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特許7479032生体磁気計測装置および生体磁気計測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】生体磁気計測装置および生体磁気計測システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/248 20210101AFI20240426BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20240426BHJP
   G01R 33/035 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
A61B5/248
A61B8/14
G01R33/035
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020189868
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2021151429
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2020051881
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(73)【特許権者】
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】渡部 泰士
(72)【発明者】
【氏名】出口 浩司
(72)【発明者】
【氏名】金 碩燦
(72)【発明者】
【氏名】宮野 由貴
(72)【発明者】
【氏名】川端 茂▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】横田 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】赤座 実穂
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-098156(JP,A)
【文献】特表2018-521711(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0012133(US,A1)
【文献】赤座実穂、外10名,神経超音波検査と末梢神経磁界測定による神経活動評価,臨床神経生理学,2019年,Vol.47, No.5,p.495(O3-015),ISSN:2188-031X
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
A61B 8/00-8/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気センサが収納されるセンサ収納部と、
前記センサ収納部における前記磁気センサの検出部に対向する対向面に離間可能に配置される透明な板部材と、
神経および前記磁気センサの位置関係に基づいて、前記磁気センサで計測した計測対象部位の生体磁場データから前記計測対象部位内の電流分布を推定する電流推定部と
を有し、
神経および前記磁気センサの位置関係は、
前記板部材を前記対向面から離間させた状態で、前記計測対象部位が接触された前記板部材に当てられる超音波プローブにより取得可能な前記計測対象部位の神経の位置情報と
前記神経の位置情報の取得時の前記超音波プローブおよび前記板部材を含む画像と
から得られること
特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項2】
前記センサ収納部に取り付けられ、前記対向面に沿って移動する前記板部材をガイドするガイド部材を有すること
を特徴とする請求項1に記載の生体磁気計測装置。
【請求項3】
前記超音波プローブにより取得される前記計測対象部位の形態画像に含まれる神経画像と、前記形態画像の取得時に前記対向面の上方または下方から撮影される前記超音波プローブと前記板部材とを含む画像とに基づいて、前記計測対象部位が接触された前記板部材を前記対向面に対向させた場合の神経の前記対向面上での位置と、神経の前記対向面からの深さとを示す位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部が取得した神経の位置情報と、前記対向面と対向する前記板部材に対する前記磁気センサの位置情報とに基づいて、神経と前記磁気センサとの位置関係を取得する位置関係取得部と、を有し、
前記電流推定部は、前記位置関係取得部が取得した位置関係と、前記生体磁場データとに基づいて神経活動電流を推定すること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の生体磁気計測装置。
【請求項4】
磁気センサが収納されるセンサ収納部と、
前記センサ収納部における前記磁気センサの検出部に対向する対向面に離間可能に配置され、複数のマーカーコイルが設けられた透明な板部材と、
神経および前記磁気センサの位置関係に基づいて、前記磁気センサで計測した計測対象部位の生体磁場データから前記計測対象部位内の電流分布を推定する電流推定部と
を有し、
神経および前記磁気センサの位置関係は、
前記板部材を前記対向面から離間させた状態で、前記計測対象部位が接触された前記板部材に当てられる超音波プローブにより取得可能な前記計測対象部位の神経の位置情報と
前記超音波プローブに設けられた磁気センサにより計測される前記マーカーコイルから発生する磁場に基づいて取得される前記超音波プローブと前記板部材との位置関係と
から得られること
特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項5】
前記板部材は、少なくともその一部が、前記超音波プローブにて被検体の神経の位置情報を取得可能な材質で構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の生体磁気計測装置。
【請求項6】
前記板部材は、少なくともその一部を、前記超音波プローブにて被検体の神経の位置情報を取得するべき領域に開口部を設けてなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の生体磁気計測装置。
【請求項7】
磁気センサが収納されるセンサ収納部を含むデュワーを有する生体磁気計測装置と、超音波プローブを含む超音波計測装置と、前記センサ収納部の上方または下方に設置されたカメラとを有する生体磁気計測システムにおいて、
前記生体磁気計測装置は、
前記センサ収納部における前記磁気センサの検出部に対向する対向面に離間可能に配置される透明な板部材と、
神経および前記磁気センサの位置関係に基づいて、前記磁気センサで計測した計測対象部位の生体磁場データから前記計測対象部位内の電流分布を推定する電流推定部と
を有し、
神経および前記磁気センサの位置関係は、
前記板部材を前記対向面から離間させた状態で、前記計測対象部位が接触された前記板部材に当てられる超音波プローブにより取得可能な前記計測対象部位の神経の位置情報と
前記神経の位置情報の取得時の前記超音波プローブおよび前記板部材を含む画像と
から得られること
特徴とする生体磁気計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体磁気計測装置および生体磁気計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
