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特許7479269樹脂フィルムを検査する方法、光学フィルムの製造方法および検査システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】樹脂フィルムを検査する方法、光学フィルムの製造方法および検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/89 20060101AFI20240426BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
G01N21/89 H
G01N21/892 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020163252
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055687
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】安藤 卓也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 英史
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-156064(JP,A)
【文献】特開2001-352454(JP,A)
【文献】特開平11-345341(JP,A)
【文献】特開2019-15964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G01B 11/00-G01B 11/30
G06T 7/00-G06T 7/90
G02B 5/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されている樹脂フィルムの幅方向における端部領域のカラー画像データを取得する画像取得工程であって、吸収軸が前記樹脂フィルムの搬送方向に対して非平行且つ非直交になるように配置された第1直線偏光板を介して前記端部領域に検査光を照射し、前記端部領域を透過したまたは反射した前記検査光を、前記第1直線偏光板に対してクロスニコル状態または平行ニコル状態に配置された第2直線偏光板を介してカラー受光部で受けることによって、前記カラー画像データを取得する前記画像取得工程と、
1層領域特定工程と度数分布作成工程を有する検出工程と、
を備え、
前記1層領域特定工程では、前記カラー画像データから得られる彩度データに基づいて1層領域に相当する画素領域を特定し、
前記度数分布作成工程では、前記カラー画像データから得られる色相データにおいて、前記1層領域特定工程で特定された画素領域以外の領域に対する色相データから色相に対する度数分布を作成し、
前記検出工程では、前記度数分布に基づいて、前記端部領域のうち前記1層領域以外の領域の折れ込み状態を検出する、
前記樹脂フィルムを検査する方法。
【請求項2】
前記検出工程では、前記度数分布を同色領域に分割することによって、前記端部領域の折れ込み状態を検出する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出工程では、隣接する閾値間に存在するピークの数が1つになるように、前記度数分布に対して2値化処理を実施することによって、前記度数分布を前記同色領域に分割する、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記検出工程は、
前記度数分布における対象領域に対して2値化処理を実施して前記対象領域を第1領域および第2領域に分割する閾値を設定する閾値設定工程と、
前記第1領域および前記第2領域を第i領域(iは1または2)と表したとき、前記第i領域にピークが2個以上存在するか否かを判定する判定工程と、
前記第i領域に前記ピークが2個以上存在する場合、前記第i領域を前記対象領域として設定する対象領域変更工程と、
を有し、
前記度数分布に対して前記閾値設定工程を最初に実施する場合、前記対象領域は前記度数分布の全範囲であり、
前記対象領域変更工程を実施した場合、前記閾値設定工程を再度実施し、
前記判定工程において、前記第i領域に前記ピークの数が2個以上存在しないと判定されるまで、前記閾値設定工程、前記判定工程および前記対象領域変更工程を繰り返す、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記2値化処理は、判別分析法に基づく処理である、
請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記樹脂フィルムが、偏光フィルムの製造に使用されるポリビニルアルコール系フィルムである、
請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の方法を用いて前記樹脂フィルムを検査する工程を含む、光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
搬送されている樹脂フィルムの幅方向における端部領域のカラー画像データを取得する画像取得装置と、
前記画像取得装置で取得した前記カラー画像データを解析する解析装置と、
を備え、
前記画像取得装置は、
前記端部領域に照射する検査光を出力する光源部と、
前記端部領域を透過したまたは反射した前記検査光を受けるカラー受光部と、
前記光源部と前記端部領域との間において、吸収軸が前記樹脂フィルムの搬送方向に対して非平行且つ非直交であるように配置された第1直線偏光板と、
前記端部領域と前記カラー受光部との間に配置されており、前記第1直線偏光板とクロスニコル状態または平行ニコル状態に配置された第2直線偏光板と、
を有し、
前記解析装置は、前記端部領域の折れ込み状態を検出する検出部を有し、
前記検出部は、
前記カラー画像データから得られる彩度データに基づいて、前記端部領域において1層に相当する画素領域を特定する1層領域特定部と、
前記カラー画像データから得られる色相データにおいて、前記1層領域特定部で特定された画素領域以外の領域に対する色相データから色相に対する度数分布を作成する度数分布作成部と、
を有し、
前記検出部は、前記度数分布に基づいて、前記端部領域のうち前記1層領域以外の領域の折れ込み状態を検出する、
検査システム。
【請求項9】
前記検出部は、前記度数分布を同色領域に分割する領域分割部を有する、
請求項8に記載の検査システム。
【請求項10】
前記領域分割部は、隣接する閾値間に存在するピークの数が1つになるように、前記度数分布に対して2値化処理を実施することによって、前記度数分布を前記同色領域に分割する、
請求項9に記載の検査システム。
【請求項11】
前記検出部は、
前記度数分布における対象領域に対して2値化処理を実施して前記対象領域を第1領域および第2領域に分割する閾値を設定する閾値設定部と、
前記第1領域および前記第2領域を第i領域(iは1または2)と表したとき、前記第i領域にピークが2個以上存在するか否かを判定する判定部と、
を有する、
請求項8に記載の検査システム。
【請求項12】
