IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェーの特許一覧

<>
  • 特許-SiOC薄膜の形成 図1
  • 特許-SiOC薄膜の形成 図2
  • 特許-SiOC薄膜の形成 図3
  • 特許-SiOC薄膜の形成 図4
  • 特許-SiOC薄膜の形成 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】SiOC薄膜の形成
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/314 20060101AFI20240426BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20240426BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240426BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
H01L21/314 A
C23C16/42
H01L21/31 C
H01L21/316 X
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021123166
(22)【出願日】2021-07-28
(62)【分割の表示】P 2017092684の分割
【原出願日】2017-05-08
(65)【公開番号】P2021184478
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-08-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】62/332,975
(32)【優先日】2016-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/427,077
(32)【優先日】2016-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】ポア ヴィジャミ ジェイ.
【合議体】
【審判長】恩田 春香
【審判官】棚田 一也
【審判官】松永 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-170614(JP,A)
【文献】特表2008-544533(JP,A)
【文献】特開2015-053445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/314
H01L 21/316
H01L 21/31
C23C 16/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応空間においてプラズマエンハンスト原子層堆積(PEALD)プロセスによって基板上にシリコンオキシカーバイド(SiOC)薄膜を形成する方法であって、
前記PEALDプロセスが、
窒素を含まない第1の気相ケイ素前駆体に前記基板の表面を接触させるステップと、ここで、前記第1の気相ケイ素前駆体のケイ素種を前記基板の表面に吸着させる、
前記基板を第1のパージガス及び/又は真空にさらして、過剰の第1の気相ケイ素前駆体及び反応副生物がもしあればそれらを除去するステップと、
前記基板の表面に、少なくとも1つの第1の希ガスと、水素を含み、かつ、酸素を含まない第2の反応物からプラズマによって生成された少なくとも1つの第1の反応種を接触させるステップと、ここで、前記第1の反応種が吸着させた前記ケイ素種をSiOCに転化する、
前記基板を第2のパージガス及び/又は真空にさらして、過剰の第2の反応物及び反応副生物がもしあればそれらを除去するステップと、
を含む少なくとも1回の第1の堆積サブサイクルを含む、方法。
【請求項2】
前記第1の気相ケイ素前駆体がハロゲンを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の気相ケイ素前駆体がビス(トリエトキシシリル)エタン(BTESE)又は3-メトキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1の反応種が、5ワット(W)から5000WのRFパワーを前記第2の反応物に印加することによって生成される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1の希ガスは、アルゴンを含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記SiOC薄膜のウェットエッチ速度と熱酸化ケイ素のウェットエッチ速度との比が5未満である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記SiOC薄膜が前記基板上の3次元構造体上に堆積される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記3次元構造体の垂直表面に形成されたSiOCのウェットエッチ速度と前記3次元構造体の水平表面に形成された前記SiOCのウェットエッチ速度とのウェットエッチ速度比が0.5重量%希釈HF中で1:20~20:1である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1回の第1の堆積サブサイクルが、100℃から300℃のプロセス温度で実施される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1回の第1の堆積サブサイクルが、100℃未満のプロセス温度で実施される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記基板が有機材料を含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、半導体素子製造の分野に関し、より詳細には、望ましい耐薬品性を有するシリコンオキシカーバイド(SiOC)膜の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電率(k)値が比較的低く、酸性ウェットエッチ速度が比較的遅い誘電材料がますます必要とされている。シリコンオキシカーバイド又はシリコンオキシカーボナイトライド(SiOCN)は、これらの要求の幾つかを満たし得る。一般に、SiOC又はSiOCNの堆積プロセスは、酸素プラズマを必要とする。さらに、SiOCN膜の窒素は、処理中に問題を生じる恐れがあり、例えば、SiOCN膜はフォトレジスト中毒を引き起こす恐れがある。
【発明の概要】
【0003】
一部の実施形態においては、反応空間において基板上にシリコンオキシカーバイド(SiOC)薄膜を形成するプラズマエンハンスト原子層堆積プロセスを提供する。一部の実施形態においては、該プロセス又は方法は、窒素を含まない気相ケイ素前駆体に基板の表面を接触させるステップと、水素を含む第2の反応物から形成されたプラズマによって生成された少なくとも1種の反応種に吸着ケイ素種を接触させるステップであって、第2の反応物が酸素を含まないステップと、所望の厚さのSiOC膜が形成されるまで前記接触させるステップを任意選択で繰り返すステップとを含む少なくとも1回の堆積サイクルを含むことができる。
【0004】
一部の実施形態においては、SiOC薄膜のウェットエッチ速度と熱酸化ケイ素のウェットエッチ速度との比が約5未満である。一部の実施形態においては、SiOC薄膜のウェットエッチ速度と熱酸化ケイ素のウェットエッチ速度との比が約0.3未満である。一部の実施形態においては、SiOC薄膜のウェットエッチ速度と熱酸化ケイ素のウェットエッチ速度との比が約0.1未満である。一部の実施形態においては、SiOC薄膜が基板上の3次元構造体上に堆積する。一部の実施形態においては、3次元構造体の上面に形成されたSiOCのウェットエッチ速度と3次元構造体の側壁表面に形成されたSiOCのウェットエッチ速度とのウェットエッチ速度比が、希釈HF中で約1:1である。
【0005】
一部の実施形態においては、気相ケイ素前駆体は、ハロゲンを含まない。一部の実施形態においては、気相ケイ素前駆体は、ビス(トリエトキシシリル)エタン(BTESE)を含む。一部の実施形態においては、気相ケイ素前駆体は、3-メトキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)を含む。一部の実施形態においては、気相ケイ素前駆体は、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランを含む。一部の実施形態においては、反応種は、水素プラズマ、水素原子、水素ラジカル又は水素イオンを含む。一部の実施形態においては、反応種は、貴ガスを含む第2の反応物から生成する。一部の実施形態においては、第2の反応物は、Hを含む。一部の実施形態においては、反応種は、約20原子%未満の窒素を含む第2の反応物から生成する。一部の実施形態においては、第2の反応物は、本質的にHからなる。
【0006】
一部の実施形態においては、SiOC薄膜は、少なくとも20原子%の酸素を含む。一部の実施形態においては、SiOC薄膜は、少なくとも0.1原子%の炭素を含む。一部の実施形態においては、SiOC薄膜は、少なくとも1原子%の炭素を含む。一部の実施形態においては、SiOC薄膜は、少なくとも5原子%の炭素を含む。一部の実施形態においては、SiOC薄膜は、約10原子%未満の窒素を含む。
【0007】
一部の実施形態においては、反応空間において基板上にシリコンオキシカーバイド(SiOC)薄膜を形成する方法を提供する。一部の実施形態においては、こうした方法は、複数の堆積サイクルを含むことができ、少なくとも1回の堆積サイクルは、窒素を含まないケイ素前駆体及び水素を含む少なくとも1種の反応種を含む第2の反応物に基板の表面を交互に順次接触させるステップを含む。一部の実施形態においては、堆積サイクルを2回以上繰り返して、SiOC薄膜を形成する。
【0008】
一部の実施形態においては、少なくとも1種の反応種は、酸素を含まないガスから形成されたプラズマによって生成する。一部の実施形態においては、少なくとも1種の反応種は、窒素を含まないガスから形成されたプラズマによって生成する。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体は、一般式(RIIO)Si-R-Si(ORIIを有し、式中、R及びRIIは、独立に選択されるC~Cアルキルリガンドである。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体は、BTESEを含む。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体は、一般式Si(OR4-xII を有し、式中、xは0~3の整数であり、Rは、独立に選択されるC~Cアルキルリガンドであり、RIIは、炭素及び/又は水素及び/又は酸素からなる独立に選択されるリガンドである。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体は、MPTMSを含む。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体は、一般式(RO)4-xSi-(RII-O-RIIIを有し、式中、xは0~3の整数であり、R及びRIIは、各々独立に選択されるC~Cアルキルリガンドであり、RIIIは、炭素及び/又は水素及び/又は酸素からなる独立に選択されるリガンドである。
【0009】
一部の実施形態においては、少なくとも1回の堆積サイクルは、PEALDサイクルである。一部の実施形態においては、反応種は、5ワット(W)~約5000WのRFパワーを第2の反応物に印加することによって生成する。一部の実施形態においては、堆積サイクルを約100℃~約300℃のプロセス温度で実施する。一部の実施形態においては、堆積サイクルを約100℃未満のプロセス温度で実施する。一部の実施形態においては、基板は、有機材料を含む。
【0010】
