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特許7479685情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240430BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240430BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20240430BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/00 J
B60W40/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020148310
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2022042745
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2023-02-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「スマートバイオ産業・農業基盤技術」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松島 健一
(72)【発明者】
【氏名】伊達 央
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-048514(JP,A)
【文献】特開2013-003110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-25/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面を走行する移動体を示す情報、および前記路面を示す情報を取得する情報取得部と、
前記路面を仮想的に拡張した拡張面を示す情報を生成する拡張面生成部と、
前記路面および前記拡張面からなる仮想路面において前記移動体を走行させる走行領域を示す情報を生成する走行領域生成部と、
を備え、
前記拡張面は、前記移動体を走行させるために改修が必要となる改修領域を含み、
前記拡張面生成部は、前記路面を仮想的に拡幅することにより拡張して前記拡張面を生成する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記走行領域生成部は、前記仮想路面に含まれる各点に、前記路面および周辺の状況に基づく第1コストと、前記路面および周辺を含む空間の状況に基づく第2コストとを関連付け、
前記走行領域に含まれる各点に関連付けられた第1コストおよび第2コストが所定の条件を満たすよう、当該走行領域を示す情報を生成する、
ことを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記拡張面に含まれる各点に関連付けられる第1コストは、前記拡張面の拡張しやすさに基づくものであり、
前記第2コストは、前記仮想路面を含む空間に存在する物体の移設しやすさに基づくものである、
ことを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記走行領域生成部は、前記移動体の走行状態が所定の制約条件を満たすよう前記走行領域を示す情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記走行領域を示す情報に基づいて、前記改修領域を示す情報を生成する改修領域生成部をさらに備えた、
ことを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記走行領域生成部は、複数の移動体または複数の経路の各々について、前記走行領域を示す情報を生成し、
前記改修領域生成部は、複数の前記走行領域に基づいて前記改修領域を示す情報を生成する、
ことを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
路面を走行する移動体を示す情報、および前記路面を示す情報を取得する情報取得部と、
前記路面を仮想的に拡張した拡張面を示す情報を生成する拡張面生成部と、
前記路面および前記拡張面からなる仮想路面において前記移動体を走行させる走行領域を示す情報を生成する走行領域生成部と、
を備え、
前記走行領域生成部は、前記仮想路面に含まれる各点に、前記路面および周辺の状況に基づく第1コストと、前記路面および周辺を含む空間の状況に基づく第2コストとを関連付け、
前記走行領域に含まれる各点に関連付けられた第1コストおよび第2コストが所定の条件を満たすよう、当該走行領域を示す情報を生成
前記拡張面生成部は、前記路面を仮想的に拡幅することにより拡張して前記拡張面を生成する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項8】
前記拡張面に含まれる各点に関連付けられる第1コストは、前記拡張面の拡張しやすさに基づくものであり、
前記第2コストは、前記仮想路面を含む空間に存在する物体の移設しやすさに基づくものである、
ことを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
路面を走行する移動体を示す情報、および前記路面を示す情報を取得する情報取得部と、
前記路面を仮想的に拡張した拡張面を示す情報を生成する拡張面生成部と、
前記路面および前記拡張面からなる仮想路面において前記移動体を走行させる走行領域を示す情報を生成する走行領域生成部と、
を備え、
前記走行領域を示す情報に基づいて、前記拡張面のうち前記移動体を走行させるために改修が必要となる改修領域を示す情報を生成する改修領域生成部をさらに備え、
前記拡張面生成部は、前記路面を仮想的に拡幅することにより拡張して前記拡張面を生成する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項10】
前記走行領域生成部は、複数の移動体または複数の経路の各々について、前記走行領域を示す情報を生成し、
前記改修領域生成部は、複数の前記走行領域に基づいて前記改修領域を示す情報を生成する、
ことを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
路面を走行する移動体を示す情報、および前記路面を示す情報を取得するステップと、
前記路面を仮想的に拡張した拡張面を示す情報を生成するステップと、
前記路面および前記拡張面からなる仮想路面において前記移動体を走行させる走行領域を示す情報を生成するステップと、
を含み、
前記拡張面は、前記移動体を走行させるために改修が必要となる改修領域を含み、
前記拡張面を示す情報を生成するステップにおいて、前記路面を仮想的に拡幅することにより拡張して前記拡張面を生成する、
