(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】ハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物
(51)【国際特許分類】
B01J 20/08 20060101AFI20240430BHJP
C01F 7/785 20220101ALI20240430BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20240430BHJP
A61K 8/26 20060101ALI20240430BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20240430BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B01J20/08 C
C01F7/785
B01J20/28 Z
A61K8/26
A61K8/27
A61Q11/00
(21)【出願番号】P 2020095605
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横川 善之
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-193000(JP,A)
【文献】国際公開第2013/038680(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/124191(WO,A1)
【文献】特開2015-182908(JP,A)
【文献】特開2019-042639(JP,A)
【文献】国際公開第2008/015784(WO,A1)
【文献】特開平07-163870(JP,A)
【文献】特開平06-007672(JP,A)
【文献】特開平09-313928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28,20/30-20/34
C01F 1/00-17/00
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価の亜鉛イオン及び3価のアルミニウムイオンを含むハイドロタルサイト化合物を含有し、結晶子径が1~20nmである、ハイドロタルサイトナノ粒子を含有する、液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤。
【請求項2】
前記ハイドロタルサイト化合物が、一般式(1):
[Zn
2+
1-xAl
3+
x(OH)
2][(A
n-)
x/n・mH
2O] (1)[式中、0<x<1を示す。A
n-は陰イオンを示す。nは1又は2を示す。mは1以上の整数を示す。]
で表される組成を有する、請求項1に記載の液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤。
【請求項3】
前記xが0.2~0.6である、請求項2に記載の液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤。
【請求項4】
ハイドロタルサイトナノ粒子が、粒度分布において、少なくとも、極大粒子径が0.30~0.45μmであるピーク、及び極大粒子径が7.50~12.00μmであるピークを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤を含有する、口臭除去剤。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤の製造方法であって、
亜鉛塩及びアルミニウム塩を含む水溶液と、界面活性剤を含む水溶液とを混合する工程を備える、製造方法。
【請求項7】
前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤である、請求項
6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記界面活性剤を含む水溶液が、さらに、オキソ酸塩を含む、請求項
6又は
7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記混合工程において、混合中にpHが9~12となるように調整する、請求項
6~
8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記混合工程の後、混合後の水溶液を攪拌する工程を備える、請求項
6~
9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
液相中の揮発性硫黄化合物の吸着方法であって、
液相中で、液相中の揮発性硫黄化合物と、請求項1~
4のいずれか1項に記載の液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤とを接触させる工程
を備える、方法。
【請求項12】
前記接触工程が、0~50℃で行われる、請求項
11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内細菌が歯に堆積することで歯垢(デンタルプラーク)が形成されると、細菌が歯肉を炎症させ、歯と歯肉の間の上皮付着を破壊することで、歯周ポケットが発生し、ポケット底部に歯周病原性グラム陰性嫌気性菌が存在するようになり、口腔内の含硫アミノ酸であるメチオニン、システイン等が分解され、硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルスルフィド等の揮発性硫黄化合物(VSC:Volatile Sulfer Compounds)が発生する。揮発性硫黄化合物(VSC)には強い忌避感があり、口臭の指標物質となっている。また、揮発性硫黄化合物(VSC)濃度が高くなると、歯肉組織の破壊、歯周病の悪化、虫歯の再発、虫歯治療に用いる補綴材の黒化等が発生する。
【0003】
このため、口腔内の揮発性硫黄化合物(VSC)濃度を減少させ,歯周ポケットが改善されることが口臭改善に有効であるが、揮発性硫黄化合物(VSC)を吸着及び除去できる材料は市販品には見当たらない。このため、揮発性硫黄化合物(VSC)を吸着し消臭する要望は高い。例えば、特許文献1では、硫酸ヒドロキシルアミンと有機ヒドラジド化合物と、酸化亜鉛とスメクタイトの混合物にハイドロタルサイトを含有させたものが硫化水素に対する吸着性(消臭性)を有するという報告がされている。
【0004】
ところで、ハイドロタルサイト化合物は、アニオン交換機能を有する層状複水酸化物であり、例えば、一般式(1):
[M1
2+
1-xM2
3+
x(OH)2][(An-)x/n・mH2O] (1)
[式中、M1は2価金属を示す。M2は3価金属を示す。0<x<1を示す。An-は陰イオンを示す。nは1又は2を示す。mは1以上の整数を示す。]
で表される組成を有する。
【0005】
例えば、M1として亜鉛を採用したハイドロタルサイト化合物は、さまざまな局面で吸着剤として利用されている。
【0006】
口臭除去剤として、液相中の揮発性硫黄化合物(VSC)をハイドロタルサイトに吸着させるという報告もある(例えば、特許文献2参照)。ここでは、M1
2+としてMgが選ばれた例が開示されている。
【0007】
特許文献1を参照すると、硫化水素等の揮発性硫黄化合物は、吸着剤(結果として消臭剤ともいえる。)の需要があるが、吸着性の高いものは得られていないという現状がある。
【0008】
一方、特許文献2では、水中の揮発性硫黄化合物をよく吸着するハイドロタルサイトが紹介されている。しかし、これはハイドロタルサイトを合成した後、さらに加熱したハイドロタルサイト[Mg2+
1-xAl3+
x(OH)2][(CO3
2-)x/2]である。この場合、水中の揮発性硫黄化合物を吸着させるには、層構造を解消させるために500℃という高温での熱処理も必要であった。
【0009】
それに対して、特許文献3には、以下の組成式:
[Zn2+
1-xAl3+
x(OH)2][(CO3
2-)x/2・mH2O]
を有するハイドロタルサイト化合物が、熱処理を行うことなく、液相中の揮発性硫黄化合物を吸着することができることが報告されており、マウスガード等への適用が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2011-030967号公報
【文献】国際公開第2012/150459号
【文献】特開2015-193000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献3によれば、熱処理を行うことなく、液相中の揮発性硫黄化合物を良好に吸着することができる。ただし、吸着開始直後の揮発性硫黄化合物の吸着性能には改善の余地があった。特に、練歯磨剤等の口腔用組成物として使用する場合には、長時間の歯磨きをすることは現実的ではないため、吸着開始直後の揮発性硫黄化合物の吸着性能は重要である。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決しようとするものであり、高温での熱処理を行うことなく、液相中の揮発性硫黄化合物を良好に吸着することができ、且つ、吸着開始直後の揮発性硫黄化合物の吸着性能に優れた材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねてきた結果、2価の亜鉛イオン及び3価のアルミニウムイオンを含むハイドロタルサイト化合物を含むハイドロタルサイトナノ粒子の結晶子径を1~20nmに調整することで、上記課題を解決することができることを見出した。なお、上記のような結晶子径は、界面活性剤を使用することで1~20nmに調整することが可能である。本発明者は、以上の知見をもとにさらに研究を重ね、本発明を完成した。即ち、本発明は、以下の構成を包含する。
