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特許7478832基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20240425BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240425BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20240425BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/302 101C
H01L21/316 A
H05H1/46 L
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022553893
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2021035034
(87)【国際公開番号】W WO2022071105
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2020163933
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(72)【発明者】
【氏名】稲田 哲明
(72)【発明者】
【氏名】小西 順也
(72)【発明者】
【氏名】室林 正季
(72)【発明者】
【氏名】保井 毅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武夫
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-117141(JP,A)
【文献】特開2010-045195(JP,A)
【文献】特開2010-283331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/3065
H01L 21/316
H05H 1/46
C23C 16/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理容器と、
前記処理容器の外周を覆う外側容器と、
前記外側容器と前記処理容器の外周との間において前記処理容器の外周に巻回するように設けられ、高周波電力が供給されるように構成されたコイルにより構成され、前記処理容器内に供給されたガスをプラズマ励起するプラズマ生成部と、
前記外側容器と前記処理容器の外周との間に形成されるガス流路と、
前記ガス流路と連通する排気路と、
前記排気路のコンダクタンスを調整可能に構成された調整弁と、
前記排気路上であって、前記調整弁の下流に設けられた第1の排気装置と、
前記外側容器内の圧力を測定する圧力センサと、
前記圧力センサで測定された圧力に基づいて、前記第1の排気装置を制御して前記第1の排気装置の排気風量を調整することが可能なように構成された制御部と、
を備えた基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記圧力センサで測定された圧力と大気圧との差圧が所定の差圧値となるように前記第1の排気装置を制御することが可能なように構成されている、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記調整弁には、前記所定の差圧値に応じてあらかじめ定められた開度が設定される、 請求項に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記調整弁は、前記所定の差圧値と、前記排気路の下流側に接続される第2の排気装置の排気風量と、に応じてあらかじめ定められた開度が設定される、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記あらかじめ定められた開度には、前記第1の排気装置を動作させない状態において前記圧力センサで測定された圧力と大気圧との差圧が、前記所定の差圧値となる値よりも小さい値が設定される、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記所定の差圧値に応じて、前記調整弁の開度があらかじめ定められた開度となるように制御することが可能なよう構成されている、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記所定の差圧値と、前記排気路の下流側に接続される第2の排気装置の排気風量とに応じて、前記調整弁の開度があらかじめ定められた開度となるように制御することが可能なように構成されている、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記あらかじめ定められた開度は、前記第1の排気装置を動作させない状態において前記圧力センサで測定された圧力と大気圧との差圧が、前記所定の差圧値となる値よりも小さくなるように設定される、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記処理容器の温度を測定する温度センサを備え、
前記所定の差圧は、前記温度センサにより測定された温度に基づいて設定される、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記圧力センサで測定された圧力と大気圧との前記差圧が、前記温度センサにより測定された温度に基づいて設定された前記所定の差圧となるように、前記第1の排気装置を制御することが可能なように構成されている、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記圧力センサは、前記外側容器内であって前記ガス流路と前記排気路の間に設けられる、請求項1~10の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記排気路は前記外側容器の上面に接続され、
前記圧力センサは、前記外側容器内であって前記排気路の鉛直下方に設けられる、請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
処理容器と、
前記処理容器の外周を覆う外側容器と、
前記外側容器と前記処理容器の外周との間において前記処理容器の外周に巻回するように設けられ、高周波電力が供給されるように構成されたコイルにより構成され、前記処理容器内に供給されたガスをプラズマ励起するプラズマ生成部と、
前記外側容器と前記処理容器の外周との間に形成されるガス流路と、
前記ガス流路と連通する排気路と、
前記排気路のコンダクタンスを調整可能に構成された調整弁と、
前記排気路上であって、前記調整弁の下流に設けられた第1の排気装置と、