一部の実施形態においては、反応空間において基板上にシリコンオキシカーバイド(SiOC)薄膜を形成する方法を提供する。一部の実施形態においては、該方法は、窒素を含まないケイ素前駆体に基板の表面を接触させるステップと、基板をパージガス及び/又は真空にさらして、過剰のケイ素前駆体及び反応副生物がもしあればそれらを除去するステップと、水素を含む第2の反応物に基板の表面を接触させるステップであって、第2の反応物が、プラズマによって生成された少なくとも1種の反応種を含むステップと、基板をパージガス及び/又は真空にさらして、過剰の第2の反応物及び反応副生物がもしあればそれらを除去するステップと、所望の厚さのSiOC薄膜が形成されるまで前記接触させるステップを繰り返すステップとを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一部の実施形態に係るプラズマエンハンスト原子層堆積(PEALD:plasma enhanced atomic layer deposition)プロセスによってシリコンオキシカーバイド(SiOC)薄膜を堆積させるプロセスフロー図である。
図2】一部の実施形態に係る例示的なケイ素前駆体の分子構造を示す図である。
図3】一部の実施形態に従って堆積したSiOC試料膜についての前駆体ボトル温度とSiOC膜成長速度のプロットである。
図4】一部の実施形態に従って堆積した膜についてのプラズマ出力の関数としてのSiOC膜成長速度、屈折率、及びdHF(0.5重量%)中の熱酸化ケイ素に対するウェットエッチ速度比(TOXに対するWERR:wet etch rate ratio)を示す図である。
図5】一部の実施形態に従って堆積した膜についてのSiOC膜成長速度と第2の反応物ガス組成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
シリコンオキシカーバイド(SiOC)膜は、当業者には明らかなように、例えば、集積回路製作において、多種多様な適用例がある。より具体的には、エッチ速度が遅いSiOC膜は、半導体産業と半導体産業の外部の両方で多種多様な適用例がある。SiOC膜は、例えば、エッチストップ層、犠牲層、low‐kスペーサ、反射防止層(ARL:anti-reflection layer)及び不動態化層として有用であり得る。
【0013】
本開示の一部の実施形態によれば、種々のSiOC膜、前駆体、及び前記膜を堆積させる方法が提供される。一部の実施形態においては、SiOC膜は、例えばdHF中で、ウェットエッチ速度が比較的遅い。
【0014】
一部の実施形態においては、SiOC薄膜をプラズマエンハンスト原子層堆積(PEALD)プロセスによって基板上に堆積させる。一部の実施形態においては、SiOC薄膜を液相法で堆積させない。一部の実施形態においては、SiOC薄膜をフィン型FET素子の形成におけるフィンなどの3次元構造体上に堆積させる。
【0015】
シリコンオキシカーバイド膜の式を本明細書では便宜上かつ簡潔にするために一般にSiOCと称する。本明細書では、SiOCは、膜中のSi、O、C及び/又は任意の他の元素のいずれかの結合又は化学状態、例えば、酸化状態を限定、制限又は規定することを意図したものではない。さらに、一部の実施形態においては、SiOC薄膜は、Si、O及び/又はCに加えてSなどの1種以上の元素を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOC膜は、Si-C結合及び/又はSi-O結合を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOC膜は、Si-C結合及びSi-O結合を含むことができ、Si-N結合を含まなくてもよい。一部の実施形態においては、SiOC膜は、Si-C及び/又はSi-O結合に加えてSi-S結合を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOC膜は、Si-C結合よりも多くのSi-O結合を含むことができ、例えば、Si-O結合とSi-C結合の比を約1:1~約10:1とすることができる。一部の実施形態においては、SiOCは、原子基準で約0%~約40%の炭素を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOCは、原子基準で約0.1%~約40%、約0.5%~約30%、約1%~約30%、又は約5%~約20%の炭素を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOC膜は、原子基準で約0%~約70%の酸素を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOCは、原子基準で約10%~約70%、約15%~約50%、又は約20%~約40%の酸素を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOC膜は、原子基準で約0%~約50%のケイ素を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOCは、原子基準で約10%~約50%、約15%~約40%、又は約20%~約35%のケイ素を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOCは、原子基準で約0.1%~約40%、約0.5%~約30%、約1%~約30%、又は約5%~約20%の硫黄を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOC膜は窒素を含まなくてもよい。幾つかの他の実施形態においては、SiOC膜は、原子基準(at%)で約0%~約5%の窒素を含むことができる。
【0016】
ALD型プロセスは、制御された一般に自己制限的な表面反応に基づく。気相反応は、一般に、基板を反応物と交互に順次接触させることによって回避される。気相反応物は、例えば、過剰の反応物及び/又は反応副生物を反応物パルスの間に除去することによって、反応室中で互いに分離される。反応物は、基板表面の近くからパージガス及び/又は真空を利用して除去することができる。一部の実施形態においては、過剰の反応物及び/又は反応副生物を、例えば、不活性ガスでパージして、反応空間から除去する。
【0017】
一部の実施形態においては、プラズマエンハンストALD(PEALD)プロセスを使用して、SiOC膜を堆積させる。一部の実施形態においては、本明細書に記載のPEALDプロセスは、酸素プラズマを使用しない。一部の実施形態においては、本明細書に記載のPEALDプロセスは、酸素プラズマを含む反応物を含まない。一部の実施形態においては、本明細書に記載のPEALDプロセスは、窒素プラズマを使用しない。一部の実施形態においては、本明細書に記載のPEALDプロセスは、窒素プラズマを含む反応物を含まない。一部の実施形態においては、本明細書に記載のPEALDプロセスは、水素プラズマを使用することができる。一部の実施形態においては、本明細書に記載のPEALDプロセスは、水素プラズマを含む反応物を含むことができる。手短に述べると、基板又は被処理体を反応室内に配置し、交互に繰り返す表面反応に供する。一部の実施形態においては、薄いSiOC膜を自己制限的なALDサイクルの反復によって形成する。一部の実施形態においては、SiOC膜を形成するために、各ALDサイクルは、少なくとも2つの異なる段階を含む。反応物又は前駆体の接触及び基板からの除去を1段階と考えることができる。第1の段階においては、ケイ素を含む気相第1反応物又は前駆体が基板に接触し、基板表面に約1つ以下の単層を形成する。この反応物を本明細書では「ケイ素前駆体」、「ケイ素含有前駆体」又は「ケイ素反応物」とも称し、例えば、ビス(トリエトキシシリル)エタン(BTESE)又は3-メトキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)とすることができる。一部の実施形態においては、過剰の第1の気相反応物及びどんな反応副生物でも基板表面の近くから除去する。第1の気相反応物及びどんな反応副生物でも、パージガス及び/又は真空を利用して、基板表面の近くから除去することができる。一部の実施形態においては、過剰の反応物及び/又は反応副生物を、例えば、不活性ガスでパージして、反応空間から除去する。一部の実施形態においては、反応物及び/又は反応副生物の除去を容易にするために、例えば、基板を異なる反応室に移すことによって、基板を移すことができる。
【0018】
第2の段階においては、反応種を含む第2の反応物が基板に接触し、吸着ケイ素種をSiOCに転化させることができる。一部の実施形態においては、第2の反応物は水素前駆体を含む。一部の実施形態においては、反応種は励起種を含む。一部の実施形態においては、第2の反応物は、水素含有プラズマ由来の種を含む。一部の実施形態においては、第2の反応物は、水素ラジカル、水素原子及び/又は水素プラズマを含む。第2の反応物は、水素前駆体ではない別の種を含むことができる。一部の実施形態においては、第2の反応物は、He、Ne、Ar、Kr又はXeの1種以上などの貴ガス由来の種を、例えば、ラジカルとして、プラズマの形で、又は元素の形で含むことができる。貴ガス由来のこれらの反応種は、必ずしも材料を堆積膜に与えないが、一部の状況においては、膜成長に寄与し、プラズマの形成及び点火に役立つことができる。一部の実施形態においては、貴ガスから生成する反応種は、下地基板の損傷の量又は程度に影響し得る。当業者は、特定の用途に適切な貴ガス(単数又は複数)を選択することができる。一部の実施形態においては、プラズマの形成に使用されるガスは、堆積プロセスを通して常に流すことができるが、断続的にしか活性化することができない。一部の実施形態においては、プラズマの形成に使用されるガスは、酸素を含まない。一部の実施形態においては、吸着ケイ素前駆体は、酸素からプラズマによって生成された反応種と接触しない。一部の実施形態においては、反応種を含む第2の反応物は、酸素を含まないガス中で生成する。例えば、一部の実施形態においては、第2の反応物は、酸素を含まないガス中で発生したプラズマを含むことができる。一部の実施形態においては、第2の反応物は、約50原子%(at%)未満の酸素、約30原子%未満の酸素、約10原子%未満の酸素、約5原子%未満の酸素、約1原子%未満の酸素、約0.1原子%未満の酸素、約0.01原子%未満の酸素、又は約0.001原子%未満の酸素を含むガス中で生成することができる。
【0019】
一部の実施形態においては、プラズマの形成に使用されるガスは、窒素を含まない。一部の実施形態においては、吸着ケイ素前駆体は、窒素からプラズマによって生成された反応種と接触しない。一部の実施形態においては、反応種を含む第2の反応物は、窒素を含まないガス中で生成する。例えば、一部の実施形態においては、第2の反応物は、窒素を含まないガス中で発生したプラズマを含むことができる。しかし、一部の実施形態においては、プラズマの形成に使用されるガスは、窒素を含むことができる。幾つかの他の実施形態においては、第2の反応物は、窒素ラジカル、窒素原子及び/又は窒素プラズマを含むことができる。一部の実施形態においては、第2の反応物は、約25原子%(at%)未満の窒素、約20原子%未満の窒素、約15原子%未満の窒素、約10原子%未満の窒素、約5原子%未満の窒素、約1原子%未満の窒素、約0.1原子%未満の窒素、約0.01原子%未満の窒素、又は約0.001原子%未満の窒素を含むガス中で生成することができる。一部の実施形態においては、第2の反応物は、水素及び窒素を含むガス中で生成することができ、例えば、第2の反応物は、H及びNを含むことができる。一部の実施形態においては、第2の反応物は、NとHの比(N/H)が約20%未満、約10%未満又は約5%未満であるガス中で生成することができる。
【0020】
一部の実施形態においては、プラズマの形成に使用されるガスは、窒素も酸素も含まない。一部の実施形態においては、吸着ケイ素前駆体は、窒素又は酸素からプラズマによって生成された反応種と接触しない。一部の実施形態においては、反応種を含む第2の反応物は、窒素も酸素も含まないガス中で生成する。例えば、一部の実施形態においては、第2の反応物は、窒素も酸素も含まないガス中で発生したプラズマを含むことができる。
【0021】