【0014】
項1.2価の亜鉛イオン及び3価のアルミニウムイオンを含むハイドロタルサイト化合物を含有し、結晶子径が1~20nmである、ハイドロタルサイトナノ粒子を含有する、液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤。
【0015】
項2.前記ハイドロタルサイト化合物が、一般式(1):
[Zn2+
1-xAl3+
x(OH)2][(An-)x/n・mH2O] (1)
[式中、0<x<1を示す。An-は陰イオンを示す。nは1又は2を示す。mは1以上の整数を示す。]
で表される組成を有する、項1に記載の液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤。
【0016】
項3.前記xが0.2~0.6である、項2に記載の液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤。
【0017】
項4.ハイドロタルサイトナノ粒子が、粒度分布において、少なくとも、極大粒子径が0.30~0.45μmであるピーク、及び極大粒子径が7.50~12.00μmであるピークを有する、項1~3のいずれか1項に記載の液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤。
【0018】
項5.2価の亜鉛イオン及び3価のアルミニウムイオンを含むハイドロタルサイト化合物と、界面活性剤とを含有する、ハイドロタルサイト組成物を含有する、液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤。
【0019】
項6.前記ハイドロタルサイト化合物が、一般式(1):
[Zn2+
1-xAl3+
x(OH)2][(An-)x/n・mH2O] (1)
[式中、0<x<1を示す。An-は陰イオンを示す。nは1又は2を示す。mは1以上の整数を示す。]
で表される組成を有する、項5に記載の液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤。
【0020】
項7.前記xが0.2~0.6である、項5又は6に記載の液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤。
【0021】
項8.前記ハイドロタルサイト組成物の総量を100質量%として、前記ハイドロタルサイト化合物の含有量が90.0~99.9質量%である、項5~7のいずれか1項に記載の液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤。
【0022】
項9.項1~8のいずれか1項に記載の液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤を含有する、口臭除去剤。
【0023】
項10.項1~8のいずれか1項に記載の液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤の製造方法であって、
亜鉛塩及びアルミニウム塩を含む水溶液と、界面活性剤を含む水溶液とを混合する工程
を備える、製造方法。
【0024】
項11.前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤である、項10に記載の製造方法。
【0025】
項12.前記界面活性剤を含む水溶液が、さらに、オキソ酸塩を含む、項10又は11に記載の製造方法。
【0026】
項13.前記混合工程において、混合中にpHが9~12となるように調整する、項10~12のいずれか1項に記載の製造方法。
【0027】
項14.前記混合工程の後、混合後の水溶液を攪拌する工程を備える、項10~13のいずれか1項に記載の製造方法。
【0028】
項15.液相中の揮発性硫黄化合物の吸着方法であって、
液相中で、液相中の揮発性硫黄化合物と、項1~8のいずれか1項に記載の液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤とを接触させる工程
を備える、方法。
【0029】
項16.前記接触工程が、0~50℃で行われる、項15に記載の方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、高温での熱処理を行うことなく、液相中の揮発性硫黄化合物を良好に吸着することができ、且つ、吸着開始直後の揮発性硫黄化合物の吸着性能に優れた材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】比較例1の生成物A、実施例1の生成物B及び実施例2の生成物Cの粉末X線回折図形である。(a)生成物A、(b)生成物B、(c)生成物C、(d)亜鉛アルミニウムカーボネートヒドロキシドハイドレート(ICDD♯48-1023)。
【
図2】参考例1の生成物D、参考例2の生成物E及び参考例3の生成物Fの粉末X線回折図形である。(a)生成物D、(b)生成物E、(c)生成物F、(d)ジンカイト(ICDD♯36-1451)。
【
図3】比較例1の生成物A(上図)、実施例1の生成物B(中図)、実施例2の生成物C(下図)のHall Plotを示す。
【
図4】参考例1の生成物D(上図)、参考例2の生成物E(中図)、参考例3の生成物F(下図)のHall Plotを示す。
【
図5】比較例1の生成物AのSEM像及びEDSプロファイルを示す。
【
図6】実施例1の生成物BのSEM像及びEDSプロファイルを示す。
【
図7】実施例2の生成物CのSEM像及びEDSプロファイルを示す。
【
図8】参考例1の生成物D(上図)、参考例2の生成物E(中図)、参考例3の生成物F(下図)のSEM像を示す。
【
図9】比較例1の生成物A、実施例1の生成物B及び実施例2の生成物CのFT-IRスペクトルを示す。(a)生成物A、(b)生成物B、(c)生成物C。
【
図10】参考例1の生成物D、参考例2の生成物E及び参考例3の生成物FのFT-IRスペクトルを示す。(a)生成物D、(b)生成物E、(c)生成物F。
【
図11】比較例1の生成物A(上図)、実施例1の生成物B(中図)、実施例2の生成物C(下図)の粒度分布を示す。
【
図12】参考例1の生成物D(上図)、参考例2の生成物E(中図)、参考例3の生成物F(下図)の粒度分布を示す。
【
図13】比較例1の生成物A、実施例1の生成物B、実施例2の生成物Cを投入した後の硫化物濃度の経時変化率を、15倍希釈のH
2S水溶液(上図)及び10倍希釈のH
2S水溶液(下図)の場合について示す。◇試料なし、△生成物A、□生成物B、○生成物Cである。
【
図14】15倍希釈のH
2S水溶液を用いた場合の密閉容器のH
2S水及びヘッドスペース、各々の硫化物濃度の経時変化を示す。(a)試料なし、(b)生成物A、(c)生成物B、(d)生成物C、(e)生成物D、◇H
2S水、□ヘッドスペース。
【
図15】10倍希釈のH
2S水溶液を用いた場合の密閉容器のH
2S水及びヘッドスペース、各々の硫化物濃度の経時変化を示す。(a)試料なし、(b)生成物A、(c)生成物B、(d)生成物C、(e)生成物D、◇H
2S水、□ヘッドスペース。
【
図16】比較例1の生成物A(上図)、実施例1の生成物B(中図)及び実施例2の生成物C(下図)の試験例6における吸着実験前後の粉末X線回折図形である。(a)吸着前、(b)吸着後、(c)亜鉛アルミニウムカーボネートヒドロキシドハイドレート(ICDD♯48-1023)、(d)Si(ICDD♯27-1402)。
【
図17】参考例1の生成物D(上図)、参考例2の生成物E(中図)及び参考例3の生成物F(下図)の試験例6における吸着実験前後の粉末X線回折図形である。(a)吸着前、(b)吸着後、(c)亜鉛アルミニウムカーボネートヒドロキシドハイドレート(ICDD♯48-1023)、(d)Si(ICDD♯27-1402)。
【
図18】比較例1の生成物Aの試験例6における吸着実験後のSEM像及びEDSプロファイルを示す。
【
図19】実施例1の生成物Bの試験例6における吸着実験後のSEM像及びEDSプロファイルを示す。
【
図20】実施例2の生成物Cの試験例6における吸着実験後のSEM像及びEDSプロファイルを示す。
【
図21】参考例1の生成物Dの試験例6における吸着実験後のSEM像及びEDSプロファイルを示す。
【
図22】参考例2の生成物Eの試験例6における吸着実験後のSEM像及びEDSプロファイルを示す。
【
図23】参考例3の生成物Fの試験例6における吸着実験後のSEM像及びEDSプロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0033】
1.ハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物
本発明のハイドロタルサイトナノ粒子は、2価の亜鉛イオン及び3価のアルミニウムイオンを含むハイドロタルサイト化合物を含有し、結晶子径が1~20nmである。
【0034】
また、本発明のハイドロタルサイト組成物は、2価の亜鉛イオン及び3価のアルミニウムイオンを含むハイドロタルサイト化合物と、界面活性剤とを含有する。
【0035】
(1-1)ハイドロタルサイト化合物
