくとも何れか一種等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0026】
光硬化性樹脂としては、上記した樹脂ないし化合物以外にも、光重合性モノマーを使用してもよい。光重合性モノマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーである。光重合性モノマーとしては、例えば、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的には、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε-カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および前記アクリレートに対応する各メタクリレート類のいずれか少なくとも1種から適宜選択して用いることができる。このような光重合性モノマーは、反応性希釈剤としても用いることができる。
【0027】
光重合性モノマーは、特にエチレン性不飽和二重結合を有しないカルボキシル基含有非感光性樹脂を使用した場合、組成物を光硬化性とするために光重合性モノマーを併用する必要があるため、有効である。
【0028】
本発明の硬化性樹脂組成物は、プリント配線板のスルーホール等の貫通孔や凹部の穴埋め充填材として好適に使用されるものであるが、充填材の硬化収縮による応力緩和や線膨張係数の調整のためフィラーを含む。本発明においては、磁性フィラーを使用する。磁性フィラーを使用することにより、近傍電磁界におけるノイズ電磁波を抑制ないし吸収することができるため、複数の回路要素を実装した場合であってもノイズ抑制等の特性に優れたプリント配線板とすることができる。なお、本発明において磁性フィラーとは、透磁率が1.0超のものをいう。透磁率は、例えば、後述するようなKeysight社製E5071C ENAネットワークアナライザを用いて、温度25℃、10MHz~1GHzGHzで測定することができ、測定された実部(μ’)が透磁率である。
【0029】
本発明においては、硬化性樹脂組成物を150℃、30分で硬化させた硬化物の絶縁抵抗値を1.0×10Ω以上とする必要があることから、磁性フィラーとして導電性を有しないものを使用することが好ましい。そのため、導電性を有しない磁性フィラーを好ましく使用することができる。なお、本発明において、導電性を有しない磁性フィラーとは、電気抵抗率が1.0×1015Ω・cm以上のものをいう。具体的には、Mg-Zn系フェライト、Mn-Zn系フェライト、Mn-Mg系フェライト、Cu-Zn系フェライト、Mg-Mn-Sr系フェライト、Ni-Zn系フェライト等のスピネル型フェライト類、Ba-Zn系フェライト、Ba-Mg系フェライト、Ba-Ni系フェライト、Ba-Co系フェライト、Ba-Ni-Co系フェライト等の六方晶型フェライト類、Y系フェライト等のガーネット型フェライト類が挙げられる。
【0030】
また、導電性を有する磁性フィラーであっても、配合量を調整したり、その表面を絶縁性の無機材料または有機材料で被覆することで、本発明の磁性フィラーとして使用することができる。かかる場合、なかでも磁性フィラー表面を絶縁性の無機材料または有機材料で被覆するものが好ましい。導電性を有する磁性フィラーとしては、純鉄粉末、Fe-Si系合金粉末、Fe-Si-Al系合金粉末、Ni粉末、Fe-Ni系合金粉末、Fe-Ni-Mo系合金粉末、Fe-Ni-Mo-Cu系合金粉末、Fe-Co系合金粉末、Fe-Ni-Co系合金粉末、Fe-Cr系合金粉末、Fe-Cr-Si系合金粉末、Fe-Ni-Cr系合金粉末、あるいはFe-Cr-Al系合金粉末などのFe合金類、Ni合金類、Fe基アモルファス、Co基アモルファスなどのアモルファス合金類等が挙げられる。
【0031】
[硬化性樹脂]
また、磁性フィラーとしては、市販の磁性フィラーを用いることができる。市販の磁性フィラーの具体例としては、山陽特殊製鋼株式会社製「PST-S」、エプソンアトミックス株式会社製「AW2-08PF20F」、「AW2-08PF10F」、「AW2-08PF3F」、「AW2-08PF-3FG」、「Fe-3.5Si-4.5CrPF20F」、「Fe-50NiPF20F」、「Fe-80Ni-4MoPF20F」、JFEケミカル株式会社製「LD-M」、「LD-MH」、「KNI-106」、「KNI-106GSM」、「KNI-106GS」、「KNI-109」、「KNI-109GSM」、「KNI-109GS」、戸田工業株式会社製「KNS-415」、「BSF-547」、「BSF-029」、「BSN-125」、「BSN-714」、「BSN-828」、日本重化学工業株式会社製「JR09P2」等が挙げられる。磁性体は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記した磁性フィラーは、硬化性樹脂組成物全体を100体積%(固形分換算)とした場合に、30~70体積%の割合で含まれることが好ましく、40~70体積%の割合で含まれることがより好ましい。磁性フィラーの含有量を上記範囲内とすることにより、ノイズ抑制等の特性と硬化性樹脂組成物の充填性とを、より高いレベルで両立することができる。
