(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】難燃性樹脂組成物およびその成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 23/02 20060101AFI20240426BHJP
C08K 5/3462 20060101ALI20240426BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20240426BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240426BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240426BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20240426BHJP
C09K 21/12 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C08L23/02
C08K5/3462
C08K5/3492
C08K7/14
C08L23/26
C09K21/02
C09K21/12
(21)【出願番号】P 2021576214
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2021046208
(87)【国際公開番号】W WO2022234688
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2021-12-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2021078767
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(72)【発明者】
【氏名】崔 椿
(72)【発明者】
【氏名】阪野 圭亮
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】大畑 通隆
【審判官】近野 光知
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-95648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(E)成分を含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
(A)成分:酸未変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミンおよびポリリン酸メラミンからなる群から選択される1種以上のメラミン塩
(C)成分:オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジンおよびポリリン酸ピペラジンからなる群から選択される1種以上のピペラジン塩
(D)成分:ガラス繊維
(E)成分:酸価が5~100KOHmg/gであり、重量平均分子量が10,000~100,000である
マレイン酸変性ポリオレフィンおよび無水マレイン酸変性ポリオレフィンから選ばれる1種以上
【請求項2】
(A)成分100質量部に対して、(B)成分と(C)成分との合計含有量が10~200質量部である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分100質量部に対して、(D)成分の含有量が5~200質量部である請求項1または2記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
(A)成分100質量部に対して、(E)成分の含有量が0.1~25質量部である請求項1~3のうちいずれか一項記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
(B)成分と(C)成分の含有比率が、質量比で20:80~60:40である請求項1~4のうちいずれか一項記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
(C)成分がピロリン酸ピペラジンを含有する請求項1~5のうちいずれか一項記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、(F)成分:酸化亜鉛を、(B)成分と(C)成分との合計100質量部に対して、0.01~10質量部含有する請求項1~6のうちいずれか一項記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項8】
(A)成分がポリプロピレン系樹脂である請求項1~7のうちいずれか一項記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のうちいずれか一項記載の難燃性樹脂組成物から得られることを特徴とする成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性樹脂組成物およびその成形品に関し、詳しくは、優れた難燃性、機械特性および成形加工時の加工性を有する新たな難燃性樹脂組成物およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂は優れた化学的、機械特性により、様々な用途に広く用いられている。しかしながら、多くの合成樹脂は可燃性物質であり、用途によっては難燃化が不可欠であった。難燃化方法としては、合成樹脂に難燃剤を配合する手法が広く知られており、ハロゲン系難燃剤、金属水酸化物、リン系難燃剤等を単独または組み合わせて合成樹脂に配合することが広く知られている。
【0003】
しかしながら、ハロゲン系難燃剤は燃焼時のハロゲン化水素ガスの発生や発煙量の多さが問題視されており、金属水酸化物は多量の添加が必要なことから、配合した合成樹脂の比重の増加や機械特性の低下といった問題を有する。そこで、現在、これらの問題を生じないリン系難燃剤を用いる試みがなされている。例えば、特許文献1では、この種の難燃剤の一種である特定のリン酸塩化合物を含有する難燃性合成樹脂組成物が提案されており、合成樹脂に高い難燃性を付与することが開示されている。
【0004】
また、近年は、OA機器、家電製品等の用途を中心に、各種製品の小型化や軽量化に伴う樹脂部材の薄肉化が進み、従来よりも剛性や耐衝撃性などの機械特性に優れた樹脂製品が求められている。合成樹脂の機械特性を向上させる手段の一例としては、合成樹脂に繊維状フィラーと変性ポリマーを配合する技術が知られている。特許文献2には、優れた難燃性と機械特性を有する樹脂組成物として、ポリアミド樹脂、酸変性樹脂、リン系難燃剤およびガラスフィラーを含有する樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-026935号
【文献】特開2019-065285号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが検討した結果、上記特許文献1、2に記載の技術を用いた難燃性樹脂組成物であっても、難燃性、機械特性および成形加工時の加工性の点で改善の余地があることが判明した。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、優れた難燃性、機械特性および成形加工時の加工性を有する新たな難燃性樹脂組成物およびその成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解消するために鋭意検討したところ、リン系難燃剤、ガラス繊維および酸変性樹脂を含むポリオレフィン系難燃性樹脂組成物において、酸変性樹脂の酸価が特定の範囲内にあることにより難燃性と機械特性が向上すること、さらには酸変性樹脂の重量平均分子量が特定の範囲内にあることにより難燃性と成形加工時の加工性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の難燃性樹脂組成物は、下記(A)~(E)成分を含有することを特徴とするものである。
