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特許7479742ロゴスキ型電流センサおよびインバータ並びにロゴスキ型電流センサの装着方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】ロゴスキ型電流センサおよびインバータ並びにロゴスキ型電流センサの装着方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
G01R15/18 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023508992
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2022010621
(87)【国際公開番号】W WO2022202367
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2021050490
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021152900
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】大村 一郎
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-241480(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111370199(CN,A)
【文献】特開2020-076706(JP,A)
【文献】特表2010-531452(JP,A)
【文献】特開2005-257336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/18
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のフレキシブル配線基板により形成され、測定対象の電流経路を囲うことが可能な本体部であり、導電パターンにより長さ方向に沿ってロゴスキコイルが形成された測定部と、前記測定部の一方の端部に設けられ、前記測定部より幅の広い基端部とを有する本体部を備えたロゴスキ型電流センサ。
【請求項2】
前記本体部には、前記測定対象の電流経路を囲うときに、前記ロゴスキコイルの基端部と先端部とを重ね合わせることが可能な位置合わせ部が形成された請求項1記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項3】
前記ロゴスキコイルを挟む一対の層には、導電パターンにより形成され、長さ方向に交差する格子状のメッシュが形成された請求項1記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項4】
前記本体部の先端部であって、前記測定部より先部側に、前記本体部の長さ方向に沿って柔軟部が形成された請求項1記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項5】
帯状のフレキシブル配線基板により形成され、測定対象の電流経路を囲うことが可能な本体部であり、導電パターンにより長さ方向に沿ってロゴスキコイルが形成された測定部を有する本体部を備えたロゴスキ型電流センサであって、前記ロゴスキコイルは、前記測定対象の電流経路を囲うときにできる閉じた線に沿って、前記ロゴスキコイルを構成する各コイルが、隣り合うコイルのうち、あるコイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始めとの間を、前記閉じた線に並行する往線路により、複数のコイルが連続的に接続されていると共に、前記複数のコイルの最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの前記閉じた線に並行した復線路を有し、
前記コイルは、前記コイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始めとを有する第1辺と、前記第1辺と反対側に位置する第2辺と、前記第1辺および前記第2辺の両端部同士を接続する第3辺および第4辺とから形成され、
前記第3辺または前記第4辺のいずれか一方の辺は、他方の辺を含む平面であり、前記閉じた線に直交する平面とずれた位置に形成され、
前記コイル同士の間のコイルピッチを示す値をWp、前記第3辺と前記第4辺とのずれ量を示す値をWsとし、前記第2辺から前記第1辺までの高さを示す値をT1、前記復線路から前記第1辺までの高さを示す値をT2とすると、0<Ws<2×Wp×T2/T1の関係となるロゴスキ型電流センサ。
【請求項6】
前記フレキシブル配線基板は、少なくとも3層の導電パターン層を有し、
前記各コイルは、第1層に形成され、前記往線路および前記往線路が接続された前記第1辺である第1コイルパターンと、第3層に形成され、前記第1コイルパターンと並行する前記第2辺である第2コイルパターンと、前記第1コイルパターンと前記第2コイルパターンとのそれぞれの端部同士を接続する前記第3辺および前記第4辺となる一対のスルーホールとによって形成され、
前記往線路は、前記第1層と前記第3層とによる2層の間の第2層に形成された請求項5記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項7】
前記ずれ量Wsおよび前記コイルピッチWpは、Ws×T1=Wp×T2の関係である請求項5記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項8】
帯状のフレキシブル配線基板により形成され、測定対象の電流経路を囲うことが可能な本体部であり、導電パターンにより長さ方向に沿ってロゴスキコイルが形成された測定部を有する本体部を備えたロゴスキ型電流センサであって、
前記本体部は、基端部に信号取り出し用パッドが形成され、
初のコイルに接続される接続用パターンと、復線路に接続される接続用パターンとが厚み方向に重なる位置に形成されたロゴスキ型電流センサ。
【請求項9】
前記第1コイルパターンは、前記閉じた線と直交する方向に形成され、
前記復線路は、前記閉じた線と並行に形成され、
前記第2コイルパターンは、両端部からそれぞれに、前記閉じた線と直交する方向に延びる一対のパターン間を、前記閉じた線と並行に形成されたパターンによって接続されることで、クランク状に形成された請求項6記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項10】
前記本体部により測定対象の電流経路を囲い、前記ロゴスキコイルの基端部と先端部とを対向させたときに、前記基端部と先端部とが非接触であり、しかも前記ロゴスキコイルの基端部と先端部とが同じ位置、または近接するように形成された請求項1記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項11】
前記ロゴスキコイルの基端部と先端部とを対向させたときの厚み方向の間隔が1mm以下である請求項10記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項12】
前記ロゴスキコイルの基端部と先端部とを対向させたときの長さ方向の間隔が±1mm以下である請求項10記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項13】
前記本体部により測定対象の電流経路を囲うときに、前記ロゴスキコイルの基端部と先端部とを重ね合わせた状態で固定する固定具を備えた請求項1記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項14】
前記本体部には、前記本体部の基端部または先端部のいずれか一方に凹部または貫通孔か凸部かによる被嵌合部が形成され、
前記固定具は、前記一方が挿入されることにより、他方に重ね合わさせることが可能な挿入孔が形成され、
前記挿入孔の内壁には、前記被嵌合部の凹部または貫通孔に嵌る凸部か、前記被嵌合部の凸部に嵌る凹部または貫通孔かによる嵌合部が形成され、
前記嵌合部が前記被嵌合部に嵌合したときに、前記ロゴスキコイルの基端部と先端部とが重ね合わされる請求項13に記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項15】