前記外側容器内の圧力を測定する圧力センサと、を備えた基板処理装置を用いた半導体装置の製造方法であって、
前記処理容器内を加熱する工程と、
前記処理容器内に基板を搬入する工程と、
加熱された前記処理容器内において前記基板を処理する工程と、
を有し、
前記処理容器内を加熱する工程では、前記圧力センサで測定された圧力に基づいて前記第1の排気装置の排気風量を調整する半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記基板を処理する工程は、前記処理容器内に供給されたガスをプラズマ励起する工程を含む、請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
処理容器と、
前記処理容器の外周を覆う外側容器と、
前記外側容器と前記処理容器の外周との間において前記処理容器の外周に巻回するように設けられ、高周波電力が供給されるように構成されたコイルにより構成され、前記処理容器内に供給されたガスをプラズマ励起するプラズマ生成部と、
前記外側容器と前記処理容器の外周との間に形成されるガス流路と、
前記ガス流路と連通する排気路と、
前記排気路のコンダクタンスを調整可能に構成された調整弁と、
前記排気路上であって、前記調整弁の下流に設けられた第1の排気装置と、
前記外側容器内の圧力を測定する圧力センサと、を備えた基板処理装置を用いた基板処理方法であって、
前記処理容器内を加熱する工程と、
前記処理容器内に基板を搬入する工程と、
加熱された前記処理容器内において前記基板を処理する工程と、
を有し、
前記処理容器内を加熱する工程では、前記圧力センサで測定された圧力に基づいて前記第1の排気装置の排気風量を調整する基板処理方法。
【請求項16】
前記基板を処理する工程は、前記処理容器内に供給されたガスをプラズマ励起する工程を含む、請求項15に記載の基板処理方法。
【請求項17】
処理容器と、
前記処理容器の外周を覆う外側容器と、
前記外側容器と前記処理容器の外周との間において前記処理容器の外周に巻回するように設けられ、高周波電力が供給されるように構成されたコイルにより構成され、前記処理容器内に供給されたガスをプラズマ励起するプラズマ生成部と、
前記外側容器と前記処理容器の外周との間に形成されるガス流路と、
前記ガス流路と連通する排気路と、
前記排気路のコンダクタンスを調整可能に構成された調整弁と、
前記排気路上であって、前記調整弁の下流に設けられた第1の排気装置と、
前記外側容器内の圧力を測定する圧力センサと、を備えた基板処理装置をコンピュータに制御させるプログラムであって、
前記処理容器内を加熱する手順と、
前記処理容器内に基板を搬入する手順と、
加熱された前記処理容器内において前記基板を処理する手順と、
前記処理容器内を加熱する手順において、前記圧力センサで測定された圧力に基づいて前記第1の排気装置の排気風量を調整する手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項18】
前記基板を処理する手順は、前記処理容器内に供給されたガスをプラズマ励起する手順を含む、請求項17に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置において、処理容器とプラズマ生成部との間に温度調整ガスを流す流路と、該流路から温度調整ガスを排出する排気路と、排気路に設けられた調整弁とを設けた構造が開示されている(例えば、特開2014-170634号公報参照)。この基板処理装置では、排気路に設けられ又は排気路の先に接続された排気装置により温度調整ガスを排出する。その際に、処理容器の温度に応じて調整弁の開度を調整することで温度調整ガスの流量(排気風量)を制御し、処理容器の温度を所定の温度に維持する構造となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、処理容器の温度変動や、排気路の先に接続された排気装置での圧力変動等の要因によって、安定した排気風量を維持することが困難な場合がある。
【0004】
本開示の目的は、安定した風量で処理容器の周囲の空間を排気し、処理容器の温度を安定的に維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、基板を処理する処理容器と、前記処理容器の外周を覆う外側容器と、前記外側容器と前記処理容器の外周との間に形成されるガス流路と、前記ガス流路と連通する排気路と、前記排気路のコンダクタンスを調整可能に構成された調整弁と、前記排気路上であって、前記調整弁の下流に設けられた第1の排気装置と、前記外側容器内に設けられ、前記外側容器内の圧力を測定する圧力センサと、前記圧力センサで測定された圧力に基づいて、前記第1の排気装置を制御して前記第1の排気装置の排気風量を調整することが可能なように構成された制御部と、を備える技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、安定した風量で処理容器の周囲の空間を排気し、処理容器の温度を安定的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の概略断面図である。
図2】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の制御部(制御手段)の構成を示す図である。
図3】本開示の一実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。
図4】ダンパの開度に応じた、第2排気装置の風量とカバー差圧の関係を示す線図である。
図5】第1排気装置(ファン)及び第2排気装置(ブロア)の作動周波数に応じた、ダンパ開度とカバー差圧の関係を示す線図である。
図6】第2排気装置(ブロア)の風量を変動させたときの差圧、第1排気装置(ファン)の作動周波数、及び処理容器の温度の変化を示す線図である。
図7】プラズマ生成部において高周波を連続放電したときの、差圧、第1排気装置(ファン)の作動周波数、及び処理容器の温度の変化を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
<本開示の一実施形態>
(1)基板処理装置の構成
本開示の第1実施形態に係る基板処理装置について、図1を用いて以下に説明する。本実施形態に係る基板処理装置100は、主に基板面上に形成された膜に対して酸化処理を行うように構成されている。この基板処理装置100は、処理容器203と、処理容器203の外周を覆う外側容器の一例としての遮蔽板1223と、ガス流路1000と、排気路1002と、調整弁の一例としてのダンパ1004と、第1の排気装置の一例としてのファン1010と、圧力センサ1006と、制御部としてのコントローラ221と、プラズマ生成部1008と、を備えている。
