(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】複合ケーブル、ワイヤハーネスの配索構造、および複合ケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20240426BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20240426BHJP
H01B 11/22 20060101ALI20240426BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
H01B7/00 310
H01B7/00 301
H01B13/00 555
H01B11/22
G02B6/44 351
G02B6/44 386
(21)【出願番号】P 2019095539
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2022-03-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】島貫 斉史
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 正幸
(72)【発明者】
【氏名】椎野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 清
(72)【発明者】
【氏名】森本 政仁
(72)【発明者】
【氏名】川原 啓輔
【審査官】岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0345886(US,A1)
【文献】特開平01-211706(JP,A)
【文献】特開2012-009153(JP,A)
【文献】国際公開第01/056042(WO,A1)
【文献】特開2016-004686(JP,A)
【文献】実開昭60-094727(JP,U)
【文献】特開2019-029145(JP,A)
【文献】国際公開第2017/222058(WO,A1)
【文献】特開平09-145969(JP,A)
【文献】実開昭58-026008(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 13/00
H01B 11/22
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料から構成された筒状体と、
導電性を有し、前記筒状体の軸線方向に沿って延在する帯状体と、
前記筒状体および前記帯状体を被覆する絶縁材料から構成された外被と、
前記筒状体の内部に非拘束状態で収容された、少なくとも一本の線状体と、
を有し、
前記外被は、前記軸線方向に対して垂直に切断したときの断面が扁平状であり、
前記筒状体と前記帯状体とは、前記外被の断面の短軸方向に並んで配置され、
前記帯状体は、前記軸線方向に対して垂直に切断したときの前記帯状体の断面の長手方向が前記外被の断面の長軸方向に沿うように、配置され、
前記帯状体と前記筒状体とが、前記外被を挟んで互いに離間して配置され、
前記筒状体の内周面と前記線状体の外周面の少なくとも一部との間には空間が形成され
、
前記帯状体は、前記外被の断面の長軸側の表面側にのみ配置されている
複合ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の複合ケーブルにおいて、
前記外被の断面の長軸側の2つの表面のうち前記帯状体に最も近い表面と前記帯状体までの距離は、前記帯状体の厚みの0.5倍以上2.0倍以下である
ことを特徴とする複合ケーブル。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の複合ケーブルにおいて、
前記帯状体を複数有し、
複数の前記帯状体は、互いに離間し、前記外被の断面の長軸方向に並んで配置されている
ことを特徴とする複合ケーブル。
【請求項4】
請求項1
または2に記載の複合ケーブルにおいて、
前記帯状体を
2つ有し、
2つの前記帯状体は、互いに離間し、前記外被の断面の短軸方向に並んで配置され、
前記筒状体は、前記外被の断面の短軸方向において、
2つの前記帯状体間に配置されている
ことを特徴とする複合ケーブル。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の複合ケーブルにおいて、
前記帯状体は、平板状の金属材料、扁平状の撚線導体、または扁平状の編組導体から構成されている
ことを特徴とする複合ケーブル。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の複合ケーブルにおいて、
前記帯状体は、前記軸線方向に延在する複数の金属線を含み、
前記複数の金属線は、前記外被の断面の長軸方向に並んで配置されている
ことを特徴とする複合ケーブル。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の複合ケーブルにおいて、
前記帯状体の外周面は、絶縁材料で覆われている
ことを特徴とする複合ケーブル。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の複合ケーブルにおいて、
前記軸線方向に対して垂直に切断したときの前記筒状体の断面が円形状である
ことを特徴とする複合ケーブル。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の複合ケーブルにおいて、
前記軸線方向に対して垂直に切断したときの前記筒状体の断面が矩形状である
ことを特徴とする複合ケーブル。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の複合ケーブルにおいて、
前記帯状体の延在方向の端部に接続された第1外部端子を更に有する
ことを特徴とする複合ケーブル。
【請求項11】
請求項1に記載の複合ケーブルにおいて、
前記線状体の延在方向の一端に接続された第2外部端子を更に有する
ことを特徴とする複合ケーブル。
【請求項12】
請求項1、または11に記載の複合ケーブルにおいて、
前記線状体は、電気信号を伝送する導電体を含む
ことを特徴とする複合ケーブル。
【請求項13】
請求項1、11、および12の何れか一項に記載の複合ケーブルにおいて、
前記線状体は、光ファイバを含む
ことを特徴とする複合ケーブル。
【請求項14】
請求項1、11、および12の何れか一項に記載の複合ケーブルにおいて、
前記線状体は、伝送路として機能しない糸部材を含む
ことを特徴とする複合ケーブル。
【請求項15】
電源線および通信線を含む幹線と、前記幹線から分岐した枝線とを有し、
前記幹線の少なくとも一部が請求項1乃至14の何れか一項に記載の複合ケーブルである
ことを特徴とするワイヤハーネスの配索構造。
【請求項16】
電源線および通信線を含む幹線と、前記幹線から分岐した枝線とを有し、
前記枝線の少なくとも一部が請求項1乃至14の何れか一項に記載の複合ケーブルである
ことを特徴とするワイヤハーネスの配索構造。
【請求項17】
請求項15または16に記載のワイヤハーネスの配索構造において、
アース線を更に有する
ことを特徴とするワイヤハーネスの配索構造。
【請求項18】
導電性材料から構成された筒状体を形成する第1ステップと、
導電性を有する帯状体を形成する第2ステップと、
前記第1ステップで形成された前記筒状体の外周面と前記第2ステップで形成された前記帯状体の外周面とを被覆する絶縁材料から構成された外被を、押出成形により形成する第3ステップと、
前記第3ステップにおいて前記外被が形成された前記筒状体の内部に、線状体を挿入する第4ステップと、を含み、
前記帯状体は、前記筒状体の軸線方向に沿って延在し、
前記外被は、前記軸線方向に対して垂直に切断したときの断面が扁平状であり、
前記筒状体と前記帯状体とは、前記外被の断面の短軸方向に並んで配置され、
前記帯状体は、前記軸線方向に対して垂直に切断したときの前記帯状体の断面の長手方向が前記外被の断面の長軸方向に沿うように、配置され、
前記帯状体と前記筒状体とが、前記外被を挟んで互いに離間して配置され、
前記線状体は前記筒状体の内部に非拘束状態で収容され、
前記筒状体の内周面と前記線状体の外周面の少なくとも一部との間には空間が形成されている
複合ケーブルの製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の複合ケーブルの製造方法において、
前記帯状体の延在方向の端部に第1外部端子を接続する第5ステップを含む