前記2値化処理は、判別分析法に基づく処理である、
請求項10又は11に記載の検査システム。
【請求項13】
前記樹脂フィルムが、偏光フィルムの製造に使用されるポリビニルアルコール系フィルムである、
請求項8~12の何れか一項に記載の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムを検査する方法、光学フィルムの製造方法および検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルムは、光学フィルムが有する光学的な機能を付与する処理を樹脂フィルムに行うことによって製造され得る。たとえば、光学フィルムである偏光フィルムは、特許文献1,2に記載されているように、ポリビニルアルコール系フィルム(樹脂フィルム)に、膨潤、染色、架橋、延伸、洗浄、乾燥などの処理を施し、直線偏光特性を付与することによって製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-48382号公報
【文献】特開2017-102438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に開示された偏光フィルムの製造方法のように、樹脂フィルムを搬送しながら種々の処理を施す場合、搬送過程において、樹脂フィルムの端部領域(搬送方向に直交する方向の端部領域)においてフィルムが折れ込まれた状態が生じていた。光学フィルムの製造における種々の処理の条件は、樹脂フィルムの状態に基づいて設定される必要があることから、上記樹脂フィルムの端部領域の折れ込み状態を把握することが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、樹脂フィルムの端部領域の折れ込み状態を検出可能な、上記樹脂フィルムを検査する方法および検査システム並びに上記方法を適用した光学フィルムの製造方法すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る樹脂フィルムを検査する方法は、搬送されている樹脂フィルムの幅方向における端部領域のカラー画像データを取得する画像取得工程であって、吸収軸が上記樹脂フィルムの搬送方向に対して非平行且つ非直交になるように配置された第1直線偏光板を介して上記端部領域に検査光を照射し、上記端部領域を透過したまたは反射した上記検査光を、上記第1直線偏光板に対してクロスニコル状態または平行ニコル状態に配置された第2直線偏光板を介してカラー受光部で受けることによって、上記カラー画像データを取得する上記画像取得工程と、上記カラー画像データから得られる色相データに基づいて上記端部領域の折れ込み状態を検出する検出工程と、を備える。
【0007】
本発明の他の側面に係る検査システムは、搬送されている樹脂フィルムの幅方向における端部領域のカラー画像データを取得する画像取得装置と、上記画像取得装置で取得した上記カラー画像データを解析する解析装置と、を備え、上記画像取得装置は、上記端部領域に照射する検査光を出力する光源部と、上記端部領域を透過したまたは反射した上記検査光を受けるカラー受光部と、上記光源部と上記端部領域との間において、吸収軸が上記樹脂フィルムの搬送方向に対して非平行且つ非直交であるように配置された第1直線偏光板と、上記端部領域と上記カラー受光部との間に配置されており、上記第1直線偏光板とクロスニコル状態または平行ニコル状態に配置された第2直線偏光板と、を有し、上記解析装置は、上記カラー画像データから得られる色相データに基づいて上記端部領域の折れ込み状態を検出する検出部を有する。
【0008】
上記方法および検査システムでは、第1直線偏光板を介して上記端部領域に検査光を照射し、上記端部領域を透過したまたは反射した上記検査光を、上記第1直線偏光板に対してクロスニコル状態または平行ニコル状態に配置された第2直線偏光板を介してカラー受光部で受ける。端部領域に折れ込み状態が生じている場合、端部領域は層数が異なる複数の層領域を有する。各層領域では、折れ込み状態によって厚さが異なるため、各層領域を検査光が通過する際、検査光に生じる位相差が異なる。その結果、各層領域は、折れ込み状態に応じて、互いに異なる色を発現する。したがって、上記のように第1直線偏光板および第2直線偏光板を用いながら検査光をカラー受光部で受けることによって、カラー画像データを取得できる。各層領域は互いに異なる色を発現することから、カラー画像データから得られる色相データを解析することで、端部領域の折れ込み状態を検出可能である。
【0009】
上記検出工程では、上記色相データから色相に対する度数分布を作成し、上記度数分布を同色領域に分割することによって、上記端部領域の折れ込み状態を検出してもよい。
上記検出部は、上記色相データから色相に対する度数分布を作成する度数分布作成部と、 上記度数分布を同色領域に分割する領域分割部と、を有してもよい。
【0010】
端部領域に折れ込み状態を生じている場合、端部領域は、互いに層数が異なる層領域を複数有する。複数の層領域は、上述のように折れ込み状態に応じた色を発現する。したがって、度数分布を上記のように同色領域に分割することで、端部領域の折れ込み状態を検出できる。
【0011】
上記検出工程では、隣接する閾値間に存在するピークの数が1つになるように、上記度数分布に対して2値化処理を実施することによって、上記度数分布を上記同色領域に分割してもよい。
上記領域分割部は、隣接する閾値間に存在するピークの数が1つになるように、上記度数分布に対して2値化処理を実施することによって、上記度数分布を上記同色領域に分割してもよい。
【0012】
上記検出工程は、上記色相データから色相に対する度数分布を作成する度数分布作成工程と、上記度数分布における対象領域に対して2値化処理を実施して上記対象領域を第1領域および第2領域に分割する閾値を設定する閾値設定工程と、上記第1領域および上記第2領域を第i領域(iは1または2)と表したとき、上記第i領域にピークが2個以上存在するか否かを判定する判定工程と、上記第i領域に上記ピークが2個以上存在する場合、上記第i領域を上記対象領域として設定する対象領域変更工程と、を有し、上記度数分布に対して上記閾値設定工程を最初に実施する場合、上記対象領域は上記度数分布の全範囲であり、上記対象領域変更工程を実施した場合、上記閾値設定工程を再度実施し、 上記判定工程において、上記第i領域に上記ピークの数が2個以上存在しないと判定されるまで、上記閾値設定工程、上記判定工程および上記対象領域変更工程を繰り返してもよい。
【0013】
上記検出部は、上記色相データから色相に対する度数分布を作成する度数分布作成部と、上記度数分布における対象領域に対して2値化処理を実施して上記対象領域を第1領域および第2領域に分割する閾値を設定する閾値設定部と、上記第1領域および上記第2領域を第i領域(iは1または2)と表したとき、上記第i領域にピークが2個以上存在するか否かを判定する判定部と、を有してもよい。
【0014】
上記検出工程において、更に、上記カラー画像データから得られる彩度データに基づいて、上記端部領域における1層領域に相当する画素領域を特定してもよい。