前記固定具は、前記本体部の基端部または先端部のいずれか一方が挿入されることにより、他方に重ね合わさせることが可能な挿入孔が形成され、
前記挿入孔には、前記一方が挿入されたときに、前記ロゴスキコイルの基端部と先端部とが重なり合う位置で挿入を止める突き当て部が形成された請求項13に記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項16】
前記請求項1から15のいずれかの項に記載のロゴスキ型電流センサと、電源からの一方の電源線と他方の電源線との間に直列接続された上アームまたは下アームのいずれか一方または両方を電流経路として巻かれた前記ロゴスキ型電流センサからの出力により、前記電流経路に流れる電流を計測する電流測定回路とを備えたインバータ。
【請求項17】
第1主面、前記第1主面と反対面となる第2主面および一対の側面を有し、帯状の可撓性を有する本体部と、前記本体部内に埋設されたロゴスキコイルを有する測定部と、前記測定部の一方の端部に設けられ、前記測定部より幅の広い基端部を備えたロゴスキ型電流センサを測定対象の電流経路に装着する、前記ロゴスキ型電流センサの装着方法であって、前記測定対象の電流経路に対して、前記第1主面若しくは前記第2主面の一方が内側となるように測定対象の電流経路を囲う前記ロゴスキ型電流センサを装着するロゴスキ型電流センサの装着方法。
【請求項18】
前記ロゴスキ型電流センサの一方の端部に直接的または間接的に線状体を連結し、前記線状体を前記測定対象の電流経路と他の部材との間の隙間に挿入した後、前記線状体を移動させることで、前記ロゴスキ型電流センサを前記測定対象の電流経路巻き付け装着する請求項17記載のロゴスキ型電流センサの装着方法。
【請求項19】
帯状のフレキシブル配線基板により形成された本体部であり、導電パターンにより長さ方向に沿ってロゴスキコイルが形成された測定部と、前記測定部の一方の端部に設けられ、前記測定部より幅の広い基端部とを有する本体部を備えたロゴスキ型電流センサの両端部のそれぞれに形成されたマーク部を目安に前記ロゴスキ型電流センサを測定対象の電流経路に囲い装着するロゴスキ型電流センサの装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流分布を測定するロゴスキ型電流センサおよびインバータ並びにロゴスキ型電流センサの装着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電流の大きさを検出するセンサとして、リング状鉄心にコイルを巻いて鉄心の中心を貫通する電流を検出するCT(電流変成器)が用いられているが、鉄心を用いているために小型化できないこと、また磁気飽和により大電流の測定には誤差が大きくなるなどの欠点がある。これに対して、ロゴスキコイルを用いた電流センサでは、空芯であるため磁気飽和がなく、また小型化ができるという利点がある。IGBT等の、高集積化、大電流化が進んでいるパワーデバイスにおいては、ロゴスキ型電流センサは好適と考えられている。
【0003】
ロゴスキ型電流センサは、ロゴスキコイルが形成された測定部を円環状に撓ませて、測定対象となる配線を囲い、電流を検出する。このようなロゴスキ型電流センサとして、特許文献1-4に記載されたものが知られている。
特許文献1に記載の従来のロゴスキ型電流センサは、ロゴスキコイルが形成された環状の4層積層プリント配線基板(環状基板)の配線の無い部分に、被測定回路を環状基板の穴に挿通するための切り込みが設けられたものである。
【0004】
また、特許文献2-4に記載の従来のロゴスキ型電流センサは、測定対象に流れる電流を検出するセンサケーブルの基端部が取り付けられた保持部に形成された挿入口に、センサケーブルの先端部を挿入して、測定対象を取り囲んだ状態で測定対象に流れる電流を検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6709918号公報
【文献】特開2020-076706号公報
【文献】特開2020-076707号公報
【文献】特開2019-196962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献1に記載の従来のロゴスキ型電流センサは、電線に流れる電流を測定するときに、切り込みの位置からプリント配線基板を厚み方向にずらして隙間を作り、配線を挿入してプリント配線基板の穴に切り込みの位置から挿通させる。
しかし、硬質なプリント配線基板では厚み方向にずらして隙間を作り、プリント配線基板の穴に挿入して柔軟に電線を囲うことが困難である。
【0007】
特許文献2-4に記載の従来のロゴスキ型電流センサは、塩化ビニル又はポリエチレンなどの合成樹脂により構成された中空の可撓性部材に導線を螺旋状に巻き回したロゴスキコイルが、フッ素樹脂などの樹脂材料で覆われている。
従って、特許文献2-4に記載の従来のロゴスキ型電流センサでは、測定を繰り返していると、中空の可撓性部材が損傷し、螺旋状に巻き回したロゴスキコイルに損傷を与えてしまうおそれがある。また、中空の可撓性部材では、ある程度の厚みはあるため、配線と配線との隙間が狭いときには、センサケーブルを挿入し難くなる。
【0008】
そこで本発明は、柔軟に変形させることができ、隙間が狭くても容易に装着させることができるロゴスキ型電流センサおよびインバータ並びにロゴスキ型電流センサの装着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のロゴスキ型電流センサは、帯状のフレキシブル配線基板により形成され、測定対象の電流経路を囲うことが可能な本体部であり、導電パターンにより長さ方向に沿ってロゴスキコイルが形成された測定部を有する本体部を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明のロゴスキ型電流センサによれば、本体部がフレキシブル配線基板により形成されているため、本体部を湾曲させ、測定対象の電流経路を囲っても柔軟に繰り返し変形させることができる。帯状のフレキシブル配線基板は、薄く形成されているため、隙間が狭い場所でも挿入して、配線等の測定対象に巻き付けることができる。
【0011】
前記本体部には、前記測定対象の電流経路を囲うときに、前記ロゴスキコイルの基端部と先端部とを重ね合わせることが可能な位置合わせ部が形成されたものとすることができる。
本体部により測定対象を囲うときに、位置合わせ部により、ロゴスキコイルの基端部と先端部とを重ね合わせることができる。そのため、ロゴスキコイルから配線の電流に応じた信号を正確に出力させることができる。
【0012】
前記ロゴスキコイルを挟む一対の層には、導電パターンにより形成され、長さ方向に交差する格子状のメッシュが形成されたものとすることができる。
本体部を湾曲させるときに、長さ方向に沿って金属線が延びる場合と比較して剛性を抑えることができるので、測定対象の電圧変動による電界変化の影響をシールド層により遮断させつつ、本体部を湾曲するときの力を低下させることができる。
【0013】
前記本体部の先端部であって、前記測定部より先部側に、前記本体部の長さ方向に沿って柔軟部(シールド層除去部分)が形成されたものとすることができる。
先端部に柔軟部が形成されていることで、フレキシブル配線基板の剛性を低下させることができるため、容易に先端部を湾曲させることができる。
【0014】
前記ロゴスキコイルは、前記測定対象の電流経路を囲うときにできる閉じた線に沿って、前記ロゴスキコイルを構成する各コイルが、隣り合うコイルのうち、あるコイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始めとの間を、閉じた線に並行する往線路により、複数のコイルが連続的に接続されていると共に、前記複数のコイルの最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの前記閉じた線に並行した復線路を有し、前記コイルは、前記コイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始めとを有する第1辺と、前記第1辺と反対側に位置する第2辺と、前記第1辺および前記第2辺の両端部同士を接続する第3辺および第4辺とから形成され、前記第3辺または前記第4辺のいずれか一方の辺は、他方の辺を含む平面であり、前記閉じた線に直交する平面とずれた位置に形成され、前記コイル同士の間のコイルピッチを示す値をWp、前記第3辺と前記第4辺とのずれ量を示す値をWsとし、前記第2辺から前記第1辺までの高さを示す値をT1、前記復線路から前記第1辺までの高さを示す値をT2とすると、0<Ws<2×Wp×T2/T1の関係となるものとすることができる。