脊髄、末梢神経または筋などの機能を検査する方法として、それらの活動に基づいて生体から発生する磁場を計測する手法が知られている。例えば、頚部または腰部から発生する磁場を計測する生体磁気計測装置では、センサアレイの各センサの先端部が、計測部位の湾曲形状に沿って配置される。そして、被検体の側面からX線像を撮影することで、センサアレイと神経との位置関係が取得される(特許文献1参照)。
【0003】
また、別の生体磁気計測装置では、生体磁気計測装置が配置されるシールドルーム内に超音波診断装置の超音波プローブが配置される。そして、心臓の超音波断層像を利用して心臓から発生する磁場を計測するセンサアレイが、被検体の適切な計測位置に配置され、生体磁場が計測される(特許文献2参照)。
【0004】
生体磁気計測装置において、支持部に支持される被検体の検出対象部位と生体磁気計測部との相対位置を変更可能にすることで、支持部と生体磁気計測部との間に放射線検出部が配置可能になる。これにより、生体磁場の計測時の被検体の姿勢と同じ姿勢で、放射線検出部による検出対象部位の位置情報が取得可能になる(特許文献3参照)。
【0005】
お湯を入れた合成樹脂製の長靴型の水槽に下腿を入れ、水槽の外壁に超音波プローブを当てることで、超音波プローブの押圧による下腿の形状の変化を抑えて下腿の断面画像が取得可能になる。例えば、超音波プローブは、被検体の体表に直接マーキングした位置に対応する水槽の外壁に当てられる(非特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
脊磁計システム等の生体磁気計測システムでは、例えば、センサアレイで得られた磁場データから空間フィルター法などの推定手法によって体内の電流分布を推定することで、神経機能の評価が行われる。磁場データ信号は、磁場源とセンサとの距離によって急激に変化するため、事前に神経の位置情報を取得し、取得した位置情報を空間フィルター法などの推定手法に与える必要がある。
【0007】
例えば、脊髄の神経活動電流を推定しようとする場合、脊髄は脊椎の中の脊柱管に存在するため、X線像に写る脊柱管から脊髄とセンサアレイの位置関係を取得することが可能である。しかし、末梢神経など骨と神経の位置関係が一意に決定しない神経の活動を推定しようとする場合、X線像から神経とセンサアレイの位置関係を取得することは困難であり、神経活動電流を正確に推定することは困難である。
【0008】
超音波計測装置は、神経の画像を含む超音波画像を取得可能である。しかしながら、超音波プローブを当てている被検体の位置を正確に検出する手法は確立されていない。このため、従来は、例えば、被検体の体表に超音波プローブを当てる位置を直接マーキングしていた。さらに、超音波プローブを被検体の体表に押し当てる場合、超音波画像中の神経の位置は、生体磁場の取得時の神経の位置に対してずれるおそれがある。
【0009】
開示の技術は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、超音波画像を利用して、磁場計測時の神経の位置と磁気センサとの位置関係を特定可能にすることで、生体磁場データから電流分布を推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一形態の生体磁気計測装置は、磁気センサが収納されるセンサ収納部と、前記センサ収納部における前記磁気センサの検出部に対向する対向面に離間可能に配置される透明な板部材と、神経および前記磁気センサの位置関係に基づいて、前記磁気センサで計測した計測対象部位の生体磁場データから前記計測対象部位内の電流分布を推定する電流推定部とを有し、神経および前記磁気センサの位置関係は、前記板部材を前記対向面から離間させた状態で、前記計測対象部位が接触された前記板部材に当てられる超音波プローブにより取得可能な前記計測対象部位の神経の位置情報と前記神経の位置情報の取得時の前記超音波プローブおよび前記板部材を含む画像とから得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
超音波画像を利用して、磁場計測時の神経の位置と磁気センサとの位置関係を特定可能にすることで、生体磁場データから電流分布を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る生体磁気計測システムの一例を示すブロック図である。
図2図1の生体磁気計測システムにおいて、カメラの位置を変更する例を示すブロック図である。
図3図1のデュワーの突出部に設けられる可動板のスライド構造の一例を示す斜視図である。
図4図1のデュワーの突出部に設けられる可動板の別の例を示す斜視図である。
図5図1の生体磁気計測システムの機能の一例を示すブロック図である。
図6図1および図2の生体磁気計測システムの動作の一例を示すフロー図である。
図7図1および図2の超音波計測装置により取得される超音波画像の一例を示す説明図である。
図8図5の位置関係取得部により神経とセンサアレイの磁気センサとの位置関係を取得する一例を示す説明図である。
図9図1および図2の磁気計測装置により計測された磁場データに基づいて電流推定部により推定された電流波形(電流強度の時間変化)の一例を示す説明図である。
図10図9に示した電流波形のピーク強度を波形番号順に示す説明図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る生体磁気計測システムの一例を示すブロック図である。
図12】本発明の第3の実施形態に係る生体磁気計測システムにおいて、デュワーの突出部に設けられる可動板の一例を示す斜視図である。
図13】様々な素材で形成された図12のセンサ対向領域を介して計測対象部位の超音波画像を取得した場合の評価結果の例を示す説明図である。
図14図13の素材で形成されたセンサ対向領域を介して取得した計測対象部位の超音波画像の例を示す図である。
図15図13の素材で形成されたセンサ対向領域を介して取得した計測対象部位の超音波画像の例を示す図である。
図16図13の素材で形成されたセンサ対向領域を介して取得した計測対象部位の超音波画像の例を示す図である。
図17図13の素材で形成されたセンサ対向領域を介して取得した計測対象部位の超音波画像の例を示す図である。
図18図13の素材で形成されたセンサ対向領域を介して取得した計測対象部位の超音波画像の例を示す図である。
図19図13の素材で形成されたセンサ対向領域を介して取得した計測対象部位の超音波画像の例を示す図である。
図20図1図2および図11のデータ処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施の形態の説明を行う。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る生体磁気計測システムの一例を示すシステム構成図である。図1に示す生体磁気計測システム100は、磁気計測装置10、デュワー20、神経刺激装置30、超音波計測装置40およびデータ処理装置50を有している。磁気計測装置10は、生体磁気計測装置の一例である。
【0015】
磁気計測装置10は、複数の超伝導量子干渉素子(SQUID:Superconducting QUantum Interference Device)を含むセンサアレイ11と信号処理装置12とを有している。磁気計測装置10は、データ処理装置50に接続されており、データ処理装置50により動作が制御される。データ処理装置50は、サーバまたはPC(Personal Computer)等のコンピュータあり、プログラムを実行することにより、各種データ処理を実行可能である。
【0016】