上記検出部は、更に、上記カラー画像データから得られる彩度データに基づいて、上記端部領域において1層に相当する画素領域を特定する1層領域特定部を更に有してもよい。
【0015】
この場合、彩度データを用いることにより、1層領域を検出できる。樹脂フィルムにおいて1層領域は色が発現しにくいことから、上記のように彩度データを活用することで、端部領域の折れ込み状態をより正確に検出可能である。
【0016】
上記2値化処理は、判別分析法に基づく処理であってもよい。
【0017】
本発明の他の側面に係る光学フィルムの製造方法は、上記方法を用いて上記樹脂フィルムを検査する工程を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、樹脂フィルムの端部領域の折れ込み状態を検出することが可能な、上記樹脂フィルムを検査する方法および検査システム並びに上記方法を適用した光学フィルムの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、一実施形態に係る偏光フィルム(光学フィルム)の製造方法を説明するための模式図である。
図2図2は、一実施形態に係る樹脂フィルムの検査方法を説明するための模式図である。
図3図3は、樹脂フィルムに対する第1直線偏光板および第2直線偏光板の配置状態を説明するための図面である。
図4図4は、図2に示した解析装置が有する演算部の一例の機能ブロック図である。
図5図5は、一実施形態に係る樹脂フィルムの検査方法のフローチャートである。
図6図6は、端部領域のカラー画像データに応じたカラー画像の例を示す図面である。
図7図7は、色相データに基づいて作成された度数分布の一例に対応するヒストグラムを示す図面である。
図8図8は、図7に示した度数分布(ヒストグラム)の全領域を対象領域として閾値設定工程を実施した場合の結果の例を示す図面である。
図9図9は、図8に示した度数分布(ヒストグラム)の第1領域および第2領域それぞれを対象領域として閾値設定工程を実施した場合の結果の例を示す図面である。
図10図10は、図9に示した度数分布(ヒストグラム)の第2領域(0~n3の領域)を対象領域として閾値設定工程を実施した場合の結果の例を示す図面である。
図11図11は、端部領域における層領域の色を予め取得するためのサンプルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0021】
本実施形態では、光学フィルムとして偏光フィルムを製造する場合を説明する。図1は、一実施形態に係る偏光フィルム(光学フィルム)の製造方法の一例を説明する模式図である。
【0022】
偏光フィルムの製造方法では、長尺のポリビニルアルコール系フィルム(樹脂フィルム)2を搬送しながら、搬送中のポリビニルアルコール系フィルム2に、膨潤処理、染色処理、架橋処理、延伸処理及び乾燥処理を施すことにより、偏光フィルム4を製造する。延伸処理は、何れかの一つの処理(例えば架橋処理)中、又は、複数の処理を施しながら並行してポリビニルアルコール系フィルム2に施されてもよい。
【0023】
ポリビニルアルコール系フィルム2は、樹脂フィルムである。以下では、ポリビニルアルコール系フィルム2を「フィルム2」と称す。
【0024】
フィルム2の材料は、偏光フィルムの製造に使用される公知のポリビニルアルコール系樹脂であればよく、ケン化されたポリビニルアルコール系樹脂であることが好ましい。ケン化度の範囲は、80.0~100.0モル%であることが好ましく、90.0~99.5モル%であることがより好ましく、93.0~99.5モル%であることがさらに好ましい。ケン化度とは、式:ケン化度(モル%)=(水酸基の数)/(水酸基の数+酢酸基の数)×100で定義される数値であり、JIS K 6726(1994)で規定されている方法で求めることができる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、100~10000が好ましく、1000~10000がより好ましい。平均重合度は、JIS K 6726(1994)によって定められた方法によって求められる数値である。
【0025】
フィルム2の長尺方向の長さは、たとえば、1000m以上である。フィルム2の長尺方向の長さが1000m以上である場合、フィルム2の長尺方向の長さは、たとえば、30000m以下であり、好ましくは20000m以下である。フィルム2の幅方向(長尺方向に直交する方向)の長さの例は、1300mm~5000mmである。フィルム2の厚さの例は、10μm~100μmである。
【0026】
図1では、フィルム2を原反ロール6として準備し、原反ロール6から繰り出されたフィルム2に各処理を施して偏光フィルム4を得る場合を図示している。フィルム2がたとえば溶融押出法、溶剤キャスト法等の方法で製造される場合、上記方法(溶融押出法、溶剤キャスト法等)によって製造されたフィルム2を連続的に搬送して、その搬送中に上述の各処理を実施してもよい。
【0027】
まず、偏光フィルム4の製造装置10の概略を説明する。製造装置10は、複数のニップロール11と、複数のガイドロール12と、膨潤処理部13と、染色処理部13と、架橋処理部13と、洗浄処理部13と、乾燥処理部13とを備える。
【0028】
複数のニップロール11及び複数のガイドロール12は、フィルム2の搬送機構を構成する。複数のニップロール11及び複数のガイドロール12が適宜配置されることによって、フィルム2の搬送経路が構成されている。
【0029】
膨潤処理部13は、フィルム2に膨潤処理を行う部分である。膨潤処理部13は、膨潤処理のための処理液が貯留された処理槽を有する。膨潤処理部13が有する処理液にフィルム2を浸漬することによって、フィルム2に膨潤処理が行われる。本実施形態では、フィルム2が処理液に浸漬される前及び後に配置されたニップロール11およびそれらの間に配置されたガイドロール12によって、処理液にフィルム2を浸漬するフィルムの搬送経路が形成されている。
【0030】
上記膨潤処理は、フィルム2の表面の異物除去、フィルム2中の可塑剤除去、後工程での易染色性の付与、フィルム2の可塑化などの目的で行われる。膨潤処理の条件は、これらの目的が達成できる範囲で、かつフィルム2の極端な溶解、失透などの不具合が生じない範囲で決定され得る。膨潤処理部13では、フィルム2を、例えば、温度10℃~50℃、好ましくは15℃~40℃の処理液に浸漬することにより、膨潤処理が行われる。膨潤処理の時間(浸漬時間)は、5秒~300秒程度であり、好ましくは20秒~120秒程度である。膨潤処理部13における処理液の例は水である。そのため、膨潤処理は、フィルム2の水洗処理も兼ねることができる。
【0031】
染色処理部13は、フィルム2に染色処理を行う部分である。染色処理部13は、染色処理のための処理液が貯留された処理槽を有する。染色処理部13が有する処理液にフィルム2を浸漬することによって、フィルム2に染色処理が行われる。本実施形態では、フィルム2が処理液に浸漬される前及び後に配置されたニップロール11およびそれらの間に配置されたガイドロール12によって、処理液にフィルム2を浸漬するフィルムの搬送経路が形成されている。
【0032】