情報処理方法。
【請求項12】
請求項1から10の何れか1項に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、上記各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面を走行する移動体の走行領域を決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路面を走行する移動体の走行領域を決定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、移動体の走行領域を決定し、当該走行領域を走行中の移動体が障害物等の危険物体に近づくと警告を出力する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-49219号公報(2007年2月22日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、路面は、例えば路幅、障害物等に起因して、移動体が走行しづらい箇所又は走行できない箇所を含む場合がある。上述のような従来技術は、決定した走行領域に、走行しづらい箇所又は走行できない箇所が含まれる可能性があり、適切な走行領域を決定する上で改善の余地がある。
【0005】
本発明の一態様は、路面を走行する移動体の走行領域をより適切に決定する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、路面を走行する移動体を示す情報、および前記路面を示す情報を取得する情報取得部と、前記路面を仮想的に拡張した拡張面を示す情報を生成する拡張面生成部と、前記路面および前記拡張面からなる仮想路面において前記移動体を走行させる走行領域を示す情報を生成する走行領域生成部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、路面を走行する移動体の走行領域をより適切に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る情報処理装置が実行する処理の流れを説明するフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態における仮想路面の一例を説明する模式図である。
図4】本発明の一実施形態における第1コストの具体例を説明する模式図である。
図5】本発明の一実施形態におけるコスト関数を用いて提示されるコスト分布を説明する模式図である。
図6】本発明の一実施形態における第2コストの具体例を説明する模式図である。
図7】本発明の一実施形態における走行領域の具体例を説明するための模式図である。
図8】本発明の一実施形態の変形例2に係る情報処理装置が実行する処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態に係る情報処理装置1について、詳細に説明する。
【0010】
<情報処理装置1の概要>
情報処理装置1は、路面を走行する移動体を示す情報、および路面を示す情報を取得し、路面を仮想的に拡張した拡張面を示す情報を生成し、路面および拡張面からなる仮想路面において移動体を走行させる走行領域を示す情報を生成する装置である。
【0011】
また、情報処理装置1は、走行領域を示す情報に基づいて、拡張面のうち移動体を走行させるために改修が必要となる改修領域を示す情報を生成する。
【0012】
(移動体)
移動体は、路面を走行する物体である。例えば、移動体は、路面を走行するための車輪を有していてもよい。また、例えば、移動体は、自律走行可能であってもよいし、オペレータの制御により走行可能であってもよい。また、例えば、移動体は、オペレータを搭載可能な車両であってもよい。移動体の具体例としては、農場における農機、建設現場、鉱山、または電力プラント等で作業する作業車両が挙げられるが、これらに限られない。
【0013】
(路面)
路面は、移動体が走行するために配置される面である。なお、路面は、1本道の路面であってもよいし、交差、分岐または合流により接続された複数の道の路面であってもよい。以降、路面を、「既存の路面」と記載する場合もある。
【0014】
路面は、幅方向の境界を規定する境界線を有する。幅方向とは、路面において移動体に想定される走行方向に対して直交する方向である。移動体は、路面の境界線から外側にはみ出して走行することが難しい。つまり、路面は、移動体の形状によっては、路幅等に起因して移動体が走行しづらい箇所または走行できない箇所を含む場合がある。
【0015】
(拡張面および仮想路面)
拡張面は、路面を仮想的に拡張した領域である。ここでは、仮想的な拡張とは、仮想的な拡幅であるものとする。この場合、拡張面は、路面の境界線に滑らかに接続する面である。路面および拡張面からなる領域を、仮想路面と記載する。
【0016】
(走行領域)
走行領域は、仮想路面において移動体に走行させる領域である。仮想路面では、移動体は既存の路面から拡張面にはみ出して走行することが可能である。換言すると、走行領域には、拡張面が含まれる場合がある。
【0017】
(改修領域)
改修領域は、拡張面のうち、走行領域を移動体に走行させるために改修が必要となる領域である。換言すると、改修領域は、拡張面および走行領域が重なる部分である。
【0018】
(情報処理装置1の効果)
情報処理装置1は、路面に移動体が走行しづらい箇所または走行できない箇所があっても拡幅すれば走行できる場合には、拡張面を含む走行領域を示す情報を生成する。このように、情報処理装置1は、路面の拡幅を考慮することにより、路面を走行する移動体の走行領域をより適切に決定することができる。
【0019】
<情報処理装置1の構成>
図1は、情報処理装置1の機能的な構成を示すブロック図である。図1に示すように、情報処理装置1は、情報取得部11と、拡張面生成部12と、走行領域生成部13と、改修領域生成部14とを含む。
【0020】
情報取得部11は、移動体を示す情報、および路面を示す情報を取得する。また、情報取得部11は、障害物を示す情報を取得する。情報取得部11が取得する各情報の詳細については後述する。
【0021】
拡張面生成部12は、路面を仮想的に拡幅することにより拡張した拡張面を示す情報を生成する。拡張面生成部12が実行する処理の詳細については後述する。
【0022】
走行領域生成部13は、仮想路面において移動体を走行させる走行領域を示す情報を生成する。具体的には、走行領域生成部13は、仮想路面に含まれる各点に、路面および周辺の状況に基づく第1コストと、路面および周辺を含む空間の状況に基づく第2コストとを関連付ける。また、走行領域生成部13は、走行領域に含まれる各点に関連付けられた第1コストおよび第2コストが所定の条件を満たすよう、当該走行領域を示す情報を生成する。走行領域生成部13が実行する処理の詳細については後述する。
