(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】関心対象特性を算出するメトロロジ装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240425BHJP
G03F 9/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F9/00 H
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022154319
(22)【出願日】2022-09-28
(62)【分割の表示】P 2020521364の分割
【原出願日】2018-10-08
【審査請求日】2022-10-26
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】デン ボーフ,アリー,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デン ウーテラール,ロナルド,ヨセフ,アントニウス
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-343291(JP,A)
【文献】特表2017-523591(JP,A)
【文献】国際公開第2017/108411(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/148986(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の少なくとも1つの構造の関心対象特性を算出するように構成されたメトロロジ装置であって、前記少なくとも1つの構造は、第1の層に第1のピッチで第1の繰り返しフィーチャを含み、且つ第2の層に第2のピッチで第2の繰り返しフィーチャを含み、前記第1の繰り返しフィーチャは、前記第2の繰り返しフィーチャと少なくとも部分的に重なり合い、前記第1のピッチは、前記第2のピッチと異なっており、
前記メトロロジ装置は、
センサに当たる放射線の特性を検出するように構成された前記センサと、
光源から受け取った放射線で前記少なくとも1つの構造を照明するように構成された光学系であって、前記光学系は、前記少なくとも1つの構造によって散乱された放射線を受け取ることと、前記受け取った放射線の一部分を前記センサまで伝搬させることと、を行うように更に構成されている、光学系と、を含み、
前記センサは、前記受け取った放射線を検出するために、前記光学系の像面又は前記像面の共役面に配置され、
前記光学系は、前記散乱された放射線の0次回折の放射線が前記センサに向かって伝搬することを阻止
し、前記0次回折を前記センサとは別のセンサに向けて反射するように構成されている、メトロロジ装置。
【請求項2】
前記センサ、前記光学系、及び前記基板上の前記構造のうちの少なくとも1つは、前記センサ上において前記第1の繰り返しフィーチャが個々のフィーチャとして不可視であるように構成されている、請求項1に記載のメトロロジ装置。
【請求項3】
前記センサ、前記光学系、及び前記基板上の前記構造のうちの少なくとも1つは、前記センサ上において前記第2の繰り返しフィーチャが個々のフィーチャとして不可視であるように構成されている、請求項1に記載のメトロロジ装置。
【請求項4】
前記関心対象特性は、前記第1の層の前記第1の繰り返しフィーチャと前記第2の層の前記第2の繰り返しフィーチャとの間のオーバーレイエラー値である、請求項1に記載のメトロロジ装置。
【請求項5】
前記基板上の前記構造は、前記第1の繰り返しフィーチャ及び/又は前記第2の繰り返しフィーチャが前記基板上の他のフィーチャと同等のサイズを有するように構成されている、請求項1に記載のメトロロジ装置。
【請求項6】
前記光学系は、前記散乱された放射線の前記0次回折が前記センサに向かって伝搬することをブロックするためのブロック素子を含む、請求項1に記載のメトロロジ装置。
【請求項7】
前記光学系の開口数は、前記散乱された放射線の±1次回折の少なくとも一方を捕捉して前記センサまで伝搬させるように構成されている、請求項1に記載のメトロロジ装置。
【請求項8】
前記開口数は、0.5より大きい、請求項7に記載のメトロロジ装置。
【請求項9】
前記光学系及び/又は前記光源は、前記光学系が、前記散乱された放射線の少なくとも1つの1次より高次の回折を捕捉して前記センサまで伝搬させることを結果としてもたらす波長を有する放射線で、前記少なくとも1つの構造を照明することを可能にするように構成されている、請求項1に記載のメトロロジ装置。
【請求項10】
前記光学系は、ある波長範囲の放射線の伝搬を可能にする波長フィルタを含み、前記波長フィルタは、前記光学系の照明経路及び検出経路の少なくとも一方に設けられている、請求項1に記載のメトロロジ装置。
【請求項11】
前記波長フィルタは、波長制御信号に応じて、選択可能な波長範囲の放射線を伝搬させるように構成された制御可能波長フィルタを含む、請求項10に記載のメトロロジ装置。
【請求項12】
前記光学系は、照明経路内に、前記少なくとも1つの構造を照明する前記放射線を偏光させるように構成された第1のポラライザを含む、請求項1に記載のメトロロジ装置。
【請求項13】
前記光学系は、検出経路内に、特定の偏光を有する散乱放射線を前記センサまで伝搬させるように構成された第2のポラライザを含む、請求項12に記載のメトロロジ装置。
【請求項14】
前記第1のポラライザは、偏光制御信号に指示される通りの特定の偏光を有する放射線の伝搬を可能にするように構成された制御可能ポラライザである、請求項12に記載のメトロロジ装置。
【請求項15】
基板上の少なくとも1つの構造に関連する関心対象特性を算出する方法であって、
前記少なくとも1つの構造を含む前記基板を提供することであって、前記少なくとも1つの構造は、第1の層に第1のピッチで第1の繰り返しフィーチャを含み、且つ第2の層に第2のピッチで第2の繰り返しフィーチャを含み、前記第1の繰り返しフィーチャは、前記第2の繰り返しフィーチャと少なくとも部分的に重なり合い、前記第1のピッチは、前記第2のピッチと異なる、前記基板を提供することと、
光源から受け取った放射線で前記少なくとも1つの構造を照明することと、
前記少なくとも1つの構造によって散乱された放射線を光学系で受け取ることと、
前記光学系によって前記受け取った散乱放射線の一部分をセンサまで伝搬させる一方、前記散乱放射線の0次回折の放射線が前記センサまで伝搬することを阻止
し、前記0次回折を前記センサとは別のセンサに向けて反射し、
前記光学系の像面又は前記像面の共役面に設けられた前記センサに像を記録することと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、参照によって完全な形で本明細書に組み込まれている2017年11月7日に出願された欧州特許出願公開第17200265.1号、2017年11月28日に出願された欧州特許出願公開第17204158.4号、及び2017年12月15日に出願された欧州特許出願公開第17207587.1号の優先権を主張するものである。
【0002】
[0002] 本発明は、基板上の構造の関心対象特性を算出するメトロロジ装置に関する。本発明はまた、関心対象特性を算出する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に施すように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用可能である。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えば、マスク)にあるパターン(「デザインレイアウト」又は「デザイン」と呼ばれることも多い)を、基板(例えば、ウェーハ)上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層に投影し得る。
【0004】
[0004] リソグラフィ装置は、基板にパターンを投影するために電磁放射を使用し得る。この放射の波長により、基板上に形成できるフィーチャの最小サイズが決まる。現在使用されている典型的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm及び13.5nmである。波長が4~100nmの範囲、例えば6.7nm又は13.5nmである極端紫外線(EUV)の放射を使用するリソグラフィ装置であれば、例えば、波長が193nmである放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さいフィーチャを基板上に形成することが可能である。
【0005】
[0005] リソグラフィ装置の古典的な解像限界より小さい寸法を有するフィーチャをプロセスするために、低k1リソグラフィが用いられ得る。そのようなプロセスでは、解像度の式は、CD=k1×λ/NAで表され得、ここで、λは、使用される放射線の波長であり、NAは、リソグラフィ装置の投影光学系の開口数であり、CDは、「クリティカルディメンジョン」であり(一般には印刷される最小フィーチャサイズであるが、この場合にはハーフピッチ)、k1は、経験的な解像度ファクタである。一般に、k1が小さいほど、特定の電気的な機能性及び性能を達成するために回路設計者が計画した形状及び寸法に似せたパターンを基板上に複写することが困難になる。このような困難を克服するために、高度な微調整ステップがリソグラフィ投影装置及び/又はデザインレイアウトに適用され得る。そのようなステップとして、例えば、NAの最適化、照明方式のカスタマイズ、位相シフトパターニング装置の使用、デザインレイアウトの様々な最適化、例えば、デザインレイアウトにおける光近接効果補正(OPC(「光学及びプロセス補正」と呼ばれることもある))又は他の一般的に「解像度向上技術」(RET)と定義される方法があるが、これらに限定されない。代わりに、低k1でのパターン複写を改善するために、リソグラフィ装置の安定性を管理する厳格管理ループが用いられ得る。
【0006】
[0006] リソグラフィプロセスでは、作成された構造を(例えば、プロセスの管理及び検証の為に)頻繁に測定することが望ましい。そのような測定を行う様々なツールが知られており、例えば、走査電子顕微鏡や様々な形式のメトロロジ装置(例えば、スキャトロメータ)がある。メトロロジ装置は、基板上の、重なり合う2つの層の間のオーバーレイ値を算出するように動作可能であってよい。オーバーレイ値が期待される値からずれる場合、メトロロジ装置は、期待される値からのずれをオーバーレイエラーとしてレポートすることが可能である。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 目的は、既知のメトロロジ装置又は検査装置より優れた、効果的且つ効率的な、検査装置又はメトロロジ装置の為のソリューションを提供することである。
【0008】
[0008] 本発明の一態様によれば、メトロロジ装置が、特許請求の範囲において定義されるように提供される。本発明の別の態様によれば、基板上の少なくとも1つの構造に関連する関心対象特性を算出する方法が、特許請求の範囲において定義されるように提供される。特許請求の範囲は、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0009】
[0009] 以下では、添付の概略図面を参照して、本発明の実施形態をあくまで例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】ホリスティックリソグラフィの概略図を示し、半導体製造を最適化するための重要な3つの技術間の協調を表す。
【
図4】メトロロジ装置の一実施形態を概略的に表した図である。
【
図5】メトロロジ装置の第2の実施形態を概略的に表した図である。
【
図6】基板上に製造可能であって、メトロロジ装置の実施形態によって検査可能な、幾つかの構造を概略的に表した図である。
【
図7】メトロロジ装置のセンサで取得可能な像の一実施形態を示す図である。
【
図8】メトロロジ装置の第3の実施形態を概略的に表した図である。
【
図9】メトロロジ装置の第4の実施形態を概略的に表した図である。
【
図10】オーバーレイ値を算出する為に基板上に製造される構造を概略的に表した図である。
【
図11】ターゲットの実施形態の小区分を概略的に表した図である。
【
図12】メトロロジ装置の照明瞳及び検出瞳を概略的に表した図である。
【
図13】可撓及び/又は制御可能な照明瞳構成及び検出瞳構成の例を
図13(a)及び
図13(b)に概略的に示した図である。
【
図14】可撓及び/又は制御可能な照明瞳構成及び検出瞳構成の別の例を
図14(a)及び
図14(b)に概略的に示した図である。
【
図15】ターゲットの別の実施形態を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[00010] 本明細書では、「放射」及び「ビーム」という用語は、あらゆるタイプの電磁放射を包含するように使用され、そのような電磁放射には、紫外線(例えば、365、248、193、157又は126nmの波長を有する)並びにEUV/軟X線(例えば、約1~100nmの範囲の波長を有する極端紫外線)が含まれる。
【0012】
[00011] 本明細書で使用される「レチクル」、「マスク」又は「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分に作成されるべきパターンに対応するパターン化された断面を、入射する放射ビームに提供するために使用可能な一般的なパターニングデバイスを意味するものとして広義に解釈され得る。これに関連して「ライトバルブ」という用語も使用される場合がある。古典的なマスク(透過型又は反射型のマスク、バイナリマスク、位相シフトマスク、ハイブリッドマスク等)に加えて、他のそのようなパターニングデバイスの例として、プログラマブルミラーアレイ及びプログラマブルLCDアレイがある。
【0013】
[00012]
図1は、リソグラフィ装置LAを概略的に示す。リソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えば、UV放射、DUV放射又はEUV放射)を調節するように構成された(イルミネータとも呼ばれる)照明システムILと、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構築されて、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続されたマスク支持部(例えば、マスクテーブル)Tと、基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築されて、特定のパラメータに従って基板支持部を正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続された基板支持部(例えば、ウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば、1つ以上のダイを含む)ターゲット部分Cに投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSとを含む。