【0033】
磁性フィラーの形状は、特に制限されるものではなく、球状、針状、板状、鱗片状、中空状、不定形状、六角状、キュービック状、薄片状など挙げられる。
【0034】
また、これら磁性フィラーの平均粒径は、磁性フィラーの分散性、穴部への充填性、穴埋めした部分に配線層を形成した際の平滑性等を考慮すると、0.1μm~25μm、好ましくは0.1μm~15μmの範囲が適当である。なお、平均粒径とは平均一次粒径を意味し、平均粒径(D50)は、レーザー回折/散乱法により測定することができる。
【0035】
[その他のフィラー]
本発明の硬化性樹脂組成物には、上記した磁性フィラーに加えて、特性を損なわない範囲であれば、他の公知のフィラーが含まれていてもよい。具体的には、例えば、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マイカ、タルク、有機ベントナイト等が挙げられる。これら無機フィラーは1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
これらのフィラーのなかでも、低吸湿性、低体積膨張性に優れる炭酸カルシウムやシリカ、硫酸バリウム、酸化アルミニウムが好適に用いられ、なかでもシリカおよび炭酸カルシウムがより好適に用いられる。シリカとしては、非晶質、結晶のいずれであってもよく、これらの混合物でもよい。特に非晶質(溶融)シリカが好ましい。また、炭酸カルシウムとしては、天然の重質炭酸カルシウム、合成の沈降炭酸カルシウムのいずれであってもよい。
【0037】
本発明の硬化性樹脂組成物には、チキソ性を付与するために脂肪酸で処理したフィラー、または有機ベントナイト、タルクなどの不定形フィラーを添加することができる。
【0038】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、シラン系カップリング剤が含まれていてもよい。シラン系カップリング剤を配合することにより、フィラーと硬化性樹脂との密着性を向上させ、その硬化物におけるクラックの発生を抑えることが可能となる。
【0039】
[硬化剤]
本発明の硬化性樹脂組成物に熱硬化性樹脂が含まれる場合は、熱硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては、熱硬化性樹脂を硬化させるために一般的に使用されている公知の硬化剤を使用することができ、例えばアミン類、イミダゾール類、多官能フェノール類、酸無水物、イソシアネート類、およびこれらの官能基を含むポリマー類があり、必要に応じてこれらを複数用いても良い。アミン類としては、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン等がある。イミダゾール類としては、アルキル置換イミダゾール、ベンゾイミダゾール等がある。また、イミダゾール化合物はイミダゾールアダクト体等のイミダゾール潜在性硬化剤であってもよい。多官能フェノール類としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールAおよびそのハロゲン化合物、さらに、これにアルデヒドとの縮合物であるノボラック、レゾール樹脂等がある。酸無水物としては、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等がある。イソシアネート類としては、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等があり、このイソシアネートをフェノール類等でマスクしたものを使用しても良い。これら硬化剤は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記した硬化剤のなかでも、アミン類やイミダゾール類を、導電部および絶縁部との密着性、保存安定性、耐熱性の観点から好適に使用することができる。
【0040】
また、硬化剤は、炭素数2~6のアルキレンジアミン、炭素数2~6のポリアルキレンポリアミン、炭素数8~15である芳香環含有脂肪族ポリアミンなどの脂肪族ポリアミンのアダクト化合物、またはイソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの脂環式ポリアミンのアダクト化合物、または上記脂肪族ポリアミンのアダクト化合物と上記脂環式ポリアミンのアダクト化合物との混合物を主成分とするものとしても良い。
【0041】