ハイドロタルサイト化合物は、層間のアニオン交換によりインターカレーションを生じる。アニオン交換とは,例えば、アニオンを含む溶液にハイドロタルサイト化合物を浸すことにより、ハイドロタルサイトナノ化合物自らが有するアニオンを放出し、溶液中のアニオンを自身へ取り込む現象である。また、ハイドロタルサイト化合物を加熱処理することによりアニオンを脱離させることができる。
【0036】
代表的な揮発性硫黄化合物(VSC)である硫化水素は、
H2S ⇔ H+ + HS-
HS- ⇔ H+ + S2-
にしたがって解離する。
【0037】
中性付近では、遊離H2S及びHS-がほとんどを占める。ハイドロタルサイト化合物は、HS-は層間のアニオンとの交換により吸着し、遊離H2Sは層間水との交換により吸着する。
【0038】
ハイドロタルサイト化合物への硫化物の吸着のメカニズムは解明されていないが、本発明者の先行研究から、ハイドロタルサイト化合物への硫化物の吸着量はハイドロタルサイト化合物のホスト層を構成する金属原子と硫化物の親和性に依存することが理解できる。また、亜鉛は硫黄と化合しやすい性質を持つ親銅元素と呼ばれる元素であり、硫化物との親和性が高い。
【0039】
硫黄と結合しやすい金属として、亜鉛のほか、鉄、銅、モリブデン、水銀、鉛等が知られているが、口腔中での使用を想定すると使用できる金属元素は限られる。亜鉛を含むハイドロタルサイト化合物は白色であり、審美的にも望ましい。三価のカチオンとして、鉄及びクロムもあるが、口腔内使用のため、鉄及びアルミニウムに限定される。鉄は価数制御が難しく、着色するがアルミニウムは白色であり、体内に万一溶出しても99%以上体外に排出され、暫定耐容週間摂取量2mg/kg体重/週(JECFA)を満たす懸念はない。
【0040】
このため、本発明のハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物が有するハイドロタルサイト化合物は、一般式(1):
[Zn2+
1-xAl3+
x(OH)2][(An-)x/n・mH2O] (1)
[式中、0<x<1を示す。An-は陰イオンを示す。nは1又は2を示す。mは1以上の整数(例えば1~10の整数)を示す。]
で表される組成を有することが好ましい。
【0041】
このハイドロタルサイト化合物は、Zn2+
1-xAl3+
x(OH)2で表され正電荷を帯びた八面体層からなるホスト層と、正電荷を補償する陰イオンと層間水とからなり(An-)x/n・mH2Oで表されるゲスト層と、が交互に積層したハイドロタルサイト構造を有していることが好ましい。
【0042】
このハイドロタルサイト化合物においては、アルミニウムイオンに対する亜鉛イオンのモル比(亜鉛イオン/アルミニウムイオン)は、揮発性硫黄化合物(VSC)吸着速度、揮発性硫黄化合物(VSC)吸着性能等の観点から、0.7~4が好ましく、1.8~3がより好ましい。つまり、一般式(1)におけるxは0.2~0.6が好ましく、0.25~0.35がより好ましい。
【0043】
このハイドロタルサイト化合物では、ゲスト層の陰イオンAn-は、どのような陰イオンでも採用できるが、例えば、CO3
2-、NO3
-、SO4
2-、PO4
3-、B2O5
4-等のオキソ酸イオン等を採用することができる。特に、電子密度の高いアニオンが層間で安定であり、CO3
2-は最も安定である。
【0044】
なお、このハイドロタルサイト化合物は、例えば、沈殿剤として炭酸ナトリウムを用いる場合には、陰イオンAn-として炭酸イオンCO3
2-を残存させることができる。このとき、ハイドロタルサイト化合物は一般式(2):
[Zn2+
1-xAl3+
x(OH)2][(An-)y・(CO3
2-)z・mH2O] (2)
[式中、0<x<1を示し、x=yn+2zである。An-は陰イオンを示す。nは1又は2を示す。mは1以上の整数(例えば1~10の整数)を示す。]
で表される組成を有し、ゲスト層は(An-)y・(CO3
2-)z・mH2Oとすることができる。この際、炭酸イオン以外の陰イオンを含まない場合、つまり、yが0の場合は、ゲスト層は(CO3
2-)x/2・mH2Oとすることができる。
【0045】
(1-2)ハイドロタルサイトナノ粒子
本発明のハイドロタルサイトナノ粒子は、上記したハイドロタルサイト化合物を含有するものである。この本発明のハイドロタルサイトナノ粒子は、上記したハイドロタルサイト化合物のみからなる構成とすることもできるし、上記したハイドロタルサイト化合物の表面に各種表面処理剤が付着していてもよい。
【0046】
ハイドロタルサイト化合物の表面に各種表面処理剤が付着している場合、この表面処理剤としては、例えば、界面活性剤、シランカップリング剤等のカップリング剤等が挙げられる。
【0047】
界面活性剤は、親水性基と疎水性基を有する両親媒性分子である。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤のいずれも採用でき、揮発性硫黄化合物(VSC)吸着速度、揮発性硫黄化合物(VSC)吸着性能等の観点から、アニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤が好ましい。具体的には、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、マルガリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、リノール酸ナトリウム、リノレン酸ナトリウム等の脂肪酸(飽和又は不飽和脂肪酸)又はその塩(特にアルカリ金属塩等の金属塩)、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等のアルキルアンモニウム塩(特にテトラアルキルアンモニウム塩)が挙げられる。脂肪酸とは牛脂やヤシ油、パーム油等の天然油脂を加水分解して得られる。また、脂肪酸を水酸化ナトリウムで鹸化分解することによって得られる脂肪酸ナトリウムは石鹸として古くから用いられている。また、脂肪酸又はその塩では、アルキル基の炭素数が比較的大きいものが、粒子微小化の好適な界面活性剤であり、炭素数8以上(特に炭素数10~30)の脂肪酸又はその塩が界面活性剤として特に好ましい。
【0048】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等)、アルキルアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン)等が挙げられる。
【0049】
上記の表面処理剤は、単独で使用することもでき、2種以上を組合せることもできる。なかでも、揮発性硫黄化合物(VSC)吸着速度、揮発性硫黄化合物(VSC)吸着性能等の観点から、界面活性剤が好ましい。例えば、後述の製造方法によれば、ハイドロタルサイトナノ粒子を合成する際に、表面に界面活性剤が覆うことによってミセルを形成して結晶成長を抑制し、小さいサイズのハイドロタルサイトナノ粒子を得ることができる。つまり、本発明のハイドロタルサイトナノ粒子の結晶子径を調整しやすい。この結果、表面積を向上させ、特に吸着初期段階の揮発性硫黄化合物(VSC)吸着速度を向上させることができる。
【0050】
本発明のハイドロタルサイトナノ粒子が上記の表面処理剤を含有する場合、ハイドロタルサイト化合物の含有量は、揮発性硫黄化合物(VSC)吸着速度、揮発性硫黄化合物(VSC)吸着性能等の観点から、本発明のハイドロタルサイトナノ粒子の総量を100質量%として、90.0~99.9質量%が好ましく、95.0~99.8質量%がより好ましい。
【0051】
本発明のハイドロタルサイトナノ粒子は、結晶子径が1~20nm、好ましくは2~15nmである。結晶子径が1nm未満のハイドロタルサイトナノ粒子は合成することが困難である。また、結晶子径が20nmをこえると、特に吸着初期段階の揮発性硫黄化合物(VSC)吸着速度が不十分である。なお、本発明のハイドロタルサイトナノ粒子の結晶子径は、X線回折図における各ピーク位置での半値幅からHall Plotにより算出する。
【0052】
本発明のハイドロタルサイトナノ粒子は、粒度分布において、少なくとも、極大粒子径が0.30~0.45μmであるピーク、及び極大粒子径が7.50~12.00μmであるピークを有することが好ましい。これにより、揮発性硫黄化合物(VSC)吸着速度、揮発性硫黄化合物(VSC)吸着性能等に特に優れたハイドロタルサイトナノ粒子が得られやすい。
【0053】
(1-3)ハイドロタルサイト組成物
本発明のハイドロタルサイトナノ粒子は、上記したハイドロタルサイト化合物及び界面活性剤を含有するものである。
【0054】
界面活性剤は、親水性基と疎水性基を有する両親媒性分子である。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤のいずれも採用でき、例えば、ラウリン酸、オレイン酸、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸又はその塩(特に金属塩)等が挙げられる。脂肪酸とは牛脂やヤシ油、パーム油等の天然油脂を加水分解して得られる。また、脂肪酸を水酸化ナトリウムで鹸化分解することによって得られる脂肪酸ナトリウムは石鹸として古くから用いられている。また、炭素数8以上(特に炭素数10~20)の脂肪酸又はその塩が界面活性剤として有用であるとされている。
【0055】
