(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】偏光板、偏光板の製造方法、およびこれを含む光学表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2019541141
(86)(22)【出願日】2018-01-03
(86)【国際出願番号】 KR2018000080
(87)【国際公開番号】W WO2018143569
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-10-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2017-0014656
(32)【優先日】2017-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514278061
【氏名又は名称】サムスン エスディアイ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20, Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 17084,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ピョン,ピョン チュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン チョン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ト ホン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,イン チョン
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】里村 利光
【審判官】廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0037811(KR,A)
【文献】特表2014-501939(JP,A)
【文献】特表2013-536456(JP,A)
【文献】特開2012-172026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着層、バリア層、偏光子、および保護フィルムが順次積層された偏光板であって、
前記バリア層は、前記偏光子に直接形成され、
前記バリア層は、2官能脂環式エポキシ系化合物、スルホニウムアンチモン系開始剤、ならびに親水性(メタ)アクリレートおよび疎水性(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリレート系化合物を含むバリア層用組成物で形成されたものであり、
前記2官能脂環式エポキシ系化合物:前記(メタ)アクリレート系化合物は、
固形分を基準としてバリア層用組成物の硬化性成分中、70重量%~90重量%:10重量%~20重量%で含まれる、偏光板。
【請求項2】
前記バリア層は、ガラス転移温度が90℃以上である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記バリア層は、黄色度(yellow index)が1.0以下である、請求項1または2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記スルホニウムアンチモン系開始剤は、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル-4-チオフェノキシフェニルスルホニウム、およびジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウムのうちいずれか一つの陽イオンと、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF
6
-)、およびヘキサクロロアンチモネート(SbCl
6
-)のうちいずれか一つの陰イオンと、を含むオニウム塩である、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項5】
前記バリア層は、厚さが20μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項6】
偏光子の一面にバリア層用組成物を塗布した後、これに工程用フィルムを合紙する段階;および
前記バリア層用組成物を硬化させることによってバリア層を形成し、前記工程用フィルムを剥離する段階;を含み、
前記バリア層用組成物は、2官能脂環式エポキシ系化合物、スルホニウムアンチモン系開始剤、ならびに親水性(メタ)アクリレートおよび疎水性(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリレート系化合物を含み、
前記バリア層と前記工程用フィルムとの間の剥離力が20gf/25mm以下である、偏光板の製造方法。
【請求項7】
前記工程用フィルムは、無延伸もしくは延伸されたポリプロピレンフィルム、またはポリエチレンテレフタレートフィルムを含む、請求項6に記載の偏光板の製造方法。
【請求項8】
保護フィルムの一面に接着層用組成物を塗布し、これを前記偏光子の他の一面と合紙した後、前記接着層用組成物を硬化させる段階をさらに含む、請求項6または7に記載の偏光板の製造方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の偏光板を含む光学表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板、偏光板の製造方法、およびこれを含む光学表示装置に関する。より詳細には、本発明は、偏光子に対する密着力に優れ、熱衝撃時の偏光子のクラック発生を防止できるバリア層を含み、硬化後、工程用フィルムに対する剥離力が低いため工程用フィルムが容易に剥離されることによって、剥離時のクラック発生を低下させ得るバリア層用組成物で形成されたバリア層を含む偏光板、偏光板の製造方法、およびこれを含む光学表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、その画像形成方式から、液晶パネルの表面を形成するガラス基板の両側に偏光板を配置することが必要不可欠である。一般に、偏光板としては、ポリビニルアルコール系フィルムおよびヨウ素などの二色性材料からなる偏光子の片面または両面に、トリアセチルセルロースなどを用いた偏光子用の透明保護フィルムをポリビニルアルコール系接着剤によって接合したものが用いられている。また、偏光板に要求される耐久性は確保し難くなっており、低温および高温下の熱衝撃などの苛酷な環境下における耐久性が要求されている(特開2006-220732号公報参照)。
【0003】
一方、薄型化の観点から、偏光子の片面にのみ透明保護フィルムを設置した偏光板が用いられるが、当該偏光板では、偏光子の他の片面に粘着剤層が設置される。しかし、偏光子の片側にのみ透明保護フィルムを設置した薄型の粘着型偏光板では、耐久性が悪く、上記の苛酷な環境下では偏光子の延伸方向(MD方向)にクラックが生じやすいという問題がある。また、薄型化の課題に対して、偏光子の少なくとも一方の側に保護膜が形成された偏光板が提案されている(特開2009-122796号公報参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、偏光子に対する密着力に優れ、所定の熱衝撃下で偏光子のクラック発生を防止できるバリア層を含む偏光板を提供することにある。
【0005】
本発明が解決しようとする他の課題は、高温で偏光子と粘着層のそれぞれに対する密着力に優れたバリア層を含む偏光板を提供することにある。
【0006】