【0014】
[00013] 稼働中、照明システムILは、放射源SOから(例えば、ビーム送達システムBDを介して)放射ビームを受ける。照明システムILは、放射の誘導、整形及び/又は制御のために様々なタイプの光学コンポーネントを含み得、例えば屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型及び/又は他のタイプの光学コンポーネント又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。イルミネータILは、放射ビームBがパターニングデバイスMAの面において所望の空間強度分布及び角度強度分布をその断面に有するように、放射ビームBを調節するために使用され得る。
【0015】
[00014] 本明細書で使用される「投影システム」PSという用語は、様々なタイプの投影システムを包含するものとして広義に解釈されたい。そのようなシステムには、使用されている露光放射の必要に応じて及び/又は他の要因(例えば、液浸液の使用又は真空の使用)の必要に応じて、屈折型、反射型、反射屈折型、アナモルフィック型、磁気型、電磁型及び/又は静電光学型のシステム又はこれらの任意の組み合わせが含まれ得る。本明細書で「投影レンズ」という用語が使用されている場合、それらは、全てより一般的な用語である「投影システム」PSと同義であると見なされ得る。
【0016】
[00015] リソグラフィ装置LAは、投影システムPSと基板Wとの間の空間を埋めるように、基板の少なくとも一部分が、屈折率が比較的高い液体(例えば、水)で覆われ得るタイプであり得、これは、液浸リソグラフィとも呼ばれる。液浸技術の詳細については、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6952253号に示されている。
【0017】
[00016] リソグラフィ装置LAは、基板支持物WTが2つ以上あるタイプ(「デュアルステージ」とも呼ばれる)であってもよい。そのような「複数ステージ」マシンでは、それらの基板支持物WTは並行して使用されてよく、及び/又は、それらの基板支持物WTの一方に載っている基板Wが、その基板Wにパターンを露光することに使用されている間に、他方の基板支持物WTに載っている別の基板Wに対して、その別の基板Wのその後の露光の準備の手順が実施されてよい。
【0018】
[00017] 基板支持物WTに加えて、リソグラフィ装置LAは測定ステージを含んでよい。測定ステージは、センサ及び/又はクリーニング装置を保持するように構成されている。センサは、投影システムPSの特性、又は放射ビームBの特性を測定するように構成されてよい。測定ステージは複数のセンサを保持してよい。クリーニング装置は、リソグラフィ装置の一部、例えば、投影システムPSの一部、又は液浸液を供給するシステムの一部をクリーニングするように構成されてよい。測定ステージは、基板支持物WTが投影システムPSから離れているときに、投影システムPSの下を動いてよい。
【0019】
[00018] 稼働中は、放射ビームBが、パターニングデバイス(例えば、マスク支持物T上に保持されたマスクMA)に入射し、パターニングデバイスMA上にあるパターン(設計レイアウト)によってパターニングされる。放射ビームBは、マスクMAを横断した後、投影システムPSを通り抜け、投影システムPSは、ビームを基板Wのターゲット部分C上にフォーカスさせる。第2のポジショナPW及び位置測定システムIFの支援により、基板支持物WTは正確に動くことが可能であり、例えば、様々なターゲット部分Cが、放射ビームBの経路中のフォーカス及びアライメントされる位置に位置決めされるように正確に動くことが可能である。同様に、パターニングデバイスMAを放射ビームBの経路に対して正確に位置決めする為に、第1のポジショナPMと、場合によっては別の位置センサ(これは
図1に明示されていない)とが使用されてよい。パターニングデバイスMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2、及び基板アライメントマークP1、P2を使用してアライメントされてよい。基板アライメントマークP1、P2は、図示されたように専用ターゲット部分を占有するが、ターゲット部分間の空間に配置されてよい。基板アライメントマークP1、P2は、ターゲット部分C間に配置される場合には、スクライブラインアライメントマークと呼ばれる。
【0020】
[00019]
図2に示されるように、リソグラフィ装置LAは、リソグラフィセルLC(リソセル又は(リソ)クラスタと呼ばれることもある)の一部をなし得、リソグラフィセルLCは、基板Wに対して露光前プロセス及び露光後プロセスを実施するための装置も含むことが多い。従来、そのような装置として、レジスト層を堆積させるスピンコータSC、露光したレジストを現像するデベロッパDE、冷却プレートCH及びベークプレートBK(これらは、例えば、基板Wの温度を調節するものであり、それは、例えば、レジスト層中の溶剤を調節するために行われる)がある。基板ハンドラ(即ちロボット)ROが基板Wを入出力ポートI/O1、I/O2からピックアップし、それらの基板Wを様々なプロセス装置間で動かし、それらの基板Wをリソグラフィ装置LAのローディングベイLBまで送達する。リソセル内のデバイスは、まとめてトラックと呼ばれることも多く、典型的にはトラック制御ユニットTCUの管理下にあり、トラック制御ユニットTCU自体は、監視制御システムSCSによって制御され得、監視制御システムSCSは、リソグラフィ装置LAも(例えば、リソグラフィ制御ユニットLACUを介して)制御し得る。
【0021】
[00020] リソグラフィ装置LAによって露光される基板Wが正確且つ確実に露光されるために、基板を検査して、パターン形成された構造の特性、例えば連続する層間のオーバーレイエラー、線の太さ、クリティカルディメンジョン(CD)等を測定することが望ましい。そのため、検査ツール(図示せず)がリソセルLCに含まれ得る。エラーが検出された場合、例えば、連続する基板の露光又は基板Wに対して実施されるべき他のプロセスステップに対する調節が行われ得、これは、特に同じバッチ又はロットの他の基板Wが引き続き露光又はプロセスされる前に検査が行われる場合に行われ得る。
【0022】
[00021] メトロロジ装置と呼ばれることもある検査装置は、基板Wの特性を測定するために使用され、特に異なる複数の基板Wの特性がどのようにばらつくか、又は同じ基板Wの異なる複数の層に関連付けられた特性が層ごとにどのようにばらつくかを測定するために使用される。検査装置は、代わりに、基板W上の欠陥を識別するように構築され得、例えばリソセルLCの一部分であり得るか、又はリソグラフィ装置LAに組み込まれ得るか、又はスタンドアロン装置であり得る。検査装置は、潜像(露光後のレジスト層内の像)に関する特性、又は半潜像(露光後ベーク工程PEB後のレジスト層内の像)に関する特性、又は現像されたレジスト像(レジストの露光部分又は非露光部分が除去されている)に関する特性、又は更に(エッチング等のパターン転写工程後の)エッチングされた像に関する特性を測定し得る。
【0023】
[00022] 典型的には、リソグラフィ装置LAにおけるパターニングプロセスは、基板W上の構造の寸法決定及び配置に高い精度を必要とする、処理のなかで最もクリティカルなステップの1つである。この高い精度を確保するために、
図3に概略的に示されるように、3つのシステムをいわゆる「ホリスティック」管理環境として組み合わせ得る。これらのシステムの1つは、リソグラフィ装置LAであり、これは、メトロロジツールMT(第2のシステム)及びコンピュータシステムCL(第3のシステム)と(仮想的に)接続される。そのような「ホリスティック」環境の鍵は、これらの3つのシステム間の協調を最適化して、プロセスウィンドウ全体を強化し、厳格管理ループを実現することにより、リソグラフィ装置LAによって実施されるパターニングがプロセスウィンドウ内にとどまるようにすることである。プロセスウィンドウは、プロセスパラメータ(例えば、ドーズ、フォーカス、オーバーレイ)の範囲を規定し、この範囲内で特定の製造プロセスが規定の結果(例えば、機能する半導体デバイス)を産出し、典型的には、この範囲内でリソグラフィプロセス又はパターニングプロセスのプロセスパラメータが変動し得る。
【0024】
[00023] コンピュータシステムCLは、パターニングされるデザインレイアウト(の一部)を使用することにより、何れの解像度向上技術を使用すべきかを予測することが可能であり、且つ計算機リソグラフィのシミュレーション及び計算を実施して、パターニングプロセスのプロセスウィンドウ全体の最大化を達成するマスクレイアウト及びリソグラフィ装置設定を決定することが可能である(
図3において第1のスケールSC1の両方向矢印で示されている)。典型的には、解像度向上技術は、リソグラフィ装置LAのパターニング可能性に適合するように用意される。コンピュータシステムCLは、プロセスウィンドウ内の何れの箇所でリソグラフィ装置LAが現在動作しているかを(例えば、メトロロジツールMTからの入力を使用して)検出することにより、(例えば、準最適な処理のために)欠陥が存在する可能性があるかどうかを予測することが更に可能である(
図3において第2のスケールSC2の「0」を指す矢印で示されている)。
【0025】
[00024] メトロロジツールMTは、正確なシミュレーション及び予測を可能にする入力をコンピュータシステムCLに与えることが可能であり、(例えば、リソグラフィ装置LAの較正ステータスにおいて)起こり得るドリフトを識別するフィードバックをリソグラフィ装置LAに与えることが可能である(
図3において第3のスケールSC3の複数の矢印で示されている)。
【0026】
[00025] リソグラフィプロセスでは、作成された構造を(例えば、プロセスの管理及び検証のために)頻繁に測定することが望ましい。そのような測定を行うツールは、一般にメトロロジツールMTと呼ばれる。
【0027】
[00026] そのような測定を行うメトロロジツールMTとして様々なタイプが知られており、例えば走査電子顕微鏡又は様々な形式のスキャトロメータメトロロジツールMTがある。スキャトロメータは、リソグラフィプロセスのパラメータの測定を可能にする多目的計器であり、測定は、スキャトロメータの対物レンズの瞳若しくは瞳に対する共役面にセンサを有すること(通常、瞳ベースの測定と呼ばれる測定)により、又は像面若しくは像面に対する共役面にセンサを有すること(この場合、通常、像ベース若しくはフィールドベースの測定と呼ばれる測定)により行われる。そのようなスキャトロメータ及び関連する測定技術については、参照によって全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20100328655号、同第2011102753A1号、同第20120044470A号、同第20110249244号、同第20110026032号又は欧州特許出願公開第1,628,164A号に詳述されている。上述のスキャトロメータは、軟X線及び可視波長~近赤外波長の範囲の光を使用して格子を測定することが可能である。
【0028】
[00027] 第1の実施形態では、スキャトロメータMTは、角度分解スキャトロメータである。そのようなスキャトロメータでは、格子の特性を再構築又は計算する再構築方法が測定信号に適用され得る。そのような再構築は、例えば、散乱する放射線とターゲット構造の数学モデルとの相互作用をシミュレーションし、シミュレーション結果を測定結果と比較することの結果であり得る。数学モデルのパラメータは、相互作用のシミュレーションにより、実際のターゲットから観察された回折パターンと同様の回折パターンが生成されるまで調節される。
【0029】
[00028] 第2の実施形態では、スキャトロメータMTは、分光スキャトロメータMTである。そのような分光スキャトロメータMTでは、放射線源から放射された放射線がターゲットに向かい、ターゲットから反射又は散乱した放射線がスペクトロメータ検出器に向かい、スペクトロメータ検出器が、鏡面反射した放射線のスペクトルを測定する(即ち強度を波長の関数として測定する)。このデータから、検出されたスペクトルを引き起こしているターゲットの構造又はプロファイルを再構築することが可能であり、この再構築は、例えば、厳密結合波理論及び非線形回帰により、又はシミュレーションされたスペクトルのライブラリとの比較により可能である。
【0030】
[00029] 第3の実施形態では、スキャトロメータMTは、エリプソスキャトロメータである。エリプソスキャトロメータは、偏光状態のそれぞれについて、散乱した放射線を測定することによってリソグラフィプロセスのパラメータを決定することを可能にする。そのようなメトロロジ装置は、偏光光(例えば、直線偏光光、円形偏光光又は楕円偏光光)を、例えばメトロロジ装置の照明セクションにおいて適切な偏光フィルタを使用して放射する。メトロロジ装置に好適な源は、偏光放射線も同様に提供可能である。既存のエリプソスキャトロメータの様々な実施形態は、参照によって全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第11/451,599号、同第11/708,678号、同第12/256,780号、同第12/486,449号、同第12/920,968号、同第12/922,587号、同第13/000,229号、同第13/033,135号、同第13/533,110号及び同第13/891,410号に記載されている。
【0031】
[00030] スキャトロメータMTの一実施形態では、スキャトロメータMTは、アライメントがずれた2つの格子又は周期構造のオーバーレイを測定するように適合されており、この測定は、反射スペクトル及び/又は検出構成における、オーバーレイの程度に関連付けられる非対称性を測定することによって行われる。この2つの(典型的には一部が重なり合っている)格子構造は、異なる2つの層(必ずしも連続する層ではない)において施され得、ウェーハ上のほぼ同じ位置に形成され得る。スキャトロメータは、非対称性があれば明確に識別可能であるように(例えば、共有されている欧州特許出願公開第1,628,164A号に記載されているような)対称検出構成を有し得る。これは、格子のアライメントのずれを測定する直接的な方法を提供する。ターゲットとしての及び周期構造の非対称性により測定される周期構造を含む2つの層間のオーバーレイエラーの更なる例は、参照によって全体として本明細書に組み込まれる国際公開第2011/012624A1号又は米国特許出願公開第20160161863A1号に記載されている。
