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特許7479375クロマトグラフィーカラムのためのケーシングを提供する方法およびクロマトグラフィーカラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】クロマトグラフィーカラムのためのケーシングを提供する方法およびクロマトグラフィーカラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/60 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
G01N30/60 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021535677
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2019085632
(87)【国際公開番号】W WO2020127252
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】18214664.7
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブエナー,ペドロ
(72)【発明者】
【氏名】クノート,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ペータース,ベニヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ウケリス,ミヒャエル
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-535420(JP,A)
【文献】特表2018-521310(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017127316(DE,A1)
【文献】特表2012-509481(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105727594(CN,A)
【文献】Conan FEE et al.,3D printed porous media columns with fine control of column packing morphology,Journal of Chromatography A,2014年,Vol.1333,p.18-24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/60
G01N 30/02
B01D 15/22
B33Y 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィーカラムを製造するために、クロマトグラフィーカラム材料の既製カラム(1)にケーシング(11)を提供する方法であって、
ケーシング(11)が、
接触エリア経路(12)に沿ってクロマトグラフィーカラム材料の既製カラム(1)のケーシング表面(8)を連続的に覆うように、ケーシング材料供給口に対してクロマトグラフィーカラム材料の既製カラム(1)を回転させるステップと、
接触エリア(7)で固化する量のケーシング材料(9)を連続的に供給することによって、クロマトグラフィーカラム用のケーシング(11)を生成するために、クロマトグラフィーカラム材料の既製カラム(1)のケーシング表面(8)で、接触エリア経路(12)に沿って現接触エリア(7)に一定量の流動性ケーシング材料(9)を供給するステップとを包含する、付加製造によって生成される、前記方法。
【請求項2】
クロマトグラフィーカラム材料の既製カラム(1)が、0~90度の間、好ましくは45~70度の間の角度で鉛直線と交差する回転軸の周りを回転する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ケーシング材料供給口が、流動性ケーシング材料(9)を接触エリア(7)上へ堆積させるためのノズル(5)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ノズル(5)が、回転するクロマトグラフィーカラム材料の既製カラム(1)の接触エリア(7)上に鉛直線上に、流動性ケーシング材料(9)が接触エリア(7)上へ落下するように配置される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