ことを特徴とする複合ケーブルの製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の複合ケーブルの製造方法において、
前記線状体の延在方向の端部に第2外部端子を接続する第6ステップを含む
ことを特徴とする複合ケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ケーブル、ワイヤハーネスの配索構造、および複合ケーブルの製造方法に関し、例えば、車載用の複合ケーブル、ワイヤハーネスの配索構造、および複合ケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の配線システムには、互いに独立して製造された通信ケーブルと電源ケーブルを必要に応じてテープなどで集束した構造のワイヤハーネスが使用されている。
近年、電気信号の伝送と光信号の伝送とが可能な複合ケーブルを採用した車載用のワイヤハーネスが増えつつある。例えば、特許文献1には、光ファイバとその被覆の間に、めっきなどで導電性材料の層を表面に形成した抗張力繊維群が充填された、車載用の複合ケーブルが開示されている。また、特許文献2には、光ファイバとメタルワイヤを分離板で仕切り、押さえ巻テープで一束化した構造を有する複合ケーブルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5920283号公報
【文献】特開2012-43557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の複合ケーブルは、車載用のワイヤハーネスとして十分な性能を有しているとは言い難かった。
【0005】
例えば、特許文献1に開示された複合ケーブルを構成する導電性抗張力繊維は、アラミド等の抗張力繊維表面に銅等導電性金属をめっき等で形成されている。そのため、車載用ワイヤハーネスとして要求される十分な導電性能(電気抵抗)を確保するには、従来の絶縁電線と同等の導電体断面積が必要となり、その屈曲性能も従来の絶縁電線と同等となると考えられる。すなわち、特許文献1に記載の技術では、車載用ワイヤハーネスとして要求される導電性能を満足するために、複合ケーブルの径が従来の絶縁電線を用いる場合よりも大きくなる。その結果、複合ケーブルの屈曲性能が低下するとともに、複合ケーブルの重量が増すおそれがある。
【0006】
また、特許文献2に開示された複合ケーブルは、意図せず力が加わって複合ケーブルが曲げられた場合に、信号線としての光ファイバの曲率半径を意図通りに押さえられず、伝送損失が大きくなるおそれがある。また、複合ケーブルの外被として押さえ巻テープしかないため、外力を受けた場合に光ファイバの屈曲または破断などが発生するおそれがあり、屈曲性能が高いとは言い難い。
【0007】
更に、車載用ワイヤハーネスにおける電源線には大電流が流れるため、電源線からの発熱が無視できない。しかしながら、特許文献1,2に開示された複合ケーブルは、放熱性について十分に考慮されているとは言い難い。
【0008】
このように、従来の複合ケーブルは、ワイヤハーネスとして十分な性能を有しているとは言い難かった。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、ワイヤハーネスとして十分な性能を有する複合ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の代表的な実施の形態に係る複合ケーブルは、筒状体と、導電性を有し、前記筒状体の軸線方向に沿って延在する帯状体と、前記筒状体および前記帯状体を被覆する絶縁材料から構成された外被と、を有し、前記外被は、前記軸線方向に対して垂直に切断したときの断面が扁平状であり、前記筒状体と前記帯状体とは、前記外被の断面の短軸方向に並んで配置され、前記帯状体は、前記軸線方向に対して垂直に切断したときの前記帯状体の断面の長手方向が前記外被の前記断面の長軸方向に沿うように、配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る複合ケーブルによれば、ワイヤハーネスとして十分な性能を有する複合ケーブルを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る複合ケーブルの断面図である。
【
図2】信号線としての光ファイバ心線の断面図である。
【
図3】実施の形態2に係る複合ケーブルの断面図である。
【
図4】実施の形態2に係る複合ケーブルの信号線3Bの断面図である。
【
図5】実施の形態3に係る複合ケーブルの断面図である。
【
図6】実施の形態4に係る複合ケーブルの斜視図である。
【
図7】実施の形態5に係る複合ケーブルの断面図である。
【
図8】実施の形態6に係る複合ケーブルの断面図である。
【
図9】実施の形態7に係る複合ケーブルの断面図である。
【
図10】実施の形態8に係る複合ケーブルの断面図である。
【
図11】実施の形態9に係る複合ケーブルの断面図である。
【
図12】実施の形態10に係る複合ケーブルの断面図である。
【
図13】実施の形態11に係る複合ケーブルの断面図である。
【
図14】実施の形態12に係る複合ケーブルの断面図である。
【
図15】本発明の一実施の形態に係る複合ケーブルの端部に外部端子を接続した構成を示す図である。
【
図16】本発明の一実施の形態に係る複合ケーブルの製造方法の流れを示すフロー図である。
【
図17】実施の形態に係る複合ケーブルを用いたワイヤハーネスの配索構造の平面図である。
【
図18】
図17に示すワイヤハーネスの配索構造を表す要部斜視図である。
【
図19A】本発明の別の実施の形態に係る外被の断面図である。
【
図19B】本発明の別の実施の形態に係る外被の断面図である。
【
図19C】本発明の別の実施の形態に係る外被の断面図である。
【
図19D】本発明の別の実施の形態に係る外被の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0014】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る複合ケーブル(1A~1M)は、筒状体(2A,2B,2C)と、導電性を有し、前記筒状体の軸線方向(Y方向)に沿って延在する帯状体(5A,5A_1,5A_2)と、前記筒状体および前記帯状体を被覆する絶縁材料から構成された外被(4A)とを有し、前記外被は、前記軸線方向に対して垂直に切断したときの断面が扁平状であり、前記筒状体と前記帯状体とは、前記外被の断面の短軸方向(X方向)に並んで配置され、前記帯状体は、前記軸線方向に対して垂直に切断したときの前記帯状体の断面の長手方向が前記外被の前記断面の長軸方向(Z方向)に沿うように、配置されていることを特徴とする。
【0015】
〔2〕上記〔1〕の複合ケーブル(1G)において、前記帯状体(5A_1,5A_2)を複数有し、複数の前記帯状体は、互いに離間し、前記外被の断面の長軸方向(X方向)に並んで配置されていてもよい。
【0016】
〔3〕上記〔1〕の複合ケーブル(1H,1J,1K,1L)において、前記帯状体(5A_1,5A_2)を複数有し、複数の前記帯状体は、互いに離間し、前記外被の断面の短軸方向(Z方向)に並んで配置されていてもよい。
【0017】
〔4〕上記〔3〕の複合ケーブル(1L)において、前記筒状体は、前記外被の断面の短軸方向において、前記帯状体間に配置されていてもよい。
【0018】
〔5〕上記〔1〕乃至〔4〕の何れかの複合ケーブル(1A~1C,1F~1M)において、前記帯状体は、平板状の金属材料、扁平状の撚線導体、または扁平状の編組導体のいずれかから構成されていてもよい。
【0019】
〔6〕上記〔1〕乃至〔4〕の何れかの複合ケーブル(1D,1E)において、前記帯状体は、前記軸線方向に延在する複数の金属線(51D,51E)を含み、前記複数の金属線は、前記外被の断面の長軸方向(X方向)に並んで配置されていてもよい。
【0020】
〔7〕上記〔1〕乃至〔6〕の何れかの複合ケーブル(1B,1K)において、前記帯状体の外周面は、絶縁材料(6B,6K)で覆われていてもよい。
【0021】
〔8〕上記〔1〕乃至〔7〕の何れかの複合ケーブルにおいて、前記軸線方向(Y方向)に対して垂直に切断したときの前記筒状体の断面が円形状であってもよい。
【0022】
〔9〕上記〔1〕乃至〔7〕の何れかの複合ケーブル(1C)において、前記軸線方向(Y方向)に対して垂直に切断したときの前記筒状体の断面が矩形状であってもよい。
【0023】