【0032】
[00031] スキャトロメータMTの更に別の実施形態では、スキャトロメータMTは、0次回折放射線をブロックすることと、1次以上の回折放射線に基づいて像を形成することと、を行うように適合されており、この像は、ウェーハ上にある構造を解像しない。そのような装置は暗視野メトロロジ装置であり、暗視野セットアップでの回折ベースのメトロロジの例が、参照によって完全な形で本明細書に組み込まれている国際公開第2009/078708A1号及び同第2009/106279A1号に記載されている。米国特許出願公開第2006/0098199A1号も、参照によって完全な形で本明細書に組み込まれている
【0033】
[00032] 他の関心対象パラメータとして、フォーカス及びドーズがあり得る。フォーカス及びドーズは、参照によって全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011-0249244号に記載されているように、スキャトロメトリによって(又は代わりに走査電子顕微鏡によって)同時に特定可能である。フォーカスエネルギマトリックス(FEM(フォーカス露光マトリックスとも呼ばれる))の各点について、クリティカルな寸法測定値及び側壁角度測定値の固有の組み合わせを有する単一構造が使用され得る。これらのクリティカルな寸法及び側壁角度の固有の組み合わせが利用可能であれば、これらの測定値からフォーカス及びドーズの値を一意に特定することが可能である。
【0034】
[00033] メトロロジターゲットは複合格子の集合体であってよく、これらは、リソグラフィプロセスによって、大抵はレジスト中に形成されるが、例えば、エッチングプロセスの後にも形成される。典型的には、格子の構造のピッチ及び線幅は、メトロロジターゲットから来る次数の回折放射線を捕捉することが可能であるように、測定波長及び/又は測定用光学系(特に光学系のNA)に強く依存する。前述のように、回折信号は、2つの層の間のシフト(「オーバーレイ」とも呼ばれる)を算出する為に使用されてよく、或いは、リソグラフィプロセスによって生成された元の格子の少なくとも一部を再構築する為に使用されてよい。この再構築は、リソグラフィプロセスの品質の指針を与える為に使用されてよく、且つ、リソグラフィプロセスの少なくとも一部を管理する為に使用されてよい。ターゲットは、ターゲットにおける設計レイアウトの機能部分の寸法を模倣するように構成された、より小さい小区分を有してよい。この小区分により、ターゲットの挙動は、設計レイアウトの機能部分によりよく似たものになり、それによって、プロセスパラメータの測定値全体が設計レイアウトの機能部分によりよく似る。ターゲットは、充填不足の状態でも過充填の状態でも測定可能である。充填不足の状態では、測定ビームによって生成されるスポットは、ターゲット全体より小さい。過充填の状態では、測定ビームによって生成されるスポットは、ターゲット全体より大きい。そのような過充填の状態では、別々のターゲットを同時に測定することによって、別々のプロセスパラメータを同時に算出することが可能になることもある。そのような複数ターゲット測定の一例が、参照によって完全な形で本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第20120123581A1号に記載されている。
【0035】
[00034] 特定のターゲットを使用するリソグラフィパラメータの全体的な測定品質は、少なくとも部分的には、このリソグラフィパラメータの測定に使用される測定レシピによって決まる。「基板測定レシピ」という用語は、測定自体の1つ以上のパラメータ、測定された1つ以上のパターンの1つ以上のパラメータ又はその両方を包含し得る。例えば、基板測定レシピで行われる測定が回折ベースの光学的測定であれば、この測定のパラメータの1つ以上は、放射線の波長、放射線の偏光、基板に対する放射線の入射角、基板上のパターンに対する放射線の方位等を含み得る。測定レシピを選択する際の基準の1つは、例えば、何れかの測定パラメータの、プロセス変動に対する感受性であり得る。更なる例は、参照によって全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20160161863A1号及び未公開の米国特許出願第15/181,126号に記載されている。
【0036】
[00035]
図4は、メトロロジ装置の一実施形態400を概略的に表した図である。このメトロロジ装置は、
図3のメトロロジ装置MTであってよい。本文書では、メトロロジ装置という用語は、検査装置という用語と区別なく用いられる。
【0037】
[00036] メトロロジ装置400は、基板SUB 450上の少なくとも1つの構造STR 460に関連する関心対象特性を算出する為の装置である。関心対象特性は、基板450上の構造460に関して1つ以上の値を決定するものであってよい。関心対象特性はまた、基板450上の構造460の、期待される構造からのずれであってよい。関心対象特性はまた、基板450上の構造460の有無と、そのような構造の期待される有無との比較であってよい。関心対象特性はまた、基板450上の構造460の方位を決定するもの、又は構造460の表面の傾斜を決定するもの等であってよい。
【0038】
[00037] メトロロジ装置は、センサSNS 440及び光学系420を含む。センサ440は、光学系420によってセンサ上に伝搬される放射線の特性を検出するものである。センサ440は、センサ440に当たった放射線の像を生成することが可能な画素のアレイを含んでよい。センサ440は、光学系の像面、又は像面の共役面に配置されてよい。
【0039】
[00038] センサ440は、当たった放射線の像を記録するように構成されてよい。センサ440はまた、信号対ノイズ比が0.1超、又は任意選択で1超、又は任意選択で10超である像を記録するように構成されてよい。センサはCCDカメラを含んでよく、CCDカメラの積分時間は1秒未満であり、任意選択で500マイクロ秒未満である。センサの捕捉時間は、少なくとも積分時間を含んでよく、更には、信号処理の時間、及び/又は、取得された像を、例えば、算出システム470に送る時間を含んでよい。一実施形態では、センサ440が像を捕捉するように動作するのは、即ち、センサ440の捕捉時間は、受信信号が閾値を上回るまでである。一般に、センサ440は、最大時間以内に信号対ノイズ比が十分高い像を取得するように構成されてよく、その像がパターン認識アルゴリズムで処理されて、期待される構造に類似の構造が像中に検出されてよい。
【0040】
[00039] センサは、ロックイン検出に基づいてもよい。
【0041】
[00040] メトロロジ装置はまた、光源410によって生成された放射線を所定のパターンに従って変調し、それによって、構造460に当たる放射線を変調することによって、ノイズを抑えるように構成されてよい。その後、センサ440に向けて伝搬される放射線は、その最も大きい部分がやはりその所定パターンに従って変調され、任意に存在するノイズはそのパターンに従って変調されないことが見込まれる。それによって、センサ440及び/又は算出システム470は、所定の変調パターンを有する信号を記録及び/又は分析するだけで、ノイズと、基板上の構造460から発生した信号とを区別することが可能である。
【0042】
[00041] 光学系420は、照明経路及び検出経路を含む。光学系420は、照明経路を介して光源SRC 410から受け取った放射線で少なくとも1つの構造を照明するように構成されている。光学系420は、少なくとも1つの構造460によって散乱された放射線を受けることと、受けた放射線を、検出経路を介してセンサ440まで伝搬させることと、を行うように構成されている。
【0043】
[00042] 光学系420は、基板450上の少なくとも1つの構造460をセンサ440上に結像するように構成されている。任意選択で、光学系420及び/又はセンサ440の精度及び解像度は、センサ440上に形成され、及び/又はセンサ440によって記録される像において構造460のフィーチャが個別に識別可能である程度である。このことは、例えば、光学系420の各光学素子の配置が、フィーチャをセンサ440上に結像するのに十分な精度であることを意味すると考えられてよい。このことは、センサ440によって記録される像においてフィーチャが識別可能であるように、光学系420の各光学素子が十分な精度であること(例えば、収差が小さいこと)を意味すると考えられてよい。このことは、センサ440の解像度が、センサ440上で構造460の個々のフィーチャを識別するのに十分であることを意味すると考えられてよい。従って、センサ440上で適切な数の画素が利用可能であり、センサ440の画素の感度は十分である。このことはまた、構造の個々のフィーチャがセンサ440の1つ以上の画素上に結像されるように、光学系420が構造460のフィーチャの像を拡大又は縮小することを意味すると考えられてよい。
【0044】
[00043] 一実施形態では、光学系420が高NAレンズを含むか、光学系420が全体として高NAである。結像系(例えば、光学系420)の解像度は、センサ440で観測される光、又は光源410によって生成される光の波長に比例し、アッベ回折限界
【数1】
で示されるように、その対物レンズのサイズに反比例する。但し、NAは対物レンズの開口数であり、dは、光学系420でフォーカスされる光によって形成されるスポットの半径である。像の形成の為に、スポットサイズは、結像される個々のフィーチャより小さくてよい。好ましい一実施形態では、光学系420は高NAレンズを含む。一実施形態では、NAは0.7である。一実施形態では、NAは0.8である。一実施形態では、NAは0.9である。一実施形態では、NAは0.95超である。一実施形態では、光学系420と構造460との間に特定の物質が存在し、NAは1超である。特定の物質の例として、NAを大きくしうるガスや、水等の流体がある。
【0045】
[00044] なお、照明開口数と検出開口数には識別可能な違いがあってよい。照明開口数は、基板450の構造460に当たる照明放射線のビームの開口数である。この照明開口数は、光学系420のうちの、構造460に最も近いレンズ424がサポートする開口数より大幅に小さくてよく、これは、照明ビームが、光学系420のうちの、構造に最も近いレンズ424の一部分しか使用しない場合がある為である。一実施形態では、照明開口数は、0.5より小さく、或いは任意選択で0.2より小さく、或いは任意選択で0.1より小さく、或いは任意選択で0.05より小さい。一実施形態では、検出開口数は可能な限り大きい。検出開口数は、どれだけの大きさまでの回折角度であれば光学系420によって捕捉されうるか、且つ、センサ440に向けて伝搬されうるかを規定する。ここまでの段落では、説明された開口数(NA)は検出開口数に関連しており、従って、光学系のうちの、構造460に最も近いレンズ424の開口数に、かなりの程度まで関連している。
【0046】
[00045] メトロロジ装置400は、散乱した放射線の0次回折放射線の、センサ440に向かう伝搬を阻止するように構成されている。
図4に示されるように、放射線は、基板450に垂直な角度で構造460に当たる。構造460は放射線を散乱させ、その結果、0次回折が基板450に垂直な角度で光学系420に向かう方向になり、±1次回折が両方とも0次回折に対して或る角度で光学系420の方向になる。更なる高次の回折が、基板450から離れる方向に伝搬しうる。明確にする為に、これらの高次回折は図示されていない。光学系にはブロック素子428が存在してよく、ブロック素子428は、0次回折をブロックし、0次回折の放射線がセンサ440に向かって伝搬するのを防ぐ。
【0047】
[00046] 光学系は、第1の動作モード及び第2の動作モードで動作してよい。第1の動作モードでは、ブロック素子は第1の位置において制御可能であり、そこではブロック素子は、散乱した放射線の0次回折の、センサ440に向かう伝搬をブロックする。第2の動作モードでは、ブロック素子は別の(第2の)位置にあり、そこではブロック素子は、0次回折の、センサ440に向かう伝搬をブロックしない。
【0048】
[00047] 任意選択で、ブロック素子428は、瞳面、又は瞳面の共役面に存在する。0次回折をブロックすることの重要な効果の1つは、0次回折がブロックされない場合にセンサ440上の像に存在することになるDCレベルが大幅に低減されて、像のコントラストが向上することである。
【0049】
[00048]
図4の例では、照明経路と検出経路は一部が重なり合っている。光学系420にはビームスプリッタ素子426があり、これは、光源410から発せられた放射線を基板450上の構造460に向けて反射し、構造460によって散乱された放射線がセンサ440に向かって伝搬することを可能にする。
【0050】
[00049] 光学系420は1つ以上のレンズ422、424を含んでよい。1つ以上のレンズ422、424は、光源410からの放射線を構造460上のスポットにフォーカスさせるように構成されており、1つ以上のレンズ422、424は、少なくとも1つの構造460によって散乱された放射線をセンサ440に向けて伝搬させるように構成されている。任意選択で、1つ以上のレンズ422、424は、少なくとも1つの構造460の像をセンサ440上に生成するように配置されてよい。
【0051】
[00050] 構造460の個々のフィーチャをセンサ上に結像する為には、これらのレンズが比較的高品質でなければならない。既に示されたように、このことは、この1つ以上のレンズ(個々のレンズ、又はレンズの組み合わせ)の収差がλ/20より小さいことを意味すると考えられてよい。任意選択で、個々のレンズの収差、又はレンズの組み合わせの収差はλ/100より小さく、或いは任意選択でλ/500より小さく、或いは任意選択でλ/1000より小さい。
【0052】
[00051] なお、この例の光学系420はレンズ422、424を含む。そのような光学系420の実施形態は、レンズ422、424を使用することに限定されない。光学系420は(湾曲)ミラーを使用してもよい。ミラーはレンズの代わりに使用されてよい。また、1つ以上のレンズと1つ以上のミラーの組み合わせが使用されてもよい。
【0053】