レーザービーム(10)が流動性ケーシング材料(9)を少なくとも部分的に溶融する接触エリア(7)上へ向けられること、および接触エリア(7)がもはやレーザービーム(10)によって照射されなくなった後、溶融ケーシング材料(9)が固化することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ケーシング表面(8)に沿った接触エリア経路(12)がらせん形状であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
接触エリア経路(12)が、ケーシング表面(8)の各部分に沿って2回以上走り、2層以上のケーシング材料(9)を有するケーシング(11)の生成がもたらされる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィーカラムを製造するために、クロマトグラフィーカラム材料の既製カラム用のケーシングを提供するための方法に関する。本発明はまた、クロマトグラフィーカラムに関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィーは、混合物を分析する、あるいは混合物内の1つまたはすべての構成要素をさらに利用できるようにするために、混合物の異なる成分を分離するために使用できる実験技法である。混合物は移動相と呼ばれる流体に溶解され、これは固定相と呼ばれるクロマトグラフィーカラム材料を保持する構造を通ってそれを運ぶ。混合物の異なる構成要素は、固定相に沿って異なる速度で移動し、クロマトグラフィーカラムのクロマトグラフィーカラム材料内で混合物の異なる構成要素の分離をもたらす。
【0003】
過去数十年内に、クロマトグラフィーを実施するためのいくつかの異なる方法が開発されてきた。移動相として液体を用いる液体クロマトグラフィーは、大抵、移動相内の混合物の構成要素の分離を促進する好適なクロマトグラフィー材料のカラム内でまたは平面に沿って行われる。クロマトグラフィーカラムは、移動相の流体内の構成要素の分離に適したクロマトグラフィーカラム材料、例として、シリカまたはポリマーなどを含み、これにより、クロマトグラフィーカラム材料は、クロマトグラフィーカラム材料によって満たされた容量に移動相を収容するケーシング内に配置される。クロマトグラフィーカラムのケーシングは、ガラス、プラスチックまたは金属で作成することができる。クロマトグラフィーカラム材料を封入するために使用されるケーシング材料は、例として、移動相に左右されることがあり、移動相とケーシングの間の不要な相互作用は減らすべきである。
【0004】
従来のクロマトグラフィーでは、移動相は外圧の適用なしにクロマトグラフィーカラムを移動するが、より進歩したクロマトグラフィー方法、例として、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、外圧の適用に依存して、クロマトグラフィーカラムに沿った移動相の移動を加速する。しかしながら、大抵小さいクロマトグラフィーカラムのサイズおよびクロマトグラフィーカラムに沿った移動相の迅速な移動に起因して、HPLCの分析結果は、分析を実施するために使用されるクロマトグラフィーカラムに有意に依存する。例えば、ケーシング内の容量は、クロマトグラフィーカラム材料で十分におよび均一に満たされるべきである。ケーシングの中のいかなるボイドスペースも、クロマトグラフィーカラム材料、すなわち固定相との相互作用なしに移動相の移動を可能にし、分析結果の乱れおよび悪影響をもたらす。
【0005】
HPLCに一般的に使用されるクロマトグラフィーカラムの長さは約30mm~250mmであり、直径は約2~5mmである。クロマトグラフィーカラム材料内の活物質の粒径は約2μm~50μmである。移動相に適用される圧力は通常50バール~350バールの間である。よって、クロマトグラフィーカラム材料に好適なケーシングは、クロマトグラフィーカラム材料を、何らの顕著な隙間無しに包含するべきである。
【0006】
HPLCに好適であるクロマトグラフィーカラムを製造するための既知の方法は、事前に調製されたクロマトグラフィーカラム材料の既製カラムを利用する。大抵、クロマトグラフィーカラム材料から形成されるこれらのカラムは、極めて脆く、壊れやすい。よって、クロマトグラフィーカラムの製造中の過度の機械的負荷またはひずみを避けるべきである。
