(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】医療支援装置、医療支援方法及び医療支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20240426BHJP
【FI】
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2023518075
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2022045444
(87)【国際公開番号】W WO2023127461
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2021214424
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度 国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム、COI拠点「自分で守る健康社会拠点」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】岸 暁子
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-304833(JP,A)
【文献】特開2010-250489(JP,A)
【文献】特開2017-040981(JP,A)
【文献】特開2018-028895(JP,A)
【文献】特開2012-064087(JP,A)
【文献】特開2013-109700(JP,A)
【文献】特開2011-180949(JP,A)
【文献】特開2010-231308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの検査データ及び問診データのうち少なくとも1つを含む個人データを取得する取得部と、
前記個人データに基づいて、複合疾患を構成する個別疾患について前記ユーザの疾患状態を判断し、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせが複合疾患状態である場合に、前記複合疾患状態を改善するために前記ユーザが達成すべき改善目標であって、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせに基づいて設定される改善目標を出力する出力部と、
を有する、医療支援装置。
【請求項2】
前記改善目標は、前記個人データに含まれる検査値に対する改善目標値を含む、
請求項1に記載の医療支援装置。
【請求項3】
前記個人データには、前記ユーザの生活習慣に関するデータが含まれており、
前記改善目標は、前記ユーザの生活習慣に対する改善目標を含む、
請求項1に記載の医療支援装置。
【請求項4】
前記生活習慣は、前記ユーザのストレス、前記ユーザの睡眠時間、前記ユーザの運動量、前記ユーザの食生活、前記ユーザの喫煙量、及び、前記ユーザの飲酒量の少なくとも1つを含む、
請求項3に記載の医療支援装置。
【請求項5】
前記出力部は、学習済みモデルに対し、前記個人データを入力することで得られる前記改善目標を、前記ユーザが達成すべき前記改善目標として出力し、
前記学習済みモデルは、前記個人データに基づいて、複合疾患を構成する個別疾患について前記ユーザの疾患状態を判断し、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせが複合疾患状態である場合に、前記改善目標を出力する能力を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の医療支援装置。
【請求項6】
前記個人データと、前記個別疾患の疾患状態との対応関係を定義する個別疾患定義情報と、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせが複合疾患状態である場合の改善目標を定義する目標定義情報と、を記憶する記憶部、を有し、
前記出力部は、前記個別疾患定義情報を参照することで、前記ユーザの疾患状態を判断し、前記目標定義情報を参照することで、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせが複合疾患状態である場合の前記改善目標を取得し、取得した前記改善目標を、前記ユーザが達成すべき前記改善目標として出力する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の医療支援装置。
【請求項7】
患者に選択肢として提示する行動目標の選択基準を定義する行動目標定義情報を記憶する記憶部、を有し、
前記個人データ、前記改善目標又は前記ユーザの複合疾患状態と、前記選択基準とを比較することで、前記改善目標を達成するための行動目標に関する複数の選択肢を決定し、決定した複数の選択肢の中から、前記ユーザが取り組む行動目標を前記ユーザから受け付ける、第1受付部、を有し、
前記出力部は、前記第1受付部で受け付けた、前記ユーザが取り組む行動目標を、前記ユーザを診察する医師が利用する端末に出力する、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の医療支援装置。
【請求項8】
前記第1受付部は、前記ユーザが取り組む行動目標に関するアンケートの回答の入力を受け付け、
前記第1受付部で受け付けた前記アンケートの回答に基づいて、前記ユーザが取り組む行動目標の達成度に関するスコアを算出する算出部と、を有し、
前記出力部は、前記算出部で算出された前記スコアを出力する、
請求項7に記載の医療支援装置。
【請求項9】
前記行動目標は、前記ユーザのストレス改善に関する行動目標、前記ユーザの睡眠時間改善に関する行動目標、前記ユーザの運動量改善に関する行動目標、前記ユーザの食生活改善に関する行動目標、前記ユーザの喫煙量削減に関する行動目標、及び、前記ユーザの飲酒量削減に関する行動目標の少なくとも1つを含む、
請求項
7に記載の医療支援装置。
【請求項10】
前記出力部は、
前記複合疾患を構成する個別疾患について、該個別疾患に関連する1以上の検査項目の基準値と、前記ユーザを検査することで得られた該検査項目に対する検査データとを用いて検査項目ごとのリスクを算出し、
算出した検査項目ごとのリスクが所定条件を満たす場合、前記ユーザは前記複合疾患状態であると判断し、前記複合疾患状態を改善するために前記ユーザが達成すべき改善目標を出力する、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の医療支援装置。
【請求項11】
前記算出した検査項目ごとのリスクが所定条件を満たす場合は、前記算出した検査項目ごとのリスクに基づく値が所定の閾値以上であることであり、
前記出力部は、前記算出した検査項目ごとのリスクに基づく値を、前記複合疾患状態に関するリスクを示す値として出力する、
請求項10に記載の医療支援装置。
【請求項12】
医療支援装置が実行する医療支援方法であって、
ユーザの検査データ及び問診データのうち少なくとも1つを含む個人データを取得するステップと、
前記個人データに基づいて、複合疾患を構成する個別疾患について前記ユーザの疾患状態を判断し、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせが複合疾患状態である場合に、前記複合疾患状態を改善するために前記ユーザが達成すべき改善目標であって、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせに基づいて設定される改善目標を出力するステップと、
を含む、医療支援方法。
【請求項13】
コンピュータに、
ユーザの検査データ及び問診データのうち少なくとも1つを含む個人データを取得するステップと、
前記個人データに基づいて、複合疾患を構成する個別疾患について前記ユーザの疾患状態を判断し、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせが複合疾患状態である場合に、前記複合疾患状態を改善するために前記ユーザが達成すべき改善目標であって、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせに基づいて設定される改善目標を出力するステップと、
を実行させるための、医療支援プログラム。
【請求項14】
医療支援装置と通信する端末であって、
ユーザの検査データ及び問診データのうち少なくとも1つを含む個人データに基づいて判断された、複合疾患を構成する個別疾患についての前記ユーザの疾患状態に関して、複合疾患状態を改善するために前記ユーザが達成すべき改善目標を前記医療支援装置から取得する取得部であって、前記医療支援装置は、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせが前記複合疾患状態である場合に、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせに基づいて前記改善目標を設定する、取得部と、
前記改善目標を表示させる表示部と、
医師から、前記改善目標の修正を受け付ける受付部と、
前記医師から前記改善目標の修正を受け付けた場合に、修正された前記改善目標を前記医療支援装置に送信する送信部と、
を有する、端末。
【請求項15】
医療支援装置と通信する端末が実行する医療支援方法であって、
ユーザの検査データ及び問診データのうち少なくとも1つを含む個人データに基づいて判断された、複合疾患を構成する個別疾患についての前記ユーザの疾患状態に関して、複合疾患状態を改善するために前記ユーザが達成すべき改善目標を前記医療支援装置から取得するステップであって、前記医療支援装置は、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせが前記複合疾患状態である場合に、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせに基づいて前記改善目標を設定する、ステップと、
前記改善目標を表示させるステップと、
医師から、前記改善目標の修正を受け付けるステップと、
前記医師から前記改善目標の修正を受け付けた場合に、修正された前記改善目標を前記医療支援装置に送信するステップと、
を含む、医療支援方法。
【請求項16】
医療支援装置と通信するコンピュータに、
ユーザの検査データ及び問診データのうち少なくとも1つを含む個人データに基づいて判断された、複合疾患を構成する個別疾患についての前記ユーザの疾患状態に関して、複合疾患状態を改善するために前記ユーザが達成すべき改善目標を前記医療支援装置から取得するステップであって、前記医療支援装置は、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせが前記複合疾患状態である場合に、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせに基づいて前記改善目標を設定する、ステップと、
前記改善目標を表示させるステップと、
医師から、前記改善目標の修正を受け付けるステップと、
前記医師から前記改善目標の修正を受け付けた場合に、修正された前記改善目標を前記医療支援装置に送信するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項17】
医療用支援装置と端末とを含むシステムであって、
前記医療用支援装置は、