本実施形態における染色処理部13が有する処理液は、二色性色素の水溶液であり、染色処理では、フィルム2を二色性色素で染色する。通常の二色性色素による染色処理は、フィルム2に二色性色素を吸着させるなどの目的で行われる。処理条件はこのような目的が達成できる範囲で、かつフィルム2の極端な溶解、失透などの不具合が生じない範囲で所望の光学特性に応じて決定される。染色に使用される二色性色素の例は、ヨウ素及び二色性染料である。
【0033】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、例えば10℃~50℃、好ましくは15℃~40℃の温度で、かつ、水100重量部に対して、ヨウ素を0.003重量部~0.2重量部及びヨウ化カリウムを 0.1重量部~10重量部含む水溶液中に、10秒~600秒間、好ましくは30秒~300秒間、フィルム2を浸漬することにより、染色処理が行われる。ヨウ化カリウムに代えて他のヨウ化物、例えば、ヨウ化亜鉛を用いてもよい。他のヨウ化物をヨウ化カリウムと併用してもよい。さらに、ヨウ化物以外の化合物、ホウ酸、塩化亜鉛、塩化コバルトなどを共存させてもよい。水100重量部に対し、ヨウ素を0.003重量部以上含んでいる処理液であれば、染色用の処理液とみなすことができる。
【0034】
二色性色素として二色性染料を用いる場合は、例えば20℃~80℃、好ましくは30℃~60℃の温度で、かつ、水100重量部に対して二色性染料を0.001重量部~0.1重量部含む水溶液中に、10秒~600秒間、好ましくは20秒~300秒間、フィルム2を浸漬することにより、染色処理が行われる。使用する二色性染料の水溶液は、染色助剤などを含有していてもよく、硫酸ナトリウムの如き無機塩、界面活性剤などを含有していてもよい。二色性染料は1種類だけ用いてもよいし、所望される色相に応じて2種類以上の二色性染料を併用することもできる。
【0035】
架橋処理部13は、フィルム2に架橋処理を行う部分である。架橋処理部13は、架橋処理のための処理液が貯留された処理槽を有する。架橋処理部13が有する処理液にフィルム2を浸漬することによって、フィルム2に架橋処理が行われる。本実施形態では、フィルム2が処理液に浸漬される前及び後に配置されたニップロール11およびそらの間に配置されたガイドロール12によって、処理液にフィルム2を浸漬するフィルムの搬送経路が形成されている。
【0036】
架橋処理は、架橋による耐水化や色相調整(フィルム2が青味がかるのを防止する等)などの目的で行う処理である。
【0037】
架橋処理部13で使用する処理液は、例えば、水100重量部に対してホウ酸を約1重量部~10重量部含有する水溶液である。染色処理で使用した二色性色素がヨウ素の場合、架橋処理部13で使用する処理液は、ホウ酸に加えてヨウ化物を含有することが好ましく、その量は、水100重量部に対して、例えば1重量部~30重量部である。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。ヨウ化物以外の化合物、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等を共存させてもよい。
【0038】
架橋処理部13での架橋処理においては、その目的によって、ホウ酸及びヨウ化物の濃度、並びに処理液の温度を適宜変更することができる。
【0039】
例えば、架橋処理の目的が架橋による耐水化であり、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対し、膨潤処理、染色処理及び架橋処理をこの順に施す場合、処理液の架橋剤含有液は、例えば、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=3~10/1~20/100の水溶液である。必要に応じ、ホウ酸に代えてグリオキザール又はグルタルアルデヒド等の他の架橋剤を用いてもよく、ホウ酸と他の架橋剤を併用してもよい。フィルム2を浸漬するときの処理液の温度は、通常50℃~70℃程度であり、好ましくは53℃~65℃であり、フィルム2の浸漬時間は、通常10秒~600秒程度、好ましくは20秒~300秒、より好ましくは20秒~200秒である。膨潤処理前に予め延伸したフィルム2に対して染色処理及び架橋処理をこの順に施す場合、処理液の温度は、通常50℃~85℃程度、好ましくは55℃~80℃である。
【0040】
架橋処理の目的が色相調整であり、例えば、二色性色素としてヨウ素を用いた場合、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=1~5/3~30/100の架橋剤含有液を処理液として使用できる。フィルム2を浸漬するときの処理液の温度は、通常10~45℃程度であり、フィルム2の浸漬時間は、通常1~300秒程度、好ましくは2~100秒である。
【0041】
洗浄処理部13架橋処理後のフィルム2に洗浄処理を行う部分である。洗浄処理部13は、洗浄処理のための処理液が貯留された処理槽を有する。洗浄処理部13が有する処理液にフィルム2を浸漬することによって、フィルム2に洗浄処理が行われる。第1実施形態では、フィルム2が処理液に浸漬される前及び後に配置されたニップロール11およびそれらの間に配置されたガイドロール12によって、処理液にフィルム2を浸漬するフィルムの搬送経路が形成されている。洗浄処理における処理液としては、水、ヨウ化カリウムを含む水溶液、ホウ酸を含む水溶液が挙げられる。処理液の温度は、通常2℃~40℃程度であり、処理時間(浸漬時間)は、通常2秒~120秒程度である。
【0042】
乾燥処理部13は、フィルム2に乾燥処理を行う部分である。本実施形態において乾燥処理部13は、乾燥装置である。乾燥処理部13には、洗浄処理部13で洗浄処理されたフィルム2が搬入され、フィルム2が乾燥処理部13内を通過する間に、フィルム2を乾燥させる。本実施形態では、乾燥処理部13の前後に配置されたニップロール11によって、処理液にフィルム2を浸漬するフィルムの搬送経路が形成されている。乾燥処理部13内に、フィルム2を支持及び搬送するために、ガイドロール12が適宜配置されてもよい。乾燥処理部13による乾燥は、約40℃~100℃の温度に保たれた乾燥処理部13の中で、約30秒~約600秒行われる。図1では、乾燥処理部13を模式的に示している。乾燥処理部13は、フィルム2に付着した水分を乾燥できれば特に限定されず、偏光フィルムの製造において、通常、使用される公知のものでよい。
【0043】
製造装置10においては、複数のニップロール11における少なくとも2つのニップロール11(上流側のニップロール11と下流側のニップロール11)の回転速度差を利用してフィルム2を一軸延伸処理する延伸処理を実施する。この場合、上記一軸延伸処理に寄与する2つのニップロール11は延伸処理部として機能する。
【0044】
一つの処理部(例えば上述した架橋処理部13)の前後に配置された2つのニップロール11を利用して主に延伸処理を行うことに加えて、他のニップロール11を利用して徐々に延伸処理を更に施してもよい。
【0045】
製造装置10は、膨潤処理部13、染色処理部13、架橋処理部13、洗浄処理部13及び乾燥処理部13のうち少なくとも一つの処理部を複数有してもよい。例えば、製造装置10は、架橋処理部13を複数備えてもよい。製造装置10が延伸処理部を備えてもよい。