〔10〕上記〔1〕乃至〔9〕の何れかの複合ケーブルにおいて、前記帯状体の延在方向の端部に接続された第1外部端子を更に有していてもよい。
【0024】
〔11〕上記〔1〕乃至〔10〕の何れかの複合ケーブルにおいて、前記筒状体は、導電性材料から構成されていてもよい。
【0025】
〔12〕上記〔1〕乃至〔10〕の何れかの複合ケーブル(1B)において、前記筒状体は、絶縁材料から構成されていてもよい。
【0026】
〔13〕上記〔1〕乃至〔12〕の何れかの複合ケーブル(1A~1Q)において、前記筒状体の内部に非拘束状態で収容された、少なくとも一本の線状体(3A,3B)を更に有していてもよい。
【0027】
〔14〕上記〔13〕の複合ケーブルにおいて、前記筒状体の内周面と前記線状体の外周面の少なくとも一部との間には空間(30A)が形成されていてもよい。
【0028】
〔15〕上記〔13〕に記載の複合ケーブルにおいて、前記筒状体の内部には、絶縁材料から成る複数の細片が充填されていてもよい。
【0029】
〔16〕上記〔13〕乃至〔15〕の何れかの複合ケーブルにおいて、前記線状体の延在方向の一端に接続された第3外部端子を更に有していてもよい。
【0030】
〔17〕上記〔13〕乃至〔16〕の何れかの複合ケーブルにおいて、前記線状体は、電気信号を伝送する導電体を含んでもよい。
【0031】
〔18〕上記〔13〕乃至〔17〕の何れかの複合ケーブルにおいて、前記線状体は、光ファイバを含んでもよい。
【0032】
〔19〕上記〔13〕乃至〔17〕の何れかの複合ケーブルにおいて、前記線状体は、伝送路として機能しない糸部材を含んでもよい。
【0033】
〔20〕本発明の代表的な実施の形態に係るワイヤハーネスの配索構造(500)は、電源線および通信線を含む幹線(12a~12d,22a~22c)と、前記幹線から分岐した枝線(13,15)とを有し、前記幹線の少なくとも一部が上記〔1〕乃至〔19〕の何れかの複合ケーブル(1A~1Q)であることを特徴とする。
【0034】
〔21〕本発明の代表的な実施の形態に係るワイヤハーネスの配索構造(500)は、電源線および通信線を含む幹線(12a~12d,22a~22c)と、前記幹線から分岐した枝線(13,15)とを有し、前記枝線の少なくとも一部が上記〔1〕乃至〔19〕の何れかの複合ケーブル(1A~1Q)であることを特徴とする。
【0035】
〔22〕上記〔20〕または〔21〕のワイヤハーネスの配索構造において、アース線を更に有していてもよい。
【0036】
〔23〕本発明の代表的な実施の形態に係る複合ケーブルの製造方法は、筒状体(2A,2C)を形成する第1ステップ(S101)と、導電性を有する帯状体(5A,5A_1,5A_2)を形成する第2ステップ(S102)と、前記第1ステップで形成された前記筒状体の外周面と前記第2ステップで形成された前記帯状体の外周面とを被覆する絶縁材料から構成された外被(4A)を、押出成形により形成する第3ステップ(S103)と、を含むことを特徴とする。
【0037】
〔24〕上記〔23〕の複合ケーブルの製造方法において、前記第3ステップにおいて前記外被が形成された前記筒状体の内部に、線状体(3A,3B)を挿入する第4ステップ(S104)を含んでもよい。
【0038】
〔25〕上記〔24〕の複合ケーブルの製造方法において、前記帯状体の延在方向の端部に第1外部端子を接続する第5ステップ(S105)を含んでもよい。
【0039】
〔26〕上記〔25〕の複合ケーブルの製造方法において、前記線状体の延在方向の端部に第2外部端子を接続する第6ステップ(S106)を含んでもよい。
【0040】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0041】
≪実施の形態1≫
図1は、実施の形態1に係る複合ケーブルの断面図である。
図1に示される複合ケーブル1Aは、例えば、電力の伝送と、電気信号または光信号の伝送が可能なケーブルである。
【0042】
図1に示すように、複合ケーブル1Aは、筒状体2A、信号線3A、帯状体5A、および外被4Aを有する。
【0043】
筒状体2Aは、絶縁性を有する材料から構成されている。具体的に、筒状体2Aは、絶縁材料から構成された中空の管である。例えば、軸線方向に対して垂直に筒状体2Aを切断したときの筒状体2Aの断面は、円形状である。筒状体2Aは、絶縁性を有する材料であればよく、例えばポリエチレン、PVC(polyvinyl chloride)、ナイロン、シリコンなどの柔軟性を有する絶縁材料を例示することができる。筒状体2Aは、例えば、押出成形によって形成される。
【0044】
信号線3Aは、線状体である。信号線3Aは、例えば光ファイバ心線である。複合ケーブル1Aをワイヤハーネスの幹線または枝線に採用した場合、信号線3Aは、例えば、信号伝送のための信号線として機能させることが可能となっている。
【0045】
なお、
図1には、筒状体2Aの内部に、2本の信号線3Aとしての光ファイバ心線が収容された場合が例示されているが、筒状体2Aの内部に収容される信号線3Aの本数は、特に制限されない。すなわち、筒状体2Aの内部に収容される信号線3Aは1本であってもよいし、3本以上であってもよい。また、信号線を金属線(メタル線)とすれば、電気信号伝送のための信号線として機能する。この場合、金属線は1本以上であればよく、具体例としては、金属線は、ツイストペア線、同軸ケーブルなどであってもよい。また、信号線としては光ファイバ心線と金属線が混在していてもよい。
【0046】
図2は、信号線3Aとしての光ファイバ心線の断面図である。
図2に示すように、信号線3Aとしての光ファイバ心線は、コア101、クラッド102、ファイバ素線被覆103、緩衝材104、およびアウタージャケット105を有する。コア101とクラッド102は、例えば、石英ガラスや樹脂等から構成されている。クラッド102の外径は、通信用途で通常用いられる125マイクロメートルと同等または小さくすることができ、例えば80マイクロメートル(±5%の誤差を含む)とすることができる。クラッド102の外径を小さくすることにより、光ファイバ心線の曲げひずみが小さくなり、破断確率を下げることができる。しかし、クラッド102の外径を小さくしすぎると、コアサイズを小さくする必要性が生じ、接続損失が増大する傾向がある。
【0047】
ファイバ素線被覆103は、紫外線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などで構成されている。例えば、車載用途の場合は、耐熱性を考慮して、シリコンアクリレート等で構成されている。
【0048】
緩衝材104は、光ファイバ心線の長軸方向にかかる引張力に対する強度を高めるためにファイバ素線被覆103の周囲に配置される部材である。緩衝材104は、例えば、複数の繊維からなり、ファイバ素線被覆103の全周に配置される。上記繊維としては、アラミド繊維等を例示することができる。アウタージャケット105は、例えばナイロンやフッ素樹脂(例えばETFE)から構成されていることが好ましい。アウタージャケット105の外径は、1ミリメートル以下であることが好ましく、例えば800~900マイクロメートルで、適宜所望の値で構成する。アウタージャケット105の外径を小さくすることにより、光ファイバ心線が曲がりやすくなり、配索性の向上につながる。しかし、アウタージャケット105の外径を小さくしすぎると、外力からの保護が不十分になり、伝送損失が増大する傾向がある。
【0049】
信号線3Aは、筒状体2Aの内部に、非拘束状態で収容されている。具体的に、筒状体2Aの内周面28Aと信号線3Aの外周面の少なくとも一部との間には空間30Aが形成されている。例えば、空間30Aは空気で満たされており、各信号線3Aは、筒状体2Aの空間30Aにおいて移動可能な状態で配置されている。
【0050】
外被4Aは、帯状体5Aおよび筒状体2A被覆する絶縁材料から構成されている。絶縁材料としては、例えばポリエチレン、PVC、ナイロン、シリコン等を例示することができる。例えば、外被4Aは、押出成形によって形成される。
【0051】
外被4Aは、例えば帯状体5Aの外周面59A及び筒状体2Aの外周面29Aを全体的に覆うことができるような形状を有している。具体的には、外被4Aは、筒状体2Aの軸線方向に対して垂直に切断したときの断面が扁平状である。換言すれば、外被4Aの、筒状体2Aの軸線方向に対して垂直に切断したときの断面は、長軸方向の長さと短軸方向の長さの比(アスペクト比)が1以上の形状を有している。例えば、外被4Aの断面は、
図1に示すように長方形状であってもよいし、楕円形状または長円形状であってもよい。
【0052】