センサアレイ11は、デュワー20から突出して設けられる突出部21の内部に収納される。例えば、突出部21の上面は、横断面湾曲形状をしている。センサアレイ11の各磁気センサ(SQUIDセンサ)の先端側の磁気の検出部は、突出部21の湾曲形状の内面に沿って内面に対向して配置される。突出部21は、センサアレイ11の磁気センサが収納されるセンサ収納部の一例である。
【0017】
突出部21上には、突出部21の突出方向に沿って配置されるガイドレール70が固定されている。ガイドレール70はガイド部材の一例である。ガイドレール70には、可動板60が突出部21の突出方向(図の右下方向、横断面の直交方向)にスライド可能に取り付けられている。例えば、可動板60は、突出部21の上面の湾曲形状に対応する湾曲形状を有し、突出部21の上面を滑るようにガイドレール70上を移動可能である。可動板60は、板部材の一例であり、突出部21の上面は、磁気センサに対向する対向面の一例である。
【0018】
例えば、可動板60は、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂板であり、可視光に対して透明で磁場を通す板材が使用される。なお、可動板60は、無色透明であることが好ましい。可動板60の素材は、非磁性物質であり、かつ、音響インピーダンスが人体に近いものが好ましい。可動板60は、ポリエチレンテレフタレート以外に、ポリカーボネートでもよい。可動板60は、超音波プローブが押圧されたときに撓まない程度の厚さ(例えば、1mm~5mm程度、好ましくは、1mm~2mm程度)に設定される。また、可動板60は、中央部分に比べて強度が必要な周辺部(ガイドレール70側)を厚くしてもよい。
【0019】
突出部21にガイドレール70を取り付けることで、可動板60を椅子またはベッドとともに移動させる機構を設ける場合に比べて、可動板60の移動機構を簡易に構築することができる。このため、すでに稼働中の磁気計測装置10にガイドレールを容易に取り付けることができ、コストを最小限にして、超音波画像を取得可能な磁気計測装置10に改造することができる。
【0020】
神経刺激装置30は、被検体の体表に取り付けられる電極を介して被検体に電気刺激を印加し、被検体の神経活動を誘発する。神経刺激装置30は、データ処理装置50に接続されており、データ処理装置50により動作が制御される。図1では、神経刺激装置30に接続されるケーブルと、被検体に電気刺激を印加する電極との記載を省略する。データ処理装置50は、神経刺激装置30と磁気計測装置10とを相互に同期させて動作させることができる。
【0021】
超音波計測装置40は、被検体からの生体磁場を磁気計測装置10により計測する前に、計測対象領域の超音波画像を取得する。図7で説明するように、超音波画像は、神経が写るため、神経の位置を判定することができる。超音波計測装置40は、データ処理装置50に接続されており、超音波計測装置40により取得された超音波画像は、データ処理装置50に転送され、データ処理装置50の表示装置50aに表示可能である。
【0022】
突出部21を含むデュワー20および超音波計測装置40は、磁気をシールドする磁気シールドルーム200内に配置されている。磁気シールドルーム200は、例えば、幅と高さが2.5m程度、長さが3m程度の内部空間を有し、デュワー20等の搬送と人の出入りのための扉210を有している。
【0023】
磁気シールドルーム200内には、突出部21の近くに被検体が座る椅子80が配置されてもよい。この実施形態では、椅子80に座った被検体は、前腕を可動板60の上面に載せることで肘部前面(掌側面)を可動板60に接触させ、可動板60を介して肘部を突出部21の上面に対向させる。このとき、可動板60は、デュワー20側に引き込まれている。
【0024】
磁気シールドルーム200の天井には、可動板60の上方にカメラ300が設置されている。カメラ300は、動画を撮影可能なビデオカメラでもよく、静止画を撮影可能なデジタルスチルカメラでもよい。カメラ300は、超音波計測装置40により被検体の超音波画像を取得するときに、ガイドレール70に沿って引き出された可動板60に載せられた被検体の計測対象部位(前腕)と、可動板60越しに見える図示しない超音波プローブとを撮影する。
【0025】
カメラ300は、データ処理装置50に接続されている。カメラ300により取得された画像は、データ処理装置50に転送され、表示装置50aに表示可能である。また、カメラ300がデジタルスチルカメラの場合、超音波プローブを操作する操作者によりカメラ300のレリーズ操作が行われてもよい。これにより、デジタルスチルカメラでは、操作者が意図する任意のタイミング(適切な超音波画像が取得できたタイミング)の画像を取得することができる。
【0026】
図2は、図1の生体磁気計測システムにおいて、カメラ300の位置を変更する例を示すブロック図である。図2では、カメラ300は、磁気シールドルーム200の天井ではなく、突出部21の下方の床面に設置されている。カメラ300を床面に設置することで、透明な可動板60を透して超音波プローブを当てている被検体の測定部位(測定位置)を撮影することができる。
【0027】
図3は、図1のデュワー20の突出部21に設けられる可動板60のスライド構造の一例を示す斜視図である。図3では、被検体(前腕)の記載を省略する。可動板60は、磁気計測装置10(図1)による生体磁場の計測時と超音波計測装置40(図1)による超音波計測前に、デュワー20側に引き込まれる。
【0028】
可動板60がデュワー20側に引き込まれた状態で、被検体は、椅子80(図1)に座り、前腕を突出部21上(可動板60上)に置き、肘部前面(掌側面)を可動板60上に接触させる。この状態は、磁気計測装置10による生体磁場の計測時の状態である。
【0029】
そして、肘部前面(掌側面)を可動板60に接触させたまま、可動板60は、ガイドレール70上を滑りながら移動し、デュワー20と反対側に引き出される。このように、可動板60は、突出部21の上面に対して離間可能である。可動板60は、ガイドレール70の先端に取り付けられたストッパー72に当たるまで移動される。例えば、可動板60は、先端がストッパー72に当たった状態で、図示しない留め金(ラッチ)等のロック機構によりストッパー72に固定される。
【0030】
可動板60は、腕部を載せた状態で移動するだけのため、可動板60がストッパー72に固定されている状態で、肘部前面(掌側面)の可動板60への接触状態は、可動板60がデュワー20側に引き込まれた状態と同じである。すなわち、肘部前面(掌側面)の可動板60への接触状態は、磁気計測装置10による生体磁場の計測時の状態と同じである。そして、可動板60がストッパー72に固定されている状態で、超音波計測装置40の超音波プローブが、可動板60の裏面(下側)に当てられ、可動板60を介して被検体の計測対象部位の複数箇所で超音波画像が取得される。
【0031】
この際、超音波プローブの先端部による押圧力は、可動板60の裏面にかかるが、可動板60は剛性により撓むことがなく、肘部前面(掌側面)の可動板60への接触状態は変化しない。このため、被検体の計測対象部位の形状を磁気計測装置10による生体磁場の計測時の状態と同じに維持して、超音波画像を取得することができる。
【0032】
ここで、被検体の計測対象部位の形状が同じとは、超音波画像の取得時と生体磁場の計測時とで計測対象部位の神経の位置が同じであることを示す。計測対象部位の神経の位置は、可動板60と対向する面方向での位置と、可動板60からの深さ方向の位置とを含む。以下では、可動板60と対向する面での位置をXY位置とも称し、可動板60(皮膚)からの深さをZ位置とも称する。
【0033】