【0010】
(処理室)
基板処理装置100は、ウエハ200をプラズマ処理する処理炉202を備えている。処理炉202には、処理室201を構成し、基板の一例としてのウエハ200を処理する処理容器203が設けられている。処理容器203は、第1の容器であるドーム型の上側容器210と、第2の容器である碗型の下側容器211とを備えている。上側容器210が下側容器211の上に被さることにより、処理室201が形成される。上側容器210は、例えば酸化アルミニウム(Al)または石英(SiO)等の非金属材料で形成されており、下側容器211は、例えばアルミニウム(Al)で形成されている。
【0011】
また、下側容器211の下部側壁には、ゲートバルブ244が設けられている。ゲートバルブ244は、開いているとき、搬送機構(図示せず)を用いて、搬入出口245を介して、処理室201内へウエハ200を搬入したり、処理室201外へとウエハ200を搬出したりすることができるように構成されている。ゲートバルブ244は、閉まっているときには、処理室201内の気密性を保持する仕切弁となるように構成されている。
【0012】
処理室201は、周囲にコイル212が設けられているプラズマ生成空間201aと、プラズマ生成空間201aに連通し、ウエハ200が処理される基板処理空間201bを有する。プラズマ生成空間201aはプラズマが生成される空間であって、処理室の内、コイル212の下端より上方であって、且つコイル212の上端より下方の空間を言う。一方、基板処理空間201bは、基板がプラズマを用いて処理される空間であって、コイル212の下端より下方の空間を言う。本実施形態では、プラズマ生成空間201aと基板処理空間201bの水平方向の径は略同一となるように構成されている。
【0013】
(サセプタ)
処理室201の底側中央には、ウエハ200を載置する基板載置部としてのサセプタ217が配置されている。
【0014】
サセプタ217の内部には、加熱機構としてのヒータ217bが一体的に埋め込まれている。ヒータ217bは、電力が供給されると、ウエハ200表面を例えば25℃から750℃程度まで加熱することができるように構成されている。
【0015】
サセプタ217は、下側容器211とは電気的に絶縁されている。インピーダンス調整電極217cは、サセプタ217に載置されたウエハ200上に生成されるプラズマの密度の均一性をより向上させるために、サセプタ217内部に設けられており、インピーダンス調整部としてのインピーダンス可変機構275を介して接地されている。
【0016】
サセプタ217には、サセプタを昇降させる駆動機構を備えるサセプタ昇降機構268が設けられている。また、サセプタ217には貫通孔217aが設けられるとともに、下側容器211の底面にはウエハ突上げピン266が設けられている。サセプタ昇降機構268によりサセプタ217が下降させられたときには、ウエハ突上げピン266がサセプタ217とは非接触な状態で、貫通孔217aを突き抜けるように構成されている。主に、サセプタ217及びヒータ217b、電極217cにより、本実施形態に係る基板載置部が構成されている。
【0017】
(ガス供給部)
処理室201の上方、つまり上側容器210の上部には、ガス供給ヘッド236が設けられている。ガス供給ヘッド236は、キャップ状の蓋体233と、ガス導入口234と、バッファ室237と、開口238と、遮蔽プレート240と、ガス吹出口239とを備え、反応ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。バッファ室237は、ガス導入口234より導入される反応ガスを分散する分散空間としての機能を持つ。
【0018】
ガス導入口234には、酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給管232aの下流端と、水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給管232bの下流端と、不活性ガスを供給する不活性ガス供給管232cと、が合流するように接続されている。酸素含有ガス供給管232aには、上流側から順に、酸素含有ガス供給源250a、流量制御装置としてのマスフローコントローラ(MFC)252a、開閉弁としてのバルブ253aが設けられている。水素含有ガス供給管232bには、上流側から順に、水素含有ガス供給源250b、MFC252b、バルブ253bが設けられている。不活性ガス供給管232cには、上流側から順に、不活性ガス供給源250c、MFC252c、バルブ253cが設けられている。酸素含有ガス供給管232aと水素含有ガス供給管232bと不活性ガス供給管232cとが合流した下流側には、バルブ243aが設けられ、ガス導入口234の上流端に接続されている。バルブ253a、253b、253c、243aを開閉させることによって、MFC252a、252b、252cによりそれぞれのガスの流量を調整しつつ、ガス供給管232a、232b、232cを介して、酸素含有ガス、水素ガス含有ガス、不活性ガス等の処理ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。
【0019】
主に、ガス供給ヘッド236(蓋体233、ガス導入口234、バッファ室237、開口238、遮蔽プレート240、ガス吹出口239)、酸素含有ガス供給管232a、水素含有ガス供給管232b、不活性ガス供給管232c、MFC252a,252b,252c、バルブ253a,253b,253c,243aにより、本実施形態に係るガス供給部(ガス供給系)が構成されている。
【0020】
また、ガス供給ヘッド236、酸素含有ガス供給管232a、MFC252a、バルブ253a,243aにより、本実施形態に係る酸素含有ガス供給系が構成されている。さらに、ガス供給ヘッド236、水素含有ガス供給管232b、MFC252b、バルブ253b,243aにより、本実施形態に係る水素ガス供給系が構成されている。さらに、ガス供給ヘッド236、不活性ガス供給管232c、MFC252c、バルブ253c,243aにより、本実施形態に係る不活性ガス供給系が構成されている。
【0021】
(排気部)
下側容器211の側壁には、処理室201内から反応ガスを排気するガス排気口235が設けられている。ガス排気口235には、ガス排気管231の上流端が接続されている。ガス排気管231には、上流側から順に圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)242、開閉弁としてのバルブ243b、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。主に、ガス排気口235、ガス排気管231、APC242、バルブ243bにより、本実施形態に係る排気部が構成されている。尚、真空ポンプ246を排気部に含めても良い。