ユーザの検査データ及び問診データのうち少なくとも1つを含む個人データを取得する取得部と、
前記個人データに基づいて、複合疾患を構成する個別疾患について前記ユーザの疾患状態を判断し、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせが複合疾患状態である場合に、前記複合疾患状態を改善するために前記ユーザが達成すべき改善目標であって、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせに基づいて設定される改善目標を出力する出力部と、
を有し、
前記端末は、
前記改善目標を取得する取得部と、
前記改善目標を出力する出力部と、
を有する、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療支援装置、医療支援方法及び医療支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ユーザの健康状態を改善することを目的としたシステムが知られている。例えば、特許文献1には、利用者が摂取した食品の栄養価及び利用者の健康状態に基づいて、利用者の健康状態を維持又は改善する施策を示すことが可能な健康管理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、現在、糖尿病のような個別の疾患の治療を支援することを目的とした医療用機器や医療用プログラムは欧州等で承認されて提供されている。しかしながら、当該医療用機器や医療用プログラムは、あくまで個別の疾患を対象としていることから、例えばメタボリックシンドロームのように、複数の疾患が複合した患者の治療を支援することは困難である。
【0005】
そこで、本開示は、複数の疾患が複合した状態であっても、ユーザの治療を支援することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る医療支援装置は、ユーザの検査データと問診データとを含む個人データを取得する取得部と、前記個人データに基づいて、複合疾患を構成する個別疾患について前記ユーザの疾患状態を判断し、前記個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは前記個別疾患の疾患状態及び前記個人データの組み合わせが複合疾患状態である場合に、前記複合疾患状態を改善するために前記ユーザが達成すべき改善目標を出力する出力部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数の疾患が複合した状態であっても、ユーザの治療を支援することが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る医療支援システムの一例を示す図である。
【
図2】医療支援システムが行う処理の概要を示すフローチャートである。
【
図4】判断方法1に基づいて複合疾患状態を判断した場合の一例を示す図である。
【
図5】判断方法2に基づいて複合疾患状態を判断した場合の一例を示す図である。
【
図6】医療支援システムを利用した医療支援の流れを示す模式図である。
【
図7】医療支援装置、患者用端末及び医師用端末のハードウェア構成例を示す図である。
【
図8】医療支援装置の機能ブロック構成例を示す図である。
【
図9A】患者情報、個別疾患定義情報、複合疾患/目標定義情報、アンケート定義情報及びスコア定義情報の一例を示す図である。
【
図9B】アドバイス定義情報の一例を示す図である。
【
図11】患者用端末の機能ブロック構成例を示す図である。
【
図12】医師用端末の機能ブロック構成例を示す図である。
【
図13】医療支援システムが行う処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【
図14】医療支援システムが行う処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【
図17A】個別疾患定義情報の具体例を示す図である。
【
図17B】個別疾患定義情報の具体例を示す図である。
【
図18】複合疾患/目標定義情報の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0010】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る医療支援システム1の一例を示す図である。医療支援システム1は、患者の疾患治療を支援するシステムであり、医療支援装置10と、患者用端末20(第1端末)と、医師用端末30(第2端末)とを有する。医療支援装置10と、患者用端末20と、医師用端末30とは、無線又は有線の通信ネットワークNを介して接続され、相互に通信を行うことができる。なお、患者用端末20及び医師用端末30は、それぞれ1つであってもよいし複数であってもよい。
【0011】
医療支援システム1は、複数の疾患を患っている患者(「ユーザ」と称してもよい)に対し、患者自身に疾患状態を理解させるとともに、自らの行動変容を促すことで疾患状態からの回復を支援することを目的とするシステムである。医療支援システム1は、例えば、以下の複数の機能を備えていてもよい。
1.患者の疾患状態を判断する機能
2.医師に対し、患者の疾患状態を示す機能
3.医師に対し、疾患状態を改善するために達成すべき改善目標を提案するとともに、患者が達成すべき改善目標の設定を受け付ける機能
4.患者に対し、患者自身の疾患状態を示すとともに、達成すべき改善目標を提示する機能
5.改善目標を達成するために取り組むべき行動目標(「チャレンジ」と称してもよい)の設定を患者から受け付ける機能
6.患者から受け付けた、日々の行動目標に関するアンケート回答に基づいて、患者が取り組むべき行動目標の達成度に関するスコアを表示する機能
医療支援装置10は、患者の疾患状態の判断、改善目標の提案及び日々の行動目標の設定受付等を行うとともに、患者用端末20及び医師用端末30の画面に、患者に関する各種の情報を表示させる機能を備える。
【0012】
患者用端末20は、患者が利用する端末であり、医療支援装置10から受信した情報を表示する機能、及び、患者から各種の入力を受け付ける機能を備える。患者用端末20は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等であってもよい。
【0013】
医師用端末30は、医師が利用する端末であり、医療支援装置10から受信した情報を表示する機能、及び、医師から各種の入力を受け付ける機能を備える。医師用端末30は、医療機関に設置されたパーソナルコンピュータ等であることを想定しているが、これに限定されず、例えば、スマートフォンやタブレット端末であってもよい。なお、医療支援装置10はWebサーバ機能を備えており、医師用端末30にインストールされたウェブブラウザが医療支援装置10にアクセスすることで、医師用端末30での情報表示及び入力の受付を実現するようにしてもよい。若しくは、患者用端末20にインストールされた専用のアプリケーションが、医療支援装置10にアクセスすることで、医師用端末30での情報表示及び入力の受付を実現するようにしてもよい。
【0014】
なお、患者用端末20には、患者が身に着けるウェアラブルデバイスが含まれていてもよい。医療支援システム1は、当該ウェアラブルデバイスから、患者に関する各種データ(以下、「生体情報」と言う。)を取得して記憶するようにしてもよい。例えば、患者は、ウェアラブルデバイスを身に着けて各種の生体情報(心拍数、歩数、運動量など)を医療支援装置10に送信するとともに、スマートフォンを用いて、行動目標の設定を行ったり、行動目標の達成度に関するスコアを参照したりするようにしてもよい。
【0015】
図2は、医療支援システム1が行う処理の概要を示すフローチャートである。まず、医療支援装置10は、患者の個人データを取得する(S10)。個人データには、医療機関等で患者の体の状態を検査することで得られる検査データと、患者に対し質問をすることで得られる問診データとのうちいずれか一方又は両方が含まれる。検査データには、例えば、身長、体重、体脂肪、BMI、腹囲など患者の身体を測定することで得られるデータ(身体測定データ)、血液検査をすることで得られるデータ(血液検査データ)、尿検査をすることで得られるデータ(尿検査データ)、臓器及び血管など体の部位の状態を調べることで得られるデータ(臓器データ)等が含まれていてもよい。
【0016】
また、血液検査データには、例えば、中性脂肪、HDL-コレステロール、LDLコレステロール、Non-HDLコレステロールなどの脂質関連データ、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ―GPTなどの肝・膵機能関連データ、クレアチニンなどの腎機能関連データ、ヘマトクリット値、血色素量、白血球量、赤血球量など貧血関連、収縮期血圧、拡張期血圧などの血圧関連、あるいは、空腹時血糖(電位差法)、HbA1c(NGSP値)などの血糖関連や尿酸値をはじめとする血液一般のデータなどのデータが含まれていてもよい。また、尿検査データには、例えば、尿糖、尿蛋白、尿潜血などのデータが含まれていてもよい。
【0017】
問診データには、例えば、患者が過去に患った病気に関するデータ(既往歴)、現在患者が患っていることが既に判明している病気に関するデータ(例えば病名)、家族や近親者の病気に関する過去及び現在のデータ(家族歴)、薬歴に関するデータ(過去及び現在の薬の使用の有無、服用していた/服用している具体的な薬の名前等)、社会歴に関するデータ(学歴、年収、家族構成等)、喫煙情報(過去および現在の喫煙習慣の有無や喫煙量、喫煙継続期間、改善意欲の有無等)、飲酒情報(飲酒経験の有無、飲酒量、種類及び期間等の飲酒習慣の具体的な内容等)、食生活(食事回数、食事内容、外食有無及び食事内容の改善意欲の有無等)、活動量(日頃の運動習慣の有無、その具体的な運動量、頻度及び活動内容の改善意欲の有無等)、体重変化に関する情報、睡眠情報(睡眠の質や量に関する情報、改善意欲の有無など)、職務内容、勤怠情報、趣味嗜好、ストレスなどの生活に関するデータ等が含まれていてもよい。既往歴、病名及び家族歴は、まとめて「病歴」とも称される。なお、本実施形態では、病歴には、既往歴、病名及び家族歴が全て含まれることに限られない。既往歴、病名及び家族歴のうち少なくとも1つが含まれるものを病歴と称してもよい。
【0018】
続いて、医療支援装置10は、取得した患者の個人データに基づいて、患者が患っている疾患状態を判断する(S11)。より具体的には、医療支援装置10は、患者の個人データから、患者が患っている個別の疾患(以下、「個別疾患」と言う。)の有無を判断する。個別疾患とは、1つの疾患を意味しており、例えば、肥満症、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、脂肪肝、心血管疾患、脳血管疾患、骨粗鬆症、認知症、歯周病、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患、肝硬変、高尿酸血症、胃潰瘍、末梢神経症、アレルギーなどの生活習慣関連疾患がある。また、個別疾患には、これら以外にも、がん、腎不全、慢性閉塞性肺疾患、関節症、腰痛症、白内障、緑内障、睡眠時無呼吸症候群など、様々な疾患が含まれる。次に、医療支援装置10は、患者が、予め組み合わせパターンとして定義された複数の個別疾患に該当する場合、若しくは、予め組み合わせパターンとして定義された複数の個別疾患及び個人データの条件に該当する場合、当該患者は「複合疾患状態」であると判断する。また、医療支援装置10は、患者が、予め組み合わせパターンとして定義された複数の個別疾患に該当しない場合、若しくは、予め組み合わせパターンとして定義された複数の個別疾患に該当するが、個人データの条件には該当しない場合、当該患者は「複合疾患状態」ではないと判断する。つまり、「複合疾患状態」とは、予め組み合わせパターンとして定義された複数の個別疾患に該当する状態、若しくは、予め組み合わせパターンとして定義された複数の個別疾患及び個人データの条件に該当する状態であることを意味する。なお、「個人データの条件」とは、個人データのうち所定項目が所定条件を充足していることを意味する。「個人データの条件」の例として、例えば、個人データのうち性別を示す項目が男性であること、個人データのうち年齢を示す項目がXX歳以上であること、個人データのうち腹囲を示す項目がXXcm以上であることなどが挙げられる。