本発明が解決しようとするさらに他の課題は、硬化後、工程用フィルムに対する剥離力が低いため工程用フィルムが容易に剥離されることによって、剥離時のクラック発生を低下させ得るバリア層用組成物で形成されたバリア層を含む偏光板を提供することにある。
【0007】
本発明が解決しようとするさらに他の課題は、チオキサントン系光増感剤を含む必要がないので、黄色に見える現象が生じないバリア層を含む偏光板を提供することにある。
【0008】
本発明が解決しようとするさらに他の課題は、硬化後、工程用フィルムに対する剥離力が低いため工程用フィルムが容易に剥離されることによって、剥離時のクラック発生を低下させ得る偏光板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の偏光板は、粘着層、バリア層、偏光子、および保護フィルムが順次積層された偏光板であって、前記バリア層は、前記偏光子に直接形成され、前記バリア層は、エポキシ系化合物およびスルホニウムアンチモン系開始剤を含むバリア層用組成物で形成されてもよい。
【0010】
本発明の偏光板の製造方法は、偏光子の一面にバリア層用組成物を塗布した後、工程用フィルムを合紙する段階;および前記バリア層用組成物を硬化させることによってバリア層を形成し、前記工程用フィルムを剥離する段階;を含み、前記バリア層と前記工程用フィルムとの間の剥離力が約40gf/25mm以下であってもよい。
【0011】
本発明の光学表示装置は、本発明の偏光板を含んでもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、偏光子に対する密着力に優れ、所定の熱衝撃下で偏光子のクラック発生を防止できるバリア層を含む偏光板を提供することができる。
【0013】
本発明は、高温でも偏光子と粘着層のそれぞれに対する密着力に優れたバリア層を含む偏光板を提供することができる。
【0014】
本発明は、硬化後、工程用フィルムに対する剥離力が低いため工程用フィルムが容易に剥離されることによって、剥離時のクラック発生を低下させ得るバリア層用組成物で形成されたバリア層を含む偏光板を提供することができる。
【0015】
本発明は、チオキサントン系光増感剤を含む必要がないので、黄色に見える現象が生じないバリア層を含む偏光板を提供することができる。
【0016】
本発明は、硬化後、工程用フィルムに対する剥離力が低いため工程用フィルムが容易に剥離されることによって、剥離時のクラック発生を低下させ得る偏光板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施例に係る偏光板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して、本出願の各実施例をより詳細に説明する。しかし、本出願に開示された技術は、ここで説明する各実施例に限定されるものではなく、他の形態に具体化されてもよい。ただし、ここで紹介する各実施例は、開示された内容が徹底的且つ完全になるように、そして、当業者に本出願の思想が十分に伝達されるようにするために提供されるものである。図面において、各装置の構成要素を明確に表現するために、前記構成要素の幅や厚さなどの大きさを多少拡大して示した。複数の図面上での同一の符号は、実質的に互いに同一の構成要素を称する。
【0019】
本明細書において、「上部」と「下部」は、図面を基準として定義したものであって、視点によって「上部」が「下部」に、「下部」が「上部」に変更されてもよく、「上(on)」と称されるものは、直上のみならず、中間に他の構造を介在した場合も含み得る。一方、「直接上(directly on)」または「直上」と称されるものは、中間体などの他の構造を介在していないものを示す。
【0020】
本明細書において、「黄色度」は、ASTM D1925によって測定された値である。
【0021】
本明細書において、バリア層用組成物の硬化後、工程用フィルムに対する剥離力を測定するために、保護フィルムと偏光子との積層体を製造し、前記偏光子の一面にバリア層用組成物を塗布した後、バリア層用組成物に工程用フィルムを合紙し、400mW/cm2、1000mJ/cm2で紫外線を照射することによって試験片を製造し、製造した試験片を前記偏光子のTDで25mm、MDで150mmに切断し、剥離力の測定のためのサンプルを製造した。得たサンプルを、引張試験測定機(Texture analyzer)を用いて、25℃で30kgfロードセルで保護フィルムと接着した偏光子および工程用フィルムをそれぞれ上下の治具に連結した後、5mm/secの速度で剥離したとき、工程用フィルムが剥離される瞬間の剥離力を測定した。
【0022】
本明細書において、「ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)」は、測定対象単量体のホモポリマーに対してTA Instrument社のDSCディスカバリー(Discovery)を用いて測定したガラス転移温度を意味し得る。具体的には、測定対象単量体のホモポリマーに対して20℃/分の速度で200℃まで温度を上げた後、同一の速度で-180℃まで冷却させ、10℃/分の速度で200℃まで昇温したときの吸熱転移曲線をデータとして得た後、前記吸熱転移曲線の変曲点をガラス転移温度と決定することができる。
【0023】
本明細書において、粘着層の「弾性率」は、貯蔵弾性率(storage modulus)であって、弾性率は、粘着層用組成物を離型フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム)にコーティングし、35℃および相対湿度45%で養生(aging)させることによって厚さ25μmの粘着フィルムを製造し、製造した粘着フィルムを複数重ねることによって厚さ0.8mmの試験片を製造し、製造した試験片に対してARES(Advanced Rheometry Expansion System、TA instrument社)を用いてダイナミックモード(dynamic mode)(ひずみ5%、1Hz)で、25℃で測定した値である。
【0024】
本明細書において、「水分透過度」は、保護フィルムに対してKS A1013に準じて40℃および90%の相対湿度で測定された値である。
【0025】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0026】
以下、本発明の一実施例に係る偏光板について
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る偏光板の断面図である。
【0027】
図1を参照すると、偏光板100は、偏光子110、保護フィルム120、バリア層130および粘着層140を含むことができる。
【0028】
偏光板100には、保護フィルム120、偏光子110、バリア層130および粘着層140が順次形成され、バリア層130は、偏光子110および粘着層140にそれぞれ直接形成されている。前記「直接形成」とは、バリア層と偏光子との間に任意の他の粘着層、接着層または粘接着層が介在していないことを意味する。
【0029】
バリア層130は、エポキシ系化合物およびスルホニウムアンチモン系開始剤を含むバリア層用組成物で形成されてもよい。本発明は、バリア層のバリア効果のみならず、バリア層にスルホニウムアンチモン系開始剤を含むことによって、偏光子に対する密着力に優れ、所定の熱衝撃下での偏光子のクラック発生を十分に防止できるバリア層を含むことに基づくものである。特に、前記熱衝撃は、-40℃と85℃との間のサイクルを1サイクルとしたとき、250サイクルを繰り返すことを意味する。バリア層は、このように低温と高温の両方において偏光子に対する密着力に優れ、モジュラスの変化が少ないので、低温と高温との繰り返しサイクルによる偏光子のクラック発生を防止することができる。スルホニウムアンチモン系開始剤が上述したバリア層の効果にどのように作用するのかは明確に知ることはできないが、スルホニウム、アンチモン、エポキシ系化合物および(メタ)アクリレート系化合物の相互作用のためであると考えられるが、これに制限されることはない。