(A)成分:酸未変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミンおよびポリリン酸メラミンからなる群から選択される1種以上のメラミン塩
(C)成分:オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジンおよびポリリン酸ピペラジンからなる群から選択される1種以上のピペラジン塩
(D)成分:ガラス繊維
(E)成分:酸価が5~100KOHmg/gであり、重量平均分子量が10,000~100,000であるマレイン酸変性ポリオレフィンおよび無水マレイン酸変性ポリオレフィンから選ばれる1種以上
【0010】
本発明の難燃性樹脂組成物においては、(A)成分100質量部に対して、(B)成分と(C)成分との合計含有量が10~200質量部であることが好ましい。
【0011】
本発明の難燃性樹脂組成物においては、(A)成分100質量部に対して、(D)成分の含有量が5~200質量部であることが好ましい。
【0012】
本発明の難燃性樹脂組成物においては、(A)成分100質量部に対して、(E)成分の含有量が0.1~25質量部であることが好ましい。
【0013】
本発明の難燃性樹脂組成物においては、(B)成分と(C)成分の含有比率が、質量比で20:80~60:40であることが好ましい。
【0014】
本発明の難燃性樹脂組成物においては、(C)成分がピロリン酸ピペラジンを含有することが好ましい。
【0015】
本発明の難燃性樹脂組成物においては、さらに、(F)成分:酸化亜鉛を、(B)成分と(C)成分との合計100質量部に対して、0.01~10質量部含有することが好ましい。
【0016】
本発明の難燃性樹脂組成物においては、(A)成分がポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の成形体は、上記難燃性樹脂組成物から得られることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、優れた難燃性、機械特性および成形加工時の加工性を有する新たな難燃性樹脂組成物およびその成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。
<難燃剤組成物>
本発明の難燃性樹脂組成物は、下記(A)~(E)成分を含有する。
(A)成分:酸未変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミンおよびポリリン酸メラミンからなる群から選択される1種以上のメラミン塩
(C)成分:オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジンおよびポリリン酸ピペラジンからなる群から選択される1種以上のピペラジン塩
(D)成分:ガラス繊維
(E)成分:酸価が5~100KOHmg/gであり、重量平均分子量が10,000~100,000である酸変性樹脂
【0020】
(A)酸未変性ポリオレフィン系樹脂は、1種以上のオレフィンモノマーが重合または共重合して得られる重合体である。オレフィンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、α-オレフィンまたはジエンが挙げられる。α-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等が挙げられ、ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン、1,11-ドデカジエン等が挙げられる。また、(A)酸未変性ポリオレフィン系樹脂には、これら以外にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル基含有モノマー等の他の共重合成分が含まれていてもよい。
【0021】
(A)酸未変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ヘミアイソタクチックポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ステレオブロックポリプロピレン、ポリ-3-メチル-1-ブテン、ポリ-3-メチル-1-ペンテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、インパクトコポリマーポリプロピレン、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール樹脂(EVOH)等のα-オレフィン共重合体、およびこれらの塩素化物等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、これら2種以上がブレンドされたものまたはアロイ化されたものであってもよい。
【0022】
本発明の難燃性樹脂組成物においては、(A)酸未変性ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンホモポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー(例えば、エチレン-プロピレンランダムコポリマー等)等、エチレン-プロピレン-1-ブテンターポリマー、プロピレンと他のα-オレフィン(例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等)との共重合体、エチレン-プロピレンコポリマーを含むエチレン-プロピレンブロックコポリマー(例えば、インパクトコポリマーポリプロピレン、TPO等)、およびこれらの塩素化物等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂は、これら2種以上をブレンドしたものであってもよく、樹脂がアロイ化されたものであってもよく、ブロックコポリマーであってもよい。
【0023】
また、(A)酸未変性ポリオレフィン系樹脂は、エチレン-プロピレンコポリマーを含むことがさらに好ましい。この場合、成形品に特に優れた耐衝撃性を付与できる。このようなポリオレフィン系樹脂としては、例えば、上述したエチレン-プロピレンコポリマー(例えば、エチレン-プロピレンランダムコポリマー等)等、エチレン-プロピレンブロックコポリマー(例えば、インパクトコポリマーポリプロピレン、TPO等)等が挙げられる。
【0024】
本発明の難燃性樹脂組成物に係る(A)酸未変性ポリオレフィン系樹脂は、重合触媒・助触媒の種類や有無、立体規則性、平均分子量、分子量分布、特定の分子量成分の有無や比率、比重、粘度、各種溶媒への溶解度、伸び率、衝撃強度、結晶化度、X線回折、有機過酸化物またはエネルギー線の照射およびこれら処理の組合せによる架橋処理の有無等によらず用いることができる。
【0025】
本発明の難燃性樹脂組成物に係る(B)成分であるメラミン塩は、リン酸類とメラミンとの塩である。本発明の難燃性樹脂組成物において、リン酸類とは、五酸化二リンが水和してできる酸を意味し、具体的には、オルトリン酸、ピロリン酸およびポリリン酸が挙げられる。これらリン酸類はそれぞれ単独で用いることができ、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
(B)成分は、オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミンおよびポリリン酸メラミンからなる群から選択され、これらは単独でも混合物で使用されてもよい。これらの中でも難燃性、ハンドリング性、保存安定性の点からピロリン酸メラミンおよびポリリン酸メラミンから選択される1種以上を含有することが好ましく、特にピロリン酸メラミンを含有することが好ましい。これらを混合物で使用する場合は、ピロリン酸メラミンの含有割合が高いほど好ましい。また、ピロリン酸メラミンの、ピロリン酸とメラミンの比は、モル比で1:2のものが好ましい。