【0022】
(プラズマ生成部)
プラズマ生成部1008は、外側容器としての遮蔽板1223と処理容器203の外周との間において処理容器203の外周に沿うように設けられ、高周波電力が供給されるように構成された電極としての共振コイル212により構成され、処理容器203内に供給されたガスをプラズマ励起する。
【0023】
処理室201の外周部、すなわち上側容器210の側壁の外側には、処理室201を囲うように、第1の電極としての、螺旋状の共振コイル212が設けられている。共振コイル212には、RFセンサ272、高周波電源273、高周波電源273のインピーダンスや出力周波数の整合を行う整合器274が接続される。
【0024】
高周波電源273は、共振コイル212に高周波電力(RF電力)を供給するものである。RFセンサ272は高周波電源273の出力側に設けられ、供給される高周波の進行波や反射波の情報をモニタするものである。RFセンサ272によってモニタされた反射波電力は整合器274に入力され、整合器274は、RFセンサ272から入力された反射波の情報に基づいて、反射波が最小となるよう、高周波電源273のインピーダンスや出力される高周波電力の周波数を制御するものである。
【0025】
高周波電源273は、発振周波数および出力を規定するための高周波発振回路およびプリアンプを含む電源制御手段(コントロール回路)と、所定の出力に増幅するための増幅器(出力回路)とを備えている。電源制御手段は、操作パネルを通じて予め設定された周波数および電力に関する出力条件に基づいて増幅器を制御する。増幅器は、共振コイル212に伝送線路を介して一定の高周波電力を供給する。
【0026】
共振コイル212は、所定の波長の定在波を形成するため、一定の波長で共振するように巻径、巻回ピッチ、巻数が設定される。すなわち、共振コイル212の電気的長さは、高周波電源273から供給される高周波電力の所定周波数における1波長の整数倍(1倍、2倍、…)に相当する長さに設定される。
【0027】
具体的には、印加する電力や発生させる磁界強度または適用する装置の外形などを勘案し、共振コイル212は、例えば、800kHz~50MHz、0.5~5KWの高周波電力が印加され、200~500mmのコイル直径とされ、プラズマ生成空間201aを形成する部屋の外周側に2~60回程度巻回される。
【0028】
共振コイル212を構成する素材としては、例えば銅やアルミニウムなどの金属が使用される。共振コイル212は、絶縁性材料にて平板状に形成され、且つベースプレート248の上端面に鉛直に立設された複数のサポート(図示せず)によって支持される。
【0029】
遮蔽板1223は、共振コイル212の外側の電界を遮蔽すると共に、共振回路を構成するのに必要な容量成分(C成分)を共振コイル212との間に形成するために設けられる。遮蔽板1223は、一般的には、アルミニウム合金などの導電性材料を使用して円筒状に構成される。遮蔽板1223は、共振コイル212の外周から5~150mm程度隔てて配置される。
【0030】
主に、共振コイル212、RFセンサ272、整合器274により、本実施形態に係るプラズマ生成部1008が構成されている。尚、プラズマ生成部1008として高周波電源273を含めても良い。
【0031】
なお、ガス流路1000は、遮蔽板1223と処理容器203の外周との間に形成されている。本実施形態では、遮蔽板1223が、処理容器203の上方も覆っており、処理容器203を収容する外側容器を構成している。遮蔽板1223の天井部と、処理容器203の蓋体233とは、互いに上下方向に離間しており、その間の空間もガス流路1000となっている。なお、遮蔽板1223が処理容器203の上方を覆わない構成として、遮蔽板1223及び処理容器203を覆う外側容器(図示せず)を更に設けてもよい。
【0032】
(ガス導入口)
処理容器203の側面を覆う遮蔽板1223には、ガス流路1000に冷却(温度調整)のためのガスを取り込むためのガス導入口1223aが設けられている。ガス導入口1223aは、処理容器203の下端に対向する位置(即ち、本実施形態では遮蔽板1223の下端)の近傍に、処理容器203の周方向に沿って均等な間隔をもって複数設けられることが好ましい。また、ガス導入口1223aの形状は、円形や矩形に限らず、処理容器203の周方向に沿って1又は複数のスリットにより構成されていてもよい。ガス流路1000に取り込まれるガスは、大気から取り込んだ空気であってもよく、他のガス(例えば不活性ガス)であってもよい。
【0033】
(排気路)
排気路1002は、ガス流路1000と連通しており、例えば遮蔽板1223の天井部と、第2排気装置の一例としてのブロア1020に接続されている。処理容器203が例えば円筒形に形成されている場合、処理容器203の外周に形成されたガス流路1000を処理容器の円周方向において均等に排気するため、排気路1002は、遮蔽板1223の天井部の中央に接続することが好ましい。ブロア1020は、工場等の施設に設けられる共用の排気設備であり、様々な設備からの排気を担っている。ブロア1020からの排気は、例えば大気開放されるようになっている。
【0034】
(圧力センサ)
圧力センサ1006は、外側容器としての遮蔽板1223の内側に設けられ、該内側の圧力を測定するセンサである。すなわち、圧力センサ1006は、ガス流路1000内の圧力を測定するセンサである。図1に示されるように、排気路1002が遮蔽板1223の上面に接続されている場合、圧力センサ1006は、遮蔽板1223内であって排気路1002の鉛直下方に設けられてもよい。換言すれば、圧力センサ1006は、ガス流路1000と排気路1002との接続部分(排気路1002の鉛直下方空間であって処理容器203の上方空間)に設けられている。
【0035】
なお、圧力センサ1006の配置はこれに限られず、遮蔽板1223の内側における他の部位に圧力センサ1006が設けられていてもよい。圧力センサ1006が外側容器としての遮蔽板1223の内側に設けられることで、ダンパ1004の前後に発生する乱流の影響を受け難い。
【0036】
後述するように、コントローラ221は、圧力センサ1006で測定されたガス流路100内の圧力と大気圧との差圧(換言すれば、ゲージ圧)を算出・取得し、当該差圧が所定の差圧値となるようにファン1010を制御する。大気圧は一定値を用いてもよいし、測定した数値を用いてもよい。当該差圧は、ガス流路1000内の排気風量に対応しており、ガス流路1000内の排気風量が所望の風量となるような差圧値を所定値として設定することにより、ガス流路1000内の排気風量を所望の風量となるように制御する。すなわち、当該差圧が所望のガス流路1000内の排気風量に対応する所定の差圧値となるように制御する。