【0030】
また、バリア層130は、下記で詳細に説明するように、偏光子110の一面にバリア層用組成物を塗布し、得られた塗布層に工程用フィルムを付けた後で硬化させ、工程用フィルムを剥離することによって形成される。工程用フィルムは、バリア層用組成物を保護し、汚染などを防止するのに必須的である。工程用フィルムは、無延伸もしくは延伸されたポリプロピレンフィルムまたはポリエチレンテレフタレートフィルムなどであってもよく、好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムであってもよい。バリア層130は、硬化後、前記工程用フィルムに対する剥離力が低いため再剥離性が容易に確保され、工程用フィルムの剥離時、微細なクラック発生を防止できるバリア層用組成物で形成され、最終的には耐久性および工程性を高めることができる。具体的に、バリア層130は、工程用フィルムに対する剥離力が約40gf/25mm以下であってもよく、例えば、約10gf/25mm~約40gf/25mm、他の例を挙げると、約10gf/25mm~約30gf/25mmであってもよい。上記範囲では、工程用フィルムの剥離時に微細なクラック発生を防止することができ、耐久性および工程性を高めることができる。
【0031】
バリア層130は、偏光子110の一面に形成され、偏光子110に対して保護フィルム120とは反対の面で偏光子110を保護し、外部の水分が偏光子110に浸透されることを遮断することによって、偏光板100の高温および高湿での耐久性を高めることができる。
【0032】
バリア層130は、偏光子110の直下に形成され、偏光子110に対する密着性が高く、偏光子110と粘着層140との間に別途の保護フィルムがなくても優れた耐久性を提供し、偏光板100の薄型化効果を具現することができる。
【0033】
バリア層130は、保護フィルム120の反対の面で偏光子110の他の一面に形成され、偏光板100の反りを抑制することもできる。具体的に、保護フィルムの厚さ:バリア層の厚さの厚さ比は、約5:1~約100:1であってもよく、具体的には約10:1~約50:1、さらに具体的には約10:1~約30:1であってもよい。上記範囲で、偏光板の反りを抑制することができる。
【0034】
バリア層130は、その厚さが約20μm以下、具体的には約1μm~約15μm、さらに具体的には約2μm~約10μm、例えば、約2μm~約5μmであってもよい。上記範囲で、バリア層130は、偏光板に使用可能であり、保護フィルムに比べて適正な厚さを有するので、偏光板の反りを抑制することができ、バリア性を高めることができる。
【0035】
バリア層130は、ガラス転移温度が約90℃以上、例えば、約90℃~約150℃、約90℃~約120℃であってもよい。上記範囲で、バリア層の偏光子に対する密着性が高く、温度変化によるモジュラス変化が少ないので、偏光子の収縮/膨張を抑制するという効果があり得る。
【0036】
バリア層130は、黄色度(yellow index)が約1.0以下、例えば、約0.1~約1.0であってもよい。上記範囲で、バリア層が黄色を示さないので、偏光板に使用可能である。
【0037】
バリア層130は、エポキシ系化合物およびスルホニウムアンチモン系開始剤を含むバリア層用組成物で形成され、紫外線、電子線などを含む活性エネルギー線で硬化させることによって形成され得る。前記バリア層用組成物は、(メタ)アクリレート系化合物をさらに含んでもよい。エポキシ系化合物および(メタ)アクリレート系化合物の全体は硬化性成分を構成する。
【0038】
エポキシ系化合物は、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物および脂肪族エポキシ化合物のうち一つ以上を含んでもよい。
【0039】
一具体例において、エポキシ系化合物は、脂環式エポキシ化合物単独であってもよい。
【0040】
他の具体例において、エポキシ系化合物は、脂環式エポキシ化合物;ならびに脂肪族エポキシ化合物および芳香族エポキシ化合物のうち一つ以上の混合物;を含んでもよい。例えば、エポキシ系化合物は、2官能脂環式エポキシ系化合物と2官能脂肪族エポキシ系化合物との混合物を含んでもよく、2官能脂環式エポキシ系化合物と1官能芳香族エポキシ系化合物との混合物を含んでもよい。
【0041】
脂環式エポキシ化合物は、ホモポリマーのガラス転移温度が約180℃以上、例えば、約180℃~約200℃で、ガラス転移温度が高いエポキシ化合物であって、耐クラック性を高め、偏光子に対する密着性を高めるという効果があり得る。
【0042】
前記脂環式エポキシ化合物は、3,4-エポキシシクロへキシルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロへキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロへキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロへキシル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロへキシル-3',4'-エポキシ-6'-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロへキシルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4-エポキシシクロへキシルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β-メチル-δ-バレロラクトン変性3,4-エポキシシクロへキシルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロへキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、およびエポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルへキシルのうち一つ以上を含んでもよい。脂環式エポキシ化合物は、特に制限されるものではなく、CELLOXIDE 2021P(株式会社ダイセル)などを使用できるが、これに制限されることはない。
【0043】
脂環式エポキシ化合物は、固形分を基準としてバリア層用組成物の硬化性成分中に約40重量%~約90重量%で含まれてもよく、具体的に、約50重量%~約90重量%、約50重量%~約85重量%で含まれてもよい。上記範囲で、偏光子に対する密着性が良く、バリア層用組成物の粘度が高くならないためコーティング性が良好になり得る。
【0044】
脂環式エポキシ化合物は、固形分を基準としてエポキシ系化合物中に約70重量%~約100重量%、具体的には、約70重量%~約90重量%、または約100重量%で含まれてもよい。上記範囲で、バリア層用組成物のガラス転移温度が高いので、バリア効果を出すことができる。
【0045】
脂肪族エポキシ化合物は、前記脂環式エポキシ化合物の粘度が高いため、コーティング性が低下することを防止する希釈剤として使用可能である。前記脂肪族エポキシ化合物は、1官能脂肪族エポキシ化合物および2官能脂肪族エポキシ化合物のうち一つ以上を含んでもよい。1官能脂肪族エポキシ化合物は、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、へキシルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、2-エチルへキシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、およびオクタデシルグリシジルエーテルのうち一つ以上を含んでもよい。2官能脂肪族エポキシ化合物は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキシドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのジグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのジグリシジルエーテル類;および高級脂肪酸のジグリシジルエーテル類のうち一つ以上を含んでもよい。脂肪族エポキシ化合物は、3官能以上の脂肪族エポキシ化合物をさらに含んでもよい。好ましくは、脂肪族エポキシ化合物は、2官能脂肪族エポキシ化合物であってもよい。