[00052] 光学系は、光学誤差測定ユニット(図示せず)を含んでよい。一実施形態では、光学誤差測定ユニットは、シャックハルトマンセンサ等の収差センサであってよい。検出された収差は、センサ440によって記録された像を、検出された収差に関して補正する為に、算出システム470によって使用されてよい。
【0054】
[00053] メトロロジ装置400は更に、算出システムDTRM 470を含んでよい。算出システム470は、センサ440から信号を受け取るように構成されており、この信号は、センサによって記録された像を表す。算出システム470は、基板450の第1の層にあるフィーチャと、基板450の第2の層にあるフィーチャとの間の変位に基づいてオーバーレイ値を算出する。これらのフィーチャ間の変位は、センサ440から受け取られた像において算出される。オーバーレイ値が期待される値からずれている場合、このずれはオーバーレイエラーと呼ばれる。多くの場合、オーバーレイという用語は、オーバーレイエラーを示す為に用いられる。
【0055】
[00054] メトロロジシステム400は更に、1つ以上のアクチュエータ480を含んでよく、これらは、基板450に直接又は間接的に結合され、照明放射線が基板に当たる位置に対して基板を動かすことを可能にする。例えば、x方向、y方向、及びz方向に動かすことが可能である。基板は半導体ウェーハであってよく、基板はウェーハテーブルに載せられてよい。ウェーハテーブルの位置は、x、y、z方向に制御可能であってよく、ウェーハテーブルは更に、中心軸を中心に回転するように動作可能であってよい。
【0056】
[00055] メトロロジシステム400は、アクチュエータ480が存在する場合には、構造460を有する基板450が放射線スポットの位置に対して動く間に、構造460を放射線スポットで照明するように動作可能であってよい。基板(だけ)が動くことは必須ではなく、センサ440及び/又は光源410を有する光学系が基板に対して動くこともあってよい。構造460を有する基板450がそのように動く間、放射線スポットは、基板450の様々な部分を照明し、従って、構造460の様々な部分も照明する。そのように動く間、算出システム470を有するセンサが、構造の様々な像を取得又は記録することが可能である。基板及び様々な像が、構造の全体像の再構築に使用されてよく、及び/又は、関心対象特性の値(例えば、オーバーレイ値等)を直接算出することに使用されてよい。
【0057】
[00056] 光学系420の一実施形態では、ブロック素子428は、制御信号に応じて動くことが可能であってよい。例えば、ブロック素子428は、平行移動又は回転移動の手段によって第2の位置428’に向かって動かされてよい。第2の位置428’では、ブロック素子はもはや0次回折をブロックしておらず、センサ440上に明視野像が生成される。この実施形態は、暗視野結像と明視野結像とを切り替えることが可能なメトロロジ装置400を有効化する。
【0058】
[00057]
図4では、放射線スポットが単一の構造に当たるように示されている。特定の実施形態では、基板450上の、互いに近接する位置にある2つ以上の構造460、460’が使用可能であってよい。この2つ以上の構造460、460’は、互いに隣接していてよく、任意選択で、短い間隔で隣接していてよい。光学系420は、2つ以上の構造460、460’を単一の放射線スポットで同時に照明するように構成されてよい。その結果、センサ440によって記録される像は2つ以上の構造460、460’の像を含んでもよく、両方の構造について記録された像に基づいて関心対象特性が算出されてよい。例えば、2つ以上の構造460、460’は、異なる層にフィーチャを有し、それによって、例えば、様々な層のペアに関連するオーバーレイ値を算出することが可能である。この実施形態では、像を1回捕捉するだけで複数の関心対象特性を算出することが可能になる為、関心対象特性の捕捉の高速化が可能になる。
【0059】
[00058]
図6及び7を用いて、オーバーレイ値の算出方法を説明する。基板450上の構造460を基板450上に製造することは、例えば、
図1のリソグラフィ装置によって行われてよい。リソグラフィ装置では、パターニングデバイスMAを使用して構造460がプリントされる。パターニングデバイスMAは、基板450上に構造460をプリントするように意図された構造を含んでよい。実際的な実施形態では、第1の層にフィーチャをプリントする為に第1のパターニングデバイスが使用されるか、幾つかのパターニングデバイスが使用され、第2の層にフィーチャをプリントする為に第2のパターニングデバイスが使用されるか、幾つかのパターニングデバイスが使用される。実用的な実施形態では、使用されている第1の、第2の、又は更なるパターニングデバイスは、構造600の各部分の厳密なコピーを含むのではなく、所定の製造条件下で構造600の各部分を生じさせる構造を含む。
【0060】
[00059] そこで、
図6は、理想的な製造環境で製造された場合、従って、オーバーレイエラーが存在していない場合に基板上に存在する構造600を表す。構造600は、第1の層に第1の構造612を含み、第2の層に第2の構造622を含む。構造600中の同じハッチングの構造は全て、同じ層に製造されている。水平に方向付けられた構造と、垂直に方向付けられた構造とがある。明確さの為に、最初の説明では、水平に方向付けられた構造にのみ注目する。更に、「水平に」及び「垂直に」は図面の方向に対して定義されていて、実際的な実施形態では、与えられるパターンは、回転、平行移動、及び/又は鏡面反射したパターンとして基板450上に存在してよいことに注目されたい。
【0061】
[00060] 構造600は、第1の領域610及び第2の領域620を含む。第1の領域610では、第1のフィーチャ612の繰り返しパターンが存在する。第2の領域620では、第2のフィーチャ622の繰り返しパターンが存在する。構造600の例では、第1の領域と第2の領域は重なり合っておらず、互いに隣接している。第1の領域と第2の領域は、650又は660に存在する場合には、部分的に重なり合ってよい。
【0062】
[00061] 第1のフィーチャ612のピッチと第2のフィーチャ622のピッチは、互いにほぼ等しい。但し、これは必須ではないことに注意されたい。後述のように、算出システム470がセンサ440によって記録されている像からオーバーレイ値を算出できる限りは、様々なピッチが同様に使用されてよい。フィーチャ612、622の間のピッチはまた、高次回折が散乱される角度に影響を及ぼす為、使用される1つ以上のピッチはまた、可能な限り最も大きな高次回折、又は少なくとも可能な限り最も大きな1つの高次回折が光学系420によって捕捉されるように、慎重に選択されなければならない。なお、高次回折が存在する角度は、構造460を照明する為に使用される放射線の波長にも依存する為、センサ440上での像の生成を可能にする為には、波長とピッチの組み合わせを慎重に選択しなければならない。
【0063】
[00062] 実際的な状況では、構造600は、
図6に示されたようにウェーハ上に厳密に製造されるわけではない。実際的な実施形態では、構造600は、基板450上では、
図7の上半分に示された構造のようになりうる。メトロロジ装置400のセンサ440によって、像700が記録される。その像は、
図7の上半分に示された構造によく似ている。像700において既に示されているように、第1のフィーチャ712は、第2のフィーチャ722に対して変位しており、特に、構造600の理想的な状況に比べて変位している。水平に方向付けられたフィーチャ712、722について、
図7の左下部において、像700の一部分を拡大した。ここで、より詳細に示されているように、第1のフィーチャ712’は第2のフィーチャ722’に対して、距離OVL
yにわたって変位している。OVL
yは、y方向のオーバーレイ値である(x方向及びy方向は
図7の方向に対して定義されている)。像700はまた、垂直に方向付けられたフィーチャ742、732の間に変位があることを示している。
図7の右下に見られるように、変位がOVL
xで示されており、距離OVL
xはx方向のオーバーレイ値である。
【0064】
[00063]
図7では、例えば、対向する2つの、水平に方向付けられたフィーチャ712、722、712’、722’、或いは、互いに隣接する2つの、垂直に方向付けられたフィーチャ742、732の変位の分析に基づいてオーバーレイ値を算出することが可能であることが示されているが、実際的な実施形態では、同じ方向づけの隣接フィーチャのより多くのペアが使用される。例えば、水平に方向付けられたフィーチャの各ペアについて、オーバーレイ値を算出することが可能であり、算出した値を平均することが可能である。例えば、第1の層において水平に方向付けられたフィーチャと同相である第1の種類の波パターンを算出し、第2の層において水平に方向付けられたフィーチャと同相である第2の種類の波パターンを算出し、第1の種類の波パターンと第2の種類の波パターンの位相差に基づいてオーバーレイ値を算出することも可能である。
【0065】
[00064] 数ナノメートルのオーバーレイ値を測定しなければならない為、センサ440上の構造460の結像に対してメトロロジ装置400の光学系420の精度及び正確さが非常に高いことが重要である。理想的な光学系からのずれがほぼゼロであれば容認される。従って、光学系420のレンズ422、424の収差のずれ、更には光学系420全体の収差のずれが小さいことが好ましい。
【0066】
[00065] 算出システム470は、センサ440によって記録された像を受け取る。この像は、例えば、像700である。算出システム470はまた、像において期待される構造(例えば、
図6の理想的な構造600)についての情報を有してよく、この構造は像700において、例えば、パターン認識によって検出される。算出システム470によって適用されるパターン認識技術は、比較的大量のノイズを含む像において、又は信号対ノイズ比が比較的小さい像において、又はダイナミックレンジが比較的小さい像において、理想的な構造(例えば、
図6の構造600)とよく似た構造を検出することが可能であるような技術であってよい。算出システム470はまた、第1の層における第1のフィーチャから第2の層における第2のフィーチャへの移行がどこにあると予想されうるかについての情報を有してよい。この情報に基づいてそのような移行が像700において認識されてよく、それらの移行の場所においてオーバーレイ値が算出されてよい。算出システム470は、例えば、(例えば、構造712’、722’、742、732の)エッジを検出するエッジ検出システムを実装してよい。
【0067】
[00066]
図4に戻ると、光学系420には他の任意選択のフィーチャが存在してよい。光学系420は、波長フィルタ434を含んでよい。例えば、波長フィルタ434は、光源410とビームスプリッタ素子426との間に描かれているが、別の場所に配置されてもよいことに留意されたい。波長フィルタ434は、少なくとも光学系420の照明経路に存在することが考えられる。波長フィルタ434は、特定波長又は特定の波長範囲の放射線だけを透過させるように構成されている。更なる実施形態では、波長フィルタ434の動作は、波長制御信号に応じて制御可能であってよい。更に、光源410は類似の波長フィルタを有してもよい。別の実施形態では、波長フィルタ434は複数のフィルタを含んでよく、それらの中のフィルタを組み合わせることによって、相隔たる2つ以上の波長を透過させることが可能になる。特定の物質が特定の波長に対して不透明である。従って、構造460を照明する為に使用される波長(即ち、波長フィルタ434を透過する波長)の選択は、構造460において使用される材料、並びに、照明放射線が構造460の特定の層を透過するようにすべきかどうかに強く依存する。波長フィルタ434は、ある狭帯域の波長だけが波長フィルタ434を透過することを可能にするように構成されてよく、例えば、その狭帯域の波長の幅は20nm未満、又は10nm未満、又は5nm未満である。
【0068】
[00067] 特定の波長、又は特定の波長範囲の放射線で構造を照明することが有利な場合がある。基板450の材料は(従って構造460のフィーチャの材料も)、当たった放射線の散乱に強い影響を及ぼしうる。特定の波長を選択することにより、又は幾つかの波長を選択することにより、よりよい像をセンサ440上に取得することが可能である。更に、構造460が所与のピッチの繰り返し構造を有する場合には、センサ440に向かう伝搬において、少なくとも1つの高次回折が光学系420によって(例えば、前部レンズ424によって)捕捉可能であるように、照明放射線の波長が選択されてよい。言い換えると、繰り返し構造の照明波長及びピッチは、互いに対して調整される(且つ、光学系420の検出経路の開口数(NA)に対して調整される)。
【0069】
[00068] 別の実施形態では、光学系420は第1のポラライザ430を含み、これは、光学系420の照明経路に配置されている。第1のポラライザ430は、特定の偏光を有する放射線を透過させるように構成されている。第1のポラライザ430は、偏光制御信号に応じて透過可能な偏光を制御できる制御可能ポラライザでもある。
【0070】
[00069] 別の実施形態では、光学系420は第2のポラライザ432を含み、これは、光学系420の検出経路に配置されている。第2のポラライザ432は、特定の偏光を有する放射線を透過させるように構成されている。第2のポラライザ432は、別の偏光制御信号に応じて透過可能な偏光を制御できる制御可能ポラライザでもある。
【0071】
[00070] 基板に当たる放射線の偏光を制御すること、並びに散乱した放射線のどの偏光をセンサまで透過させるかを制御することが有利であろう。基板450の材料は(従って構造460のフィーチャの材料も)、異なる偏光の放射線を異なる様式で散乱させうる。構造460、更には構造460及び基板450の材料は、構造460に当たって散乱する放射線の偏光を変化させうる。それにより、特定の偏光で照明して、同じ偏光、又は別の特定の偏光だけをセンサに向けて透過させることによって、(例えば、コントラストが向上した)よりよい像をセンサ440上で取得することが可能になる。また、特定の波長の放射線と特定の偏光とを組み合わせて選択することで、センサ440上でよりよい像が得られることも観測されている。一実施形態では、構造460は、第1のポラライザ430によって決定される第1の偏光を有する放射線によって照明される。特定の構造460により、(例えば)オーバーレイに関する情報が、第1の偏光に垂直な偏光方向を有する放射線に存在することが分かる。そして第2のポラライザ432は、第1のポラライザ430を透過できる偏光方向に垂直な偏光方向を有する放射線だけを透過させる。一実施形態では、