一部の実施形態においては、過剰の第2の反応物及びどんな反応副生物でも基板表面の近くから除去する。第2の反応物及びどんな反応副生物でも、パージガス及び/又は真空を利用して、基板表面の近くから除去することができる。一部の実施形態においては、過剰の反応物及び/又は反応副生物を、例えば、不活性ガスでパージして、反応空間から除去する。一部の実施形態においては、反応物及び/又は反応副生物の除去を容易にするために、例えば、基板を異なる反応室に移動することによって、基板を移動することができる。
【0022】
更なる段階を追加し、また、段階を必要に応じて省略して、最終膜の組成を調節することができる。
【0023】
Ar、Heなどのキャリアガスを利用して1種以上の反応物を供給することができる。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体及び第2の反応物をキャリアガスを利用して供給する。
【0024】
一部の実施形態においては、2つの段階が重複しても、組み合わされてもよい。例えば、ケイ素前駆体と第2の反応物を、部分的又は完全に重複する段階で同時に基板に接触させることができる。さらに、第1及び第2の段階、並びに第1及び第2の反応物と称するとはいえ、段階の順序を変えることができ、ALDサイクルを段階の任意の一つから開始することができる。すなわち、別段の記載がない限り、反応物を基板と任意の順序で接触させることができ、プロセスを反応物のどれからでも開始することができる。
【0025】
以下でより詳細に考察するように、SiOC膜を堆積させる一部の実施形態においては、基板をケイ素前駆体、続いて第2の前駆体に接触させることによって1回以上の堆積サイクルを開始する。別の実施形態においては、基板を第2の前駆体、続いてケイ素前駆体に接触させることによって堆積を開始することができる。
【0026】
一部の実施形態においては、半導体被処理体などの堆積させようとする基板を反応空間又は反応器内に搬入する。反応器は、集積回路の形成において種々のプロセスがその中で実施されるクラスタツールの一部とすることができる。一部の実施形態においては、フロー式反応器を利用する。一部の実施形態においては、シャワーヘッド型の反応器を利用する。一部の実施形態においては、空間分割型反応器を利用する。一部の実施形態においては、大量生産可能な枚葉式ALD反応器を使用する。別の実施形態においては、複数の基板を含むバッチ式反応器を使用する。バッチ式ALD反応器を使用する実施形態の場合、基板の数は、10~200個の範囲、50~150個の範囲、又は100~130個の範囲である。
【0027】
使用することができる適切な反応器の例としては、アリゾナ州フェニックスのASM America,Inc.及びオランダ、アルメア(Almere)のASM Europe B.V.から入手可能なF-120(登録商標)反応器、F-450(登録商標)反応器、Pulsar(登録商標)2000、Pulsar(登録商標)3000などのPulsar(登録商標)反応器、EmerALD(登録商標)反応器、Advance(登録商標)400シリーズ反応器などの市販装置が挙げられる。他の市販反応器としては、商品名Eagle(登録商標)XP及びXP8のASM Japan K.K(東京、日本)製反応器が挙げられる。
【0028】
一部の実施形態においては、必要に応じて、被処理体の露出表面を前処理して、ALDプロセスの第1の段階と反応する反応部位を用意することができる。一部の実施形態においては、別個の前処理ステップが不要である。一部の実施形態においては、基板を前処理して、所望の表面終端を施す。一部の実施形態においては、基板をプラズマで前処理する。
【0029】
過剰の反応物及び反応副生物があれば、それらを反応物接触段階の間に基板の近傍から、特に基板表面から除去する。一部の実施形態においては、過剰の反応物及び反応副生物があれば、例えば、不活性ガスでパージするなど、反応物接触段階の間に反応室をパージすることによって、それらを基板表面から除去する。各反応物の流量及び接触時間は、調節可能であり、除去ステップも同様であり、膜の品質及び諸性質の制御が可能である。
【0030】
上述したように、一部の実施形態においては、各堆積サイクル中又は全ALDプロセス中にガスを反応室に連続的に供給し、反応室又は反応室の上流においてガス中でプラズマを発生させることによって反応種を供給する。一部の実施形態においては、ガスは窒素を含まない。一部の実施形態においては、ガスは、ヘリウム、アルゴンなどの貴ガスを含むことができる。一部の実施形態においては、ガスはヘリウムである。一部の実施形態においては、ガスはアルゴンである。流動ガスは、第1及び/又は第2の反応物(又は反応種)のパージガスとしても働くことができる。例えば、流動アルゴンは、第1のケイ素前駆体のパージガスとして働くことができ、第2の反応物として(反応種の供給源として)も働くことができる。一部の実施形態においては、アルゴン又はヘリウムは、第1の前駆体のパージガス、及びケイ素前駆体をSiOC膜に転化させるための励起種の供給源として働くことができる。一部の実施形態においては、プラズマがその中で生成するガスは、窒素を含まず、吸着ケイ素前駆体は、窒素からプラズマによって生成された反応種と接触しない。一部の実施形態においては、プラズマがその中で生成するガスは、酸素を含まず、吸着ケイ素前駆体は、酸素からプラズマによって生成された反応種と接触しない。一部の実施形態においては、プラズマがその中で生成するガスは、酸素も窒素も含まず、吸着ケイ素前駆体は、酸素又は窒素からプラズマによって生成された反応種と接触しない。
【0031】
サイクルは、所望の厚さ及び組成の膜が得られるまで繰り返される。一部の実施形態においては、前駆体流量、接触時間、除去時間及び/又は反応物自体などの堆積パラメータは、所望の特性を有する膜を得るために、ALDプロセス中に1回以上の堆積サイクルにおいて変更することができる。
【0032】
一部の実施形態においては、基板の表面を反応物に接触させる。一部の実施形態においては、1パルスの反応物を、基板を含む反応空間に供給する。「パルス」という用語は、反応物を反応室に所定の時間供給することを含むと理解することができる。「パルス」という用語は、パルスの長さ又は持続時間を限定せず、パルスを任意の時間とすることができる。一部の実施形態においては、反応物を含む反応空間に基板を移す。一部の実施形態においては、続いて、基板を第1の反応物を含む反応空間から第2の反応物を含む第2の異なる反応空間に移す。
【0033】
一部の実施形態においては、基板を最初にケイ素反応物に接触させる。最初の表面終端後、必要に応じて、又は所望であれば、基板を第1のケイ素反応物に接触させる。一部の実施形態においては、第1のケイ素反応物パルスを被処理体に供給する。一部の実施形態によれば、第1の反応物パルスは、キャリアガス流、及び目的とする被処理体表面と反応しやすいBTESE、MPTMSなどの揮発性ケイ素種を含む。したがって、ケイ素反応物は、これらの被処理体表面に吸着する。第1の反応物パルスは、被処理体表面をケイ素反応物種で自己飽和させて、第1の反応物パルスの過剰の成分がこのプロセスによって形成された分子層と更に反応しないようにする。
【0034】
第1のケイ素反応物パルスは、ガス状で供給することができる。ケイ素前駆体ガスは、プロセス条件下で露出表面を飽和させるのに十分な濃度で被処理体に該種を移送するのに十分な蒸気圧を示す場合、本明細書では「揮発性」とみなす。
【0035】
一部の実施形態においては、ケイ素反応物は、表面と約0.05秒~約5.0秒、約0.1秒~約3秒、又は約0.2秒~約1.0秒間接触する。最適接触時間は、個々の状況に基づいて当業者が容易に決定することができる。
【0036】
約1つの分子層が基板表面に吸着するのに十分な時間の後、過剰の第1のケイ素反応物、及び反応副生物があれば、それらを基板表面から除去する。一部の実施形態においては、過剰の反応物及び反応副生物があればそれらの除去は、反応室のパージを含むことができる。一部の実施形態においては、過剰の反応物及び反応副生物があれば、それらを反応空間から拡散させる又はパージするのに十分な時間キャリアガス又はパージガスを流し続けながら、第1の反応物の流れを停止することによって、反応室をパージすることができる。一部の実施形態においては、過剰の第1の前駆体を、ALDサイクル全体を通して流れるヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを利用してパージする。一部の実施形態においては、基板を第1の反応物を含む反応空間から第2の異なる反応空間に移すことができる。一部の実施形態においては、第1の反応物を約0.1秒~約10秒、約0.3秒~約5秒、又は約0.3秒~約1秒間除去する。ケイ素反応物の接触及び除去をALDサイクルの第1又はケイ素段階とみなすことができる。
【0037】
第2の段階においては、水素プラズマなどの反応種を含む第2の反応物を被処理体に供給する。水素プラズマは、反応室又は反応室の上流において水素中でプラズマを発生させることによって、例えば、水素(H)をリモートプラズマ発生装置に流すことによって、形成することができる。
【0038】
一部の実施形態においては、プラズマは、流動Hガス中で発生する。一部の実施形態においては、プラズマが点火される前に、又は水素原子若しくはラジカルが形成される前に、Hを反応室に供給する。一部の実施形態においては、Hを反応室に連続的に供給し、水素含有プラズマ、原子又はラジカルを必要に応じて生成又は供給する。
【0039】
一般に、例えば水素プラズマを含む、第2の反応物を基板と約0.1秒~約10秒間接触させる。一部の実施形態においては、水素含有プラズマなどの第2の反応物を基板と約0.1秒~約10秒、0.5秒~約5秒、又は0.5秒~約2.0秒間接触させる。しかしながら、反応器タイプ、基板タイプ及びその表面積に応じて、第2の反応物接触時間を約10秒よりも更に長くすることができる。一部の実施形態においては、接触時間を数分間にすることができる。最適接触時間は、個々の状況に基づいて当業者が容易に決定することができる。
【0040】
一部の実施形態においては、第2の反応物を2つ以上の異なるパルスで供給し、2つ以上のパルスのどの間でも他の反応物を導入しない。例えば、一部の実施形態においては、水素含有プラズマなどのプラズマを2つ以上の連続したパルスで供給し、連続したパルスの間にSi前駆体を導入しない。一部の実施形態においては、プラズマ放電を第1の時間供給し、プラズマ放電を第2の時間、例えば、約0.1秒~約10秒、約0.5秒~約5秒、又は約1.0秒~約4.0秒間消し、Si前駆体又はパージステップの前などの別の前駆体又は除去ステップの導入の前にそれを再度第3の時間励起させることによって、プラズマの供給中に2つ以上の連続したプラズマパルスを発生させる。追加のパルスのプラズマを同様に導入することができる。一部の実施形態においては、プラズマをパルスの各々において同じ時間点火する。
【0041】
一部の実施形態においては、約5W~約5000W、10W~約2000W、約50W~約1000W、又は約200W~約800WのRFパワーを印加することによって、プラズマ、例えば、水素含有プラズマを発生させることができる。一部の実施形態においては、RFパワー密度を約0.02W/cm~約2.0W/cm、又は約0.05W/cm~約1.5W/cmとすることができる。RFパワーは、プラズマ接触時間中に流れる、反応室を通って連続的に流れる、及び/又はリモートプラズマ発生装置を通って流れる第2の反応物に印加することができる。したがって、一部の実施形態においては、プラズマをその場所で発生させ、別の実施形態においては、プラズマをリモートで発生させる。一部の実施形態においては、シャワーヘッド反応器を利用し、プラズマをサセプタ(その上に基板が位置する)とシャワーヘッドプレートの間で発生させる。一部の実施形態においては、サセプタとシャワーヘッドプレートの間隔は、約0.1cm~約20cm、約0.5cm~約5cm、又は約0.8cm~約3.0cmである。
【0042】
以前に吸着したケイ素種の分子層をプラズマパルスで完全に飽和させ、プラズマパルスと反応させるのに十分な時間の後に、過剰の反応物及び反応副生物を基板表面から除去する。