ずれ量Wsが0より大きければ第1辺と第2辺と第3辺および第4辺とに囲まれた平面が現れ、形成される。そのため、この平面による法線ベクトルが発生するため、コイルピッチ間の往線路と復線路とに挟まれた平面を通過する磁束の影響を軽減することができる。また、ずれ量Wsが2×Wp×T2/T1以上であると、Ws×T1による面積が大きくなりすぎて、ずれ量Wsが0であるときより磁束に対する影響が悪化する。
従って、Wp×T2による平面による磁束の悪影響を低減するには、0<Ws<2×Wp×T2/T1の関係となるようにすることができる。
【0015】
前記フレキシブル配線基板は、少なくとも3層の導電パターン層を有し、前記各コイルは、第1層に形成され、前記往線路および前記往線路が接続された前記第1辺である第1コイルパターンと、第3層に形成され、第1コイルパターンと並行する前記第2辺である第2コイルパターンと、前記第1コイルパターンと第2コイルパターンとのそれぞれの端部同士を接続する前記第3辺および前記第4辺となる一対のスルーホールとによって形成され、前記往線路は、前記第1層と前記第3層とによる2層の間の第2層に形成されたものとすることができる。
このように、少なくとも3層の導電パターン層を有するフレキシブル配線基板により、本発明のロゴスキコイルを構成することができる。
【0016】
前記ずれ量Wsおよび前記コイルピッチWpは、Ws×T1=Wp×T2の関係であるものとすることができる。
Wp×T2での平面による法線ベクトルが、Ws×T1での平面による逆向きの法線ベクトルにより相殺される。従って、本発明のロゴスキ型電流センサは、ノイズの発生が低減できるので、正確に電流を測定することができる。
【0017】
前記本体部は、基端部に信号取り出し用パッドが形成され、前記最初のコイルに接続される接続用パターンと、前記復線路に接続される接続用パターンとが厚み方向に重なる位置に形成されたものとすることができる。
厚み方向に見ると、ループ面積を減らせることができるので、寄生インダクタンスを低減することができ、耐ノイズ性を向上させることができる。
【0018】
前記第1コイルパターンは、前記閉じた線と直交する方向に形成され、前記復線路は、前記閉じた線と並行に形成され、前記第2コイルパターンは、両端部からそれぞれに、前記閉じた線と直交する方向に延びる一対のパターン間を、前記閉じた線と並行に形成されたパターンによって接続されることで、クランク状に形成されたものとすることができる。そうすることで、ロゴスキコイルを厚み方向(上方)から見たときに、コイルとしての平面が見えないため、耐ノイズ性を高めることができる。
【0019】
前記本体部により測定対象の電流経路を囲い、前記ロゴスキコイルの基端部と先端部とを対向させたときに、前記基端部と先端部とが非接触であり、しかも前記ロゴスキコイルの基端部と先端部とが同じ位置、または近接するように形成されたものとすることができる。
【0020】
前記ロゴスキコイルの基端部と先端部とを対向させたときの厚み方向の間隔が1mm以下であるものとすることができる。また、前記ロゴスキコイルの基端部と先端部とを対向させたときの長さ方向の間隔が±1mm以下であるものとすることができる。
そうすることで、精度よく測定対象の電流経路に流れる電流を測定することができる。
【0021】
前記本体部により測定対象の電流経路を囲うときに、前記ロゴスキコイルの基端部と先端部とを重ね合わせた状態で固定する固定具を備えたものとすることができる。
このような固定具を備えることで、測定対象の電流を測定するときに、ロゴスキコイルの基端部と先端部とを重ね合わせた状態からずれることを防止することができる。
【0022】
前記本体部には、前記本体部の基端部または先端部のいずれか一方に凹部または貫通孔か凸部かによる被嵌合部が形成され、前記固定具は、前記一方が挿入されることにより、前記他方に重ね合わさせることが可能な挿入孔が形成され、前記挿入孔の内壁には、前記被嵌合部の凹部または貫通孔に嵌る凸部か、前記被嵌合部の凸部に嵌る凹部または貫通孔かによる嵌合部が形成され、前記嵌合部が前記被嵌合部に嵌合したときに、前記ロゴスキコイルの基端部と先端部とが重ね合わされるものとすることができる。
被嵌合部と嵌合部とが位置合わせ部として機能することで、確実にロゴスキコイルの基端部と先端部とを重ね合わせることができ、本体部の先端部と基端部とを重ねた状態で固定することができる。
【0023】
前記固定具は、前記本体部の基端部または先端部のいずれか一方が挿入されることにより、前記他方に重ね合わさせることが可能な挿入孔が形成され、前記挿入孔には、前記一方が挿入されたときに、前記ロゴスキコイルの基端部と先端部とが重なり合う位置で挿入を止める突き当て部が形成されたものとすることができる。
本体部の基端部または先端部のいずれか一方を挿入孔に挿入すると、突き当て部により一方の挿入が止まるので、ロゴスキコイルの基端部と先端部とを重なり合わせた状態で固定することができる。
【0024】
本発明のインバータは、本発明のロゴスキ型電流センサと、電源からの一方の電源線と他方の電源線との間に直列接続された上アームまたは下アームのいずれか一方または両方を電流経路として巻かれた前記ロゴスキ型電流センサからの出力により、前記電流経路に流れる電流を計測する電流測定回路とを備えたことを特徴とする。
このように本発明のロゴスキ型電流センサを上アームや下アームに装着することで、上アームや下アームに流れる電流を監視してインバータの出力電流を制御したり、上アームや下アームに流れる過大な電流を検出して警報したりすることができる。
【0025】
また、本発明のロゴスキ型電流センサの装着方法は、第1主面、前記第1主面と反対面となる第2主面及び一対の側面を有し、帯状の可撓性を有する本体部と、前記本体部内に埋設されたロゴスキコイルとを備えたロゴスキ型電流センサを電流が流れる測定対象の電流経路に装着する、前記ロゴスキ型電流センサの装着方法であって、前記測定対象の電流経路に対して、前記第1主面若しくは前記第2主面の一方が内側となるように測定対象の電流経路を囲う前記ロゴスキ型電流センサを装着することを特徴とする。
【0026】
このようにして電流線路に、本発明のロゴスキ型電流センサを装着することができる。
【0027】
前記ロゴスキ型電流センサの一方の端部に直接的または間接的に線状体を連結し、前記線状体を前記測定対象の電流経路と他の部材との間の隙間に挿入した後、前記線状体を移動させることで、前記ロゴスキ型電流センサを前記測定対象の電流経路巻き付け装着することができる。
そうすることで、測定対象の電流経路と他の部材との間が狭い隙間であっても、まず、ロゴスキ型電流センサの端部に直接的または間接的に連結された線状体を隙間に通してロゴスキ型電流センサを引っ張り、ロゴスキ型電流センサを隙間に位置させることで、容易にロゴスキ型電流センサを測定対象の電流経路に装着することができる。
【0028】
また、帯状のフレキシブル配線基板により形成された本体部であり、導電パターンにより長さ方向に沿ってロゴスキコイルが形成された測定部を有する本体部を備えたロゴスキ型電流センサの両端部のそれぞれに形成されたマーク部を目安に前記ロゴスキ型電流センサを測定対象の電流経路を囲い装着する。そうすることで、装着が容易となり、特性のばらつきを抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のロゴスキ型電流センサによれば、帯状のフレキシブル配線基板は、薄く形成されているため、隙間が狭い場所でも挿入して、配線等の測定対象に巻き付けることができるので、柔軟に変形させることができ、隙間が狭くても容易に装着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施の形態に係るロゴスキ型電流センサを電流経路に巻き付けた状態を示す斜視図であり、図1Aは本体部のおもて面(第1主面)同士を重ね合わせた状態の図、図1Bは先端部のおもて面(第1主面)と基端部の裏面(第2主面)とを重ね合わせた状態の図である。