【0023】
改修領域生成部14は、走行領域を示す情報に基づいて、拡張面のうち移動体を走行させるために改修が必要となる改修領域を示す情報を生成する。改修領域生成部14が実行する処理の詳細については後述する。
【0024】
<情報処理装置1が実行する情報処理方法S1の流れ>
図2は、情報処理装置1が実行する情報処理方法S1の流れを示すフローチャートである。
【0025】
(ステップS101)
ステップS101において、情報取得部11は、路面を示す情報および障害物を示す情報を取得する。
【0026】
(路面を示す情報)
路面を示す情報は、路面の三次元形状を示す情報を含む。路面を示す情報は、路面を含む地形の三次元形状を示す情報であってもよい。路面を含む地形の三次元形状を示す情報は、例えば、点群データ、メッシュデータ、オルソ画像等によって表される。
【0027】
(障害物を示す情報)
障害物を示す情報は、路面上またはその周辺に存在する障害物を示す。また、障害物を示す情報は、障害物の位置および三次元形状を示す情報を含む。障害物の三次元形状を示す情報は、例えば、点群データ、メッシュデータ等によって表される。
【0028】
例えば、情報取得部11は、路面を示す情報および障害物を示す情報を、UAV(unmanned aerial vehicle)、MMS(Mobile Mapping System)等を用いて測定された情報から抽出してもよい。また、情報取得部11は、路面を示す情報および障害物を示す情報を、情報処理装置1が備えるメモリまたは外部に接続されたメモリから読み込むことにより取得してもよい。また、情報取得部11は、路面を示す情報および障害物を示す情報を、ネットワークを介して接続された他の装置から取得してもよい。また、情報取得部11は、入力装置を介して入力される情報に基づいて、路面を示す情報および障害物を示す情報を取得してもよい。
【0029】
(ステップS102)
ステップS102において、拡張面生成部12は、路面を仮想的に拡幅することにより拡張した拡張面を生成する。具体的には、拡張面生成部12は、路面の幅方向の各境界線において路面に滑らかに接続する拡張面の三次元形状を示す情報を生成する。また、拡張面生成部12は、路面および拡張面からなる仮想路面を示す情報を生成する。
【0030】
(拡張面および仮想路面の具体例)
図3は、仮想路面の具体例を説明する模式図である。図3では、既存の路面R0の幅方向をx軸とし、路面R0に想定される移動体の走行方向をy軸とし、鉛直方向をz軸として示している。換言すると、図3は、z軸方向から路面R0を上面視した図である。ただし、図3は、路面R0がxy平面に含まれる平面であることを示すものではない。路面R0は、必ずしも平面に限らず、平面および曲面の一方または両方を含んで構成される。図3において、仮想路面R0aは、路面R0および拡張面R1、R2を含む。境界線L1、L2は、路面R0の幅方向の端を示す。拡張面R1は、境界線L1において路面R0に滑らかに接続する面である。拡張面R2は、境界線L2において路面R0に滑らかに接続する面である。図3では、仮想路面R0aは、路面R0、拡張面R1、R2からなる面として定義される。
【0031】
ここで、路面R0を示す情報として、既存の路面R0を含む地形の三次元形状を示す情報が実測に基づき得られているとする。この場合、例えば、拡張面生成部12は、路面R0を含む地形の三次元形状に基づいて、境界線L1、L2を特定する。特定した境界線L1、L2の内側の領域が、路面R0を示す。例えば、拡張面生成部12は、路面R0に基づき外挿により拡張面R1、R2を示す情報を生成する。具体例として、拡張面生成部12は、路面R0のメッシュデータを作成して各メッシュの法線ベクトルを求め、境界線L1、L2より外側の領域における法線ベクトルを外挿により推定する。これにより、拡張面生成部12は、推定した法線ベクトルを有するメッシュによって構成される拡張面R1、R2を生成する。図3では、路面R0の内側に示す実線の三角形群は、路面データR0のメッシュデータを模式的に示している。また、拡張面R1、R2の内側に示す破線の三角形群は、外挿により生成された拡張面R1、R2のメッシュデータを模式的に示している。
【0032】
(ステップS103)
ステップS103において、情報取得部11は、移動体を示す情報を取得する。例えば、情報取得部11は、移動体を示す情報を、情報処理装置1が備えるメモリまたは外部に接続されたメモリから読み込むことにより取得してもよい。また、情報取得部11は、移動体を示す情報を、ネットワークを介して接続された他の装置から取得してもよい。また、情報取得部11は、入力装置を介して入力される情報に基づいて、移動体を示す情報を取得してもよい。
【0033】
(移動体を示す情報)
移動体を示す情報は、移動体の三次元形状を示す情報、および移動体の走行パラメータを含む。
【0034】
移動体の三次元形状を示す情報は、例えば、点群データ、メッシュデータ等によって表される。例えば、移動体の三次元形状を示す情報は、三次元スキャナーによって取得された情報であってもよい。また、例えば、移動体の三次元形状を示す情報は、移動体の仕様情報から生成された情報であってもよい。また、例えば、移動体の三次元形状を示す情報は、移動体の製造メーカから提供された情報であってもよい。
【0035】
また、移動体を示す情報は、移動体の走行パラメータを含む。走行パラメータとは、例えば、旋回半径、車体幅、前輪幅、後輪幅、軸距、全長、全高、不陸追従性を示す情報等を含む。
【0036】
(ステップS104)
ステップS104において、走行領域生成部13は、仮想路面に含まれる各点に対して、第1コストおよび第2コストを関連付ける。
【0037】
(第1コストの関連付け処理)
第1コストは、既存の路面および周辺の状況に基づいて、仮想路面に付与されるコストである。第1コストは、移動体の設置面が既存の路面から外れないことを目的として各点に関連付けられる。ここで、移動体の設置面とは、例えば、移動体の車輪と路面とが接している領域のうち最も外縁の点である。なお、仮に移動体の設置面が既存の路面から外れて拡張面にはみ出す場合を考慮して、大きさや広がりを持った第1コストがあらかじめ付与される。つまり、第1コストは、移動体の設置面が既存の路面から外れないほど合計が低く抑えられるように付与される。換言すると、第1コストは、移動体の設置面が既存の路面の境界を逸脱すれば合計が高くなるよう付与される。あらかじめ付与される第1コストには、設計者の意図が反映されていることが望ましい。なお、最終的な走行領域は、第2コスト等を含む総合的なコストを参照して決定される。
【0038】