【0043】
一部の実施形態においては、過剰の反応物及び反応副生物があればそれらの除去は、反応室のパージを含むことができる。一部の実施形態においては、過剰の反応物及び反応副生物があれば、それらを反応空間から拡散させる又はパージするのに十分な時間キャリアガス又はパージガスを流し続けながら、第2の反応物の流れを停止することによって、反応室をパージすることができる。一部の実施形態においては、過剰の第2の前駆体を、ALDサイクル全体を通して流れるヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを利用してパージする。一部の実施形態においては、基板を第2の反応物を含む反応空間から異なる反応空間に移すことができる。除去は、一部の実施形態においては、約0.1秒~約10秒、約0.1秒~約4秒、又は約0.1秒~約0.5秒とすることができる。全体として、反応種の接触と除去は、SiOC原子層堆積サイクルにおける第2の反応種段階である。
【0044】
2つの段階は一緒に1つのALDサイクルを成し、繰り返されて、所望の厚さのSiOC薄膜を形成する。ALDサイクルは一般に本明細書ではケイ素段階で始まるとするが、別の実施形態においては、サイクルを反応種段階で開始し得ることが企図される。当業者は、第1の前駆体段階が、一般に、前のサイクルの最終段階によって残された終端と反応することを認識するはずである。したがって、反応種段階が第1のALDサイクルにおける第1段階であれば、反応物は、恐らく、基板表面に前もって吸着せず、反応空間にも存在しないが、それに続くサイクルにおいては、反応種段階はケイ素段階に効果的に続く。一部の実施形態においては、1回以上の異なるALDサイクルが堆積プロセスにおいて用意される。
【0045】
本開示の一部の実施形態によれば、PEALD反応を約25℃~約700℃、約50℃~約600℃、約100℃~約450℃、又は約200℃~約400℃の温度で実施することができる。一部の実施形態においては、最適反応器温度を最大許容熱履歴によって制限することができる。したがって、一部の実施形態においては、反応温度は約100℃~約300℃である。一部の適用例においては、最高温度が約200℃であり、したがって、PEALDプロセスはその反応温度で行われる。
【0046】
薄膜が堆積する基板は、種々のタイプの材料を含むことができる。一部の実施形態においては、基板は、集積回路被処理体を含むことができる。一部の実施形態においては、基板はケイ素を含むことができる。一部の実施形態においては、基板は、酸化ケイ素、例えば、熱酸化物を含むことができる。一部の実施形態においては、基板は、高k誘電材料を含むことができる。一部の実施形態においては、基板は炭素を含むことができる。例えば、基板は、無定形炭素層、グラフェン及び/又はカーボンナノチューブを含むことができる。
【0047】
一部の実施形態においては、基板は、W、Cu、Ni、Co及び/又はAlを含めて、ただしそれだけに限定されない金属を含むことができる。一部の実施形態においては、基板は、TiN及び/又はTaNを含めて、ただしそれだけに限定されない金属窒化物を含むことができる。一部の実施形態においては、基板は、TiC及び/又はTaCを含めて、ただしそれだけに限定されない金属炭化物を含むことができる。一部の実施形態においては、基板は、MoS、SbTe及び/又はGeTeを含めて、ただしそれだけに限定されない金属カルコゲニドを含むことができる。一部の実施形態においては、基板は、酸素プラズマプロセスへの暴露によって酸化されるが、本明細書に記載のPEALDプロセスによって酸化されない材料を含むことができる。
【0048】
一部の実施形態においては、本明細書に記載のPEALDプロセスに使用される基板は、有機材料を含むことができる。例えば、基板は、プラスチック、ポリマー及び/又はフォトレジストなどの有機材料を含むことができる。基板が有機材料を含む一部の実施形態においては、PEALDプロセスの反応温度を約200℃未満とすることができる。一部の実施形態においては、反応温度を約150℃未満、約100℃未満、約75℃未満又は約50℃未満とすることができる。
【0049】
基板が有機材料を含む一部の実施形態においては、最高プロセス温度を100℃もの低温とすることができる。基板が有機材料を含む一部の実施形態においては、酸素から発生するプラズマがないと、さもなければ酸素から発生するプラズマを含む堆積プロセスにおいて劣化するかもしれない有機材料上でのSiOC薄膜の堆積を可能にすることができる。
【0050】
本開示の一部の実施形態によれば、処理中の反応室の圧力を約0.01Torr~約50Torr、又は約0.1Torr~約10Torrに維持する。一部の実施形態においては、反応室の圧力は、約6Torr又は約20Torrを超える。一部の実施形態においては、SiOC堆積プロセスを約20Torr~約500Torr、約20Torr~約50Torr、又は約20Torr~約30Torrの圧力で実施することができる。
【0051】
一部の実施形態においては、SiOC堆積プロセスは、複数の堆積サイクルを含むことができ、少なくとも1回の堆積サイクルを高圧領域で行う。例えば、PEALDプロセスの堆積サイクルは、基板をケイ素前駆体及び第2の反応物と高圧下で交互に順次接触させるステップを含むことができる。一部の実施形態においては、PEALDプロセスの1回以上の堆積サイクルを約6Torr~約500Torr、約6Torr~約50Torr、又は約6Torr~約100Torrのプロセス圧力で実施することができる。一部の実施形態においては、1回以上の堆積サイクルを、約20Torr~約500Torr、約30Torr~約500Torr、約40Torr~約500Torr、又は約50Torr~約500Torrを含めて、約20Torrを超えるプロセス圧力で実施することができる。一部の実施形態においては、1回以上の堆積サイクルを約20Torr~約30Torr、約20Torr~約100Torr、約30Torr~約100Torr、約40Torr~約100Torr、又は約50Torr~約100Torrのプロセス圧力で実施することができる。
【0052】
SiOCのPEALD
上述したように、また、以下でより詳細に考察するように、一部の実施形態においては、SiOC薄膜をプラズマエンハンスト原子層堆積(plasma enhanced atomic deposition layer)(PEALD)プロセスによって反応空間において基板上に堆積させることができる。一部の実施形態によれば、SiOC薄膜をPEALDプロセスによってフィン型FET適用例などにおける3次元的形状を有する基板上に堆積させる。一部の実施形態においては、本明細書に記載のPEALDプロセスを種々の用途に使用することができる。例えば、本明細書に記載のPEALDプロセスをハードマスク層、犠牲層、保護層又はlow‐kスペーサの形成に使用することができる。本明細書に記載のPEALDプロセスを、例えば、メモリ素子用途に使用することができる。
【0053】
一部の実施形態においては、Oプラズマに損傷なしに耐えることができない基板、例えば、有機及び/又はフォトレジスト材料を含む基板上に、本明細書に記載の酸素プラズマを含まないPEALDプロセスによって、SiOC薄膜を堆積させることができる。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体及び第2の反応物が窒素を含まないPEALDプロセスによって、SiOC薄膜を堆積させることができる。
【0054】
図1を参照すると、また、一部の実施形態によれば、
ステップ120において、ケイ素種が基板の表面に吸着するように、窒素を含まない気相ケイ素含有前駆体に基板を接触させるステップと、
ステップ130において、過剰のケイ素含有前駆体及び反応副生物があればそれらを基板表面から除去するステップと、
ステップ140において、プラズマによって生成された水素を含む反応種を含む第2の反応物に基板を接触させ、それによって吸着ケイ素種をSiOCに転化させるステップと、
ステップ150において、過剰の第2の反応物及び反応副生物があればそれらを基板表面から除去するステップと、
ステップ160において、任意選択で、接触及び除去ステップを繰り返して、所望の厚さ及び組成のSiOC薄膜を形成するステップと
を含む少なくとも1回のサイクルを含むPEALD堆積プロセス100によって、SiOC薄膜を反応空間において基板上に堆積させる。
【0055】
一部の実施形態においては、ステップ140は、基板を第2の反応物に接触させる前に、プラズマ又は反応種をリモートで生成又は形成するステップを含むことができる。
【0056】
一部の実施形態によれば、SiOCプラズマALD堆積サイクルを使用して、SiOC薄膜を堆積させることができる。ある実施形態においては、複数のSiOC堆積サイクルを含むALD型プロセスによって、SiOC薄膜を基板上に形成する。各SiOC堆積サイクルは、
ケイ素化合物が基板表面に吸着するように、窒素を含まない気相ケイ素反応物に基板を接触させるステップと、
基板をパージガス及び/又は真空に暴露するステップと、
水素を含む第2の反応物中でプラズマを形成することによって生成された反応種に基板を接触させるステップと、
基板をパージガス及び/又は真空に暴露するステップと、
所望の厚さ及び組成のSiOC薄膜が得られるまで、接触及び暴露ステップを任意選択で繰り返すステップと
を含む。
【0057】
一部の実施形態においては、基板をパージガス及び/又は真空に暴露するステップは、前駆体又は反応物の流れを停止している間に不活性キャリアガスの流れを継続するステップを含むことができる。一部の実施形態においては、基板をパージガス及び/又は真空に暴露するステップは、反応室への前駆体及びキャリアガスの流れを停止するステップと、例えば真空ポンプによって、反応室を排気するステップとを含むことができる。一部の実施形態においては、基板をパージガス及び/又は真空に暴露するステップは、基板を第1の反応室からパージガスを含む第2の異なる反応室に移すステップを含むことができる。一部の実施形態においては、基板をパージガス及び/又は真空に暴露するステップは、基板を第1の反応室から減圧下の第2の異なる反応室に移すステップを含むことができる。一部の実施形態においては、反応種は、窒素を含まなくてもよい。
【0058】
一部の実施形態によれば、
ケイ素種が基板の表面に吸着するように基板をBTESEに接触させるステップと、
過剰のBTESE及び反応副生物があればそれらを基板表面から除去するステップと、
プラズマによって生成された反応種を含む第2の反応物に基板を接触させ、反応種が水素を含むステップと、
過剰の第2の反応物及び反応副生物があればそれらを基板表面から除去するステップと、
任意選択で接触及び除去ステップを繰り返して、所望の厚さ及び組成のSiOC薄膜を形成するステップと
を含む少なくとも1回のサイクルを含むPEALD堆積プロセスによって、SiOC薄膜を反応空間において基板上に堆積させる。
【0059】
一部の実施形態においては、基板を第2の反応物に接触させるステップは、基板を第2の反応物に接触させる前にプラズマ又は反応種をリモートで生成又は形成するステップを含むことができる。一部の実施形態においては、反応種は、窒素を含まなくてもよい。
【0060】
ある実施形態においては、複数のSiOC堆積サイクルを含むALD型プロセスによってSiOC薄膜を基板上に形成し、各SiOC堆積サイクルは、窒素を含まない第1の気相ケイ素前駆体及び反応種を含む第2の反応物に基板を交互に順次接触させるステップを含む。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体はBTESEを含むことができ、第2の反応種は水素を含むことができる。一部の実施形態においては、第2の反応種は、窒素を含まなくてもよい。一部の実施形態においては、第2の反応種は、上述したように、比較的少量の窒素を含むことができる。
【0061】
一部の実施形態によれば、
ケイ素種が基板の表面に吸着するように基板をMPTMSに接触させるステップと、
過剰のMPTMS及び反応副生物があればそれらを基板表面から除去するステップと、