【0046】
上記製造装置10を用いた偏光フィルム4の製造方法の一例を説明する。まず、原反ロール6からフィルム2を繰り出する。繰り出されたフィルム2を、複数のニップロール11及び複数のガイドロール12で形成される搬送経路に沿って、フィルム2の長尺方向に搬送する。搬送速度の例は、1m/分~60m/分であってもよく、1.5m/分~50m/分である。フィルム2の搬送経路には、原反ロール6側から、膨潤処理部13、染色処理部13、架橋処理部13、洗浄処理部13及び乾燥処理部13が設けられている。更に、前述したように少なくとも2つのニップロール11は延伸処理部としての機能も有する。そのため、搬送経路に沿ってフィルム2を搬送することによって、フィルム2に、膨潤処理、染色処理、架橋処理、洗浄処理及び乾燥処理が施されるとともに、延伸処理が施される。これによって、フィルム2に直線偏光特性が付与され、偏光フィルム4が得られる。
【0047】
偏光フィルム4の製造では、フィルム2に付与される張力、フィルム2の物性などに応じて、フィルム2の幅方向(搬送方向に直交する方向)の端部が折れ込まれる傾向にある。そこで、本実施形態の偏光フィルム(光学フィルム)の製造方法は、フィルム2の端部領域の折れ込み状態を検査する検査工程を含む。
【0048】
検査工程では、図2に示した検査システム20を利用してフィルム2の端部領域2aの折れ込み状態を検査する。図2は、フィルム2の検査方法を説明するための模式図である。図2では、フィルム2を搬送方向からみた場合におけるフィルム2の一方の端部領域2a側を図示している。端部領域2aは、フィルム2が折り込まれることによって、層の数が互いに異なる層領域が複数生じる。本実施形態では、図2に示したように、1層領域A1と、2層領域A2と、3層領域A3と、4層領域A4と、5層領域A5と、6層領域A6とを有する端部領域2aを検査する形態を説明する。
【0049】
フィルム2の搬送方向において、上記端部領域2aの検査箇所は限定されず、1箇所でもよいし、複数箇所でもよい。一実施形態では、図1の位置x(膨潤処理部13における処理液にフィルム2が浸漬される前)等で検査が実施され得る。
【0050】
検査システム20は、画像取得装置30と、解析装置40とを有する。
【0051】
画像取得装置30は、搬送されているフィルム2の端部領域2aのカラー画像データを取得する。本実施形態の画像取得装置30は、透過型の画像取得装置である。画像取得装置30は、光源部31と、カラー受光部32と、第1直線偏光板33と、第2直線偏光板34とを有する。
【0052】
光源部31は、フィルム2の厚さ方向における一方の面側に配置されており、端部領域2aに照射する検査光Lを出力する。光源部31としては、たとえば、白色LED、緑色LED等のLED照明装置が挙げられる。検査光Lの波長は、例えば380nm~750nmである。
【0053】
カラー受光部32は、フィルム2に対して光源部31と反対側に配置されており、端部領域2aを透過した検査光Lを受けて、端部領域2aのカラー画像を取得する。カラー受光部32としては、エリアセンサ(たとえばCMOSカメラ)およびラインセンサが挙げられる。カラー画像データは、HSV画像データであっても、RGB画像データであってもよい。
【0054】
第1直線偏光板33は、光源部31と端部領域2aとの間に配置されている。第1直線偏光板33の吸収軸を吸収軸33a、フィルム2の搬送方向を搬送方向αと称した場合、図3に示したように、吸収軸33aが搬送方向αに対して非平行且つ非直交であるように第1直線偏光板33は配置されている。吸収軸33aと搬送方向αとの間の角度θ1は、たとえば、45度±5度である。上記搬送方向αは、フィルム2の延伸方向でもある。
【0055】
第2直線偏光板34は、端部領域2aとカラー受光部32との間に配置されている。第2直線偏光板34は、第1直線偏光板33とクロスニコル状態に配置されている。たとえば、第2直線偏光板34の吸収軸を吸収軸34aと称した場合、図3に示したように、吸収軸33aと吸収軸34aとの間の角度θ2は、たとえば、90度±5度である。第2直線偏光板34は、第1直線偏光板33と平行ニコル状態に配置されていてもよい。この場合、角度θ2は、0度±5度である。
【0056】
図2に示したように、解析装置40は、入力部41と、演算部(実行部)42と、出力部43と、記憶部44を有する。
【0057】
入力部41は、カラー受光部32で取得したカラー画像データが入力される(又は受け付ける)機能を有する。
【0058】
演算部42は、記憶部44に保存されているプログラムを実行することによって、入力部41に入力されたカラー画像データを解析し、端部領域2aの折れ込み状態を検査する機能を有する。
【0059】
出力部43は、演算部42の結果を検査者(或いは製造者)が参照するために表示出力を行う機能を有する。出力部43は、外部の表示装置に演算部42の結果を出力してもよいし、出力部43自体が表示機能を有してもよい。出力部43は、演算部42に処理過程中のデータの出力表示を行ってもよい。
【0060】
記憶部44は、上記折れ込み状態を検査するためのプログラム、入力部41に入力されるデータ、演算部42の演算中の各種データなどを記憶する機能を有する。記憶部44は、ROM、RAM等によって構成され得る。
【0061】
解析装置40は、記憶部44に記憶された各種プログラムを実施することで、解析装置40として機能するパーソナルコンピュータでもよいし、端部領域2aの検査のための専用装置でもよい。
【0062】
図4は、演算部42の一例の機能ブロック図である。演算部42は、記憶部44に記憶されたフィルム2の端部領域2aを検査するためのプログラムを実行することで、図4に示したように、検出部421として機能する。
【0063】
検出部421は、カラー画像データから得られる色相データに基づいて端部領域2aの折れ込み状態を検出する機能を有する。カラー画像データがRGB画像データである場合、カラー画像データを公知の変換式(又はそれに基づいた公知のプログラム)に基づいてHSV画像データに変換し、HSV画像データから色相データを取得すればよい。この場合、演算部42の一部は、画像データを変換する変換部として機能する。検出部421は、度数分布作成部421Aと、閾値設定部421Bと、判定部421Cとを有する。検出部421は、1層領域特定部421Dを有してもよい。本実施形態では、1層領域特定部421Dを有する場合を説明する。
【0064】
1層領域特定部421Dは、カラー画像データから得られる彩度データに基づいて、端部領域2aにおける1層の状態である領域(すなわち、図2の1層領域A1)に相当する画素領域を特定する。1層の状態であるフィルム2の彩度を予め記憶部44に保存しておき、1層領域特定部421Dは、その彩度を有する画素領域を特定すればよい。カラー画像データがRGB画像データである場合、色相データの場合と同様にしてカラー画像データを公知の変換式(又はそれに基づいた公知のプログラム)に基づいてHSV画像データに変換し、HSV画像データから彩度データを取得すればよい。
【0065】