可動板60は透明であるため、超音波プローブの操作者は、可動板60の裏面をのぞき込むことなく、超音波プローブの位置を容易に把握することができる。また、可動板60は透明であるため、可動板60が引き出された状態で、超音波プローブの位置を磁気シールドルーム200の天井に設置されたカメラ300により撮影可能であり、カメラ300により撮影された画像により認識可能である。
【0034】
超音波画像が取得され、被検体の計測対象領域での神経の位置を示す位置情報が取得された後、可動板60とストッパー72とのロックが解除される。神経の位置情報の取得については、図8で説明する。超音波計測装置40により取得された超音波画像と、カメラ300により撮影された画像とは、データ処理装置50に転送される。
【0035】
そして、肘部前面(掌側面)を可動板60に接触させたまま、可動板60がガイドレール70上をデュワー20側に引き戻され、図3の左側の状態になる。このとき、可動板60は、例えばロック機構によりデュワー20の外壁面に固定されてもよい。
【0036】
この状態で、神経刺激装置30(図1)から被検体に電気刺激が印加され、計測対象である肘部の神経から発生する磁場が磁気計測装置10により計測される。磁気計測装置10は、計測した磁場を示す生体磁場データをデータ処理装置50に転送する。なお、被検体に電気刺激を印加する電極は、超音波画像を取得する前に、予め被検体に取り付けられることが好ましい。
【0037】
データ処理装置50は、超音波画像とカメラ300により撮影された画像とから得られる神経の位置情報と、磁気センサの位置情報と、磁気計測装置10が計測した生体磁場データとに基づいて、神経活動電流を推定する。そして、データ処理装置50は、推定した電流を示す電流波形等を表示装置50aに表示する。データ処理装置50による神経活動電流を推定する処理は、図5で説明する。
【0038】
なお、図1および図3では、突出部21に取り付けられた水平方向に伸びるガイドレール70に沿って可動板60を水平方向に移動させることで、可動板60の下方に超音波プローブが入る空間を設け、超音波画像を取得する例を説明した。しかし、垂直方向に伸びるガイドレールをデュワー20に取り付け、可動板60をガイドレールに沿って垂直方向に移動させてもよい。この場合、可動板60の下方に超音波プローブが入る空間ができるまで可動板60を上側に移動した後、超音波画像が取得される。
【0039】
可動板60を垂直方向に移動可能にデュワー20に取り付ける場合、磁気シールドルーム200内に椅子を置かず、被検体が立った状態で、超音波画像の取得と生体磁場の計測とが実施されてもよい。なお、可動板60の垂直方向への移動と連動して垂直方向に移動する椅子を磁気シールドルーム200内に配置してもよい。この場合、可動板60は、垂直方向に移動する移動機構に椅子とともに取り付けられ、椅子とともに移動されてもよい。そして、被検体が椅子に座った状態で超音波画像の取得と生体磁場の計測とが実施される。
【0040】
また、図1において、椅子80を、可動板60の水平方向の移動と連動して水平方向に移動可能な移動機構に固定し、可動板60の移動とともに椅子80を移動させてもよい。この場合、肘部前面(掌側面)の可動板60への接触状態での形状(神経の位置)を、さらに変化しにくくすることができる。可動板60、または、可動板60を含む水平方向または垂直方向に移動可能な移動機構は、手動ではなく電動により移動されてもよい。
【0041】
なお、図4に示すように、可動板60に磁気を発するマーカーコイル62が設置され、また、図示しない超音波プローブに少なくとも1つの磁気センサが設置されてもよい。そして、マーカーコイル62から発生する磁場を超音波プローブの磁気センサで検出し、検出された磁場データに基づいて超音波プローブと可動板60との位置関係を計算してもよい。この場合、図1および図2に示すカメラ300を設置することなく、超音波プローブで得られる超音波画像(神経の画像)と、超音波プローブと可動板60との位置関係とから得られる計測対象の神経およびセンサアレイ11の位置関係に基づいて、センサアレイ11で計測した計測対象部位の生体磁場データから計測対象部位内の電流分布を推定することができる。
【0042】
図5は、図1の生体磁気計測システム100の機能の一例を示すブロック図である。上述したように、超音波計測装置40は、可動板60が突出部21の外側まで移動された状態で、可動板60の下側(図5では左側)にできる空間に入れられる超音波プローブ42により被検体Pの被計測部の超音波画像を取得する。そして、超音波計測装置40は、取得した超音波画像を、生体磁場の計測対象領域の形態画像(神経画像を含む)としてデータ処理装置50に出力する。
【0043】
カメラ300は、超音波画像の取得時に、可動板60とその周囲を撮影し、被検体Pの被計測部(例えば、前腕)、可動板60、および可動板60越しに見える超音波プローブが写る画像を取得する。そして、カメラ300は、取得した画像を超音波プローブの位置を示すプローブ位置情報として、データ処理装置50に出力する。なお、カメラ300は、図2に示したように、磁気シールドルーム200の床面に設置されてもよい。
【0044】
神経刺激装置30は、電気刺激の印加タイミングを示す印加タイミング情報をデータ処理装置50から受け、電気刺激を発生する。磁気計測装置10は、神経刺激装置30からの電気刺激により被検体Pの被計測部の神経に誘発された磁場を計測する。磁気計測装置10は、計測した磁場を磁場データとしてデータ処理装置50に出力する。
【0045】
データ処理装置50は、位置情報取得部52、位置関係取得部54および電流推定部56を有する。例えば、位置情報取得部52、位置関係取得部54および電流推定部56は、磁気計測装置10により計測された磁場データ等に基づいて、神経活動電流を推定する生体電流推定装置として機能する。位置情報取得部52、位置関係取得部54および電流推定部56は、データ処理装置50に搭載されるCPU(Central Processing Unit)が実行する生体電流推定プログラムにより実現されてもよい。
【0046】
位置情報取得部52は、超音波計測装置40から受信する神経画像を含む計測対象領域の形態画像(超音波画像)と、形態画像を取得したときにカメラ300により撮影された超音波プローブ42のXY位置を示す画像を含むプローブ位置情報とを受信する。プローブ位置情報は、時刻情報を含む。そして、位置情報取得部52は、形態画像とプローブ位置情報とに基づいて、神経の位置情報(例えば、神経の走行経路上の複数の点でのXY位置およびZ位置)を取得する。
【0047】
なお、図4に示したように、可動板60にマーカーコイル62が設置され、超音波プローブに磁気センサが設置される場合、位置情報取得部52は、カメラ300からのプローブ位置情報の代わりに、超音波プローブの磁気センサが検出する磁場データに基づいてプローブ位置情報を取得する。そして、位置情報取得部52は、超音波計測装置40から受信する神経画像を含む超音波画像とプローブ位置情報とに基づいて、神経の位置情報を取得する。
【0048】
位置関係取得部54は、位置情報取得部52が取得した神経の位置情報と、センサアレイ11の各磁気センサの位置情報とに基づいて、神経の位置と各磁気センサの位置との位置関係を示す位置関係情報を算出する。例えば、位置関係取得部54は、神経上の複数の点の三次元座標上での位置(XY位置およびZ位置)と、各磁気センサの三次元座標上での位置(XY位置およびZ位置)とに基づいて、神経上の複数の点と各磁気センサとの位置関係情報を算出する。
【0049】
各磁気センサの位置情報は、磁気計測装置10の設計データ等を使用して予め取得される。例えば、神経のZ位置および各磁気センサのZ位置は、突出部21の湾曲形状の内面に対抗する各磁気センサの先端のうち、最も突出しているZ位置を"0"(基準点)とするときのZ座標値を示し、基準点からの符号付きの距離を示す。