プラズマによって生成された反応種を含む第2の反応物に基板を接触させ、反応種が水素を含むステップと、
過剰の第2の反応物及び反応副生物があればそれらを基板表面から除去するステップと、
任意選択で接触及び除去ステップを繰り返して、所望の厚さ及び組成のSiOC薄膜を形成するステップと
を含む少なくとも1回のサイクルを含むPEALD堆積プロセスによって、SiOC薄膜を反応空間において基板上に堆積させる。
【0062】
一部の実施形態においては、基板を第2の反応物に接触させるステップは、基板を第2の反応物に接触させる前にプラズマ又は反応種をリモートで生成又は形成するステップを含むことができる。一部の実施形態においては、反応種は、窒素を含まなくてもよい。
【0063】
ある実施形態においては、複数のSiOC堆積サイクルを含むALD型プロセスによってSiOC薄膜を基板上に形成し、各SiOC堆積サイクルは、窒素を含まない第1の気相ケイ素前駆体及び反応種を含む第2の反応物に基板を交互に順次接触させるステップを含む。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体はBTESEを含むことができ、第2の反応種は水素を含むことができる。一部の実施形態においては、第2の反応種は、窒素を含まなくてもよい。一部の実施形態においては、第2の反応種は、上述したように、比較的少量の窒素を含むことができる。
【0064】
一部の実施形態によれば、SiOCプラズマALD堆積サイクルを使用して、SiOC薄膜を堆積させることができる。ある実施形態においては、複数のSiOC堆積サイクルを含むALD型プロセスによって、SiOC薄膜を基板上に形成する。各SiOC堆積サイクルは、
ケイ素化合物が基板表面に吸着するように、窒素を含まない気相ケイ素反応物に基板を接触させるステップと、
基板をパージガス及び/又は真空に暴露するステップと、
水素を含み、窒素も含むことができる第2の反応物中でプラズマを形成することによって生成された反応種に基板を接触させるステップと、
基板をパージガス及び/又は真空に暴露するステップと、
所望の厚さ及び組成のSiOC薄膜が得られるまで、接触及び暴露ステップを任意選択で繰り返すステップと
を含む。
【0065】
ある実施形態においては、複数のSiOC堆積サイクルを含むALD型プロセスによってSiOC薄膜を基板上に形成し、各SiOC堆積サイクルは、窒素を含まない第1の気相ケイ素前駆体及び反応種を含む第2の反応物に基板を交互に順次接触させるステップを含む。
【0066】
一部の実施形態においては、PEALDプロセスを約100℃~約650℃、約100℃~約550℃、約100℃~約450℃、約200℃~約600℃、又は約200℃~約400℃の温度で実施する。一部の実施形態においては、温度は約300℃である。一部の実施形態においては、温度は約200℃である。一部の実施形態においては、例えば、基板が有機フォトレジストなどの有機材料を含む場合、PEALDプロセスを約100℃未満の温度で実施することができる。一部の実施形態においては、PEALDプロセスを約75℃未満又は約50℃未満の温度で実施する。一部の実施形態においては、RFパワーを第2の反応物に印加することによってプラズマを発生させることができる。RFパワーを第2の反応物に印加し、それによって反応種を生成させることができる。一部の実施形態においては、反応室を連続的に流れる、及び/又はリモートプラズマ発生装置を流れる第2の反応物にRFパワーを印加することができる。したがって、一部の実施形態においては、プラズマをその場所で発生させ、別の実施形態においては、プラズマをリモートで発生させる。一部の実施形態においては、第2の反応物に印加されるRFパワーは、約5W~約5000W、10W~約2000W、約100W~約1000W、又は約200W~約800Wである。一部の実施形態においては、第2の反応物に印加されるRFパワーは、約200Wである。一部の実施形態においては、第2の反応物に印加されるRFパワーは、約400Wである。一部の実施形態においては、第2の反応物に印加されるRFパワーは、約800Wである。
【0067】
以下でより詳細に考察するように、SiOC膜を堆積させる一部の実施形態においては、1回以上のPEALD堆積サイクルをケイ素前駆体、続いて第2の反応物の供給によって開始する。別の実施形態においては、第2の反応物、続いてケイ素前駆体の供給によって堆積を開始することができる。当業者は、第1の前駆体段階が、一般に、前のサイクルの最終段階によって残された終端と反応することを認識するはずである。したがって、反応種段階が第1のPEALDサイクルにおける第1段階であれば、反応物は、恐らく、基板表面に前もって吸着せず、反応空間にも存在しないが、それに続くPEALDサイクルにおいては、反応種段階はケイ素段階に効果的に続く。一部の実施形態においては、1回以上の異なるPEALDサブサイクルが、SiOC薄膜を形成するプロセスにおいて用意される。
【0068】
Si前駆体
幾つかの異なる適切なSi前駆体を、本開示のPEALDプロセスに使用することができる。一部の実施形態においては、適切なSi前駆体は、窒素を含まなくてもよい。一部の実施形態においては、適切なSi前駆体は、シランを含むことができる。
【0069】
一部の実施形態においては、適切なSi前駆体は、少なくとも1個の炭化水素基によって連結された、又は少なくとも1個の炭化水素基に結合した、2個のSi原子を含むことができる。一部の実施形態においては、適切なSi前駆体は、少なくとも1個のアルキル基によって連結された、又は少なくとも1個のアルキル基に結合した、2個のSi原子を含むことができる。一部の実施形態においては、適切なSi前駆体は、少なくとも1個のアルコキシ基によって連結された、又は少なくとも1個のアルコキシ基に結合した、2個のSi原子を含むことができる。一部の実施形態においては、適切なSi前駆体は、少なくとも1個のシリル基によって連結された、又は少なくとも1個のシリル基に結合した、2個のSi原子を含むことができる。一部の実施形態においては、適切なSi前駆体は、少なくとも1個のシリルエーテル基によって連結された、又は少なくとも1個のシリルエーテル基に結合した、2個のSi原子を含むことができる。一部の実施形態においては、適切なSi前駆体は、少なくとも1個の-SH基を含むことができ、-SHは、アルキル鎖又はケイ素原子に結合することができる。一部の実施形態においては、適切なSi前駆体は、少なくとも1個のメルカプト基を含むことができる。一部の実施形態においては、適切なSi前駆体は、少なくとも1個の-R-SH構造を含むことができ、式中、RはC~Cアルキル基とすることができる。一部の実施形態においては、適切なSi前駆体は、アルキル鎖上の少なくとも1個の-SH基、及びケイ素原子に結合した1個以上のアルコキシ基を含むことができる。
【0070】
一部の実施形態においては、適切なSi前駆体は、1個以上のアルコキシ基に付加又は結合した少なくとも1個のSi原子を含むことができる。一部の実施形態においては、適切なSi前駆体は、1個以上のアルキル基に付加又は結合した少なくとも1個のSi原子を含むことができる。一部の実施形態においては、適切なSi前駆体は、少なくともアルキル基及びアルコキシ基に付加又は結合した少なくとも1個のSi原子を含むことができる。
【0071】
一部の実施形態においては、PEALDプロセスによるSiOCの堆積に適した少なくとも幾つかのSi前駆体は、以下の一般式の架橋アルコキシシランを含むことができる。
【0072】
(1) (RIIO)Si-R-Si(ORII
【0073】
式中、R及びRIIの各々は、独立に選択されるアルキル基とすることができる。一部の実施形態においては、R及びRIIの各々は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tertブチル、ペンチルなどの独立に選択されるC~Cアルキルリガンドである。
【0074】
一部の実施形態によれば、一部のSi前駆体は、以下の一般式の架橋アルコキシアルキルシランを含むことができる。
【0075】
(2) RIII (ORIISi-R-Si(ORIIIII
【0076】
式中、R、RII及びRIIIの各々は、独立に選択されるアルキル基とすることができ、x+y=3である。一部の実施形態においては、R及びRIIの各々は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tertブチル、ペンチルなどの独立に選択されるC~Cアルキルリガンドである。一部の実施形態においては、RIIIは、独立に選択されるC~Cアルキルリガンドとすることができる。
【0077】
一部の実施形態によれば、一部のSi前駆体は、以下の一般式の環状アルコキシシランを含むことができる。
【0078】
(3) (RIIO)Si-R -Si(ORII
【0079】
式(3)は、下記構造式で表すこともできる。
【0080】
【化1】
【0081】
式中、R及びRIIの各々は、独立に選択されるアルキル基とすることができる。一部の実施形態においては、R及びRIIの各々は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tertブチル、ペンチルなどの独立に選択されるC~Cアルキルリガンドである。
【0082】
一部の実施形態によれば、一部のSi前駆体は、以下の一般式の環状アルコキシアルキルシランを含むことができる。
【0083】
(4) RIII (ORIISi-R -Si(ORIIIII
【0084】
式(4)は、下記構造式で表すこともできる。
【0085】
【化2】
【0086】
式中、R、RII及びRIIIの各々は、独立に選択されるアルキル基とすることができ、x+y=2である。一部の実施形態においては、R及びRIIの各々は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tertブチル、ペンチルなどの独立に選択されるC~Cアルキルリガンドである。一部の実施形態においては、RIIIは、独立に選択されるC~Cアルキルリガンドとすることができる。
【0087】
一部の実施形態によれば、一部のSi前駆体は、以下の一般式の直鎖アルコキシシランを含むことができる。
【0088】
(5) (RIIO)Si-(O-Si-R -O-Si(ORII
【0089】
式中、Rは、独立に選択されるアルキル基又は水素とすることができ、RIIは、独立に選択されるアルキル基とすることができ、n=1~4である。一部の実施形態においては、R及びRIIの各々は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tertブチル、ペンチルなどの独立に選択されるC~Cアルキルリガンドである。一部の実施形態においては、Rは水素とすることができ、RIIは独立に選択されるC~Cアルキルリガンドとすることができる。
【0090】
一部の実施形態によれば、一部のSi前駆体は、以下の一般式の直鎖アルコキシシランを含むことができる。
【0091】
(6) RIII (ORIISi-(-R-Si)-Si(ORIIIII
【0092】
式中、R、RII及びRIIIの各々は、独立に選択されるアルキル基とすることができ、x+y=2であり、nは1以上とすることができる。一部の実施形態においては、R及びRIIは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tertブチル、ペンチルなどの独立に選択されるC~Cアルキルリガンドである。一部の実施形態においては、RIIIは、独立に選択されるC~Cアルキルリガンドとすることができる。
【0093】
一部の実施形態によれば、一部のSi前駆体は、以下の一般式のアルコキシシランを含むことができる。
【0094】
(7) Si(OR
【0095】
式中、Rは、独立に選択されるアルキル基とすることができる。一部の実施形態においては、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tertブチル、ペンチルなどの独立に選択されるC~Cアルキルリガンドとすることができる。
【0096】
一部の実施形態によれば、一部のSi前駆体は、以下の一般式のアルコキシアルキルシランを含むことができる。