上記脂肪族ポリアミンのアダクト化合物としては、当該脂肪族ポリアミンにアリールグリシジルエーテル(特にフェニルグリシジルエーテルまたはトリルグリシジルエーテル)またはアルキルグリシジルエーテルを付加反応させて得られるものが好ましい。また、上記脂環式ポリアミンのアダクト化合物としては、当該脂環式ポリアミンにn-ブチルグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等を付加反応させて得られるものが好ましい。
【0042】
脂肪族ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなど炭素数2~6のアルキレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミンなど炭素数2~6のポリアルキレンポリアミン、キシリレンジアミンなど炭素数8~15の芳香環含有脂肪族ポリアミンなどが挙げられる。変性脂肪族ポリアミンの市販品の例としては、例えばフジキュアFXE-1000またはフジキュアFXR-1020、フジキュアFXR-1030、フジキュアFXR-1080、フジキュアFXR-1090M2(富士化成工業株式会社製)、アンカミン2089K、サンマイドP-117、サンマイドX-4150、アンカミン2422、サーウェットR、サンマイドTX-3000、サンマイドA-100(エアープロダクツジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0043】
脂環式ポリアミンとしては、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ラロミン等を例示することができる。変性脂環式ポリアミンの市販品としては、例えばアンカミン1618、アンカミン2074、アンカミン2596、アンカミン2199、サンマイドIM-544、サンマイドI-544、アンカミン2075、アンカミン2280、アンカミン1934、アンカミン2228(エアープロダクツジャパン株式会社製)、ダイトクラールF-5197、ダイトクラールB-1616(大都産業株式会社製)、フジキュアFXD-821、フジキュア4233(富士化成工業株式会社製)、jERキュア113(三菱ケミカル株式会社製)、ラロミンC-260(BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。その他、ポリアミン型硬化剤として、EH-5015S(株式会社ADEKA製)等が挙げられる。
【0044】
イミダゾール潜在性硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂とイミダゾールの反応物等を言う。例えば、2-メチルイミダゾール、4-メチル-2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール等を挙げることができる。イミダゾール化合物の市販品としては、例えば、2E4MZ、C11Z、C17Z、2PZ等のイミダゾール類や、2MZ-A、2MZA-PW、2E4MZ-A等のイミダゾールのAZINE(アジン)化合物、2MZ-OK、2PZ-OK等のイミダゾールのイソシアヌル酸塩、2PHZ、2P4MHZ等のイミダゾールヒドロキシメチル体(これらはいずれも四国化成工業株式会社製)等を挙げることができる。イミダゾール型潜在性硬化剤の市販品としては、例えば、キュアゾールP-0505(四国化成工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0045】
硬化剤の配合量は、保存安定性の観点から、熱硬化性樹脂を含む場合、固形分換算で、熱硬化性樹脂100質量部に対して1~35質量部であることが好ましく、より好ましくは4~30質量部である。
【0046】
本発明の硬化性樹脂組成物には、その他必要に応じて、フェノール化合物、ホルマリンおよび第一級アミンを反応させて得られるオキサジン環を有するオキサジン化合物を配合してもよい。オキサジン化合物を含有することにより、プリント配線板の穴部に充填された硬化性樹脂組成物を硬化した後、形成された硬化物上に無電解めっきを行なう際、過マンガン酸カリウム水溶液などによる硬化物の粗化を容易にし、めっきとのピール強度を向上させることができる。
【0047】
また、通常のスクリーン印刷用レジストインキに使用されているフタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知の着色剤を添加してもよい。
【0048】
