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特許7479354基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/32 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
H05K3/32 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021511972
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020013911
(87)【国際公開番号】W WO2020203725
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2019068764
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】山下 智
(72)【発明者】
【氏名】畑本 憲志
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-126848(JP,A)
【文献】特開2017-174689(JP,A)
【文献】特開2003-317819(JP,A)
【文献】特開2002-270253(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0217279(US,A1)
【文献】特開2017-183281(JP,A)
【文献】特開2018-186071(JP,A)
【文献】特開2018-170267(JP,A)
【文献】特開2019-65431(JP,A)
【文献】特開2019-67657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B82Y 40/00
H01B 1/00―1/24
H01R 4/00―4/2495
H01R 12/00―12/91
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体の単数または複数からなる、平均直径が0.05mm以上3.00mm以下であるカーボンナノチューブ線材と、少なくとも一部が前記基板と前記カーボンナノチューブ線材との間に設けられた導電性の固定部材と、前記カーボンナノチューブ線材と前記固定部材とを電気的に接続する導電部材と、を備え
前記導電部材が、はんだである、基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
【請求項2】
記固定部材が、前記カーボンナノチューブ線材を貫通する貫通部を有し、前記貫通部を介して前記カーボンナノチューブ線材と前記固定部材とが電気的に接続されている、請求項1に記載の接続構造体。
【請求項3】
前記固定部材が、前記基板に搭載された電極である請求項1または2に記載の接続構造体。
【請求項4】
前記固定部材が、針状部材を備え、該針状部材が、前記カーボンナノチューブ線材と接触している接触部を備えた請求項1乃至のいずれか1項に記載の接続構造体。
【請求項5】
前記針状部材が、前記カーボンナノチューブ線材の、前記基板と対向していない側の部位にて、該カーボンナノチューブ線材を固定する固定部を備えた請求項に記載の接続構造体。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブ線材が、前記針状部材の固定部から応力を受けている請求項に記載の接続構造体。
【請求項7】
前記針状部材が、前記固定部材に位置する前記カーボンナノチューブ線材の長手方向に沿って、複数配置されている請求項乃至のいずれか1項に記載の接続構造体。
【請求項8】
前記針状部材が、前記固定部材に位置する前記カーボンナノチューブ線材の短手方向に沿って、複数配置されている請求項乃至のいずれか1項に記載の接続構造体。
【請求項9】
前記針状部材が、前記固定部材に位置する前記カーボンナノチューブ線材の長手方向に対し斜め方向に、複数配置されている請求項乃至のいずれか1項に記載の接続構造体。
【請求項10】
前記針状部材が、前記カーボンナノチューブ線材の径方向に沿って該カーボンナノチューブ線材を貫通している請求項乃至のいずれか1項に記載の接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体の単数または複数からなる平均直径が0.05mm以上3.00mm以下であるカーボンナノチューブ線材と基板との接続構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板や素子の電極に電線を電気的に接続する際には、はんだ等の導電性ペーストを用いることがある。特に、電線が、平均直径0.05mm以上3.00mm以下の細線である場合には、通常、はんだ等の導電性ペーストが用いられる。
【0003】