ここで、仮想路面のうち、拡張面に含まれる各点に関連付けられる第1コストは、拡張面の拡張しやすさに基づくコストである。拡張しやすさとは、改修しやすさであり、例えば、拡幅工事のしやすさをいう。拡幅工事のしやすさは、例えば、土地利用の自由度に応じて定まる。例えば、第1コストの値が小さいほど拡張しやすいことを示す場合、拡張面では、土地利用の自由度が高いほど第1コストが小さく、自由度が小さいほど第1コストが大きい。
【0039】
また、既存の路面に含まれる各点に関連付けられる第1コストは、移動体の走行しやすさに基づくコストであってもよい。例えば、第1コストの値が小さいほど走行しやすいことを示す場合、路面の中心線(幅方向における中央)に近いほど第1コストが小さく、境界に近いほど第1コストが大きい。このような第1コストは、路面の中心線に沿うほど走行しやすいことを示している。
【0040】
なお、第1コストの定義範囲の最大値は、走行不可または改修不可を示し、最小値は、改修不要を示していてもよい。
【0041】
(第2コストの関連付け処理)
また、ステップS104において、走行領域生成部13は、仮想路面に含まれる各点に対して、第2コストを関連付ける。第2コストは、仮想路面を含む空間の状況に基づくコストである。第2コストは、移動体が仮想路面を走行する際に必要となる空間領域を確保することを目的として各点に関連付けられる。
【0042】
具体的には、第2コストは、仮想路面を含む空間に存在する物体の移設しやすさに基づくコストである。例えば、移動体の設置面が仮想路面を外れないような走行領域であっても、当該走行領域上の空間またはその周辺の空間に物体が存在する場合、移動体の三次元形状によっては、移動体が物体に衝突する可能性がある。そこで、第2コストとして、そのような物体の移設しやすさに応じた値が関連付けられる。例えば、仮想路面を含む空間に街灯と樹木とが存在し、街灯の方が移設しやすいとする。第2コストの値が小さいほど移設しやすいことを示す場合、仮想路面においてその上に街灯が存在する領域の第2コストは、上に樹木が存在する領域の第2コストより小さい。また、第2コストの定義範囲の最大値は、移設不可を示し、最小値は、移設不要を示していてもよい。
【0043】
このように、第2コストは、移動体の設置面が既存の路面の境界を逸脱していなくても、空間において移動体が物体に衝突すれば合計が高くなるようあらかじめ付与される。このような第2コストは、例えば、移動体が、車両および車両上に載置された作業機からなるケース等を考慮するために付与される。このようなケースでは、移動体を上面視したときの作業機は、車両からはみ出す部分を有する可能性がある。その場合、車両が既存の路面の境界を逸脱していなくても、車両上の作業機が路面の周辺にある物体に衝突する可能性がある。このようなケースは、第1コストだけでは考慮できない。第2コストは、このようなケースを考慮することを目的として付与されるものである。
【0044】
なお、ステップS102において、例えば、拡張面生成部12は、路面および拡張面からなる仮想路面を示す情報を、表示装置に表示してもよい。また、例えば、走行領域生成部13は、ステップS104において、入力装置を介して入力される情報に基づいて、各点に第1コストおよび第2コストを関連付けてもよい。また、例えば、走行領域生成部13は、関連付けた第1コストおよび第2コストを、表示装置に表示された仮想路面に重畳してもよい。
【0045】
(第1コストの関連付けの具体例)
図4は、第1コストの具体例を説明するための模式図である。第1コストが関連付けられた仮想路面を、地面マップとも記載する。図4において、地面マップでは、仮想路面R0aに含まれる各点に対して第1コストが関連付けられる。この例では、第1コストは、0以上255以下の整数により256段階で表される。また、この例では、第1コストは、数値が小さいほど走行しやすいことを示す。また、第1コストは、数値が小さいほど改修しやすいことを示す。また、例えば、第1コストの最大値255は、改修不可能、または走行不可能であることを示す。また、第1コストの最小値0は、最も走行しやすいこと、または改修不要であることを示す。
【0046】
図4において、路面R0の中心線L9に含まれる各点には、最も走行しやすいことを示す第1コストの最小値0が関連付けられる。
【0047】
また、領域R1aは空き地であり、領域R2aは住宅地である。領域R1bは、拡張面R1のうち領域R1aに含まれる領域である。領域R2bは、拡張面R2のうち領域R2aに含まれる領域である。
【0048】
領域R1bは空き地であるため、比較的拡幅しやすい。したがって、領域R1bに含まれる各点には、改修しやすさが中程度であることを示す第1コスト100が関連付けられる。これにより、境界線L1のうち領域R1bに接する範囲d1に含まれる各点にも、改修しやすさが中程度であることを示す第1コスト100が関連付けられる。
【0049】
領域R2bは住宅地であるため、拡幅できない。したがって、領域R2bに含まれる各点には、改修不可能であることを示す第1コスト255が関連付けられる。これにより、境界線L2のうち領域R2bに接する範囲d2に含まれる各点にも、改修しやすさが中程度であることを示す第1コスト100が関連付けられる。
【0050】
また、拡張面生成部12は、中心線L9および領域R1b、R2bだけでなく、仮想路面R0aに含まれる各点に対して、改修しやすさを示す第1コストを関連付けることにより、地面マップを生成する。具体的には、拡張面生成部12は、仮想路面R0aに含まれる各点について、コスト関数を用いて第1コストを算出する。コスト関数は、仮想路面R0aに含まれる基準点からの距離に応じて各点のコストを算出する関数である。拡張面生成部12は、仮想路面R0aにおいて、1または複数の基準点を設定する。
【0051】
図5は、コスト関数を説明する模式図である。図5において、コスト関数c1は、基準点p1からの距離に応じてコストを算出する関数である。コスト関数c2は、基準点p2からの距離に応じてコストを算出する関数である。基準点p1は、例えば、空き地の領域R1bに含まれる。また、基準点p2は、例えば、住宅地の領域R2bに含まれる。コスト関数cは、コスト関数c1およびc2によって算出されるコストのうち最大値を第1コストとして算出する関数である。この例では、拡張面生成部12は、仮想路面R0aに含まれる各点に対して、コスト関数cにより算出される第1コストを関連付ける。なお、第1コストを算出するコスト関数cは、コスト関数c1、c2に基づき得られる値であれば、最大値に限らずその他の値を第1コストとしてもよい。例えば、拡張面生成部12は、コスト関数c1、c2がそれぞれ算出するコストの和、最小値、平均値等を第1コストとしてもよい。なお、図5に示したコスト関数c1、c2は、それぞれ、基準点におけるコストが最大値をとる関数である。換言すると、これらのコスト関数c1、c2は、それぞれ、基準点からの距離が大きいほど低いコストを算出する。ただし、地面マップを生成するために用いるコスト関数は、基準点におけるコストが最小値をとる関数であってもよい。例えば、中心線L9に含まれる点を基準点とするコスト関数は、基準点からの距離が大きいほど高いコストを算出する。