【0019】
複合疾患状態の具体例として、例えば、メタボリックシンドロームが挙げられる。メタボリックシンドロームの場合、「予め組み合わせパターンとして定義された複数の個別疾患」は、糖尿病(血糖値が異常値)、高血圧症(血圧が異常値)及び脂質異常(脂質が異常値)のうち少なくとも2つ以上に該当することであり、「個人データの条件」は、少なくとも腹囲が85cm(男性の場合)以上又は90cm(女性の場合)以上であることと定義されていてもよい。また、「個人データの条件」には、腹囲に加えて、個人データから取得可能な各種疾患の診断基準値を満たすことと定義されていてもよい。医療支援装置10は、当該定義に従い、患者が糖尿病、高血圧症、脂質異常のうち2以上に罹患しており、かつ、男性であって腹囲が85cm以上(女性の場合は90cm以上)である場合、当該患者は複合疾患状態(メタボリックシンドローム)であると判断する。なお、メタボリックシンドロームは、腹囲が85cm(男性の場合)以上又は90cm(女性の場合)以上であることに変えて、患者が肥満症(より具体的には内臓脂肪型肥満状態)であることが判断基準であってもよい。この場合、メタボリックシンドロームにおける「予め組み合わせパターンとして定義された複数の個別疾患」は、肥満症(内臓脂肪型肥満状態)に加えて、糖尿病、高血圧症及び脂質異常のうち少なくとも2つ以上に該当することと定義されていてもよい。
【0020】
また、複合疾患状態の他の例としては、現時点では特定の疾患名までは付いていないものの、慢性的な個別疾患、例えば、糖尿病、高血圧、悪性新生物(がん)、心疾患(高血圧性は除く)あるいは脳血管疾患などの疾患や、不安、うつ状態、疼痛、身体性障害や神経障害などの疾患のような個別疾患を複数併発している状態が挙げられる。このような複合疾患状態では治療が独立して行われることが多く、薬剤数の増加や服用パターンが複雑化しやすいということになりやすく、また、治療ガイドラインも一般に単一疾患を対象としていることから治療の断片化や各疾患を治療する医者間でのコミュニケーションが十分ではないことが生じやすかった。具体的には、糖尿病を発症していることで、脳卒中や急性心筋梗塞・心不全、うつ病の発症リスクが高まり、更に認知症の発症リスクも高まることが報告されていることから、患者によっては糖尿病とうつ病を併発している状態や、糖尿病とうつ病と認知症を併発しているような状態が考えられる。本発明では、このように複数の個別疾患が併発あるいは発症リスクが高まっている状態を複合疾患状態として捉えてもよい。
【0021】
医療支援装置10は、より具体的には、以下の方法に従って、患者が複合疾患状態に該当するか否かを判断するようにしてもよい。更に、医療支援装置10は、複合疾患状態に関するリスク値を判断するようにしてもよい。複合疾患状態に関するリスク値は、患者が患っている複合疾患全体としての重症度を意味し、リスク値が大きいほど重症であることとしてもよい。
【0022】
(判断方法1)
「予め組み合わせパターンとして定義された複数の個別疾患」は、上記したような個別疾患のうち少なくとも所定数以上に該当することと定義されていてもよい。所定数は2でもよいし、3以上であってもよい。また、医療支援装置10は、患者が予め組み合わせパターンとして定義された個別疾患のうち所定数以上に罹患しているあるいはその個別疾患を発症するリスクが高い場合、当該患者は複合疾患状態であると判断するようにしてもよい。また、医療支援装置10は、複合疾患状態において、予め組み合わせパターンとして定義された複数の個別疾患のうち該当する個別疾患の数に基づいて、複合疾患状態のリスク値を判断するようにしてもよい。例えば、該当する個別疾患の数が5つである場合、医療支援装置10は、リスク5と判断するようにしてもよい。なお、数字が大きいほどリスクが大きいことを意味する。
【0023】
図3は、個人データの一例を示す図である。
図3には、内臓脂肪に関する検査項目である腹囲及びBMIと、脂質に関する検査項目である中性脂肪、HDLコレステロール及びLDLコレステロールと、血圧に関する検査項目である収縮期血圧及び拡張期血圧と、血糖に関する検査項目である空腹時血糖及びHbA1Cに対し、対象者A~Iを検査することで得られた個人データ(検査データ)の一例を示す。
【0024】
図4は、判断方法1に基づいて複合疾患状態を判断した場合の一例を示す図である。なお、〇は該当、×は非該当であることを示す。
図4の例(
図5の例も同様)では、医療支援装置10は、複合疾患状態としてメタボリックシンドロームに該当するか否かを判定するものとする。例えば、内蔵脂肪に関する個人データ(腹囲及びBMI)が所定の基準を満たさない患者は、肥満症に該当する。脂質に関する個人データ(中性脂肪等)が所定の基準を満たさない患者は、脂質異常症に該当する。血圧に関する個人データ(収縮期血圧等)が所定の基準を満たさない患者は、高血圧症に該当する。血糖に関する個人データ(空腹時血糖等)が所定の基準を満たさない患者は、糖尿病に該当する。なお、医療支援装置10は、患者が各個別疾患に該当するか否かに加えて、該当する各個別疾患の重症度を、後述する個別疾患定義情報100b又は学習済モデルを用いて判断するようにしてもよい。「判定」は複合疾患状態(ここではメタボリックシンドローム)に該当するか否かを示す。「(参考)メタボ判定」は、実際の医師が学会の基準に従ってメタボリックシンドロームの判定を行った判定結果を参考として記載したものである。〇はメタボリックシンドロームに該当し、△はメタボリックシンドローム予備群に該当することを意味する。
【0025】
図4の例では、予め組み合わせパターンとして定義された複数の個別疾患のうち2以上の個別疾患に該当する場合に、複合疾患状態(メタボリックシンドローム)と判断しているが、これに限定されない。例えば、3以上の個別疾患に該当する場合に、複合疾患状態(メタボリックシンドローム)と判断されることとしてもよい。
【0026】
(判断方法2)
医療支援装置10は、予め組み合わせパターンとして定義された複数の個別疾患の各々に関連する1以上の検査項目の基準値(カットオフ値と呼ばれてもよい)と、患者を検査することで得られた当該検査項目に対する検査データとを用いて検査項目ごとのリスクを算出し、算出した検査項目ごとのリスクを平均した値が所定の閾値以上である場合、当該患者は複合疾患状態であると判断するようにしてもよい。また、医療支援装置10は、検査項目ごとのリスクを平均した値が所定の閾値未満である場合には複合疾患状態ではないと判定するようにしてもよい。
【0027】
また、医療支援装置10は、算出した検査項目ごとのリスクを平均した値を、複合疾患状態に関するリスク値であると判断するようにしてもよい。このとき、医療支援装置10は、検査項目ごとのリスクを平均した値を、「平均値=検査項目ごとのリスクの合計値÷検査項目数」の式を用いて算出するようにしてもよい。
【0028】
また、医療支援装置10は、検査項目ごとのリスクを、「リスク=(患者の検査データ-基準値)÷基準値」の式、又は、「リスク=(基準値-患者の検査データ)÷基準値」の式を用いて算出するようにしてもよい。具体的には、基準値を超えると異常値とみなされる検査項目については、「リスク=(患者の検査データ-基準値)÷基準値」の式を利用し、HDLコレステロールのように基準値未満であると異常値とみなされる検査項目については、「リスク=(基準値-患者の検査データ)÷基準値」の式を利用するようにしてもよい。
【0029】
また、医療支援装置10は、検査項目ごとのリスクを、「リスク=(患者の検査データ-基準値)÷基準値×調整係数」の式を用いて算出するようにしてもよい。調整係数は、各検査項目が複合疾患状態に与える重要度を示す「重み値」であり、検査項目毎に予め定められていてもよい。また、医療支援装置10は、算出した検査項目ごとのリスクを平均した値に、「検査項目のうち検査データが基準値を超えた項目の数」に0.1を乗算した数を加算し、加算後の検査項目ごとのリスクを平均した値が所定の閾値以上である場合、当該患者は複合疾患状態であると判断するようにしてもよい。
【0030】
図5は、判断方法2に基づいて複合疾患状態を判断した場合の一例を示す図である。特に言及しない点は
図4と同一でよい。
図5における各数値は、
図3の測定データに基づいて算出されたリスクを示す。また、
図5における複合疾患状態のリスク値(複合疾患状態に関するリスク値)は、検査項目ごとのリスクを平均した値に、「検査項目のうち検査データが基準値を超えた項目の数」に0.1を乗算した数を加算したものである。判定方法2において、複合疾患状態のリスク値には、検査項目のうち検査データが基準値を超えた項目の数に0.1を乗算した数が加算されることから、基準値を超えた検査項目数の大小がリスク値に影響することになる。これにより、複合疾患状態のリスクを適切に表現することが可能になる。
【0031】
判断方法2を用いる場合、医療支援装置10は、患者は、個別疾患に対応する1以上の検査項目のうち、リスクが所定値(例えば0)以上である項目が1以上存在する個別疾患に該当すると判断してもよい。例えば
図5の例では、対象者Fは、胸囲、BMI、LDLコレステロール、収縮期血圧及び拡張期血圧のリスクが所定値以上である。したがって、医療支援装置10は、対象者Fは肥満症と脂質異常症と高血圧症という個別疾患に該当すると判断してもよい。
【0032】
続いて、医療支援装置10は、患者が複合疾患状態であると判断した場合に、複合疾患状態を改善するために患者が達成すべき改善目標を出力する(S12)。当該改善目標は、医師用端末30に表示され、医師の確認(承認)により設定(確定)されるようにしてもよい。また、医師から、出力された改善目標の修正を受け付けるようにしてもよい。
【0033】
改善目標は、患者の個人データに含まれる検査値に対する改善目標値であってもよい。また、当該改善目標は、患者自身の自己改善目標でもよいし、医者と患者で検討した改善目標であってもよい。例えば、複合疾患状態がメタボリックシンドロームである場合、改善目標として、例えば、血圧を135/85mmHg未満にする、LDLコレステロールを140mg/dl未満にする、腹囲を85cm以下にする、などが挙げられる。
【0034】
なお、医療支援装置10は、患者の個人データに含まれる検査値に対する改善目標値を、当該患者の複合疾患状態における個別疾患の組み合わせ若しくは個別疾患及び個人データの組み合わせに基づいて設定するようにしてもよい。具体的な改善目標値は、複合疾患状態における個別疾患の組み合わせ、若しくは、複合疾患状態における個別疾患及び個人データの組み合わせに応じて予め定められていてもよい。
【0035】