図2図2A図1に示すロゴスキ型電流センサを構成するフレキシブル配置基板の図、図2Bはフレキシブル配線基板のおもて(第1主面)側に配置されたカバーフィルムを説明するための図、図2Cはフレキシブル配線基板の裏(第2主面)側に配置されたカバーフィルムを説明するための図である。
図3図2Aに示すフレキシブル配線基板に形成されたロゴスキコイルの原理を説明するための図である。
図4図2Aに示すフレキシブル配線基板のシールド層を説明するための図であり、図4Aはおもて側のシールド層の図、図4Bは裏側のシールド層の図、図4Cはシールド層のメッシュの一部拡大図である。
図5図5A図2Aに示すフレキシブル配線基板の第1層を説明するための図、図5B図5Aの一部拡大図である。
図6図6A図2Aに示すフレキシブル配線基板の第2層を説明するための図である。図6B図6Aの一部拡大図である。
図7図7A図2Aに示すフレキシブル配線基板の第3層を説明するための図、図7B図7Aの一部拡大図である。
図8図2Aに示すフレキシブル配線基板の構成を説明するための図である。
図9図1に示すロゴスキ型電流センサのロゴスキコイルの基端部と先端部とを重ね合わせた状態の図であり、図9Aは厚み方向の間隔を説明するための図、図9Bは長さ方向の間隔を説明するための図である。
図10図1に示すロゴスキ型電流センサをロゴスキコイルの位置を合わせて固定した一例の図であり、本体部の基端部と先端部とをハウジングにより固定した状態の図である。
図11図1に示すロゴスキ型電流センサをロゴスキコイルの位置を合わせて固定した一例の図であり、図11Aは本体部の基端部が貫通しているハウジングに先端部を挿入するときの図、図11B図11Aに示すハウジングの挿入孔に本体部の先端部を挿入した状態の図である。
図12図1に示すロゴスキ型電流センサをロゴスキコイルの位置を合わせて固定した一例の図であり、図12Aは本体部の基端部が貫通しているハウジングに先端部を挿入するときの図、図12B図12Aに示すハウジングの挿入孔に本体部の先端部を挿入した状態の図である。
図13図13Aは従来のロゴスキコイルの原理を説明するための図、図13Bは従来のロゴスキコイルを厚み面から見たときの概略図である。
図14図3に示すロゴスキコイルのパターンを説明するための図であり、図14Aは第1層の第1コイルパターンを説明するための図、図14Bは第2層のスルーホールを説明するための図、図14Cは第3層の第2コイルパターンを説明するための図である。
図15図3に示すロゴスキコイルを厚み面から見たときの概略図である。
図16図1に示すロゴスキコイルの効果が得られる範囲を説明するためのグラフである。
図17図16からスルーホールの間隔誤差を考慮したときの効果が得られる範囲を説明するためのグラフである。
図18図3に示すロゴスキコイルを上方から見た図である。
図19】ロゴスキコイルの変形例を説明するための図であり、図19Aは第1層の第1コイルパターンを説明するための図、図19Bは第2層のスルーホールを説明するための図、図19Cは第3層の第2コイルパターンを説明するための図である。
図20図1Aまたは図1Bに示すロゴスキ型電流センサを上アームと下アームを電流経路として装着して、電流経路に流れる電流を電流測定回路により計測するインバータを説明するための図である。
図21図1Aまたは図1Bに示すロゴスキ型電流センサを測定対象の電流経路に装着する前の状態を示す斜視図である。
図22図1Aまたは図1Bに示すロゴスキ型電流センサを測定対象の電流経路に位置させた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態に係るロゴスキ型電流センサを図面に基づいて説明する。
図1Aおよび図1Bに示すロゴスキ型電流センサ100は、測定対象の配線W(電流経路)の周囲を囲って、配線Wに流れる電流を測定するものである。ロゴスキ型電流センサ100により配線Wの周囲を囲う場合、図1Aに示すように、おもて面(第1主面1S)同士、または図1Bに示すように、先端部11のおもて面(第1主面1S)と基端部12の裏面(第2主面2S)とを合わせて重ねることができる。なお、図1Aおよび図1Bのロゴスキ型電流センサ100は、装着される機器やモジュールの仕様、或いは使用環境などによって、使い分けることができる。
また、図示しないが、裏面(第2主面2S)同士を合わせて重ねることができ、先端部11の裏面(第2主面2S)と基端部12のおもて面(第1主面1S)とを合わせて重ねることができる。
【0032】
図2Aに示すロゴスキ型電流センサ100は、帯状のフレキシブル配線基板により形成された本体部10を備えている。
【0033】
本体部10は、樹脂性フィルムと導電パターンとが交互に配置された可撓性を有する5層(図8参照、第1層~第3層+シールド層×2層)の基板である。本体部10は、初期状態が直線状に形成されている。
本体部10は、先端10aから基端10bまでの長さが約10cmに形成されている。また、本体部10は、先端10a側の幅が狭い部分が約2mm、基端10b側の幅が広い部分が約6mmにより形成されている。
【0034】
本体部10は、長さ方向F1に沿って柔軟部として機能する長孔111が形成された先端部11と、接続用プラグが搭載される半田付け用パッド121(端子部)が形成され、先端部11より幅広に形成された基端部12と、先端部11と基端部12との間に位置し、ロゴスキコイルCが形成された測定部13とを備えている。
【0035】
また、先端部11に形成された長孔111の先には、本体部10を円環状に湾曲させて配線を囲うときに、ロゴスキコイルCの基端部C1と先端部C2とを重ね合わせるための位置合わせ部14(マーク部)の一方側となる第1位置合わせ部14aがパッドにより形成されている。また、基端部12には、位置合わせ部14の他方側となる第2位置合わせ部14bがパッドにより形成されている。
この位置合わせ部14は、図2Bおよび図2Cに示す表裏の表層となるカバーフィルム15a,15bに形成された貫通孔15cにより外部に露出している。
このように位置合わせ部14(マーク部)がロゴスキ型電流センサの両端部に形成されている。
【0036】
図2Aに示す半田付け用パッド121は、ロゴスキコイルCからの信号を出力するための第1パッド121a(信号取り出し用パッド)と、後述するシールド層に接続され、グランドに落とすための第2パッド121bとを備えている。
第1パッド121aは、ロゴスキコイルCのコイルの往線路と復線路とに一対の接続用パターン123により接続されている。
【0037】
ここで、測定部13に形成されたロゴスキコイルCについて説明する。
図2Aに示すように、ロゴスキコイルCは、ロゴスキコイルCの基端部C1と先端部C2とが重ね合わされたときにできる、図3に示す閉じた線Lに沿って、複数のコイル(ロゴスキコイルC)を構成する各コイル1が、隣り合うコイルのうち、あるコイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始めとの間を、閉じた線Lに並行する往線路2により、連続的に接続されている。
また、ロゴスキコイルCは、複数のコイルの最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの閉じた線Lに並行した復線路3を有している。
復線路3が、往線路2と反対側に位置するコイル部分側より往線路2に、近接して配置されている。
【0038】
このロゴスキコイルCは、図2Aに示す本体部10(測定部13)のフレキシブル配線基板による導電パターンにより形成されている。フレキシブル配線基板は、少なくとも3層の導電パターン層を有するものが使用できる。
まず、本体部10の表層である、図2Bに示す第1主面となるカバーフィルム15aおよび第1主面と反対側となる第2主面となる図2Cに示すカバーフィルム15bの内層側には、ロゴスキコイルCを厚み方向に挟む一対の層であるシールド層S(図4Aおよび図4B参照)が形成されている。シールド層Sには、図4Cに示すように、長さ方向F1に交差する格子状のメッシュS1が形成されている。本実施の形態では、メッシュS1は、長さ方向F1に対して45度に傾斜している。
また、図4Aに示すように、シールド層Sには、前述した半田付け用パッド121が形成されている。
【0039】
この一対のシールド層Sの内層には、第1層(図8参照)として、図3と、図5Aおよび図5Bとに示すように、第1コイルパターン1A(第1辺1a)と、第1コイルパターン1Aに接続するスルーホールの一方の端部となる一方の接続部1C’,1D’と、往線路2と、接続用パターン123とが形成されている。