【0052】
(第2コストの関連付けの具体例)
図6は、第2コストの具体例を説明するための模式図である。第2コストが関連付けられた仮想路面を、空間マップとも記載する。図6において、空間マップでは、仮想路面R0aに含まれる各点に対して第2コストが関連付けられる。この例では、第2コストは、0以上255以下の整数により256段階で表される。また、この例では、第2コストは、数値が小さいほど移設しやすいことを示す。この場合、第2コストの最大値255は移設不可能であることを示し、第2コストの最小値0は移設不要であることを示す。
【0053】
図6において、障害物B1、B2は、仮想路面R0aを含む空間に存在する物体である。この例では、障害物B1は街灯であり、障害物B2は樹木である。ここでは、障害物B1は、障害物B2より移設しやすいとする。例えば、仮想路面R0aにおいてその上に障害物B1が存在する領域に含まれる各点には、第2コスト100が関連付けられる。また、仮想路面R0aにおいてその上に障害物B2が存在する領域に含まれる各点には、第2コスト150が関連付けられる。
【0054】
また、拡張面生成部12は、仮想路面R0aにおいてその上に障害物B1、B2が存在する領域だけでなく、仮想路面R0aに含まれる各点に対して、移設しやすさを示す第2コストを関連付けることにより、空間マップを生成する。具体的には、拡張面生成部12は、仮想路面R0aに含まれる各点について、コスト関数を用いて第2コストを算出する。コスト関数は、仮想路面R0aに含まれる基準点からの距離に応じて各点のコストを算出する関数である。拡張面生成部12は、仮想路面R0aにおいて、1または複数の基準点を設定する。
【0055】
第2コストを算出するコスト関数については、図5の説明において第1コストを第2コストと読み替えることにより同様に説明される。この場合、例えば、図5に示す基準点p1は、障害物B1が位置する空間領域に含まれる。基準点p2は、障害物B2が位置する空間領域に含まれる。
【0056】
(ステップS105)
ステップS105において、走行領域生成部13は、仮想路面において移動体を走行させる走行領域を示す情報を生成する。ここでは、始点および終点が与えられ、走行領域生成部13は、仮想路面において移動体を始点から終点まで走行させる走行領域を示す情報を生成する。
【0057】
具体的には、走行領域生成部13は、走行領域に含まれる各点に関連付けられた第1コストおよび第2コストが所定の条件を満たすよう、当該走行領域を示す情報を生成する。所定の条件とは、例えば、第1コストの合計が最小となり、かつ第2コストの合計が最小となることであってもよい。また、所定の条件とは、第1コストの合計および第2コストの合計の加重和が最小となることであってもよい。ただし、所定の条件は、上述したものに限られない。また、走行領域生成部13は、生成した走行領域を示す情報を、表示装置に表示する。
【0058】
(走行領域の具体例)
図7は、走行領域生成部13が走行領域を示す情報を生成する処理の具体例を説明する模式図である。図7の例では、路面R0はT字状である。このため、路面R0は、境界線L1、L2、L3を有している。拡張面R1は、境界線L1において路面R0に滑らかに接続する面である。拡張面R2は、境界線L2において路面R0に滑らかに接続する面である。拡張面R3は、境界線L3において路面R0に滑らかに接続する面である。図5では、仮想路面R0aは、路面R0、拡張面R1~R3を含む面として定義される。仮想路面R0aについては、各点の第1コストを示す地面マップおよび各点の第2コストを含む空間マップが生成されている。
【0059】
ここでは、走行領域生成部13が、始点Q1から終点Q2まで移動体Vを走行させる走行領域を示す情報を生成する例について説明する。走行領域生成部13は、移動体Vを示すポリゴンデータに対して走行に必要な余裕幅を加えた判定ボックスDを生成し、仮想路面R0aに判定ボックスDを配置して始点Q1から終点Q2まで走行させる。走行領域生成部13は、判定ボックスDを仮想路面R0aにおいて走行させる経路を探索する。走行領域生成部13は、判定ボックスDを仮想路面R0aにおいて走行させる経路のうち、(i)移動体Vの車輪が仮想路面R0aに接する領域のうち最も外縁の点に関連付けられた第1コストの合計値、および(ii)仮想路面R0aにおいて判定ボックスD内の各ポリゴンに衝突する点に関連付けられた第2コストの合計値が最も小さくなる経路Cを決定する。走行領域生成部13は、経路Cに沿って移動体Vを移動させた場合に判定ボックスDが通過する領域を示す情報を、走行領域R9を示す情報として生成する。また、走行領域R9のうち判定ボックスDが路面R0から境界線L1、L2を跨いで外側にはみ出した領域R1a、R2aを、改修により出現させる必要がある新たな面として記憶する。
【0060】
走行領域生成部13が最適な走行領域を示す情報を生成するために用いる目的関数と制約条件の一例を、次式(1)、(2)、(3)に示す。
【0061】
【数1】
【0062】
【数2】
【0063】
【数3】
【0064】
式(1)に示す目的関数は、仮想路面R0aにおいて格子状に第1コストまたは第2コストが配置されている場合に適用される目的関数である。式(1)に示す目的関数は、移動体Vが仮想路面R0aに接する外縁の点から所定距離以内に含まれる点に関連付けられた第1コストCiの和を最小化することを示す。なお、「移動体Vが仮想路面に接する外縁の点」とは、移動体Vの車輪が仮想路面R0aに接する領域のうち最も外縁の点である。または、式(1)に示す目的関数は、判定ボックスD内に含まれる点に関連付けられた第2コストCiの和を最小化することを示す。
【0065】
式(2)に示す目的関数は、仮想路面R0aを構成するポリゴンの頂点にコストが配置されている場合に適用される目的関数である。式(2)に示す目的関数は、各ポリゴンの頂点に付与された第2コストを線形補間してポリゴン内の第2コスト密度を算出し、判定ボックスD内に含まれる各ポリゴンのエリア内の第2コストをカウントして、その和を最小化することを示す。また、式(2)に示す目的関数は、各ポリゴンの頂点に付与された第1コストを線形補間してポリゴン内の第1コスト密度を算出し、上述した外縁の点から所定距離以内に含まれる各ポリゴンのエリア内の第1コストをカウントして、その和を最小化することを示す。
【0066】
式(3)に示す制約条件は、移動体の走行範囲に含まれる各点に関連付けられた第1コストの上限が255以下であることを示す。これは、この例では、改修不可能であることを示すコスト255が関連付けられた点は、走行できないことを示している。
【0067】
(ステップS106)
ステップS106において、改修領域生成部14は、走行領域を示す情報に基づいて、路面の各境界線を更新する。