【0007】
クロマトグラフィーカラム材料のカラムの直径よりわずかに大きい直径を有する中空パイプ金属ケーシングを製造することが従来技術から知られている。次いで、脆いカラムを中空パイプに挿入し、その後、中空パイプに径方向内側に向けられた圧力を適用することによって中空パイプを圧縮する。
【0008】
クロマトグラフィーカラム材料のカラムと一致する寸法を有する中空パイプ金属ケーシングを製造することもまた従来技術から知られている。加熱すると、中空パイプは膨張し、クロマトグラフィーカラム材料の脆いカラムを、脆いカラムを危険にさらすことなく、膨張した中空パイプに挿入することができる。
【0009】
しかしながら、クロマトグラフィーカラム材料のカラムの製造およびこれらの方法を実施することを可能にする適切な寸法を有する中空パイプの製造は困難であり、費用がかかる。さらにまた、どちらの方法も、クロマトグラフィーカラムの製造中、すなわち脆いカラムをケーシングに挿入する間に、クロマトグラフィーカラム材料のカラムへの不要な損傷を回避するための時間およびスキルを必要とする。
【0010】
結果的に、かかるクロマトグラフィーカラムの費用対効果の高い生産を可能にする方法が必要である。該方法は、ケーシングを有するクロマトグラフィーカラムの容易な製造を可能にすべきである。ケーシングを有するクロマトグラフィーカラムは、クロマトグラフィーカラムで実施されるクロマトグラフィー分析の分析結果にまったく影響しないかまたはわずかな影響しか及ぼすべきではない。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、ケーシングが付加製造(additive manufacturing)によって生成される方法であって、接触エリア経路に沿ってクロマトグラフィーカラム材料のケーシング表面を連続的に覆うように、ケーシング材料供給に対してクロマトグラフィーカラム材料のカラムを回転させるステップ、および接触エリアで固化する量のケーシング材料を連続的に添加することによって、クロマトグラフィーカラム用のケーシングを生成するために、クロマトグラフィーカラム材料のケーシング表面で、接触エリア経路に沿って現接触エリアに一定量の流動性ケーシング材料を連続的に配置するステップを包含する、前記方法に関する。
【0012】
付加製造は、ケーシングの付加製造中に脆いカラムに機械的負荷または応力をかけることなく、クロマトグラフィーカラム材料のカラムの形状に完全に一致するケーシングの生成を可能にする。ケーシングは段階的に生成され、各ステップでケーシングの形状をカラムの形状に適合させることができる。
【0013】
クロマトグラフィーカラム材料のカラムを回転軸の周りで回転させることにより、ケーシング材料供給の回転運動なしに、カラムの周り全体にケーシング材料を加えることが可能である。カラムの並進運動が回転運動に重ねられる場合、カラムのケーシング表面の各部分は、所定の位置にとどまるケーシング材料供給物で覆われ得る。よって、ケーシング材料供給を提供するために必要とされる機械部品のいずれかと、ケーシングによって囲まれている脆いカラムとの不要な衝突のリスクがない。脆いカラムの回転および平行移動は、例として、3軸または5軸CNC機を使用することによって実施することができる。
【0014】
流動性ケーシング材料は、ケーシング材料の小さな粒子を含む粉末ケーシング材料であり得る。粉末ケーシング材料を少なくとも部分的に溶融するために、粉末ケーシング材料を加熱することができる。再び冷却した後、粉末ケーシング材料は焼結され、好ましくは無加圧焼結され、粉末ケーシング材料から作られた堅固で強いケーシングを提供する。流体ケーシング材料、例として、再び冷却した後に固化する、加熱され完全に溶融したケーシング材料、を添加することも可能である。流動性ケーシング材料の固化は、加熱されたケーシング材料を冷却させることによって実施することができる。従来技術で知られている多くの異なる方法が、接触エリア上に流動性ケーシング材料を配置する前または後に流動性ケーシング材料を加熱するのに好適であるように思われる。流動性ケーシング材料を固化するために、例としてUV光による照射によって活性化されなければならないケーシング材料を利用することも可能である。
【0015】