【0040】
また、一対のシールド層Sの内層の第2層(図8参照)として、図3と、図6Aおよび図6Bとに示すように、第1コイルパターン1Aと後述する第2コイルパターン1Bとの間を接続するスルーホール1C,1D(第3辺1c,第4辺1d)と、復線路3とが形成されている。
また、第2層に積層されるスペース層として、パターンが形成されていない層が設けられている。
【0041】
更に、スペース層に積層される第3層(図8参照)として、図3と、図7Aおよび図7Bとに示すように、第2コイルパターン1B(第2辺1b)と、第2コイルパターン1Bに接続するスルーホールの他方の端部となる他方の接続部1C”,1D”が形成されている。
このようにフレキシブル配線基板が形成されていることで、第1層の往線路2と第2層の復線路3との間が、ベースフィルム(12.5μm)とボンディングシート(25μm)とにより37.5μmに形成される。第2層の復線路3と、往線路2の反対側のコイル部分となる第3層の第2コイルパターン1Bとの間が、ベースフィルム(50μm)とボンディングシート(25μm)とベースフィルム(50μm)とにより125μmに形成されている。
【0042】
このようにして、往線路2と復線路3とは、上方から見た場合経路が一致しており、高さが異なるのみであり、復線路3は、第2コイルパターン1B(第2辺1b)より往線路2に寄せて配線されている。
【0043】
このようなロゴスキ型電流センサ100の本体部10により測定対象の電流経路(配線W)を囲い、電流を測定するときには、図9Aに示すように、ロゴスキコイルCの基端部C1と先端部C2とが非接触であり、しかも同じ位置、または近接するようにする。このときの間隔K1は、厚み方向で1.5mm以下、好ましくは1mm以下とすることができる。すなわち、ロゴスキ型電流センサ100は、上述の通り、ロゴスキコイルCをフレキシブルな樹脂フィルムを積層して構成されているので、ロゴスキコイルCは少なくとも両面を樹脂フィルムなどで挟み込まれた状態である。この時、ロゴスキコイルCの基端部C1と先端部C2を重ねて環状とすると、少なくとも樹脂フィルムの厚み分、ロゴスキコイルCの基端部C1と先端部C2は離れることになり非接触状態とすることができる。なお、間隔K1を調整したい場合には、スペーサーを別途挿入したり、或いは、接着剤の塗布量を調整したり、更には、樹脂フィルムなどを削ったりなどの手法が考えられる。
【0044】
また、図9Bに示すように、この間隔K2は、長さ方向で±1.5mm以下、好ましくは±1mm以下とすることができる。
更に、図1Aに示すように、第1位置合わせ部14aと第2位置合わせ部14bとを重ね合わせた位置で固定すれば、図9Bに示すロゴスキコイルCの基端部C1と先端部C2とを確実に同じ位置或いはほぼ同じ位置とすることができる。
【0045】
この固定は、半田付けしたり、接着テープを巻き付けたり、例えば、図10に示すように、重ね合わせた位置合わせ部14の本体部10の先端部11と基端部12とを金属製の固定具としてハウジングHにより挟み込み挟持したりするようにしてもよい。そうすることで、測定対象の電流を測定するときに、ロゴスキコイルC(図9参照)の基端部C1と先端部C2とを重ね合わせた状態からずれることを防止することができる。また、金属製のハウジングHであれば重ね合わせた位置への外来ノイズの混入を防止することができる。
【0046】
また、図11Aに示すハウジングH1(固定具)によっても、ロゴスキコイルCの基端部C1と先端部C2とを重ね合わせた状態で固定することができる。
ハウジングH1には、本体部10の挿入方向に沿って挿入孔H1aが形成された四角筒状である。ハウジングH1には、本体部10が、挿入孔H1aの奥壁を貫通して、挿入孔H1aの開口部へ延び、挿入孔H1aから基端部12が突出している。
この挿入孔H1aに先端部11が挿入されることで、基端部12と重ね合わされた状態となる。
【0047】
図11Aに示す例では、本体部10の先端部11には、被嵌合部となる貫通孔11aが形成されている。また、挿入孔H1aの先端部11側の内壁には、嵌合部となる凸部H1bが形成されている。
図11Bに示すように、本体部10の先端部11が挿入孔H1aに挿入され、この嵌合部となる凸部H1bが被嵌合部となる貫通孔11aに嵌ることで、ロゴスキコイルCの基端部C1と先端部C2とが重ね合わされた状態となる。
このように、被嵌合部となる貫通孔11aと、嵌合部となる凸部H1bとが位置合わせ部として機能することで、確実にロゴスキコイルCの基端部C1と先端部C2とを重ね合わせることができ、本体部10の先端部11と基端部12とを重ねた状態で固定することができる。
【0048】
なお、図11Aおよび図11Bに示す例では、ハウジングH1には、当初から本体部10の基端部12が貫通しているが、先端部11が貫通した状態で配置され、測定するときに基端部12を挿入するようにしてもよい。
また、先端部11の貫通孔11aとする以外に凹部とすることもできる。また貫通孔11aの代わりに凸部とすることができる。貫通孔11aの代わりに凸部とした場合には、挿入孔H1aの内壁には貫通孔または凹部とすることで、本体部の凸部をハウジングH1の凹部に嵌合させることができる。
【0049】
また、図11Aおよび図11Bの様に、貫通孔11aや凸部H1bを設けずに、例えばロゴスキ型電流センサ100の先端部11の端面を固定具H1の挿入孔H1aの奥壁上部に当接させて、位置合わせを行うこともできる。
【0050】
例えば、図12Aおよび図12Bに示すハウジングH2は、本体部10の先端部11が挿入されることにより、基端部12に重ね合わさせるための挿入孔H2aが形成されている。
挿入孔H2aには、先端部11が挿入されたときに、ロゴスキコイルの基端部と先端部とが重なり合う位置で挿入を止める突き当て部H2bが形成されている。
このようにハウジングH2が形成されていることで、本体部10の先端部11をハウジングH2の挿入孔H2aに挿入すると、突き当て部H2bにより挿入が止まり、ロゴスキコイルの基端部と先端部とを重なり合わせた状態で固定することができる。
図12Aおよび図12Bに示すハウジングH2においても、当初から本体部10の基端部12が固定具H2を貫通しているが、先端部11が貫通した状態で配置され、測定するときに基端部12を挿入するようにしてもよい。
【0051】
図2Aに示すように、本体部10を円環状に湾曲させ、測定対象の配線を囲うときに、位置合わせ部14(第1位置合わせ部14a,第2位置合わせ部14b)により、ロゴスキコイルCの基端部C1と先端部C2とを重ね合わせることができる。そのため、ロゴスキ型電流センサ100は、ロゴスキコイルCから配線の電流に応じた信号を正確に出力させることができる。
【0052】
また、このように形成されたロゴスキ型電流センサ100は、本体部10がフレキシブル配線基板により形成されているため、本体部10を円環状に湾曲させても柔軟に繰り返し変形させることができる。また、帯状のフレキシブル配線基板は、薄く形成されているため、隙間が狭い場所でも挿入して、配線等の測定対象に巻き付けることができる。
よって、ロゴスキ型電流センサ100は、柔軟に変形させることができ、隙間が狭くても容易に装着させることができる。
【0053】
また、基端部12を他の部分よりも幅広にすることで、後の各パッドへの配線などの接続作業が容易になる。更に、形状にて基端部12側なのか、先端部11側なのかの判別が容易になり、ロゴスキ型電流センサ100の取り付けの作業性がよくなる。
【0054】
本体部10を隙間が狭い場所に挿入して湾曲させるときでも、先端部11には長孔111が形成されていることで、剛性が低下しているため、容易に先端部11を湾曲させることができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、長孔111を構成することで、先端部11を曲げやすくして、配線の隙間等への先端部11の挿入を容易にしたが、貫通した長孔111でなくても、長孔111に対応した部分の厚みを他の部分より薄くしたり(シールド層Sを除去して薄くしたり)して、曲げ性を向上させてもよく、あるいは、長孔111に相当する部分に、フレキシブル配線基板よりも柔軟性のある材料を埋め込んだ構成とすることもできる。すなわち、先端部11の作業性を向上させることもできるので、先端部11側に、長孔111等の柔軟部を設けることが好ましい。
【0056】