度数分布作成部421Aは、カラー画像データから得られた色相データのうち、1層領域特定部421Dで特定された画素領域の色相データを除いた色相データから色相に対する度数分布を作成する。
【0066】
閾値設定部421Bは、度数分布作成部421Aで作成された度数分布における対象領域に対して2値化処理を実施して対象領域を第1領域および第2領域に分割する閾値を設定する。一実施形態において、2値化処理は、判別分析法(大津の2値化)に基づく処理である。
【0067】
判定部421Cは、第1領域および第2領域を第i領域(iは1または2)と表したとき、第i領域にピークが2個以上存在するか否かを判定する。
【0068】
図2では、フィルム2幅方向の一方の端部領域2aを検査する場合を例示している。しかしながら、フィルム2幅方向の他方の端部領域2aも検査してもよい。この場合、他方の端部領域2aに対して画像取得装置30が設けられていればよい。フィルム2の幅方向における一対の端部領域2aを検査する場合、一対の端部領域2aに配置された一対の画像取得装置30に対して解析装置40は一つでもよいし、一対の画像取得装置30それぞれに対して解析装置40が配置されてもよい。
【0069】
次に、検査システム20を利用した検査方法の一例を説明する。フィルム2を検査する方法は、図5に示したように、画像取得工程S10と、検出工程S20とを有する。
【0070】
画像取得工程S10では、画像取得装置30を利用して、端部領域2aのカラー画像データを取得する。具体的には、図2に示さしたように、光源部31から検査光Lを出力し、第1直線偏光板33を通して検査光Lを端部領域2aに照射する。フィルム2を透過した検査光Lは、第2直線偏光板34を通ってカラー受光部32に入力される。
【0071】
端部領域2aは、図2に示したように、1層領域A1、2層領域A2、・・・、6層領域A6を有する。各層領域は、層数が異なることから、厚さが互いに異なる。そのため、各層領域を検査光Lが通過する際の位相差に違いが生じるので、各層領域に違う色が発現する。その結果、カラー受光部32でカラー画像データを取得できる。たとえば、1層領域A1は白色(或いは透明)であり、2層領域A2はオレンジ色であり、3層領域A3は青色であり、4層領域A4は黄色であり、5層領域A5は紫色であり、6層領域A6は緑色である。
【0072】
図6は、端部領域2aが1層領域A1、2層領域A2、・・・、6層領域A6を有する場合のカラー画像データで表されるカラー画像Iの模式図である。前述したように、1層領域A1、2層領域A2、・・・、6層領域A6は異なる色を有するが、図6では色を省略している。
【0073】
画像取得工程S10で取得したカラー画像データは、解析装置40の入力部41に入力される。
【0074】
図5に戻って、画像取得工程S10以降の処理を説明する。
【0075】
検出工程S20では、カラー画像データから得られる色相データを用いて、端部領域2aの折れ込み状態を検出する。カラー画像データがRGB画像データである場合において、上記色相データの取得方法は前述したとおりである。カラー画像データがRGB画像データである場合、画像データを変換する変換工程を有してもよい。検出工程S20の一例を具体的に説明する。検出工程S20は、1層領域特定工程S21と、度数分布作成工程S22と、閾値設定工程S23と、判定工程S24と、対象領域変更工程S25とを有する。
【0076】
まず、1層領域特定部421Dが、カラー画像データから得られる彩度データを用いて1層領域A1に相当する画素領域を特定する(1層領域特定工程S21)。カラー画像データがRGB画像データである場合において、上記彩度データの取得方法は前述したとおりである。
【0077】
次に、度数分布作成部421Aが、カラー画像データから得られた色相データにおいて、1層領域特定工程S21で特定された画素領域以外の領域(本実施形態の説明では2層領域A2、3層領域A3、・・・、6層領域A6)に対する色相データから色相に対する度数分布を作成する。具体的は、色相データを用いて、同じ輝度値を有する画素数(度数)を集計する。
【0078】
図7は、度数分布作成工程S22で作成された度数分布に対応するヒストグラムである。図7の横軸は輝度値であり、縦軸は度数(画素数)を示している。図7では、輝度値を0~Nで表している。Nは、輝度値を表すビット数に応じた数であり、輝度値を8ビットで表す場合、255である。
【0079】
度数分布を作成した後、閾値設定部421Bが、度数分布における対象領域に対して2値化処理を実施して対象領域を第1領域および第2領域に分割する閾値を設定する(閾値設定工程S23)。
【0080】
検出工程S20において、閾値設定工程S23を最初に実施する場合、図7に示したように、度数分布の全範囲を対象領域(以下、「対象領域50」と称す)に設定する。この場合、閾値設定工程S23を実施することで、図8に示したように、輝度値0と輝度値Nとの間に第1閾値(輝度値)n1が設定され、対象領域50が第1領域51と第2領域52とに分割される。図8の例では、第1領域51は、輝度値が0~n1までの領域であり、第2領域52は、輝度値がn1~Nまでの領域である。
【0081】
閾値設定工程S23を実施後、第1領域51および第2領域52を第i領域(iは1または2)と表したとき、判定部421Cが、第i領域にピークが2個以上存在するか否かを判定する(判定工程S24)。ピークの存在の有無は、予め設定している閾値によって判定すればよい。
【0082】
判定工程S24で第i領域にピークが2個以上存在すると判定された場合(図5のS24で「YES」)、第i領域を新しい対象領域として設定し(対象領域変更工程S25)、新しい対象領域に対して閾値設定工程S3を再度実施する。その後、判定工程S24で、第i領域にピークの数が2個以上存在しないと判定されるまで(図5のS24で「NO」)、閾値設定工程S23、判定工程S24および対象領域変更工程S25を繰り返す。
【0083】
図8図10に基づいて、最初に閾値設定工程S23を実施した以降の処理を具体的に説明する。最初に閾値設定工程S23を実施することによって、図8に示されているように、対象領域50は、第1領域51と、第2領域52に分割されている。したがって、図8に示した度数分布の分割状態以降の処理を説明する。
【0084】
最初の閾値設定工程S23を実施した後、判定工程S24が実施される。判定工程S24において、第1領域51にピークが2個以上存在するか否かが判定されるとともに、第1領域51にピークが2個以上存在するか否かが判定される。
【0085】
説明の便宜のため、まず、第1領域51に対する処理を説明する。図8に示した第1領域51には、ピークが2個以上存在する。したがって、判定工程S24では、第1領域51にピークが2個以上存在すると判定される。そのため、対象領域変更工程S25が実施される。対象領域変更工程S25では、図9に示したように、第1領域51を新しい対象領域(以下、「対象領域50a」と称す)に設定する。次いで、対象領域50aに対して、閾値設定工程S23が実施される。これにより、第1閾値n1と輝度値Nとの間に第2閾値(輝度値)n2が設定され、対象領域50aが、第1領域(以下、「第1領域51a」と称す)と第2領域(以下、「第2領域52a」と称す)とに分割される。第1領域51aは、輝度値がn2~Nの領域であり、第2領域52aは、輝度値がn1~n2の領域である。