【0027】
これらリン酸類とメラミンとの塩は、それぞれ対応するリン酸またはリン酸塩とメラミンまたはメラミン塩酸塩を反応させることによって得ることができる。このようなリン酸塩としては、例えば、第一リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸ナトリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム等が挙げられる。
【0028】
また、ピロリン酸メラミンおよびポリリン酸メラミンは、オルトリン酸メラミンを加熱縮合して得てもよい。(B)成分は、オルトリン酸メラミンを加熱縮合させて得られたピロリン酸メラミンおよびポリリン酸メラミンから選択される1種以上を含むことが好ましく、特にピロリン酸メラミンを含むことが好ましい。
【0029】
本発明の難燃性樹脂組成物に係る(C)成分であるピペラジン塩は、リン酸類とピペラジンとの塩である。(C)成分は、オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジンおよびポリリン酸ピペラジンからなる群から選択され、これらは単独でも混合物で使用されてもよい。これらの中でも難燃性、ハンドリング性、保存安定性の点から、ピロリン酸ピペラジンが好ましく、混合物で使用する場合は、ピロリン酸ピペラジンの含有割合が高いほど好ましい。また、ピロリン酸ピペラジンの、ピロリン酸とピペラジンの比は、モル比で1:1のものが好ましい。
【0030】
これらリン酸類とピペラジンの塩は、それぞれ対応するリン酸またはリン酸塩とピペラジンまたはピペラジン塩酸塩を反応させることで得ることができる。リン酸塩としては、上述したものを用いることができる。また、ピロリン酸ピペラジンおよびポリリン酸ピペラジンは、オルトリン酸ピペラジンを加熱縮合して得てもよい。特に、(C)成分として使用されるピペラジン塩は、オルトリン酸ピペラジンを加熱縮合させて得られたピロリン酸ピペラジンまたはポリリン酸ピペラジンを含むことが好ましく、特にピロリン酸ピペラジンを含むことが好ましい。
【0031】
本発明の難燃性樹脂組成物における(B)成分および(C)成分の合計含有量は、難燃性、機械特性および加工性の点から、(A)成分100質量部に対して10~200質量部であることが好ましく、20~100質量部がより好ましく、40~80質量部がさらにより好ましい。
【0032】
本発明の難燃性樹脂組成物における(B)成分と(C)成分の含有割合は、難燃性の点から、(B)成分と(C)成分の質量比で20:80~60:40が好ましく、30:70~50:50がより好ましい。
【0033】
本発明の難燃性樹脂組成物における(B)成分および(C)成分には、シリコーンオイル、エポキシ系カップリング剤および滑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有させることが好ましい。これにより、(B)成分および(C)成分が凝集することを抑制し、保存安定性の向上と、樹脂組成物中での分散性向上や難燃性向上が期待できる。
【0034】
シリコーンオイルの例としては、ポリシロキサンの側鎖、末端が全てメチル基であるジメチルシリコーンオイル、ポリシロキサンの側鎖、末端がメチル基であり、その側鎖の一部がフェニル基であるメチルフェニルシリコーンオイル、ポリシロキサンの側鎖、末端がメチル基であり、その側鎖の一部が水素であるメチルハイドロジェンシリコーンオイル等や、これらのコポリマーが挙げられ、またこれらの側鎖および/または末端の一部に有機基を導入した、アミン変性、エポキシ変性、脂環式エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メルカプト変性、ポリエーテル変性、長鎖アルキル変性、フロロアルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、高級脂肪酸アミド変性、シラノール変性、ジオール変性、フェノール変性および/またはアラルキル変性、させた変性シリコーンオイルを使用することができる。
【0035】
シリコーンオイルの具体例を挙げると、ジメチルシリコーンオイルとして、KF-96(信越化学(株)製)、KF-965(信越化学(株)製)、KF-968(信越化学(株)製)等が挙げられ、メチルハイドロジェンシリコーンオイルとして、KF-99(信越化学(株)製)、KF-9901(信越化学(株))、HMS-151(Gelest社製)、HMS-071(Gelest社製)、HMS-301(Gelest社製)、DMS-H21(Gelest社製)等が挙げられ、メチルフェニルシリコーンオイルの例としては、KF-50(信越化学(株)製)、KF-53(信越化学(株)製)、KF-54(信越化学(株)製)、KF-56(信越化学(株)製)等が挙げられ、エポキシ変性品としては、例えば、X-22-343(信越化学(株)製)、X-22-2000(信越化学(株)製)、KF-101(信越化学(株)製)、KF-102(信越化学(株)製)、KF-1001(信越化学(株)製)、カルボキシル変性品としては、例えば、X-22-3701E(信越化学(株)製)、カルビノール変性品としては、例えば、X-22-4039(信越化学(株)製)、X-22-4015(信越化学(株)製)、アミン変性品としては、例えば、KF-393(信越化学(株)製)等が挙げられる。
【0036】
本発明の難燃性樹脂組成物において、シリコーンオイルの中でも、凝集防止、保存安定性の向上、樹脂組成物中での分散性向上の点から、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが好ましい。
【0037】
本発明の難燃性樹脂組成物における(B)成分および(C)成分にシリコーンオイルを含有させる場合のシリコーンオイルの含有量は、シリコーンオイルを含有することによる上記効果を高める点から、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、0.01~3質量部が好ましく、0.1~1質量部がより好ましい。
【0038】
エポキシ系カップリング剤は、凝集抑制、保存安定性の向上、耐水性、耐熱性の付与という機能を有する。エポキシ系カップリング剤としては、例えば、一般式A-(CH2)k-Si(OR)3で表される化合物であってエポキシ基を有する化合物が挙げられる。Aはエポキシ環を有する基であり、kは1~3の数を表し、Rはメチル基またはエチル基を表す。Aのエポキシ環を有する基としては、グリシドキシ基や3,4-エポキシシクロヘキシル基が挙げられる。
【0039】
エポキシ系カップリング剤の具体例としては、例えば、エポキシ基を有するシランカップリング剤として、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0040】
本発明の難燃性樹脂組成物における(B)成分および(C)成分にエポキシ系カップリング剤を含有させる場合のエポキシ系カップリング剤の含有量は、エポキシ系カップリング剤を含有することによる上記の効果を高める点から、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、0.01~3質量部が好ましく、0.1~1質量部がより好ましい。
【0041】