はんだ等の導電性ペーストを用いて電極に電線を電気的に接続した接続構造体として、例えば、基材上に形成された厚膜電極に電線をはんだ付けした太陽電池が開示されている(特許文献1)。特許文献1では、電線として銅部材等の金属線が使用されている。
【0004】
一方で、軽量性、導電性、熱伝導性、機械的強度等の諸特性に優れる点から、電線材料として、金属線に代えてカーボンナノチューブ線材を使用することが試みられている。しかし、カーボンナノチューブ線材は、炭素材料であることからはんだに対する濡れ性が低く、カーボンナノチューブ線材とその接続先との間の接続信頼性に問題が生じる場合があった。
【0005】
また、カーボンナノチューブ線材は、平均直径が0.05mm以上3.00mm以下の細線では、同じ直径を有する金属線と比較して柔軟で曲がりやすいため、不規則に曲がり、狙った箇所にカーボンナノチューブ線材を配置することが難しい。従って、細線のカーボンナノチューブ線材では、はんだ等の導電性ペーストを用いて接続先と電気的に接続する際に、接続先への固定が困難であり、カーボンナノチューブ線材とその接続先との間の接続信頼性に問題が生じる場合があった。さらに、カーボンナノチューブ線材作製の技術水準からすると、均一な細線を長く作ること自体が高度な技術水準を必要とするので、平均直径が0.05mm以上3.00mm以下のカーボンナノチューブ線材を基板の電極等に確実に接続する手法は確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-53287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、電線として平均直径が0.05mm以上3.00mm以下のカーボンナノチューブ線材が用いられていても、基板と電線との接続信頼性に優れた接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1]基板と、複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体の単数または複数からなる、平均直径が0.05mm以上3.00mm以下であるカーボンナノチューブ線材と、少なくとも一部が前記基板と前記カーボンナノチューブ線材との間に設けられた導電性の固定部材と、前記カーボンナノチューブ線材と前記固定部材とを電気的に接続する導電部材と、を備えた、基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
[2]基板と、複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体の単数または複数からなる、平均直径が0.05mm以上3.00mm以下であるカーボンナノチューブ線材と、少なくとも一部が前記基板と前記カーボンナノチューブ線材との間に設けられた導電性の固定部材と、を備え、
前記固定部材が、前記カーボンナノチューブ線材を貫通する貫通部を有し、前記貫通部を介して前記カーボンナノチューブ線材と前記固定部材とが電気的に接続されている、基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
[3]前記固定部材が、前記基板に搭載された電極である[1]または[2]に記載の接続構造体。
[4]前記導電部材が、はんだである[1]に記載の接続構造体。
[5]前記固定部材が、針状部材を備え、該針状部材が、前記カーボンナノチューブ線材と接触している接触部を備えた[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の接続構造体。
[6]前記針状部材が、前記カーボンナノチューブ線材の、前記基板と対向していない側の部位にて、該カーボンナノチューブ線材を固定する固定部を備えた[5]に記載の接続構造体。
[7]前記カーボンナノチューブ線材が、前記針状部材の固定部から応力を受けている[6]に記載の接続構造体。
[8]前記針状部材が、前記固定部材に位置する前記カーボンナノチューブ線材の長手方向に沿って、複数配置されている[5]乃至[7]のいずれか1つに記載の接続構造体。
[9]前記針状部材が、前記固定部材に位置する前記カーボンナノチューブ線材の短手方向に沿って、複数配置されている[5]乃至[8]のいずれか1つに記載の接続構造体。
[10]前記針状部材が、前記固定部材に位置する前記カーボンナノチューブ線材の長手方向に対し斜め方向に、複数配置されている[5]乃至[7]のいずれか1つに記載の接続構造体。
[11]前記針状部材が、前記カーボンナノチューブ線材の径方向に沿って該カーボンナノチューブ線材を貫通している[5]乃至[10]のいずれか1つに記載の接続構造体。
【0009】
上記[1]の態様では、導電性の固定部材にカーボンナノチューブ線材が固定され、ひいては、導電性の固定部材を介して、カーボンナノチューブ線材が基板に固定される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様によれば、基板上に設けられた導電性の固定部材と、カーボンナノチューブ線材と該固定部材とを電気的に接続する導電部材と、を備えることにより、電線として平均直径が0.05mm以上3.00mm以下のカーボンナノチューブ線材が用いられていても、基板と電線との接続信頼性に優れた接続構造体を得ることができる。