【0068】
例えば、図7の例では、領域R1a、R2aは、移動体Vの走行領域R9のうち改修により出現させる必要がある新たな面である。そこで、改修領域生成部14は、境界線L1のうち領域R1aに接する範囲d4の部分を、領域R1aの外側の境界線L4に更新する。また、改修領域生成部14は、境界線L2のうち領域R2aに接する範囲d5の部分を、領域R2aの外側の境界線L5に更新する。
【0069】
(ステップS107)
ステップS107において、情報処理装置1は、走行領域を決定する対象となる他の始点および終点の組み合わせがあるか否かを判断する。例えば、図7に示したT字路の例では、既に説明した(i)始点Q1および終点Q2に加えて、(ii)始点Q1および終点Q3、(iii)始点Q2および終点Q1、(iv)始点Q2および終点Q3、(v)始点Q3および終点Q1、(vi)始点Q3および終点Q2といったように、全部で6通りの組み合わせがある。同一のT字路を同一の移動体に走行させる場合であっても、始点および終点の組み合わせに応じて走行領域が異なる可能性がある。そこで、始点および終点の他の組み合わせがある場合、当該組み合わせについてステップS104からの処理を実行することが好ましい。なお、情報処理装置1は、当該ステップにおける判断を、入力装置を介して入力される情報に基づいて実行してもよい。
【0070】
(ステップS107でYesの場合:走行領域の更新処理)
当該ステップにおいてYesの場合、情報処理装置1は、他の始点および終点の組み合わせについて、更新後の各境界線を参照しながら、ステップS104からステップS107までの処理を繰り返す。このようにして、走行領域生成部13は、複数の経路(始点および終点の組み合わせ)の各々について、上述した走行領域を示す情報を生成する。なお、始点および終点の複数の組み合わせがある場合、繰り返し処理を実行する順番は、ランダムであってもよいし、その他の順序であってもよい。
【0071】
繰り返し処理により再度実行するステップS104~S107について説明する。なお、繰り返し処理により再度実行するステップS104~S107を、今回のステップS104~S107と記載し、繰り返し処理の前の直近に実行したステップS104~S107を、前回のステップS104~S107と記載する。
【0072】
今回のステップS104において、走行領域生成部13は、前回のステップS106で更新後の境界線を参照して地面マップを更新する。具体的には、走行領域生成部13は、当該更新後の境界線に対して、更新前の境界線に関連付けた第1コストを線形補間することにより算出した第1コストを関連付けてもよい。また、例えば、走行領域生成部13は、当該更新後の境界線に対して、入力装置を介して入力される情報に基づいて第1コストを関連付けてもよい。なお、今回のステップS104において、仮想路面を含む空間の状況に変化がない場合、第2コストを関連付ける処理は省略され、前回生成した空間マップが適用される。
【0073】
また、今回のステップS105において、走行領域生成部13は、今回のステップS104で生成または適用した地面マップおよび空間マップを用いて、走行領域を示す情報を生成する。このとき、走行領域生成部13は、今回の繰り返し処理で適用した始点および終点の組み合わせを用いる。すなわち、走行領域生成部は、当該始点から当該終点まで移動体を移動させる走行領域に含まれる各点に関連付けられた第1コストおよび第2コストが所定の条件を満たすよう、当該走行領域を示す情報を生成する。
【0074】
また、今回のステップS106において、改修領域生成部14は、今回のステップS105で生成された走行領域を示す情報に基づいて、前回の各境界線をさらに更新する。前回の各境界線とは、前回のステップS106で更新後の各境界線である。具体的には、今回のステップS105で生成された走行領域のうち、前回の境界線よりも外側にある領域は、改修によりさらに出現させる必要がある追加領域である。そこで、改修領域生成部14は、前回の各境界線のうち当該追加領域に接する部分を、追加領域の外側の境界線に更新する。換言すると、今回のステップS106で更新後の境界線は、今回までに生成された複数の走行領域の境界線および既存の路面の境界線うち最も外縁となる境界線によって構成される。
【0075】
(ステップS107でNoの場合)
当該ステップにおいてNoの場合、情報処理装置1は、次のステップS108の処理を実行する。
【0076】
(ステップS108)
ステップS108において、情報処理装置1は、走行領域を決定する対象となる他の移動体があるか否かを判断する。例えば、同一の路面において、形状が異なる複数の移動体を走行させる場合、各移動体についてステップS103からの処理を実行することが好ましい。なお、情報処理装置1は、当該ステップにおける判断を、入力装置を介して入力される情報に基づいて実行してもよい。
【0077】
(ステップS108でYesの場合:走行領域の更新処理)
当該ステップにおいてYesの場合、情報処理装置1は、ステップS103からステップS107までの処理を繰り返す。これにより、走行領域生成部13は、複数の移動体の各々について、上述した走行領域を示す情報を生成する。なお、複数の移動体がある場合、繰り返し処理を実行する順番は、ランダムであってもよいし、その他の順序であってもよい。
【0078】
この場合、繰り返し処理により再度実行するステップS103において、情報取得部11は、他の移動体を示す情報を取得する。そして、情報処理装置1は、他の移動体について、走行領域の更新処理を行う。走行領域の更新処理については、ステップS107でYesの場合に説明した通りである。
【0079】
(ステップS108でNoの場合)
当該ステップにおいてNoの場合、情報処理装置1は、次のステップS109の処理を実行する。
【0080】
(ステップS109)
ステップS109において、改修領域生成部14は、ステップS105で生成した走行領域を示す情報に基づいて、改修領域を示す情報を生成する。複数の移動体または複数の経路の各々について走行領域が生成されている場合、改修領域生成部14は、それらの複数の走行領域に基づいて、改修領域を示す情報を生成する。改修領域は、直近のステップS106における更新後の境界線と、最初のステップS102において抽出した既存の路面の境界線とに囲まれた領域である。図7の例では、改修領域は、境界線L1および境界線L4に囲まれた内側の領域R1a、および、境界線L2および境界線L5に囲まれた内側の領域R2aである。また、改修領域生成部14は、生成した改修領域を示す情報を、表示装置に表示する。
【0081】
<本実施形態の効果>
このように、本実施形態は、移動体が既存の路面をはみ出してもよいように仮想的な拡張面を生成するので、路面の拡幅を考慮して移動体の走行領域をより適切に決定することができる。
【0082】