滑剤としては、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、合成パラフィン、低分子量ポリエチレン、ポリエチレンワックス等の純炭化水素系滑剤;ハロゲン化炭化水素系滑剤;高級脂肪酸、オキシ脂肪酸等の脂肪酸系滑剤;脂肪酸アミド、ビス脂肪酸アミド等の脂肪酸アミド系滑剤;脂肪酸の低級アルコールエステル、グリセリド等の脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸のポリグリコールエステル、脂肪酸の脂肪アルコールエステル(エステルワックス)等のエステル系滑剤;金属石鹸、脂肪アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、脂肪酸と多価アルコールの部分エステル、脂肪酸とポリグリコール、ポリグリセロールの部分エステル系の滑剤や、シリコーンオイル、鉱油等が挙げられる。滑剤は1種を単独で用いることができ、2種以上を併用して用いることができる。
【0042】
本発明の難燃性樹脂組成物における(B)成分および(C)成分に滑剤を含有させる場合の滑剤の含有量は、滑剤を含有することによる上記の効果を高める点から、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して、0.01~3質量部が好ましく、0.1~0.5質量部がより好ましい。
【0043】
本発明の難燃性樹脂組成物における(D)成分であるガラス繊維は、ポリオレフィン系樹脂との濡れ性や接着性等を良好なものとするために、表面処理剤で処理されていてもよい。この表面処理剤としては、例えばシラン系、チタネート系、アルミニウム系、クロム系、ジルコニウム系、ボラン系カップリング剤等が挙げられるが、これらの中でも、シラン系カップリング剤およびチタネート系カップリング剤が好ましく、特にシラン系カップリング剤が好適である。このシラン系カップリング剤としては、例えばトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0044】
また、ガラス繊維は、ガラス繊維を収束するため収束剤を使用されていてもよい。収束剤としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂,ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、澱粉、植物油等が挙げられる。
【0045】
本発明の難燃性樹脂組成物における(D)成分であるガラス繊維は、市販のものが使用できる。また、(D)成分であるガラス繊維は、加工性、難燃性およびドリップ防止の点から、単繊維を収束したチョップドストランドが好ましい。チョップドストランドのカット長は、加工性と難燃性の点から、1.0mm~5.0mmが好ましく、2.0mm~4.0mmがより好ましい。また単繊維の径は、加工性と難燃性の点から、8μm~16μmが好ましく、10μm~14μmがより好ましい。
【0046】
本発明の難燃性樹脂組成物における(D)成分の含有量は、加工性および機械特性の点から、(A)成分100質量部に対して5~200質量部であることが好ましく、10~100質量部がより好ましく、20~80質量部がさらにより好ましい。
【0047】
本発明の難燃性樹脂組成物における(E)成分である酸変性樹脂は、基材となる樹脂に酸性基が導入された樹脂である。基材となる樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、例えば、前述の(A)成分であるポリオレフィン系樹脂として例示したものが挙げられる。中でも、力学特性の点から、エチレン、プロピレン、炭素原子数4~12のα-オレフィン、ブタジエン、イソプレンが重合または共重合したものが好ましく、エチレン、プロピレン、炭素原子数4~8のα-オレフィン、ブタジエンが重合または共重合したものがより好ましく、エチレン、プロピレン、ブタジエンが重合または共重合したものがさらにより好ましい。
【0048】
(E)成分である酸変性樹脂は、酸性基を有するモノマーを基材となる樹脂にグラフト化反応させる方法、酸性基を有するモノマーと基材となる樹脂のモノマーとを共重合する方法等の、従来公知の方法により得られ、種々の市販品を使用してもよい。
【0049】
(E)成分である酸変性樹脂に導入される酸性基としては、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられ、樹脂組成物の劣化抑制の点から、カルボン酸基、カルボン酸無水物基が好ましい。
【0050】
酸性基を有するモノマーとしては、樹脂組成物の劣化抑制の点から、カルボン酸化合物、無水カルボン酸化合物が好ましく、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸がより好ましく、マレイン酸、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0051】
(E)成分は、樹脂組成物における耐水性、力学特性、劣化抑制の点から、カルボン酸変性ポリオレフィンおよび無水カルボン酸変性ポリオレフィンから選ばれる1種以上であることが好ましく、マレイン酸変性ポリオレフィンおよび無水マレイン酸変性ポリオレフィンから選ばれる1種以上であることがより好ましく、マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレンおよび無水マレイン酸変性ポリプロピレンから選ばれる1種以上であることがさらにより好ましく、マレイン酸変性ポリプロピレンおよび無水マレイン酸変性ポリプロピレンから選ばれる1種以上であることが特に好ましい。
【0052】
(E)成分の酸価の下限は、5mgKOH/g以上であり、好ましくは7mgKOH/g以上であり、より好ましくは9mgKOH/g以上である。これにより、難燃性と機械特性の向上効果を十分に得ることができる。
【0053】
(E)成分の酸価の上限は、100mgKOH/g以下であり、好ましくは80mgKOH/g以下であり、より好ましくは70mgKOH/g以下である。これにより、難燃性樹脂組成物の劣化を抑制することができる。
【0054】
この酸価は、JIS K0070に準じて、以下の(i)~(iii)の手順で測定して得られる値である。
【0055】
<酸変性樹脂の酸価測定方法>
(i)140℃に加熱したキシレン70mLに酸変性樹脂1gを溶解させる。
(ii)同温度でフェノールフタレインを指示薬として、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液(商品名「0.1mol/Lエタノール性水酸化カリウム溶液」、和光純薬(株)製)で滴定を行う。
(iii)滴定に要した水酸化カリウム量をmgに換算して酸価(単位:mgKOH/g)を算出する。
【0056】
(E)成分の重量平均分子量(以下、「Mw」とも称する)の下限は、ポリスチレン換算で、10,000以上であり、好ましくは20,000以上であり、より好ましくは25,000以上である。これにより、難燃性の向上効果を十分に得ることができる。
【0057】
(E)成分のMwの上限は、ポリスチレン換算で、100,000以下であり、好ましくは90,000以下であり、より好ましくは85,000以下である。これにより、難燃性と成形加工時の加工性に優れ、良好な外観の成形体を安定して得ることができる。
【0058】
このMwは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定されるポリスチレン換算で示される値である。
【0059】
本発明の難燃性樹脂組成物における(E)成分の含有量は、難燃性、加工性および機械特性の点から、(A)成分100質量部に対して0.1~25質量部であることが好ましく、0.5~20質量部がより好ましく、1~15質量部がさらにより好ましい。
【0060】
本発明の難燃性樹脂組成物には、必須成分である(A)~(E)成分と共に、他の任意成分を配合してもよい。(A)~(E)成分および他の任意成分を本発明の樹脂組成物に配合するタイミングは特に制限されない。例えば、(A)成分以外の各成分を(A)酸未変性ポリオレフィン樹脂に対して順次配合してもよく、予め(A)~(E)成分および他の任意成分の中から選択された2種以上をワンパック化してから他の成分に配合してもよい。
【0061】