図1には、三次元空間において、筒状体2Aの軸線がY軸と平行となり、外被4Aの断面の長軸方向がX軸に平行となり、外被4Aの断面の短軸方向がX軸に平行となるように、複合ケーブル1Aを配置した場合が一例として示されている。
【0053】
なお、本明細書において、
図1に示すように外被4Aの断面が長方形状である場合において、「長軸方向」とは、長方形状である外被4Aの断面の長手方向(X方向)を表し、「短軸方向」とは、長方形状である外被4Aの断面の短手方向(Z方向)を表すものとする。
【0054】
帯状体5Aは、導電性を有する材料から構成されている。帯状体5Aは、筒状体2Aの軸線方向(Y方向)に沿って延在している。複合ケーブル1Aをワイヤハーネスの幹線または枝線に採用した場合、帯状体5Aは、例えば、電力伝送のための電源線として機能させることが可能となっている。
【0055】
具体的に、帯状体5Aは、金属材料から構成された中実の板(金属板)である。例えば、帯状体5Aは、バスバーのような、平板状の金属材料から構成されている。帯状体5Aは、導電性を有する金属材料であればよく、アルミニウム、銅、銅合金、錫めっき線、鉄、およびニッケル等の金属材料を例示することができる。なお、帯状体は扁平状の撚線導体、または扁平状の編組導体のいずれかであってもよい。
【0056】
軸線方向(Y方向)に対して垂直に切断したときの帯状体5Aの断面は、矩形状(長方形状)である。ここで、帯状体5Aの幅wは、例えば10mm以上60mm以下の値であり、帯状体5Aの厚みtは、例えば0.3mm以上4.0mm以下の値である。また、帯状体5Aの断面積は、例えば3mm2以上(好ましくは10mm2以上)240mm2以下であり、帯状体5Aの幅wと厚みtとの比(w/t)は、例えば2.5以上(好ましくは5以上)200以下である。
【0057】
帯状体5Aは、筒状体2Aの軸線方向に対して垂直に切断したときの帯状体5Aの断面の長手方向が外被4Aの断面の長軸方向(X方向)に沿うように、配置されている。例えば、
図1に示すように、外被4Aの断面が長方形状である場合、二つの長辺41A,42Aのうち一方の長辺42Aと帯状体5Aの断面の長辺とが平行になるように、帯状体5Aが配置されている。
【0058】
筒状体2Aと帯状体5Aとは、外被4Aの断面の短軸方向(Z方向)に並んで配置されている。例えば、筒状体2Aは、外被4Aの断面における長辺41A側に配置され、帯状体5Aは、外被4Aの断面における長辺42A側に配置されている。
【0059】
ここで、外被4A内における、帯状体5Aと外被4Aの長辺42A(表面)までの距離dは、帯状体5Aの放熱性と外部からの衝撃による帯状体5Aの破損防止性を考慮し、例えば、帯状体5Aの厚みtの0.5倍以上2.0倍以下の値に設定することが好ましい。
【0060】
上述した構成を有する複合ケーブル1Aは、導電性を有する筒状体2Aと、筒状体2Aの内部に収容された少なくとも一本の信号線3Aと、導電性を有する帯状体5Aとを有しているので、信号線3Aとしての光ファイバによる光信号の伝送と、帯状体5Aによる電気信号の伝送(例えば電力伝送)と、を一つのケーブルによって実現することができる。
【0061】
また、信号線3Aが筒状体2Aの内部に収容されているので、複合ケーブル1Aの外被4Aに対して外力が加わった場合であっても、信号線3Aに直接外力が作用し難い。これにより、信号線3Aに外力が加わることによる、信号線3Aによる信号伝送への悪影響を抑えることが可能となる。
【0062】
特に、信号線3Aが筒状体2Aの内部において非拘束状態で収容されていること、すなわち、信号線3Aが、筒状体2Aの内周面28Aと信号線3Aとの間には空間30Aにおいて、移動可能な状態で配置されていることにより、外力により筒状体2Aが変形した場合であっても、信号線3Aが筒状体2A内を移動し、信号線3Aに外力が加わることを回避することが可能となる。
【0063】
また、複合ケーブル1Aによれば、筒状体2Aが柔軟性を有する絶縁材料によって構成されているので、複合ケーブル1Aが湾曲した時に筒状体2Aが塑性変形することが可能となり、複合ケーブル1Aの屈曲性能を高めることが可能となる。また、金属管は、特許文献1のような導電性が付与された抗張力繊維ではないので、導電率に対する体積および断面積の増加率を抑えることができ、複合ケーブルの断面積の増大を抑えることが可能となる。
【0064】
また、複合ケーブル1Aによれば、外被4Aの断面の形状が扁平形状であるので、同一材料且つ同等の断面積を有する円形ケーブルに比べて、短軸方向(Z方向)の可撓性が向上する。これにより、複合ケーブル1Aを車両のワイヤハーネスとして用いた場合に、車両内における配索性が向上する。
【0065】
また、例えば帯状体5Aを電源線として用いた場合に、帯状体5A(電源線)に大電流が流れたときに帯状体5Aで発生する熱を効果的に放出することが可能となる。すなわち、帯状体5Aは、一般的な撚線や単線に比べて表面積が大きいので、電源線として用いた場合に、より高い放熱性を実現することが可能となる。
【0066】
例えば、複合ケーブル1Aを車両に配索する場合に、外被4Aの帯状体5Aに近い側の表面(長辺42A)を車両のボディ(金属)に接触させることにより、電源線としての帯状体5Aに発生する熱を、車両のボディ(金属)に放熱させることが可能となる。これにより、放熱性能の高いワイヤハーネスを実現することが可能となる。
【0067】
ここで、外被4A内における、帯状体5Aと外被4Aの長辺42A(表面)までの距離dを、例えば帯状体5Aの厚みtの0.5倍以上2.0倍以下の値に設定することにより、帯状体5Aの放熱性のみならず、外部からの衝撃による帯状体5Aの破損防止性を向上させることが可能となる。
【0068】
更に、帯状体5Aが塑性変形可能な金属材料から成る単線とすることにより、複合ケーブル1Aを係止部品によって係止した場合に、複合ケーブル1Aにスプリングバックが生じず、係止部品に複合ケーブル1Aのばね性による力が加わり難くなる。これにより、係止部品による複合ケーブル1Aの保持性能を高めることが可能となる。
【0069】
また、信号線3Aとして光ファイバを用いることにより、信号線3Aにおける信号伝送は、電源線としての筒状体2Aや外部において発生した電磁波による悪影響を受け難くなる。
【0070】
更に、帯状体5Aとして被覆されていない平板状の金属材料から構成されているので、外被4Aと帯状体5Aとの密着性がよい。そのため、複合ケーブル1A内で帯状体5Aがずれ難くなる。
【0071】
以上、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aによれば、ワイヤハーネスとして十分な性能を有するケーブルを提供することが可能となる。
【0072】
≪実施の形態2≫
図3は、実施の形態2に係る複合ケーブルの断面図である。
【0073】
実施の形態2に係る複合ケーブル1Bは、筒状体2Bの構成及び信号線3Bの種類が異なる点と、帯状体5Aが絶縁材料によって覆われている点において、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと相違し、その他の点においては、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと同様である。
【0074】
図3に示すように、複合ケーブル1Bにおける筒状体2Bは、例えば実施の形態1に係る複合ケーブル1Aの帯状体5Aと同様の導電性(非絶縁性)を有する材料、すなわち金属材料を筒状に形成したものである。筒状体2Bは、例えば押出成形、または板状材料の筒状化などによって形成される。
【0075】
複合ケーブル1Bにおける帯状体5Aの外周面59Aは、被覆6Bによって覆われている。被覆6Bは、例えば、外被4Aと同様の絶縁材料から構成されている。被覆6Bは、例えば押出成形によって形成される。なお、被覆6Bはなくてもよい。
【0076】
外被4Aは、被覆6Bの外周面69Bと筒状体2Bの外周面29Bとを全体的に覆っている。
【0077】
複合ケーブル1Cにおいて、信号線3Bは、例えば金属線(メタル線)である。この場合、金属線は1本以上であればよく、具体例としては、金属線はツイストペア線などであってもよい。これによれば、筒状体が導電性を有するため、シールド効果が発揮され、通信性能が向上する。また、信号線として前述の光ファイバ心線を用いることにより、光信号伝送が可能となる。また、信号線としては光ファイバ心線と金属線が混在していてもよい。
【0078】
図4は、信号線3Bの断面構造を模式的に示す図である。