また、本実施形態は、拡張しやすさを少なくとも示す第1コストおよび移設しやすさを示す第2コストが所定の条件を満たすよう走行領域を示す情報を生成するので、移動体に走行領域を走行させるために必要な路面の改修をより容易なものとすることができる。
【0083】
また、本実施形態は、走行領域全体において第1コストおよび第2コストが所定の条件を満たすような走行領域を示す情報を生成するので、より適切な走行領域を決定することができる。
【0084】
また、本実施形態は、移動体を走行させる複数通りの始点および終点の組み合わせがある場合、または複数の移動体を走行させる場合であっても、より確実に移動体が走行可能な走行領域を決定することができる。
【0085】
また、本実施形態は、拡幅を考慮した走行領域を適用するために必要となる改修領域を示す情報を生成して表示装置に表示する。このため、ユーザは、拡幅を考慮した走行領域を採用するために必要な改修領域を示す情報を容易に得ることができる。さらに、本実施形態は、同一の路面において形状が異なる複数の移動体を走行させる場合に、どの移動体も走行させることが可能な経路を採用するための改修領域を示す情報を容易に得ることができる。
【0086】
<従来と比較した本実施形態の効果>
ここで、情報処理装置1を用いない場合、従来は、設計者が手作業で走行領域を決定していた。例えば、設計者は、路面を測量した図面に手作業で移動体の軌跡などを描くことにより、測量データと移動体の形状との関係を検討し、移動体に必要な走行領域が確保されているかどうか判断していた。また、設計者は、移動体に必要な走行領域が確保されていないと判断した場合、手作業で路面の拡幅または車両の変更等を検討した上で、走行領域を決定していた。
【0087】
また、情報処理装置1を用いない場合、従来のコンピュータは、探索した経路の走行領域が走行しづらい箇所または走行できない箇所を含むと判断した場合、当該経路とは異なる他の経路を探索していた。
【0088】
このように、従来は、路面における移動体の走行領域を決定するために道路の拡幅までをコンピュータが考慮する技術は存在していなかった。
【0089】
これに対して、上述したように、情報処理装置1は、路面の拡幅を考慮して移動体の走行領域を決定するので、移動体の走行領域をより適切に決定することができる。
【0090】
また、上述したように、情報処理装置1は、設計者の意図が反映された第1コストおよび第2コストを用いて走行領域を決定するので、設計者の意図を考慮した走行領域を決定することができる。
【0091】
また、上述したように、情報処理装置1は、路面を示す情報および移動体を示す情報等を入力するだけで、移動体を始点から終点まで走行させる走行領域を示す情報を生成するので、走行領域および経路データを自動的に決定することができる。これにより、従来は設計者が行っていた手作業が自動化される。
【0092】
〔変形例1〕
上述した本発明の一実施形態は、移動体の姿勢角を考慮するよう以下の通り変形することができる。移動体の姿勢角は、本発明における「移動体の走行状態」の一例である。
【0093】
図8は、変形例1に係る情報処理装置1が実行する情報処理方法S1Aの流れを示すフローチャートである。情報処理方法S1Aは、図2に示した情報処理方法S1に対して、ステップS103、S105に替えて、ステップS103A、S105Aを含む点が異なる。ここでは、差し替えたこれらのステップについて説明する。その他のステップについては、図2を参照して説明した通りであるため、詳細な説明を繰り返さない。
【0094】
(ステップS103A)
ステップS103Aにおいて、情報取得部11は、上述したステップS103の処理に加えて、姿勢角の制約条件を示す情報を取得する。例えば、情報取得部11は、姿勢角の制約条件を示す情報を、情報処理装置1が備えるメモリまたは外部に接続されたメモリから読み込むことにより取得してもよい。また、情報取得部11は、姿勢角の制約条件を示す情報を、ネットワークを介して接続された他の装置から取得してもよい。また、情報取得部11は、入力装置を介して入力される情報に基づいて、姿勢角の制約条件を示す情報を取得してもよい。
【0095】
(制約条件を示す情報)
制約条件を示す情報は、移動体の姿勢角に関する制約条件を含む。例えば、姿勢角の一例としては、ピッチ角、ロール角、およびねじれ角が挙げられる。この場合、制約条件を示す情報は、これらの各姿勢角の許容値を含む。各姿勢角の許容値は、移動体に応じて定められている。
【0096】
(ステップS105A)
ステップS105Aにおいて、走行領域生成部13は、上述したステップS105の処理に加えて、移動体の姿勢角が、ステップS103Aで取得した情報が示す制約条件を満たすよう走行領域を示す情報を生成する。制約条件は、例えば、姿勢角によるコストを含む各種コストの合計値が最小となることであるが、これに限られない。
【0097】
例えば、走行領域生成部13は、仮想路面を始点から終点まで移動体を走行させながら、移動体の姿勢角が許容値を超える度に姿勢角によるコストを加算していく。また、走行領域生成部13は、姿勢角によるコストも含めて各種コストの合計が最小となる経路を求める。例えば、走行領域生成部13は、第1コスト、第2コスト及び姿勢角によるコストの合計が最小となる経路を求める。また、走行領域生成部13は、求めた経路に基づき走行領域を示す情報を生成する。なお、走行領域生成部13は、姿勢角の種別に応じてコストを加算してもよい。また、走行領域生成部13は、姿勢角が許容値を超えた程度が大きいほど大きなコストを加算してもよい。また、走行領域生成部13は、同時に複数の種別の姿勢角がそれぞれ許容値を超えた場合、各姿勢角についてコストを加算してもよい。
【0098】
(変形例1の効果)
このように変形した情報処理装置1は、移動体の姿勢角を考慮して移動体を走行させる経路を決定するので、移動体が転倒する可能性を低減したより安全な走行領域を決定することができる。
【0099】
〔変形例2〕
上述した変形例1は、姿勢角に変えて、または加えて、移動体の他の走行状態が制約条件を満たす経路を決定するよう変形することができる。他の走行状態としては、移動体の車輪から路面の境界線までの距離、ハンドルの切り返し回数、前進後退の切り替え回数、後退動作、および経路の全長などがあるが、これらに限られない。
【0100】
この場合、例えば、ステップS105Bにおいて、走行領域生成部13は、仮想路面を始点から終点まで移動体を走行させながら、移動体の車輪から路面の境界線までの距離が許容値を下回る度に距離によるコストを加算していき、当該距離によるコストの合計が最小となる経路を求める。また、走行領域生成部13は、求めた経路に基づき走行領域を示す情報を生成する。同様にして、走行領域生成部13は、移動体から障害物までの距離によるコスト、ハンドルの切り返し回数によるコスト、前進後退の切り替え回数によるコスト、後退動作によるコスト、および経路の全長によるコスト、といった各種類のコストを加算しながら経路を探索し、各種類のコストが条件を満たす経路を決定する。条件とは、例えば、各種類のコストの合計がそれぞれ最小となることであってもよいし、全種類のコストの合計が最小となることであってもよいが、これに限られない。