上記の界面活性剤は、単独で使用することもでき、2種以上を組合せることもできる。例えば、後述の製造方法によれば、ハイドロタルサイト組成物を合成する際に、ハイドロタルサイト化合物の表面に界面活性剤が覆うことによってミセルを形成してハイドロタルサイト化合物の結晶成長を抑制し、小さいサイズのハイドロタルサイト化合物を含むハイドロタルサイト組成物を得ることができる。つまり、本発明のハイドロタルサイト組成物におけるハイドロタルサイト化合物の結晶子径を調整しやすい。この結果、表面積を向上させ、特に吸着初期段階の揮発性硫黄化合物(VSC)吸着速度を向上させることができる。
【0056】
本発明のハイドロタルサイト組成物が上記の表面処理剤を含有する場合、ハイドロタルサイト化合物の含有量は、揮発性硫黄化合物(VSC)吸着速度、揮発性硫黄化合物(VSC)吸着性能等の観点から、本発明のハイドロタルサイト組成物の総量を100質量%として、90.0~99.9質量%が好ましく、95.0~99.8質量%がより好ましい。
【0057】
本発明のハイドロタルサイト組成物が有するハイドロタルサイト化合物は、結晶子径が1~20nmが好ましく、2~15nmがより好ましい。これにより、揮発性硫黄化合物(VSC)吸着速度、揮発性硫黄化合物(VSC)吸着性能等に特に優れたハイドロタルサイトナノ組成物が得られやすい。なお、本発明のハイドロタルサイトナノ組成物が有するハイドロタルサイト化合物の結晶子径は、X線回折図における各ピーク位置での半値幅からHall Plotにより算出する。
【0058】
本発明のハイドロタルサイトナノ組成物は、粒度分布において、少なくとも、極大粒子径が0.30~0.45μm(特に0.35~0.40μm)であるピーク、及び極大粒子径が7.50~12.00μm(特に8.00~11.00μm)であるピークを有することが好ましい。これにより、揮発性硫黄化合物(VSC)吸着速度、揮発性硫黄化合物(VSC)吸着性能等に特に優れたハイドロタルサイト組成物が得られやすい。
【0059】
(1-4)液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤及び口臭除去剤
本発明のハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物は、500℃等の高温熱処理を施さなくてもよい。通常、ハイドロタルサイト化合物は、反応生成後に対して高温で熱処理をすることで、無水物となり、吸着能を発揮する。しかし、本発明のハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物は、高温での熱処理を施さなくても、揮発性硫黄化合物(VSC)の吸収能を有する。このため、本発明のハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物は、反応生成物を加熱処理することなく、例えば、液相中の揮発性硫黄化合物と、本発明のハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物とを、例えば0~50℃で接触させることで、揮発性硫黄化合物(VSC)をすばやく且つ十分に吸着させることが可能である。このため、本発明のハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物は、液相中の揮発性硫黄化合物吸着剤(なかでも、100℃以上(特に300~1000℃)等の高温での熱処理を施さないで使用する非加熱型液相内揮発性硫黄化合物吸着剤)として有用である。
【0060】
また、本発明のハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物は、揮発性硫黄化合物(VSC)をすばやく且つ十分に吸着させることが可能であるため、口臭除去剤としても有用である。この場合、本発明の口臭除去剤は、錬歯磨剤、口腔咽頭薬等を含んでいてもよい。錬歯磨剤は、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の研磨剤と、ラウロイルサルコシソーダ、ラウリル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル等の発泡剤と、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール等の保湿剤、アルギン酸等の結合剤とともに、本発明のハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物を含有することができる。
【0061】
また、口腔咽頭薬は、セチルピリジニウム塩化物水和物、グリチルリチン酸ニカリウム、キキョウエキス等の成分が含まれている。本発明のハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物は、これらの成分とともに口頭咽薬に含ませることができる。
【0062】
2.ハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物の製造方法
上記した本発明のハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物は、特に制限されるわけではないが、例えば、亜鉛塩及びアルミニウム塩を含む水溶液と、界面活性剤を含む水溶液とを混合する工程を備える製造方法により得ることができる。
【0063】
亜鉛塩及びアルミニウム塩を含む水溶液は、ホスト層の原料である。
【0064】
亜鉛塩としては、例えば、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、リン酸亜鉛、炭酸亜鉛等が挙げられる。また、アルミニウム塩としては、例えば、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム等が挙げられる。これらの亜鉛塩及びアルミニウム塩は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。また、これらの亜鉛塩及びアルミニウム塩は、水和物であってもよい。
【0065】
亜鉛塩及びアルミニウム塩を含む水溶液における亜鉛塩及びアルミニウム塩の濃度は、特に制限はなく、上記したハイドロタルサイト化合物における亜鉛とアルミニウムとのモル比となるように調整することができる。
【0066】
なお、亜鉛塩及びアルミニウム塩を含む水溶液は、水中に亜鉛塩及びアルミニウム塩を投入して作製してもよいし、亜鉛塩の水溶液とアルミニウム塩の水溶液とを混合して作製してもよい。
【0067】
また、界面活性剤を含む水溶液において、界面活性剤は、上記したものを採用できる。この界面活性剤を含む水溶液において、界面活性剤の濃度は、本発明のハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物が得やすい観点から、亜鉛塩及びアルミニウム塩を含む水溶液中に存在する亜鉛1モルに対して、0.1~2モルが好ましく、0.2~1.5モルがより好ましい。
【0068】
界面活性剤を含む水溶液は、さらに、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩等のオキソ酸塩を含むこともできる。この場合、界面活性剤を含む水溶液は、ゲスト層の原料ともなり得る。また、この場合、界面活性剤を含む水溶液は、水中に界面活性剤及び上記した塩を投入して作製してもよいし、界面活性剤の水溶液と上記した塩の水溶液とを混合して作製してもよい。
【0069】
炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウム等が挙げられる。
【0070】
硝酸塩としては、例えば、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸リチウム、硝酸アンモニウム等が挙げられる。
【0071】
硫酸塩としては、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸リチウム、硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0072】
ホウ酸塩としては、例えば、ピロホウ酸ナトリウム、ピロホウ酸カリウム、ピロホウ酸カルシウム、ピロホウ酸マグネシウム、ピロホウ酸リチウム等が挙げられる。
【0073】
リン酸塩としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸リチウム、リン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0074】
これらの塩は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0075】
界面活性剤を含む水溶液において、これらの塩の濃度は、本発明のハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物が得やすい観点から、亜鉛塩及びアルミニウム塩を含む水溶液中に存在する亜鉛1モルに対して、1~5モルが好ましく、2~3モルがより好ましい。
【0076】
また、亜鉛塩及びアルミニウム塩を含む水溶液と、界面活性剤を含む水溶液とを混合した水溶液は、攪拌することで本発明のハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物を共沈させやすくするため、アルカリ性水溶液とすることが好ましい。具体的には、亜鉛塩及びアルミニウム塩を含む水溶液と、界面活性剤を含む水溶液とを混合した後、必要に応じて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の塩基とを混合することが好ましい。これら塩基は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。また、これら塩基は、水溶液であってもよい。