以下、本発明の難燃性樹脂組成物に配合できる他の任意成分について説明する。
本発明の難燃性樹脂組成物は、助剤を含有してもよい。助剤としては、難燃助剤、ドリップ防止助剤、加工助剤等が挙げられる。難燃助剤は、金属酸化物や多価アルコール化合物を含むことができる。これにより、樹脂の難燃性を向上できる。
【0062】
金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化バリウム、二酸化錫、二酸化鉛、酸化アンチモン、酸化モリブデン、酸化カドミウム等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これにより、樹脂の難燃性を向上できる。また、粉粒状の難燃剤組成物中において凝集が発生することを抑制できる。中でも、難燃性の観点から、酸化亜鉛が好ましい。なお、本明細書において、酸化亜鉛を(F)成分とも称する。
【0063】
(F)成分である酸化亜鉛は、表面処理されていてもよく、表面処理されてなくてもよい。酸化亜鉛としては、例えば、酸化亜鉛1種(三井金属工業(株)製)、部分被膜型酸化亜鉛(三井金属工業(株)製)、ナノファイン50(平均粒径0.02μmの超微粒子酸化亜鉛:堺化学工業(株)製)、ナノファインK(平均粒径0.02μmの珪酸亜鉛被膜した超微粒子酸化亜鉛:堺化学工業(株)製)等の市販品を使用してもよい。
【0064】
多価アルコール化合物は、複数のヒドロキシ基が結合している化合物であり、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、キシロース、スクロース(シュクロース)、トレハロース、イノシトール、フルクトース、マルトース、ラクトース等が挙げられる。これら多価アルコール化合物のうち、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール等の、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールの縮合物の群から選ばれる一種以上が好ましく、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールの縮合物が特に好ましく、ジペンタエリスリトールが最も好ましい。また、THEICおよびソルビトールも好適に使用できる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
本発明の難燃性樹脂組成物が、これら難燃助剤を含有する場合の難燃助剤の含有量は、(B)成分と(C)成分との合計100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.5~7質量部がさらに好ましい。難燃助剤の含有量が上記範囲内にあることにより、難燃性が向上し、加工性への悪影響を抑制することができる。
【0066】
ドリップ防止助剤としては、層状ケイ酸塩、フッ素系ドリップ防止助剤、およびシリコーンゴム類が挙げられる。これにより、樹脂の燃焼時におけるドリップを抑制できる。
【0067】
層状ケイ酸塩は、層状のケイ酸塩鉱物であり、天然または合成のいずれでもよく、特に限定されるものではない。層状ケイ酸塩として、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物や、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ、タルク等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
ドリップ防止の観点から、これらの中でもサポナイトまたはタルクが好ましく、価格等の経済性の観点から、特にタルクが好ましい。
【0069】
層状のケイ酸塩は、層間にカチオンを有していてもよい。このカチオンは、金属イオンであってもよいし、その一部または全部が、有機カチオン、(第4級)アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等の、金属イオン以外のカチオンであってもよい。
【0070】
金属イオンとして、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、リチウムイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン等が挙げられる。
【0071】
有機カチオンまたは第4級アンモニウムカチオンとして、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムカチオン、ステアリルトリメチルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、ジステアリルジメチルアンモニウムカチオン、ジ硬化牛脂ジメチルアンモニウムカチオン、ジステアリルジベンジルアンモニウムカチオン等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
フッ素系ドリップ防止助剤の具体例としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系樹脂やパーフルオロメタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロ-n-ブタンスルホン酸カリウム塩、パーフルオロ-t-ブタンスルホン酸カリウム塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロ-2-エチルヘキサンスルホン酸カルシウム塩等のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩化合物またはパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。中でも、ドリップ防止性の点から、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
加工助剤としては、公知の加工助剤の中から適宜選択することができるが、アクリル酸系加工助剤を含んでもよい。
【0074】
アクリル酸系加工助剤としては、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレートの単独重合体または共重合体;前記アルキルメタクリレートと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレートとの共重合体;前記アルキルメタクリレートと、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物との共重合体;前記アルキルメタクリレートと、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物等との共重合体等を挙げることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
本発明の難燃性樹脂組成物は、必要に応じて更に、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等を含有することが好ましい。