更に本実施の形態では、先端部11の隙間等への挿入性を良くするために、長孔111(柔軟部)を設けたが、設計や使用環境により、先端部11が曲がりにくいようにすることで、取り付け性能を向上させることができるので、長孔111に対応する部分を他の部分より厚くしたりして、曲げ難くしてもよく、あるいは、長孔111に相当する部分に、フレキシブル配線基板よりも柔軟性がない材料(硬質材)を埋め込んだ、構成とすることもできる。
【0057】
以上のように、先端部11側(付近)に柔軟部を設け、先端部11の曲げやすさが調整できるので、様々な環境のモジュールや機器に組み込む際の取り付けやすさを実現できる。
【0058】
更に、ロゴスキコイルCが厚み方向の両側にシールド層Sにより挟まれている。従って、ロゴスキ型電流センサ100により電流を測定するときに、本体部10の一面側、または他面側のいずれかが測定対象と対向しても、ロゴスキコイルCと測定対象との間には、シールド層Sが介在する。そのため、測定対象による電界の影響をシールド層Sにより遮断させることができる。
【0059】
また、シールド層Sは、長さ方向F1と交差するメッシュS1により形成されているため、本体部10を湾曲させるときに、長さ方向F1に沿って金属線が延びる場合と比較して剛性を抑えることができる。従って、本体部10を湾曲するときの力を低下させることができる。
【0060】
最もシールド層Sの効果を発揮させるためには、上述の通り、ロゴスキコイルCを挟み込むように両主面(第1主面および第2主面)側の全面にシールド層Sを設けた方が好ましいが、ロゴスキ型電流センサの使用環境によっては、シールド層Sを部分的に設ける構成でもよい。すなわち、本体部10の中央部付近にのみシールド層Sを設けたり、あるいは、本体部10の中央部にはシールド層Sを非配置とし、本体部10の両端部にシールド層Sを分割して設けたりすることもできる。また、両主面側にシールド層Sを設けるのではなく、片方の主面側にのみシールド層Sを設けたりすることもできる。この様に部分的にシールド層Sを設けることで、シールド層Sがない場合に比べて、特性を向上させることが可能となる。
【0061】
例えば、特許文献1に記載の従来のロゴスキ型電流センサを図13Aに示す。
図13Aに示すロゴスキ型電流センサのロゴスキコイルは、全体が1つの閉じた線Lに沿って連続的に接続される複数のコイル1cが矩形状であり、それぞれが閉じた線Lに垂直な一つの平面S0上に形成されている。各コイル1間は、閉じた線Lに並行する往線路2cによって接続される。複数のコイル1cの個数をnターンとすると、1ターン目のコイル1cから始まってnターン目のコイル1cの巻き終わりから、閉じた線Lに沿って1ターン目のコイル1の巻き始めまで1ターン分の復線路3cが設けられている。
【0062】
このように、閉じた線Lに垂直な一つの平面S0上にコイル1cが形成されているため、コイル1cの内部を貫通する電線路に流れる電流は検出するが、コイルの外部に流れる電流に対しては、図13Bに示すように、往線路2cからの復線路3cまでの高さdが、コイルの厚みtに比べて微小となるように設定することにより、コイルとして無視できる大きさとなり、ノイズを低減することができる。
この効果は、復線路3が第2辺1bより往線路2に寄せて配線されていれば得られる。
【0063】
しかし、厚みの厚いプリント配線基板であれば、図13Bに示すように、往線路2cと復線路3cの高さdをコイルの厚みtに比べて微小となるように設定することも容易であるが、厚みが薄いフレキシブル配線基板の場合、基板の厚みが300μm以下であるため、十分な高さの違いが確保し難い。
【0064】
そのため、フレキシブル配線基板に従来のロゴスキコイルを形成すると、往線路2cと復線路3cと高さdとにより囲まれた平面Scを通過する磁束も影響を受けてしまい、この平面Scによる法線ベクトルは平面S0の法線ベクトルと垂直である。従って、従来のロゴスキコイルでは、平面S0による法線ベクトルと、平面Scによる法線ベクトルとによる磁束に対する影響は合成ベクトルとなる。
【0065】
そこで、本実施の形態に係るロゴスキコイルCでは、図14および図15に示すように、スルーホール1Cに対してスルーホール1Dが、コイル1の並び方向にずれた位置に形成されている。
【0066】
具体的には、本体部10(フレキシブル配線基板)の厚み面からフレキシブル配線基板を見たときに、コイル1のスルーホール1C(第3辺1c)と隣接するコイル1のスルーホール1C(第3辺1c)との間の距離(コイルピッチ)をWp、コイル1の一方のスルーホール1C(第3辺1c)に対する他方のスルーホール1D(第4辺1d)のずれ量をWsとし、第2コイルパターン1B(第2辺1b)から第1コイルパターン1A(第1辺1a)までの高さをT1、復線路3から第1コイルパターン1A(第1辺1a)までの高さをT2とする。
【0067】
そうしたときに、ロゴスキコイルCでは、0<Ws<2×Wp×T2/T1の関係となるように形成されており、特に、本実施の形態では、Ws×T1=Wp×T2による関係式となるように形成されている。
【0068】
そうすることで、Wp×T2により平面Spによる法線ベクトルが、Ws×T1による平面Ssによる法線ベクトルにより、磁束に対する影響が相殺される。従って、ロゴスキ型電流センサ100は、ノイズの発生が低減できるので、正確に電流を測定することができる。
【0069】
図16に示すように、ずれ量Wsが0より大きければ平面Spが形成され、平面Spによる法線ベクトルが発生するため、平面Spを通過する磁束の影響を軽減することができる。
また、ずれ量Wsが2×Wp×T2/T1以上であると、Ws×T1による面積が大きくなりすぎて、ずれ量Wsが0であるときより磁束に対する影響が悪化する。
従って、Wp×T2による平面Spによる磁束の悪影響を低減するには、コイル1は、0<Ws<2×Wp×T2/T1の関係となるようにする。そうすることで、ノイズ低減の効果を得ることができる。
従って、ロゴスキ型電流センサは、ノイズの発生が低減できるので、正確に電流を測定することができる。
【0070】
例えば、スルーホール1C,1D(第3辺1c,第4辺1d)との距離を示すWs(図14A図14C参照)を96.9μm、コイル1同士の間の距離(コイルピッチとなる第4辺1dと隣接する第3辺1cとの距離)を示すWpを420μm、T1を162.5μm、T2を37.5μmとする。
そうすると、Ws×T1=96.9μm×162.3μm=15.7mmとなり、Wp×T2=420μm×37.5μm=15.7mmとなるため、Ws×T1=Wp×T2の関係である。
従って、2×Wp×T2/T1は、2×420μm×37.5μm/162.5μmとなり、ずれ量Wsを193.8μmまで許容することができる。
そうすることで、コイルピッチ間にできる往線路2と復線路3とに挟まれた平面Sp(Wp×T2)による磁束の悪影響を低減することができる。
【0071】
しかし、第3辺および第4辺に相当するスルーホール1C,1Dを製作するときにドリルによって穿孔されるので、その際に、誤差が生じる。
例えば、ドリル穴の間隔誤差εを40μmとすると、ずれ量Wsを193.8μmまで許容すると、Wsは193.8μm+40μmとなる可能性がある。
従って、図17に示すようにWsの最大許容値2×Wp×T2/T1から、間隔誤差εを差し引くことで、製造時の誤差を排除した精度が確保できるので、0<Ws<2×Wp×T2/T1-εとするのが望ましく、ずれ量Wsの最大許容量を193.8μm-40μmとすることができる。
【0072】
なお、図14A図14Cに示すように、正確には、Wp,Wsは、スルーホール1C,1Dの軸線の位置とすることができる。また、図15に示すように、T1は、第1コイルパターン1Aの軸線と第2コイルパターン1Bの軸線との間の距離とすることができる。更に、T2は、第1コイルパターン1Aの軸線と復線路3の軸線との間の距離とすることができる。
【0073】
ロゴスキコイルCは、図14Aに示すように、第1コイルパターン1Aが、閉じた線L(図3参照)と直交する方向に形成され、往線路2が閉じた線Lと並行に形成されている。
また、図14Cに示すように、第2コイルパターン1Bは、両端部からそれぞれに、閉じた線Lと直交する方向に延びる一対のパターン間を、閉じた線Lと並行に形成されたパターンによって接続された、クランク状に形成されている。
【0074】