【0097】
(8) Si(OR4-xII
【0098】
式中、R及びRIIの各々は、独立に選択されるアルキル基とすることができ、x=1~3である。一部の実施形態においては、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tertブチル、ペンチルなどの独立に選択されるC~Cアルキルリガンドとすることができる。一部の実施形態においては、RIIは、独立に選択されるC~Cアルキルリガンドとすることができる。
【0099】
一部の実施形態によれば、一部のSi前駆体は、窒素を含まない以下の一般式を有するアルコキシシランを含むことができる。
【0100】
(9) Si(OR4-xII
【0101】
式中、Rは、独立に選択されるアルキル基とすることができ、RIIは、炭素、水素及び/又は酸素を含み、窒素を含まない任意のリガンドとすることができ、x=1~3である。一部の実施形態においては、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tertブチル、ペンチルなどの独立に選択されるC~Cアルキルリガンドとすることができる。一部の実施形態においては、RIIは、例えば、アルケニル、アルキニル、フェニル、カルボニル、アルデヒド、エステル、エーテル、カルボキシル、ペルオキシ、ヒドロペルオキシ、チオール、アクリラート又はメタクリラートリガンドを含むことができる。
【0102】
一部の実施形態によれば、一部のSi前駆体は以下の一般式を有することができる。
【0103】
(10) Si(OR4-xII
【0104】
式中、x=0~3であり、Rは、独立に選択されるC~C又はC~Cアルキルリガンドとすることができ、RIIは、炭素及び/又は水素及び/又は酸素からなる独立に選択されるリガンドとすることができる。例えば、一部の実施形態においては、RIIは、アルコキシアルキル基とすることができる。一部の実施形態においては、RIIは、例えば、アルケニル、アルキニル、フェニル、カルボニル、アルデヒド、エステル、エーテル、カルボキシル、ペルオキシ又はヒドロペルオキシ基とすることができる。一部の実施形態においては、例えば、Rはメチル基であり、RIIは3-メトキシプロピルリガンドであり、xは1である。
【0105】
一部の実施形態によれば、一部のSi前駆体は以下の一般式を有することができる。
【0106】
(11) (RO)4-xSi-(RII-O-RIII
【0107】
式中、x=0~3であり、R及びRIIの各々は、独立に選択されるC~C又はC~Cアルキルリガンドとすることができ、RIIIは、炭素及び/又は水素及び/又は酸素からなる独立に選択されるリガンドとすることができる。例えば、一部の実施形態においては、RIIIは、例えば、アルケニル、アルキニル、フェニル、カルボニル、アルデヒド、エステル、エーテル、カルボキシル、ペルオキシ又はヒドロペルオキシ基とすることができる。一部の実施形態においては、例えば、R、RII及びRIIIは各々、メチル、エチル、i-プロピル、n-プロピル、n-ブチル、i-ブチル及びt-ブチルから独立に選択される基とすることができる。
【0108】
一部の実施形態によれば、一部のSi前駆体は以下の一般式を有することができる。
【0109】
(12) Si(R4-x-yII III
【0110】
式中、x+y=0~4であり、Rは、1~5個の炭素原子を有するアルコキシドリガンド、又はハロゲン化物であり、RIIは、硫黄を含む任意のリガンドであり、RIIIは、スルフヒドリル、スルフィド、ジスルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルフィノ、スルホ、チオシアナート、イソチオシアナート又はカルボノチオイル官能基の1種からなる。一部の実施形態においては、R、RII及びRIIIを各々独立に選択することができる。一部の実施形態においては、Rはメトキシリガンドを含むことができ、RIIは3-メルカプトプロピルを含むことができ、x=1、及びy=0である。すなわち、一部の実施形態においては、一部のSi前駆体は、Si(OCHSHを含むことができる。一部の実施形態においては、Si前駆体は、メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン及び/又は3-メルカプトプロピルトリエトキシシランを含むことができる。
【0111】
一部の実施形態においては、ケイ素前駆体はハロゲンを含まない。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体は窒素を含まない。一部の実施形態においては、炭素鎖は、不飽和とすることができ、二重炭素-炭素結合を含むことができる。幾つかの別の実施形態においては、炭素鎖は、炭素及び水素以外の原子を含むことができる。一部の実施形態によれば、適切なケイ素前駆体は、一般式(1)~(11)のいずれかを有する化合物を少なくとも含むことができる。図2は、上記式(1)~(11)の適切なSi前駆体の例示的な分子構造を示す。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体は、ビス(トリエトキシシリル)エタン(BTESE)を含むことができる。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体は、3-メトキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS、すなわちSi(OCHOCH)を含むことができる。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体は、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランを含むことができる。
【0112】
一部の実施形態においては、1種を超えるケイ素前駆体を、ALD段階中に同時に基板表面に接触させることができる。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体は、本明細書に記載の1種を超えるケイ素前駆体を含むことができる。一部の実施形態においては、第1のケイ素前駆体を第1のALDサイクルに使用し、第2の異なるALD前駆体をその後のALDサイクルに使用する。一部の実施形態においては、例えば、堆積SiOC膜のある種の性質を最適化するために、複数のケイ素前駆体を単一のALD段階中に使用することができる。一部の実施形態においては、堆積中に1種のケイ素前駆体のみを基板に接触させることができる。一部の実施形態においては、1種のケイ素前駆体及び1種の第2の反応物又は第2の反応物の組成物のみが堆積プロセス中に存在し得る。一部の実施形態においては、堆積プロセス中に金属前駆体が存在しない。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体をシリル化剤として使用しない。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体接触ステップの堆積温度及び/又は期間を、ケイ素前駆体が分解しないように選択する。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体は、ケイ素前駆体接触ステップ中に分解してもよい。一部の実施形態においては、ケイ素前駆体は、塩素、フッ素などのハロゲンを含まない。
【0113】
第2の反応物
上述したように、本開示に従ってSiOCを堆積させるための第2の反応物は、反応種を含むことができる水素前駆体を含むことができる。一部の実施形態においては、反応種としては、ラジカル、プラズマ及び/又は励起原子若しくは種が挙げられるが、それだけに限定されない。こうした反応種は、例えば、プラズマ放電、熱線又は別の適切な方法によって生成することができる。一部の実施形態においては、反応種は、反応室から遠隔で、例えば、反応室の上流で生成することができる(「リモートプラズマ」)。一部の実施形態においては、反応種は、反応室において、基板のすぐ近くで、又は直接基板上で生成することができる(「ダイレクトプラズマ」)。
【0114】
PEALDプロセスの適切なプラズマ組成物としては、水素反応種、すなわち、何らかの形の水素のプラズマ、ラジカル、又は原子状水素が挙げられる。一部の実施形態においては、第2の反応物は、少なくとも部分的にHから形成された反応種を含むことができる。一部の実施形態においては、プラズマは、He、Ne、Ar、Kr及びXe、又はAr若しくはHeなどの貴ガスも、プラズマの形で、ラジカルとして、又は原子の形で含むことができる。
【0115】
一部の実施形態においては、第2の反応物は、Hから形成される反応種を含むことができる。一部の実施形態においては、第2の反応物は、約25原子%(at%)を超える水素、約50原子%を超える水素、約75原子%を超える水素、約85原子%を超える水素、約90原子%を超える水素、約95原子%を超える水素、約96原子%、97原子%、98原子%を超える、又は約99原子%を超える水素を含むガスから生成することができる。
【0116】
一部の実施形態においては、プラズマなどの反応種の生成に使用されるガスは、本質的に水素からなることができる。したがって、一部の実施形態においては、第2の反応物は、本質的に水素プラズマ、水素のラジカル、又は原子状水素からなることができる。一部の実施形態においては、第2の反応物は、約25原子%を超える水素、約50原子%を超える水素、75原子%、約85原子%を超える、約90原子%を超える、約95原子%を超える、約96原子%を超える、97原子%、98原子%、又は約99原子%を超える水素プラズマ、水素のラジカル、又は原子状水素を含むことができる。一部の実施形態においては、第2の反応物は、少なくとも部分的に、H及び1種以上の別のガスから形成することができ、H及び別のガス(単数又は複数)は、約1:1000~約1000:1以上の流量比(H/別のガス(単数又は複数))で供給される。一部の実施形態においては、流量比(H/別のガス(単数又は複数))は、約1:1000を超える、約1:100を超える、約1:50を超える、約1:20を超える、約1:10を超える、約1:6を超える、約1:3を超える、約1:1を超える、約3:1を超える、約6:1を超える、約10:1を超える、約20:1を超える、50:1、100:1、又は1000:1以上とすることができる。
【0117】
一部の実施形態においては、第2の反応物は、酸素から生成する種を含まない。したがって、一部の実施形態においては、反応種は、酸素を含むガスから生成しない。一部の実施形態においては、反応種を含む第2の反応物は、酸素を含まないガスから生成する。例えば、一部の実施形態においては、第2の反応物は、酸素を含まないガスから発生したプラズマを含むことができる。幾つかの他の実施形態においては、第2の反応物は、約50原子%(at%)未満の酸素、約30原子%未満の酸素、約10原子%未満の酸素、約5原子%未満の酸素、約1原子%未満の酸素、約0.1原子%未満の酸素、約0.01原子%未満の酸素、又は約0.001原子%未満の酸素を含むガスから生成することができる。一部の実施形態においては、第2の反応物は、O、HO又はOを含まない。
【0118】
一部の実施形態においては、水素プラズマは、酸素含有種(例えば、酸素イオン、ラジカル、原子状酸素)を含まなくてもよい、又は実質的に含まなくてもよい。例えば、酸素含有ガスを水素プラズマの発生に使用しない。一部の実施形態においては、酸素含有ガス(例えば、Oガス)を水素プラズマステップ中に反応室に流さない。
【0119】
一部の実施形態においては、酸素含有ガスを水素プラズマの発生に使用しない。一部の実施形態においては、酸素含有ガス(例えば、Oガス)を水素プラズマステップ中に反応室に流さない。
【0120】