【0077】
塩基の使用量は、特に制限されるわけではないが、亜鉛塩及びアルミニウム塩を含む水溶液と、界面活性剤を含む水溶液とを混合する際のpHが9~12、特に9.5~11.5となるように適宜調整することが好ましい。
【0078】
その後、必要に応じて、水熱合成を行うための所定の温度、例えば、20~60℃、特に30~50℃に昇温することができる。
【0079】
続いて、上記所定の温度に保持した状態で撹拌し、本発明のハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物を得ることができる。撹拌速度及び時間は、適宜設定することができるが、通常は500~1500rpmにおいて、6~48時間行うことが好ましい。
【0080】
この後、必要に応じて、常法にしたがい、遠心分離、吸引ろ過、乾燥等を施し、固体の本発明のハイドロタルサイトナノ粒子及びハイドロタルサイト組成物を得ることもできる。この後、分級したり、解砕したりすること等により所定の粒度に調製したりすることもできる。また、スラリー状にしたり、バインダ等を添加し粒状にしたり、等各種形態に調製することができる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明について実施例の形式で詳細に説明する。以下の実施例は、本発明の用途を何ら限定するものではない。
【0082】
比較例1:Zn-Al LDHの合成
一般式(1)において、An-がCO3
2-、nが2、xが0.33であるZn-Al LDHの合成を行った。分析天秤(sefi-IBA-200アズワン(株))で炭酸ナトリウム(Na2CO3、MW105.9884、容量分析用標準、富士フイルム和光純薬(株))を5.09g(0.048mol)秤量し、メスシリンダーで採取した超純水(Milli-Q水)300mLに撹拌子(4cm)とホットスターラー(REXIM RSH-10、アズワン(株))を用いて、室温、800rpmで10分撹拌して溶解させ、0.16M炭酸ナトリウム溶液を調製した。以下同様にして試薬を溶解した。Milli-Q水100mLに硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO3)3・9H2O、MW375.13、特級、富士フイルム和光純薬(株))3.75g(0.01mol)と硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO3)2・6H2O、MW297.49、特級、キシダ化学(株))5.95g(0.02mol)を溶解させ、硝酸塩混合水溶液(0.1M Al(NO3)3・9H2O、0.2M Zn(NO3)2・6H2O)を調製した。また、Milli-Q水100mLに水酸化ナトリウム(NaOH、MW39.997、特級、キシダ化学(株))4.00gを溶解させ、2M水酸化ナトリウム水溶液を調製した。炭酸ナトリウム水溶液を撹拌子及びホットスターラーを用いて同様に撹拌しながら、硝酸塩混合水溶液をビュレットにて、10±0.5mL/minの速度で滴下した。硝酸塩混合水溶液滴下中pHが10.5±0.2となるように適宜、水酸化ナトリウム水溶液を加えた。硝酸塩混合水溶液滴下終了後、40℃、1000rpmで24時間撹拌させ、沈殿物を桐山ロート、吸引鐘、アスピレーター(A-3S、EYELA 東京理化器械(株))を用い、ろ紙(5C)で吸引ろ過により固液分離し、Milli-Q水200mLで3回洗浄した。得られた生成物をプログラム定温乾燥機(DOV-450P、アズワン(株))中で80℃、18時間乾燥させた後、めのう乳鉢で解砕し、生成物Aを得た。pH測定は、pHメーター(D-51、堀場製作所(株))を用い、Milli-Q水は、超純水製造装置(Direct-Q、メルク(株))から採取して実験に用いた。
【0083】
実施例1:ラウリン酸ナトリウムを用いたZn-Al LDHの合成
一般式(1)において、An-がCO3
2-、nが2、xが0.33であるZn-Al LDHの合成を行った。分析天秤(sefi-IBA-200アズワン(株))で炭酸ナトリウム(Na2CO3、MW105.9884、容量分析用標準、富士フイルム和光純薬(株))を5.09g(0.048mol)秤量し、メスシリンダーで採取した超純水(Milli-Q水)300mLに撹拌子(4cm)とホットスターラー(REXIM RSH-10、アズワン(株))を用いて、室温、800rpmで10分撹拌して溶解させ、0.16M炭酸ナトリウム溶液を調製した。以下同様にして試薬を溶解した。Milli-Q水100mLに硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO3)3・9H2O、MW375.13、特級、富士フイルム和光純薬(株))3.75g(0.01mol)と硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO3)2・6H2O、MW297.49、特級、キシダ化学(株))5.95g(0.02mol)を溶解させ、硝酸塩混合水溶液(0.1M Al(NO3)3・9H2O、0.2M Zn(NO3)2・6H2O)を調製した。また、Milli-Q水100mLに水酸化ナトリウム(NaOH、MW39.997、特級、キシダ化学(株))4.00gを溶解させ、2M水酸化ナトリウム水溶液を調製した。さらに、Milli-Q水50mLに分析天秤で精秤したラウリン酸ナトリウム(CH3(CH2)10COONa、MW222.30、1級、キシダ化学(株))0.444g(0.002mol)を入れ、ホットスターラーの温度を60℃に設定して400rpmで1時間撹拌させて、ラウリン酸ナトリウム水溶液を得た。炭酸ナトリウム水溶液にラウリン酸ナトリウム水溶液を加えた後、撹拌子及びホットスターラーを用いて室温、800rpmで撹拌しながら、硝酸塩混合水溶液をビュレットにて、10±0.5mL/minの速度で滴下した。硝酸塩混合水溶液滴下中pHが10.5±0.2となるように適宜、水酸化ナトリウム水溶液を加えた。硝酸塩混合水溶液滴下終了後、40℃、1000rpmで24時間撹拌させた後、テーブルトップ遠心機(2410、久保田商事(株))にて4000rpm、3minで遠心分離、デカンテーションで水を除去し、次いでMilli-Q水を加え撹拌、遠心分離を5回繰り返し洗浄した。その後、沈殿物を桐山ロート、吸引鐘、アスピレーター(A-3S、EYELA 東京理化器械(株))を用い、ろ紙(5C)で吸引ろ過により固液分離した。得られた生成物をプログラム定温乾燥機(DOV-450P、アズワン(株))中で80℃、18時間乾燥させた後、めのう乳鉢で解砕し、生成物Bを得た。pH測定は、pHメーター(D-51、堀場製作所(株))を用い、Milli-Q水は、超純水製造装置(Direct-Q、メルク(株))から採取して実験に用いた。
【0084】
実施例2:オレイン酸を用いたZn-Al LDHの合成
一般式(1)において、An-がCO3
2-、nが2、xが0.33であるZn-Al LDHの合成を行った。分析天秤(sefi-IBA-200アズワン(株))で炭酸ナトリウム(Na2CO3、MW105.9884、容量分析用標準、富士フイルム和光純薬(株))を5.09g(0.048mol)秤量し、メスシリンダーで採取した超純水(Milli-Q水)300mLに撹拌子(4cm)とホットスターラー(REXIM RSH-10、アズワン(株))を用いて、室温、800rpmで10分撹拌して溶解させ、0.16M炭酸ナトリウム溶液を調製した。以下同様にして試薬を溶解した。Milli-Q水100mLに硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO3)3・9H2O、MW375.13、特級、富士フイルム和光純薬(株))3.75g(0.01mol)と硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO3)2・6H2O、MW297.49、特級、キシダ化学(株))5.95g(0.02mol)を溶解させ、硝酸塩混合水溶液(0.1M Al(NO3)3・9H2O、0.2M Zn(NO3)2・6H2O)を調製した。また、Milli-Q水100mLに水酸化ナトリウム(NaOH、MW39.997、特級、キシダ化学(株))4.00gを溶解させ、2M水酸化ナトリウム水溶液を調製した。さらに、Milli-Q水50mLに分析天秤で精秤したオレイン酸(CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOH、MW282.47、1級、キシダ化学(株))0.56g(0.002mol)を入れ、ホットスターラーの温度を70℃に設定して800rpmで1時間撹拌させて、オレイン酸水溶液を得た。炭酸ナトリウム水溶液にオレイン酸水溶液を加えた後、撹拌子及びホットスターラーを用いて室温、800rpmで撹拌しながら、硝酸塩混合水溶液をビュレットにて、10±0.5mL/minの速度で滴下した。硝酸塩混合水溶液滴下中pHが10.5±0.2となるように適宜、水酸化ナトリウム水溶液を加えた。硝酸塩混合水溶液滴下終了後、40℃、1000rpmで24時間撹拌させた後、テーブルトップ遠心機(2410、久保田商事(株))にて4000rpm、3minで遠心分離、デカンテーションで水を除去し、次いでMilli-Q水を加え撹拌、遠心分離を5回繰り返し洗浄した。その後、沈殿物を桐山ロート、吸引鐘、アスピレーター(A-3S、EYELA 東京理化器械(株))を用い、ろ紙(5C)で吸引ろ過により固液分離した。得られた生成物をプログラム定温乾燥機(DOV-450P、アズワン(株))中で80℃、18時間乾燥させた後、めのう乳鉢で解砕し、生成物Cを得た。pH測定は、pHメーター(D-51、堀場製作所(株))を用い、Milli-Q水は、超純水製造装置(Direct-Q、メルク(株))から採取して実験に用いた。