このようにロゴスキコイルCが形成されていることで、図18に示すように、ロゴスキコイルCを厚み方向(上方)から見たときに、コイル1としての平面が見えないため、耐ノイズ性を高めることができる。
更に、第1層に形成された、図5Aに示す最初のコイル1(図3参照)に接続される接続用パターン123と、第2層に形成された図6Aに示す復線路3に接続される接続用パターン123とが厚み方向に重なる位置に形成されている。そのため、厚み方向に見ると、ループ面積を減らせることができるので、寄生インダクタンスを低減することができ、耐ノイズ性を向上させることができる。
【0075】
なお、本実施の形態では、図18に示すように、ロゴスキコイルCは、第1コイルパターン1Aが、閉じた線Lと直交する方向に形成され、往線路2が閉じた線Lと並行に形成され、第2コイルパターン1Bが、両端部からそれぞれに、閉じた線Lと直交する方向に延びる一対のパターン間を、閉じた線Lと並行に形成されたパターンによって接続された、クランク状に形成されている。
【0076】
しかし、スルーホール1Cに対してスルーホール1Dが、コイルの並び方向にずれた位置に形成されていればよいため、図19A図19Cに示すように、第1コイルパターン1Aと、第2コイルパターン1Bとが直線状に形成されていてもよい。
【0077】
なお、本実施の形態では、スルーホール1Cに対してスルーホール1Dが、コイル1の並び方向にずれた位置に形成する構成(以下、特性向上領域)は、ロゴスキコイルCの全領域に渡って採用することで、本構成は、最も効果的に特性を向上させることができると考えられる。
しかしながら使用環境や仕様などに応じ、特性向上領域をロゴスキコイルCの一部に適応してもよい。すなわち、形成したロゴスキコイルCの全長を100%とした場合、上記スルーホール1Cに対してスルーホール1Dが、コイル1の並び方向にずれた位置に形成する領域(特性向上領域)の形成長さを、30%以上、好ましくは、70%以上、さらに好ましくは90%以上としたほうが好ましい。特性向上領域が、ロゴスキコイルC全長の30%を下回ると、確実な特性向上は得られない可能性がある。また、特性向上領域は、連続的にロゴスキコイルCの一部に形成してもよいが、ロゴスキコイルCに分散して特性向上領域を形成してもよい。すなわち、特性向上領域と、非特性向上領域を交互に設けてもよい。
【0078】
また、位置合わせ部14は、導電パターンによるマークとしているが、例えば、フレキシブル配線基板に形成した切り欠きとしたり、貫通孔としたりすることができる。
【0079】
更に、特許文献2-4に記載の従来のロゴスキ型電流センサでは、ロゴスキコイルが導線を螺旋状に巻き回して形成されるため、製造上のばらつきが大きく、対応するアナログ回路で1品ずつの補正が必要である。
しかし、本実施の形態に係るロゴスキ型電流センサでは、フレキシブル配線基板の導電パターンによりロゴスキコイルC(図2A参照)が形成されるため、ロゴスキコイルCを正確に再現できるため、製造時のばらつきを抑えることができ、特性に対する補正は不要である。
【0080】
次に、図1Aまたは図1Bに示すロゴスキ型電流センサ100をインバータに適用した例を説明する。
図20に示すインバータIVは、電池BTからの直流を交流に変換して三相交流モータMTを駆動するものである。
インバータIVは、各相の電流を出力する3つのアームである第1アームA1から第3アームA3が、電池BTからの一方の電源線(電池BTの正極側の電源線P1)と他方の電源線(電池BTの負極側のグランド線P2)との間に、並列に接続されている。
第1アームA1から第3アームA3は、上アームA11,A21,A31と下アームA12,A22,A32とが、直列に接続されている。
【0081】
上アームA11~A31は、電源線P1に第1配線L1により接続されている。下アームA12~A32は、グランド線P2に第2配線L2により接続されている。上アームA11~A31と下アームA12~A32との間は、第3配線L3により接続されている。
【0082】
上アームA11~A31と下アームA12~A32とは、スイッチング素子と還流ダイオードとにより構成されている。スイッチング素子は、半導体デバイスにより形成されている。例えば、スイッチング素子は、バイポーラトランジスタ、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などが使用できる。特に、大電流が流せ、スイッチング速度が早い、IGBTが望ましい。
【0083】
ロゴスキ型電流センサ100は、電源線P1と上アームA11~A31との間の第1配線L1と、グランド線P2と下アームA12~A32との間の第2配線L2との両方の配線をそれぞれに取り囲むようにして装着されている。
ロゴスキ型電流センサ100からの出力により電流を測定する電流測定装置200が設けられている。電流測定装置200には、各相に、電流測定回路201~203を備えている。
【0084】
インバータIVは、この上アームA11~A31と下アームA12~A32とのスイッチングを制御する制御部(図示せず)を備えている。
制御部は、電流測定装置200からの信号に基づいて、第1アームA1から第3アームA3のスイッチング信号となるゲート信号を制御して、各アームA1~A3の第3配線L3からの出力電流iu,iv,iwの電流値および周波数を調整する。
【0085】
また、電流測定装置200の電流測定回路201~203は、第1アームA1から第3アームA3(上アームA11~A31,下アームA12~A32)に流れる過大な電流を検出して警報を発することができる。
【0086】
また、ロゴスキ型電流センサ100を部材に取り付ける方法について、別の見方で説明する。
ロゴスキ型電流センサ100は上述の説明の通りの構成であるが、構成としては以下の通り表現できる。図1Aまたは図1Bに示す本体部10は、全体として帯状体で、可撓性を有しており、フレキシブル配線基板などで構成される。本体部10には、第1主面1Sと、第1主面とは反対面となるほぼ同じ広さの第2主面2Sと、第1主面1Sと第2主面2Sの間に設けられた一対の側面3S(本体部10の厚み相当の長さの厚み面であり、第1主面1Sの幅と第2主面2Sの幅は、圧倒的に側面3Sの幅よりも大きい)にて構成される。
【0087】
本体部10の断面は略矩形状である。本体部10内部には、ロゴスキコイルC(図2A参照)が埋設されており、本体部10の一端には、ロゴスキコイルCと電気的に接合した端子部(半田付け用パッド121)が設けられている。また端子部が設けられた反対側には、後に端子部付近と接合される先端部11を有している。
【0088】
このロゴスキ型電流センサ100は、例えば、モジュール上に実装されたパワー半導体の1乃至複数の端子を取り取り囲むように環状に装着される。すなわち、この時、例えば、第1主面1Sが内側、第2主面2Sが外側となるようにロゴスキ型電流センサ100は環状に変形させる。
【0089】
逆に、第2主面2Sが内側、第1主面1Sが外側となるようにロゴスキ型電流センサ100は環状に変形させてもよい。その後に、端子部若しくは端子部付近と、先端部11を、接着、当接、カシメ等の結合手段により、接合し、環状体形状として、パワー半導体などの端子線に装着する。
【0090】
本体部10を断面矩形状の帯型であってしかも、上述の通り、環状に装着することで、通常、断面矩形状に形成されるロゴスキコイルCの特定部位をパワー半導体などの端子線側に対向させることができ、特性のばらつきを抑えることが可能となる。
また、端子部に他の装置やデバイスとの電気的接合のために、配線を接合する、または接続用プラグを介してケーブルと接続するが、この場合には、パワー半導体などの端子線にロゴスキ型電流センサ100を取り付ける前に、予め端子部に配線を結合した状態で、その後に端子線に環状に取り付けてもよいし、ロゴスキ型電流センサ100を端子線に取り付けた後に、端子部に配線を施してもよい。
【0091】
このような、ロゴスキ型電流センサ100は、高電流適応製品などに常に装着され、製品の稼働中に電流のモニタリングに活用される。あるいは、高電流適応製品の試作機や、不具合製品の調査、実験、特性測定等に使われる。
【0092】
また、図21に示すように他の実施の形態も考えられる。図21は本実施の形態のロゴスキ型電流センサ100を測定対象の電流経路に装着する前の状態を示す斜視図である。
図21において、300,301はそれぞれ測定対象の電流経路に接続するための測定対象接続部であり、例えばパワー半導体などの電子部品、若しくは基板(図示せず)上に形成された配線パターンによる電極等である。