【0050】
電流推定部56は、位置関係取得部54が取得した神経の複数の点と各磁気センサとの位置関係情報に基づいて、例えば、空間フィルター法などの推定アルゴリズムを使用して計測対象領域内の指定された計測点での神経活動電流を推定する。そして、電流推定部56は、推定した神経活動電流を示す電流情報(電流分布)を出力する。
【0051】
なお、計測対象領域内で指定される計測点は、神経上の点でもよく、計測対象領域内の所定の範囲に含まれる複数の点でもよい。推定された神経活動電流は、例えば、後述する図9に示すように、時間変化を示す電流波形としてデータ処理装置50の表示装置50aに表示される。計測対象領域内の所定の範囲に含まれる複数の点が指定された場合、神経および神経の周囲に流れる電流の向きおよび電流の強度と、それらの時間変化を表示装置50aに表示することが可能である。
【0052】
図6は、図1および図2の生体磁気計測システム100の動作の一例を示すフロー図である。図6のステップS12、S16、S18は、センサアレイ11による生体磁場の計測で得られる被検体Pの磁場データおよび被検体Pの神経画像に基づいて被検体Pの神経活動に伴って発生する神経活動電流を推定する生体電流推定方法の一例を示す。また、図6のステップS12、S16、S18は、センサアレイ11による生体磁場の計測で得られる被検体Pの磁場データおよび被検体Pの神経画像に基づいて被検体Pの神経活動に伴って発生する神経活動電流を推定する生体電流推定プログラムの一例を示す。
【0053】
図6の動作を開始する前に、デュワー20の突出部21側に引き込まれている可動板60に被検体Pの計測対象部位が載せられる。例えば、計測対象部位は、肘部である。そして、肘部前面(掌側面)を可動板60に接触させたまま、可動板60が突出部21の外側までスライドされる。
【0054】
この状態で、ステップS10において、超音波プローブ42が、可動板60の内面に当てられ、可動板60越しに被検体Pの計測対象部位の超音波画像が取得される。また、超音波画像を取得した時点の超音波プローブ42と可動板60との位置関係を示す画像がカメラ300により撮影される。
【0055】
ステップS10による超音波画像の取得は、データ処理装置50が超音波計測装置40を制御することで実施される。ステップS10による超音波プローブ42の位置情報の取得は、データ処理装置50がカメラ300を制御することで実施される。データ処理装置50は、画像とともにカメラ300から出力される時刻情報と、超音波画像データに含まれる時刻情報とに基づいて、超音波プローブ42の位置情報と超音波画像とを対応付ける。
【0056】
可動板60にマーカーコイル62が設置され、超音波プローブ42に磁気センサが設置される場合、カメラ300による撮影の代わりに、超音波プローブ42の磁気センサは、可動板60に設置されたマーカーコイル62が発生する磁場を検出する。そして、ステップS10による超音波プローブ42の位置情報の取得は、超音波プローブ42の磁気センサが検出する磁場に基づいて実施される。データ処理装置50は、超音波計測装置40から出力される超音波画像データに含まれる時刻情報に基づいて、超音波プローブ42の可動板60に対する位置情報と超音波画像とを対応付ける。
【0057】
次に、ステップS12において、位置情報取得部52は、神経の複数箇所でのZ位置およびXY位置をそれぞれ取得する。神経のZ位置の取得方法は、図7で説明する。位置情報取得部52は、神経のXY位置を、時刻情報で対応付けられた超音波画像とプローブ位置情報とに基づいて取得する。Z位置およびXY位置は、超音波画像の取得時に指定された複数箇所の位置情報である。
【0058】
ステップS12の後、計測対象部位を載せた可動板60が突出部21上に戻される。なお、ステップS12は、可動板60が突出部21上に戻された後に実施されてもよく、可動板60が突出部21上に戻されている最中に実施されてもよい。また、ステップS12は、ステップS14の後、ステップS16を実施する前に実施されてもよい。
【0059】
次に、ステップS14において、磁気計測装置10が、被検体Pの計測対象領域の神経磁場を計測する。次に、ステップS16において、位置関係取得部54は、計測対象領域内において離散的に取得された神経とセンサアレイ11との位置情報に基づいて、例えば、n次関数近似により、連続的な位置情報(距離情報)を取得する。例えば、位置関係取得部54は、位置情報取得部52が取得した神経のZ位置およびXY位置と、予め取得されたセンサアレイ11の各磁気センサの位置情報とを受信する。そして、位置関係取得部54は、受信したZ位置およびXY位置と各磁気センサの位置情報とに基づいて、神経の複数箇所の位置とセンサアレイ11の各磁気センサの位置との位置関係を示す位置関係情報を取得する。
【0060】
次に、ステップS18において、電流推定部56は、位置関係取得部54が取得した神経の複数箇所の位置と各磁気センサの位置との位置関係情報とに基づいて、例えば、空間フィルター法を使用して、指定された計測点での神経活動電流を推定する。推定された神経活動電流は、例えば、電流波形または電流強度マップとして、データ処理装置50の表示装置50aに表示される。
【0061】
図7は、図1および図2の超音波計測装置40により取得される超音波画像の一例を示す説明図である。図7の左側は、可動板60の内面(図7では上側)に超音波プローブ42を当てて、可動板60を介して取得した超音波画像を示す。図7の右側は、可動板60を介さずに、超音波プローブ42を計測対象部位(皮膚)に直接当てて取得した超音波画像(比較例)を示す。
【0062】
図7に示す超音波画像は、計測対象領域である被検体Pの前腕のある位置で取得されたものであり、図7の上側が肘部前面(掌側面)の皮膚の表面を示す。本実施形態では、神経の推定活動電流の時間変化および神経内の電気信号の伝導速度等を算出するために、例えば、5枚前後の超音波画像が取得され、図7はそのうちの1枚である。超音波画像には、神経、血管および筋肉等の皮下組織が写るため、これら組織の位置関係および皮膚の表面からの距離を取得可能である。
【0063】
例えば、超音波画像において、皮膚の表面から神経までの距離(深さ)は、超音波画像上で位置を2箇所指定することで、超音波計測装置40の距離計測機能により計測可能である。超音波画像上の神経の位置は、計測対象領域(前腕等)毎に血管との位置関係および皮膚との位置関係が明らかである。また、超音波画像における神経の断面形状は、計測対象領域毎に固有である。
【0064】
ただし、超音波プローブ42を皮膚に押し当てて超音波画像を取得する場合、皮膚への押圧力の大きさ等により、皮膚表面からの神経の距離は変化してしまう。また、超音波プローブ42を皮膚に押し当てた場合、神経の位置と、血管との位置関係は変化してしまう。可動板60を介して超音波プローブ42を皮膚表面に当てることで、皮膚表面からの神経までの距離、神経の位置、および神経と血管との位置関係を、生体磁場の計測時と同じにすることができる。このため、例えば、超音波画像を画像解析し、皮膚の表面の位置と神経の位置とを求めることで、皮膚の表面から神経までの距離(深さ)を求めることが可能になる。この際、ディープラーニング等の機械学習の手法が使用されてもよい。
【0065】
超音波プローブ42により超音波画像を取得中に、計測対象領域のどこに超音波プローブ42を当てているかは、カメラ300で取得した画像をデータ処理装置50で解析することで判断することができる。すなわち、カメラ300で取得した画像により、プローブ位置情報(超音波プローブ42のXY位置)を取得することができる。