また、改善目標値は、複合疾患状態における個別疾患の組み合わせに含まれる個別疾患の数が多いほど、厳しい値(例えば正常値に近い値であり以下も同様)に設定されるようにしてもよい。また、患者の年齢がある閾値を超えている場合(例えば男性は45歳以上、女性は55歳以上等)、改善目標値は、当該閾値を超えてない場合よりも厳しい値に設定されるようにしてもよい。また、患者が喫煙している場合、改善目標値は、喫煙していない患者よりも厳しい値に設定されるようにしてもよい。つまり、複合疾患状態を構成する個別疾患の数(危険因子の数)が多いほど、改善目標値は厳しい値に設定されてもよい。
【0036】
例えば、脂質異常症のみを患っている患者に対するLDLコレステロールの改善目標が140mg/dl未満に定められていると仮定する。この場合、医療支援装置10は、脂質異常症と糖尿病を患っている患者に対するLDLコレステロールの改善目標を、140mg/dl未満よりも正常値に近い120mg/dl未満にするようにしてもよい。また、医療支援装置10は、脂質異常症と冠動脈疾患を患っている患者に対するLDLコレステロールの改善目標を、140mg/dl未満よりも正常値に近い100mg/dl未満にするようにしてもよい。また、医療支援装置10は、脂質異常症と糖尿病と冠動脈疾患を患っている患者に対するLDLコレステロールの改善目標を、脂質異常症と冠動脈疾患を患っている患者に対するLDLコレステロールの改善目標である100mg/dl未満よりも正常値に近い70mg/dl未満にするようにしてもよい。
また、改善目標は、生活習慣病の一つとされる疾患の場合には、患者の生活習慣に対する改善目標であってもよい。例えば、食事を「濃い味の料理は1食1品までにする」、活動を「食後にウォーキングする」、あるいは睡眠を「普段より1時間早めに寝る」、などの改善目標が挙げられる。
【0037】
続いて、医療支援装置10は、改善目標を達成するために患者が取り組むべき行動目標の設定を、患者から受け付ける(S13)。当該行動目標は、複数のカテゴリに分けられていてもよい。複数のカテゴリは、例えば、「ストレス」、「睡眠」、「活動」、「食事」、「喫煙」及び「飲酒」のうち少なくとも1つを含んでいてもよい。なお、活動とは、運動のみならず、歩行など、体を動かすこと全般を含む。つまり、改善目標を達成するために患者が取り組むべき行動目標には、患者のストレス改善に関する行動目標、患者の睡眠時間改善に関する行動目標、患者の運動量改善に関する行動目標、患者の食生活改善に関する行動目標、患者の喫煙量削減に関する行動目標、及び、患者の飲酒量削減に関する行動目標のうち少なくとも1つが含まれていてもよい。例えば、これらの行動目標としては、30分以上ウォーキングする、夜21時以降は食事をしない、朝食をいつも食べる、あるいは、20時以降は飲酒しない、などのように、患者の治療計画に沿った具体的な行動目標であってもよいし、上述した患者の生活習慣に関する各カテゴリの行動目標をスコア化してもよい。なお、当該カテゴリは一例にすぎず、本実施形態がこれに限定されるものではない。
【0038】
医療支援装置10は、改善目標を達成するために患者が取り組むべき行動目標の選択肢を患者に提示し、提示した選択肢の中から、患者が自ら取り組む行動目標の選択を受け付けるようにしてもよい。医療支援装置10は、改善目標を達成するために患者が取り組むべき行動目標の選択肢を、患者の個人データ、患者の改善目標及び/又は患者の複合疾患状態等に基づいて決定するようにしてもよい。例えば、患者の複合疾患状態が、高血圧症と糖尿病に該当するメタボリックシンドロームであり、改善目標が、血圧を130/80mmHg未満にする、血糖コントロール目標をHbA1c6.0%未満にするであり、かつ、患者が60歳以上である場合、医療支援装置10は、行動目標の選択肢として、「速足で歩くことでスタミナをつける」「糖質が高い食事をとらない」及び「お酒を飲まない」といった行動目標を提示するようにしてもよい。
【0039】
続いて、医療支援装置10は、患者が取り組むべき行動目標に関するアンケートの回答を患者から受け付ける(S14)。当該アンケートは、より具体的には、患者が取り組むべき行動目標を実行していることを患者に確認するアンケートであってもよい。なお、当該アンケートには、ステップS13で患者が選択した行動目標の実行結果(取り組み状況)を直接確認するようなアンケートが含まれていてもよい。例えば、患者が、行動目標として「糖質が高い食事をとらない」を選択した場合、「今日は糖質が高い食事をとらないようにしましたか?」といったアンケートや、患者が「30分以上ウォーキングする」を選択した場合、「汗をかく程度の運動(早歩きや家事を含む)を合計何分くらいしましたか」といったアンケートのように、患者が選択した行動目標の実行結果を直接確認するアンケートが含まれていてもよい。また、医療支援装置10は、患者が身に着けているウェアラブルデバイスから、患者の生体情報を受け付ける。
【0040】
続いて、医療支援装置10は、ステップS14で受け付けたアンケートの回答及び/又は生体情報に基づいて、患者が取り組むべき行動目標の達成度に関するスコア、及び、患者が取り組むべき行動目標の達成度に関するアドバイスを出力する(S15)。前述の通り、当該行動目標は、複数のカテゴリに分けられていてもよいことから、当該スコアも、行動目標と同一のカテゴリに分けて出力されてもよい。複数のカテゴリは、行動目標と同様、例えば、「ストレス」、「睡眠」、「運動」、「食事」、「喫煙」及び「飲酒」のうち少なくとも1つを含んでいてもよい。つまり、スコアは、ストレスに関するスコア、睡眠に関するスコア、運動に関するスコア、食事に関するスコア、喫煙に関するスコア、及び、飲酒に関するスコアのうち少なくとも1つを含んでいてもよい。また、当該スコアは、患者が改善目標の達成に向けて積極的に行動している場合には高い値になり、患者が改善目標の達成に向けて積極的に行動していない場合には低い値になるように算出されてもよい。例えば、睡眠を80、運動を59、食事を78、および喫煙/飲酒を100などの形でスコアが例示される。また、これらのスコアを行動目標として用いてもよい。また、アドバイスは、患者が改善目標の達成に向けて積極的に行動している場合には、患者を褒める内容(例えば、「この調子で頑張りましょう」等)であり、患者が改善目標の達成に向けて積極的に行動していない場合には改善を促す内容(例えば、「飲酒を減らさないと疾患が悪化します」等)であってもよい。
【0041】
ステップS15の処理手順において、医療支援装置10は、改善目標、行動目標、アンケート又はアドバイスに基づき、患者の外見の現在又は将来の画像、及び/又は、器官の現在又は将来の画像を画像化して表示してもよい。
【0042】
医療支援装置10が表示する器官の画像としては、脳、肝臓、目、腎臓、心臓、血管、肺、神経などが挙げられる。これにより、器官毎に、患者の現在状態や改善目標、行動目標、アンケートあるいはアドバイスなどに基づく将来状態を画像化して表示することによって、患者自身が現在および将来の状態を視覚的に認識、把握することができる。
【0043】
また、医療支援装置10は、各器官に関する疾患や検査項目の具体的な医療情報を「豆知識」という形で動画及び/又は文章などで患者に提供してもよい。例えば、器官として肝臓の場合は、脂肪肝、肝炎、肝硬変・肝がんなどの疾患に関する説明動画などが提供されてもよい。また疾患として脂質異常症の場合は、「脂質異常症は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪(トリグリセライド)が異常な値になる病気で、血管の壁にコレステロールが蓄積するとプラーク(こぶ)となり、血液の通り道がふさがれ動脈硬化に発展します」などの疾患に関する医学的説明文書が表示されてもよい。
【0044】
このように、患者に対して各疾患及び複合疾患の状態、並びに、それらに関わる医学情報を視覚的に把握できるようにすることにより、患者自身が自分の状態を把握でき、その結果として、改善計画などに基づき、自らの生活習慣などの行動変容を促すことになる。
【0045】
また、医療支援装置10は、患者の個人データ(例えば、患者が測定する体重、血圧、血糖値などの個人データ)などの入力値を1週間、1か月、1年間のような期間でその推移や分布を確認できるデータを表示してもよい。さらに、医療支援装置10は、生活習慣カテゴリ(ストレス、睡眠、活動、食事、喫煙、飲酒など)毎に対して、1日、1週間又は1か月の期間でそれぞれのスコアの推移やアンケートの回答内容、及び、アドバイスなどを確認できる情報を表示出来るようしてもよい。その結果、患者自身が自分の状態を把握し改善計画などに基づき、自らの生活習慣などの行動変容を更に促すことが出来る。
【0046】
さらに、医療支援装置10は、健康や生活習慣病に関するリテラシー向上を目的としたクイズなどを表示するようにしてもよい。クイズの形式は特に限定されるものではないが、例えば、1日1問のクイズを表示し、そのクイズに回答するような形式が挙げられる。正解すると5ポイント、間違えても3ポイントが付与されるなどの工夫を加えることにより患者の健康や生活習慣病などに対する知識や情報を楽しみながら学習し、学んだ健康知識をすぐに活かすことができることになりヘルスリテラシーの向上と行動変容を促すことができる。
【0047】
以上説明したステップS10~ステップS12の処理手順は、患者が医師の診察を受けた際に実行され、ステップS13~ステップS15の処理手順は、診察終了後から次の診察までの間で日々繰り返し実行されるようにしてもよい。
【0048】
図6は、医療支援システム1を利用した医療支援の流れを示す模式図である。
図6に示すように、医師は、患者を診察し、医師用端末30から患者の個人データ(各種の検査データ等)の入力を行う。また、患者は、患者用端末20から患者の個人データ(各種の問診データ)の入力を行う。また、医師は、医療支援装置10から出力され医師用端末30に表示された改善目標と自らの医学的見識等とに基づき、患者が達成すべき改善目標の設定等を行う。
【0049】
診察を終えた患者は、患者用端末20に表示される疾患状態や改善目標を確認することで、自らの疾患状態や改善目標を認識する。また、患者は、患者用端末20の画面で、改善目標の達成に向けた行動目標を日々設定するとともに、患者用端末20に表示されるアンケートに日々回答する。アンケートに回答すると、患者用端末20には、行動目標の達成度に関するスコア及びアドバイスが表示され、患者は、日々の行動の振り返りを行うことが可能になる。また、患者は、行動目標の設定、アンケートの回答、スコア及びアドバイスの確認を日々繰り返し行うことで、自らの行動を継続的に見直すことに繋がり、結果として疾患からの回復を達成することが可能になる。
【0050】
<ハードウェア構成>
図7は、医療支援装置10、患者用端末20及び医師用端末30のハードウェア構成例を示す図である。医療支援装置10、患者用端末20及び医師用端末30は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)等のプロセッサ11、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置12、有線又は無線通信を行う通信IF(Interface)13、入力操作を受け付ける入力デバイス14、及び情報の出力を行う出力デバイス15を有する。入力デバイス14は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス及び/又はマイク等である。出力デバイス15は、例えば、ディスプレイ、タッチパネル及び/又はスピーカ等である。医療支援装置10は、1又は複数の物理的なサーバ等から構成されていてもよいし、ハイパーバイザー(hypervisor)上で動作する仮想的なサーバを用いて構成されていてもよいし、クラウドサーバを用いて構成されていてもよい。