【0101】
(変形例2の効果)
本変形例は、移動体の走行時に発生する各種類のコストを考慮して移動体が走行する経路を決定するので、より適切な経路を決定することができる。
【0102】
〔その他の変形例〕
上述した実施形態および各変形例は、農場において複数の圃場間を自律走行する農機の走行領域を決定する用途に適用できる。また、上述した実施形態および各変形例は、例えば、建設現場、鉱山、または電力プラント等で作業する作業車両の走行領域を決定する用途に適用できる。
【0103】
また、上述した実施形態および各変形例において、拡張面生成部は、路面を仮想的に拡幅することに限らず、その他の仮想的な改修により拡張面を生成してもよい。例えば、拡張面生成部は、路面の標高を改修することにより拡張面を生成してもよい。
【0104】
また、上述した実施形態および各変形例において、第1コストが基づく仮想路面の状況として、走行しやすさおよび改修しやすさを例として説明したが、仮想路面の状況は、これに限られない。例えば、第1コストが基づく仮想路面の状況は、路面に定められた通行可能領域、進入禁止領域、危険領域などの状況であってもよい。また、第2コストが基づく仮想路面を含む空間の状況として、物体の移設しやすさを例として説明したが、仮想路面を含む空間の状況は、これに限られない。第2コストが基づく仮想路面を含む空間の状況は、空間に定められた通行可能領域、進入禁止領域、危険領域などの状況であってもよい。
【0105】
また、上述した実施形態および各変形例において、移動体を示す情報、路面を示す情報および障害物を示す情報は、三次元形状を示す情報を含んでいなくてもよく、例えば、二次元形状を示す情報を含んでいてもよい。
【0106】
また、上述した実施形態は、変形例1、2の一部または全部を組み合わせて変形することも可能である。
【0107】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置1の制御ブロック(特に情報取得部11、拡張面生成部12、走行領域生成部13、および改修領域生成部14)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0108】
後者の場合、情報処理装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0109】
〔まとめ〕
本発明の一態様に係る情報処理装置1は、路面を走行する移動体を示す情報、および前記路面を示す情報を取得する情報取得部と、前記路面を仮想的に拡張した拡張面を示す情報を生成する拡張面生成部と、前記路面および前記拡張面からなる仮想路面において前記移動体を走行させる走行領域を示す情報を生成する走行領域生成部と、を備えている。
【0110】
上記構成によれば、路面の改修を考慮することにより、移動体の走行領域をより適切に決定することができる。
【0111】
上述した情報処理装置1において、前記拡張面生成部は、前記路面を仮想的に拡幅することにより拡張して前記拡張面を生成してもよい。
【0112】
上記構成によれば、路面の拡幅を考慮することにより、移動体の走行領域をより適切に決定することができる。
【0113】
上述した情報処理装置1において、前記走行領域生成部は、前記仮想路面に含まれる各点に、前記路面および周辺の状況に基づく第1コストと、前記路面および周辺を含む空間の状況に基づく第2コストとを関連付け、前記走行領域に含まれる各点に関連付けられた第1コストおよび第2コストが所定の条件を満たすよう、当該走行領域を示す情報を生成してもよい。
【0114】
上記構成によれば、路面および周辺の状況、および、路面および周辺を含む空間の状況に基づくコストを考慮するので、移動体を走行させる走行領域をより適切に決定することができる。
【0115】
上述した情報処理装置1において、前記拡張面に含まれる各点に関連付けられる第1コストは、前記拡張面の拡張しやすさに基づくものであり、前記第2コストは、前記仮想路面を含む空間に存在する物体の移設しやすさに基づくものであってもよい。
【0116】
上記構成によれば、移動体に走行領域を走行させるために必要となる路面の改修をより容易なものとすることができる。
【0117】
上述した情報処理装置1において、前記走行領域生成部13は、前記移動体の走行状態が所定の制約条件を満たすよう前記走行領域を示す情報を生成してもよい。
【0118】
上記構成によれば、移動体の走行状態を考慮することにより、移動体がより良い走行状態で走行できる走行領域を決定することができる。
【0119】
上述した情報処理装置1において、前記走行領域を示す情報に基づいて、前記拡張面のうち前記移動体を走行させるために改修が必要となる改修領域を示す情報を生成する改修領域生成部をさらに備えてもよい。
【0120】
上記構成によれば、ユーザは、路面の改修を考慮して生成された走行領域を採用するために必要な改修領域を示す情報を容易に得ることができる。
【0121】
上述した情報処理装置1において、前記走行領域生成部は、複数の移動体または複数の経路の各々について、前記走行領域を示す情報を生成し、前記改修領域生成部は、複数の前記走行領域に基づいて前記改修領域を示す情報を生成してもよい。
【0122】
上記構成によれば、複数の移動体または複数の経路に共通してより確実に走行可能な走行領域を決定することができる。
【0123】
本発明の一態様に係る情報処理方法S1は、情報処理装置1が実行する情報処理方法S1であって、路面を走行する移動体を示す情報、および前記路面を示す情報を取得するステップと、前記路面を仮想的に拡張した拡張面を示す情報を生成するステップと、前記路面および前記拡張面からなる仮想路面において前記移動体を走行させる走行領域を示す情報を生成するステップと、を含む。
【0124】
上記構成によれば、上述した情報処理装置1と同様の効果を奏する。
【0125】
本発明の一態様に係るプログラムは、上述した情報処理装置1としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、上記各部としてコンピュータを機能させる。
【0126】
上記構成によれば、上述した情報処理装置1と同様の効果を奏する。
【0127】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0128】
1 情報処理装置
11 情報取得部
12 拡張面生成部
13 走行領域生成部
14 改修領域生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8