【0066】
また、超音波画像の上部中央には、超音波プローブ42のセンター位置を示すかぎマークが表示される。このため、プローブ位置情報と超音波画像とに基づいて、データ処理装置50は、計測対象領域上での神経のXY位置を取得することができる。
【0067】
なお、図7は、被検体Pの肘部前面(掌側面)の皮膚表面に可動板60を介して超音波プローブ42を当てて神経画像を含む超音波画像を取得する例を示す。しかしながら、肘部後側(背側面)の皮膚表面に可動板60を介して超音波プローブ42を当てて神経画像を含む超音波画像を取得してもよい。
【0068】
図8は、図5の位置関係取得部54により神経とセンサアレイ11の各磁気センサとの位置関係を取得する一例を示す説明図である。図8の左側の画像は、被検体Pの肘部を磁気計測装置10の突出部21上に置いた状態の計測対象領域Aを含む形態画像を示す。画像では前腕の肘側が見えており、画像の上側が上腕側であり、画像の下側が手首側である。図8の左側の画像は、カメラ300により撮影された画像に、計測対象領域A、神経のXY位置およびセンサアレイ11の各磁気センサのXY位置が重畳された画像である。なお、可動板60にマーカーコイル62が設置され、超音波プローブ42に磁気センサが設置される場合、図8の左側の画像は、計測対象領域A、神経のXY位置およびセンサアレイ11の各磁気センサのXY位置が重畳された画像になる。
【0069】
千鳥状に分散された小さい丸印は、センサアレイ11の各磁気センサのXY位置を示す。複数の二重丸は、神経のXY位置を示し、位置情報取得部52により取得される。二重丸の位置は、超音波プローブ42により超音波画像を取得した位置に含まれる。
【0070】
計測対象領域Aにおいて、センサアレイ11の配置領域の左右の外側には、複数のマーカーMCが配置される。マーカーMCは、X線画像等の形態画像とセンサアレイ11による磁場データの計測位置とを対応付けるために被検体Pとともに撮影されるコイルであり、所定の電流が流される。
【0071】
マーカーMCの位置とセンサアレイ11の各磁気センサの位置関係は、予め取得されている。このため、各磁気センサによりマーカーMCの位置を識別することで、各磁気センサが、図中の小さい丸印に位置することを検出することができる。また、図8の左側の画像から右側のグラフにかけて横方向の伸びる一点鎖線は、図1の超音波計測装置40により超音波画像を取得した位置を示す。
【0072】
図8の右側のグラフは、計測対象領域Aとその周囲における被検体Pの肘部前面(掌側面)の表面からの神経のZ位置(深さ)を、左側の画像に対応して示す。右側の小さい丸印は、磁気センサの先端部のZ位置(深さ)を示す。右側の小さい丸印をつなげて得られる曲線は、突出部21の表面および可動板60の内面の位置を示す。右側のグラフにおいて、丸印をつなげて得られる曲線のZ位置と神経のZ位置との距離は、磁気センサから神経までの距離を示す。
【0073】
可動板60を介して取得した超音波画像から得られる神経のZ位置は、生体磁場の計測時の神経のZ位置と同じである。このため、可動板60を介して超音波画像を取得することで、図8の右側に示す神経のZ位置と各磁気センサのZ位置との関係を得ることができる。すなわち、生体磁場の計測時の実際の神経のZ位置と各磁気センサのZ位置との関係を得ることができる。
【0074】
可動板60および磁気センサの先端をつなげた面は、横断面が湾曲形状を有するため、神経のZ位置は、Z座標の"0"地点を基準とするのではなく、磁気センサの先端のZ位置を基準にして算出される。電流推定部56は、図8の左側に示す神経のXY位置と各磁気センサのXY位置、および、図8の右側に示す神経のZ位置と各磁気センサのZ位置に基づいて、指定された計測点(図8の例では、左側に示す二重丸)での神経活動電流を推定する。
【0075】
図9は、図1および図2の磁気計測装置10により計測された磁場データに基づいて電流推定部56により推定された電流波形(電流強度の時間変化)の一例を示す説明図である。図9の左側は、被検体Pの前腕のX線画像に神経の走行方向を重ねた画像を、説明を分かりやすくするために示すもので、電流推定部56による神経活動電流の推定に使用されるものではない。X線画像の下側は手首側である。
【0076】
図9の右側の実線の電流波形は、位置情報取得部52が取得した神経のZ位置(皮膚からの距離(深さ))を考慮して推定した電流強度の時間変化を示す。図9の右側の破線の電流波形は、神経のZ位置が一定であるとして推定した電流強度の時間変化(比較例)を示す。
【0077】
図9に示す電流強度の時間変化は、前腕の手首側に神経刺激装置による電気刺激を与えたときに、電気刺激に応答して神経軸索に流れる電流により発生する生体磁場から推定される。電流は、神経軸索を遠位側(図9の下側)から近位側(図9の上側)に伝達される。このため、実線の電流波形および破線の電流波形のいずれも、近位側の神経ほど電流のピーク強度が現れる時間が遅れる。なお、電流波形の波形番号を、遠位側から近位側にかけて1~4で示す。
【0078】
また、神経生理学的には電流波形のピーク強度はほぼ一定か、電気刺激の印加位置から遠い近位側ほど弱くなる。しかしながら、破線の電流波形のピーク強度は、遠位側ほど小さくなっており、電流強度が正しく推定できていない。これは、神経のZ位置が一定であるとして電流強度を推定する場合、実際の神経の深さに対して誤差が生じ、その誤差が、磁場データから電流強度を推定するときの誤差として現れるためである。
【0079】
一方、神経の実際のZ位置に基づいて推定した実線の電流波形のピーク強度は、ほとんど変化しておらず、電流強度が正しく推定できていると判断できる。図8で説明したように、可動板60を介して超音波画像を取得することで、生体磁場の計測時の実際の神経のZ位置と各磁気センサのZ位置との関係を得ることができる。このため、電流推定部56は、神経の正しいZ位置に基づいて、正しい電流強度を推定することができ、実線で示す電流波形を得ることができる。
【0080】
図10は、図9に示した電流波形のピーク強度を波形番号順に示す説明図である。実線は、位置情報取得部52が取得した神経のZ位置を考慮して推定した電流強度の特性を示す。破線は、神経のZ位置が一定であるとして推定した電流強度の特性(比較例)を示す。実線の特性では、神経の位置を示す波形番号による電流強度の変化率が小さい。これに対して、破線の特性では、波形番号による電流強度の変化率が大きい。すなわち、図1に示す生体磁気計測システム100では、可動板60を使用することで、生体磁場の計測時と同じ神経の位置(Z位置)を超音波画像から得ることができ、実線で示すように、電流強度の推定精度を向上することができる。
【0081】
なお、計測対象領域A上に電流強度を推定する点を複数設け、神経および神経の周囲に流れる電流の向きまたは電流の強度分布を推定する場合にも、図9および図10での説明と同様に、電流強度を正しく推定することができる。
【0082】
以上、この実施形態では、透明な可動板60を使用することで、例えば、超音波プローブ42の操作者は、可動板60の裏面をのぞき込むことなく、超音波プローブ42の位置を把握することができる。また、磁気シールドルーム200の天井または床面に設置されたカメラ300により、可動板60越しに超音波プローブ42を撮影することできる。そして、撮影により得られた画像から、超音波画像を取得したときの超音波プローブ42の可動板60に対するXY位置を検出することができる。
【0083】