【0076】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-第三ブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’-チオビス(6-第三ブチル-m-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-第三ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-第三ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-第三ブチル-m-クレゾール)、2,2’-エチリデンビス(4,6―ジ-第三ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4-第二ブチル-6-第三ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、2-第三ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-第三ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス〔3-(3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2-第三ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-第三ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。これらのフェノール系酸化防止剤の使用量は、(A)成分であるポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.001~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましい。
【0077】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2-第三ブチル-4-(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-第三ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラキス(トリデシル)-4,4’-n-ブチリデンビス(2-第三ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサキス(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、2,2’-メチレンビス(4,6-第三ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-第三ブチルフェニル)-オクタデシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2-〔(2,4,8,10-テトラキス-第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ〕エチル)アミン、2-エチル-2-ブチルプロピレングリコールと2,4,6-トリ-第三ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。これらのリン系酸化防止剤の使用量は、(A)成分であるポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.001~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましい。
【0078】
チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類、およびペンタエリスリトールテトラキス(β-アルキルメルカプトプロピオネート類が挙げられる。これらのチオエーテル系酸化防止剤の使用量は、(A)成分であるポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.001~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましい。
【0079】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)等の2-ヒドロキシベンゾフェノン類;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-第三ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’-第三ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-5’-第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-第三オクチル-6-(ベンゾトリアゾリル)フェノール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-第三ブチル-5’-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ-第三ブチルフェニル-3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ-第三アミルフェニル-3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2-エチル-2’-エトキシオキザニリド、2-エトキシ-4’-ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル-α-シアノ-β、β-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ-第三ブチルフェニル)-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシ-5-メチルフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ-第三ブチルフェニル)-s-トリアジン等のトリアリールトリアジン類が挙げられる。これらの紫外線吸収剤の使用量は、(A)成分であるポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.001~30質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましい。
【0080】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ビス(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ビス(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノ-ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-第三オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8-12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-オクチルオキシ-4-ピペリジル)デカンジオアート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-ウンデシルオキシピペリジン-4-イル)カーボネート、BASF社製TINUVIN NOR 371等が挙げられる。これらのヒンダードアミン系光安定剤の使用量は、(A)成分であるポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.001~30質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましい。
【0081】
本発明の難燃性樹脂組成物は、(A)成分であるポリオレフィン系樹脂中の触媒残渣を中和するために、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の中和剤を含有することが好ましい。中和剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、エチレンビス(ステアリン酸アミド)、エチレンビス(12-ヒドロキシステアリン酸アミド)、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド化合物、または、ハイドロタルサイト等の無機化合物が挙げられ、これら中和剤は混合して用いてもよい。これらの中和剤の使用量は、(A)成分であるポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.001~3質量部であることが好ましく、0.01~1質量部であることがより好ましい。