また、保管時の保存安定性を付与するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert-ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知の熱重合禁止剤や、粘度などの調整のために、クレー、カオリン、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知の増粘剤、チキソトロピー剤を添加することができる。その他、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤、レベリング剤やイミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤などの密着性付与剤のような公知の添加剤類を配合することができる。特に、有機ベントナイトを用いた場合、穴部表面からはみ出した部分が研磨・除去し易い突出した状態に形成され易く、研磨性に優れたものとなるので好ましい。
【0049】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必ずしも希釈溶剤を用いる必要はないが、組成物の粘度を調整するため、少量の希釈溶剤を添加してもよい。希釈溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、および上記グリコールエーテル類の酢酸エステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤などの有機溶剤が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
【0050】
上記した硬化性樹脂組成物は、プリント配線板において、特に硬化膜を形成するために好適に使用され、ソルダーレジスト、層間絶縁材、マーキングインキ、カバーレイ、ソルダーダム、プリント配線板のスルーホールやビアホールの貫通孔や凹部の穴部を穴埋めするための充填材として使用することができる。これらのなかでも、磁性特性と穴埋め特性の両立の観点より、プリント配線板のスルーホールやビアホールの貫通孔や凹部の穴部を穴埋めするための充填材として好適に使用することができる。また、本発明による硬化性樹脂組成物は、1液性でも2液性以上でもよい。
【0051】
特に、本発明の硬化性樹脂組成物を、プリント配線板のスルーホールやビアホールの貫通孔や凹部の穴部を穴埋めするための充填材として使用した場合には、ノイズ抑制等の特性に優れ、かつ配線形成の自由度が高いプリント配線板とすることができる。したがって、単層のプリント配線板のみならず、複数の回路要素が実装されるような多層のプリント配線板に特に好適に使用することができる。本発明の硬化性樹脂組成物を貫通孔や凹部の穴部を穴埋めするための充填材として使用した場合の多層プリント配線板を含むプリント配線板の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0052】
先ず、一般的なプリント配線板に、本発明の硬化性樹脂組成物を適用して穴部等の穴埋めを行う方法について、図面を参照しながら説明する。図1a~図1dは、硬化性樹脂組成物を用いてプリント配線板の貫通孔(スルーホール)を穴埋めする工程を説明する概略図である。先ず、内壁表面がめっきされた貫通孔5aを有するプリント配線板1を準備する(図1a)。図1aに示すようなプリント配線基板1は、表面に配線層50が設けられた絶縁層10の表面に、ドリル等で貫通孔を形成し、貫通孔5aの内壁および配線層の表面に無電解めっきまたは電解めっきを施したものを好適に使用することができる。
【0053】
次に、貫通孔5aに硬化性樹脂組成物を充填する。充填方法としては、貫通孔部分に開口を設けたマスクをプリント基板上に載置しておき、マスクを介して硬化性樹脂組成物を印刷法等により塗布する方法や、ドット印刷法などにより貫通孔内に硬化性樹脂組成物を充填する方法が挙げられる。その後、プリント配線板1を加熱して充填した硬化性樹脂組成物を予備硬化させる(図1b)。予備硬化とは、一般に、エポキシ樹脂の反応率が80%~97%の状態のものをいう。予備硬化は、比較的低温で硬化性樹脂組成物を一次予備硬化させた後、一次予備硬化よりも高温で二次予備硬化させることが好ましい。このように、予備硬化を行うことにより、後記するようにプリント配線基板1の表面からはみ出している予備硬化物6の不要部分を物理研磨により容易に除去でき、平坦面とすることができる。なお、予備硬化物6の硬度は、予備硬化の加熱時間、加熱温度を変えることによって調整することができる。
【0054】
続いて、貫通孔5aの表面からはみ出した予備硬化物6の不要部分を研磨により除去して平坦化する(図1c)。研磨は、ベルトサンダーやバフ研磨等により好適に行なうことができる。
【0055】