【0011】
本発明の態様によれば、固定部材が針状部材を備え、該針状部材がカーボンナノチューブ線材と接触している接触部を備えることにより、固定部材へのカーボンナノチューブ線材の固定作業を容易化して、固定部材とカーボンナノチューブ線材間の接続信頼性と固定安定性をさらに向上させることができる。
【0012】
本発明の態様によれば、針状部材が、カーボンナノチューブ線材の、基板と対向していない側の部位にてカーボンナノチューブ線材を固定する固定部を備えることにより、前記接続信頼性と固定安定性をさらに向上させることができ、また、固定部材とカーボンナノチューブ線材間の接触面積が増大して、固定部材とカーボンナノチューブ線材間の導電性、カーボンナノチューブ線材と導電部材との接触性が向上する。
【0013】
本発明の態様によれば、カーボンナノチューブ線材が、針状部材の前記固定部から応力を受けていることにより、前記接続信頼性と固定安定性をさらに向上させつつ、固定部材とカーボンナノチューブ線材間の接触性が向上して、固定部材とカーボンナノチューブ線材間の導電性、カーボンナノチューブ線材と導電部材との接触性がさらに向上する。
【0014】
本発明の態様によれば、針状部材がカーボンナノチューブ線材の長手方向に沿って複数配置されていることにより、さらに優れた固定部材とカーボンナノチューブ線材間の接続信頼性と固定安定性を得ることができる。
【0015】
本発明の態様によれば、針状部材がカーボンナノチューブ線材の径方向に貫通していることにより、さらに優れた接続信頼性と固定安定性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体の概要を説明する外観斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体の側面断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体の概要を説明する外観斜視図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体の概要を説明する外観斜視図である。
図5】本発明の第4実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体の概要を説明する側面断面図である。
図6】基板にカーボンナノチューブ線材を固定して本発明の第1実施形態に係る接続構造体を製造する工程の説明図であり、(a)図は、接続構造体を製造する際に用意する部材の説明図、(b)図は、固定部材の針状部材でカーボンナノチューブ線材を固定した状態の説明図、(c)図は、固定部材とカーボンナノチューブ線材をはんだで電気的に接続した状態の説明図である。
図7】実施例で使用した固定部材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体について、図面を用いながら説明する。なお、図1は、本発明の第1実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体の概要を説明する外観斜視図、図2は、本発明の第1実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体の側面断面図である。
【0018】
図1、2に示すように、本発明の第1実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体(以下、「CNT接続構造体」ということがある。)1は、カーボンナノチューブ線材(以下、「CNT線材」ということがある。)10と、少なくとも一部が基板20とCNT線材10との間に設けられた導電性の固定部材30と、CNT線材10と固定部材30とを電気的に接続する導電部材40と、を備えている。導電性の固定部材30は基板20に搭載されており、導電性の固定部材30にCNT線材10の端部が固定されている。従って、導電性の固定部材30を介して、CNT線材10が基板20に固定されている。
【0019】
基板20としては、例えば、精密電子機器に取り付けられた、半導体素子等の小型電子部品が搭載された回路基板等を挙げることができる。
【0020】
CNT線材10は、電源(図示せず)等から基板20へ電気を送る電線として機能する。CNT線材10は、銅やアルミニウム等からなる線材に匹敵する優れた導電性を有していることから、電線の芯線として使用されている。後述するように、CNT線材10は細線であり、例えば、基板20へ電気信号を送る信号線としての機能を有する。
【0021】