製造プロセスは、クロマトグラフィーカラム材料のカラムのサイズおよび形状を測定すること、およびそれに応じてカラムのケーシング表面を横切る接触エリア経路の予め設定されたコースを適応させることから開始することができる。よって、連続的に生成されるケーシングの形状は、脆いカラムの形状と一致し、これはケーシングの製造の間に脆いカラムに加えられる機械的負荷または応力を低減する。ケーシング材料のごく一部のみを連続的に添加し、続いて固化することにより、脆いカラムに加えられる熱応力を、カラムにとって危険であると考えられる閾値未満に減らすことができる。
【0016】
非円形断面を有するクロマトグラフィーカラム材料の既製カラムを利用することもまた可能である。カラムは、例として、長方形または多角形の断面、あるいは長円(oval)または楕円形(ellipsoidal)の断面を有していてもよい。本発明による方法により、複雑な形状を有するかかるカラムについても、好適なケーシングを、カラムに過度の機械的応力をかけることなく、簡単な方法で製造することができる。
【0017】
本発明の一側面によれば、クロマトグラフィーカラム材料のカラムは、0~90度の間、好ましくは45~70度の間の角度で鉛直線と交差する回転軸の周りを回転する。接触エリアのアライメントは回転軸の方向に対応し、ほとんどのアプリケーションではそれと同じになるであろう。水平線に対する接触エリアの小さな傾斜、およびさらにはいっそのことゼロとした傾斜は、接触エリアでケーシング材料が固化するまで、流動性ケーシング材料が接触エリアに留まる可能性を高める。
【0018】
よりはっきりとした傾斜は、接触エリアでのケーシング材料の固化によって生じるケーシングの厚さの不要な変動をもたらし得る、流動性ケーシング材料の固化前における望ましくない蓄積を防ぐ。適切な傾斜は、回転カラムの上から、添加された流動性ケーシング材料が固化する接触エリアへの所定量の流動性ケーシング材料の制御された供給を可能にする。接触エリアに供給された流動性ケーシング材料の一部が、固化および既に生成されたケーシングの部分への添加の前に、滑り落ちて接触エリアから落下した場合でも、大量の流動性ケーシング材料は接触エリアに残り、ケーシングの生成に使用できる。
【0019】
本発明の一態様によれば、ケーシング材料供給は、流動性ケーシング材料を接触エリアに堆積させるためのノズルを含む。ノズルは、接触エリアの近くまたはわずかに上に配置することができ、これは、接触エリア上への流動性ケーシング材料の容易な堆積を可能にする。流動性ケーシング材料は、圧力を加えることによって、および流動性ケーシング材料を噴霧または吹き付けることによって、接触エリアに適用することができる。
【0020】
本発明の有利な態様によれば、ノズルは、クロマトグラフィーカラム材料の回転カラムの接触エリア上に鉛直線上に、流動性ケーシング材料が接触エリア上へ落下するように配置される。流動性ケーシング材料は、接触エリア上へ自由に落下(fall down)または滴下(drop down)し得る。接触エリアの真上にノズルを配置することにより、流動性ケーシング材料を接触エリア上へ向けるために外力を加える必要がない。ノズルと接触エリアの間の距離はかなり小さく、することができる、例として、ほんの数ミリメートル以下。よって、流動性ケーシング材料は、接触エリア上へ低速で落下し、これは流動性ケーシング材料が固化するまで接触エリア内に留まる可能性を高める。
【0021】
本発明の別の側面によれば、レーザービームが流動性ケーシング材料を少なくとも部分的に溶融する接触エリア上へ向けられ、接触エリアがもはやレーザービームによって照射されなくなった後、溶融ケーシング材料は固化する。レーザービームは、接触エリアを照射し、焼結プロセスを実施するためにケーシング材料を溶融するために必要なエネルギーを誘導するパルスビームまたは連続ビームであり得る。好ましくは、レーザービームの予め設定されたエネルギー付与は、溶融ケーシング材料の均一な溶融およびその後の固化を可能にするのに十分なほどに高い。しかしながら、クロマトグラフィーカラム材料のカラムの過度の加熱および熱応力を回避するために、エネルギー付与は可能な限り低くすべきである。
【0022】
本発明の有利な側面によれば、ケーシング表面に沿った接触エリア経路はらせん形状である。らせん形状の接触エリア経路は、クロマトグラフィーカラムの縦軸に沿って、滑らかなおよび均一なケーシングの生成をもたらす。エネルギー付与は、らせん形状の接触エリア経路をたどり、カラムの円周の周りを回り、よって、長時間のエネルギー付与、およびカラムに追加の熱応力をもたらし得る、対応するカラムの片側の加熱を回避する。ケーシング表面に沿った接触エリア経路の別のコース、例として、カラムの縦軸に平行に走り、カラムの円周の周りに隣り合って位置された直線のセグメントのようなコースを、予め決定することも可能である。