図4に示されるように、少なくとも第2のポラライザ432が存在する場合には、特定の偏光方向の高次回折放射線だけがセンサ440に当たり、構造460の特性の算出は、特定の偏光方向の1つ以上の高次回折放射線にのみ基づいて行われる。一実施形態では、第1のポラライザ430及び/又は第2のポラライザ432の設定を、基板450上に存在する特定の構造460に対して最適化することで、(例えば、コントラストが向上した)よりよい像がセンサ440上で取得される。例えば、特定の構造460が特定の方向に繰り返し線を有する場合は、特定の偏光を有する照明放射線の散乱が最大になる可能性があり(任意選択で、高次回折への散乱が最大になる可能性があり)、特定の(別の)偏光の散乱放射線だけをセンサに向けて伝搬させることにより、得られる像のコントラスト及び/又は画質が最高になる可能性がある。
【0072】
[00071]
図4には更に、光源410が示されている。光源410は、メトロロジ装置400の一部であってよいが、(例えば、ガラス繊維及び/又は別のタイプの光ガイドによって)メトロロジ装置400に放射線を供給する独立した光源であってもよい。光源は、1つ以上の波長を有する放射線を発生させるように構成されており、その波長範囲は200nm~2000nm、又は任意選択で300nm~1000nm、又は任意選択で400nm~900nm、又は任意選択で400nm~700nmである。光源は、近赤外スペクトル範囲、例えば、750nm~1400nmの範囲の放射線を発生させるように構成されてよい。光源は、可視波長範囲、例えば、380nm~750nmの範囲の放射線を発生させるように構成されてよい。例えば、光源は、紫外線A波(315nm~400nm)、B波(280nm~315nm)、又はC波(100nm~280nm)のスペクトル範囲のうちの少なくとも1つの範囲の放射線を発生させるように構成されてよい。上述のように、特定波長の放射線が有用である場合があり、従って、放射線の1つ以上の波長を最適化することによって、センサ440上で十分高い画質の像を取得することが可能である。光源は、相隔たる2つ以上の波長の放射線を放射するように構成されてもよい。
【0073】
[00072] 構造460を照明する放射線に存在する電力量が多量の場合には、その量によって、センサが像を記録する為に必要とする時間が決まる。構造460を照明する放射線に存在する電力が大きいほど、多くの放射線がセンサに当たり、センサ440が像を記録する為に必要とする積分時間が短くなる。従って、光源410は、使用時には、50ワット超、又は任意選択で150ワット超、又は任意選択で250ワット超、又は任意選択で1000ワット超の電力を有する放射線を発生させるように構成されている。
【0074】
[00073] 一実施形態では、メトロロジ装置400は、プラズマベースのフォトン光源を使用してよく、例えば、レーザ駆動フォトン光源(LDPS)、又は他の、レーザ駆動光源として知られるフォトン光源を使用してよく、これは、それらの輝度が高いことによる。プラズマは、放電によるエネルギやレーザエネルギを印加することによってガス状媒体内に発生する。放射線のスペクトル分布は本質的に広帯域でも狭帯域でもよく、波長は、近赤外帯域、可視帯域、及び/又は紫外(UV)帯域にあってよい。参照によって完全な形で本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2011204265号及び国際公開第2016030485号には、レーザ駆動フォトン光源を含むプラズマベースの光源が開示されている。
【0075】
[00074] 光源の他の例として、コヒーレント白色光レーザ、コヒーレント離散レーザ(これは小さい波長範囲で放射される)、コヒーレント連続制御可能レーザ、コヒーレント光パラメトリック発振器(OPO)、インコヒーレントレーザ駆動光源(例えば、上述のもの)、及び/又はインコヒーレントフォトダイオードがある。なお、部分的にインコヒーレントな光源も同様に使用されてよい。
【0076】
[00075] なお、光源410は、光源制御信号に応じて波長範囲内で制御可能な波長の放射線を放射することが可能な制御可能光源であってもよい。
【0077】
[00076] 光源410は、波長範囲が比較的広い放射線を放射してよく、例えば、波長範囲が50nmより広いか、任意選択で100nmより広いか、任意選択で200nmより広い放射線を放射してよい。光源410は、波長範囲が比較的狭い放射線を放射するように構成されてもよく、この狭い波長範囲の幅は、例えば、20nm未満、又は10nm未満、又は5nm未満である。
【0078】
[00077]
図4では、照明放射線が1つだけ示されている。概略的に示されている、この単一放射線は、構造460上に特定のサイズのスポットとして伝搬及びフォーカスされた放射ビームの中心軸である。従って、図示されている-1次、+1次、及び0次の回折も、概略的な中心軸だけが示された放射ビームである。
図4のコンテキストでは、照明放射ビームの中心軸は、基板の上面にほぼ垂直な方向で構造460に当たる。
【0079】
[00078] 使用可能なメトロロジレシピでは、本出願に記載のメトロロジ装置の一実施形態を使用する測定の1つ以上のパラメータが指定される。一実施形態では、「メトロロジレシピ」という用語は、測定/メトロロジ装置自体の1つ以上のパラメータ、測定される構造(例えば、構造460)の1つ以上のパラメータ、又はその両方を包含する。
【0080】
[00079] このコンテキストでは、測定される構造460(「ターゲット」又は「ターゲット構造」とも呼ばれる)は、光学的に測定されるパターンであってよく、例えば、その回折が測定されるパターン、又は(例えば)センサ440に結像されるパターンであってよい。測定されるパターンは、測定用として特に設計又は選択されたパターンであってよい。ターゲットの複数のコピーが、基板450上の多数の場所に配置されてよい。例えば、オーバーレイの測定にメトロロジレシピが使用されてよい。一実施形態では、別のプロセスパラメータ(例えば、ドーズ、フォーカス、CD等)の測定にメトロロジレシピが使用されてよい。一実施形態では、結像されるパターンの層の、基板上の既存パターンに対するアライメントの測定にメトロロジレシピが使用されてよく、例えば、基板の相対位置を測定することによってパターニングデバイスを基板に対してアライメントすることにメトロロジレシピが使用されてよい。
【0081】
[00080] 一実施形態では、メトロロジレシピが測定/メトロロジ装置400自体の1つ以上のパラメータを含む場合には、測定自体の1つ以上のパラメータは、測定に使用される照明ビーム及び/又はメトロロジ装置に関連する1つ以上のパラメータを含んでよい。例えば、測定自体の1つ以上のパラメータは、照明放射線の波長、及び/又は照明放射線の偏光、及び/又は照明放射線の強度分布、及び/又は照明放射線の、基板450に対する照明角度(例えば、入射角、アジマス角等)、及び/又は回折/散乱放射線の、基板450上の構造460に対する相対方位、基板460/ターゲットの測定される点又はインスタンスの数、及び/又は測定される構造460/ターゲットのインスタンスの、基板450上の位置を含んでよい。測定自体の1つ以上のパラメータは、測定で使用されるメトロロジ装置の1つ以上のパラメータを含んでよく、これは、検出器の感度、開口数等を含んでよい。
【0082】
[00081] 一実施形態では、メトロロジレシピが、測定される構造460の1つ以上のパラメータを含む場合に、測定される構造460の1つ以上のパラメータは、1つ以上の幾何学的特性(例えば、構造460の少なくとも一部分の形状、及び/又は構造460の少なくとも一部分の方位、及び/又は構造460の少なくとも一部のピッチ(例えば、格子のピッチ(上部層の上部格子のピッチ、下部格子のピッチ、及び/又は下部格子のピッチを含む))、及び/又は構造460の少なくとも一部分のサイズ(例えば、CD)(例えば、格子のフィーチャのCD(上部格子及び/又は下部格子のフィーチャのCDを含む))、及び/又は構造460のフィーチャの区分(例えば、格子のフィーチャの、サブ構造への分割)、及び/又は格子の長さ又は格子のフィーチャの長さ)、及び/又は構造460の少なくとも一部分の材料特性(例えば、屈折率、消光係数、材料タイプ等)、及び/又は構造460の識別(例えば、あるパターンと別のパターンとの区別)等を含んでよい。
【0083】
[00082] メトロロジレシピは、(r1,r2,r3,...rn;t1,t2,t3,...tm)のような形式で表現されてよく、riは、測定/メトロロジ装置400の1つ以上のパラメータであり、tjは、測定される1つ以上の構造460の1つ以上のパラメータである。当然のことながら、n及びmは1であってよい。更に、メトロロジレシピは、測定の1つ以上のパラメータ、及び測定される1つ以上のパターンの1つ以上のパラメータを両方とも有することは必要ではなく、測定の1つ以上のパラメータだけを有していればよく、或いは、測定される1つ以上のパターンの1つ以上のパラメータだけを有していればよい。
【0084】
[00083] 比較的良好な像をセンサ440上に生成する為に、メトロロジ装置400は、基板450上の構造460に照明放射線をフォーカスさせてよい。メトロロジ装置400にはフォーカスサブシステムが設けられてよい。一実施形態では、メトロロジ装置400は、構造460内の様々な深度にフォーカスするように構成されてよい。光学系420は、例えば、レンズ424を動かして特定のフォーカスを取得するように配置されてよい。1つ以上のアクチュエータ480は、基板450を様々な方向に動かすことが可能であり、構造460を有する基板450を上下に動かすことにより、照明放射線を構造460の様々な深度にフォーカスさせることが可能である。メトロロジ装置400は、構造460内の様々な深度にフォーカスしたときに、センサ440で様々な像を記録するように構成されてよい。この様々な像は、算出システム470が構造460の関心対象特性を算出する為に使用してよい。算出システム470はまた、この様々な像の中から、関心対象特性の算出に最適な1つ以上の像を選択してよい。例えば、この1つ以上の像は、コントラストが所定レベルを超えていなければならないという要件に基づいて選択されてよい。
【0085】
[00084]
図5は、メトロロジ装置の別の実施形態500を概略的に表した図である。メトロロジ装置500はメトロロジ装置400とよく似ており、類似の、又は同じ実施形態を包含する。以下では相違点を説明する。
【0086】
[00085] メトロロジ装置500では、照明放射ビームは、構造460にほぼ垂直な角度では構造460に当たらず、基板450の表面の法線に対して特定の角度で当たる。
図5の例では、これの結果として、-1次回折が、基板450の上面にほぼ垂直な経路をたどり、-2次回折及び0次回折がそれぞれ法線に対して角度を有することになる。そのような構成では、0次回折がセンサ440に向けて伝搬されないように、ブロック素子528を光学系520内の別の場所に配置しなければならない。任意選択で、-2次回折も同様にブロックする為に、別のブロック素子528’が存在してよい。光学系520はまた、検出経路に円形アパーチャを有してよく、ブロック素子528、528’は、アパーチャが作成される素子の断面図であってよい。
【0087】
[00086] 構造460に垂直に当たらない照明放射ビームは、光源410を光学系520の照明経路の中心軸に対して変位させることによって取得可能である。光源から放射される放射ビームが比較的幅広であれば、光源に由来し、光学系520の照明経路の中心軸から離れた位置にアパーチャを有する照明瞳529を放射ビーム中に配置してよい。一実施形態では、照明瞳529は制御可能であってよく、光学系520の照明経路の中心軸に対するアパーチャの位置は、照明瞳制御信号に応じて制御されることが可能である。
【0088】
[00087]
図12は、照明瞳529の位置で使用可能な照明瞳1200及び1210の例示的上面を概略的に示す。照明瞳1200では、不透明プレート1202の中心から外れた位置に穴1204がある。不透明プレート1202の中心が照明経路の光軸と重なっていれば、照明放射線は、例えば、
図5で描かれた照明光線を中心に有する放射ビームになる。もちろん照明瞳1200は、照明瞳1210で示されているのと同様の構成で穴1204が2つあってもよい。
【0089】
[00088] 照明瞳1210は、不透明プレート1212に、
図12に示される形状で作られた2つの穴1214、1216がある。これらの個々の穴1214、1216は、照明瞳1210の中心に対して角度が90度オフセットしている。これにより、2つの照明ビームの伝搬が照明経路の中心光軸と重ならない。このことは、構造460が直交する別々の2つの方向から照明されるという結果をもたらし、2次元のオーバーレイ値を1回の測定捕捉で測定できるという利点を有しうる。
【0090】
[00089]
図5では、メトロロジ装置500の検出経路に沿って、別のタイプの瞳である検出瞳528’’が概略的に描かれている。例えば、検出瞳528’’は、瞳面、又は瞳面の共役面に設けられてよい。検出瞳528’’は、散乱放射線の1つ以上の高次回折を透過させるように配置されてよく、0次回折の透過をブロックするように配置されてよい。検出瞳528’’は、ブロック素子528の代わりに、又はブロック素子528に加えて使用されてよい。例えば、
図12では、検出瞳1220の例示的上面が示されており、これは、不透明プレート1222及び穴1234を含み、これによって、例えば、
図5の構成で使用された場合には、高次回折は透過可能であり、0次回折はブロックされることが可能である。一代替構成として検出瞳1230が示されており、これは、不透明プレート1232と2つの穴1234及び1236とを含む。なお、当業者であれば、(例えば、特定の照明瞳との組み合わせで)特定の高次回折を透過させ、0次回折をブロックすることに関して特定の利点を有する代替実施形態を見いだすであろう。
【0091】
[00090] 照明瞳529又は検出瞳528’’は、可撓及び/又は制御可能なタイプの瞳で形成されてもよい。
図13(a)及び13(b)、並びに
図14(a)及び14(b)に例を示す。
図13(a)、13(b)、14(a)、及び14(b)の例は、メトロロジ装置400、500の例において、例えば、照明経路及び/又は検出経路において使用されてよい。装置における可能な位置は、メトロロジ装置500の照明瞳529で、又はメトロロジ装置500の検出瞳528’’で概略的に示されている。なお、
図13(a)、13(b)、及び14(a)の例は放射線の透過に基づいており、従って、
図5に示された位置は、これらの例に直接当てはまる。
図14(b)の例は反射に基づいており、従って、メトロロジ装置は、照明経路及び/又は検出経路が照明瞳及び/又は検出瞳において反射されるように修正されなければならない。