CNT線材10は、1層以上の層構造を有する複数のカーボンナノチューブ(以下、「CNT」ということがある。)で構成されるカーボンナノチューブ集合体(以下、「CNT集合体」ということがある。)の単数から、または複数が束ねられて形成されている。ここで、CNT線材とはCNTの割合が90質量%以上のCNT線材を意味する。なお、CNT線材におけるCNT割合の算定においては、メッキとドーパントは除かれる。CNT集合体の長手方向が、CNT線材10の長手方向を形成している。従って、CNT集合体は、線状となっている。CNT線材10における複数のCNT集合体は、その長軸方向がほぼ揃って配されている。従って、CNT線材10における複数のCNT集合体は、配向している。
【0022】
CNT線材10の平均直径は、0.05mm以上3.00mm以下の細線である。なお、平均直径の「直径」とは、円相当直径を意味する。CNT線材10の平均直径は0.05mm以上3.00mm以下であれば、特に限定されないが、0.20mm以上3.00mm以下が好ましい。CNT線材10は、1本のCNT線材10からなる素線(単線)でもよく、複数本のCNT線材10を撚り合わせた撚り線の状態でもよい。また、CNT線材10は、絶縁被覆層が設けられていない態様でもよく、CNT線材10の外周面に長手方向に沿って絶縁被覆層が被覆されているCNT被覆電線でもよい。
【0023】
図1、2に示すように、導電性の固定部材30は、基板20の表面21に搭載されている。固定部材30は、略平板状の基部31と、基部31の表面32から鉛直方向且つ基板20とは反対の方向へ伸延した針状部材33と、を備えている。基部31は、基板20の表面21に沿って、基板20とCNT線材10との間に設けられている。基部31は、CNT線材10と接触した状態となっている。
【0024】
針状部材33は、固定部材30に位置するCNT線材10の長手方向Xに沿って、すなわち、固定部材30に位置するCNT線材10の長手方向Xに対し略平行に、複数、配置されている。図1、2のCNT接続構造体1では、CNT線材10の長手方向Xに沿って、2つの針状部材33-1、33-2が、所定間隔にて並列配置されている。針状部材33の形状は、先端部35が尖った形状、例えば、先端部35が円錐形、三角錐形、四角錐形となっている。また、針状部材33の形状は、先端部35が尖った形状に代えて、槍状の形状、例えば、針状部材33の先端部に、かえし部を有する形状としてもよい。針状部材33の先端部にかえし部を有する形状とすることで、後述するCNT線材の外周面から突出した先端部を折り曲げる工程を実施しなくても、CNT線材が固定部材に強固に固定される。また、針状部材33-1、33-2は、CNT線材10の径方向Yに沿ってCNT線材10を貫通している。従って、CNT線材10には、針状部材33が突き刺されて、CNT線材10の外周面から、針状部材33の先端部35が突出した状態となっている。針状部材33がCNT線材10を貫通する位置は、特に限定されないが、CNT接続構造体1では、針状部材33-1、33-2は、いずれも、CNT線材10の径方向Yの最大寸法部を貫通している。針状部材33は、CNT線材10を貫通することでCNT線材10と接触した第1の接触部34を備えている。従って、針状部材33-1、33-2は、それぞれ、CNT線材10と接触した第1の接触部34-1、34-2を備えている。
【0025】
針状部材33の長さは、特に限定されないが、CNT線材10の平均直径が0.05mm以上3.00mm以下であることから、CNT線材10に対する固定安定性を向上させる点から、0.06mm以上4.00mm以下且つ第1の接触部34におけるCNT線材10の直径の1.2倍以上2.0倍以下が好ましい。また、基部31からの立ち上がり部における針状部材33の太さは、特に限定されないが、平均直径が0.05mm以上3.00mm以下であるCNT線材10に対する固定安定性を向上させる点から、0.01mm以上0.10mm以下且つ第1の接触部34におけるCNT線材10の最大直径の1/2以下が好ましい。また、基部31からの立ち上がり部における針状部材33-1、33-2の間隔は、特に限定されないが、後述するように、針状部材33の先端部35が折り曲げられて固定部材30にCNT線材10が固定されている場合には、CNT線材10に対する固定安定性を向上させる点から、針状部材33の長さの0.8倍以上1.2倍以下が好ましい。
【0026】
図1、2に示すように、針状部材33は、CNT線材10の外周面から突出した先端部35がCNT線材10の長手方向Xに沿ってCNT線材10の外周面と接触するように折り曲げられることで、CNT線材10と接触した第2の接触部36を備えている。針状部材33-1の先端部35-1が、対向する針状部材33-2方向へ折り曲げられて、第2の接触部36-1が設けられている。針状部材33-2の先端部35-2は、対向する針状部材33-1方向へ折り曲げられて、第2の接触部36-2が設けられている。針状部材33の第2の接触部36は、CNT線材10の外周面のうち、基板20と対向していない側の部位と接触した部分である。従って、CNT線材10は、針状部材33の第2の接触部36と基部31とで挟まれた態様となっている。
【0027】