【0085】
参考例1:沈殿法によるZnOの合成
沈殿法によるZnOの合成を以下の手順で行った。四つ口セパラブルフラスコにリービッヒ冷却機及びシリコン栓付温度計を接続した。四つ口セパラブルフラスコにメスシリンダーで採取したMilli-Q水70mLと分析天秤で秤量した塩化亜鉛(ZnCl2、MW136.315、1級、富士フイルム和光純薬(株))9.54g(1.00mol)を加え、撹拌子(4cm)及びホットスターラー(REXIM RSH-10、アズワン(株))を用いて室温、800rpmで撹拌させた。また、もう一台のホットスターラーを用いて、チューブを接続したシリコン栓を三角フラスコに取り付け中に28%アンモニア水(NH3、MW17.03、特級、キシダ化学(株))10mLを入れ80℃まで熱した。チューブを介して、気化したアンモニアを塩化亜鉛水溶液に導入した。アンモニアガス導入中、溶液のpHを測定し、pHが7.5になったところでアンモニアガスの導入を止めた。その後、90℃、800rpmで6時間撹拌し、沈殿物を桐山ロート、吸引鐘及びアスピレーター(A-3S、EYELA 東京理化器械(株))を用い、ろ紙(5C)で吸引ろ過により固液分離し、Milli-Q水200mLで3回洗浄した。得られた生成物を定温乾燥機中で80℃、18時間乾燥させた後、めのう乳鉢で解砕し、生成物Dを得た。
【0086】
参考例2:メカノケミカル法によるZnOの合成
メカノケミカル法によるZnOの合成を以下の手順で行った(Scripta Mater.,44(8-9),1731-1734(2001))。塩化亜鉛(ZnCl2、MW136.315、1級、富士フイルム和光純薬(株))を2.73g(0.02mol)、炭酸ナトリウム(Na2CO3、MW105.99、特級、富士フイルム和光純薬(株))を2.12g(0.02mol)、塩化ナトリウム(NaCl、MW58.44、特級、キシダ化学(株))を10.05g(0.172mol)それぞれ分析天秤にて秤量し、使用前に定温乾燥機にて150℃で2h乾燥させた。その後、ジルコニアボール(YTZ-10、径10mm、アズワン(株))150gとともに、ポットミル(HD-A-4、アズワン(株))に入れ、室温、110rpmで3h卓上ポットミル回転台(BALL MILL ANZ-51S、日陶科学(株))で粉砕した。アルミナるつぼ(PSA-100S、東京硝子器械(株))に入れ、Fine卓上型電気炉(F-1404-P、東京硝子器機(株))で大気中、400℃、0.5h熱処理を行った。昇降温は12℃/minとした。熱処理後、生成物を遠沈管にMilli-Q水とともに入れ、テーブルトップ遠心機にて4000rpm、3minで5回繰り返し洗浄した。その後、定温乾燥機にて60℃で10h乾燥させた。乾燥後、めのう乳鉢を用いて解砕し、生成物Eを得た。
【0087】
参考例3:水熱合成法によるZnOの合成
水熱合成法によるZnOの合成を以下の手順で行った(Solid State Communications,113(6),363-366(2000))。200mLビーカーにメスシリンダーで秤量したMilli-Q水50mLと塩化亜鉛(ZnCl2、MW136.315、1級、富士フイルム和光純薬(株))2.04g(0.015mol)を加え、0.3M塩化亜鉛溶液を調製した。また、Milli-Q水50mLに水酸化ナトリウム(NaOH、MW39.997、特級、キシダ化学(株))1.2g(0.03mol)を加え、0.6M水酸化ナトリウム水溶液を調製した。次いで、pHを調整する役割として塩酸(MW36.46、塩化水素35%含有、特級、キシダ化学(株))5mLにMilli-Q水50mLを加えたものを用意した。それぞれの溶液を調製する際、撹拌子及びホットスターラー(アズワン(株)、REXIM RSH-1DN)を用いて撹拌し、試薬を溶解させた。Milli-Q水は超純水製造装置(Direct-Q、メルク(株))から採取し、100mLメスシリンダーで秤量し用いた。また、試薬の秤量には分析天秤を用いた。
【0088】
0.3M塩化亜鉛溶液をホットスターラーにて600rpmで撹拌しながら0.6M水酸化ナトリウム水溶液を加え、水酸化亜鉛の沈殿を得た。その沈殿物を桐山ロート(KIRIYAMA、SU-60)、吸引鐘(KIRIYAMA、VKU-500、アズワン(株))、アスピレーター(A-3S、EYELA 東京理科器械(株))、及びろ紙(アズワン(株)、φ60mm、No.5C)を用いて吸引ろ過した。このようにして得た、沈殿物をMilli-Q水100mL中に分散させた。その後、塩酸を加えpHを6.5に調整し、600rpm、室温で3h撹拌した。撹拌後、溶液をテフロン(登録商標)容器に入れ、密閉し、定温乾燥機(ETTAS、EOP-450V)にて100℃で10時間、加熱処理を行った。その後、吸引ろ過し、室温で乾燥させた。乾燥後、生成物をめのう乳鉢で解砕し、白色粉末の生成物Fを得た。
【0089】
試験例1:XRDによる結晶相の同定
得られた生成物について、粉末X線回折法(XRD)により結晶相の同定を行った。測定はX線回折装置(RINT2200、リガク(株))で、ターゲットはCo、モノクロメータを使用し、分析ソフト(JADE6、リガク(株))で結晶相の同定を行った。生成物A、B及びCの測定条件は、スキャン範囲10~80°、サンプリング幅0.02°、スキャンスピード2.0°/min、印加電圧40kV、印加電流20mA、発光スリット1°、散乱スリット1°、受光スリット0.3mmとした。一方、生成物D、E及びFの測定条件は、スキャン範囲10~70°、サンプリング幅0.02°、スキャンスピード2.0°/min、印加電圧40kV、印加電流20mA、発光スリット1°、散乱スリット1°、受光スリット0.3mmとした。試料はめのう乳鉢で微細に粉砕し、深さ0.5mmのくぼみをつけたガラス板製20×18mm2の試料ホルダ(リガク(株))に試料を充填し、回折面が出るようにX線回折装置に取り付けて測定した。なお、測定において、内部標準法でピーク補正を行った。試料0.10gに対して金属シリコン(99.99%、三津和化学薬品(株))を0.05g混合、粉砕し、測定に供した。
【0090】
比較例1の生成物A、実施例1の生成物B及び実施例2の生成物Cの粉末X線回折図形を
図1に示す。生成物A、生成物B及び生成物Cのピークは、ICDDデータの亜鉛アルミニウムカーボネートヒドロキシドハイドレート(Zn-Al LDH)の回折ピークと一致した。
【0091】
参考例1の生成物D、参考例2の生成物E及び参考例3の生成物Fの粉末X線回折図形を
図2に示す。生成物D、生成物E及び生成物Fのピークは、ICDDデータのジンカイトの回折ピークと一致した。
【0092】
試験例2:Hall Plotによる結晶子径の特定
X線回折図における各ピーク位置での半値幅から各試料の結晶子径の算出特定を行った。X線回折図におけるピークの幅及び強度は測定する粉末試料の結晶子サイズと格子歪みに依存する。そのため、XRDの積分強度計算により算出される各回折面での半値幅βhklは結晶子径由来の半値幅βD、格子歪み由来の半値幅βSから構成され、以下の式で表される。
【0093】
【0094】
結晶子径由来の半値幅βD及び格子歪み由来の半値幅βSについて、Dを結晶子径[Å]、θを測定面のブラッグ角[rad]、KをScherrer定数(=0.94)、λを測定X線の波長((Co)=1.792[Å])として、
【0095】
【0096】
と表すと、半値幅βhklは、以下のように変形できる。
【0097】
【0098】
つまり、切片から結晶子径、傾きから格子歪みを求めることができる。
【0099】
XRDにおいて測定する試料の各ピーク位置に関してピーク強度が出始めてから下がりきるまでの範囲を0.10°/minのスキャンスピードで測定し、その範囲を積分強度計算し、各ピーク位置(回折面)での半値幅βhklを算出する。そして、横軸を4sinθ、縦軸をβhklcosθとしたグラフを描く。描いたグラフの近似直線の切片をbとすると、
【0100】
【0101】
と表すことができ、結晶子サイズを算出することができる(Solid State Sci.,13(1),251-256(2011))。
【0102】
結晶子径の算出には、バックグランドを含めた積分強度を用いた。ピークが小さすぎると、XRDの積分強度計算においてピークとバックグラウンドとを混同してしまう可能性がある。そのため、Zn-Al LDH(生成物A、生成物B及び生成物C)の場合は2θ=10~80°の範囲に現れる15カ所のピークのうちICDDデータに記されているピーク強度が8以上(最大ピークの強度を100とする)の7カ所のピークを用いた。一方、ZnO(生成物D、生成物E及び生成物F)の場合は2θ=10~70°の範囲に現れる5か所のピーク全てを用いた。結晶方位毎の結晶子径ではなく平均値を求めた。
【0103】
Hall Plotに用いたピークの位置2θ、結晶面(hkl)、半値幅β
hkl、4sinθ、β