次いで、プリント配線基板1の表面を必要に応じてバフ研磨や粗化処理により前処理を施した後、外層絶縁層7を形成する(図1d)。この前処理により配線層50の表面は、アンカー効果に優れた粗化面が形成されるため外層絶縁層7との密着性に優れたものとなる。外層絶縁層7は、その後に行われる処理に応じてソルダーレジスト層(図示せず)や絶縁樹脂層(図示せず)、あるいは保護マスク(図示せず)などであり、従来公知の各種熱硬化性樹脂組成物や光硬化性および熱硬化性樹脂組成物等の硬化性樹脂組成物を塗布したり、ドライフィルムやプリプレグシートをラミネートして形成することができる。外層絶縁層7に微細なパターンを形成する場合には、光硬化性および熱硬化性樹脂組成物やそのドライフィルムを用いることが好ましい。
【0056】
その後、プリント配線板1を加熱して本硬化(仕上げ硬化)し外層絶縁層7を形成する。なお、外層絶縁層7の形成に光硬化性および熱硬化性樹脂組成物を用いた場合には周知の方法に従って乾燥(仮硬化)し露光した後、本硬化する。なお、プリント配線基板1として図1(a)に示すような両面基板を用いた場合には、さらに周知の方法により、配線層50の形成と絶縁層10の形成とを交互に繰り返し、必要に応じて貫通孔5aの形成を行うことによって、多層プリント配線板を形成することもできる。
【0057】
図2a~図2bは、本発明のプリント配線板の製造工程の一部の一例を示す概略断面図である。まず、基板9の両面に銅箔8をラミネートしたプリント配線板2を用意する。基板9の表面には厚付けのために無電解めっきと電解めっきを行ない、基板9の表面にめっき膜(図示せず)を形成してもよい。これら無電解めっきおよび電解めっきとしては銅めっきが好ましい。その後、ドリル等で穴あけして図2aに示すように貫通孔5bを形成する。基板9としては、ガラスエポキシ基板やポリイミド基板、ビスマレイミド-トリアジン樹脂基板、フッ素樹脂基板等の樹脂基板、またはこれらの樹脂基板の銅張積層板、セラミック基板、金属基板等を用いることができる。
【0058】
プリント配線板2に形成した貫通孔5b内に、本発明の硬化性樹脂組成物を充填する。具体的には、貫通孔5bの孔径と対応するように開口を設けたマスク(図示せず)を、プリント配線板2上に載置し、印刷法等による塗布や、ドット印刷法等により、貫通孔5b内に容易に充填できる。次に、硬化性樹脂組成物を加熱等により硬化させて予備硬化物6とした後、上記と同様にして貫通孔5bからはみ出した予備硬化物6の不要部分を研磨により除去して平坦化する(図2b)。研磨は、ベルトサンダーやバフ研磨等により行なうことができる。
【0059】
貫通孔5bの穴埋めを行なったプリント配線板2の表面に、さらにめっき膜(図示せず)を形成してもよい。その後、エッチングレジストを形成し、レジスト非形成部分をエッチングする。次いで、エッチングレジストを剥離することにより、導体回路層(図示せず)を形成してもよい。
【0060】
図3は、硬化性樹脂組成物により穴埋めされた多層プリント配線板の一実施形態を示した概略断面図である。硬化性樹脂組成物を適用する多層プリント配線板3は、絶縁層10を介して厚さ方向に、めっき膜等からなる複数の配線層20a、20b、20c、20dが積層されており、複数の配線層20a、20b、20c、20dの厚さ方向に形成された貫通孔40(硬化性樹脂組成物により穴埋めされる穴部)を備えている。貫通孔40の穴部の一端には、貫通孔40の内壁に配線層20dから延びる導電部20eが形成されている。貫通孔40の穴部の他端には、導電部20eの形成後に配線層20aの一部を除去するように貫通孔の内径が拡大されており、穴部の内壁には絶縁層が露出することで絶縁部10aが形成された状態になっている。すなわち、貫通孔40(穴部)の内壁は、導電部20eと絶縁部10aとを備えた状態となっている。このように貫通孔40(穴部)の内壁に導電部20eと絶縁部10aとを備えることにより、電気的に接続されない部分が形成され、その結果、伝送効率が向上する。このような断面形状を有する貫通孔40(穴部)に硬化性樹脂組成物が充填され、加熱硬化することにより穴埋めが行われる。なお、本実施の形態において、絶縁層とは、異なる配線層間を絶縁しながらも配線層を支持する層をいい、配線層とは、回路により電気的な導通を行う層をいう。また、絶縁部とは、各層を電気的に導通させない箇所をいい、前述した絶縁層も含み得る。一方、導電部とは、めっき膜等、各配線層を電気的に導通させるための箇所をいい、前述した配線層も含み得る。さらに、貫通孔とは、多層プリント配線板の厚さ方向全体を貫通するように設けられる孔をいう。貫通孔は配線層の厚さ方向に形成されていればよく、より具体的には配線層と平行に形成されていなければよい。なお、本実施の形態では、貫通孔の壁面に延びる配線層を導電部としたが、配線層の一部が貫通孔の壁面に露出しているような場合も、導電部というものとする。また、前述した配線層が壁面に延びることにより形成される場合だけでなく、めっき等により導電膜が壁面に形成されるような場合も、導電部というものとする。上記した構造の多層プリント配線板の貫通孔40に充填された硬化物は絶縁性を有しているため、配線層20aと20dとが電気的に接続してしまうことがない。
【0061】