【0046】
脂肪族エポキシ化合物は、固形分を基準としてバリア層用組成物の硬化性成分中に約0重量%~約60重量%、具体的には、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約40重量%、約15重量%~約50重量%、約10重量%~約60重量%、約10重量%~約50重量%、約10重量%~約40重量%で含まれてもよい。上記範囲で、偏光子に対する密着性が良く、バリア層用組成物の粘度が高くならないので、コーティング性が良好になり得る。
【0047】
芳香族エポキシ化合物は、フェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテルなどの1官能芳香族エポキシ化合物、ビスフェノールA、F、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールA-ノボラック、ジクロロペンタジエンノボラック、トリフェノールメタンのグリシジルエーテル、トリグリシジルパラアミノフェノール、およびテトラグリシジルメチレンジアニリンのいずれかを含んでもよい。好ましくは、芳香族エポキシ化合物は、1官能芳香族エポキシ化合物であってもよい。
【0048】
芳香族エポキシ化合物は、固形分を基準としてバリア層用組成物の硬化性成分中に約0重量%~約30重量%、約1重量%~約30重量%、具体的には、約1重量%~約20重量%で含まれてもよい。上記範囲では、偏光子に対する密着性が良く、バリア層用組成物の粘度が高くならないので、コーティング性が良好になり得る。
【0049】
エポキシ系化合物は、固形分を基準としてバリア層用組成物の硬化性成分中に約40重量%~約100重量%、具体的には、約40重量%~約90重量%、約50重量%~約85重量%、約60重量%~約90重量%、または約100重量%で含まれてもよい。上記範囲では、偏光子に対する密着性が良く、バリア層用組成物の粘度が高くならないので、コーティング性が良好になり得る。
【0050】
(メタ)アクリレート系化合物は、バリア層用組成物に含まれ、粘度を低下させることによって組成物のコーティング性を高めることができ、バリア層の硬度を高め、バリア層用組成物の硬化を促進することができる。(メタ)アクリレート系化合物は、光エネルギーによって開始されるラジカルによって反応することができる。
【0051】
(メタ)アクリレート系化合物は、親水性(メタ)アクリレート、および疎水性(メタ)アクリレートのうち一つ以上を含んでもよい。
【0052】
親水性(メタ)アクリレートは、親水性基として水酸基を有する(メタ)アクリレートであって、光エネルギーにより開始されるラジカルによって重合が進行し、水分による反応阻害がないので、偏光子の水分による反応阻害を受けることなく安定的に光エネルギーに反応する。親水性(メタ)アクリレートは、1個以上の水酸基を有するC1~C10のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを含んでもよい。親水性(メタ)アクリレートは、1官能または2官能以上であってもよい。例えば、親水性(メタ)アクリレートは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-または3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、および2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートのうち一つ以上を含んでもよい。
【0053】
親水性(メタ)アクリレートは、固形分を基準としてバリア層用組成物の硬化性成分中に約0重量%~約60重量%、具体的には、約1重量%~約40重量%、約10重量%~約60重量%、約10重量%~約50重量%、約15重量%~約50重量%、約10重量%~約40重量%で含まれてもよい。上記範囲で、偏光子とバリア層との間の密着力を良好にすることができる。
【0054】
疎水性(メタ)アクリレートは、親水性(メタ)アクリレートと異なる(メタ)アクリレートを含んでもよい。疎水性(メタ)アクリレートは、分子内に1個の(メタ)アクリルオキシ基を有する単官能(メタ)アクリル系化合物、分子内に2個の(メタ)アクリルオキシ基を有する2官能(メタ)アクリル系化合物、これらのオリゴマー、またはこれらの混合物を含んでもよい。
【0055】
単官能(メタ)アクリル系化合物は、非置換のC1~C10のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、C3~C10の脂環式基を有する(メタ)アクリレート、C6~C20のアリール基を有する(メタ)アクリレート、またはC7~C20のアリールアルキル基を有する(メタ)アクリレートを含んでもよい。具体的には、単官能(メタ)アクリル系化合物は、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、およびベンジル(メタ)アクリレートのうち一つ以上を含んでもよい。また、単官能(メタ)アクリル系化合物は、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、およびフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのうち一つ以上を含んでもよい。
【0056】
2官能(メタ)アクリル系化合物は、非置換のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ハロゲン置換アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート、水素添加されたジシクロペンタジエンまたはトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールまたはジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはビスフェノールFのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレートのうち一つ以上を含んでもよい。具体的には、2官能(メタ)アクリル系化合物は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバル酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロへキシル]プロパン、水素添加されたジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3-ジオキサン-2,5-ジイルジ(メタ)アクリレート、およびトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートのうち一つ以上を含んでもよい。
【0057】
疎水性(メタ)アクリレートは、固形分を基準としてバリア層用組成物の硬化性成分中に約0重量%~約30重量%、具体的には約0.1重量%~約30重量%、さらに具体的には約0.1重量%~約10重量%で含まれてもよい。上記範囲では、偏光子とバリア層との間の密着力を良好にすることができる。
【0058】