図13(a)、13(b)、14(a)、及び14(b)の例は全て、可撓瞳の例であり、この場合、瞳が特定の形状になるように幾つかの素子を制御することが可能である。これらの例によって、特定の測定の要件に応じて選択可能な、様々な特定形状を生成することが可能になる。
【0092】
[00091]
図13(a)は可撓瞳構成1300を概略的に示しており、そこには2つのホイール1300、1320があり、それらのホイールの不透明材料の中に様々な形状のアパーチャ1311...1314、1321...1324がある。使用時には、ホイール1320は、ホイール1310の前方又は後方の、破線の円1320’で示された場所に位置する。ホイール1300、1320は、制御信号に応じて回転可能である。第1のホイール1310の特定の位置と第2のホイールの特定の位置とを選択することにより、可撓瞳構成1300によって特定の形状のアパーチャが生成される。
図13(a)の例では、使用時に、アパーチャ1321はアパーチャ1314の前方にあってよい。使用時のアパーチャ1321の位置は、矩形1321’によって概略的に示されている。この図の面に垂直な方向から見ると、アパーチャ1314とアパーチャ1321’が連結したものは、この例において生成された、特に選択された形状の瞳である。なお、
図13(a)の例では、限られた数の異なる形状の、限られた数のアパーチャだけが与えられている。実際的な実施形態では、ホイールは、より様々な形状の、更により多くのアパーチャを有してよく、それによって、生成される瞳の特定の形状に対して、より細かい制御が行われてよい。
【0093】
[00092]
図13(b)は、可撓瞳構成1330を概略的に示す。当てはまる限りでは、
図13(a)の可撓瞳構成1300について述べられた特性は、
図13(b)の可撓瞳構成1330にも当てはまる。可撓瞳構成1330は、不透明材料の2つの可動ストリップ1340、1350を含み、可動ストリップ1340、1350は、様々な形状及び/又はサイズの様々なアパーチャ1341...1346、1451...1354を含む。第1のストリップ1340の特定アパーチャ1341...1346を、第2のストリップ1350の特定アパーチャ1351...1354の後方又は前方に動かすことにより、特定の制御可能な形状の瞳を形成することが可能である。
図13(b)の例の場合、読み手が見ている方向では、第2のストリップ1350は第1のストリップ1340の手前に置かれていて、アパーチャ1351はアパーチャ1345の手前にある。図の面に垂直な方向から見ると、アパーチャ1351、1345の連結によって瞳像の形状が画定される。
【0094】
[00093]
図14(a)は、可撓瞳構成の第3の実施形態1400を概略的に示す。当てはまる限りでは、
図13(a)の可撓瞳構成1300及び
図13(b)の可撓瞳構成1330について述べられた特性は、
図14(a)の可撓瞳構成1400にも当てはまる。可撓瞳構成1400は、プレート1410、又は別の形状の不透明材料を含み、プレートにはアパーチャ1420が設けられており、アパーチャ1420は、可撓瞳構成1400において作成可能な最大限のアパーチャを画定している。可撓瞳構成1400は更に、放射線ブロック素子1440、1441、1442を含み、これらは複数のガイド構造1430のいずれかに沿って動くことが可能である。放射線ブロック素子1440、1441、1442のうちの1つ以上が、制御信号に基づいて、ガイド構造1430のいずれかに沿って、アパーチャ1420の前方の特定位置、又はアパーチャ1420の前方ではない特定位置まで動くことが可能である。アパーチャ1420の前方の特定位置に特定の放射線ブロック素子1441を配置することにより、アパーチャの一部分では放射線が透過できなくなり、有効な残り部分のアパーチャは、特定形状のより小さいアパーチャに整形される。放射線ブロック素子1440、1441、1442は、不透明材料の箱型素子であってよい。別の実施形態では、放射線ブロック素子1440、1441、1442は、球形又は楕円体形状であってよく、或いは、プレート1410に平行に配置された比較的薄いプレート状の素子であってよい。放射線ブロック素子1440、1441、1442は、それらが動いて(例えば、アパーチャ1420の前方で)互いに近接したときに部分的にオーバーレイするように成形されてよい。例えば、放射線ブロック素子1440、1441、1442は、プレート1410によって画定された面に対して傾斜した形態で配列されるストリップであってよい。ガイド構造1430は、プレート1410によって画定された面に平行に配列された細いワイヤ、又は薄いストリップであってよい。放射線ブロック素子1440、1441、1442は、機械的な力によって(例えば、アクチュエータによって)、或いは電気的又は磁気的な力によって動かされてよい。
【0095】
[00094]
図14(b)は、可撓瞳構成の第4の実施形態1450を概略的に示す。当てはまる限りでは、既述の可撓瞳構成1300、1330、1400について述べられた特性は、
図14(b)の可撓瞳構成1450にも当てはまる。可撓瞳構成1450は、支持構造1470上に設けられた制御可能なマイクロミラー1451...1456のアレイを含む。制御可能なマイクロミラー1451...1456のアレイにおいては、マイクロミラー1451...1456のグループ、及び/又は各個別マイクロミラー1451...1456が、当たった放射線1460が特定の方向(例えば、第1の方向d1又は第2の方向d2)に反射されうるように制御可能である。一実施形態では、マイクロミラーは、当たった放射線を3つ以上の方向に制御可能に反射するように構成されてよい。
図14(b)の例では、幾つかの放射線1460(例えば、光線)が概略的に示されている。放射線1460は、可撓瞳構成1450が照明経路に設けられている場合には光源から発せられてよい。
図14(b)の例では、マイクロミラー1452、1456は、当たった放射線を第2の方向d2に反射するように制御され、マイクロミラー1453...1455は、当たった放射線を第1の方向d1に反射するように制御される。可撓瞳構成1450が照明経路に設けられている場合、且つ、第1の方向d1に反射された光が照明に使用される場合、可撓瞳構成1450は、光を第1の方向d1に反射する全てのマイクロミラー1453...1455によって画定される(仮想)瞳を有する。
【0096】
[00095] なお、
図14(b)の実施形態は、空間光変調器と呼ばれることも多い。空間光変調器の別の実施形態は、メトロロジ装置400、500の可撓瞳構成として使用されてもよい。そのような空間光変調器の別の実施形態として、一種の液晶ディスプレイ(LCD)があり、これは、透過状態、又は放射線ブロック状態、又は反射状態になるように制御可能な画素のアレイを有する。LCD空間光変調器は、透過モード又は反射モードで、可撓及び/又は制御可能な瞳として使用されてよい。
【0097】
[00096]
図6は、基板上に製造可能であって、メトロロジ装置の実施形態によって検査可能な、幾つかの構造を概略的に表したものである。構造600については、ここまでで既に説明した。構造650は、第1の領域610と第2の領域620とが、部分的に重なり合っていて、y次元において互いに対して変位している構造である。構造650を回転させることで大きな構造を形成することも可能であり、例えば、構造600とよく似た大きな構造を形成することも可能である。構造660は構造650とよく似ており、相違点は、y次元の変位がないことである。
【0098】
[00097] 上述のように、
図7の像700は、メトロロジ装置400の算出システム470によって処理されてよい。算出システム470は、像700中の関心対象領域を検出するように構成されてよい。関心対象領域は、更なる処理に使用される、像中の領域であって、例えば、基板450の構造460のオーバーレイ値又は別の特性の算出に使用される領域である。例えば、領域790は、所定のパターン、又は少なくとも、期待されるパターンによく似た所定のパターンを含みうることで、関心対象領域として識別される。算出システム470は更に、分析用として、より小さい関心対象領域を特定するように構成されてよい。例えば、
図7の左下に示されるように、像中の別の関心対象領域790’が特定されてよい。この例では、別の関心対象領域790’は、y次元のオーバーレイ値を算出する為の関心対象領域である。更に別の例では、
図7の右下に示されるように、更に別の関心対象領域790’’が、x次元のオーバーレイ値を算出する為の関心対象領域である。なお、センサ440上の像が高次回折(0次回折より高次の回折)にのみ基づく場合、関心対象領域790、790’、790’’は、構造460によって散乱された放射線のうちの高次回折放射線にのみ基づく。例えば、
図4のコンテキストで説明されたように、ブロック素子428が制御可能であってよい場合で、且つ、0次回折がセンサ440に当たるかどうかが制御可能である場合、関心対象領域790、790’、790’’は、0次回折及び高次回折の放射線が当たった結果である像に基づいて特定されてもよい。
【0099】
[00098]
図8は、メトロロジ装置の第3の実施形態800を概略的に表した図である。メトロロジ装置800は、
図4及び5のメトロロジ装置400及び500とよく似ている。以下では相違点を説明する。メトロロジ装置400及び500の実施形態は、メトロロジ装置800と組み合わされてよい。
【0100】
[00099] メトロロジ装置800は別の光学系を有する。ビームスプリッタ426の代わりにミラー828が設けられている。ミラー828は、光源410から発せられた放射線を、基板450の上面にほぼ垂直な角度で、基板450上の構造460に向けて反射するように構成されている。構造から戻る鏡面(0次)回折は、やはり基板450の上面にほぼ垂直な経路をたどり、やはりミラー828に当たって、反射して光源のほうに戻る。そのようなミラー828、又はアライメントツール内の同様の素子の更なる詳細が、参照によって完全な形で本明細書に組み込まれている国際公開第2014/026819A2号(例えば、
図3、ミラー223)、同第2014/056708A2号、同第2014/068116A1号、同第2013/152878A2号に示されている。なお、
図5のメトロロジ装置500と類似の構成では、ブロック素子528が、0次回折をセンサ440に向かわない方向に反射するミラーに置き換えられてよい。任意選択で、
図5のメトロロジ装置500がブロック素子528の代わりにそのようなミラーを有する場合、0次回折は、0次回折の情報を記録する為に使用されてよい別のセンサに向けて反射されてよい。0次回折の情報を記録することの更なる例が、
図9のコンテキストで与えられる。
【0101】
[000100]
図9は、メトロロジ装置の第4の実施形態を概略的に表した図である。メトロロジ装置900は、
図4、5、及び8のメトロロジ装置400、500、800とよく似ている。以下では相違点を説明する。メトロロジ装置400、500、及び800の実施形態は、メトロロジ装置900と組み合わされてよい。
【0102】
[000101] 光学系920は、メトロロジ装置400の光学系420とは異なる。ブロック素子428の代わりに、0次回折をセンサ940に向かわない方向に反射するミラー928が設けられている。一実施形態では、0次回折は、別のセンサ942に向けて反射される。
【0103】
[000102] 別のセンサ942は、0次回折放射線の強度を検知する強度センサであってよい。これは、基準信号として使用されてよく、例えば、センサ440で測定される放射線強度の正規化に使用されてよい基準信号として使用されてよい。従って、別のセンサ942は診断機能を有してよく、例えば、光源の動作に関する診断機能を有してよい。
【0104】
[000103] 別のセンサ942は、瞳面、又は瞳面の共役面に配置されてよい。そして、0次回折の瞳像が記録されてよく、この瞳像は、構造460の関心対象特性を算出する為の追加入力光源として使用されてよい。瞳像は、基板450の構造460の幾何学的構造を算出する再構築プロセスにおいて使用されてよい。また、構造460次第では、瞳像内で使用可能なオーバーレイ値情報があってよいことも知られている。
【0105】
[000104] 光学系920の別の実施形態では、ミラー928から別のセンサ942への経路に別のレンズ926もあり、別のレンズ926は、センサ942上に構造460の明視野像を形成する。別のセンサ942は、明視野像を記録するように構成されてよい。明視野像は、基準として使用されてよく、又はアライメントの為に使用されてよく、又はオーバーレイ値の大まかな推定に使用されてよく、又はその他に使用されてよい。例えば、(本明細書に組み込まれた文書のうちの1つ以上に記載されているように)大まかなオーバーレイ値は、当該技術分野において知られている技術に基づいて明視野像内で算出される。大まかなオーバーレイ値は、プロセスが規格外かどうかを判断する為に使用されてよい。大まかなオーバーレイ値はまた、より正確な値を算出しなければならないかどうかを、センサ440上に形成された(暗視野)像に基づいて判断する為に使用されてよい。別のセンサ942は、算出システム470と結合されてもよく、或いは別の算出システムと結合されてよい。別のセンサ942がアライメントの為に使用される場合には、算出システムは、その構造が照明スポット内にあるかどうかを判定する為に、記録された像の中の期待される構造を認識しようとすることになる。算出システムは、基板を動かすように動作可能なアクチュエータと結合されてよく、そしてメトロロジ装置は、反復移動検出アルゴリズムによって構造を探すように動作可能である。
【0106】
[000105] 別のセンサ942は更に、算出システム470と協働して、関心対象領域(例えば、
図7の関心対象領域790、790’、790’’)を検出する。
【0107】
[000106] 別のセンサ942によって記録される情報は、0次回折の瞳像、又は0次回折像に基づく構造460の像であって、光学系920の一部分の特性の検出に使用されてよい。例えば、収差が検出されてよく、検出された収差は、例えば、センサ440によって記録された像を補正する為に算出システム470によって使用されてよい。基板450上に基準構造があってもよく、或いは、基板450を支持するウェーハテーブル上に基準ターゲットがあってよく、これらは、光学系920の特性(例えば、光学系920の光学素子の収差)の良好な検出を可能にするように設計されている。
【0108】