図4に示すように、信号線3Bは、例えば、ツイスト線301と、ツイスト線301の外周を被覆するジャケット302とを含む。ツイスト線301は、複数の被覆電線311を撚り合わせたものである。
図4には、一例として2本の被覆電線311を撚り合わせたものを例示しているが、被覆電線311の本数は特に制限されない。
【0079】
各被覆電線311は、例えば金属から成る導体3110と、導体3110の外周を被覆する絶縁材料から成る絶縁層3111とを含む。導体3110は、例えば、帯状体5A等と同様の金属材料によって形成することができる。絶縁層3111およびジャケット302は、例えば、外被4Aと同様の絶縁材料によって形成することができる。
なお、導体3110は、単線であってもよいし、撚線であってもよく、導体3110の構造は特に限定されない。
【0080】
各通信線3Bは、筒状体2Bの内周面によって画成される空間30Aにおいて移動可能に配置されていることが好ましい。
【0081】
以上、実施の形態2に係る複合ケーブル1Bによれば、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと同様に、ワイヤハーネスとして十分な性能を有するケーブルを提供することが可能となる。
【0082】
特に、実施の形態2に係る複合ケーブル1Bにおいて、筒状体2Bが非絶縁性の材料(金属材料)によって形成されている。これによれば、筒状体2Bを、帯状体5Aや外部の機器から発生した電磁波が信号線3Bに干渉することを防止するためのシールドとして機能させることができる。これにより、信号障害の発生を抑制することが可能となる。
【0083】
≪実施の形態3≫
図5は、実施の形態3に係る複合ケーブルの断面図である。
実施の形態3に係る複合ケーブル1Cは、筒状体2Cの形状が異なる点において、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと相違し、その他の点においては、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと同様である。筒状体2Cは絶縁体でも非絶縁体でもよい。また、通信線は光ファイバ心線でも金属線でもよい。
【0084】
筒状体2Cは、絶縁性を有する材料から構成されている。筒状体2Cは、角筒状に形成されている。すなわち、筒状体2Cの軸線に対して垂直に切断したときの筒状体2Cの断面は、矩形状(例えば正方形状)である。筒状体2Cは、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと同様に、外被4Aの断面の短軸方向(Z方向)に並んで配置されている。
【0085】
以上、実施の形態3に係る複合ケーブル1Cによれば、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと同様に、ワイヤハーネスとして十分な性能を有するケーブルを提供することが可能となる。
【0086】
特に、実施の形態3に係る複合ケーブル1Cは、帯状体5Aのみならず、筒状体2Cも断面が矩形状であるため、例えば、帯状体5Aおよび筒状体2Cを一括して外被4Aで被覆する際に、帯状体5Aおよび筒状体2Cの位置合わせが容易となる。これにより、複合ケーブル1Cの製造時の作業が容易となり、製造コストの低減が期待できる。
【0087】
≪実施の形態4≫
図6は、実施の形態4に係る複合ケーブルの断面図である。
実施の形態4に係る複合ケーブル1Dは、帯状体5Dの構成が異なる点において、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと相違し、その他の点においては、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと同様である。
【0088】
図6に示すように、複合ケーブル1Dにおいて、帯状体5Dは、金属材料から構成された中実の単線、いわゆる裸単線の集合である。裸単線としての金属線51Dは、実施の形態1に係る帯状体5Aと同様の金属材料によって形成されている。筒状体2Aの軸線方向(Y方向)に対して垂直な方向から金属線51Dを切断したときの金属線51Dの断面は、例えば、円形状である。金属線51Dは単線でも撚線でもよく、断面は多角形状であってもよい。
【0089】
具体的には、帯状体5Dは、筒状体2Aの軸線方向(Y方向)に延在する複数の金属線(裸単線)51Dを含む。複数の金属線51Dは、外被4Aの断面の長軸方向(X方向)に並んで配置されている。すなわち、Y方向にそれぞれ延在する複数の金属線51DがX方向に一列に並んで配置されることにより、複数の金属線51Dが全体として帯状となっている。
【0090】
ここで、隣り合う金属線(裸単線)51Dは、互いに接触して配置されている。
【0091】
以上、実施の形態4に係る複合ケーブル1Dによれば、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと同様に、ワイヤハーネスとして十分な性能を有するケーブルを提供することが可能となる。
【0092】
特に、実施の形態4に係る複合ケーブル1Dにおいて、帯状体5Dは、筒状体2Aの軸線方向(Y方向)に延在する複数の金属線(裸単線)51Dによって構成されているため、帯状体5Dの断面積をより大きくすることが可能となる。例えば、帯状体5Dの表面積は、各金属線51Dの断面積の合計と等しい断面積を持つ1本の金属線(裸単線)よりも表面積が大きくなる。
【0093】
したがって、実施の形態4に係る複合ケーブル1Dによれば、電源線として、各金属線51Dの断面積の合計と等しい断面積を持つ1本の金属線(裸単線)を採用する場合に比べて、放熱性を向上させることができる。
【0094】
また、実施の形態4に係る複合ケーブル1Dによれば、例えば、金属線51Dとして裸単線を採用することにより、外被4Aと金属線51D(帯状体5D)との密着性を高めることが可能となり、複合ケーブル1D内で各金属線51Dがずれ難くなる。
【0095】
≪実施の形態5≫
図7は、実施の形態5に係る複合ケーブル1Eの断面図である。
実施の形態5に係る複合ケーブル1Eは、帯状体5Eの構成が異なる点において、実施の形態4に係る複合ケーブル1Dと相違し、その他の点においては、実施の形態4に係る複合ケーブル1Dと同様である。
【0096】
図7に示すように、複合ケーブル1Eにおける帯状体5Eは、被覆付き電線の集合である。具体的には、筒状体2Aの軸線方向(Y方向)に延在する複数の電線51Eを含む。各電線51Eは、例えば、複数(例えば7本)の金属線を撚り合わせた撚線511と、絶縁材料から成り、撚線511の外周面を覆う被覆512とを含む被覆付き電線である。
【0097】
撚線511を構成する各金属線は、例えば、実施の形態1に係る帯状体5Aと同様の金属材料によって構成されている。被覆512は、例えば、外被4Aと同様の絶縁材料から構成されている。被覆512は、例えば押出成形によって形成される。筒状体2Aの軸線方向(Y方向)に対して垂直な方向(Z方向)から電線51Eを切断したときの電線51Eの断面は、例えば、円形状である。
【0098】
複数の電線(被覆付き電線)51Eは、外被4Aの断面の長軸方向(X方向)に並んで配置されている。すなわち、Y方向にそれぞれ延在する複数の電線51EがX方向に一列に並んで配置されることにより、複数の電線51Eが全体として帯状となっている。
【0099】
ここで、隣り合う電線51Eは、互いに接触して配置されていてもよいし、所定の間隔をあけて配置されていてもよい。
【0100】
以上、実施の形態5に係る複合ケーブル1Eによれば、実施の形態4に係る複合ケーブル1Dと同様に、ワイヤハーネスとして十分な性能を有するケーブルを提供することが可能となる。
【0101】
特に、実施の形態5に係る複合ケーブル1Eにおいて、電線51Eは、被覆512を備えているため、ケーブルの口出し時に金属線511をばらけさせずに外被4Aを除去することが可能となるので、複合ケーブル1Eの製造時の作業を容易化することができる。
【0102】
更に、実施の形態5に係る複合ケーブル1Eによれば、電線51Eとして被覆付き電線を複数備えているので、複数系統の電源系を配索することが可能となる。
【0103】
≪実施の形態6≫
図8は、実施の形態6に係る複合ケーブルの断面図である。
実施の形態6に係る複合ケーブル1Fは、筒状体2Aと信号線(線状体)3Aとを一組とする線状体入り筒状体7Fを複数有する点において、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと相違し、その他の点においては、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと同様である。