(メタ)アクリレート系化合物は、固形分を基準としてバリア層用組成物の硬化性成分中に約0重量%~約60重量%、具体的には、約10重量%~約60重量%、約15重量%~約50重量%、約10重量%~約40重量%で含まれてもよい。上上記範囲では、偏光子に対する密着性が良く、バリア層用組成物の粘度が高くならないので、コーティング性が良好になり得る。
【0059】
エポキシ系化合物と(メタ)アクリレート系化合物の総量100重量%中のエポキシ系化合物:(メタ)アクリレート系化合物は、約60重量%~約90重量%:約10重量%~約40重量%で含まれてもよい。上記範囲で、優れたコーティング性のための低い粘度を維持しながらも組成物のバリア層のガラス転移温度が高いので、バリア効果を出すことができる。
【0060】
一具体例において、バリア層用組成物は、2官能脂環式エポキシ系化合物;1官能芳香族エポキシ系化合物、2官能脂肪族エポキシ系化合物、および(メタ)アクリレート系化合物のうち一つ以上;を含んでもよい。このとき、2官能脂環式エポキシ系化合物:1官能芳香族エポキシ系化合物、2官能脂肪族エポキシ系化合物、および(メタ)アクリレート系化合物のうち一つ以上は、総量100重量部を基準として約60重量%~約90重量%:約10重量%~約40重量%で含まれてもよい。上記範囲で、優れたコーティング性のための低い粘度を維持しながらも組成物のバリア層のガラス転移温度が高いので、バリア効果を出すことができる。
【0061】
スルホニウムアンチモン系開始剤は、前記硬化性成分を硬化させることができる。
【0062】
スルホニウムアンチモン系開始剤は、前記エポキシ系化合物または前記エポキシ系化合物と(メタ)アクリレート系化合物との混合物に含まれ、チオキサントン系光増感剤がなくても上記硬化性成分を硬化させることができ、黄色に見える現象が生じないバリア層を形成することができる。スルホニウム系アンチモン系開始剤は、上記エポキシ系化合物または前記エポキシ系化合物と(メタ)アクリレート系化合物との混合物に含まれ、偏光子に対する密着力を高め、所定の熱衝撃によるバリア層のクラック発生を防止することができる。下記の実験例のように、偏光子の密着力の程度によって同一の条件の熱衝撃でも偏光子のクラック発生程度が異なり得る。また、スルホニウムアンチモン系開始剤は、上記エポキシ系化合物または前記エポキシ系化合物と(メタ)アクリレート系化合物との混合物に含まれ、硬化後、工程用フィルムに対する剥離力が低く、工程用フィルムが容易に剥離されることによって、剥離時のクラック発生を低減させることができる。
【0063】
スルホニウムアンチモン系開始剤は、光カチオン開始剤であって、スルホニウム含有陽イオンおよびアンチモン含有陰イオンからなる。陽イオンは、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル-4-チオフェノキシフェニルスルホニウム、ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウムなどのトリアリールスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドなどを挙げることができる。陰イオンは、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6
-)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6
-)などを挙げることができる。好ましくは、スルホニウムアンチモン系開始剤は、ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートであってもよい。
【0064】
スルホニウムアンチモン系開始剤は、固形分を基準としてバリア層用組成物中の硬化性成分の総量100重量部に対して約0.1重量部~約10重量部で含まれてもよく、具体的には約0.5重量部~約5重量部、例えば、約0.5重量部~約3重量部で含まれてもよい。上記範囲では、硬化性成分が十分に硬化可能となり、残量の開始剤によってバリア層の透明度が低下することを防止することができ、偏光子のクラック発生を防止することができる。
【0065】
バリア層用組成物は、光ラジカル開始剤をさらに含んでもよい。前記光ラジカル開始剤をさらに含むことによって、(メタ)アクリレート系化合物の硬化速度を高めることができる。光ラジカル開始剤としては、リン系、トリアジン系、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、オキシム系、およびフェニルケトン系のうち一つ以上を使用できる。光ラジカル開始剤は、固形分を基準としてバリア層用組成物中の硬化性成分の総量100重量部に対して約0.1重量部~約10重量部で含まれてもよく、具体的には約1重量部~約6重量部で含まれてもよい。上記範囲で、硬化性成分が十分に硬化可能となり、残量の開始剤によってバリア層の透明度が低下することを防止することができる。
【0066】
バリア層用組成物は、溶剤を含まない無溶剤型組成物であってもよく、コーティング性、塗工性、または加工性を容易に確保するために溶剤をさらに含んでもよい。溶剤は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを含んでもよいが、これに制限されることはない。
【0067】
バリア層用組成物は、添加剤をさらに含んでもよい。添加剤は、バリア層に追加的な機能を提供することができる。具体的に、添加剤は、UV吸収剤、反応抑制剤、接着性向上剤、揺変性付与剤、導電性付与剤、色素調整剤、安定化剤、帯電防止剤、酸化防止剤、およびレベリング剤のうち一つ以上を含んでもよいが、これに制限されることはない。
【0068】
バリア層用組成物は、微粒子をさらに含むことによって、バリア層の硬度および機械的強度をさらに高めることができる。具体的に、微粒子は、吸湿性微粒子を含むことによって、バリア層の水分遮断効果をさらに高めることができる。微粒子は、シリカ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、および酸化チタンのうち一つ以上を含んでもよいが、これに制限されることはない。微粒子は、相溶性を高めるために微粒子の表面の全体または一部がエポキシ基、(メタ)アクリレート基またはビニル基で表面処理されてもよい。微粒子は、形状および大きさに制限がない。具体的に、微粒子は、球形、板状型、無定形などの形状の粒子を含んでもよい。微粒子は、平均粒径が約1nm~約200nm、具体的には約8nm~約50nmであってもよい。上記範囲で、バリア層の表面照度および透明性に影響を与えることなく、バリア層の硬度を高めることができる。微粒子は、固形分を基準としてバリア層用組成物中に約3重量%~約30重量%、具体的には約5重量%~約20重量%で含まれてもよい。上記範囲で、バリア層の表面照度および透明性に影響を与えることなく、バリア層の硬度を高めることができる。
【0069】
バリア層用組成物は、25℃で粘度が約5cP~約200cP、具体的には約10cP~約150cPであってもよい。上記範囲で、バリア層の形成が容易になり得る。
【0070】
偏光子110は、バリア層130と粘着層140との間に形成されるものであって、偏光板100に入射される外光を偏光させることができる。
【0071】