【0082】
本発明の難燃性樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、任意成分として、(D)成分であるガラス繊維以外の充填剤を含有してもよい。
【0083】
このような充填剤としては、例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ガラス粉末、クレー、ドロマイト、シリカ、アルミナ、チタン酸カリウムウィスカー、ワラステナイト、繊維状マグネシウムオキシサルフェートおよびハイドロタルサイト等を挙げることができ、粒子径(繊維状においては繊維径や繊維長およびアスペクト比)を適宜選択して用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。また、充填剤は、必要に応じて表面処理したものを用いることができる。
【0084】
充填剤を配合する場合の配合量は、(A)成分であるポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましく、3~80質量部であることがより好ましく、5~50質量部であることがさらにより好ましい。
【0085】
本発明の難燃性樹脂組成物には、必要に応じて更に、通常合成樹脂に使用される添加剤、例えば、架橋剤、帯電防止剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、可塑剤、滑剤、強化材、上記以外の難燃剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、発泡剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、シリコーンオイル、シランカップリング剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で、配合することができる。
【0086】
本発明の難燃性樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。具体的な製造方法としては、通常のブレンダー、ミキサー等で混合する方法、押出し機等で溶融混練する方法、溶媒と共に混合し溶液流延する方法等が挙げられる。
【0087】
本発明の難燃性樹脂組成物の形状は特に制限されず、各種形態で使用することができる。例えば、ペレット状、顆粒状、粉末状、塊状等の形状が挙げられ、取り扱い性の観点から、ペレット状が好ましい。
【0088】
<成形体>
本発明の成形体は、本発明の難燃性樹脂組成物を成形することにより得られる。成形方法および成形条件については特に制限はなく、公知の成形方法および成形条件を用いることができる。具体的な成形方法としては、押出加工、カレンダー加工、射出成形、ロール、圧縮成形、ブロー成形、回転成形等が挙げられ、樹脂板、シート、フィルム、ボトル、繊維、異形品等の種々の形状の成形体を製造することができる。
【0089】
本発明の難燃性樹脂組成物およびその成形体は、電気・電子・通信、農林水産、鉱業、建設、食品、繊維、衣類、医療、石炭、石油、ゴム、皮革、自動車、精密機器、木材、建材、土木、家具、印刷、楽器等の幅広い産業分野に使用することができる。より具体的には、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、電話機、複写機、ファクシミリ、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、カード、ホルダー、文具等の事務、OA機器、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、コタツ等の家電機器、TV、VTR、ビデオカメラ、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレーヤー、スピーカー、液晶ディスプレー等のAV機器、コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、LED封止材料、電線、ケーブル、トランス、偏向ヨーク、分電盤、時計等の電気・電子部品および通信機器、OA機器等のハウジング(枠、筐体、カバー、外装)や部品、自動車内外装材の用途に用いられる。
【0090】
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物およびその成形体は、座席(詰物、表地等)、ベルト、天井張り、コンパーチブルトップ、アームレスト、ドアトリム、リアパッケージトレイ、カーペット、マット、サンバイザー、ホイルカバー、マットレスカバー、エアバック、絶縁材、吊り手、吊り手帯、電線被覆材、電気絶縁材、塗料、コーティング材、上張り材、床材、隅壁、カーペット、壁紙、壁装材、外装材、内装材、屋根材、デッキ材、壁材、柱材、敷板、塀の材料、骨組および繰形、窓およびドア形材、こけら板、羽目、テラス、バルコニー、防音板、断熱板、窓材等の、自動車、ハイブリッドカー、電気自動車、車両、船舶、航空機、建物、住宅および建築用材料や、土木材料、衣料、カーテン、シーツ、合板、合繊板、絨毯、玄関マット、シート、バケツ、ホース、容器、眼鏡、鞄、ケース、ゴーグル、スキー板、ラケット、テント、楽器等の生活用品、スポーツ用品、等の各種用途に使用される。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に示す。以下の実施例に示す材料、物質、配合量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。なお、以下の実施例において、特に記載のない限り、成分の配合量は質量基準である。
【0092】
<リン酸塩系難燃剤の製造>
(B)成分と(C)成分を、以下の製造例の方法で製造した。
【0093】
〔製造例1〕
(B)成分:メラミン塩
オルトリン酸メラミンを220℃で6時間、固相状態で加熱縮合反応させて、ピロリン酸メラミンを主成分とするメラミン塩を製造した。メラミン塩は精製せずにそのまま用いた。メラミン塩中のピロリン酸メラミンの純度は、98.5%だった。なお、純度は、イオンクロマトグラフ測定装置ICS-2100(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)、Dionex IonPac AS-19カラム(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)、電気伝導度検出器を用いて測定した。
【0094】
〔製造例2〕
(C)成分:ピペラジン塩
二リン酸ピペラジンを250℃で1時間、固相状態で加熱縮合反応させて、ピロリン酸ピペラジンを主成分とするピペラジン塩を製造した。ピペラジン塩は精製せずにそのまま用いた。ピペラジン塩中のピロリン酸ピペラジンの純度は、99.0%だった。なお、純度は、イオンクロマトグラフ測定装置ICS-2100(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)、Dionex IonPac AS-19カラム(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)、電気伝導度検出器を用いて測定した。
【0095】
<難燃性樹脂組成物の製造>
・実施例1~21、比較例1~14