【0104】
図8に示すように、複合ケーブル1Fは、筒状体2Aと、筒状体2Aの内部の空間30Aに収容された少なくとも一つの信号線3Aとを一組とする線状体入り筒状体7Fを複数有している。外被4Aは、帯状体5Aと複数の線状体入り筒状体7Fとを一括して被覆している。
図8には、複合ケーブル1Fが3本の線状体入り筒状体7Fを有している場合が例として示されているが、線状体入り筒状体7Fの本数は、特に制限されない。
【0105】
複数の線状体入り筒状体7Fは、外被4Aの断面の長軸方向(X方向)に並んで配置されている。ここで、
図8に示すように、隣り合う線状体入り筒状体7Fは、互いに離間して(X方向に所定の間隔をあけて)配置されていてもよいし、互いに接触して配置されていてもよい。
【0106】
以上、実施の形態6に係る複合ケーブル1Fによれば、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと同様に、ワイヤハーネスとして十分な性能を有するケーブルを提供することが可能となる。
【0107】
特に、実施の形態6に係る複合ケーブル1Fは、複数の線状体入り筒状体7Fを有し、筒状体2A毎に信号線3Aが収容されているので、一つのケーブルによって複数系統の信号系を配索することが可能となる。
【0108】
≪実施の形態7≫
図9は、実施の形態7に係る複合ケーブルの断面図である。
実施の形態7に係る複合ケーブル1Gは、帯状体5を複数有する点において、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと相違し、その他の点においては、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと同様である。
【0109】
図9に示すように、複合ケーブル1Gは、帯状体5Aを複数有する。
図9には、複合ケーブル1Gが二つの帯状体5A_1,5A_2を有する例が示されているが、帯状体5の数は、特に制限されない。
【0110】
複数の帯状体5Aは、外被4Aの断面の長軸方向(X方向)に並んで配置されている。具体的には、
図9に示すように、二つの帯状体5Aが所定の間隔をあけて、X方向に並んで配置されている。
【0111】
以上、実施の形態7に係る複合ケーブル1Fによれば、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと同様に、ワイヤハーネスとして十分な性能を有するケーブルを提供することが可能となる。
【0112】
特に、実施の形態7に係る複合ケーブル1Gによれば、複数の帯状体5Aが、互いに離間して、外被4Aの断面の長軸方向(X方向)に並んで配置されているので、一つの複合ケーブルによって、複数系統の電源系を配索することが可能となる。
【0113】
また、複数の帯状体5Aを共通の電源線として利用することにより、一つの帯状体5Aを用いる場合に比べて、全体の表面積を大きくすることができ、放熱性を更に向上させることができる。
【0114】
また、複合ケーブル1Gによれば、複数の帯状体5Aは被覆されていないので、外被4Aと帯状体5Aとの密着性がよく、ずれが生じ難い。
【0115】
≪実施の形態8≫
図10は、実施の形態8に係る複合ケーブルの断面図である。
実施の形態8に係る複合ケーブル1Hは、帯状体5Aを複数有し、筒状体2Aの内部に金属線から成る信号線3Bが配置される点において、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと相違し、その他の点においては、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと同様である。
【0116】
図10に示すように、複合ケーブル1Hは、帯状体5Aを複数有する。
図10には、複合ケーブル1Gが二つの帯状体5A_1,5A_2を有する例が示されているが、帯状体5Aの数は、特に制限されない。
【0117】
複数の帯状体5A_1,5A_2は、外被4Aの断面の短軸方向(Y方向)に並んで配置されている。具体的には、
図10に示すように、二つの帯状体5Aが所定の間隔をあけて、Y方向に並んで配置されている。
【0118】
例えば、二つの帯状体5A_1,5A_2のうち、筒状体2A側(信号線3Bに近い側)の帯状体5A_1をシールド電極としてグラウンド電位に接続し、外被4Aの長辺42A側の帯状体5A_2を電源線として用いることが好ましい。
【0119】
以上、実施の形態8に係る複合ケーブル1Hによれば、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと同様に、ワイヤハーネスとして十分な性能を有するケーブルを提供することが可能となる。
【0120】
特に、実施の形態8に係る複合ケーブル1Hによれば、複数の帯状体5A_1,5A_2が、互いに離間して、外被4Aの断面の短軸方向(X方向)に並んで配置されているので、一つの複合ケーブルによって複数系統の電源系を配索することが可能となる。
【0121】
また、複合ケーブル1Hにおいて、二つの帯状体5A_1,5A_2のうち、金属線から成る信号線3Bに近い側の帯状体5A_1をシールド電極とし、外被4の長辺42A側の帯状体5A_2を電源線として用いる。これによれば、電源線としての帯状体5A_2に電流が流れたときに発生する電磁波や外部機器から発生した電磁波の信号線3Bに与える影響を、シールド電極としての帯状体5A_1によって低減することが可能となり、信号障害の発生を抑制することができる。
【0122】
≪実施の形態9≫
図11は、実施の形態9に係る複合ケーブルの断面図である。
実施の形態9に係る複合ケーブル1Jは、筒状体2Aおよび信号線3Bを一組とする線状体入り筒状体7Jを複数有する点において、実施の形態8に係る複合ケーブル1Hと相違し、その他の点においては、実施の形態8に係る複合ケーブル1Hと同様である。
【0123】
図11に示すように、複合ケーブル1Jは、筒状体2Aと、筒状体2Aの内部の空間30Aに収容された少なくとも一つの信号線3Bとを一組とする線状体入り筒状体7Jを複数有している。
図11には、複合ケーブル1Jが3本の線状体入り筒状体7Jを有している場合が例として示されているが、線状体入り筒状体7Jの本数は、特に制限されない。
【0124】
複数の線状体入り筒状体7Jは、外被4Aの断面の長軸方向(X方向)に並んで配置されている。ここで、
図11に示すように、隣り合う線状体入り筒状体7Jは、互いに離間して(X方向に所定の間隔をあけて)配置されていてもよいし、互いに接触して配置されていてもよい。
【0125】
外被4Aは、複数の帯状体5A_1,5A_2と複数の線状体入り筒状体7Fとを一括して被覆している。
【0126】
以上、実施の形態9に係る複合ケーブル1Jによれば、実施の形態8に係る複合ケーブル1Hと同様に、ワイヤハーネスとして十分な性能を有するケーブルを提供することが可能となる。
【0127】
特に、実施の形態9に係る複合ケーブル1Hは、複数の線状体入り筒状体7Fを有し、筒状体2A毎に信号線3Bが収容されているので、一つのケーブルによって複数系統の信号系を配索することが可能となる。
【0128】
≪実施の形態10≫
図12は、実施の形態10に係る複合ケーブルの断面図である。
実施の形態10に係る複合ケーブル1Kは、帯状体5Aの外周面が絶縁材料で覆われている点において、実施の形態8に係る複合ケーブル1Hと相違し、その他の点においては、実施の形態8に係る複合ケーブル1Hと同様である。
【0129】
図12に示すように、複合ケーブル1Kにおける帯状体5A_1の外周面59A_1は、被覆6Kによって覆われている。被覆6Kは、例えば、外被4Aと同様の絶縁材料から構成されている。被覆6Kは、例えば押出成形によって形成される。
【0130】
外被4Aは、被覆6Kの外周面69Kと、帯状体5A_1,5A_2と、筒状体2Aの外周面29Aとを全体的に覆っている。
【0131】
以上、実施の形態10に係る複合ケーブル1Kによれば、実施の形態8に係る複合ケーブル1Hと同様に、ワイヤハーネスとして十分な性能を有するケーブルを提供することが可能となる。
【0132】
特に、実施の形態10に係る複合ケーブル1Kは、帯状体5A_1の外周面59A_1が、被覆6Kによって覆われているので、帯状体5A_1と帯状体5A_2が異なる機能を有する場合にも対応できる。例えば、帯状体5A_1が高圧用電線導体(電圧:60V超)の場合は被覆6Kのみを高圧対応の材質にする等で対応でき、外被4Aの全体を高圧対応の材質にする必要はない。
【0133】