【0051】
<機能ブロック構成>
(医療支援装置)
図8は、医療支援装置10の機能ブロック構成例を示す図である。医療支援装置10は、記憶部100と、取得部101と、出力部102と、受付部103と、算出部104とを含む。記憶部100は、医療支援装置10が備える記憶装置12を用いて実現することができる。また、取得部101と、出力部102と、受付部103と、算出部104とは、医療支援装置10のプロセッサ11が、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。
【0052】
記憶部100は、患者に関する各種情報を格納する患者情報100aと、個人データと、個別疾患の疾患状態の対応関係を定義する個別疾患定義情報100bと、個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは個別疾患の疾患状態及び個人データ条件の組み合わせが複合疾患状態である場合の改善目標を定義する複合疾患/目標定義情報100cと、ユーザが取り組む行動目標に関するアンケートの内容を定義するアンケート定義情報100dと、アンケートに対する回答からスコアを算出する方法を定義するスコア定義情報100eと、患者に選択肢として提示する行動目標を定義する行動目標定義情報100fと、患者に提示するアドバイスの内容を定義するアドバイス定義情報100gとを記憶する。複合疾患/目標定義情報100cは、「目標定義情報」と呼ばれてもよい。
【0053】
図9Aは、患者情報100a、個別疾患定義情報100b、複合疾患/目標定義情報100c、アンケート定義情報100d及びスコア定義情報100eの一例を示す図である。まず、患者情報100aについて説明する。「患者ID(Identification)」は、患者を識別する識別子である。「年齢」は患者の年齢を示す。「性別」は、患者の性別を示す。「個人データ」には、患者の各種の検査データ及び各種の問診データが格納される。「疾患状態」、「疾患リスク」及び「改善目標」には、それぞれ、個人データに基づいて医療支援装置10から出力された疾患状態(各個別疾患の疾患状態及び複合疾患状態)、疾患リスク及び改善目標が格納される。「行動目標」には、患者が選択した行動目標が格納される。「アンケート回答」には、患者が回答したアンケートの回答内容が格納される。「生体情報」には、ウェアラブルデバイスから得られる日々の活動量(歩数、歩行距離、消費カロリーなど)、睡眠情報、心拍数などの情報が格納される。
【0054】
次に、個別疾患定義情報100bについて説明する。
図9Aに示す個別疾患定義情報100bは、個別疾患毎に定義される。「個人データパターン」には、個別疾患に該当する検査データ及び問診データのパターン(すなわち、個別疾患に該当するとされる所定の基準)が格納される。「重症度」は、個別疾患の疾患状態に対応し、個人データパターンに対応する個別疾患の重症度を示す。重症度は、複数のレベル(段階)で表現され、レベルが高いほど重症であることを示すようにしてもよい。例えば、高血圧症に対応する個別疾患定義情報100bでは、個人データパターンが、収縮期血圧が180mmHg以上かつ拡張期血圧が110mmHg以上である場合はレベル5の高血圧症、収縮期血圧が160~179mmHgかつ拡張期血圧が100~109mmHgである場合はレベル4の高血圧症といったように定義されてもよい。また、個別疾患定義情報100bに含まれない個別データパターンについては、個別疾患には該当しないことを意味する。例えば、収縮期血圧が130mmHg以下かつ拡張期血圧が80mmHg以下である個人データパターンが、高血圧症に対応する個別疾患定義情報100bには定義されていない場合、医療支援装置10は、収縮期血圧が130mmHg以下かつ拡張期血圧が80mmHg以下である患者については、高血圧症には該当しないと判断することができる。
【0055】
次に、複合疾患/目標定義情報100cについて説明する。
図9Aに示す複合疾患/目標定義情報100cは、複合疾患状態毎に定義される。例えば、医療支援装置10が、複合疾患状態A及び複合疾患状態Bの判断に対応している場合、記憶部100には、複合疾患状態Aに対応する複合疾患/目標定義情報100c、及び、複合疾患状態Bに対応する複合疾患/目標定義情報100cが格納される。「個別疾患の疾患状態」及び「個人データの条件」には、複合疾患状態に該当する個別疾患の疾患状態の組み合わせ、若しくは、複合疾患状態に該当する個別疾患の疾患状態及び個人データの条件の組み合わせが格納される。もし、複合疾患状態が、個別疾患の疾患状態の組み合わせに該当する場合、「個人データの条件」は省略されてもよい。「疾患リスク」は、現在は罹患していないが、患者の個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは患者の個別疾患の疾患状態及び個人データ条件の組み合わせから推測される、他の罹患する可能性のある疾患名と、罹患する可能性の度合いを示す情報とが格納される。ここで、メタボリックシンドロームの患者は、将来、脳心血管病や冠動脈疾患に罹患する可能性があり、メタボリックシンドロームを構成する各個別疾患が重症であるほど、脳心血管病や冠動脈疾患に罹患するリスクも高いことが知られている。そのため、メタボリックシンドロームに対応する複合疾患/目標定義情報100cの「疾患リスク」には、脳心血管病や冠動脈疾患に罹患するリスクを示す数値(例えば、値が大きいほど将来疾患する可能性が高い)やその重症度(リスクの大きさ)示す色に関する情報が格納されていてもよい。「改善目標」には、複合疾患状態を改善するために患者が達成すべき数値の改善目標が格納される。
【0056】
なお、判断方法1に従って複合疾患状態を判断する場合は、
図9Aに示す個別疾患定義情報100b及び複合疾患/目標定義情報100cを利用することで対応可能である。一方、判断方法2に従って複合疾患状態を判断する場合、上述した複合疾患/目標定義情報100cには、
図9Aに示す項目に代えて、各複合疾患状態に共通のデータとして判断方法2を実行するために必要な処理ロジック及び各検査項目の基準値を示すデータと、複合疾患状態ごとのデータとして「疾患リスク」及び「改善目標」を対応づけたデータとが格納されていてもよい。また、個別疾患定義情報100bには、
図9Aに示す項目に代えて、個別疾患ごとのデータとして、患者が個別疾患に該当するか否かを判断する際に用いられる「所定値」、及び、個別疾患に関連する各検査項目ついて算出されたリスクの値と重症度との対応関係を示すデータが格納されていてもよい。
【0057】
次に、アンケート定義情報100dについて説明する。「カテゴリ」は、ユーザが取り組む行動目標のカテゴリを示す。
図9Aの例では、カテゴリ例として、ストレス、睡眠、運動、食事、喫煙及び飲酒が挙げられているが、これに限定されるものではない。「アンケートID」は、アンケートを識別する識別子を示す。「アンケート内容」には、アンケートの内容が格納される。
【0058】
次に、スコア定義情報100eについて説明する。「アンケートID」は、アンケートを識別する識別子を示す。当該アンケートIDは、アンケート定義情報100dのアンケートIDに対応している。「回答」は、アンケートに対する回答を示す。「スコア」は、スコアに加算される値を示す。
図9Aの例では、ストレス1のアンケートに“はい”と回答した場合、ストレスのカテゴリのスコアに1を加算することが示されている。同様に、ストレス1のアンケートに“いいえ”と回答した場合、ストレスのカテゴリのスコアには何も加算されないことが示されている。なお、
図9Aに示すスコア定義情報100eは一例であり、これに限定されるものではない。例えば、スコア定義情報100eには、1又は複数のアンケート回答を組み合わせてスコアを算出するためのロジックが格納されていてもよい。例えば、ストレスに属するアンケート1への回答が“はい”で、ストレスに属するアンケート5への回答が“はい”で、睡眠に属するアンケート1への回答が“いいえ”である場合、ストレスのカテゴリのスコアに3を加算するといったロジックが格納されていてもよい。また、スコア定義情報100eには、更に、生体情報と加算されるスコアに関する情報とが対応づけて定義されていてもよい。例えば、歩行距離が所定閾値以上であれば活動のスコアに1を加算することや、睡眠時間が所定時間以上であれば睡眠のスコアに1を加算すること等の情報が定義されていてもよい。
【0059】
図9Bは、アドバイス定義情報100gの一例を示す図である。アドバイス定義情報100gは、
図9Bに示すように、患者が取り組む行動内容に対する短期的なアドバイス(例えば日々の振り返り)の内容を定義するアドバイス(デイリー)定義情報100g-1と、患者が取り組む行動内容に対する中期的なアドバイス(例えば1週間の振り返り)の内容を定義するアドバイス(週間サマリー)定義情報100g-2と、患者が取り組む行動内容に対する長期的なアドバイス(例えば1か月の振り返り)の内容を定義するアドバイス(月間サマリー)定義情報100g-3とに分けられていてもよい。「カテゴリ」は、アドバイスのカテゴリを示す。格納されるカテゴリは、行動目標のカテゴリと同一であってもよい。「アドバイス内容」は、出力するアドバイスの文言が格納される。アドバイス内容は、カテゴリ毎に1つ格納されていてもよいし、複数格納されていてもよい。「出力条件」は、どのアドバイスを出力するか否かを決定するための条件が格納される。なお、出力条件は、カテゴリ毎に定義されていてもよいし、アドバイス内容ごとに定義されていてもよい。
図8に戻り説明を続ける。
【0060】
取得部101は、患者の検査データと問診データとを含む個人データを、患者用端末20又は医療支援装置10から取得する。なお、取得部101は、患者が装着したウェアラブルデバイスで取得された個人データを取得するようにしてもよい。
【0061】
出力部102は、患者の個人データに基づいて、複合疾患を構成する個別疾患について患者の疾患状態を判断し、個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせが複合疾患状態である場合に、複合疾患状態を改善するために患者が達成すべき改善目標を出力する。なお、改善目標は、患者の個人データに含まれる検査値に対する改善目標値を含んでいてもよい。また、患者の個人データには、患者の生活習慣に関するデータが含まれており、改善目標は、患者の生活習慣に対する改善目標を含んでいてもよい。当該生活習慣は、患者のストレス、患者の睡眠時間、患者の運動量、患者の食生活、患者の喫煙量、及び、患者の飲酒量の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0062】
また、出力部102は、患者の個人データに含まれる検査値に対する改善目標を、個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせに基づいて設定するようにしてもよい。
【0063】