【0037】
(ダンパ)
調整弁の一例としてのダンパ1004は、例えばバタフライバルブであり、排気路1002のコンダクタンス(排気の流れ易さの度合い)を調整可能に構成されている。調整弁をコンダクタンス変更手段と言い換えることもできる。
【0038】
(ファン)
第1の排気装置の一例としてのファン1010は、排気路1002上であって、ダンパ1004の下流に設けられた、例えば軸流ファンである。図1に示される例では、ファン1010は、排気路1002上におけるダンパ1004の下流側の近傍に設けられている。ファン1010の回転は、コントローラ221によりインバータ制御される。
【0039】
ダンパ1004には、所定の差圧値に応じてあらかじめ定められた開度が設定される。ここで、その開度の決め方について説明する。図4は、ダンパ1004の開度に応じた、第2排気装置としてのブロア1020の風量とカバー差圧(圧力センサ1006で測定された圧力と大気圧との差圧)の関係を示している。ダンパ1004の開度は、全閉で0°、全開で90°である。横軸は、正確にはダンパフルオープン時、つまりダンパ1004の開度が90°のときのブロア1020の風量である。また、図4では、「所定の差圧値」が「ターゲット差圧」と記載されている。
【0040】
ブロア1020の風量が比較的小さい領域では、ダンパ1004の開度が変化してもカバー差圧の変化は比較的少ない。ブロア1020の風量が大きくなるに連れて、ダンパ1004の開度の変化によるカバー差圧の変化が大きくなる。このことから、ブロア1020の風量が大きい領域では、ダンパ1004の開度調整のみによるカバー差圧の微調整は難しいことがわかる。
【0041】
ここで、図4において網掛けで示されるように、ターゲット差圧(所定の差圧)が例えば-13~-5Paであるものとする。この場合、ダンパ1004の開度を15°とすることで、ブロア1020の風量が約11~20m/minの範囲でターゲット差圧(所定の差圧)を得ることができる。また、例えばダンパ1004の開度を90°とし、ブロア1020の風量が約14m/minのときのカバー差圧は約-42Paである。ブロア1020の風量の変更範囲を最小限に抑えながらカバー差圧をターゲット差圧(所定の差圧)に設定したい場合には、ダンパ1004の開度を15°前後に設定すればよい。
【0042】
また、ダンパ1004に、所定の差圧値と、ブロア1020の排気風量とに応じて、あらかじめ定められた開度が設定されてもよい。図5は、ファン1010及びブロア1020の作動周波数に応じた、ダンパ1004の開度とカバー差圧の関係を示している。作動周波数の大小は、出力の大小を意味する。図5の線は、4つのグループに分かれている。最も下に位置するグループは、ブロア1020の作動周波数が10Hzのグループである。下から2番目のグループは、ブロア1020の作動周波数が20Hzのグループである。下から3番目のグループは、ブロア1020の作動周波数が33Hzのグループである。下から4番目、つまり最も上に位置するグループは、ブロア1020の作動周波数が45Hzのグループである。ファン1010の作動周波数は、それぞれ0Hz、30Hz、60Hzの3通りとなっている。
【0043】
各々のグループにおける3本の線における最も下側の線(ファン1010の周波数が0Hz)と最も上側の線(ファン1010の作動周波数が60Hz)との間が、ファン1010により制御可能なカバー差圧の範囲を示している。各々のグループにおいて、ダンパ1004の開度をあらかじめ定めた状態で、ブロア1020の風量(出力)が若干変動しても、ファン1010の制御によりカバー差圧の変動を抑制できる。具体的には、ブロア1020による風量(出力)が減少したときには、ファン1010による風量(出力)を増加させ、ブロア1020による風量(出力)が増加したときには、ファン1010による風量(出力)を減少させるようにする。
【0044】
ターゲット差圧(所定の差圧)が例えば-13~-5Paである場合、ブロア1020の作動周波数が10Hzであれば、ダンパ1004の開度を例えば約75°とすれば、ファン1010による制御範囲にターゲット差圧(所定の差圧)が収まる。同様に、ブロア1020の作動周波数が20Hzであれば、ダンパ1004の開度を例えば約30°とすれば、ファン1010による制御範囲にターゲット差圧(所定の差圧)が収まる。ブロア1020の出力が小さいと、ダンパ1004の開度の自由度が高くなる。
【0045】
上記したように、各グループにおいて最も下側の線は、ファン1010の作動周波数が0Hz、つまりファン1010を作動させない場合を示している。例えばブロア1020の作動周波数が45Hzのグループでダンパ1004の開度が40°、ファン1010の作動周波数が0Hzの場合、カバー差圧は約-50Paである。ターゲット差圧(所定の差圧)を-50Paとした場合において、ブロア1020による風量が低下し、カバー差圧が減少すると、ファン1010による制御範囲を外れてしまう。そこで、ダンパ1004の開度を、差圧がターゲット差圧(所定の差圧)の-50Paより小さくなる40°より小さい値、例えば約38°に設定する。これにより、ターゲット差圧(所定の差圧)が、最も下側の線と最も上側の線の間、つまりファン1010による制御範囲に入る。
【0046】
このように、ダンパ1004についてのあらかじめ定められた開度には、ファン1010を動作させない状態において圧力センサ1006で測定された圧力と大気圧との差圧が、所定の差圧値となる値よりも小さい値が設定されてもよい。
【0047】
基板処理装置100は、処理容器203の温度を測定する温度センサ1012を備えていてもよい。この場合、所定の差圧が、温度センサ1012により測定された温度に基づいて設定されてもよい。
【0048】
このようなダンパ1004の開度の設定は、手動で行ってもよいし、コントローラ221及びアクチュエータ(図示せず)による制御により行ってもよい。つまり、コントローラ221により、ファン1010及びダンパ1004の制御を行ってもよいし、ファン1010のみの制御を行ってもよい。
【0049】
(制御部)
制御部としてのコントローラ221は、信号線Aを通じてAPC242、バルブ243b及び真空ポンプ246を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276及びインピーダンス可変機構275を、信号線Dを通じてゲートバルブ244を、信号線Eを通じてRFセンサ272、高周波電源273及び整合器274を、信号線Fを通じてMFC252a~252c及びバルブ253a~253c,243aを、それぞれ制御することが可能なように構成されている。