偏光子110は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムで製造された偏光子を含んでもよい。一具体例において、偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素、および二色性染料のうち一つ以上が吸着したポリビニルアルコール系偏光子、またはポリビニルアルコール系樹脂フィルムを脱水させることによって製造されたポリエン系偏光子であってもよい。上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、鹸化度が約85モル%~約100モル%、具体的には約98モル%~約100モル%であってもよい。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、重合度が約1,000~約10,000、具体的には約1,500~約10,000であってもよい。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、厚さが約50μm~約200μmであってもよい。前記鹸化度、重合度および厚さの範囲で、偏光子を製造することができる。具体的に、ポリビニルアルコール系偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素、および二色性染料のうち一つ以上を吸着させ、最終延伸比2倍~8倍、具体的には3倍~6倍でMD(machine direction)1軸延伸することによって製造され得る。延伸は、乾式延伸、湿式延伸、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。上記「最終延伸比」は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの最初の長さに対する最終的なポリビニルアルコール系偏光子の長さの比を意味する。延伸後、ホウ酸水溶液、ヨウ化カリウム水溶液での浸漬を通じた色相補正をさらに行ってもよい。具体的には、ポリエン系偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに酸触媒を加えて脱水、乾燥させることによって製造され得る。酸触媒は、パラトルエンスルホン酸などを含むトルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸を含む有機酸、無機酸またはこれらの混合物を含んでもよい。
【0072】
偏光子110は、厚さが約5μm~約100μm、具体的には約5μm~約50μmであってもよい。上記範囲では、偏光子110が偏光板に使用可能である。
【0073】
保護フィルム120は、偏光子110の一面に形成され、偏光子110を保護するものであって、接着層130によって偏光子110の一面に形成されてもよい。
【0074】
保護フィルム120は、耐透湿性に優れた保護フィルムであって、水分透過度が約30g/m2・24hr以下、具体的には約1g/m2・24hr~約25g/m2・24hr、さらに具体的には約5g/m2・24hr~約15g/m2・24hrであってもよい。上記範囲で、外部の水分が偏光子に浸透することを遮断することによって、偏光板の高温および高湿での耐久性を高めることができる。
【0075】
一具体例において、保護フィルム120は、波長550nmでの下記式1の面内位相差(Re)が約5,000nm以上、具体的には約5,000nm~約15,000nmであってもよく、さらに具体的には約6,000nm~約12,000nmであってもよい。上記範囲で、偏光板の使用時、虹ムラの発生を防止することができる。
【0076】
【0077】
(前記式において、nxおよびnyは、それぞれの波長550nmでの保護フィルムのx軸およびy軸方向の屈折率であり、dは、保護フィルムの厚さ(単位:nm)である)。
【0078】
保護フィルム120は、波長550nmでの下記式2の二軸性の程度(NZ)が約1.8以下、具体的には約1.0~約1.8、波長550nmでの下記式3の厚さ方向位相差(Rth)が15,000nm以下、具体的には6,000nm~12,000nmであってもよい:前記範囲で、複屈折による虹ムラ除去効果があり得る。
【0079】
【0080】
(前記各式において、nx、ny、およびnzは、それぞれ波長550nmでの保護フィルムのx軸、y軸、およびz軸方向の屈折率であり、dは、保護フィルムの厚さ(単位:nm)である)。
【0081】
他の具体例において、保護フィルム120は、波長550nmでの前記式1の面内位相差(Re)が約500nm以下、例えば、約350nm以下であってもよい。保護フィルム120は、波長550nmで前記式2の二軸性の程度(NZ)が約10以上、例えば、約15以上であってもよい。保護フィルム120は、波長550nmでの前記式3の厚さ方向位相差(Rth)が約6000nm以上、例えば、約6500nm以上であってもよい。
【0082】
保護フィルム120は、ポリエステル樹脂で形成され、光学的に透明なフィルムを含んでもよい。具体的に、ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリブチレンナフタレートのうち一つ以上を含んでもよいが、これに制限されることはない。一具体例において、保護フィルム120は、1種のポリエステル樹脂で形成され、単一層フィルムであってもよい。保護フィルム120は、単一層フィルムであるとしても、上述した水分透過度を有することによって、偏光板の高温および高湿での耐久性を高めることができる。
【0083】
保護フィルム120は、厚さが約5μm~約200μm、具体的には約10μm~約150μm、さらに具体的には約50μm~約120μmであってもよい。前記範囲で、保護フィルム120が偏光板に使用可能であり、バリア層と偏光板とのたわみを抑制することができる。
【0084】
保護フィルム120は、保護フィルム用樹脂以外に、通常の添加剤をさらに含んでもよい。具体的に、添加剤は、紫外線吸収剤、レベリング剤、帯電防止剤などを含んでもよい。紫外線吸収剤は、波長200nm~400nmの光を吸収する通常の紫外線吸収剤を含んでもよい。具体的に、紫外線吸収剤は、フェノール系、ベンゾトリアゾール系、 サリチル酸、トリアジン系、およびオキサミド系のうち一つ以上を含んでもよい。
【0085】
保護フィルム120は、TD 1軸延伸またはMD TD 2軸延伸されたフィルムであって、偏光子110は、上述するように、MD 1軸延伸フィルムである。偏光板100は、保護フィルム120のTDと偏光子110のMDとが実質的に直交し得る。その結果、偏光板100の反り発生を防止することができる。本明細書において、「実質的に直交」とは、保護フィルムのTDと偏光子のMDとが90゜で直交する場合のみならず、90゜から少しの誤差がある場合も含み得る。
【0086】
図1には示していないが、保護フィルム120は、保護フィルム120の一面に機能性コーティング層をさらに含むことによって、偏光板に追加的な機能を提供することができる。具体的に、機能性コーティング層は、ハードコーティング層、反射防止層、耐指紋性層、帯電防止層、および低反射層のうち一つ以上であってもよいが、これに制限されることはない。機能性コーティング層は、厚さが約1μm~約100μm、具体的には約1μm~約50μm、さらに具体的には約1μm~約20μmであってもよい。上記範囲で、機能性コーティング層は、保護フィルムに影響を与えないと共に、偏光板に追加的な機能を提供することができ、偏光板に使用可能である。
【0087】
また、
図1には示していないが、保護フィルム120は、保護フィルム120の他の一面にプライマー層をさらに含むことによって、粘着層140が偏光子110と保護フィルム120とをさらにうまく接着させることができる。プライマー層は、親水性の表面改質層であってもよい。プライマー層は、親水性基および疎水性基を有するプライマー層形成用樹脂を含む組成物でコーティングして形成されてもよい。プライマー層形成用樹脂は、ポリエステル系樹脂、およびポリビニルアセテート系樹脂のうち一つ以上を含んでもよい。プライマー層は、厚さが約1nm~約100nm、具体的には約1nm~約50nm、さらに具体的には約1nm~約20nmであってもよい。上記範囲で、プライマー層は、偏光子に対する密着力を高めることができ、全光線透過率を高めることもできる。
【0088】
粘着層140は、偏光板100を液晶パネル、有機発光パネルなどに粘着させる。
【0089】