固定部材30の針状部材33が、CNT線材10と接触した第1の接触部34と第2の接触部36とを有することにより、CNT線材10が固定部材30に固定される。すなわち、針状部材33は、CNT線材10の、基板20と対向していない側の部位にて、CNT線材10を固定する固定部を備えている。
【0028】
CNT線材10は、針状部材33の固定部である第2の接触部36から応力を受けている。CNT線材10が第2の接触部36から受ける応力の向きは、基部31方向である。従って、針状部材33の第2の接触部36は、CNT線材10に対して加圧しており、CNT線材10は、第2の接触部36に対応する部位にて圧縮されている。
【0029】
固定部材30には、例えば、基板20に搭載された電極としての機能を付与することができる。固定部材30が電極として機能する場合、その材質は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、金、金合金、銀、銀合金等の金属が挙げられる。また、固定部材30が電極として機能する場合、導電部材40の固定部材30に対する濡れ性を向上させるために、必要に応じて、固定部材30の表面にめっき膜を設けてもよい。
【0030】
図1、2に示すように、CNT線材10のうち、針状部材33と接触した部位とその近傍には、導電部材40が設けられている。導電部材40は、CNT線材10から固定部材30にわたって設けられている。導電部材40は、CNT線材10と固定部材30とを電気的に接続しつつ、CNT線材10を固定部材30へ強固に固定する機能を有する。CNT接続構造体1では、導電部材40が、固定部材30に位置するCNT線材10の露出した外周面全体を浸漬している。
【0031】
導電部材40としては、例えば、はんだを挙げることができる。固定部材30の材質が金属である場合、固定部材30は、はんだに対する濡れ性に優れているので、CNT線材10と固定部材30との電気的接続性に優れている。はんだの種類としては、例えば、C-Solder(CAMETICS社製)等の炭素材料用のはんだ、Sn-Pb合金系はんだ、Sn-Ag-Cu合金系はんだ等が挙げられる。
【0032】
CNT接続構造体1では、基板20上に設けられた導電性の固定部材30と、CNT線材10と固定部材30とを電気的に接続する導電部材40と、を備えることにより、電線として平均直径が0.05mm以上3.00mm以下のCNT線材10が用いられていても、基板20とCNT線材10との接続信頼性に優れている。
【0033】
また、CNT接続構造体1では、固定部材30が針状部材33を備え、針状部材33がCNT線材10と接触しているので、固定部材30へのCNT線材10の固定作業を容易化して、固定部材30とCNT線材10間の接続信頼性と固定安定性を向上させることができる。さらに、針状部材33は、CNT線材10の、基板20と対向していない側の部位にて、CNT線材10を固定する固定部を備えているので、上記した接続信頼性と固定安定性を向上させることができ、また、固定部材30とCNT線材10間の接触面積が増大して、固定部材30とCNT線材10間の導電性、CNT線材10と導電部材40との接触性が向上する。
【0034】
また、CNT接続構造体1では、CNT線材10が針状部材33の第2の接触部36から応力を受けていることで、上記した接続信頼性と固定安定性を向上させつつ、固定部材30とCNT線材10間の接触性も向上して、固定部材30とCNT線材10間の導電性、CNT線材10と導電部材40との接触性に優れている。
【0035】
また、CNT接続構造体1では、針状部材33がCNT線材10の長手方向Xに沿って複数配置されているので、固定部材30とCNT線材10間に、優れた接続信頼性と固定安定性を付与することができる。
【0036】
次に、本発明の第2実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体について説明する。なお、第2実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体は、第1実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体と主要な構成が共通しているので、同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。なお、図3は、本発明の第2実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体の概要を説明する外観斜視図である。
【0037】
第1実施形態に係るCNT接続構造体では、CNT線材の長手方向に沿って、複数の針状部材が所定間隔にて並列配置されていたが、これに代えて、図3に示すように、第2実施形態に係るCNT接続構造体2では、CNT線材10の長手方向Xと短手方向Zに沿って、それぞれ、複数の針状部材33が所定間隔にて並列配置されている。CNT接続構造体2では、CNT線材10の長手方向Xに沿って、2つの針状部材33-1、33-2が所定間隔にて並列配置され、CNT線材10の短手方向Zに沿って、2つの針状部材33-1、33-2が所定間隔にて並列配置されている。