hklcosθの値を、比較例1の生成物A、実施例1の生成物B、実施例2の生成物Cについて表1に示す。また、比較例1の生成物A、実施例1の生成物B、実施例2の生成物Cについて横軸を4sinθ、縦軸をβ
hklcosθとした点と近似直線を
図3に示す。また、近似直線の切片の値を(2.2)式に代入し、結晶子径を得た。比較例1の生成物A、実施例1の生成物B、実施例2の生成物Cの結晶子径は、それぞれ25.9nm、13.8nm、12.5nmであった。
【0104】
【0105】
同様に、Hall Plotに用いたピークの位置2θ、結晶面(hkl)、半値幅β
hkl、4sinθ、β
hklcosθの値を、参考例1の生成物D、参考例2の生成物E、参考例3の生成物Fについて表2に示す。また、参考例1の生成物D、参考例2の生成物E、参考例3の生成物Fについて横軸を4sinθ、縦軸をβ
hklcosθとした点と近似直線を
図4に示す。また、近似直線の切片の値を(2.2)式に代入し、結晶子径を得た。参考例1の生成物D、参考例2の生成物E、参考例3の生成物Fの結晶子径は、それぞれ48.2nm、31.2nm、24.1nmであった。
【0106】
【0107】
試験例3:SEM像観察及びEDSによる元素分析
各生成物をアルミニウム板10mm×10mmに導電テープ(7321、日新 EM(株))で固定し、24時間、室温で真空乾燥機(KVO-300、アズワン(株))を用いて乾燥させた。Osmium Plasma Coater(OPC60A、フィルジェン(株))を用い、酸化オスミウム(OSO4)を12nmコーティングした。電界放射型走査電子顕微鏡は、FE-SEM(JSM6500FS、日本電子(株))を用いた。また、比較例1の生成物A、実施例1の生成物B、実施例2の生成物Cに関して、ZnとAlとの比を求めるために元素分析を行った。元素分析はEDS(JSM-6460LA、日本電子(株))を用いた。簡易定量分析(ZAF法)で加速電圧25kV、真空度5.00×10-4Pa以下、照射電流10A、照射時間200sで行った。
【0108】
比較例1の生成物A、実施例1の生成物B、実施例2の生成物CのSEM像及びEDSプロファイルを
図5~7に、ZnとAlとの原子数の比を表3に示す。
【0109】
【0110】
比較例1の生成物Aについて、SEM像から1μm前後の粒子が凝集しているように見える。ZnとAlの原子比は2.01であり、測定箇所によってばらつきが少なく所定の組成[Zn2+
1-xAl3+
x(OH)2][(CO3
2-)x/2・mH2O](x=0.33)のハイドロタルサイト化合物が得られたことが理解できる。
【0111】
実施例1の生成物Bについて、SEM像から粒子が凝集し、層を形成しているように見える。ZnとAlの原子比は2.19であり、仕込み量よりもZnが多く存在しており、一部、亜鉛の化合物が生成したと思われ、組成は[Zn2+
1-xAl3+
x(OH)2][(CO3
2-)x/2・mH2O](x=0.31)であった。
【0112】
実施例2の生成物Cについて、SEM像から1μm前後の粒子が凝集しているように見える。ZnとAlの原子比は2.32であり、仕込み量よりZnが多く存在しており、一部、亜鉛の化合物が生成したと思われ、組成は[Zn2+
1-xAl3+
x(OH)2][(CO3
2-)x/2・mH2O](x=0.30)であった。
【0113】
参考例1の生成物D、参考例2の生成物E、参考例3の生成物FのSEM像を
図8に示す。生成物Dは3~10μm程の板状の粒子が凝集し、生成物E及び生成物Fは1μm未満の粒子が凝集しているように見える。
【0114】
試験例4:FT-IRスペクトル分析
フーリエ変換赤外分光装置(FT/IR-430、日本分光(株))で、測定範囲400~1400cm-1、積算回数100、分解能4cm-1として測定を行った。分析ソフト(Spectra Manager、日本分光(株))を用いてスペクトル解析を行った。測定試料はKBr剤法で作製した。KBr(特級、富士フイルム和光純薬(株))微粉末に対し0.1質量%の割合で試料を加えてめのう乳鉢で粉砕、よく混合した後、錠剤成形器に入れ、油圧成形器(MP-1、日本分光(株))で加圧した。
【0115】
図9に、比較例1の生成物A、実施例1の生成物B、実施例2の生成物CのFT-IRスペクトルを示す。3400cm
-1付近に見られる吸収ピークは水酸基の水素結合の伸縮振動及び変角振動、2850~2950cm
-1にかけて見られる吸収ピークは層間水とアニオンの水素結合、1360cm
-1、1940cm
-1及び790cm
-1に見られる吸収ピークは炭酸イオン、618cm
-1及び428cm
-1に見られる吸収ピークはそれぞれAl-OH結合及びZn-OH結合の振動、552cm
-1に見られる吸収ピークはAl-O結合の振動によるものである(Revista Brasilera de Ciencia do Solo,39(1),pp.1-13(2015)、Univ.for Science,11(1),pp.90-100(2015)、J.Nanoparticle Res.,2(3),293-298(2000)、J.Alloys and Compounds,539(1),154-160(2012))。
【0116】
実施例1の生成物Bでは、以上に加え、2924cm-1及び2854cm-1にも吸収ピークが見られた。ラウリン酸ナトリウム由来のCH2の伸縮振動によるものである(Univ.for Science,11(1),pp.90-100(2015))。
【0117】
実施例2の生成物Cでは、同様に2924cm-1及び2854cm-1に吸収ピークが見られ、オレイン酸由来のCH2の伸縮振動によるものである(Chem.Eng.J.,119(2-3),71-81(2006))。
【0118】
図10に参考例1の生成物D、参考例2の生成物E、参考例3の生成物FのFT-IRスペクトルを示す。
【0119】
参考例1の生成物Dについて、3400cm-1付近に見られる吸収ピークは水酸基の水素結合の伸縮振動及び変角振動、428cm-1に見られる吸収ピークはZn-OH結合の振動、457cm-1に見られる吸収ピークはZn-O結合の振動によるものである(J.Advanced Ceramics,2(3),260-265(2013)、Revista Brasilera de Ciencia do Solo,39(1),pp.1-13(2015)、J.Alloys and Compounds,539(1),154-160(2012))。
【0120】
参考例2の生成物E及び参考例3の生成物Fについては、428cm-1に見られる吸収ピークが見られず、水酸基の存在は認められなかった。
【0121】
試験例5:粒度分布測定
各生成物の粒度分布をレーザー回折/散乱式測定装置(LA920、(株)堀場製作所)を用いて測定した。分散媒には超純水(生成物A、生成物D、生成物E及び生成物F)又はイソプロピルアルコール(生成物B及び生成物C)を用いた。また粒子の凝集を防ぐため、装置内の超音波プローブで超音波振動(生成物A、生成物B及び生成物Cでは15分、生成物D、生成物E及び生成物Fでは5分)をかけて分散させた後測定した。分散媒に対する相対屈折率は、生成物Aでは1.10、生成物B及び生成物Cでは1.05、生成物D、生成物E及び生成物Fでは1.50であった。なお、レーザー回折/散乱式測定装置(LA920、(株)堀場製作所)の測定範囲の下限は200nmであり、一次粒子の凝集体である粉体(二次粒子)の粒径が測定できる。
【0122】
比較例1の生成物A、実施例1の生成物B、実施例2の生成物Cの粒度分布測定結果を
図11及び表4に示す。
【0123】
【0124】
比較例1の生成物Aの粒度分布のピークは粒径が0.51μm及び6.72μmの2か所に見られ、面積から約20%及び80%の割合である。このことから、一次粒子(結晶子)25.9nmからなる凝集体と思われる。
【0125】
実施例1の生成物Bの粒度分布のピークは粒径が0.39μm及び8.82μmの2か所に見られ、それぞれ約60%及び40%の割合である。このことから、生成物Aと比較し粒径が小さい粒子の頻度が高く、ラウリン酸によって分散されたと考えられる。
【0126】
実施例2の生成物Cの粒度分布のピークは粒径が0.39μm、10.10μm及び77.34μmの3か所に見られる。0.39μmの頻度が高いが、77.34にもピークがあり、オレイン酸の分散効果はラウリン酸と比べやや低いと思われる。
【0127】
参考例1の生成物D、参考例2の生成物E及び参考例3の生成物Fの粒度分布測定結果を
図12及び表5に示す。
【0128】
【0129】
粒度分布のピークは、参考例1の生成物Dの場合は粒径が0.45μm及び5.87μmの2か所に、参考例2の生成物Eでは粒径が3.41μm及び5.12μmの2か所に、参考例3の生成物Fでは5.12μmの1か所に見られる。参考例2の生成物E及び参考例3の生成物Fは、参考例1の生成物Dと比較し、凝集性が高いが、粒度分布はある程度まとまったプロファイルを示し、比較的均一な凝集体が得られたと思われる。
【0130】
試験例6:硫化水素の吸着実験
(6-1)硫化水素水の作製
500mL四つ口フラスコの2つの側管にそれぞれシリコン栓及びガラス管付きシリコン栓を取り付けた。また、200mLの三角フラスコにMilli-Q水を150mL入れ、ガラス管及びバブリング管をシリコン栓に通して取り付けた。四つ口フラスコのガラス管と三角フラスコのバブリング管とをシリコンチューブ及び二方コックを介して接続した。また、三角フラスコのガラス管にはシリコンチューブを介して1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を満たしたガス洗浄瓶を接続した。ガス洗浄瓶にはシリコンチューブを介して塩化カルシウム管を取り付けた。