本発明の別の実施の形態においては、貫通孔の穴部の形状は上記した以外にも、例えば図4に示すような、配線層30aおよび30dが貫通孔40(穴部)の内壁まで延びて導電部30eを形成し、当該導電部の一部が除去されて絶縁層が露出することで導電部30eと絶縁部10aとを備えた状態となっているような構造の多層プリント配線板であってもよい。なお、本実施の形態では、貫通孔の壁面に延びる配線層を導電部としたが、配線層の一部が貫通孔の壁面に露出しているような場合も、導電部というものとする。また、前述した配線層が壁面に延びることにより形成される場合だけでなく、めっき等により導電膜が壁面に形成されるような場合も、導電部というものとする。上記した構造の多層プリント配線板の貫通孔40に充填された硬化物は絶縁性を有しているため、配線層30aと30dとが電気的に接続してしまうことがない。
【0062】
また、本発明の別の実施の形態においては、硬化性樹脂組成物を用いて穴埋めが行われるのは貫通孔に限られず、例えば図5に示すような、凹部70を有する多層プリント配線板4であってもよい。多層プリント配線板4は、絶縁層10の一方の表面に設けられた配線層50aが、凹部70の壁面および底部60まで延びて導電部50dを形成し、凹部70の開口側は導電部50dの形成後に配線層50aの一部を除去するように凹部の内径が拡大されており、穴部の内壁には絶縁層が露出することで絶縁部10aが形成された状態になっている。すなわち、底部を有する凹部(穴部)の内壁は、導電部50dと絶縁部10aとを備えた状態となっている。なお、本実施の形態では、凹部の壁面に延びる配線層を導電部としたが、配線層の一部が凹部の壁面に露出しているような場合も、導電部というものとする。このような多層プリント配線板4では、底部60を有する凹部70に硬化性樹脂組成物を充填した場合には、配線層50aから延びる導電部と凹部70の壁面に露出した絶縁部との両方に硬化性樹脂組成物が接するようになる。また、前述した配線層が壁面に延びることにより形成される場合だけでなく、めっき等により導電膜が壁面に形成されるような場合も、導電部というものとする。本実施の形態において、凹部とは、多層プリント配線板の表面のうち、他の部分よりも明らかに窪んでいると認められる部分をいう。上記した構造の多層プリント配線板の貫通孔40に充填された硬化物は絶縁性を有しているため、配線層50aと50dとが電気的に接続してしまうことがない。
【0063】
多層プリント配線板において、貫通孔または底部を有する凹部の内径および深さの範囲としては、内径は0.1~1mm、深さは0.1~10mmがそれぞれ好ましい。
【0064】
導電部を形成する配線層は、銅めっき、金めっき、錫めっき等、特に制限されるものではないが、後記する硬化性樹脂組成物の充填性や硬化物との密着性の観点からは、銅からなるものであることが好ましい。また、同様に、プリント配線板を構成する絶縁層としては、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素系樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド、シアネートエステル、ポリイミド、PET、ガラス、セラミック、シリコンウエハ等が挙げられる。これらの中でも、硬化性樹脂組成物の充填性や硬化物との密着性の観点からは、ガラス布/不繊布エポキシ、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、セラミックからなるものであることが好ましく、エポキシ樹脂含有硬化物がより好ましい。エポキシ樹脂含有硬化物とは、ガラス繊維を含侵させたエポキシ樹脂の硬化物またはエポキシ樹脂を含む樹脂組成物の硬化物をいう。
【0065】
硬化性樹脂組成物を充填材として使用する場合、充填材は、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、ダイコーティング法、真空印刷法など公知のパターニング方法を用いて、例えば上記した実施形態の多層プリント配線板の貫通孔の穴部や底部を有する凹部に充填される。このとき、穴部や凹部から少しはみ出るように完全に充填される。穴部や凹部が硬化性樹脂組成物で充填された多層プリント配線板を、例えば80~160℃で30~180分程度加熱することにより、硬化性樹脂組成物が硬化し、硬化物が形成される。硬化性樹脂組成物の硬化は、穴埋め後に基板表面からはみ出している不必要部分を物理研磨により容易に除去する観点から、2段階で行ってもよい。すなわち、より低い温度で硬化性樹脂組成物を予備硬化させておき、その後に本硬化(仕上げ硬化)することができる。予備硬化としての条件は、80~130℃で30~180分程度の加熱が好ましい。予備硬化した硬化物の硬度は比較的に低いため、基板表面からはみ出している不必要部分を物理研磨により容易に除去でき、平坦面とすることができる。その後、加熱して本硬化させる。本硬化としての条件は、130~160℃で30~180分程度の加熱が好ましい。硬化は、予備硬化および本硬化のいずれにおいても、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより被硬化物に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。この中でも特に、熱風循環式乾燥炉が好ましい。この際、低膨張性のために硬化物は殆ど膨張も収縮もせず、寸法安定性良く低吸湿性、密着性、電気絶縁性等に優れた最終硬化物となる。なお、予備硬化物の硬度は、予備硬化の加熱時間、加熱温度を変えることによってコントロールすることができる。