【0050】
図2に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ221は、CPU(Central Processing Unit)221a、RAM(Random Access Memory)221b、記憶装置221c、I/Oポート221dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM221b、記憶装置221c、I/Oポート221dは、内部バス221eを介して、CPU221aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ221には、例えばタッチパネルやディスプレイ等として構成された入出力装置222が接続されている。
【0051】
記憶装置221cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置221c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプログラムレシピ等が読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ221によって基板処理装置100に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプログラムレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プログラムレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM221bは、CPU221aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0052】
I/Oポート221dは、上述のMFC252a~252c、バルブ253a~253c、243a、243b、ゲートバルブ244、APCバルブ242、真空ポンプ246、RFセンサ272、高周波電源273、整合器274、サセプタ昇降機構268、インピーダンス可変機構275、ヒータ電力調整機構276、等に接続されている。
【0053】
CPU221aは、記憶装置221cからの制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置222からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置221cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU221aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、I/Oポート221d及び信号線Aを通じてAPCバルブ242の開度調整動作、バルブ243bの開閉動作、及び真空ポンプ246の起動・停止を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268の昇降動作を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276によるヒータ217bへの供給電力量調整動作(温度調整動作)や、インピーダンス可変機構275によるインピーダンス値調整動作を、信号線Dを通じてゲートバルブ244の開閉動作を、信号線Eを通じてRFセンサ272、整合器274及び高周波電源273の動作を、信号線Fを通じてMFC252a~252cによる各種ガスの流量調整動作、及びバルブ253a~253c、243aの開閉動作、等を制御することが可能なように構成されている。
【0054】
コントローラ221は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ)223に格納された上述のプログラムをコンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置221cや外部記憶装置223は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置221c単体のみを含む場合、外部記憶装置223単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合が有る。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置223を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0055】
また、コントローラ221は、圧力センサ1006で測定された圧力に基づいて、ファン1010を制御してファン1010の排気風量を調整することが可能なように構成されている。また、コントローラ221は、圧力センサ1006で測定された圧力と大気圧との差圧が所定の差圧値となるようにファン1010を制御することが可能なようになっている。
【0056】
なお、上記したように、基板処理装置100が処理容器203の温度を測定する温度センサ1012を備えていてもよい。この場合、コントローラ221は、圧力センサ1006で測定された圧力と大気圧との差圧が、温度センサ1012により測定された温度に基づいて設定された所定の差圧となるように、ファン1010を制御してもよい。
【0057】
ダンパ1004の開度の設定は、手動で行うことができる。また、この開度の設定を、コントローラ221及びアクチュエータ(図示せず)による制御により行うこともできる。この場合、コントローラ221は、例えば、所定の差圧値及びブロア1020の風量の入力を受け付ける入力部(入力装置222)と、差圧値、及びブロア1020の風量に応じてあらかじめ定められた開度に関する情報を格納するテーブル(RAM221、記憶装置221c)と、を備える。コントローラ221は、該コントローラ221に入力された所定の差圧値、及びブロア1020の風量に対応する開度に関する情報をテーブルから取得し、取得した開度に関する情報に基づいてダンパ1004の開度を制御することが可能なように構成されている。
【0058】
(作用)
本実施形態によれば、処理容器203の温度変動や、排気路1002の先に接続されたブロア1020での圧力変動が生じる場合であっても、安定した風量で処理容器203の周囲の空間を排気(即ち、ガス導入口1223aから処理容器203の周囲の空間内に取り込まれたガスを排気)し、処理容器203の温度を安定的に維持することができる。具体的には、ファン1010により、ブロア1020での圧力変動をファン1010で補償することで、排気風量を安定的に維持することができる。
【0059】