【0023】
本発明のさらに別の有利な側面によれば、接触エリア経路は、ケーシング表面の各部分に沿って2回以上走り、2層以上のケーシング材料を有するケーシングの生成がもたらされる。各実行で、ごく一部の流動性ケーシング材料のみが対応する接触エリア上へ配置され、その後固化される。よって、各実行の間に、クロマトグラフィーカラム材料の脆いカラムに加えられる機械的または熱的応力は極めて低い。しかしながら、ケーシング表面の各部分に沿って接触エリア経路を何度も実行することによって、毎回ケーシング材料の追加層がケーシングに追加され、最終的には、HPLC用のクロマトグラフィーカラムの使用中に、大きな機械的負荷に耐えることができる多層の厚いおよび強いケーシングが生成される。
【0024】
異なるケーシング材料からケーシングの異なる層を生成することもまた可能である。例えば、薄層、例として、多くの異なる流体および移動相に対して不活性である好適なプラスチック材料の薄層、から始めること、ならびに不活性プラスチック材料の薄層およびクロマトグラフィー材料を包囲し、および機械的強度および頑丈さを提供する1またはいくつかの金属材料の層を続けることが可能である。
【0025】
本発明はまた、クロマトグラフィーカラム材料のカラムを有し、およびクロマトグラフィーカラム材料のカラムの周りにケーシングを有するクロマトグラフィーカラムに関する。
【0026】
本発明の一側面によれば、ケーシングは付加製造によって生成される。当業者に知られている従来技術の方法とは正反対に、クロマトグラフィーカラム材料を挿入した後のケーシングまたはクロマトグラフィーカラム材料の周りのケーシングを、機械的処理または加工をする必要がない。例として、脆いカラムの周りにケーシングを生成するように適合された3Dプリンターを用いた付加製造は、製造中およびケーシングとカラムの組み立て中に、カラムに機械的応力をもたらさない。
【0027】
好ましい一態様において、ケーシングは、上記のように目下の本発明による方法で生成される。かかる方法は、カラムへの機械的または熱的ストレスの過度のリスクなしに、クロマトグラフィーカラム材料の脆いまたは壊れやすいカラム用のケーシングの容易なおよび迅速な生成を可能にする。
【0028】
有利な態様によれば、ケーシングは金属材料からなる。金属物体の付加製造はよく知られており、金属物体の容易なおよび正確な製造を可能にするいくつかの方法および材料が存在する。クロマトグラフィーカラムの金属ケーシングは、機械的ストレスに対する良好な保護を提供する。多くの金属材料は、HPLCに使用される液体および溶液と相互作用しない。有利または必要であると考えられる場合、ケーシングは、HPLCに使用されるほとんどの移動相に対して不活性である好適なプラスチック材料で作成されていてもよい。不活性プラスチック材料でコーティングされた金属材料のケーシングを生成して、HPLCの実施中の移動相とケーシングとの間の不要な相互作用をさらに低減することも可能である。
【0029】
以下の詳細な説明および添付の図面を参照すると、本発明はより完全に理解され、さらなる特徴が明らかになるであろう。図面は単に代表的なものであり、請求項の範囲を限定することを意図するものではない。事実上、当業者は、以下の明細書を読み、本図面を見ると、本発明の革新的な概念から逸脱することなく、様々な改変およびバリエーションを行うことができることを理解することができる。図面に描かれている同様の部品は、同じ参照番号で参照される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、クロマトグラフィーカラム材料のカラム用のケーシングを生成するための製造ステップの概略図を示しており、これにより、ケーシングのごく一部のみが仕上げられている。
図2図2は、図1に示した製造ステップの概略図を示しており、これにより、ケーシングの大部分が仕上げられている。
図3図3は、クロマトグラフィーカラム材料のカラムのケーシング表面を横切る接触エリア経路の概略図を示す。
図4図4は、ケーシングを生成するための別の製造ステップの概略図を示す。
【0031】
本発明の詳細な記載