【0066】
上記のようにして硬化性樹脂組成物を硬化させた後、プリント配線板の表面からはみ出した硬化物の不要部分を、公知の物理研磨方法により除去し、平坦化した後、表面の配線層を所定パターンにパターニングして、所定の回路パターンが形成される。なお、必要に応じて過マンガン酸カリウム水溶液などにより硬化物の表面粗化を行った後、無電解めっきなどにより硬化物上に配線層を形成してもよい。
【実施例
【0067】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0068】
<硬化性樹脂組成物の調製>
下記表1に示す種々の成分を各表に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合し、実施例1~3および比較例1~4の各硬化性樹脂組成物を調製した。なお、表中の各フィラーの配合量は、50体積%で一定となるように調整した。
【0069】
なお、表1中の*1~*10は、以下の成分を表す。
*1:三菱ケミカル株式会社製jER828(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂)
*2:三菱ケミカル株式会社製jER807(ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂)
*3:三菱ケミカル株式会社製jER1001(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂)
*4:パウダーテック株式会社製E10S(Mg-Mn-Sr系フェライト、磁性フィラー)
*5:エプソンアトミックス株式会社製AW2-08PF-3F(アモルファス合金磁性パウダー、磁性フィラー)
*6:エプソンアトミックス株式会社製AW2-08PF-3FG(アモルファス合金磁性パウダー、磁性フィラー)
*7:エリコンメテコ社製金コーティングニッケル粉(磁性フィラー)
*8:丸尾カルシウム株式会社スーパー4S(重質炭酸カルシウム)
*9:アドマテックス株式会社製SO-C6(非晶質シリカ)
*10:四国化成工業株式会社製2MZ―A(イミダゾール型硬化剤)
【0070】
<硬化性樹脂組成物の粘度測定>
得られた各熱硬化性樹脂組成物の粘度を円すい―平板形回転粘度計(コーン・プレート形)(東機産業株式会社製、TV-30型、ロータ3°×R9.7)を用いて、25℃、5rpmの30秒値の測定条件において粘度の測定を行った。
【0071】
<絶縁抵抗値の測定>
上記のようにして調製した各硬化性樹脂組成物を、IPC-TM-650に記載のIPC-B-24くし型電極(L/S=300μm/300μm)が形成されたFR-4基板上にスクリーン印刷により硬化後の膜厚が20~40μmになるように全面塗布し、熱風循環式乾燥炉(ヤマト科学株式会社製DF610)で150℃、30分加熱して硬化させて評価基板を作製した。
次いで、各評価基板について、絶縁抵抗計(株式会社アドバンテスト製、R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER)を用いて、温度20~25℃、湿度50~60%RHの環境雰囲気下で、DC100V、1分値をN=6で測定し、それらの平均値を絶縁抵抗値とした。測定結果は下記の表1に示されるとおりであった。
【0072】
<磁性特性の評価>
ノイズ抑制等の特性を確認するために磁性特性を評価した。実施例および比較例の各硬化性樹脂組成物を、銅箔に100μmギャップのアプリケーターにて塗布し、熱風循環式乾燥炉(ヤマト科学株式会社製DF610)にて150℃で30分加熱することにより硬化性樹脂組成物を硬化させたものを、1cm×3cmの大きさに切り出し、評価基板とした。
次いで、各評価基板について、Keysight社製E5071C ENAネットワークアナライザを用いて、温度25℃、10MHz~1GHzGHzでの複素透磁率(μ)、実部(μ’)、虚部(μ’’)、虚数(j)をそれぞれ測定した。各項目の関係は、μ=μ’-jμ’’で表され、また、100MHz付近の前後11点の平均値を指標とした。なお、μ’>1.0であれば磁性を有すると言える。評価結果は下記の表1に示されるとおりであった。