またこれによって、ウエハ200等の半導体の歩留まりを向上させることができる。また、風量を制御することにより処理容器203の温度を調整することができ、加熱手段以外に温度調整ノブとして機差の少ない装置を提供できる。
【0060】
また、圧力センサ1006が排気路1002内でなく、外側容器としての遮蔽板1223内に設けられているので、ダンパ1004の開度が変わった際に発生する乱流の影響を受け難く、安定した圧力測定が可能となる。
【0061】
処理容器203に温度センサ1012を設置した場合には、処理容器203の温度モニタが可能になる。処理容器203の温度はウエハ200の温度と関連があるため、ファン1010及びダンパ1004により風量を変更可能とすることで、処理容器203の温度制御が可能となる。
【0062】
なお、処理容器203の温度は、ガス流路1000の排気風量の他にも、ヒータ217bの出力や処理容器203内で生成されるプラズマ強度等の他の要素によって変動する。そのため、例えば処理容器203の温度をモニタし、測定した処理容器203の温度が所定の温度となるように、ファン1010及びダンパ1004の少なくとも一方をフィードバック制御する場合、処理容器203の温度の変動に応じて風量が頻繁に変動することとなり、処理容器203の温度を安定させることが困難となる場合がある。したがって、処理容器203の温度の安定性を重視する観点からは、処理容器203の測定温度に拠らない所定の風量に基づいて、ファン1010及びダンパ1004の少なくとも一方を制御することが好ましい。
【0063】
図6は、第2排気装置(ブロア1020)の風量を例えば13~15m/minの間で変動させたときの差圧、第1排気装置(ファン1010)の作動周波数、及び処理容器203の温度の変化を示す線図である。破線はファン1010の動作周波数、実線(太線)はカバー差圧を、実線(細線)は温度センサ1012で測定した処理容器203の外周面の温度を、それぞれ示している。コントローラ221により、ブロア1020の風量が上昇したときはファン1010の作動周波数を減少させ、ブロア1020の風量が低下したときはファン1010の作動周波数を増加させる。これにより、差圧を略一定(±1Pa)に維持し、かつ処理容器203の温度を略一定に維持することができる。
【0064】
図7は、プラズマ生成部1008において高周波を80分間、出力5kWで連続放電したときの、差圧、第1排気装置(ファン1010)の周波数、及び処理容器203の温度の変化を示す線図である。破線はファン1010の動作周波数、実線(太線)はカバー差圧を、実線(細線)は温度センサ1012で測定した処理容器203の外周面の温度を、それぞれ示している。処理容器203の温度が上昇すると、外側容器としての遮蔽板1223内の圧力が上昇して大気圧との差圧が低下するため、ファン1010の作動周波数(出力)が変動する。これにより、差圧が略一定(±1Pa)に維持される。このように、温度変化によって遮蔽板1223内の圧力が変化しても、差圧が略一定となるように対応することができる。
【0065】
このように、本実施形態によれば、処理容器203の温度変動や、排気路1002の先に接続されたブロア1020での圧力変動が生じる場合であっても、安定した風量で処理容器203の周囲の空間を排気し、処理容器203の温度を安定的に維持することができる。
【0066】
(半導体装置の製造方法)
半導体装置の製造方法は、上記した基板処理装置100を用い、処理容器203を加熱する工程と、処理容器203内にウエハ200を搬入する工程と、処理容器203内にガスを供給する工程と、ウエハ200をプラズマ処理する工程と、を有する。
【0067】
(プログラム)
プログラムは、基板処理装置100を用いて半導体装置を製造するプログラムであって、処理容器203を加熱する手順(例えば図3の予備加熱工程S100)と、処理容器203内にウエハ200を搬入する手順(例えば図3の基板搬入工程S110)と、処理容器203内にガスを供給する手順(例えば図3の反応ガス供給工程S130)と、ウエハ200をプラズマ処理する手順(例えば図3のプラズマ処理工程S140)と、をコンピュータに実行させる。
【0068】
(2)基板処理工程
次に、本実施形態に係る基板処理工程について、主に図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。本実施形態に係る基板処理工程は、例えばフラッシュメモリ等の半導体デバイスの製造工程の一工程として、上述の基板処理装置100により実施される。以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作は、コントローラ221により制御される。
【0069】
なお、図示は省略するが、本実施形態に係る基板処理工程で処理されるウエハ200の表面には、アスペクト比の高い凹凸部を有するトレンチが予め形成されている。本実施形態においては、トレンチの内壁に露出した例えばシリコン(Si)の層に対して、プラズマを用いた処理として酸化処理を行う。トレンチは、例えばウエハ200上に所定のパターンを施したマスク層を形成し、ウエハ200表面を所定深さまでエッチングすることで形成されている。
【0070】
(予備加熱工程(前処理工程)S100)
まず、上記のウエハ200を処理室201内に搬入する前に、処理容器203や処理室201内の構成物を予備加熱する前処理を行う。具体的には、ヒータ217bを所定の温度まで加熱しすることでサセプタ217や処理容器203を所定の温度まで加熱する。この際、所定の差圧に基づいてダンパ1040を所定の開度まで開くとともに、所定の差圧となるようにファン1010の動作制御を開始する。(即ち、ガス流路1000の排気を開始する。)なお、ブロア1020は、共用の排気設備であるため、本工程以前から排気動作を継続している。
【0071】
加熱開始後、加熱とガス流路1000の排気を継続し、処理容器203の温度が安定したら、以降のウエハ200に対する処理を開始する。ウエハ200に対する処理開始後(即ちS110以降)も、少なくともプラズマ処理終了(即ちS140)までは、ヒータ217bによる加熱と、ガス流路1000の排気動作は継続して行う。
【0072】
なお、処理容器203等を加熱する手段としては、ヒータ217bを用いる他に、高周波電源273から共振コイル212に高周波電力を供給することで処理容器203内にプラズマを生成し、生成されたプラズマに処理容器203を加熱することもできる。
【0073】
(基板搬入工程S110)
まず、上記のウエハ200を処理室201内に搬入する。具体的には、サセプタ昇降機構268がウエハ200の搬送位置までサセプタ217を下降させて、サセプタ217の貫通孔217aにウエハ突上げピン266を貫通させる。その結果、ウエハ突き上げピン266が、サセプタ217表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。