【0086】
第2閾値n2が設定された後、判定工程S24が実施され、第1領域51aにピークが2個以上存在するか否かが判定されるとともに、第2領域52aにピークが2個以上存在するか否かが判定される。
【0087】
第1領域51aにはピークが1つであることから、判定工程S24では、第1領域51aにはピークは2個以上存在しないと判定される。同様に、第2領域52aにはピークが1つであることから、判定工程S24では、ピークは2個以上存在しないと判定される。これにより、第1領域51側の検出工程S20の処理フローが終了する。
【0088】
次に、図8に示した第2領域52側の処理を説明する。第2領域52にも、ピークが2個以上存在する。したがって、判定工程S24では、第2領域52にピークが2個以上存在すると判定される。そのため、第2領域52に対して対象領域変更工程S25が実施される。対象領域変更工程S25では、図9に示したように、第2領域52を新しい対象領域(以下、「対象領域50b」と称す)に設定する。次いで、対象領域50bに対して閾値設定工程S23が実施される。これにより、輝度値0と第1閾値n1との間に第3閾値(輝度値)n3が設定され、対象領域50bが第1領域(以下、「第1領域51b」と称す)と、第2領域(以下、「第2領域52b」と称す)に分割される。第1領域51bは、輝度値がn3~n1の領域であり、第2領域52bは、輝度値が0~n3の領域である。
【0089】
第3閾値n3が設定された後、判定工程S24が実施され、第1領域51bにピークが2個以上存在するか否かが判定されるとともに、第2領域52bにピークが2個以上存在するか否かが判定される。
【0090】
第1領域51bにはピークは1つであるため、判定工程S24では、第1領域51bにはピークが2個以上存在しないと判定される。これにより、第1領域51bに関する処理フローは終了する。
【0091】
一方、第2領域52bには、ピークが2個以上存在することから、判定工程S24では、第2領域52bには、ピークが2個以上存在すると判定される。そのため、対象領域変更工程S25が実施される。対象領域変更工程S25では、図10に示したように、第2領域52bを新しい対象領域(以下、「対象領域50c」と称す)に設定する。次いで、対象領域50cに対して、閾値設定工程S23が実施される。これにより、輝度値0と第3閾値n3との間に第4閾値(輝度値)n4が設定され、対象領域50cが、第1領域(以下、「第1領域51c」と称す)と第2領域(以下、「第2領域52c」と称す)とに分割される。第1領域51cは、輝度値がn4~n3の領域であり、第2領域52cは、輝度値が0~n4の領域である。
【0092】
第4閾値n4が設定された後、判定工程S24が実施され、第1領域51cにピークが2個以上存在するか否かが判定されるとともに、第2領域52cにピークが2個以上存在するか否かが判定される。
【0093】
第1領域51cにはピークが1つであることから、判定工程S24では、第1領域51cにはピークは2個以上存在しないと判定される。同様に、第2領域52cにはピークが1つであることから、判定工程S24では、第2領域52cにはピークは2個以上存在しないと判定される。これにより、第2領域52側の検出工程S20の処理フローが終了する。
【0094】
すなわち、図10に示したように、第1閾値n1~第4閾値n4が設定された段階で、隣接する閾値で区切られた5つの領域にはピークの数が1つであることから、閾値設定工程S23、判定工程S24および対象領域変更工程S25で構成される繰り返しループが終了する。すなわち、検出工程S20が終了する。
【0095】
上記のように、検出工程S20を実施することで、度数分布が、閾値によって複数の領域(図10では5つの領域)に分割される。分割された複数の領域それぞれは、1つのピークを有する領域である。度数分布は、色相に対する度数分布であるため、ピークの違いは色の違いを表しており、分割された複数の領域それぞれは実質的に同じ色を示す領域(同色領域)である。すなわち、検出工程S20では、度数分布を、複数の同色領域に分割している。以下では、図10に示した各領域のように、ピークが1つである領域を同色領域とも称す。
【0096】
図2に示したように、フィルム2が折れ込まれることによって端部領域2aが層数の異なる複数の層領域(図2における1層領域A1、2層領域A2、・・・、6層領域A6)を有する場合、画像取得装置30で取得されたカラー画像データに対応するカラー画像では、複数の層領域は異なる色を発現している。そのため、度数分布が、ピークに対して分割されて得られた各同色領域は、端部領域2aにおける各層領域に対応する。したがって、検出工程S20において度数分布を複数の同色領域に分割した場合に、その同色領域の数を検出することで、端部領域2aにおいてどのような層領域が形成されているか把握できる。
【0097】
本実施形態では、第1直線偏光板33および第2直線偏光板34を用いて端部領域2aを撮像する。端部領域2aが有する複数の層領域(図2における1層領域A1、2層領域A2、・・・6層領域A6)は層数が異なるため、位相差の違いに応じた色が生じる。その結果、端部領域2aのカラー画像データを取得できる。このように取得されたカラー画像データから得られる色相データを解析することで、上記のように、端部領域2aの折れ込み状態を検出する。そのため、フィルム2が透明であってもフィルム2を搬送しながら、端部領域2aの折れ込み状態を検出できる。更に、カラー画像データから得られる色相データを解析していることから、色の違いを適切に検出できる。よって、端部領域2aの折れ込み状態をより正確に検出可能である。
【0098】
上記カラー画像データは、フィルム2を搬送しながら連続的に取得可能であり、取得されたカラー画像データに基づいて端部領域2aの折れ込み状態を自動的に検出できる。その結果、端部領域2aの折れ込み状態を連続的にかつ自動的に監視できる。
【0099】
1層領域A1で生じる位相差は小さいため、1層領域A1では色が発現しにくいことがある。その場合、本実施形態で例示したように、1層領域特定工程S21において、彩度データを用いて1層領域A1を特定する。これにより、1層領域A1をより正確に検出できる。更に、1層領域A1以外の領域の色相データを用いて他の領域を検出することで、他の領域も正確に検出できる。検出部421が1層領域特定部421Dを有することの作用効果も同様である。
【0100】
偏光フィルム4の製造過程において、端部領域2aの折れ込み状態を検出し把握することによって、フィルム2の状態に応じた製造条件で偏光フィルム4を製造可能である。
【0101】
本実施形態では、検出工程S20において、度数分布を複数の同色領域に分割している。したがって、閾値設定工程S23、判定工程S24および対象領域変更工程S25は、領域分割工程とみなせる。同様に、検出部421が有する閾値設定部421Bおよび判定部421Cは、領域分割部とみなせる。
【0102】
(変形例1)