また、出力部102は、個別疾患定義情報100bを参照することで、患者の疾患状態を判断し、複合疾患/目標定義情報100cを参照することで、個別疾患の疾患状態の組み合わせ若しくは個別疾患の疾患状態及び個人データの組み合わせが複合疾患状態である場合の改善目標を取得し、取得した改善目標を、患者が達成すべき改善目標として出力するようにしてもよい。例えば、出力部102は、患者の個人データが、個別疾患Aに対応する個別疾患定義情報100bで定義される「個人データパターン」のレコードのいずれかに該当する場合、当該患者は個別疾患Aに該当すると判断するとともに、該当するレコードの「重症度」フィールドを参照することで、患者が患っている個別疾患Aの疾患状態(重症度)を判断するようにしてもよい。また、出力部102は、個別疾患ごとに同様の処理を繰り返すことで、患者が、各個別疾患のうちどの個別疾患に該当するのか及び該当する個別疾患の疾患状態(重症度)を判断するようにしてもよい。続いて、出力部102は、複合疾患状態Aに対応する複合疾患/目標定義情報100cを参照し、患者の各個別疾患の疾患状態及び患者の個人データが、複合疾患/目標定義情報100cで定義される「個別疾患状態」及び「個人データの条件」のレコードのいずれかに該当する場合、当該患者は、複合疾患状態Aであると判断するとともに、該当するレコードの「改善目標」フィールドを参照することで、患者の改善目標を取得するようにしてもよい。また、出力部102は、複合疾患状態ごとに同様の処理を繰り返すことで、患者が、各複合疾患状態のうちどの複合疾患状態に該当するのかの判断及び該当する場合の改善目標の取得を行うようにしてもよい。
【0064】
また、出力部102は、複合疾患を構成する個別疾患について、該個別疾患に関連する1以上の検査項目の基準値と、患者を検査することで得られた該検査項目に対する検査データとを用いて検査項目ごとのリスクを算出し、算出した検査項目ごとのリスクが所定条件を満たす場合、当該患者は複合疾患状態であると判断するようにしてもよい。また、出力部は、患者が複合疾患状態であると判断した場合、複合疾患状態を改善するために当該患者が達成すべき改善目標を出力するようにしてもよい。
【0065】
また、算出した検査項目ごとのリスクが所定条件を満たす場合は、算出した検査項目ごとのリスクを平均した値が所定の閾値以上であることであってもよい。この場合、出力部102は、算出した検査項目ごとのリスクを平均した値を、複合疾患状態に関するリスクを示す値として出力するようにしてもよい。
【0066】
また、出力部102は、複合疾患状態を改善するための改善目標を出力する能力を有する学習済みモデルに対し、患者の個人データを入力することで得られる患者の改善目標を、患者が達成すべき改善目標として出力するようにしてもよい。
【0067】
図10は、学習済みモデルの一例を示す図である。
図10に示す学習済みモデルは、個人データを入力すると、複合疾患状態に該当するか否かを示すフラグ、該当する複合疾患状態の病名を示す識別子、複合疾患状態を構成する各個別疾患の状態(例えば、個別疾患の有無を示すフラグ、個別疾患の重症度を示す値等)、改善目標及び疾患リスクを出力するように学習されたモデルを示している。当該学習済みモデルは、入力された個人データから、個人データの組み合わせが複合疾患を構成する各個別疾患に該当するか否かを識別し、複合疾患を構成する各個別疾患に該当する場合(患者が複合疾患状態である場合)に、改善目標等を出力するように動作するものであってもよい。当該学習済モデルは、更に、複合疾患状態に関するリスク値を出力するように学習されていてもよい。
【0068】
また、このような学習済みモデルは、過去の多数の臨床データから、個人データを入力データとし、複合疾患状態に該当するか否かを示すフラグ、該当する複合疾患状態の病名を示す識別子、複合疾患状態を構成する各個別疾患の該当有無を示すフラグ、個別疾患の重症度を示す値、改善目標値及び疾患リスクを正解データとする教師データを多数生成し、モデルを学習させることで生成することができる。また、学習済みモデルから複合疾患状態に関するリスク値を出力させる場合、教師データの正解データに、複合疾患状態に関するリスク値を含めておくことで対応可能である。モデルはどのようなアルゴリズムであってもよいが、例えば、ニューラルネットワーク、決定木、ランダムフォレスト、勾配ブースティング決定木などを利用することができる。また、学習済みモデルは、複合疾患状態ごとに異なるモデルとして用意されていてもよい。
図8に戻り説明を続ける。
【0069】
また、出力部102は、患者用端末20及び医師用端末30に対し、各種のデータを出力する。患者用端末20にデータを出力する出力部102は、第1出力部と呼ばれてもよい。また、医師用端末30にデータを出力する出力部102は、第2出力部と呼ばれてもよい。
【0070】
また、出力部102(第1出力部)は、改善目標又は医師により修正された改善目標を患者用端末20に出力するようにしてもよい。
【0071】
受付部103は、患者用端末20又は医師用端末30から各種の入力を受け付ける。患者用端末20から(又は患者から)各種の入力を受け付ける受付部は、第1受付部と呼ばれてもよい。また、医師用端末30から(又は医師から)各種の入力を受け付ける受付部は、第2受付部と呼ばれてもよい。受付部103(第1受付部)は、改善目標を達成するために患者が取り組むべき行動目標を患者から受け付ける。行動目標を患者から受け付ける受付部103は、第1受付部と称されてもよい。また、受付部103(第1受付部)は、患者の改善目標を達成するための行動目標に関する複数の選択肢の中から、患者が取り組む行動目標を患者から受け付けるようにしてもよい。また、受付部103(第1受付部)は、行動目標定義情報100fを参照し、患者の個人データ、改善目標又は患者の複合疾患状態に対応する選択肢を抽出することで、患者に提示する複数の選択肢を決定するようにしてもよい。なお、出力部102は、受付部103(第1受付部)で受け付けた、患者が取り組む行動目標を、当該患者が利用する患者用端末20及び/又は患者を診察する医師が利用する医師用端末30に出力するようにしてもよい。
【0072】
また、受付部103(第1受付部)は、患者が取り組むべき行動目標に関するアンケートの回答の入力を受け付ける。
【0073】
また、受付部103(第2受付部)は、改善目標を医師が修正した場合に、医師用端末30から、修正された改善目標を受け付けてもよい。
【0074】
算出部104は、受付部103(第1受付部)で受け付けたアンケートの回答に基づいて、患者が取り組む行動目標の達成度に関するスコアを算出する。算出部104は、スコア定義情報100eを参照し、スコア定義情報100eで定義されたスコアの算出方法に従ってスコアを算出する。
【0075】
(患者用端末)
図11は、患者用端末20の機能ブロック構成例を示す図である。患者用端末20は、記憶部200と、受付部201と、表示制御部202とを含む。記憶部100は、医療支援装置10が備える記憶装置12を用いて実現することができる。また、取得部101と、出力部102と、受付部103と、算出部104とは、医療支援装置10のプロセッサ11が、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。
【0076】
記憶部200は、医療支援装置10から取得した各種のデータを記憶する。
【0077】
受付部201は、患者用端末20が備える入力デバイス14で検出された各種の入力を受け付ける。例えば、受付部201は、患者用端末20が備えるタッチパネルで検出された各種の入力を受け付ける。
【0078】
表示制御部202は、医療支援装置10から取得したデータ等を、患者用端末20が備えるディスプレイに表示させる。
【0079】
なお、患者用端末20にインストールされたWebブラウザが、患者用端末20での情報表示及び入力の受付を実現するようにしてもよい。この場合、記憶部200と、受付部201と、表示制御部202とは、患者用端末20にインストールされたWebブラウザにより実現されてもよい。若しくは、患者用端末20にインストールされた、本実施形態に係る機能を実現するための専用のアプリケーションが、患者用端末20での情報表示及び入力の受付を実現するようにしてもよい。この場合、記憶部200と、受付部201と、表示制御部202とは、患者用端末20にインストールされた専用のアプリケーションにより実現されてもよい。
【0080】
(医師用端末)
図12は、医師用端末30の機能ブロック構成例を示す図である。医師用端末30は、記憶部200と、受付部201と、表示制御部202とを含む。記憶部200は、医師用端末30が備える記憶装置12を用いて実現することができる。また、受付部201と、表示制御部202とは、医師用端末30のプロセッサ11が、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。
【0081】
記憶部300は、医療支援装置10から取得した各種のデータを記憶する。
【0082】
受付部301は、医師用端末30が備える入力デバイス14で検出された各種の入力を受け付ける。例えば、受付部301は、医師用端末30が備えるキーボードやマウスで検出された各種の入力を受け付ける。また、受付部301は、受け付けた各種の入力データを医療支援装置10に送信する。
【0083】
表示制御部202は、医療支援装置10から各種データを取得し、取得したデータを、医師用端末30が備えるディスプレイに表示させる。
【0084】
なお、医師用端末30にインストールされたWebブラウザが、医師用端末30での情報表示及び入力の受付を実現するようにしてもよい。この場合、記憶部300と、受付部301と、表示制御部302とは、医師用端末30にインストールされたWebブラウザにより実現されてもよい。若しくは、医師用端末30にインストールされた、本実施形態に係る機能を実現するための専用のアプリケーションが、医師用端末30での情報表示及び入力の受付を実現するようにしてもよい。この場合、記憶部300と、受付部301と、表示制御部302とは、医師用端末30にインストールされた専用のアプリケーションにより実現されてもよい。
【0085】
<処理手順>
続いて、医療支援システム1が行う処理手順を具体的に説明する。以下の説明では、複合疾患状態はメタボリックシンドロームであるものとして説明する。また、医療支援装置10は、上述した判断手法1に従って複合疾患状態を判断するものとして説明する。
【0086】
図13は、医療支援システム1が行う処理手順の一例を示すシーケンス図である。
図13に示す処理手順は、医師が患者を診察する度に繰り返し実行されることを想定しているが、2回目以降の診察では、問診の一部(診察毎に変化しない内容の問診など)は省略されてもよい。
【0087】
医師用端末30は、医師から、患者の検査データの入力を受け付け、医療支援装置10に送信する(S100、S101)。また、患者用端末20は、患者から問診データの入力を受け付け、医療支援装置10に送信する(S102、S103)。例えば、医師は、患者を診察した際に、患者用端末20から問診データの入力をするように促すようにしてもよい。また、問診データは、医師用端末30に入力されて医療支援装置10に送信されてもよい。続いて、医療支援装置10は、患者用端末20及び医師用端末30から受信した検査データ及び問診データを、患者情報100aに格納する(S104)。
【0088】
図15は、検査データの具体例を示す図である。
図15に示す検査データには、身長、体重、腹囲など患者の身体を測定することで得られるデータ(身体計測データ)、血圧に関するデータ、貧血に関するデータ、肝臓及び胆嚢の機能に関するデータ、血中脂質に関するデータ、血糖値に関するデータ、尿酸に関するデータ、腎臓の機能に関するデータ、尿検査をすることで得られるデータ等が含まれている。
【0089】
図16は、問診データの具体例を示す図である。