これにより、超音波画像とカメラ300により取得された画像とに基づいて、生体磁場の計測時の神経のZ位置およびXY位置を検出することができる。生体磁場を計測するときの可動板60の位置とセンサアレイ11の各磁気センサの位置との関係は、予め取得されている。したがって、神経の位置(Z位置およびXY位置)と各磁気センサの位置(Z位置およびXY位置)との位置関係を検出することができ、位置関係に基づいて生体磁場データから計測対象部位の電流分布を推定することができる。すなわち、神経画像を含む超音波画像を利用して、末梢神経の生体磁場データから生体内の電流分布を推定することができる。
【0084】
可動板60を、突出部21に対して離間可能に配置することで、計測対象部位を生体磁場の計測時と同じ状態に維持して、計測対象部位の超音波画像を取得することができる。これにより、生体磁場の計測時と異なる場所に計測対象部位を移動する場合にも、位置情報取得部52により、生体磁場の計測時と同じ神経の位置を検出することができる。このため、位置関係取得部54により、神経の位置と各磁気センサの位置との位置関係を正確に検出することができ、末梢神経の生体磁場データから誤差の少ない生体内の電流分布を推定することができる。
【0085】
突出部21にガイドレール70を取り付けることで、可動板60を椅子またはベッドとともに移動させる機構を設ける場合に比べて、可動板60の移動機構を簡易に構築することができる。このため、すでに稼働中の磁気計測装置10にガイドレールを容易に取り付けることができ、コストを最小限にして、超音波画像を取得可能な磁気計測装置10に改造することができる。
【0086】
(第2の実施形態)
図11は、本発明の第2の実施形態に係る生体磁気計測システムの一例を示すブロック図である。図1および図2と同様の要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。図11に示す生体磁気計測システム102は、図1の椅子80の代わりにベッド90および台座92を有すること、および、ガイドレール70の代わりにガイド溝96を有することを除き、図1の生体磁気計測システム100と同様の構成を有する。なお、生体磁気計測システム102は、図2と同様に、磁気シールドルーム200の床面における突出部21の下方にカメラ300が設置されてもよい。
【0087】
ベッド90には、図示しない被検体が、図11の左下側を頭にして、例えば仰向きに横たわる。被検体は、ベッド90上で仰向けの状態で膝部を可動板60上に載せる。すなわち、この実施形態では、膝部の神経から発生する生体磁場が計測され、計測した磁場データに基づいて、膝部の神経活動電流が推定される。突出部21および可動板60の形状、構造および相互の位置関係は、図1および図3と同様である。
【0088】
但し、この実施形態では、可動板60において横断面が湾曲形状の幅方向の両側(図1のガイドレール70との取り付け部分)は、板状の固定部材94を介してベッド90に固定されている。台座92は、ベッド90の下面に設けられた突出部が嵌め込まれるガイド溝96を有する。ガイド溝96は、突出部21の突出方向に沿って形成されており、ベッド90は、突出部21の突出方向に移動可能である。ガイド溝96はガイド部材の一例である。そして、可動板60がベッド90の移動ともに移動することで、可動板60は、図1と同様に移動可能である。
【0089】
膝部の超音波画像は、ベッド90をデュワー20と反対側に移動し、可動板60が突出部21の外側まで移動された状態で、超音波計測装置40により取得される。この際、上述した実施形態と同様に、超音波プローブと可動板60との位置関係を示す画像がカメラ300により撮影される。この後、可動板60が突出部21上(センサアレイ11上)に位置するまでベッド90がデュワー20側に移動され、膝部の生体磁場が磁気計測装置10により計測される。
【0090】
生体磁気計測システム102の機能は、図5の可動板60がベッド90と連動して移動することを除き、図5と同様である。また、生体磁気計測システム102の動作および取得される画像、波形等は、図6から図10の説明と同様である。
【0091】
以上、この実施形態において、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、この実施形態では、可動板60をベッド90とともに移動する機構を設けることで、可動板60を使用しない場合に比べて、被検体の膝部の神経の位置とセンサアレイ11の位置との関係を、超音波画像を利用して正確に取得することができる。これにより、可動板60を使用しない場合に比べて、膝部の神経から発生する生体磁場の計測に基づいて、膝部の神経の活動電流を正確に推定することができる。
【0092】
なお、図11では、可動板60をベッド90とともに水平に移動可能する例について説明した。しかしながら、ベッド90を垂直に移動する機構を台座92に設け、可動板60をベッド90とともに垂直に移動可能にしてもよい。この場合、可動板60の下方に超音波プローブが入る空間ができるまで可動板60を上側に移動した後、膝下部の超音波画像が取得される。
【0093】
(第3の実施形態)
図12は、本発明の第3の実施形態に係る生体磁気計測システムにおいて、デュワーの突出部に設けられる可動板の一例を示す斜視図である。上述した実施形態と同様の要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0094】
図12に示す可動板60Aは、図1図2および図11に示す可動板60の代わりにガイドレール70にスライド可能に取り付けられる。この実施形態の生体磁気計測システムは、可動板60Aの構造を除き、図1図2および図11に示した生体磁気計測システム100、102と同様である。なお、図4と同様に、可動板60Aにマーカーコイル62が設置されてもよい。
【0095】
可動板60Aは、可動板60Aの中央部に位置するセンサ対向領域61Aの構造が、図3等に示した可動板60のセンサ対向領域の構造と相違している。センサ対向領域61Aは、可動板60Aがデュワー20側に引き込まれた状態で、センサアレイ11の先端側と対向する位置に設けられる。
【0096】
センサ対向領域61Aは、可動板60Aがガイドレール70に沿って引き出された状態で、超音波計測装置40(図5)の超音波プローブ42が裏面側(下側)から当てられる領域である。なお、センサ対向領域61Aは、超音波プローブ42を当てる領域に設けられればよく、センサアレイ11の対向部分の領域より小さくてもよい。
【0097】
可動板60Aのセンサ対向領域61Aは、超音波プローブ42により超音波画像を取得しやすい素材または形状で形成されている。例えば、可動板60Aのセンサ対向領域61Aの厚さは、可動板60Aにおけるセンサ対向領域61Aの周囲の厚さより薄くすることが好ましい。センサ対向領域61Aの素材と厚さの例は、図13に示される。
【0098】
なお、可動板60Aにおけるセンサ対向領域61Aの周囲の材質と厚さは、可動板60A上に載置される被検体Pの計測対象部位の重量に対して変形しない剛性を有していれば、センサ対向領域61Aの素材と異なる素材で形成されてもよい。この際、可動板60Aにおけるセンサ対向領域61Aの周囲の材質は、可視光に対して透明であることが好ましい。
【0099】
図13は、様々な素材で形成された図12のセンサ対向領域61Aを介して計測対象部位の超音波画像を取得した場合の評価結果の例を示す説明図ある。図13では、手関節および肘部の正中神経の超音波画像と、足関節からそれぞれ8cmまたは12cm離れた位置での腓腹神経の超音波画像を取得した例が示される。なお、正中神経は、腓腹神経に比べて太い。
【0100】