図1および2は、上記の発明によるクロマトグラフィーカラムを付加製造する方法を説明している。クロマトグラフィーカラム材料から作成された既製の小さなカラム1が、サンプル保持デバイス3のクランプシステム2に挿入される。サンプル保持デバイス3は、カラム1を予め設定された方向に向け、および、カラム1を、カラム1の縦軸4に等しい回転軸の周りを回転させるように適合されている。カラム1の縦軸4は、鉛直線に対して、例として、角度α、例として40度、傾斜している。
【0032】
ノズル5はカラム1の上に配置され、ノズル出口6は、カラム1の側面8で接触エリア7の真上に位置され、これにより、カラム1の側面8は、ケーシングによって覆われるケーシング表面と等しくなる。ノズル5およびノズル出口6を通って、最初に粉末化されたケーシング材料9のごく一部が接触エリア7に送達される。同時にまたは直後に、レーザービーム10が接触エリア7に向けられ、ケーシング材料9の粉末を溶融させる。ケーシング材料9の溶融部分は、接触エリア7に付着し、レーザービーム10がこの接触エリア7をもはや照射しなくなった後に固化する。
【0033】
カラム1はゆっくりと回転し、別の接触エリア7がノズル出口6の真下に配置される。レーザービーム10は、ケーシング材料9の溶融部分を現接触エリア7上へ堆積させるために必要な間隔でのみ、現接触エリア7を照射するためにパルス化することができる。現在ノズル出口6の下にある接触エリア7を連続的に照射すること、およびカラム1の側面8の新しい部分をノズル出口6の下およびレーザービーム10の焦点に、新しい接触エリア7を持ってくる、カラム1を連続的に回転させることも可能である。
【0034】
カラム1の回転に加えて、ノズル5に対するカラム1の横方向の移動が重ねられている。横方向の移動は、カラム1をその縦軸4に沿って移動させることによって、またはノズル5をカラム1の縦軸4に平行な方向に沿って横方向に移動させることによって実施することができる。カラム1の周りのケーシング11は、付加製造によって段階的に生成される。溶融ケーシング材料9の固化中に、ケーシング材料9は、カラム1およびこれまでに生成されたケーシング11の隣接部分の形状に適応する。よって、カラム1の側面8に完全に一致する極めて均一なケーシング11が生成され、クロマトグラフィーカラム材料のカラム1に過度の機械的または熱的ストレスなしに生成されるカラム1のギャップのない囲いをもたらすであろう。
【0035】
粉末ケーシング材料9がノズル出口6を通って接触エリア7の上へ堆積される直前に溶融するように、ノズル5およびノズル出口6をとおしてレーザービーム10を向けることが可能である。しかしながら、レーザービーム10をノズル5の外側から接触エリア7に向けることも可能である。さらにまたカラム1に対してノズル5の方向を変えること、または、ケーシング材料9をカラム1の現接触エリア7上へ送達する間に、カラム1に対してノズル5を回転させることも可能である。
【0036】
図1においては、ケーシング11のごく一部のみが生成されているが、図2は、後の時点での製造ステップを示しており、よって、ケーシング11のより多くの部分がこれまでに生成されている。
【0037】
図3において、カラム1の側面8を横切る接触エリア7のコースを有する例示的な接触エリア経路12が例示されている。カラムの縦軸4の周りの回転運動、および縦軸4に沿った横方向の並進を重ねることにより、らせん形状の接触エリア経路12が実施され、接触エリア経路12に沿って連続するスポットをノズル出口6の近くの現接触エリア7として配置する。ケーシング11の層が生成され、接触エリア経路12がカラム1の前面13の近くまたは前面13でケーシング11の端部境界に到達した後、横方向の並進を逆にすることができ、ケーシング表面にケーシング材料9の別の層の追加がもたらされる。ノズル5に対するカラム1の相対的な横方向の並進は、矢印14によって視覚化されている。ケーシング材料9の数多の層を追加することは、ケーシング11の機械的安定性および耐圧性を高め得る。
【0038】
図4は、ケーシング材料9をカラム1の接触エリア7の上へ送達する別の方法を示している。押出機15の助けを借りて、ケーシング材料9は、例として、フィラメント16として、フィラメント16を溶融し、溶融ケーシング材料9の一部をカラム1の側面8の接触エリア7に堆積させる加熱されたノズル5に供給される。既に溶融した押出されたケーシング材料9を押出機15からノズル5に供給すること、および押出されたケーシング材料9を接触エリア7上へ塗布することもまた可能である。
図1
図2
図3
図4