[000107] 任意選択で、ミラー928の位置は制御可能である。第1の位置では、ミラー928が0次回折を(例えば)センサ942に向けて反射する。第2の位置では、ミラー928’が、センサ440に向かう0次回折の伝搬をブロックしない。そのように制御可能なミラーは、メトロロジ装置900が暗視野結像と明視野結像とを切り替えることが可能であることを可能にする。
図9では、ミラー928が軸を中心に回転可能であることが示唆されている。或いは、ミラー928は、光学系920の検出経路の完全に外側にある場所に向かって平行移動によって動かされる。
【0109】
[000108]
図10は、オーバーレイ値を算出する為に基板上に製造される構造を概略的に表している。
【0110】
[000109]
図10の左上にはボックスインボックス構造1000が示されており、これは、第1の層に第1の構造1002を含んでよく、第2の層1004に第2の構造を含んでよい。第1の構造1002及び第2の構造1004は、正方形であってよく、或いは矩形形状であってよい。別の実施形態であっても、それらは三角形、円形、又は楕円形であってよい。図示された構造1000は、理想的な製造条件の下で(例えば、
図1のリソグラフィ装置を使用して)製造可能な構造である。理想的な製造条件は、例えば、オーバーレイエラーがないことに関連する。更に、実際的な実施形態では、基板450上に製造された構造1002、1004はコーナーに丸みが付いていてよいことに注意されたい。構造1000には更にドットが示されており、これは、第1の構造1002の重心1003を示しており、且つ、第2の構造1004の重心1005を示している。構造1000にはオーバーレイエラーがない為、重心1003、1005は互いに重なり合っている。なお、明確さの為、重心を表すドットは、基板450上の構造460には示されておらず、この図では重心を概略的に示す為にのみ描かれている。実際的な実施形態では、算出システムは、既知の方法又はアルゴリズムにより、記録された像において重心を捜す。
【0111】
[000110] 構造1010において示されるように、製造プロセスにおいてオーバーレイエラーが発生する可能性があり、これは、第1の構造1002’に対する第2の構造1004’の変位によって検出可能であり、従って、第1の構造1002’の重心1003’の、第2の構造1004’の重心1005’に対する変位によっても検出可能である。重心1003’、1005’間のx次元の距離がオーバーレイ値OVLxである。重心1003’、1005’間のy次元の距離がオーバーレイ値OVLyである。別の実施形態では、算出システム470は、構造1002’、1004’のコーナーをパターン認識によって見つけるように動作可能であり、それらのコーナーの間の変位がオーバーレイ値の算出のベースになりうる。
【0112】
[000111] 構造1020は、オーバーレイ値の算出に使用可能な別の構造を表している。構造1020は、バーインバー構造であり、第1の層に細長い矩形の第1の構造1022を含み、第2の層に細長い矩形の第2の構造1024を含む。同じハッチングの構造は全て、同じ層に製造される。図示された構造1020は、理想的な製造条件の下で製造される。なお、実際的な実施形態では、バー1022、1024のコーナーに丸みが付いていてよく、直線の端部が短くなっていてよい。x次元のオーバーレイ値は、垂直バー間の変位を分析することによって検出可能であり、y次元のオーバーレイ値は、水平バー間の変位を分析することによって検出可能である。構造1000、1010の例によれば、オーバーレイ値は、第1の構造1022の重心の、第2の構造1024の重心に対する変位を検出することによっても算出可能である。
【0113】
[000112] 任意選択で、第2の構造1024のプリント/製造に使用されるプリンティングデバイス(例えば、レチクル等)上に、第2の構造1024のプリントをアシストするサブレゾリューションアシストフィーチャ1025、1025’が存在してよい。なお、サブレゾリューションアシストフィーチャ1025、1025’は、一般に、基板450上にプリントされず、基板450上の構造460に存在しない。
【0114】
[000113] 構造1030は、幾つかの十字形構造1032、1032’、1034、1034’を含む。第1の十字形構造1032、1032’は第1の層に製造され、第2の十字形構造1034、1034’は第2の層に製造される。同じハッチングの構造は全て、同じ層に製造される。図示された構造は、製造条件が理想的であれば基板450上に現れるべき構造である。なお、実際的な実施形態では、構造1032、1032’、1034、1034’のコーナーに丸みが付いていてよく、直線の端部が短くなっていてよい。製造条件が理想的でない場合には、第1の十字形構造1032、1032’は、第2の十字形構造1034、1034’に対して変位している。様々な次元のオーバーレイ値を取得することにより、十字形構造1032、1032’、1034、1034’のうちの2つ以上の間の特定の変位を分析することが可能である。例えば、y次元のオーバーレイ値は、第1の十字形構造1032の、第2の十字形構造1034に対する変位距離を算出することにより、容易に算出可能である。例えば、x次元のオーバーレイ値は、第1の十字形構造1032’の、第2の十字形構造1034’に対する変位距離を算出することにより、容易に算出可能である。なお、構造1030のコンテキストでは、構造1030の製造に使用されるパターニングデバイス(レチクル等)は、第1及び第2の十字形構造1032、1032’、1034、1034’のプリントをアシストするサブレゾリューションアシストフィーチャを含んでよい。第1及び第2の十字形構造1032、1032’、1034、1034’の直線に近接して、1025、1025’に類似のフィーチャが存在してよい。
【0115】
[000114] オーバーレイ値の算出に使用可能な他の多層構造は、例えば、参照によって完全な形で本明細書に組み込まれているMike Adel, et al,“Metrology, Inspection, and Process Control for Microlithography XXII”, Proceedings of SPIE, Vol. 6922, paper 692202, 2008、“Diffraction order control in overlay metrology: a review of the roadmap options”の
図4に開示されている。
【0116】
[000115]
図11は、ターゲットの実施形態の小区分を概略的に表した図である。
図11の上部には可能なターゲット1100が示されており、これは、異なる層間のオーバーレイの算出に使用可能である。図示されたターゲット1100の絵は、理想的な状況下で、前述のメトロロジ装置のセンサ440上の像として見える絵である。基板450上の構造460は様々であってよく、照明特性及び検出特性に応じて、
図11の上部に示されているターゲット1100の像を取得することが可能である。例えば、
図6、7、及び10によれば、異なるハッチングで描かれたフィーチャは、基板450上の構造460の異なる層のフィーチャに関連する。
【0117】
[000116] 一般に、このアイディアは、基板450上の構造460が。可視である(及び/又は「空間」になっていて不可視である)フィーチャに関して、より小さいフィーチャを幾つか有してよいというものである。これは、多くの場合、「フィーチャの小区分」と呼ばれる。後述されるように、「空間」としてターゲット1100に存在する領域は、比較的小さいフィーチャを有してよく、それらは、例えば、個々の小さいフィーチャであって、センサ440上では不可視である(例えば、個々の線のそれぞれは、センサ440によって記録された像においては不可視である場合がある)。小区分は、ターゲット1100の様々な部分の間のコントラストに作用するように使用されてよい。従って、小区分は、センサ440上の像に作用しうる。
【0118】
[000117]
図11の中程の左側には、小区分の第1の実施形態1120が示されている。例えば、ターゲットのフィーチャ1112、1112’は、線の密な構成1122、1122’として基板上に比較的小さいピッチで存在するように示されている。ターゲット1100のフィーチャ1112と1112’の間の空間にも、何本かの比較的狭い線の構成1123、1123’が、構成1122、1122’のピッチより大きいピッチで存在してよい。構成1123、1123’は、構成1122、1122’と異なる様式で光を散乱させる為、センサ440上には異なる様式で結像される。
【0119】
[000118]
図11の下部には、小区分の第2の実施形態1130が示されている。ターゲット1100のフィーチャ1112、1112’は、構成1132、1132’として基板上に存在してよく、これは、縦線の密なパターンを特定のピッチで有する。ターゲット1100のフィーチャ1112と1112’の間の空間は、構成1133、1133’として基板上に存在してよく、これは、横線の密なパターンを特定のピッチで有する。具体的には、この小区分1130を有する、基板上の構造が、特定の偏光の放射線で照明された場合、それらの構成の1つが他の構成より多くの光を散乱させうる。更に、構成1132、1132’の高次回折が、図の上部に見られるように、構成1133、1133’の高次回折とは別の方向を有する。このように高次回折の方向が異なることにより、前述のメトロロジ装置の光学系において、異なる2つの構成のうちの一方の高次回折が特定の検出瞳によってブロックされうることが可能になる。
図5及び/又は
図12のコンテキストで検出瞳の実施形態を説明してきた。一般に、この形式の小区分は、(例えば)センサ440上に形成される像において、構造の特定の領域を、構造の他の領域と区別する為に、異なる方向にフィーチャが配列された領域を有する。
【0120】
[000119]
図11の中程の右側には、小区分の第3の実施形態1140が示されている。この構造では、全てのフィーチャの間のピッチが等しいが、線の幅が細くなって太くなって細くなって、と変動している。その結果として、第1の領域1142、1142’があり、それらはセンサ440上にフィーチャとして結像されることが可能であり、そして、第2の領域1143、1143’があり、それらはセンサ440上にフィーチャとして結像されない可能性がある。この形式の小区分では、線の幅は特定のパターン又は関数によって変調される。
【0121】
[000120] なお、小区分の上記の例1120、1130、1140では、小区分は、ターゲットの部分又は領域ごとに単一次元で実施されている。
図11の右下では、別の例において小区分が2次元で実施可能であることが示されている。例えば、第3の実施形態1130において示されている、1133’の小区分を有する小区分の領域は、比較的小さい横線から成る。別の例では、小区分の比較的小さいフィーチャは、1133’’に示されるような、x次元及びy次元の小さなフィーチャの繰り返しパターンであってよい。例えば、この比較的小さい横線は、2次元グリッド構造で配置される比較的小さい矩形フィーチャに細分されてよい。小区分の例1120、1130、1140の全てにおいて、図示された各線は、より小さな線区分に細分されてもよい。
【0122】
[000121] 小区分を作成することは、基板450上のターゲット1100に対するプロセス効果の間の相関を高めること、並びに基板450上の生成物/インダイ構造に作用するプロセス効果の間の相関を高めることに有用でありうる。言い換えると、ターゲットは、生成物/インダイ構造をより忠実に表す。更に、設計ルール要件として、線が太くなりすぎないようにすること、及び/又は基板450上に比較的大きい空白領域ができないようにすることが必要である。前述のように、小区分は、ターゲットの様々な部分/領域の間のコントラストに作用するように使用されてもよい。小区分は、ターゲットの部分/領域の回折効率に作用する。それによって小区分は、(例えば)センサ440上に形成された像におけるターゲットの様々な部分/領域の間のコントラストに作用する。
【0123】
[000122] 小区分1120、1130、1140においては、散乱効率が相対的に高くなるように、ピッチ、線幅、及び線の相対方位が選択されてよい。言い換えると、ピッチ、線幅、及び線の相対方位は、散乱効率が所定閾値を上回るように選択される。それによって、相対的に多量の照明放射線が散乱されて高次回折になって、センサ440に当たる放射線の量が相対的に多くなる。更に、ピッチ、線幅、及び線の相対方位は、センサ440によって取得される像の光学コントラストが相対的に大きくなるように選択されてよい。光学コントラストが相対的に大きいことは、センサ440によって取得された像から相対的に正確なオーバーレイ値を抽出することに役立ちうる。
【0124】
[000123] 小区分1120、1130、1140は、別々の原理に基づく小区分の例である。特定のターゲット1100においては、様々なタイプの小区分が組み合わされてよい。当業者であれば、示された原理の幾つかを2次元に適用することも可能であり、これは、例えば、小区分1120内に更にy次元の小区分を作成することによって可能である。
【0125】
[000124]
図6及び
図11の例の説明では、ターゲット600、650、660、1100が、ウェーハ上に製造された3d構造の第1の層に構造612、1112を有し、ウェーハ上に製造された3d構造の第2の層に構造622を有するものとしている。しかしながら、それらの構造が別々の層に設けられることは必須ではない。それらは、ウェーハ上に製造された3d構造の1つの層に位置してもよいが、それらは、同じリソグラフィステップでは製造されない。例えば、ダブルパターニング又はリソ-エッチング-リソ-エッチングプロセスにより、各リソグラフィステップの間に、3d構造の同じ層に異なる構造を製造することが可能である。これらの異なるリソグラフィステップの間に製造された構造は、アライメントエラーの結果として、互いに対して変位している可能性があり、従って、構造間にはオーバーレイエラーが存在する可能性がある。従って、ターゲット600、650、660、1100の製造が、第1のリソグラフィステップで構造612、1112を作成し、第2のリソグラフィステップで構造622を作成することによって行われる場合は、ターゲット600、1100を使用して、2つのリソグラフィステップを使用した結果であるオーバーレイエラーを測定することも可能である。この2つのリソグラフィステップは、構造を別々の層に製造することに使用されてよく、同じ層に製造することにも使用されてよい。なお、このことは、
図10のターゲット1020、1030にも当てはまりうる。
【0126】
[000125]
図15は、ターゲットの別の実施形態1500を概略的に示す。ターゲット1500は、ターゲット600、1100と類似の構造であり、当てはまる限りでは、ターゲット600、1100の説明された特性は、ターゲット1500にも当てはまりうる。