粘着層140は、23℃での弾性率が約0.1MPa以下、具体的には約0.001MPa~約0.1MPaであってもよい。上記範囲で、保護フィルム、偏光子、およびバリア層の積層時の反りが最小化され、偏光子が有し得る応力を緩和することによって、耐クラック性が優秀になり得る。
【0090】
粘着層140は、厚さが約5μm~約40μm、具体的には約10μm~約30μmであってもよい。上記範囲で、粘着層140が偏光板に使用可能である。
【0091】
粘着層140は、(メタ)アクリル系共重合体および架橋剤を含む粘着層用組成物で形成されてもよい。粘着層用組成物は、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体および水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の(メタ)アクリル系共重合体、ならびに架橋剤を含んでもよい。アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体は、非置換のC1~C20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含んでもよい。具体的に、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体は、メチル(メタ)アクリレート、N-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、および2-エチルへキシル(メタ)アクリレートのうち一つ以上を含んでもよい。これらは、単独で含まれてもよく、2種以上を混合して含まれてもよい。水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体は、1個以上の水酸基を有するC1~C20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含んでもよい。具体的に、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、および4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのうち一つ以上を含んでもよい。これらは、単独で含まれてもよく、2種以上を混合して含まれてもよい。
【0092】
上記単量体混合物は、固形分を基準としてアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体約90重量部~約99重量部、および水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体約1重量部~約10重量部を含んでもよい。上記範囲で、バリア層および液晶ガラスに対する粘着力が高くなり得る。架橋剤は、通常のイソシアネート架橋剤を含んでもよい。具体的に、架橋剤は、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、およびトリメチロールプロパン変性トルエンジイソシアネートアダクトのうち一つ以上を含んでもよい。架橋剤は、(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して約0.1重量部~約1重量部で含まれてもよい。上記範囲で、粘着剤組成物がうまく架橋され、粘着効果が具現され得る。粘着剤組成物は、シランカップリング剤、および架橋触媒のうち一つ以上をさらに含んでもよい。
【0093】
偏光板100は、下記式4の光透過度変化率が約3%以下、具体的には約0%~約3.0%であってもよい:上記範囲で、偏光板の高温および高湿での耐久性が良好になり、偏光板100が光学表示装置に使用可能である:
【0094】
【0095】
(前記式4において、T0は、波長400nm~700nmでの偏光板の初期光透過率であり、T500は、偏光板を85℃および85%の相対湿度で500時間にわたって放置し、25℃で1時間放置した後の波長400nm~700nmでの偏光板の光透過率である)。
【0096】
偏光板100は、下記式5の偏光度変化率が約5%以下、具体的には約0%~約3%であってもよい:上記範囲で、偏光板の高温および高湿での耐久性が良好となり、偏光板100が光学表示装置に使用することができる。
【0097】
【0098】
(前記式において、P0は、偏光板の初期偏光度であり、P500は、偏光板を85℃および85%相対湿度で500時間にわたって放置し、25℃で1時間にわたって放置した後の偏光板の偏光度である)。
【0099】
偏光板100は、厚さが約150μm以下、具体的には約140μm以下、さらに具体的には約130μm以下であってもよい。例えば、偏光板100は、厚さが約50μm~約150μmであってもよい。上記範囲では、偏光板100が光学表示装置に使用可能である。偏光板100は、波長400nm~700nmでの光透過度が約30%以上、具体的には約30%~約50%、さらに具体的には約40%~約50%であってもよい。
【0100】
偏光板100は、偏光度が約90%以上、具体的には約95.000%~約99.990%であってもよい。上記光透過度および偏光度の範囲で、偏光板100が光学表示装置に使用可能である。
【0101】
以下、本発明の一実施例に係る偏光板の製造方法を説明する。
【0102】
本発明の一実施例に係る偏光板の製造方法は、偏光子の一面に上記バリア層用組成物を塗布した後、これに工程用フィルムを合紙する段階;および上記バリア層用組成物を硬化させ、上記工程用フィルムを剥離する段階;を含み、前記バリア層と前記工程用フィルムとの間の剥離力が約40gf/25mm以下であってもよい。
【0103】
バリア層用組成物は、それぞれ通常の塗布方法、具体的には、ダイコーティング、グラビアコーティングなどで塗布することができる。硬化は、活性エネルギー線を、具体的にはUVで約100mW/cm2~約2000mW/cm2、約100mJ/cm2~約1000mJ/cm2で照射することを含んでもよい。本発明は、上述したように、バリア層用組成物の硬化後、工程用フィルムに対する剥離力が低いため工程用フィルムが容易に剥離されることによって、剥離時のバリア層のクラック発生を低減させることができる。
【0104】
保護フィルムの一面に接着層用組成物を塗布し、この保護フィルムを偏光子の他の一面と合紙した後、前記接着層用組成物を硬化させる段階をさらに含んでもよい。このとき、塗布および硬化は、上記で説明した内容に準じて行われてもよい。
【0105】
工程用フィルムを剥離した後、形成されたバリア層に粘着層用組成物を塗布して熟成する段階をさらに含んでもよい。
【0106】
本発明の一実施例に係る光学表示装置は、本発明の実施例に係る偏光板を含んでもよい。光学表示装置は、液晶表示装置、および有機発光素子表示装置であってもよいが、これに制限されることはない。
【0107】
液晶表示装置のうち液晶パネルは、液晶層としてIPS(in plane switching)モード、TN(twist nematic)モード、VA(vertical alignment)モード、PVA(patterned vertical alignment)モード、およびS-PVA(super-patterned vertical alignment)モードを採用できる。
【実施例】
【0108】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて、本発明の構成および作用をさらに詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の理解を促進するためのものであって、本発明の範囲が下記の実施例に限定されることはない。
【0109】
以下、実施例および比較例で使用された成分の具体的な仕様を説明する。
【0110】
(A)エポキシ系化合物:
(A1)脂環式エポキシ:3,4-エポキシシクロへキシルメチル-3,4-エポキシシクロへキシルカルボン酸(CELLOXIDE 2021P、株式会社ダイセル)