表1~5に示す成分を同表に示す割合で配合し、さらに(A)成分である樹脂100質量部当たり、中和剤(ステアリン酸カルシウム)0.05質量部、フェノール系酸化防止剤(アデカスタブAO-60、ADEKA製)0.1質量部、リン系酸化防止剤(アデカスタブ2112、ADEKA製)0.1質量部を配合し、ヘンシェルミキサーで混合して難燃性樹脂組成物を得た。なお、表中の各成分の単位は質量部である。
【0096】
この難燃性樹脂組成物を、二軸押出機(TEX25αIII、日本製鋼所製)を用いて、造粒し、ペレット状の難燃性樹脂組成物を得た。造粒の加工条件は、実施例1~20および比較例1~13の組成物では、220℃、10kg/時間の条件で行い、実施例21および比較例14の組成物では、200℃、10kg/時間の条件で行った。このペレットを用いて、難燃性、機械特性、加工性の評価を行った。
【0097】
<難燃性評価1:UL-94V>
得られたペレット状の難燃性樹脂組成物を射出成形機(NEX80、日精樹脂工業社製)にて成形し、UL-94V測定用試験片(127mm×12.7mm×1.6mm)を作製した。射出成形の加工条件は、実施例1~20および比較例1~13の組成物では、樹脂温度230℃、金型温度50℃の条件で行い、実施例21および比較例14の組成物では、樹脂温度200℃、金型温度50℃の条件で行った。得られた試験片を23℃、湿度60%RHの恒温恒湿槽内に7日間静置した後、UL-94V規格に準拠して燃焼ランクをつけた。燃焼ランクはV-0が最高のものであり、V-1、V-2となるにしたがって難燃性は低下する。ただし、V-0~V-2のランクの何れにも該当しないものはNR(No Rating)とした。結果を表1~5に併記する。
【0098】
<難燃性評価2:酸素指数>
得られたペレット状の難燃性樹脂組成物を射出成形機(NEX80、日精樹脂工業社製)にて成形し、酸素指数測定用試験片(80mm×10mm×4mm)を作製した。射出成形の加工条件は、実施例1~20および比較例1~13の組成物では、樹脂温度230℃、金型温度50℃の条件で行い、実施例21および比較例14の組成物では、樹脂温度200℃、金型温度50℃の条件で行った。得られた試験片を23℃、湿度60%RHの恒温恒湿槽内に7日間静置した後、JIS K7201-2に準拠して試験片の酸素指数を測定した。酸素指数は、窒素と酸素の混合ガス中で、垂直の小型試験片が燃焼を維持する最少酸素濃度であり、この値が高いほど燃えにくいと言える。結果を表1~5に併記する。
【0099】
<機械特性評価1:曲げ弾性率>
得られたペレット状の難燃性樹脂組成物を射出成形機(NEX80、日精樹脂工業社製)にて成形し、荷重たわみ温度測定用試験片(80mm×10mm×4mm)を作製した。射出成形の加工条件は、実施例1~20および比較例1~13の組成物では、樹脂温度230℃、金型温度50℃の条件で行い、実施例21および比較例14の組成物では、樹脂温度200℃、金型温度50℃の条件で行った。得られた試験片を23℃、湿度60%RHの恒温恒湿槽内に7日間静置した後、ISO178に準拠して試験片の曲げ弾性率(MPa)を測定した。結果を表1~5に併記する。
【0100】
<機械特性評価2:荷重たわみ温度(HDT)>
得られたペレット状の難燃性樹脂組成物を射出成形機(NEX80、日精樹脂工業社製)にて成形し、荷重たわみ温度測定用試験片(80mm×10mm×4mm)を作製した。射出成形の加工条件は、実施例1~20および比較例1~13の組成物では、樹脂温度230℃、金型温度50℃の条件で行い、実施例21および比較例14の組成物では、樹脂温度200℃、金型温度50℃の条件で行った。得られた試験片を23℃、湿度60%RHの恒温恒湿槽内に7日間静置した後、ISO75-2(荷重1.8MPa)に準拠して、荷重たわみ温度(℃)を測定した。結果を表1~5に併記する。
【0101】
<機械特性評価3:シャルピー衝撃強度>
得られたペレット状の難燃性樹脂組成物を射出成形機(NEX80、日精樹脂工業社製)にて成形し、シャルピー衝撃強さ測定用試験片(80mm×10mm×4mm)を作製した。射出成形の加工条件は、実施例1~20および比較例1~13の組成物では、樹脂温度230℃、金型温度50℃の条件で行い、実施例21および比較例14の組成物では、樹脂温度200℃、金型温度50℃の条件で行った。得られた試験片を23℃、湿度60%RHの恒温恒湿槽内に7日間静置した後、試験片にノッチを付与した。ノッチを付与した試験片を温度23℃、湿度60%RHの恒温恒湿槽内に5日間静置した後、恒温恒湿槽から試験片を取り出し、ISO179-1に準拠してシャルピー衝撃強度(kJ/m2)を測定した。結果を表1~5に併記する。
【0102】
<加工性評価>
上記で得られたペレットの表面粗さの状態、切断面の気泡状態を目視により評価し加工性ランクを付けた。加工性ランクは以下の指標によって判定した。
A:表面荒れおよび切断面の気泡が目視で確認できず、実用上満足できる。
B:表面荒れまたは切断面の気泡が目視で確認でき、実用上不満足である。
【0103】
<重量平均分子量(Mw)測定方法>
表1~5中の無水マレイン酸変性ポリプロピレン、(E)-1~(E)-5および(E)’-1、(E)’-2の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定した。測定条件は以下のとおりである。
【0104】
装置 :高温ゲルパーミエイションクロマトグラフ
(装置名:Viscotek HT-GPC、スペクトリス(株)製)
溶媒 :オルトジクロロベンゼン
基準物質 :ポリスチレン
検出器 :屈折率検出器
カラム固定相:TSKgel GMHHR-HHT、2本直列、東ソー株式会社製
カラム温度 :140℃
サンプル濃度:3mg/1mL
流量 :1.0mL/min
注入量 :100μL
【0105】
【表1】
*1:中和剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を含む
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
表1~5中の各成分の詳細は次の通りである。
(A)-1:インパクトコポリマーポリプロピレン(メルトフローレート(JIS K7210に準拠、荷重2.16kg、温度230℃)=30g/10min)
(A)-2:ホモポリプロピレン(メルトフローレート(JIS K7210に準拠、荷重2.16kg、温度230℃)=30g/10min)
(A)-3:高密度ポリエチレン(メルトフローレート(JIS K7210に準拠、荷重2.16kg、温度190℃)=40g/10min
(B):メラミン塩(上述の製造例1で製造したもの)
(C):ピペラジン塩(上述の製造例2で製造したもの)
(D):ガラス繊維(チョップドストランドCS3PE-455S(日東紡績製、カット長3.0mm、単繊維径13μm))
(E)-1:無水マレイン酸変性ポリプロピレン1(酸価=9.5mgKOH/g、Mw=75,000)
(E)-2:無水マレイン酸変性ポリプロピレン2(酸価=47mgKOH/g、Mw=80,000)
(E)-3:無水マレイン酸変性ポリプロピレン3(酸価=66mgKOH/g、Mw=45,000)
(E)-4:無水マレイン酸変性ポリプロピレン4(酸価=52mgKOH/g、Mw=30,000)
(E)-5:無水マレイン酸変性ポリエチレン(酸価=19mgKOH/g、Mw=40,000)
(E)’-1:無水マレイン酸変性ポリプロピレン5(酸価=3.5mgKOH/g、Mw=9,000)
(E)’-2:無水マレイン酸変性ポリプロピレン6(酸価=21.4mgKOH/g、Mw=160,000)
(F):酸化亜鉛
【0111】
実施例1~21と比較例1~14との比較から、本発明の難燃性樹脂組成物は、難燃性、機械特性、加工性のすべてにおいて優れた評価結果を示した。
【0112】
一方、(E)成分を配合しない組成(比較例1、4)や、酸価または重量平均分子量が本発明の範囲外の酸変性樹脂を使用した組成(比較例2、3、5、6)の場合、難燃性、機械特性、加工性のいずれかにおいて、実施例1~21よりも劣る結果だった。