一部の実施形態においては、第2の反応物は、窒素から生成する種を含まない。したがって、一部の実施形態においては、反応種は、窒素を含むガスから生成しない。一部の実施形態においては、反応種を含む第2の反応物は、窒素を含まないガスから生成する。例えば、一部の実施形態においては、第2の反応物は、窒素を含まないガスから発生したプラズマを含むことができる。一部の実施形態においては、第2の反応物は、約25原子%(at%)未満の窒素、約20原子%未満の窒素、約15原子%未満の窒素、約10原子%未満の窒素、約5原子%未満の窒素、約1原子%未満の窒素、約0.1原子%未満の窒素、約0.01原子%未満の窒素、又は約0.001原子%未満の窒素を含むガスから生成することができる。一部の実施形態においては、第2の反応物は、N、NH又はNを含まない。
【0121】
一部の実施形態においては、水素プラズマは、窒素含有種(例えば、窒素イオン、ラジカル、原子状窒素)を含まなくてもよい、又は実質的に含まなくてもよい。例えば、窒素含有ガスを水素プラズマの発生に使用しない。一部の実施形態においては、窒素含有ガス(例えば、Nガス)を水素プラズマステップ中に反応室に流さない。
【0122】
しかし、幾つかの他の実施形態においては、何らかの形の窒素のプラズマ、ラジカル、又は原子状窒素の形の窒素反応種も供給する。したがって、一部の実施形態においては、第2の反応物は、NH、NなどのNとHの両方を有する化合物、N/Hの混合物、又はN-H結合を有する他の前駆体から形成された反応種を含むことができる。一部の実施形態においては、第2の反応物を、少なくとも部分的に、Nから形成することができる。一部の実施形態においては、第2の反応物を、少なくとも部分的に、H及びNから形成することができ、HとNを、約100:1~約1:100、約20:1~約1:20、約10:1~約1:10、約5:1~約1:5、及び/又は約2:1~約4:1、ある場合には1:1の流量比(H/N)で供給する。例えば、SiOCを堆積させるための水素含有プラズマを、NとHの両方を本明細書に記載の1つ以上の比で使用して生成させることができる。
【0123】
一部の実施形態においては、プラズマなどの反応種の生成に使用されるガスは、本質的にアルゴン又は別の貴ガスからなることができる。一部の実施形態においては、水素含有プラズマの発生に使用するプラズマ出力を、約5ワット(W)~約5000W、10W~約2,000W、約50W~約1000W、約100W~約1000W、又は約100W~約500Wとすることができる。一部の実施形態においては、水素含有プラズマの発生に使用するプラズマ出力を約100W~約300Wとすることができる。一部の実施形態においては、水素含有プラズマは、アルゴン又は別の貴ガスも含むことができる。
【0124】
SiOC膜特性
本明細書で述べる実施形態の幾つかによって堆積したSiOC薄膜では、不純物レベル又は濃度を約3原子%未満、約1原子%未満、約0.5原子%未満又は約0.1原子%未満にすることができる。幾つかの薄膜においては、水素を除いた全不純物レベルを約5原子%未満、約2原子%未満、約1原子%未満又は約0.2原子%未満にすることができる。さらに、幾つかの薄膜においては、水素レベルを約30原子%未満、約20原子%未満、約15原子%未満又は約10原子%未満にすることができる。本明細書では、不純物をSi、O及び/又はC以外の任意の元素と考えることができる。一部の実施形態においては、薄膜は、アルゴンを含まない。
【0125】
一部の実施形態においては、堆積SiOC膜は、測定可能な量の水素を含まない。しかし、一部の実施形態においては、水素を含むSiOC膜が堆積する。一部の実施形態においては、堆積SiOC膜は、約30原子%未満、約20原子%未満、約15原子%未満、約10原子%未満又は約5原子%未満の水素を含む。一部の実施形態においては、薄膜は、アルゴンを含まない。
【0126】
一部の実施形態によれば、SiOC薄膜は、約50%を超える、約80%を超える、約90%を超える、又は約95%を超えるステップカバレッジ及びパターンローディング効果を示すことができる。ある場合には、ステップカバレッジ及びパターンローディング効果は約98%を超え、ある場合には約100%とすることができる(測定ツール又は方法の精度内で)。一部の実施形態においては、ステップカバレッジ及びパターンローディング効果は、約100%を超え、約110%を超え、約120%を超え、約130%を超え、又は約140%を超え得る。これらの値は、アスペクト比が2以上、一部の実施形態においてはアスペクト比が約3以上、一部の実施形態においてはアスペクト比が約5以上、一部の実施形態においてはアスペクト比が約8以上の形状で得ることができる。
【0127】
一部の実施形態においては、ステップカバレッジは、約50%~約110%、約80%~約110%、約90%~約110%、約95%~110%、約98%~110%、又は約100%~110%であり得る。一部の実施形態においては、ステップカバレッジは、約50%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約95%~100%、又は約98%~100%であり得る。
【0128】
一部の実施形態においては、膜の成長速度は、約0.01Å/サイクル~約5Å/サイクル、約0.05Å/サイクル~約2Å/サイクルである。一部の実施形態においては、膜の成長速度は、約0.05Å/サイクルを超え、約0.1Å/サイクルを超え、約0.15Å/サイクルを超え、約0.3Å/サイクルを超え、約0.3Å/サイクルを超え、約0.4Å/サイクルを超える。本明細書では「パターンローディング効果」をこの分野におけるその通常の意味で使用する。パターンローディング効果は、不純物含有量、密度、電気的性質及びエッチ速度に関して認めることができるが、別段の記載がない限り、本明細書で使用するパターンローディング効果という用語は、構造が存在する基板の領域における膜厚の変化を指す。すなわち、パターンローディング効果は、オープンフィールドに面した3次元構造体/形状の側壁又は底部の上の膜厚に対する、3次元構造体内部の形状の側壁又は底部における膜厚として示すことができる。本明細書では、100%のパターンローディング効果(又は比が1)は、形状にかかわらず基板全体のほぼ完全に均一な膜特性を表し、すなわち、換言すれば、パターンローディング効果(形状対オープンフィールドにおける厚さなどの特定の膜特性の相違)がない。
【0129】
一部の実施形態においては、SiOC膜は、約3nm~約50nm、約5nm~約30nm、約5nm~約20nmの厚さで堆積する。これらの厚さは、約100nm未満、約50nm、約30nm未満、約20nm未満、ある場合には約15nm未満の形状サイズ(幅)で得ることができる。一部の実施形態によれば、SiOC膜は3次元構造体上に堆積し、側壁における厚さは10nmをわずかに超えることができる。一部の実施形態においては、50nmを超えるSiOC膜が堆積し得る。一部の実施形態においては、100nmを超えるSiOC膜が堆積し得る。一部の実施形態においては、SiOC膜は、約1nmを超える、約2nmを超える、約3nmを超える、約5nmを超える、約10nmを超える厚さで堆積する。
【0130】
一部の実施形態によれば、種々のウェットエッチ速度(WER:wet etch rate)のSiOC膜を堆積させることができる。0.5重量%dHFにおける包括的(blanket)WER(nm/min)を用いるときには、SiOC膜のWER値を約5未満、約4未満、約2未満又は約1未満にすることができる。一部の実施形態においては、SiOC膜のWER値を1よりもかなり小さくすることができる。一部の実施形態においては、SiOC膜のWER値を約0.3未満、約0.2未満又は約0.1未満にすることができる。一部の実施形態においては、SiOC膜のWER値を約0.05未満、約0.025未満又は約0.02未満にすることができる。
【0131】
熱酸化物のWERに対する0.5重量%dHFにおける包括的WER(nm/min)(WERR)を約3未満、約2未満、約1未満又は約0.5未満にすることができる。一部の実施形態においては、TOXのWERに対する0.5重量%dHFにおける包括的WERを約0.1未満にすることができる。
【0132】
PEALDプロセスを約100℃未満の温度で実施する一部の実施形態においては、熱酸化物のWERに対する0.5重量%dHFにおける包括的WER(nm/min)を約10未満、約5未満、約3未満及び約2未満又は約1未満にすることができる。
【0133】
さらに、一部の実施形態においては、0.5重量%dHFにおいてフィン、トレンチなどの3次元形状の上面などのほぼ水平表面に堆積したSiOC膜のエッチ速度に対する、フィン、トレンチなどのほぼ垂直の3次元形状の上に堆積したSiOC膜の側壁エッチ速度、例えば、WERの比を、約1~約2、約2~約5、約5~約10、約10~約20、又はある場合には約20以上にすることができる。一部の実施形態においては、3次元形状の垂直表面に堆積したSiOC膜のWERと3次元形状の上面に堆積したSiOC膜のWERの比を、約2以上、約5以上、約10以上、約15以上又は約20以上にすることができる。
【0134】
一部の実施形態においては、3次元形状のほぼ垂直な表面、例えば、側壁表面の上又は中に堆積したSiOC膜のWERと、3次元形状のほぼ水平な表面、例えば、上面の上又は中に堆積したSiOC膜のWERの比を、約1~約0.5、約0.5~約0.2、約0.2~約0.1、約0.1~約0.05、ある場合には約0.05未満にすることができる。一部の実施形態においては、3次元形状のほぼ垂直な表面に堆積したSiOC膜のWERと、3次元形状のほぼ水平な表面に堆積したSiOC膜のWERの比を、約0.5以下、約0.2以下、約0.1以下又は約0.05以下にすることができる。
【0135】
一部の実施形態においては、3次元形状のほぼ垂直な表面、例えば、側壁表面の上又は中に堆積したSiOC膜のWERと、TOXのWERの比を、約5~約10、約2~約5、約1~約2、約0.5~約1、又は約0.1~約0.5にすることができる。一部の実施形態においては、3次元形状のほぼ垂直な表面、例えば、側壁表面の上又は中に堆積したSiOC膜のWERと、TOXのWERの比を、約0.1以上、約0.5以上、約1以上、約2以上、約5以上又は約10以上にすることができる。
【0136】
一部の実施形態においては、本明細書に記載の1つ以上のプロセスによって形成されたSiOCでは、有利には、ほぼ垂直な領域のWERとほぼ水平な領域のWERの比を、例えば0.5重量%dHFにおいて、約1にすることができる。例えば、基板表面の3次元構造体のほぼ垂直な表面(例えば、側壁表面)に形成されたSiOC薄膜のウェットエッチ速度とほぼ水平な表面(例えば、上面)に形成されたSiOC薄膜のウェットエッチ速度の比を同じ又はほぼ同じにすることができる。一部の実施形態においては、比を約4~約0.5、約2~約0.75、約1.25~約0.8、又は約1.1~約0.9にすることができる。これらの比をアスペクト比が約2以上、約3以上、約5以上、更には約8以上の形状で得ることができる。
【0137】
一部の実施形態においては、本明細書に記載の1つ以上のプロセスによって形成されるSiOCは、有利には、水平領域と垂直領域のWERRを、例えば0.5重量%dHFにおいて、約1にすることができる。例えば、基板表面の3次元構造体の水平表面(例えば、上面)の上に形成されたSiOC薄膜のウェットエッチ速度と垂直表面(例えば、側壁表面)の上に形成されたSiOC薄膜のウェットエッチ速度との比を同じ又はほぼ同じにすることができる。一部の実施形態においては、比を約0.25~約2、約0.5~約1.5、約0.75~約1.25、又は約0.9~約1.1にすることができる。これらの比をアスペクト比が約2以上、約3以上、約5以上、更には約8以上の形状で得ることができる。
【0138】
一部の実施形態においては、本開示に係るSiOC膜のエッチングの量を、0.5重量%HF浸漬プロセスにおいて熱SiO(TOX)で認められたエッチングの量の約1分の1、2分の1、5分の1、10分の1以下にすることができる(例えば、約2から約3nmのTOXを除去するプロセスにおいては、本明細書に開示した方法によって堆積したときに、約1分の1、2分の1、5分の1、10分の1以下のSiOCを除去する)。
【0139】
一部の実施形態においては、約2nm未満のSiOC膜を、エッチング時間5分の0.5重量%HF浸漬プロセスで除去することができる。一部の実施形態においては、約2nm未満のSiOC膜を、エッチング時間60分の0.5重量%HF浸漬プロセスで除去することができる。