【0038】
CNT接続構造体2では、針状部材33がCNT線材10の長手方向Xだけでなく短手方向Zに沿っても複数配置されているので、固定部材30とCNT線材10間の接続信頼性と固定安定性がさらに向上する。
【0039】
次に、本発明の第3実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体について説明する。なお、第3実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体は、第1、第2実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体と主要な構成が共通しているので、同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。なお、図4は、本発明の第3実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体の概要を説明する外観斜視図である。
【0040】
第1実施形態に係るCNT接続構造体では、CNT線材の長手方向に沿って、複数の針状部材が所定間隔にて並列配置されていたが、これに代えて、図4に示すように、第3実施形態に係るCNT接続構造体3では、CNT線材10の長手方向Xに対し斜め方向に複数の針状部材33が所定間隔にて並列配置されている。CNT接続構造体3では、CNT線材10の長手方向Xに対し斜め方向に、2つの針状部材33-1、33-2が所定間隔にて並列配置されている。
【0041】
CNT接続構造体3では、CNT線材10の長手方向Xに対し斜め方向に複数の針状部材33が配置されているので、針状部材33の先端部の折り曲げ方向を適宜調整することが容易化されて、CNT線材10の径方向の寸法の大小に関わらず固定部材30とCNT線材10間の接続信頼性と固定安定性が得られる。また、CNT接続構造体3では、少ない針状部材33の配置数で、CNT線材10の長手方向Xだけではなく、短手方向Zの固定力も向上する。
【0042】
次に、本発明の第4実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体について説明する。なお、第4実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体は、第1~第3実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体と主要な構成が共通しているので、同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。なお、図5は、本発明の第4実施形態に係る基板とカーボンナノチューブ線材の接続構造体の概要を説明する側面断面図である。
【0043】
第1~第3実施形態に係るCNT接続構造体では、針状部材の先端部が所定の方向に折り曲げられていたが、これに代えて、図5に示すように、第4実施形態に係るCNT接続構造体4では、針状部材43の先端部45が複数に分割されて折り曲げられている。従って、1つの針状部材43が、複数の先端部45を有している。CNT接続構造体4では、先端部45が、第1の部位45-1と第2の部位45-2の2つに分割されて折り曲げられている。
【0044】
また、CNT接続構造体4では、第1の部位45-1は第2の部位45-2とは異なる方向に折り曲げられている。先端部45の折り曲げ方向は、特に限定されず、CNT接続構造体4では、第1の部位45-1と第2の部位45-2は、CNT線材10の長手方向Xに沿って折り曲げられている。また、第1の部位45-1は第2の部位45-2と逆の方向へ折り曲げられ、第2の部位45-2は第1の部位45-1と逆の方向へ折り曲げられている。
【0045】
CNT接続構造体4では、針状部材43と導電部材40との接触性がさらに向上するので、固定部材30とCNT線材10間の接続信頼性と固定安定性を向上させることができる。
【0046】
次に、図6を用いて、CNT接続構造体の製造方法例について説明する。ここでは、第1実施形態のCNT接続構造体1の製造方法例について説明する。図6は、基板20にCNT線材10を固定して本発明の実施形態に係る接続構造体1を製造する工程の説明図であり、(a)図は、接続構造体1を製造する際に用意する部材の説明図、(b)図は、固定部材30の針状部材33でCNT線材10を固定した状態の説明図、(c)図は、固定部材30とCNT線材10を導電部材40であるはんだで電気的に接続した状態の説明図である。
【0047】