【0131】
四つ口フラスコに硫化鉄(1級、富士フイルム和光純薬(株))を分析天秤で3g秤量して入れた。また、分液漏斗から1mol/Lの希硫酸を15mL加え、硫化水素を発生させた。発生させた硫化水素を三角フラスコ内のMilli-Q水に通し、約15分間バブリングした。なお1mol/Lの希硫酸は硫酸(特級、富士フイルム和光純薬(株))をメスシリンダーで秤量し36倍に希釈した。またこれらの操作はドラフトチャンバー内で、ゴム手袋、保護メガネ及びガスマスクを装着して行った。
【0132】
(6-2)吸着・採取装置
市販の200mL三角フラスコにネジ付側管を取り付けた。側管側にセプタム付ホールキャップ、他方にシリコン栓を介して分液漏斗を取り付け、撹拌子を入れた。(6-1)で調製した硫化水素水をホールピペットにて10mL及び15mL秤量し、Milli-Q水を加えてそれぞれ15倍及び10倍に希釈し、全容量150mLの硫化水素水(H2S水)を2種類調製した。調製直後はH2S水が気相と液相で平衡状態になろうとするため、気相及び液相共に逐一、硫化水素濃度が変化する。そのため平衡状態に早く移行させるためにホットスターラーを用いて室温、300rpmで60分撹拌した。
【0133】
(6-3)吸着実験
生成物0.10gを分析天秤で秤量し、分析漏斗から二口フラスコ中のH2S水へ投下した。秤量前に定温乾燥機(DO-300PC、アズワン(株))中、80℃、18時間乾燥した。H2S水を撹拌し、0時間後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後又は18時間後にフラスコ中の気相部分(ヘッドスペース)又はH2S水溶液から、シリンジで気体又はH2S水溶液を採取した。気体はガスタイトシリンジ(MS-GAN025、(株)伊藤製作所)を用い30μL、H2S水はマイクロシリンジ(701N標準型PT-2 10μL,ハミルトン(株))により2μL採取した。採取した気体及びH2S水の濃度は炎光光度検出器付ガスクロマトグラフで測定した。なお、H2S水の採取にはソルベントフラッシュ注入法を用いた。ソルベントフラッシュ注入法とは、所定量のMilli-Q水1μL、空気、測定溶液(H2S水)2μL及び空気を順にシリンジ内に導入することで、針中の残存試料等を回避し、測定の誤差を抑えることができる。
【0134】
生成物A~Dを投入後の密閉容器中のH2S水とヘッドスペースとの全硫化物濃度変化を、15倍希釈のH2S水溶液を用いた場合は表6に、10倍希釈のH2S水溶液の場合は表7に示す。ブランクとして、試料なしの場合も記載している。
【0135】
【0136】
【0137】
投入前の密閉容器中の全硫化物濃度を100%とし、生成物A、生成物B及び生成物Cを投入した後の硫化物濃度の経時変化率を、15倍希釈のH
2S水溶液(上図)及び10倍希釈のH
2S水溶液(下図)の場合について
図13に示す。
【0138】
密閉容器のH
2S水及びヘッドスペース、各々の硫化物濃度の経時変化を、15倍希釈のH
2S水溶液の場合は
図14に、10倍希釈のH
2S水溶液の場合は
図15に示す。
【0139】
試料なしの場合、15倍希釈及び10倍希釈のいずれのH2S水溶液においてもヘッドスペース及びH2S水中ともに硫化物濃度は多少の増減はあるもののほとんど変化は見られなかった。
【0140】
図14及び15に示すように,生成物A、生成物B及び生成物Cについては、ヘッドスペース中の硫化物濃度は迅速に低下し0になった。生成物Dでは、他と比べてやや遅れて0に到達した。一方、H
2S水中の硫化物濃度は、生成物A、生成物B、生成物C及び生成物Dいずれも、一定濃度まで下がると、その後ほとんど増減せず吸着平衡に達し濃度は0にならなかった。15倍希釈のH
2S水を用いた場合に比べ、10倍希釈のH
2S水を用いた場合の方が吸着平衡に達するまでに多くの時間を要した。このことから、各生成物について吸着可能な硫化物の総量はさらに多いと推測される。
【0141】
生成物A、生成物B及び生成物Cについて、
図13に示すように15倍希釈H
2S水の場合、生成物Aは投下後から硫化物濃度が1時間で34.5%まで、18時間後において14.4%まで減少した。生成物Bは1時間で27.8%、18時間で12.8%、生成物Cは1時間で28.2%、18時間で14.4%まで硫化物濃度は減少した。
図13に示すように10倍希釈H
2S水において、生成物Aは投下後から硫化物濃度が1時間で57.9%まで、18時間後において22.2%まで減少した。生成物Bは1時間で45.3%、18時間で16.3%、生成物Cは1時間で44.6%、18時間で20.8%まで硫化物濃度は減少した。特に生成物B及びCについては、いずれも投下から1時間で硫化物濃度は大きく減少した。例えば、10倍希釈のH
2S水を用いた場合、生成物Aに比べ、生成物B及びCの方が、1時間後で約13%吸着速度に優れることが理解できる。生成物B及び生成物Cの一次粒子径が小さく、凝集体としての粉体も分散しており、接触面積が大きいため、吸着速度に差が生じたと思われる。
【0142】
生成物D、生成物E及び生成物Fについて、15倍希釈H2S水において、生成物Dは投下後から硫化物濃度が1時間で62.6%まで、18時間後において32.2%まで減少した。また、10倍希釈H2S水において生成物Dは投下後から硫化物濃度が1時間で61.8%まで、18時間後において31.6%まで減少した。生成物Eは1時間で36.7%、18時間で23.6%、生成物Fは1時間で33.8%、18時間で20.2%まで硫化物濃度は減少した。生成物Dと比べ、生成物E及び生成物Fの方が早く減少し、1時間後で15倍希釈H2S水では約40%、10倍希釈H2S水では約25%の差が見られる。これらのことと試験例2の結晶子径、試験例5の粒度分布の測定結果から、生成物Dはより小さな粒子もあるが、大きな粒子をかなり含み、それより小さく、均一な粒子径を持つ生成物E及び生成物Fの方が、吸着に有利なためと思われる。
【0143】
硫化物吸着量は生成物投下から18時間後においては、生成物D<生成物A≒生成物E≒生成物F<生成物C<生成物Bという結果になった。生成物0.1gに含まれるZnの量はZn-Al LDH(生成物A、生成物B及び生成物C)では0.038gであり、ZnO(生成物E及び生成物F)では0.080gと多いが、生成物Aと生成物E及びFとは同等の吸着量を示している。硫化物吸着量は含有されるZnの量ではなく、接触面に露出しているZnの量に依存すると思われる。生成物Aは層状構造を持ち、層間に露出したZnとの接触のため、よりZnが多い生成物E及び生成物Fと同等の吸着量を示している。つまり、生成物B及び生成物Cは、さらに吸着性能に優れていることが理解できる。
【0144】
吸着速度に関して、同等の結晶子サイズ及びメジアン径を持つ生成物Aと生成物Fとを比較すると、1時間後の硫化物濃度は生成物Fの方が低いが、18時間後においては同程度の濃度となる。ZnOは表面吸着であるが、Zn-Al LDHは表面吸着後、硫化物は層間に移動し、アニオン交換、層間水と遊離H2Sとの交換が進むと思われる。
【0145】
試験例7:吸着試験後の試料の分析
(7-1)XRD
生成物A、生成物B及び生成物Cの試験例6における吸着実験前後のX線回折図形を
図16に示す。内部標準として金属シリコンを用いた。いずれも吸着実験前後でピーク位置にシフトはほとんど見られない。LDHの層間のアニオンである炭酸イオンCO
3
2-及び水と、硫化水素イオンHS
-と遊離H
2Sとの置換が考えられ、チャージバランスから1つのCO
3
2-と2つのHS
-とが置換するが、占有サイズの差が小さいためと思われる。
【0146】
生成物D、生成物E及び生成物Fの吸着実験前後のX線回折図形を
図17に示す。内部標準として金属シリコンを用いた。硫化物吸着前後でピークシフトや不明なピークは見られず、ZnSに相当するピークも見当たらない。硫化物は粒子表面又は粒子間に吸着したと考えられる。
【0147】
(7-2)SEM像観察及びEDSによる元素分析
生成物A、生成物B及び生成物Cの硫化物吸着実験後のSEM像及びEDSプロファイルを
図18~20、Zn及びAlの原子数の比を表8に示す。
【0148】
【0149】
いずれもEDSプロファイルにおいて微量であるがSが検出された。ZnとAlとの比は生成物A、生成物B及び生成物Cで、それぞれ2.46、2.39及び2.30であり、組成はそれぞれ、[Zn2+
1-xAl3+
x(OH)2][(CO3
2-)x/2・mH2O](x=0.29)、[Zn2+
1-xAl3+
x(OH)2][(CO3
2-)x/2・mH2O](x=0.29)、[Zn2+
1-xAl3+
x(OH)2][(CO3
2-)x/2・mH2O](x=0.30)であった。
【0150】
生成物D、生成物E及び生成物Fの硫化物吸着実験後のSEM像及びEDSプロファイルを
図21~23に示す。いずれもEDSプロファイルからSは検出されなかった。
【0151】
SEM/EDS分析は、高真空下で行われ、電子線が試料表面に照射されるため、表面に付着した硫化物は速やかに脱離する。一方、Zn-Al LDHの層間でイオン及び分子交換された硫化物は脱離せずに検出されたと思われ、生成物A、生成物B及び生成物Cと生成物D、生成物E及び生成物Fで明確な違いが生じたと思われる。つまり、生成物D、生成物E及び生成物Fと比較し、生成物A、生成物B及び生成物Cでは硫化水素を強固に吸着することが理解できる。