図15では、破線のボックスが示されている。これらのボックスは構造のグループである。破線は、プリントされた基板上には存在せず、どの構造がグループに対応するかを示す為にのみ使用されている。ターゲット1500は、4つの構造グループ1510、1520、1530、1540を有する。2つの構造グループ1510、1540は、第1の次元のオーバーレイエラーを測定する為に使用されてよく、他の2つの構造グループ1520、1530は、第2の次元のオーバーレイエラーを測定する為に使用されてよい。前述のメトロロジ装置で作成された像からオーバーレイエラーを算出する原理については、例えば、
図7のコンテキストで説明されている。特定の1つの構造グループ1510についてのみ、サブ構造1511、1512、1513が示されている。他の構造グループ1520、1530、1540においては、後述されるように、サブ構造1511、1512、1513のハッチングと同じハッチングを有するサブ構造は、サブ構造1511、1512、1513の同じ特性を有する。
【0127】
[000126] サブ構造1511、1512、1513は、異なるリソグラフィステップで製造される。これらは、ウェーハ上に製造されている3d構造の同じ層に存在してよい。これらは、ウェーハ上に製造されている3d構造の別々の層に存在してもよい。また、2つのタイプのサブ構造1511、1512、1513が同じ層にあって、第3のタイプのサブ構造1511、1512、1513が別の層にあってもよい。構造1511が第1のリソグラフィステップで製造されるものとし、構造1512が第2のリソグラフィステップで製造されるものとし、構造1513が第3のリソグラフィステップで製造されるものとすれば、ターゲット1500は、第1のリソグラフィステップと第2のリソグラフィステップとの間のオーバーレイエラー、第2のリソグラフィステップと第3のリソグラフィステップとの間のオーバーレイエラー、更には第1のリソグラフィステップと第3のリソグラフィステップとの間のオーバーレイエラーを算出する為に使用されてよい。ターゲット1500を使用すると、複数のオーバーレイエラーを1回の測定ステップで測定することが可能であるが、ターゲット600を使用する場合は、少なくとも2つのターゲットと2回の測定ステップが必要であった。従って、ターゲット1500は、スピードの利点があり、更に、メトロロジターゲットで使用されるウェーハ上の空間が小さくなる。
【0128】
[000127] なお、ターゲット1500の例では、3つのタイプのサブ構造1511、1512、1513が示されている。もちろん、2つ又は3つより多くのタイプのサブ構造を設けて、1つのターゲットで、より多くの層及び/又はより多くのリソグラフィステップの間のオーバーレイエラーを測定できるようにすることも可能である。
【0129】
[000128] 更にまた、1つの層に別々の構造を製造する為にリソグラフィステップを直接使用せずに他のウェーハ処理ステップを使用する場合には、様々なタイプのサブ構造1511、1512、1513を使用して、特定のウェーハ処理ステップ、又は(任意選択でリソグラフィステップと組み合わされる)異なる処理ステップの組み合わせによって引き起こされるオーバーレイエラーを測定することが可能である。
【0130】
[000129] 以下の番号付けされた各条項において、更なる実施形態を開示する。
1.基板上の少なくとも1つの構造に関連する関心対象特性を算出するメトロロジ装置であって、
センサに当たる放射線の特性を検出するセンサと、
光源から受け取った放射線で少なくとも1つの構造を照明するように構成された光学系であって、少なくとも1つの構造によって散乱された放射線を受け取ることと、受け取った放射線をセンサまで伝搬させることと、を行うように構成された光学系と、
を含むメトロロジ装置。
2.光学系は、光源から基板上の構造までの照明経路と、基板上の構造からセンサまでの検出経路と、を含み、任意選択で、照明経路の一部分が検出経路と重なり合う、条項1に記載のメトロロジ装置。
3.
センサは光学系の像面に配置されるか、像面の共役面に配置され、
光学系は少なくとも1つの構造をセンサ上に結像するように構成されており、
任意選択で、構造のフィーチャが、センサ上に形成された像において個別に識別されることが可能である、
条項1及び2の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
4.光学系は、散乱した放射線の0次回折放射線の、センサに向かう伝搬を阻止するように構成されている、先行する条項の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
5.光学系は、散乱した放射線の0次回折の、センサに向かう伝搬をブロックするブロック素子を含む、条項4に記載のメトロロジ装置。
6.ブロック素子は第1の位置において制御可能であり、第1の位置では、ブロック素子は、散乱した放射線の0次回折の、センサに向かう伝搬をブロックするように動作可能であり、ブロック素子は第2の位置において制御可能であり、第2の位置では、ブロック素子は、散乱した放射線の0次回折の、センサに向かう伝搬をブロックしない、条項4に記載のメトロロジ装置。
7.ブロック素子は、0次回折をセンサに向かわない方向に反射するミラーである、条項5及び6の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
8.ミラーは0次回折を別のセンサに向けて反射し、任意選択で、別のセンサ上に構造の明視野像を生成する為に、ミラーと別のセンサとの間に結像レンズが設けられる、条項7に記載のメトロロジ装置。
9.関心対象特性は、基板上の第1の層と第2の層との間のオーバーレイ値であり、少なくとも1つの構造は、第1の層及び第2の層にフィーチャを含む、先行する条項の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
10.
少なくとも1つの構造が、第1の層の第1の領域にフィーチャの繰り返し構造を含むか、
少なくとも1つの構造が、第2の層の第2の領域にフィーチャの繰り返し構造を含むか、
任意選択で、第1の層におけるフィーチャのピッチが、第2の層におけるフィーチャのピッチとほぼ同じであるか、
のうちの少なくとも何れかである、条項9に記載のメトロロジ装置。
11.
基板を上から見て、第1の領域及び第2の領域が少なくとも部分的にでも重なり合っていないか、
第1の領域及び第2の領域が互いに隣接しているか、
基板を上から見て、第1の領域及び第2の領域が重なり合っていないか、
のうちの少なくとも何れかである、条項10に記載のメトロロジ装置。
12.
算出システムを更に含み、算出システムは、
センサ上に記録されている像を表す信号をセンサから受け取るように構成されており、
基板の第1の層にあるフィーチャの、基板の第2の層にあるフィーチャに対する変位であって、像に基づいて算出される変位に基づいて、オーバーレイ値を算出するように構成されている、
先行する条項の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
13.光学系は1つ以上のレンズを含み、1つ以上のレンズのうちの少なくとも1つのサブセットが、光源からの受け取った放射線を基板上の1つのスポットにフォーカスさせるように構成されており、レンズのうちの少なくとも別のサブセットが、少なくとも1つの構造によって散乱された放射線をセンサまで伝搬させるように構成されている、先行する条項の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
14.1つ以上のレンズは、少なくとも1つの構造をセンサ上に結像するように構成されている、条項13に記載のメトロロジ装置。
15.1つ以上のレンズは収差が小さい、条項13及び14の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
16.光学系は、開口数が0.5より大きく、又は任意選択で0.7より大きく、又は任意選択で0.9より大きい、先行する条項の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
17.光学系の開口数が、散乱放射線の±1次回折の少なくとも一方を捕捉してセンサまで伝搬させるのに十分な大きさである、先行する条項の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
18.光源を更に含む、先行する条項の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
19.光源は、波長範囲が200nm~2000nm、又は任意選択で300nm~1500nm、又は任意選択で400nm~800nmである1つ以上の波長を有する放射線を発生させるように構成されている、条項18に記載のメトロロジ装置。
20.光源は、使用時には、50ワット超、又は任意選択で150ワット超、又は任意選択で250ワット超、又は任意選択で1000ワット超の電力を有する放射線を発生させるように構成されている、条項18及び19の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
21.センサは、信号/ノイズレベルが1超、又は任意選択で10超である、先行する条項の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
22.センサは、当たった放射線の像を生成する画素のアレイを含む、先行する条項の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
23.光学系は、少なくとも1つの構造を照明する放射線を偏光させる第1のポラライザを含み、第1のポラライザは照明経路に設けられている、先行する条項の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
24.光学系は、特定の偏光を有する散乱放射線の、センサまでの伝搬を可能にする第2のポラライザを含み、第2のポラライザは検出経路に設けられている、先行する条項の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
25.第1のポラライザ及び第2のポラライザの少なくとも一方が、偏光制御信号の形での指示に応じて、特定の偏光を有する放射線の伝搬を可能にすることが可能な制御可能ポラライザである、条項23又は24の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
26.光学系は、一波長範囲内の放射線の伝搬を可能にする波長フィルタを含み、波長フィルタは、光学系の照明経路及び検出経路の少なくとも一方に設けられている、先行する条項の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
27.波長フィルタは、波長制御信号に応じて、選択可能な波長範囲の放射線の伝搬を可能にすることが可能な制御可能波長フィルタである、先行する条項の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
28.光学系及び/又は光源は、光学系が散乱放射線の少なくとも1つの高次回折を捕捉してセンサまで伝搬させることを結果としてもたらす波長を有する放射線で、少なくとも1つの構造を照明することを可能にするように構成されている、先行する条項の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
29.光学系及び/又は光源は、少なくとも1つの構造を複数の波長で照明することを可能にするように構成されている、先行する条項の何れか一項に記載のメトロロジ装置。
30.基板上の少なくとも1つの構造に関連する関心対象特性を算出する方法であって、
光学系の照明経路を介して、構造を放射線で照明することと、
光学系の検出経路を介して、構造によって散乱された放射線をセンサ上で受け取ることと、
を含む方法。
31.基板上の少なくとも1つの構造に関連する関心対象特性を算出する方法であって、関心対象特性は、基板上の第1の層と第2の層との間のオーバーレイ値であり、少なくとも1つの構造は、第1の層及び第2の層にフィーチャを含み、
光学系を介して、構造を放射線で照明することと、
構造によって散乱された放射線を光学系で受け取ることであって、光学系は、光学系の像面、又は像面の共役面にセンサを含む、受け取ることと、
散乱した放射線の0次回折の、センサに向かう伝搬を阻止しながら、光学系によって少なくとも1つの構造をセンサ上に結像することと、
センサで像を記録することと、
基板の第1の層にあるフィーチャの、基板の第2の層にあるフィーチャに対する変位であって、像に基づいて算出される変位に基づいて、オーバーレイ値を算出することと、
を含む方法。
【0131】
[000130] 本明細書では、リソグラフィ装置をICの製造で使用することが具体的に参照されているが、本明細書に記載のリソグラフィ装置は、他の用途を有し得ることが理解されるべきである。可能な他の用途として、一体型光学系、磁区メモリのガイダンスパターン及び検出パターン、平面パネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造がある。
【0132】
[000131] 本明細書では、本発明の実施形態をリソグラフィ装置に関連して具体的に参照している場合があるが、本発明の実施形態は、他の装置で使用され得る。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置或いはウェーハ(若しくは他の基板)又はマスク(若しくは他のパターニングデバイス)等の物体を測定又はプロセスする任意の装置の一部をなし得る。これらの装置は、まとめてリソグラフィツールと呼ばれ得る。そのようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を用い得る。
【0133】
[000132] 本発明の実施形態を光リソグラフィに関連して使用することをここまで具体的に参照してきたが、本発明は、文脈が許す限り、光リソグラフィに限定されず、他の用途で使用され得、例えばインプリントリソグラフィで使用され得ることが理解される。
【0134】
[000133] ここまで本発明の特定の実施形態について説明してきたが、当然のことながら、本発明は、説明された以外の方法で実施され得る。上述の説明は、限定的ではなく、例示的であるものとする。従って、当業者であれば明らかなように、以下に示される特許請求項の範囲から逸脱しない限り、記載された本発明に対する修正形態がなされ得る。