≪実施の形態11≫
図13は、実施の形態11に係る複合ケーブルの断面図である。
実施の形態11に係る複合ケーブル1Lは、二つの帯状体5A_1,5A_2が筒状体2Aを挟むように配置される点において、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと相違し、その他の点においては、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと同様である。
【0134】
図13に示すように、筒状体2Aは、外被4Aの断面の短軸方向(Y方向)において、帯状体5A_1,5A_2間に配置されている。換言すれば、帯状体5A_1と帯状体5A_2とは、外被4Aの断面の短軸方向(Y方向)において、筒状体2Aを挟んで互いに対面して配置されている。
【0135】
具体的には、帯状体5A_1は、筒状体2Aと外被4Aの長辺41Aとの間に配置され、帯状体5A_2は、筒状体2Aと外被4Aの長辺42Aとの間に配置されている。帯状体5A_1と帯状体5A_2とは、例えば互いに平行(X-Y平面に平行)になるように配置されている。
【0136】
ここで、帯状体5A_1および帯状体5A_2を、ともに電源線としても用いてもよいし、帯状体5A_1および帯状体5A_2の一方を電源線とし、他方をシールド線(グラウンド)として用いてもよい。
【0137】
以上、実施の形態11に係る複合ケーブル1Lによれば、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aと同様に、ワイヤハーネスとして十分な性能を有するケーブルを提供することが可能となる。
【0138】
特に、実施の形態11に係る複合ケーブル1Lは、二つの帯状体5A_1,5A_2が筒状体2Aを挟むように配置されているので、例えば、複合ケーブル1Aを車両に配索する場合に、外被4Aの長辺41A,42Aのどちらを車両のボディ(金属)に接触させても、放熱性を向上させることができる。
【0139】
≪実施の形態12≫
図14は、実施の形態12に係る複合ケーブルの断面図である。
実施の形態12に係る複合ケーブル1Mは、筒状体2Aおよび信号線3Aを一組とする線状体入り筒状体7Fを複数有する点において、実施の形態11に係る複合ケーブル1Lと相違し、その他の点においては、実施の形態11に係る複合ケーブル1Lと同様である。
【0140】
図14に示すように、複合ケーブル1Mにおいて、複数の線状体入り筒状体7Fは、二つの帯状体5A_1,5A_2間に配置されている。
図14には、複合ケーブル1Mが3本の線状体入り筒状体7Fを有している場合が例として示されているが、線状体入り筒状体7Fの本数は、特に制限されない。
【0141】
複数の線状体入り筒状体7Fは、外被4Aの断面の長軸方向(X方向)に並んで配置されている。ここで、
図14に示すように、隣り合う線状体入り筒状体7Fは、互いに離間して(X方向に所定の間隔をあけて)配置されていてもよいし、互いに接触して配置されていてもよい。
【0142】
外被4Aは、複数の帯状体5A_1,5A_2と複数の線状体入り筒状体7Fとを一括して被覆している。
【0143】
以上、実施の形態12に係る複合ケーブル1Mによれば、実施の形態11に係る複合ケーブル1Lと同様に、ワイヤハーネスとして十分な性能を有するケーブルを提供することが可能となる。
【0144】
特に、実施の形態12に係る複合ケーブル1Mは、複数の線状体入り筒状体7Fを有し、筒状体2A毎に信号線3Aが収容されているので、一つのケーブルによって複数系統の信号系を配索することが可能となる。
【0145】
≪実施の形態13≫
図15は、本発明の一実施の形態に係る複合ケーブルの端部に外部端子を接続した構成を示す図である。
図15には、一例として、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aに外部端子8,9を接続した場合が示されている。
【0146】
外部端子8(第1外部端子)は、複合ケーブル1Aにおける帯状体5Aと外部機器や他の配線との接続を容易にするための簡易接続部材である。以下、外部端子8を簡易接続部材8とも表記する。
【0147】
簡易接続部材8としては、圧着端子等を例示することができる。簡易接続部材8は、帯状体5Aの延在方向の端部に接続されている。簡易接続部材8は、穴80が形成された端部81を有する。端部81は、信号線3Aと干渉しないように形成されている。例えば、
図16Aに示すように、端部81は、帯状体5Aの延在方向(Y方向)と垂直な方向(X方向)に突出して形成されている。なお、簡易接続部材8の端部81は、信号線3Aと干渉しなければ、帯状体5Aの延在方向と垂直な方向に突出させる必要はなく、例えば、端部81を帯状体5Aの延在方向に設け、簡易接続部材8の穴80を避けるように信号線8Aを配線するようにしてもよい。
【0148】
外部端子9(第2外部端子)は、複合ケーブル1Aにおける信号線3Aと外部機器や他の配線との接続を容易にするための簡易接続部材である。以下、外部端子9を簡易接続部材9とも表記する。
【0149】
例えば、信号線3Aが光ファイバの場合、簡易接続部材9は、FCやSC等の各種光コネクタを例示することができる。簡易接続部材9は、各信号線3Aの延在方向の端部にそれぞれ接続されている。
【0150】
なお、本実施の形態では、複合ケーブル1Aの帯状体5Aと信号線3Aとにそれぞれ別個の外部端子8,9が接続される場合を例示したが、これに限られない。例えば、複合ケーブル1Aの端部に外部端子8、9を一体に形成した一つのコネクタ状の簡易接続部材を接続してもよい。
【0151】
また、本実施の形態では、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aに簡易接続部材8,9を接続する場合を例示したが、実施の形態2乃至12に係る各複合ケーブル1B~1Mにも同様に簡易接続部材8,9を接続することができる。
【0152】
また、
図15では、簡易接続部材8としての圧着端子の圧着片82をかしめることによって、簡易接続部材8と複合ケーブル1Aの帯状体5Aとを接合する場合を例示したが、簡易接続部材8と帯状体5Aとの接合構造は、これに限られず、種々の構造を採用することができる。例えば、圧着端子の一部と帯状体5Aとを、溶接や半田付け等によって接合してもよい。あるいは、圧着端子に帯状体5Aの外形に対応した穴部を形成しておき、その穴部に帯状体5Aの一端を挿入することによって、帯状体5Aに圧着端子を接合してもよい。この場合、穴部の内壁に複数の櫛歯に形成しておくことにより、帯状体5Aの一端を圧着端子の穴部に挿入したときに、櫛歯が帯状体5Aに噛み込むことによって、帯状体5Aを圧着端子に接合するとともに、帯状体5Aが穴部から抜けないようにすることが可能となる。
【0153】
≪実施の形態14≫
次に、上述した複合ケーブル1A~1Mの製造方法について説明する。
図16は、本発明の一実施の形態に係る複合ケーブルの製造方法の流れを示すフロー図である。ここでは、代表的に、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aの製造方法の流れについて説明するが、他の実施の形態に係る複合ケーブルについても略同様の流れによって製造することができる。
【0154】
先ず、筒状体2Aを形成する(ステップS101)。例えば、上述したように、ポリエチレン、PVC(polyvinyl chloride)、ナイロン、シリコンなどの柔軟性を有する絶縁材料を押出成形することによって、筒状体2Aが形成される。
【0155】
次に、導電性を有する帯状体5Aを形成する(ステップS102)。例えば、上述したように、アルミニウム、銅、銅合金、錫めっき線、鉄、およびニッケル等の何れかの金属材料を押出成形することによって、帯状体5Aが形成される。
【0156】
次に、ステップS101で形成された筒状体2Aの外周面29AとステップS102で形成された帯状体5Aの外周面59Aとを被覆する外被4Aを形成する(ステップS103)。例えば、金型の中に筒状体2Aと帯状体5Aとを離間して並べて配置し、金型内に、ポリエチレン、PVC、ナイロン、およびシリコン等の何れかの材料を押出成形(例えば、一括押出成形)することによって、外被4Aが形成される。
【0157】
次に、ステップS103において外被4Aが形成された筒状体2Aの内部に、信号線としての線状体3Aを挿入する(ステップS104)。例えば、筒状体2Aおよび帯状体5Aに外被4Aが形成されたサブアセンブリが所定の長さとなるように当該サブアセンブリを切断し、その切断されたサブアセンブリの端部(筒状体2Aの端部)から信号線3Aとしての光ファイバ心線を挿入する。