図16に示す問診データには、喫煙に関する問診、食生活に関する問診、飲酒に関する問診、現在服薬している薬に関する問診、既往歴に関する問診、生活歴に関する問診等が含まれている。なお、問診データには、更に、患者の生活習慣に関するスコアを算出するために必要な問診が含まれていてもよい。当該生活習慣に関するスコアは、複数のカテゴリに分けられていてもよい。複数のカテゴリは、例えば、ストレス、睡眠、運動、食事、喫煙及び飲酒のカテゴリであってもよい。
【0090】
続いて、医療支援装置10の出力部102は、個別疾患定義情報100b及び複合疾患/目標定義情報100cを参照するか、若しくは、
図10で説明した学習済みモデルを用いて、患者の疾患状態、改善目標及び疾患リスクを出力し、患者情報100aに格納する(S105、S106、S107)。患者の疾患状態は、より具体的には、患者が複合疾患状態に該当するか否かを示すフラグ(若しくは複合疾患状態の名称)、患者が複合疾患状態である場合、複合疾患状態を構成する各個別疾患の状態(例えば、個別疾患の有無を示すフラグ、個別疾患の重症度を示す値等)であってもよい。また、医療支援装置10の出力部102が出力する改善目標には、生活習慣に関するスコアの改善目標値が含まれていてもよい。また、医療支援装置10の出力部102は、患者が複合疾患状態に該当する場合、複合疾患状態に関するリスク値を出力するようにしてもよい。
【0091】
図14は、個別疾患定義情報100bの具体例を示す図である。
図17Aには、高血圧症に対応する個別疾患定義情報100b-1、脂質異常症に対応する個別疾患定義情報100b-2、及び、糖尿病に対応する個別疾患定義情報100b-3が例示されている。
図17Bには、肥満症に対応する個別疾患定義情報100b-4が例示されている。また、
図18は、複合疾患/目標定義情報100cの具体例を示す図である。まず、出力部102は、高血圧症に対応する個別疾患定義情報100bの「個人データパターン」と患者の検査データ及び問診データとを比較することで、患者の検査データ及び問診データに該当するレコードを検出する。例えば、患者の検査データが、収縮期血圧=190mmHGかつ拡張期血圧=120mmHGであった場合、出力部102は、患者の検査データ及び問診データは、2行目のレコードに該当することを検出する。続いて、出力部102は、2行目のレコードの「重症度」を参照することで、高血圧症の重症度を取得する。これにより、出力部102は、患者は高血圧症に該当し、かつ、重症度はレベル5であると判断することができる。続いて、出力部102は、脂質異常症に対応する個別疾患定義情報100b-2、糖尿病に対応する個別疾患定義情報100b-3、及び、肥満症に対応する個別疾患定義情報100b-4を参照することで、患者が高血圧症、脂質異常症、糖尿病及び肥満症に該当するか否かと、該当する場合の重症度とを判断する。ここでは、患者は、高血圧症(レベル5)、脂質異常症(レベル3)糖尿病(レベル3)及び肥満症(レベル3)に該当すると判断されたものとする。
【0092】
続いて、出力部102は、メタボリックシンドロームに対応する複合疾患/目標定義情報100cの「個別疾患の疾患状態」及び「個人データ条件」と、患者の個別疾患状態及び個人データとを比較することで、患者の個別疾患の疾患状態及び個人データに対応するレコードを検出する。上述の通り、患者の個別疾患の疾患状態は、高血圧症(レベル5)、脂質異常症(レベル3)、糖尿病(レベル3)及び肥満症(レベル3)であることから、出力部102は、患者の個別疾患の疾患状態及び個人データに対応するレコードは、3列目のレコードに該当することを検出する。続いて、出力部102は、3列目のレコードの「疾患リスク」及び「改善目標」を参照することで、患者の疾患リスク及び改善目標を取得する。
【0093】
続いて、出力部102は、患者の疾患状態として、複合疾患状態(メタボリックシンドローム)に該当することを示すフラグ、高血圧症に該当することを示すフラグ、脂質異常症に該当することを示すフラグ、糖尿病に該当することを示すフラグ、肥満症に該当することを示すフラグ、高血圧症の重症度はレベル3であることを示すデータ、脂質異常症の重症度はレベル3であることを示すデータ、糖尿病の重症度はレベル3であることを示すデータ、及び、肥満症の重症度はレベル3であることを示すデータを出力する。また、出力部102は、改善目標として、腹囲は80cm以下にすること、収縮期血圧は160mmHg以下にすること、拡張期血圧は100mmHg以下にすること、ストレスに関する生活習慣スコアは20%以上向上させること、睡眠に関する生活習慣スコアは20%以上向上させること等を出力する。また、出力部102は、疾患リスクとして、脳心血管病になるリスクが高いこと、冠動脈疾患になるリスクが高いこと等を出力する。なお、疾患リスクは、数値で表現されていてもよい。なお、出力部102は、改善目標を出力する際、生活習慣スコアとして具体的数値を出力してもよい。例えば、出力部102は、問診データに基づいて生活習慣スコアを算出し、算出した生活習慣スコア(例えば睡眠=50)と改善目標で示される目標値(例えば睡眠に関する生活習慣スコアは20%以上向上)とを乗算することで、具体的な目標値(例えばスコア50×120%=スコア60)を出力するようにしてもよい。また、出力部102は、患者の疾患状態として、更に、当該患者に該当する個別疾患の数を、複合疾患状態(メタボリックシンドローム)に関するリスク値として出力するようにしてもよい。ここでは、出力部102は、複合疾患状態に関するリスクとして「4」を出力するようにしてもよい。
図13に戻り説明を続ける。
【0094】
続いて、出力部102は、ステップS105及びステップS107で出力した疾患状態及び疾患リスクを、患者用端末20に送信する(S110)。患者用端末20は、医療支援装置10から受信した疾患状態及び疾患リスクを、画面に表示する(S111)。
【0095】
また、出力部102は、ステップS105~ステップS107で出力した疾患状態、改善目標及び疾患リスクを、医師用端末30に送信する(S112)。医療支援装置10は、医療支援装置10から受信した疾患状態、改善目標及び疾患リスクを、画面に表示する(S113)。医師用端末30は、医師が、改善目標に対する修正を希望する場合、改善目標の修正を受け付けるようにしてもよい(S114)。これにより、医師は、患者を診察する際に、医療支援装置10から出力された改善目標を患者に提示し、患者と相談の上、改善目標を修正することが可能になる。
【0096】
医師用端末30は、医師から改善目標の修正を受け付けた場合、修正された改善目標を医療支援装置10に送信する(S115)。医療支援装置10は、患者情報100aの「改善目標」を、修正された改善目標で更新する(S116)。続いて、医療支援装置10の出力部102は、患者情報100aの「改善目標」に格納されている改善目標データを、患者用端末20に送信する(S117)。患者用端末20は、医療支援装置10から受信した改善目標を画面に表示する(S118)。
【0097】
図14は、医療支援システム1が行う処理手順の一例を示すシーケンス図である。
図14に示す処理手順は、次回の診察までの間、毎日繰り返し実行されることを想定しているが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば1日おきに繰り返し実行されてもよいし、1週間ごとに繰り返し実行されてもよい。
【0098】
医療支援装置10の出力部102は、改善目標を達成するために患者が取り組むべき行動目標の選択肢を、患者の個人データ、患者の改善目標及び/又は患者の複合疾患状態に基づいて決定する(S200)。出力部102は、患者の個人データ、患者の改善目標及び/又は患者の複合疾患状態と、行動目標定義情報100fで定義された選択基準とを比較し、当該選択基準を満たす行動目標の選択肢を、患者に提示する行動目標の選択肢として決定するようにしてもよい。
【0099】
図19は、行動目標定義情報100fの一例を示す図である。「カテゴリ」は、行動目標のカテゴリを示す。「行動目標」は、行動目標の具体的な内容を示す。「選択基準」は、行動目標が選択される患者の基準を示す。例えば、
図19によれば、「食事は野菜から食べる」という行動目標は、検査データの空腹時血糖が空腹時血糖110mg/dl以上でかつ中性脂肪値が150mg/dlである場合に選択肢として抽出されることを意味している。なお、
図19には図示しないが、“複合疾患状態がメタボリックシンドロームである患者”といった選択基準も設定可能である。
図14に戻り説明を続ける。
【0100】
続いて、医療支援装置10の出力部102は、ステップS200で決定した行動目標の選択肢を患者用端末20に送信する(S201)。患者用端末20は、医療支援装置10から受信した行動目標の選択肢を画面に表示し、取り組む行動目標の選択を患者から受け付ける(S202)。患者用端末20は、選択された行動目標を医療支援装置10に送信する(S203)。医療支援装置10の受付部103は、選択された行動目標を受け付けて、患者情報100aに格納する(S204)。
【0101】
続いて、医療支援装置10の出力部102は、アンケート定義情報100dを参照し、アンケート定義情報100dに格納されているアンケートのデータを患者用端末20に送信する(S205)。患者用端末20は、医療支援装置10から受信したアンケートを画面に表示し、患者からアンケートの回答の入力を受け付ける(S206)。患者用端末20は、患者から受け付けたアンケートの回答を医療支援装置10に送信する。また、患者用端末20は、患者が身に着けているウェアラブルデバイスから取得した生体情報を送信する(S207)。医療支援装置10の受付部103は、アンケートの回答及び生体情報を受け付けて、患者情報100aに格納する(S208)。続いて、医療支援装置10の算出部104は、アンケートの回答及び/又は生体情報から、行動目標の達成度に関するスコアを算出する(S209)。
【0102】
また、出力部102は、アドバイス定義情報100gを参照し、アンケートの回答、スコア及び/又は生体情報と、出力条件とを比較することで、患者に出力するアドバイスを選択する(S209)。出力部102は、前日のアンケートの回答、スコア及び/又は生体情報と、アドバイス(デイリー)定義情報100g-1の「出力条件」とを比較することで、短期的なアドバイス(例えば日々の振り返り)を選択するようにしてもよい。また、出力部102は、予め定められた曜日(例えば金曜日など)ごとに、過去1週間のアンケートの回答、スコア及び/又は生体情報と、アドバイス(週間サマリー)定義情報100g-2の「出力条件」とを比較することで、中期的なアドバイス(例えば1週間の振り返り)を選択するようにしてもよい。中期的なアドバイスを選択する場合、出力部102は、過去1週間のスコアの推移や平均値と「出力条件」とを比較するようにしてもよい。また、出力部102は、1ヵ月のうち予め定められた日(例えば月末など)ごとに、過去1か月のアンケートの回答、スコア及び/又は生体情報と、アドバイス(月間サマリー)定義情報100g-3の「出力条件」とを比較することで、長期的なアドバイス(例えば1か月の振り返り)を選択するようにしてもよい。長期的なアドバイスを選択する場合、出力部102は、過去1ヵ月のスコアの推移や平均値と「出力条件」とを比較するようにしてもよい。
【0103】