12MHzおよび22MHzは、超音波プローブ42の周波数を示す。超音波プローブ42は、周波数が低いほど解像度が低くなるが、体深部に届きやすい。超音波画像の取得は、上肢または下肢の計測対象部位を可動板60Aに載せ、可動板60Aを引き出した状態で、センサ対向領域61Aを介して可動板60Aの下側から計測対象部位に超音波プローブ42を当てることで行われる。
【0101】
図13において、丸印は、超音波画像の画質(視認性)が良好であることを示し、三角印は、超音波画像の画質がやや良好であることを示す。X印は、超音波画像の画質が不良であることを示し、"-"は、未評価であることを示す。
【0102】
図13に示す評価により、超音波画像での正中神経および腓腹神経の視認性がよい素材は、1mm厚のABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、ポリスチレンおよびポリカーボネートであることが確認された。また、ABS樹脂の場合、2mm厚でも、超音波画像での正中神経および腓腹神経の視認性が良好であることが確認された。
【0103】
なお、可動板60Aは、上述した構造に限定されるものではなく、可動板60A上に載置された被検体Pの計測対象部位の超音波画像を取得できるものであればよい。例えば、可動板60Aのセンサ対向領域61Aに、所定の間隔を置いてスリットまたは穴を設けてもよい。また、計測対象部位の面積が小さい場合、計測対象部位に合わせてセンサ対向領域61Aに開口を設けてもよい。
【0104】
さらに、計測対象部位の面積が小さく、センサ対向領域61Aの強度を必要としない場合、樹脂等の固体素材ではなく、人体の音響インピーダンスに近い音響インピーダンスを有する素材(例えば、ジェル素材等)によりセンサ対向領域61Aが形成されてもよい。
【0105】
図14から図19は、図13の素材で形成されたセンサ対向領域61Aを介して取得した計測対象部位の超音波画像の例を示す図である。各超音波画像の上部中央には、超音波プローブ42のセンター位置を示すかぎマークが表示される。
【0106】
なお、図5で説明したように、被検体Pの計測対象部位の超音波画像は、可動板60Aが突出部21の外側まで移動された状態で、可動板60Aのセンサ対向領域61Aの下側にできる空間に入れられる超音波プローブ42により取得される。各超音波画像において、白い破線の丸で示された位置に神経が存在している。
【0107】
図14は、1mm厚のABS樹脂で形成されたセンサ対向領域61Aを介して取得された超音波画像である。図15は、2mm厚のABS樹脂で形成されたセンサ対向領域61Aを介して取得された超音波画像である。図16は、1mm厚のポリスチレンで形成されたセンサ対向領域61Aを介して取得された超音波画像である。
【0108】
図17は、1mm厚のポリカーボネートで形成されたセンサ対向領域61Aを介して取得された超音波画像である。図18は、センサ対向領域61Aにおいて計測対象部位に当たる部分を開口して取得された超音波画像である。図19は、1mm厚のアクリル樹脂で形成されたセンサ対向領域61Aを介して取得された超音波画像である。
【0109】
図14から図17は、図13において評価結果が良好(丸印)であった超音波画像であり、破線の白い丸印で示す神経が明確に視認可能である。図18のセンサ対向領域61Aに開口を形成して取得された超音波画像は、超音波プローブ42を計測対象部位に直接当てられるため、神経の画像を鮮明に取得可能である。一方、例えば、図19に示す1mm厚のアクリル樹脂を介して取得された超音波画像では、破線の白い丸印で示す神経をほとんど識別することができない。
【0110】
以上、この実施形態において、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、この実施形態では、可動板60Aの強度(剛性)を保ちつつ、画質(視認性)が良好な計測対象部位の超音波画像を取得することができる。これにより、超音波画像と図1等に示したカメラ300により取得された画像とに基づいて、神経の位置と各磁気センサの位置との位置関係を確実に検出することができ、位置関係に基づいて生体磁場データから計測対象部位の電流分布を推定することができる。すなわち、神経画像を含む超音波画像を利用して、末梢神経の生体磁場データから生体内の電流分布を推定することができる。
【0111】
図20は、図1図2および図11のデータ処理装置50のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。例えば、データ処理装置50は、CPU501、RAM502、ROM503、補助記憶装置504、入出力インタフェース505、及び表示装置50aを有し、これらがバス507で相互に接続されている。
【0112】
CPU501は、データ処理装置50の全体の動作を制御する。CPU501は、ROM503又は補助記憶装置504に格納された生体電流推定プログラムを実行することで、位置情報取得部52、位置関係取得部54および電流推定部56の機能を実現する。なお、CPU501は、磁気計測装置10および超音波計測装置40等の生体磁気計測システム100の動作を制御してもよい。
【0113】
RAM502は、CPU501のワークエリアとして用いられ、生体電流推定プログラムおよびZ位置、XY位置等の各種パラメータを記憶する。ROM503は、生体電流推定プログラムを記憶する。
【0114】
補助記憶装置504は、SSD(Solid State Drive)またはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置である。例えば、補助記憶装置504は、データ処理装置50の動作を制御するOS(Operating System)等の制御プログラム、超音波画像、形態画像データおよび各種パラメータ等が格納される。
【0115】
入出力インタフェース505は、マウスおよびキーボード等に接続される。入出力インタフェース505は、他の装置と通信するための通信インタフェースを含んでもよい。表示装置50aには、図9に示した電流波形を表示するウィンドウおよび操作ウィンドウが表示される。表示装置50aには、図7の左側に示した超音波画像または図8に示した神経とセンサアレイ11との位置関係を示す図が表示されてもよい。
【0116】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0117】
10 磁気計測装置
11 センサアレイ
12 信号処理装置
20 デュワー
21 突出部
30 神経刺激装置
40 超音波計測装置
42 超音波プローブ
50 データ処理装置
50a 表示装置
52 位置情報取得部
54 位置関係取得部
56 電流推定部
60、60A 可動板
61A センサ対向領域
62 マーカーコイル
70 ガイドレール
72 ストッパー
80 椅子
90 ベッド
92 台座
94 固定部材
96 ガイド溝
100、102 生体磁気計測システム
200 磁気シールドルーム
210 扉
300 カメラ
501 CPU
502 RAM
503 ROM
504 補助記憶装置
505 入出力インタフェース
507 バス
A 計測対象領域
MC マーカー
P 被検体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0118】
【文献】特許第4834076号公報
【文献】特許第3094988号公報
【文献】特開2019-98156号公報
【非特許文献】
【0119】
【文献】久本誠一,樋口雅俊,水槽を併用した超音波エコー法による体肢断面観察法の検討,バイオメカニズム学会誌,vol. 34,No. 1(2010)
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15
図16
図17
図18
図19
図20