まず、図6(a)に示すように、固定部材30が搭載された基板20と、平均直径が0.05mm以上3.00mm以下であるCNT線材10(電線)と、CNT線材10の端部を固定部材30に固定するための圧着治具100を用意する。用意された固定部材30では、針状部材33は基部31から鉛直方向へ直線状に伸延している。次に、針状部材33にCNT線材10の端部を突き刺して、CNT線材10に針状部材33を貫通させる。このとき、CNT線材10の基部31に対向する外周面が基部31に接触するまでCNT線材10に針状部材33を貫通させて、CNT線材10の外周面から針状部材33の先端部35を突出させる。次に、圧着治具100の圧着面101を針状部材33の先端に当接させ、基部31方向(図6(a)のZ方向)へ押圧する。圧着治具100の圧着面101を基部31方向へ押圧することで、図6(b)に示すように、CNT線材10の外周面から突出した先端部35がCNT線材10の長手方向に沿ってCNT線材10の外周面と接触するように折り曲げられる。
【0048】
圧着治具100の圧着面101は、断面が三角形状となっているので、針状部材33-1の先端部35-1が、対向する針状部材33-2方向へ折り曲げられて、第2の接触部36-1が設けられ、針状部材33-2の先端部35-2は、対向する針状部材33-1方向へ折り曲げられて、第2の接触部36-2が設けられる。
【0049】
次に、図6(c)に示すように、CNT線材10から固定部材30にわたって、固定部材30に位置するCNT線材10の露出した外周面全体を浸漬するように、導電部材40であるはんだを供給する。導電部材40によって、CNT線材10と固定部材30とが電気的に接続され、また、CNT線材10が固定部材30に強固に固定されることで、CNT接続構造体1を製造することができる。
【0050】
次に、本発明のCNT接続構造体の他の実施形態について説明する。上記第1実施形態のCNT接続構造体では、CNT線材の長手方向に沿って2つの針状部材が所定間隔にて並列配置されていたが、これに代えて、CNT線材の長手方向には1つの針状部材が配置されていてもよく、3つ以上の針状部材が所定間隔にて並列配置されていてもよい。また、上記第2実施形態に係るCNT接続構造体では、CNT線材の長手方向と短手方向に沿って、それぞれ、同数の針状部材が所定間隔にて並列配置されていたが、これに代えて、CNT線材の長手方向と短手方向に沿って、それぞれ、異なる数の針状部材が配置されてもよく、例えば、CNT線材の短手方向よりも長手方向の方が針状部材の設置数が多い態様としてもよい。また、上記各実施形態では、針状部材の先端部が対向する他の針状部材の方向へ折り曲げられていたが、これに代えて、針状部材の先端部が対向する他の針状部材の方向とは逆の方向へ折り曲げられていてもよい。上記実施形態のCNT接続構造体では、針状部材はCNT線材を貫通していたが、これに代えて、例えば、針状部材をCNT線材の径方向に沿って2つ配置し、2つの針状部材にてCNT線材を狭持する態様としてもよい。また、上記各実施形態では、CNT線材と固定部材とを電気的に接続する導電部材が設けられていたが、これに代えて、固定部材が、例えば、針状部材等のCNT線材を貫通している貫通部を備え、貫通部を介してCNT線材と固定部材とが電気的に接続されている場合には、導電部材は設けられていなくてもよい。
【実施例
【0051】
次に、本発明のCNT接続構造体の実施例を説明するが、本発明は、実施例の態様に限定されるものではない。
【0052】
実施例においては、上記した第1実施形態のCNT接続構造体1に準じたCNT接続構造体を使用した。具体的には、図7に示すように、基部31からの立ち上がり部における針状部材33の太さ(r)が0.05mm、針状部材33間の間隔(w)が1.5mm、針状部材33の高さ(h)が1.5mmの固定部材30を使用した。CNT線材には、直径1.0mmのものを使用した。直径1.0mmのCNT線材を、図7に示す固定部材30に上記したCNT接続構造体の製造方法例に基づいて固定して、実施例のCNT接続構造体を作製した。
【0053】
実施例のCNT接続構造体に対して、固定安定性、外観、導通性を評価した。
(1)固定安定性
引っ張り試験機(株式会社島津製作所製のEZ-SX)を用いて、CNT接続構造体のCNT線材をCNT線材の長手方向に沿って0.01Nにて引っ張り試験を行い、CNT接続構造体からCNT線材が外れるか否かを評価した。
(2)外観
針状部材33で固定された部位のCNT線材が導電性部材であるはんだで完全に被覆されているか否かを目視にて観察した。
(3)導通性
デジタルマルチメーター(Keithley社製のDMM2000)を用いて、CNT線材と固定部材30間の接触抵抗を測定した。
【0054】
実施例のCNT接続構造体では、引っ張り試験にて、CNT接続構造体からCNT線材は外れず、固定安定性に優れていた。また、実施例のCNT接続構造体では、針状部材33で固定された部位のCNT線材がはんだで完全に被覆され、CNT線材と固定部材30との電気的接続性に優れていた。また、実施例のCNT接続構造体では、CNT線材と固定部材30間の接触抵抗が0.1Ω未満であり、導通性に優れていた。
【符号の説明】
【0055】
1、2、3、4 接続構造体
10 カーボンナノチューブ線材
20 基板
30 固定部材
33、43 針状部材
40 導電部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7