【0073】
<穴埋め性の評価>
内径が0.3mm、深さが3.2mmの貫通孔の内壁面全体に銅めっきからなる配線層(めっき厚25μm)を設けて形成されたスルーホールを有する厚さ3.2mmの多層プリント配線基板(FR-4材、型番MCL-E67、日立化成株式会社製)の片面から深さ1.6mmまでドリル加工(ドリル径0.5mm)して配線層の一部を除去して絶縁層を露出させ、内壁に導電部と絶縁部とが形成されたスルーホールを有する多層プリント配線基板を準備した。
多層プリント配線基板のスルーホールに各熱硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷法により充填し、ラックに立て掛けて基板が載置面に対して90度±10度の角度となるように載置した状態で、熱風循環式乾燥炉(ヤマト科学株式会社製DF610)にて150℃で30分加熱することにより熱硬化性樹脂組成物を硬化させた。次いで、上記の基板を用いて、穴埋めした後のスルーホール断面の光学顕微鏡観察および電子顕微鏡観察を行い、クラック発生の有無およびデラミ(剥離)の有無を確認し、以下の評価基準により評価した。
【0074】
なお、顕微鏡観察を行うにあたり、観察するスルーホールの断面は以下のようにして形成した。すなわち、スルーホールを含む多層プリント配線板を厚さ方向に垂直に裁断し、裁断面にSiC研磨紙(丸本ストルアス株式会社製、500番および2000番)と研磨機(ハルツォク・ジャパン株式会社製、FORCIPOL-2V)を使用して、スルーホールの断面を研磨した。
○:クラックまたはデラミが発生している箇所の合計が0箇所以上2箇所未満
×:クラックまたはデラミが発生している箇所の合計が2箇所以上
評価結果は下記の表1に示されるとおりであった。
【0075】
<配線形成性の評価>
内径が0.3mm、深さが3.2mmの貫通孔の内壁面全体に銅めっきからなる配線層(めっき厚25μm)を設けて形成されたスルーホールを有する厚さ3.2mmの多層プリント配線基板(FR-4材、型番MCL-E67、日立化成株式会社製)の片面から深さ1.6mmまでドリル加工(ドリル径0.5mm)して配線層の一部を除去して絶縁層を露出させ、内壁に導電部と絶縁部とが形成されたスルーホールを有する多層プリント配線基板を準備した。
上記した多層プリント配線基板のスルーホールに各熱硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷法により充填し、ラックに立て掛けて基板が載置面に対して90度±10度の角度となるように載置した状態で、熱風循環式乾燥炉(ヤマト科学株式会社製DF610)にて150℃で30分加熱することにより熱硬化性樹脂組成物を硬化させた。基板の両面にはんだでリード線を接続して評価基板を作製した。
次いで、各評価基板について、デジタルマルチメーター(カイセ株式会社製、SK-6500)を用いて、温度20~25℃、湿度50~60%RHの環境雰囲気下で、導通モードで測定した。その際、以下の評価基準により評価した。
〇:ブザーが鳴らず、設計通りに回路が形成されている
×:ブザーが鳴り、設計通りに回路が形成できていない
評価結果は下記の表1に示されるとおりであった。
【0076】
【表1】
【0077】
表1の評価結果からも明らかなように、絶縁抵抗値等が本発明の構成を満たしている硬化性樹脂組成物を適用した実施例1~3は、磁性特性が優れていることにより、ノイズ抑制等の特性に優れることがわかる。さらに穴埋め性や配線形成性にも優れることがわかる。これに対して、導電性を有する磁性フィラーの使用により絶縁抵抗値を満たさない硬化性樹脂組成物を適用した比較例1は、ノイズ抑制や穴埋め性等の特性には優れるものの、回路形成性においてショートが発生し、回路形成の自由度が制限されてしまうことがわかった。また、磁性フィラーではない無機フィラーのみを使用した硬化性樹脂組成物を適用した比較例2、3は、穴埋め性や配線形成性には優れるものの、ノイズ抑制等の特性が不十分である。また、粘度が3000dPa・sより高い硬化性樹脂組成物を適用した比較例4は、ノイズ抑制等の特性や配線形成性には優れるものの、穴埋め性が悪いことがわかる。
【符号の説明】
【0078】
1、2 プリント配線板
3 貫通孔を有する多層プリント配線板
4 凹部を有する多層プリント配線板
5a 内壁表面がめっきされた貫通孔
5b 内壁表面がめっきされていない貫通孔
6 予備硬化物
7 外層絶縁層
8 銅箔
9 基板
10 絶縁層
10a 絶縁部
20a、20b、20c、20d 配線層
30a、30b、30c、30d 配線層
40 貫通孔
50a、50b、50c、配線層
20e、30e、50d 導電部
60 底部
70 凹部
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図3
図4
図5