(A2)1官能芳香族エポキシ:フェニルグリシジルエーテル(EX-141、ナガセケムテックス株式会社)
(A3)2官能脂肪族エポキシ:1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(EX-214L、ナガセケムテックス株式会社)
(B)(メタ)アクリレート系化合物:
(B1)親水性アクリレート:4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA、株式会社コージン)
(B2)疎水性アクリレート:2-フェノキシエチルアクリレート(M140、ミウォン商社)
(C)開始剤:
(C1)スルホニウムアンチモン系開始剤(光カチオン開始剤):ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(CPI-101A、サンアプロ株式会社)
(C2)ヨードニウム系開始剤(光カチオン開始剤):(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(Irgacure 250、BASF社)
(C3)スルホニウムホスフェート系開始剤(光カチオン開始剤):ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(CPI-100P、サンアプロ株式会社)
(C4)光ラジカル開始剤:Irgacure-184、BASF社
(D)光増感剤:チオキサントン系光増感剤として2,4-ジエチルチオキサントン(DETX-s、日本化薬株式会社)
(E)工程用フィルム
PET工程用フィルム:XD510P、東レ先端素材株式会社
(F)保護フィルム:ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:80μm)。
【0111】
実施例1
(1)偏光子の製造
ポリビニルアルコール系フィルム(鹸化度:99.5モル%、重合度:2000、厚さ:80μm)を0.3%ヨード水溶液に浸漬させて染着させた。延伸比5.0で1軸延伸させた。延伸されたポリビニルアルコール系フィルムを3%のホウ酸水溶液および2%のヨウ化カリウム水溶液に浸漬させ、色補正を行った。50℃で4分間乾燥させ、偏光子(厚さ:23μm)を製造した。
【0112】
(2)バリア層用組成物の製造
下記表1のエポキシ系化合物、(メタ)アクリレート系化合物、および光開始剤を下記表1の含有量で混合することによってバリア層用組成物を製造した。
【0113】
(3)偏光板の製造
偏光板は、22℃~25℃、相対湿度20%~60%で製造した。保護フィルムの一面に接着層用組成物を塗布し、これを前記製造した偏光子の一面と合紙した。上記偏光子の他の一面に、前記製造したバリア層用組成物を塗布した後、バリア層用組成物に工程用フィルムを合紙した。このとき、接着層用組成物は、エポキシ系化合物、(メタ)アクリレート化合物、および開始剤を含む光硬化型接着層用組成物である。
【0114】
メタルハライドランプを用いて400mW/cm2、1000mJ/cm2で紫外線を照射し、工程用フィルムを剥離した。工程用フィルムが剥離されたバリア層の一面に粘着層用組成物を塗布して熟成させ、粘着層(厚さ:25μm)、バリア層(厚さ:3μm)、偏光子(厚さ:23μm)、接着層(厚さ:3μm)、および保護フィルム(厚さ:80μm)が順次形成された偏光板を製造した。上記粘着層用組成物は、ブチルアクリレート99重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート1重量部のアクリル系共重合体、および架橋剤を含む。
【0115】
実施例2および実施例3
バリア層用組成物中の各成分の種類および含有量を下記表1のように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。
【0116】
比較例1~比較例6
バリア層用組成物中の各成分の種類および含有量を下記表1のように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。
【0117】
実施例および比較例の偏光板の構成を下記表1に示した。
【0118】
【0119】
実施例および比較例のバリア層および偏光板に対して、下記表2の物性を評価した。
【0120】
(1)密着性:偏光板の端部のバリア層と偏光子との間にカッター刃先を挿入した。刃先がバリア層と偏光子との間に入らないものは◎、刃先が少し入ったものは○、刃先が少し入ったが、一定の強度を有するため途中でバリア層が破れたものは△、刃先が容易に入ったものは×と評価した。
【0121】
(2)剥離力:保護フィルムの一面に接着層用組成物を塗布し、この保護フィルムを前記製造した偏光子の一面と合紙した。偏光子の他の一面に製造したバリア層用組成物を塗布した後、バリア層用組成物に前記工程用フィルムを合紙した。メタルハライドランプで400mW/cm2、1000mJ/cm2で紫外線を照射することによって試験片を製造した。製造した試験片を偏光子のTDで25mm、MDで150mmに切断し、剥離力測定のためのサンプルを製造した。得られたサンプルを、引張試験測定機(Texture analyzer)を用いて、25℃で30kgfロードセルで保護フィルムと接着した偏光子および工程用フィルムをそれぞれ上下治具に接続した後、5mm/secの速度で剥離したときの工程用フィルムが剥離される瞬間の剥離力を測定した。
【0122】
(3)ガラス転移温度(Tg):実施例および比較例のバリア層用組成物にメタルハライドランプで400mW/cm2、1000mJ/cm2で紫外線を照射することによって厚さ5μm~10μmの試験片を製造する。製造した試験片を、動的機械分析装置を用いて5℃/分の速度で昇温しながら測定温度別にtanδを測定し、tanδが最高になる温度をガラス転移温度とした。
【0123】
(4)黄色度:ASTM D1925によって測定された値である。実施例および比較例のバリア層用組成物を、離型フィルム(例えば、シクロオレフィンフィルム)の間で、メタルハライドランプで400mW/cm2、1000mJ/cm2で紫外線を照射して硬化させることによって厚さ10μmのフィルムで製造し、製造したフィルムに対して色差計(CM3600A、コニカミノルタ株式会社)を用いて透過モードで25℃で測定した値である。
【0124】
(5)耐クラック性:偏光板の熱衝撃下での耐クラック性を評価した。横×縦(50mm × 50mm)の偏光板をガラス板にラミネートさせて試料を準備した。試料を-40℃で30分間放置し、-40℃から85℃に昇温させ、85℃で30分間放置することを1サイクルとして250サイクル行い、熱衝撃を与えた。試料に対して、蛍光灯の下側の反射モードおよびバックライトモードで偏光子のMDでクラックが発生したかどうかを目視で確認した。クラックが全く発生していない場合は○、クラックが少しでも発生した場合は×と評価した。
【0125】
【0126】
上記表2に示したように、本発明の偏光板は、偏光子に対する密着力に優れ、熱衝撃下で偏光子のクラック発生を防止し、バリア効果に優れていた。また、本発明の偏光板は、硬化後、工程用フィルムに対する剥離力が低いため工程用フィルムが容易に剥離されることによって、剥離時のクラック発生を低減させることができる。また、本発明の偏光板は、チオキサントン系光増感剤を含まなくても黄色度が低いので、バリア層が黄色に見える問題を解消した。
【0127】
その一方で、ヨードニウム系開始剤およびスルホニウムホスフェート系開始剤を含む比較例の偏光板は、耐クラック性が良好でなく、工程用フィルムに対する剥離力が高かった。
【0128】
本発明の単純な変形および変更は、本分野で通常の知識を有する者によって容易に実施可能であり、このような変形や変更は、いずれも本発明の領域に含まれるものと見ることができる。
【符号の説明】
【0129】
100 偏光板、
110 偏光子、
120 保護フィルム、
130 バリア層、
140 粘着層。