【0140】
一部の実施形態においては、本開示に係るSiOC膜のエッチングの量を、0.5重量%HF浸漬プロセスにおいて熱SiO(TOX)で認められたエッチングの量の約1分の1、2分の1、5分の1、10分の1以下にすることができる(例えば、約2から約3nmのTOXを除去するプロセスにおいては、本明細書に開示した方法によって堆積したときに、約1分の1、2分の1、5分の1、10分の1以下のSiOCを除去する)。
【0141】
一部の実施形態においては、約2nm未満のSiOC膜を、エッチング時間5分の0.5重量%HF浸漬プロセスで除去することができる。一部の実施形態においては、約2nm未満のSiOC膜を、エッチング時間60分の0.5重量%HF浸漬プロセスで除去することができる。
【0142】
本明細書に記載のすべての原子百分率(すなわち、原子%)値は、簡潔にするために、また、水素を定量的に正確に分析することが困難であるので、別段の記載がない限り、水素を除外する。しかし、一部の実施形態においては、水素を妥当な精度で分析できる場合、膜の水素含有量は、約20原子%未満、約10原子%未満又は約5原子%未満である。一部の実施形態においては、堆積SiOC薄膜は、原子基準(原子%)で最高約70%の酸素を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOC膜は、原子基準で約10%~約70%、約15%~約50%、又は約20%~約40%の酸素を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOC膜は、原子基準で少なくとも約20%、約40%又は約50%の酸素を含むことができる。
【0143】
一部の実施形態においては、堆積SiOC薄膜は、原子基準(原子%)で最高約40%の炭素を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOC膜は、原子基準で約0.1%~約40%、約0.5%~約40%、約1%~約30%、又は約5%~約20%の炭素を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOC膜は、原子基準で少なくとも約1%、約10%又は約20%の炭素を含むことができる。
【0144】
一部の実施形態においては、堆積SiOC薄膜は、原子基準(原子%)で最高約50%のケイ素を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOC膜は、原子基準で約10%~約50%、約15%~約40%、又は約20%~約35%のケイ素を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOC膜は、原子基準で少なくとも約15%、約20%、約25%又は約30%のケイ素を含むことができる。
【0145】
一部の実施形態においては、堆積SiOC薄膜は、原子基準(原子%)で最高約40%の硫黄を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOC膜は、原子基準で約0.01%~約40%、約0.1%~約40%、約0.5%~約30%、又は約1%~約20%の硫黄を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOC膜は、原子基準で少なくとも約1%、約10%又は約20%の硫黄を含むことができる。
【0146】
一部の実施形態においては、堆積SiOC膜は、測定可能な量の窒素を含まない。しかし、一部の実施形態においては、窒素を含むSiOC膜が堆積する。一部の実施形態においては、堆積SiOC膜は、約30原子%未満、約20原子%未満、約15原子%未満、約10原子%未満、約5原子%未満の窒素、約1原子%未満の窒素、又は約0.1原子%未満の窒素を含む。一部の実施形態においては、SiOC薄膜は、窒素を含まない。
【0147】
上述したように、一部の実施形態においては、SiOC膜は、Si-C結合及び/又はSi-O結合を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOC膜は、更にSi-N結合を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOC膜は、更にSi-S結合を含むことができる。一部の実施形態においては、SiOC膜は、Si-C結合及びSi-O結合を含むことができ、Si-N結合を含まなくてもよい。一部の実施形態においては、SiOC膜は、Si-N結合及びSi-O結合を含むことができ、Si-C結合を含まなくてもよい。一部の実施形態においては、SiOC膜は、Si-N結合及びSi-C結合を含むことができ、Si-O結合を含まなくてもよい。一部の実施形態においては、SiOC膜は、Si-S結合、Si-C結合及びSi-O結合を含むことができ、Si-N結合を含まなくてもよい。一部の実施形態においては、SiOC膜は、Si-S結合及びSi-C結合を含むことができ、Si-O結合を含まなくてもよい。一部の実施形態においては、SiOC膜は、Si-S結合及びSi-O結合を含むことができ、Si-C結合を含まなくてもよい。一部の実施形態においては、SiOC膜は、Si-C結合よりも多くのSi-O結合を含むことができ、例えば、Si-O結合とSi-C結合の比を約1:1~約10:1にすることができる。一部の実施形態においては、堆積SiOC膜は、SiN、SiO、SiC、SiCN、SiON、SiOSC、SiSC、SiOS及び/又はSiOCのうち1種以上を含むことができる。
【0148】
一部の実施形態においては、SiOC膜はlow‐k膜ではなく、例えば、SiOC膜は多孔質膜ではない。一部の実施形態においては、SiOCは連続膜である。一部の実施形態においては、SiOC膜はk値が約10未満である。一部の実施形態においては、SiOC膜はk値が約7未満である。一部の実施形態においては、SiOC膜はk値が約2から約10である。一部の実施形態においては、SiOC膜はk値が約5.0未満、約4.5未満、約4.3未満、約4.1未満である。一部の実施形態においては、SiOC膜はk値が約3.0~約7、約3.0~約5.5、約3.0~約5.0、約3.5~約4.8、約3.5~約4.7である。一部の実施形態においては、SiOC膜はk値がどんなlow‐k膜のk値よりも高い。一部の実施形態においては、SiOC膜はk値が純粋なSiOよりも高い。
【0149】
一部の実施形態においては、本開示に従って堆積したSiOC膜は、積層又はナノ積層構造を含まない。
【0150】
一部の実施形態においては、本開示に従って堆積したSiOC膜は、自己組織化単分子膜(SAM:self-assembled monolayer)ではない。一部の実施形態においては、本開示に従って堆積したSiOC膜は、互いに結合していない別々の個体分子からならない。一部の実施形態においては、本開示に従って堆積したSiOC膜は、実質的に結合又は連結した材料を含む。一部の実施形態においては、本開示に従って堆積したSiOC膜は、機能層ではなく、アミノ官能性を持たず、及び/又は機能表面として使用されない。一部の実施形態においては、本開示に従って堆積したSiOC膜は、-NH基で終端されない。一部の実施形態においては、本開示に従って堆積したSiOC膜は、多量の-NH基を含まない。
【実施例
【0151】
例示的なSiOC薄膜を本明細書に記載のPEALDプロセスによって堆積させた。BTESEをケイ素前駆体として使用し、ボトル温度は80℃~110℃であった。Hを第2の反応物として使用し、200WのRFパワーを第2の反応物に印加してプラズマを発生させた。あるSiOC試料を基板又は堆積温度200℃で堆積させ、別のSiOC試料を堆積温度300℃で堆積させた。
【0152】
一部のSiOC試料では、前駆体パルス時間は4秒であり、前駆体パージ時間は4秒であり、プラズマパルス時間は4秒であり、プラズマパージ時間は0.5秒であった。別の試料では、前駆体パルス時間は10秒であり、前駆体パージ時間は4秒であり、プラズマパルス時間は4秒であり、プラズマパージ時間は0.5秒であった。別の試料では、前駆体パルス時間は4秒であり、前駆体パージ時間は10秒であり、プラズマパルス時間は4秒であり、プラズマパージ時間は0.5秒であった。
【0153】
図3に、本明細書に記載のPEALDプロセスによって堆積したSiOC膜の1サイクル当たりの成長(Å/サイクル)と前駆体ボトル温度を示す。図3に示したように、成長速度は、ボトル温度と共に増加し、堆積温度200℃で堆積した試料が堆積温度300℃で堆積した試料よりも高かった。成長速度は、ボトル温度110℃及び堆積温度200℃では、約0.3Å/サイクルで飽和した。
【0154】
図4に、本明細書に記載のPEALDプロセスによって堆積したSiOC膜の1サイクル当たりの成長(Å/サイクル)、屈折率、及びdHF(0.5重量%)中のTOXと比べたWERRをプラズマ出力の関数として示す。BTESEをケイ素前駆体として使用し、Hを第2の反応物として使用した。200W~800WのRFパワーを第2の反応物に印加することによってプラズマを発生させた。堆積温度は200℃であり、前駆体パルス時間は4秒であり、前駆体パージ時間は4秒であり、プラズマパルス時間は4秒であり、プラズマパージ時間は0.5秒であった。
【0155】
図4に示したように、SiOC膜の成長速度は、プラズマ出力の増加と共に低下した。堆積膜の屈折率は、プラズマ出力の増加と共に増加した。堆積SiOC膜のWERとTOXのWERの比(TOXに対するWERR)は、プラズマ出力の増加と共に低下することが認められた。すなわち、より高い耐ウェットエッチ性がプラズマ出力の増加と共に得られ、プラズマ出力800WにおいてTOXに対するWERRが0.2に達した。
【0156】
図5に、本明細書に記載のPEALDプロセスによって堆積したSiOC膜の1サイクル当たりの成長(Å/サイクル)と第2の反応物ガス混合比(N/(N+H))を示す。BTESEをケイ素前駆体として使用し、堆積温度は200℃であった。各サイクルの前駆体パルス時間は4秒であり、前駆体パージ時間は4秒であり、プラズマパルス時間は4秒であり、プラズマパージ時間は0.5秒であった。第2の反応物ガス流は100sccmであり、Arキャリアガスは600sccmであった。第2の反応物ガスの組成は、3つのSiOC試料でそれぞれ本質的にHからなるもの、HとNの混合物、本質的にNからなるものと変化した。Arキャリアガスのみを第2の反応物ガスとして使用した試料も調製した。図5に示すように、最高成長速度(約0.25Å/サイクル)は、本質的にHからなる第2の反応物ガスとArキャリアガスを用いて得られた。HとNの混合物を含む第2の反応物ガス、本質的にNからなる第2の反応物ガス、及び本質的にArキャリアガスからなる第2の反応物ガスを用いて、低成長速度が認められた。したがって、任意の1つの理論に拘泥するものではないが、第2の反応物ガスにNを添加するとSiOC膜の成長が阻害されると考えられる。
【0157】
本明細書では「約」という用語は、所与の値の15%以内、10%以内、5%以内又は1%以内である値を指し得る。
【0158】
「膜」及び「薄膜」という用語を本明細書では簡潔にするために使用する。「膜」及び「薄膜」は、本明細書に開示した方法によって堆積した任意の連続又は非連続構造体及び材料を意味するものとする。例えば、「膜」及び「薄膜」は、2D材料、ナノロッド、ナノチューブ、又はナノ粒子、更には単一の部分的若しくは完全な分子層、又は部分的若しくは完全な原子層、又は原子及び/又は分子のクラスタを含み得る。「膜」及び「薄膜」は、ピンホールを含みながらも少なくとも部分的に連続である材料又は層を含み得る。
【0159】
多数の多様な改変を本発明の精神から逸脱することなく成し得ることを当業者は理解されたい。記述した形状、構造、特性及び前駆体は、任意の適切な様式で組み合わせることができる。したがって、本発明の形態は、単なる説明のためのものであって、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことが明白に理解されるはずである。すべての改変及び変更が、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5