続いて、出力部102は、算出された当該スコアと選択したアドバイスとを患者用端末20に送信する(S210)。患者用端末20は、当該スコアとアドバイスとを画面に表示する(S211)。また、患者用端末20は、更に、患者の外見の現在又は将来の画像、器官の現在又は将来の画像、医療情報に関する豆知識、患者の個人データの推移を示す画像、スコアの推移を示す画像、各種クイズ等を表示してもよい(S212)。これらの画像を表示させるために必要なデータは、ステップS210の処理手順で医療支援装置10から患者用端末20に送信されてもよい。
【0104】
医師用端末30は、医師からの指示を受けて、患者の行動目標、アンケートの回答、行動目標の達成度に関するスコア及びアドバイスの参照を医療支援装置10に要求する(S220)。医療支援装置10の出力部102は、医療支援装置10に、患者が選択した行動目標、アンケートの回答、行動目標の達成度に関するスコア及びアドバイスを医師用端末30に送信する(S221)。医師用端末30は、受信した行動目標、アンケート回答、スコア及びアドバイスを画面に表示する(S222)。これにより、医師は、任意のタイミングで、患者の日々の行動を確認することができる。
【0105】
<画面表示例>
(患者用端末)
図20~
図24は、患者用端末20の画面表示例を示す図である。
図20の画面A100~画面A120は、現在の患者自身の疾患状態等を表示する画面の一例である。ボタンB10が押下されると、複合疾患状態の疾患名を表示する画面A100に遷移する。ボタンB11が押下されると、個別疾患の疾患名と、個別疾患の状態(重症度)を表示する画面A100に遷移する。ボタンB12が押下されると、罹患する可能性のある疾患名と疾患リスクとを表示する画面A100に遷移する。画面A100~画面A120は、例えば、
図13のステップS111の処理手順で表示される画面に対応する。
【0106】
図21の画面A200及び画面A210は、改善目標を表示する画面の一例を示す。画面A200は、改善目標を全項目表示する場合の表示例であり、画面A210は、患者が理解しやすいように、一部の項目に限定して表示する場合の表示例である。画面A200及び画面A210は、例えば、
図13のステップS118の処理手順で表示される画面に対応する。
【0107】
図22の画面A300及び画面A310は、行動目標の設定を受け付ける画面の一例を示す。画面A300では、行動目標として最大3つを設定可能であり、ボタンB30~B32が押下されると、行動目標の選択肢を表示する画面A310に遷移する。画面A310には、行動目標のカテゴリを選択するボタンを表示する領域B33と、選択されたカテゴリに該当する行動目標の選択肢を一覧表示する領域B34とを含む。ボタンB30が押下されると画面A310に遷移し、画面A310の領域B34で選択された行動目標が、画面A300のボタンB30に反映される。同様に、ボタンB31が押下されると画面A310に遷移し、画面A310の領域B34で選択された行動目標が、画面A300のボタンB31に反映される。画面A300及び画面A310は、例えば、
図13のステップS202の処理手順で表示される画面に対応する。
【0108】
図23の画面A400は、アンケートの回答を入力する画面の一例を示す。画面A400は、例えば、
図13のステップS206の処理手順で表示される画面に対応する。
図23の画面A401は、行動目標の達成度に関するスコアを表示する画面の一例を示す。領域P40には、行動目標の達成度に関するスコアがカテゴリ毎に表示される。なお、画面A410の領域P41に示すように、医療支援装置10の出力部102は、患者用端末20の画面に、スコアに対するアドバイスを表示させるようにしてよい。表示するアドバイスは、最もスコアが低いカテゴリに関するアドバイスであってもよい。また、日々のアドバイスに加えて、予め定められた曜日(例えば金曜日など)では1週間のサマリーとしてのアドバイスが表示され、1ヵ月のうち予め定められた日(例えば月末など)では1ヵ月のサマリーとしてのアドバイスが表示されるようにしてもよい。画面A401は、例えば、
図13のステップS211の処理手順で表示される画面に対応する。
【0109】
図24は、患者の疾患リスクをグラフィカル表示する画面の一例である。本実施形態では、医療支援装置10は、患者の個人データに基づいて、患者の各臓器に将来疾患が生じるリスクを算出し、算出した結果を、患者用端末20に表示させるようにしてもよい。画面A450には、検査データを表示する領域P45と、体の全体
図P46とが表示される。体の全体
図P46では、将来疾患を生じる可能性のある臓器が強調表示される。画面A450の例では、将来、両目に疾患を生じる可能性があることが示されている。画面A460は、体の全体図のうち一部を拡大表示した状態を示している。
【0110】
図25は、各器官に関する疾患や検査項目の具体的な医療情報である「豆知識」を表示する画面の一例を示す。器官一覧画面A470で選択された器官に関する豆知識が、豆知識画面A471及びA472のように表示される。
【0111】
図26は、患者の個人データの推移を示す画面の一例を示す。画面A480は血圧の推移を示しており、画面A481は食事に関するスコアの遷移を示している。画面A482は、食事に関して患者が入力したアンケートの回答内容に基づいて生成された1週間のサマリーを示す。
【0112】
図27は、クイズに関する画面の一例を示す。画面A490はクイズの回答を入力する画面である。患者がクイズに正解すると、画面A491に示すように患者に対しポイントが与えられる。画面A492は、クイズに関する解説を表示する。
【0113】
(医師用端末)
図28~
図30は、医師用端末30の画面表示例を示す図である。
図28の画面A500は、患者に関する情報を一覧表示する画面の一例である。領域P50には、患者の検査データが表示される。領域P51には、改善目標(検査値についての改善目標値と、生活習慣に関するスコアの改善目標値)が表示される。領域P52には、行動目標の達成度に関するスコアの日々の変化が表示される。領域P53は、アンケートの回答結果の月間サマリーや、患者のウェアラブルデバイスから取得したデータの月間サマリーが表示される。領域P54には、患者の薬歴が表示される。
【0114】
図29の画面A600は、病歴及び検査データを詳細表示する画面の一例である。領域P60には、患者の病歴が表示される。領域P61には、患者の検査データが一覧表示される。
【0115】
図30の画面A700は、改善目標を詳細表示する画面の一例である。領域P70には、患者の改善目標が、検査値についての改善目標値と、生活習慣に関するスコアの改善目標値とに分けて表示される。なお、医師は、領域P70に表示された改善目標を修正することも可能である。領域P71は、患者に対する指導内容を記録する画面である。医師は、診察の際に、患者に伝えた内容を、領域P71に記録することができる。
【0116】
<実験結果>
図31の左グラフは、本実施形態に係る医療支援システム1を利用して生活改善を図った複合疾患状態の患者について、開始時及び12週間経過時における患者の検査データから上述の判断方法2に従って算出した、複合疾患状態に関するリスク値の変化を示す。また、
図31の右グラフは、本実施形態に係る医療支援システム1を利用せずに生活改善を図った複合疾患状態の患者について、開始時及び12週間経過時における患者の検査データから上述の判断方法2に従って算出した、複合疾患状態に関するリスク値の変化を示す。実験結果によれば、本実施形態に係る医療支援システム1を利用して生活改善を図った複合疾患状態の患者の方が、リスク値が改善していることがわかる。
【0117】
<まとめ>
以上説明した実施形態によれば、患者の個人データに基づいて、複合疾患を構成する個別疾患について患者の疾患状態を判断し、関連疾患のリスク評価を行い、個別疾患の疾患状態の組み合わせが複合疾患状態である場合に、複合疾患状態を改善するために、患者が達成すべき改善目標を長期目標という形でも、短期目標という形でも出力するようにした。また、入力されたアンケートや生体情報により、日々の生活のスコア化を目指し、短期的(毎日)の評価およびアドバイスができるようにした。これにより、複数の疾患が複合した状態でも、単疾患の時に比べて強化しなければならない目標値・目標設定を提言できることにより、適切な患者の治療介入支援することが可能な技術を提供することが可能になる。また、従来、実臨床では複合的に疾患を併発している、もしくはもうすぐ併発する可能性が高い状態であるのにも関わらず、個別疾患ごとに治療を行うことが通常であり、複合疾患に対して複合的な治療を行うことは行われていなかった。しかしながら、本実施形態では、医療支援装置10が、患者の個人データに基づいて、複合疾患状態に応じた適切な改善目標を提示することから、継続的な日常生活の情報を得ることで、効率的な治療が可能になる。
【0118】
また、本実施形態は、複合疾患状態であることを前提とした改善目標を出力するようにした。これにより、単なる個別疾患ごとの改善目標の組み合わせではなく、複合疾患状態を構成する個別疾患ごとの重み(重症度)を考慮した、複合疾患状態を効率的に治療可能な改善目標を出力することが可能になる。
【0119】
また、改善目標を達成するための行動目標の設定を行い、設定した行動目標に関するアンケートの回答に応じたスコアを日々表示することで、患者は自らの行動を日々振り返ることができ、目標達成に向けたモチベーションを維持することが可能になる。
【0120】
また、患者の個人データ、改善目標、行動目標、アンケート回答等は、患者を診療する医師にも共有されることから、医師は、患者の改善目標に向けた取り組み状況を把握し、次の診察に生かすことが可能になる。
【0121】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0122】
また、以上説明した実施形態において、患者用端末20、患者用端末20にデータを出力する出力部102及び患者用端末20から各種の入力を受け付ける受付部を、それぞれ、第2端末、第2出力部及び第2受付部と称してもよい。また、医師用端末30、医師用端末30にデータを出力する出力部102及び医師用端末30から各種の入力を受け付ける受付部を、それぞれ、第1端末、第1出力部及び第1受付部と称してもよい。 また、以上説明した実施形態では、出力部102は、リスク、スコア及び重症度のレベルの大小を、数値を用いて出力するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、数値の大小に変えて、色(例えば赤色(重症度大)~青色(重症度低)とする等)又は記号(例えば「A」(スコア最大)~「Z」(スコア最小)とする等)を用いて出力するようにしてもよい。この場合、患者用端末20の表示制御部202は、
図20の画面A100において、「リスクは「4」」の表示に変えて黄色のアイコンを表示させるようにしてもよい。また、患者用端末20の表示制御部202は、
図23の画面A410において、スコアに変えてアルファベットを表示させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0123】
1…医療支援システム、10…医療支援装置、11…プロセッサ、12…記憶装置、13…通信IF、14…入力デバイス、15…出力デバイス、20…患者用端末、30…医師用端末、100…記憶部、100a…患者情報、100b…個別疾患定義情報、100c…複合疾患/目標定義情報、100d…アンケート定義情報、100e…スコア定義情報、100f…行動目標定義情報、101…取得部、102…出力部、103…受付部、104…算出部、200…記憶部、201…受付部、202…表示制御部、300…記憶部、301…受付部、302…表示制御部