【0158】
次に、必要に応じて、ステップS103において外被4Aが形成された帯状体5Aの延在方向の端部に、第1外部端子としての簡易接続部材8を接続する(ステップS104、
図15参照)。
【0159】
次に、必要に応じて、ステップS104において筒状体2Aの内部に挿通された線状体3Aの延在方向の端部に第2外部端子としての簡易接続部材9を接続する(ステップS106)。なお、ステップS105,S106における簡易接続部材8,9の接続は、従来の圧着端子等の接続方法の公知の手法を用いることにより、実現することができる。
【0160】
以上により、実施の形態1に係る複合ケーブル1Aを製造することが可能となる。
【0161】
なお、ステップS104において、ステップS103において外被4Aが形成された筒状体2Aの内部に線状体3Aとして信号線(光ファイバ心線)を挿入する場合を例示したが、光ファイバ心線の代わりに、伝送線路として機能しない糸部材(例えば引き紐等)を挿入してもよい。
【0162】
具体的には、ステップS104において、線状体3Aとしての引き紐を、筒状体2Aの内部に移動可能な状態で挿通させる。そして、外被4Aが形成された筒状体2Aの内部に、引き紐が挿通されたものを複合ケーブルとして出荷してもよい。
【0163】
この場合、現場の複合ケーブルの設置現場において、その引き紐等にメタル線や光ファイバ心線等の信号線を結びつけた状態で、引き紐を引っ張ることにより、筒状体2Aの内部に信号線を導入する。これによれば、複合ケーブルを設置する現場において、メタル線や光ファイバ心線等の任意の信号線を複合ケーブル内に導入することができる。
【0164】
≪実施の形態15≫
図17、
図18は、本発明の一実施の形態に係る複合ケーブルを車載用のワイヤハーネスとして用いた場合の配索例を示す図である。
図17には、上記実施の形態に係る複合ケーブル1A~1Jの何れかを用いたワイヤハーネスの配索構造の平面図が示され、
図18には、当該ワイヤハーネスの配索構造を表す要部斜視図が示されている。
【0165】
図17,
図18に示されるワイヤハーネスの配索構造500は、車両600に搭載されるものである。車両600としては、例えば、ハイブリッド車や電気自動車、燃料電池車等を含む自動車を挙げることができる。
【0166】
図17,
図18に示すように、ワイヤハーネスの配索構造500は、電源の供給系統として、車両600に搭載された電源10に接続された第一の電源幹線12aと、第一の電源幹線12aに接続された第一の電源分配器11aと、第一の電源分配器11aに接続されると共に車両の前後方向に配索された第二の電源幹線12bと、第二の電源幹線12bに接続された第二の電源分配器11bと、第二の電源分配器11bに接続されると共に車幅方向に配索された第三の電源幹線12cと、第三の電源幹線12cに接続された第三の電源分配器11cと、第三の電源分配器11cに接続されると共に車両の前後方向に配索された第四の電源幹線12dと、第四の電源幹線12dに接続された第四の電源分配器11dと、を有する。また、ワイヤハーネスの配索構造500は、通信インフラとして、第一の通信制御部21aと、第一の通信制御部21aに接続されると共に車両の前後方向に配索された第一の通信幹線22aと、第一の通信幹線22aに接続された第二の通信制御部21bと、第二の通信制御部21bに接続されると共に車幅方向に配索された第二の通信幹線22bと、第二の通信幹線22bに接続された第三の通信制御部21cと、第三の通信制御部21cに接続されると共に車両の前後方向に配索された第三の通信幹線22cと、第三の通信幹線22cに接続された第四の通信制御部21dと、を有する。また、第一から第四の電源分配器11a~11dの各々の電源分配器に接続された枝線(通信枝線および電源枝線)13と、各々の枝線13に接続された第一の補機14と、第一から第四の通信制御部21a~21dの各々の通信制御部に接続された枝線(通信枝線および電源枝線)15と、各々の枝線15に接続された第二の補機16と、を有する。第一の電源分配器11aと第一の通信制御部21aは第一の筺体31に収容され、一体化されている。同様に、第二の電源分配器11bと第一の通信制御部21bは第二の筺体32に収容され、第三の電源分配器11cと第三の通信制御部21cは第三の筺体33に収容され、第四の電源分配器11dと第四の通信制御部21dは第四の筺体34に収容され、それぞれ一体化されている。
【0167】
ワイヤハーネスの配索構造500において、電源線および通信線を含む幹線、すなわち電源幹線12a~12dおよび通信幹線22a~22cの少なくとも一部に、上述した実施の形態1乃至10の何れかに係る複合ケーブル1A~1Jを採用することができる。同様に、ワイヤハーネスの配索構造500において、幹線から分岐した枝線(電源枝線および通信枝線)13,15の少なくとも一部に、上述した実施の形態1乃至12の何れかに係る複合ケーブル1A~1Mを採用することができる。
【0168】
このように、車両用のワイヤハーネスの配索構造500において、上述した実施の形態1乃至12の何れかに係る複合ケーブル1A~1Mを採用することにより、一つのケーブルによって電源線と通信線を引き廻すことができるので、車両内のワイヤハーネスの配索性を更に向上させることが可能となる。
【0169】
なお、ワイヤハーネスの配索構造500において、電源幹線12a~12dおよび枝線13,15(電源枝線)は、電源電圧が供給される信号線とグラウンド電圧が供給される信号線(アース線)を含んでいてもよいし、電源幹線12a~12dおよび枝線13,15(電源枝線)を電源電圧が供給される信号線とし、これらの電源線とは別にグラウンド電圧が供給されるアース線を設けてもよい。
【0170】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0171】
例えば、上記実施の形態では、線状体3A,3Bが光ファイバ心線やメタル線等の通信線である場合を例示したが、上述したように、線状体3A,3Bは、伝送線路として機能しない糸部材(引き紐等)であってもよい。
【0172】
また、上記実施の形態では、筒状体2Aの内部には空気が充填されている場合を例示したが、これに限られず、信号線3A,3Bが筒状体2Aの内部で移動可能なように、筒状体2Aの内部に複数の細片が充填されていてもよい。細片は、例えば、樹脂や繊維体等の絶縁材料から形成されている。
これによれば、筒状体2Aの内部には空気が充填されている場合と同様に、複合ケーブル1A等に側圧が加わっても、信号線3A,3Bは筒状体2Aの内部で移動できるため、信号線3A,3Bが変形することによる信号障害が発生し難い。
【0173】
また、上記実施の形態では、外被4Aは、筒状体2Aの軸線方向に対して垂直に切断したときの断面が長方形状である場合を例示したが、これに限られず、種々の形状を採用することができる。以下に一例を示す。
【0174】
図19A乃至19Dは、外被の別の形状を示す断面図である。
例えば、
図19Aに示すように、複合ケーブル1Nを筒状体2Aの軸線方向に対して垂直に切断したときの外被4Nの断面は、台形状であってもよい。この場合、帯状体5Aは、外被4Nの下底42N側に配置される。
【0175】
また、例えば、
図19Bに示すように、複合ケーブル1Oを筒状体2Aの軸線方向に対して垂直に切断したときの外被4Oの断面は、三角形状であってもよい。この場合、帯状体5Aは、外被4Oの三辺のうちの一つの辺42Oに沿って配置される。
【0176】
また、例えば、
図19C,19Dに示すように、複合ケーブル1P,1Qを筒状体2Aの軸線方向に対して垂直に切断したときの外被4P,4Qの断面は、凸状であってもよい。例えば、
図19Cに示す複合ケーブル1Pのように、外被4Pは、矩形の二つの角を円弧状に面取りした断面形状を有していてもよいし、
図19Dに示す複合ケーブル1Qのように、外被4Qは、互いに面積の異なる二種類の矩形を接合した多角形状の断面形状を有していてもよい。
【符号の説明】
【0177】
1A~1Q…複合ケーブル、2A~2C…筒状体、3A…線状体(信号線)、3B…線状体(通信線)、4A,4N,4O,4P,4Q…外被、5A,5A_1,5A_2,5D,5E…帯状体、6B,6K…被覆、7F,7J…線状体入り筒状体、8,9…簡易接続部材(外部端子)、12a~12d…幹線(電源幹線)、13…枝線(電源枝線および通信枝線)、15…枝線(電源枝線および通信枝線)、22a~22c…幹線(通信幹線)30A…空間、51D…金属線(裸単線)、51E…金属線(被覆付き電線)。