【0074】
続いて、ゲートバルブ244を開き、処理室201に隣接する真空搬送室から、ウエハ搬送機構(図示せず)を用いて処理室201内にウエハ200を搬入する。搬入されたウエハ200は、サセプタ217の表面から突出したウエハ突上げピン266上に水平姿勢で支持される。処理室201内にウエハ200を搬入したら、ウエハ搬送機構を処理室201外へ退避させ、ゲートバルブ244を閉じて処理室201内を密閉する。そして、サセプタ昇降機構268がサセプタ217を上昇させることにより、ウエハ200はサセプタ217の上面に支持される。
【0075】
(昇温・真空排気工程S120)
続いて、処理室201内に搬入されたウエハ200の昇温を行う。ヒータ217bは予め加熱されており、ヒータ217bが埋め込まれたサセプタ217上にウエハ200を保持することで、例えば150~750℃の範囲内の所定値にウエハ200を加熱する。また、ウエハ200の昇温を行う間、真空ポンプ246によりガス排気管231を介して処理室201内を真空排気し、処理室201内の圧力を所定の値とする。真空ポンプ246は、少なくとも後述の基板搬出工程S160が終了するまで作動させておく。
【0076】
(反応ガス供給工程S130)
次に、反応ガスとして、酸素含有ガスと水素含有ガスの供給を開始する。具体的には、バルブ253a及び253bを開け、MFC252a及び252bにて流量制御しながら、処理室201内へ酸素含有ガス及び水素含有ガスの供給を開始する。このとき、酸素含有ガスの流量を、例えば20~2000sccmの範囲内の所定値とする。また、水素含有ガスの流量を、例えば20~1000sccmの範囲内の所定値とする。また、処理室201内の圧力が、例えば1~250Paの範囲内の所定圧力となるように、APC242の開度を調整して処理室201内の排気を制御する。このように、処理室201内を適度に排気しつつ、後述のプラズマ処理工程S140の終了時まで酸素含有ガス及び水素含有ガスの供給を継続する。
【0077】
酸素含有ガスとしては、例えば、酸素(O)ガス、亜酸化窒素(NO)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO)ガス、オゾン(O)ガス、水蒸気(HOガス)、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO)ガス等を用いることができる。酸素含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0078】
また、水素含有ガスとしては、例えば、水素(H)ガス、重水素(D)ガス、H Oガス、アンモニア(NH)ガス等を用いることができる。水素含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。なお、酸素含有ガスとしてHOガスを用いる場合は、水素含有ガスとしてHOガス以外のガスを用いることが好ましく、水素含有ガスとしてHOガスを用いる場合は、酸素含有ガスとしてHOガス以外のガスを用いることが好ましい。
【0079】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N)ガスを用いることができ、この他、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0080】
(プラズマ処理工程S140)
処理室201内の圧力が安定したら、共振コイル212に対して高周波電源273からRFセンサ272を介して、高周波電力の印加を開始する。
【0081】
これにより、酸素含有ガス及び水素含有ガスが供給されているプラズマ生成空間201a内に高周波電界が形成され、係る電界により、プラズマ生成空間の共振コイル212の電気的中点に相当する高さ位置に、最も高いプラズマ密度を有するドーナツ状の誘導プラズマが励起される。プラズマ状の酸素含有ガス及び水素含有ガスは解離し、酸素を含む酸素ラジカル(酸素活性種)や酸素イオン、水素を含む水素ラジカル(水素活性種)や水素イオン、等の反応種が生成される。
【0082】
基板処理空間201bでサセプタ217上に保持されているウエハ200には、誘導プラズマにより生成されたラジカルと加速されない状態のイオンがトレンチ内に均一に供給される。供給されたラジカル及びイオンは側壁と均一に反応し、表面の層(例えばSi層)をステップカバレッジが良好な酸化層(例えばSi酸化層)へと改質する。
【0083】
その後、所定の処理時間、例えば10~300秒が経過したら、高周波電源273からの電力の出力を停止して、処理室201内におけるプラズマ放電を停止する。また、バルブ253a及び253bを閉めて、酸素含有ガス及び水素含有ガスの処理室201内への供給を停止する。以上により、プラズマ処理工程S140が終了する。
【0084】
(真空排気工程S150)
酸素含有ガス及び水素含有ガスの供給を停止したら、ガス排気管231を介して処理室201内を真空排気する。これにより、処理室201内の酸素含有ガスや水素含有ガス、これらガスの反応により発生した排ガス等を処理室201外へと排気する。その後、APC242の開度を調整し、処理室201内の圧力を処理室201に隣接する真空搬送室(ウエハ200の搬出先。図示せず)と同じ圧力に調整する。
【0085】
(基板搬出工程S160)
処理室201内が所定の圧力となったら、サセプタ217をウエハ200の搬送位置まで下降させ、ウエハ突上げピン266上にウエハ200を支持させる。そして、ゲートバルブ244を開き、ウエハ搬送機構を用いてウエハ200を処理室201外へ搬出する。以上により、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。
【0086】
<本開示の他の実施形態>
上述の実施形態では、プラズマを用いて基板表面に対して酸化処理や窒化処理を行う例について説明したが、これらの処理に限らず、プラズマを用いて基板に対して処理を施すあらゆる技術に適用することができる。例えば、プラズマを用いて行う基板表面に形成された膜に対する改質処理やドーピング処理、酸化膜の還元処理、当該膜に対するエッチング処理、レジストのアッシング処理、等に適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
100 基板処理装置
200 ウエハ(基板)
203 処理容器
221 コントローラ(制御部)
1000 ガス流路
1002 排気路
1004 ダンパ(調整弁)
1006 圧力センサ
1010 ファン(第1の排気装置)
1223 遮蔽板(外側容器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7