検出工程S20は、度数分布の領域分割が終了した後に、度数分布の領域分割で得られた複数の同色領域と、端部領域2aの複数の層領域とを対応づける層構成特定工程を有してもよい。層構成特定工程を実施するため、検出部421は、度数分布の領域分割で得られた複数の同色領域と、端部領域2aの層領域とを対応づける層構成特定部を更に有してもよい。
【0103】
層構成特定工程では、度数分布の領域分割で得られた複数の同色領域を示す色(ピーク)と、各層領域に対する色(或いはピーク)とを対応づけることによって、同色領域と、端部領域2aの層領域とを対応づける。各層領域に対する色(或いはピーク)は、図11に示したしたように、フィルム2と同じフィルムであって幅の異なる複数のフィルムを積層したサンプルSに対して、検出工程S20を実施することで取得できる。このようにして取得した結果は、記憶部44に予め記憶しておけばよい。図11では、サンプルSが、6枚のフィルムF1~F6の積層フィルムである場合を示しているが、サンプルSが有するフィルムの積層数は、5枚以下でもよいし、7枚以上でもよい。
【0104】
このように、検出工程S20が層構成特定工程を有することによって、端部領域2aの折れ込み状態をより詳細に検出できる。検出部421が、層構成特定部を有することの作用効果も同様である。
【0105】
(変形例2)
検出工程S20は、度数分布の領域分割が終了した後に、端部領域2aの各層領域の幅を算出する幅算出工程を有してもよい。幅算出工程を実施するため、検出部421は、端部領域2aの各層領域の幅を算出する幅算出部を更に有してもよい。図10に示した度数分布の分割状態に応じて具体的に説明する。
【0106】
図10に示した例では、度数分布(ヒストグラム)は、5個の同色領域に分割されている。これにより、色相データ(或いは色相画像)を以下の条件で2値化し、領域a1~領域a5を抽出する。更に、色相データのうち領域a1~領域a5以外の領域を領域a6として抽出する。
輝度値が0~n4の領域:領域a1
輝度値がn4~n3の領域:領域a2
輝度値がn3~n1の領域:領域a3
輝度値がn1~n2の領域:領域a4
輝度値がn2~Nの領域:領域a5
【0107】
色相データ(或いは色相画像)において抽出された領域a1~領域a5のそれぞれは、図10における第2領域52c、第1領域51c、第1領域51b、第2領域52aおよび第1領域51aに対応する。したがって、領域a1~領域a5の幅を算出することで、第1領域51c、第1領域51b、第2領域52aおよび第1領域51aに対応する端部領域2aの層領域の幅を算出可能である。図10に示した度数分布で示された領域は、端部領域2において2層以上を有する複数の層領域に対応することから、領域a6は、1層領域A1に対応する。よって、領域a6の幅を算出することで、1層領域A1の幅が算出され得る。1層領域A1の幅は、1層領域特定工程S21の実施で得られた画素領域を用いて算出してもよい。
【0108】
このように、検出工程S20が幅算出工程を有することによって、端部領域2aの折れ込み状態をより詳細に検出できる。検出部421が、幅算出部を有することの作用効果も同様である。
【0109】
上記変形例2を、端部領域2aの各層領域の幅を算出する場合を説明した。しかしながら、検出工程S20は、上記のように抽出した領域a1~領域a6の隣接する領域間の境界座標を特定する境界座標特定工程を有し、検出部421が、境界座標特定工程を実施するための境界座標特定部を有してもよい。上記境界座標が特定されることによって、各層領域の幅も算出され得る。
【0110】
変形例1と変形例2を組み合わせることで、度数分布を領域分割して得られた複数の領域(第2領域52c、第1領域51c、第1領域51b、第2領域52aおよび第1領域51a)と、端部領域2aの複数の層領域とが対応づけられると共に、端部領域2aの複数の層領域の幅が算出され得る。その結果、端部領域2aの折れ込み状態をより詳細に把握できる。
【0111】
本発明は、例示した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される範囲が含まれることが意図されるとともに、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0112】
例えば、解析装置は1層領域特定部を有しなくてもよい。同様に、検出工程が1層領域特定工程を有しなくてもよい。この場合、カラー画像データから得られた色相データに含まれる1層領域の色相データを用いて、検出工程を実施すればよい。
【0113】
検出工程は、色相データから色相に対する度数分布を作成し、度数分布を同色領域に分割することによって、端部領域の折れ込み状態を検出する工程であればよい。この場合、検出工程では、隣接する閾値間に存在するピークの数が1つになるように、度数分布に対して2値化処理を実施することによって、度数分布を前記同色領域に分割すればよい。
【0114】
同様に、検出部は、上記度数分布作成部と、上記度数分布を同色領域に分割する領域分割部と、を有すればよい。領域分割部は、隣接する閾値間に存在するピークの数が1個になるように、度数分布に対して2値化処理を実施することによって、度数分布を同色領域に分割すればよい。
【0115】
画像取得装置は、反射型の画像取得装置、すなわち、樹脂フィルムに対して、光源部、第1直線偏光板、第2直線偏光板およびカラー受光部が同じ側に配置される装置であってもよい。
【0116】
閾値設定工程によって対象領域が第1領域および第2領域に分割された後において、第1領域に対して判定工程を実施し、第1領域に関する処理を終了した後に、第2領域に対して判定工程を実施し、第2領域に関する処理を終了してもよい。第1領域および第2領域に対して判定工程を実施する順番は反対でもよいし、同時でもよい。第1領域(又は第2領域)を新しい対象領域として設定したのちに、閾値設定工程を実施した後も同様である。
【0117】
光学フィルムは、例示した偏光フィルムに限定されず、たとえば、位相差フィルムでもよい。同様に、樹脂フィルムもポリビニルアルコール系フィルムに限定されない。樹脂フィルムとしては、上記光学フィルムの材料となる樹脂フィルムや光学フィルムの製造過程で得られるフィルム等が挙げられ、透明な樹脂フィルムが好ましい。
【0118】
上記実施形態および種々の変形例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0119】
2…ポリビニルアルコール系フィルム(樹脂フィルム)、2a…端部領域、4…偏光フィルム(光学フィルム)、20…検査システム、30…画像取得装置、31…光源部、32…カラー受光部、33…第1直線偏光板、33a…吸収軸、34…第2直線偏光板、34a…吸収軸、40…解析装置、50,50a,50b,50c…対象領域,51,51a,51c…第1領域、52,52a,52b,52c…第2領域、421…検出部、421A…度数分布作成部、421B…閾値設定部、421C…判定部、421D…1層領域特定部、n1…第1閾値(閾値)、n2…第2閾値(閾値)、n3…第3閾値(閾値)、n4…第4閾値、A1…1層領域、L…検査光、α…搬送方向。

図1
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