302~304は、測定対象接続部300,301間を接続して測定対象接続部300,301を導通するための、測定対象の電流経路となるリード線であり、導電性材料で構成されている。
図21では3本のリード線302~304で測定対象接続部300,301間を電気的に接合したが、リード線を1本あるいは、2本、更には4本以上で接続してもよい。
【0093】
このリード線302~304は、両方の端部30Xが測定対象接続部300,301に接続され、中間部30Yは山なりに湾曲していることでアーチ状に形成されている。
そのため、測定対象の電流経路であるリード線302~304とリード線302~304の両端部に接続された測定対象接続部300,301および基板とより囲まれた閉鎖された領域ができ、リード線302~304の中間部30Yと基板との間に隙間ができる。
【0094】
ロゴスキ型電流センサ100の位置合わせ部の一方側である先端部に形成された第1位置合わせ部14aは、貫通孔となるように構成されている。このように構成することで、第1位置合わせ部14aに、線状体305が直接的に連結可能となる。このときに、例えば、環状の連結部305aが線状体305に形成されることになる。このように線状体305を第1位置合わせ部14aに連結できることで、線状体305を、隙間の狭いリード線302~304と測定対象接続部300,301との間、あるいは、リード線302~304と測定対象接続部300,301が実装された基板との間の隙間に容易に通すことができる。
【0095】
次に、図22に示すように線状体305を引っ張ることで、線状体305全部を、リード線302~304と他の部材とによる閉鎖領域にロゴスキ型電流センサ100の本体部10が位置するまで、閉鎖領域に通過させる。
そして、ロゴスキ型電流センサ100を湾曲させてリード線302~304の周囲に巻く。
【0096】
このとき、図2Aに示すロゴスキ型電流センサ100に形成されたマーク部(位置合わせ部14(第1位置合わせ部14a,第2位置合わせ部14b))を目安にロゴスキ型電流センサ100を環状に測定対象の電流経路に装着する。そうすることで、正確な装着が容易となり、特性のばらつきを抑えることが可能となる。
このマーク部は位置合わせ部14であるので、マーク部を目安に測定対象の電流経路に装着して、ロゴスキコイルCの基端部と先端部とを重ね合わせることにより、正確にロゴスキコイルCの巻き始めと巻き終わりを重ねることができる。
なお、マーク部を位置合わせ部とする以外に、環状にできれば、マーク部は、ロゴスキコイルCの巻き始めと巻き終わりを重ねる位置からずれていてもよい。
【0097】
このようにして、リード線302~304にロゴスキ型電流センサ100を巻き付ける際に、リード線302~304と測定対象接続部300,301とが接合されているため隙間が無く、ロゴスキ型電流センサ100を長手方向に沿った側辺から差し込むことができない場合でも、容易にロゴスキ型電流センサ100を測定対象の電流経路と他の部材とによる隙間の狭い箇所に通すことができる。
【0098】
なお、本実施の形態では、マーク部は、パッドにより形成することの他に、ロゴスキ型電流センサに、貫通孔を設けることで形成したり、別途インクなどにより印刷して形成したり、あるいは各種電極を形成する際に独立して電極と同じ材料で形成したりすることもできる。
【0099】
また、リード線302~304が測定対象接続部300,301に接合されているためリード線302~304の端部と測定対象接続部300,301に隙間が無かったが、測定対象の電流経路と他の部材とが非接触状態で、僅かな隙間があっても、ロゴスキ型電流センサ100を巻き付けることが困難である場合には、ロゴスキ型電流センサ100に線状体305を取り付けることで、この僅かな隙間に線状体305を通すことができれば、測定対象の電流経路にロゴスキ型電流センサ100を巻き付けることができる。
【0100】
また、図示していないが、リード線302~304のうち1本のリード線、例えば、リード線302にのみロゴスキ型電流センサ100を挿入したいときには、線状体305をリード線302とリード線303との間の狭い隙間にロゴスキ型電流センサ100の先端部(第1位置合わせ部14a側の端部)を通さなければならない。
しかし、本実施の形態のように、線状体305を用いることで、ロゴスキ型電流センサ100より細い線状体305をリード線302とリード線303との間に通せばよいので、容易に線状体305をリード線302とリード線303の間の狭い隙間に通すことが可能となるので、装着性を向上させることができる。
【0101】
線状体305としては、木綿、化学繊維等で構成された可撓性のある糸状体や、細い金属あるいはプラスチックなどで形成することができる。また、線状体305として、先端に容易に屈曲できるフック部が形成された糸状体等が好適に用いられる。
また、釣り等に用いられるテグスなどを線状体305として、その先端にフック状の金属部材あるいはクリップ状の金属部材を取り付け、間接的に線状体305を取り付けるようにすることもできる。更に、線状体305は、使い勝手を優先させ、複数の材質を複合させて構成することもできる。
【0102】
すなわち、図示していないが、ロゴスキ型電流センサ100に接続する線状体305の連結部305a側を、テグスなどの容易に変形可能な材料により形成し、この線状体305の先に、ある程度可撓性を有する樹脂の平板などを、接着剤や機械的に連結することが可能である。
また、仕様によっては、テグスにより形成された線状体305を、樹脂の平板などを介して、間接的にロゴスキ型電流センサ100に接続することも可能である。
この様な構成により、ロゴスキ型電流センサ100を装着する際に、装着したい部分の状況に応じて線状体305と適宜複数の材質のものとを複合させることができる。
【0103】
図22に示す実施の形態では、テグスを第1位置合わせ部14aに結び付け、そのテグスをリード線302~304間などの狭い隙間に挿入し、テグスを引っ張ることで、ロゴスキ型電流センサ100を狭い隙間に通していく。第1位置合わせ部14aを貫通孔とするには、例えば、図2に示す第1位置合わせ部14aは、パターンで形成しているが、この第1位置合わせ部14aに貫通孔を形成することで容易に実現できる。
【0104】
また、更に、別の例としては、多少工数は増えるが、第1位置合わせ部14aに貫通孔が設けられていなくても、線状体305を第1位置合わせ部14a側の端部に粘着剤などを利用して接続して、図21および図22のように装着することも可能である。このとき、接着剤などは、線状体305とロゴスキ型電流センサ100とが所定の力以上で容易に剥がれやすい材料等の選択を行うことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、外部磁界の影響を受けにくく、また量産性に富む超小型ロゴスキ型電流センサとして、インバータに実装して異常電流を検出したり、電流計測用の計測器に接続されるセンサとしたりすることができる。
【符号の説明】
【0106】
100 ロゴスキ型電流センサ
10 本体部
10a 先端
10b 基端
11 先端部
11a 貫通孔
111 長孔
12 基端部
121 半田付け用パッド
121a 第1パッド
121b 第2パッド
123 接続用パターン
13 測定部
14 位置合わせ部
14a 第1位置合わせ部
14b 第2位置合わせ部
15a,15b カバーフィルム
15c 貫通孔
1,1c コイル
2,2c 往線路
3,3c 復線路
1A 第1コイルパターン
1B 第2コイルパターン
1C,1D スルーホール
1C’,1D’ 一方の接続部
1C”,1D” 他方の接続部
C ロゴスキコイル
C1 基端部
C2 先端部
L 閉じた線
Ws ずれ量
Wp コイルピッチ
T1,T2 高さ
K1,K2 間隔
W 配線
F1 長さ方向
S シールド層
S1 メッシュ
Ss,Sp,S0,Sc 平面
H,H1,H2 ハウジング
H1a,H2a 挿入孔
H1b 凸部
H2b 突き当て部
IV インバータ
BT 電池
MT 三相交流モータ
200 電流測定装置
201~203 電流測定回路
P1 電源線
P2 グランド線
A1 第1アーム
A2 第2アーム
A3 第3アーム
A11~A31 上アーム
A12~A32 下アーム
L1 第1配線
L2 第2配線
L3 第3配線
1S 第1主面
2S 第2主面
3S 側面
300,301 測定対象接続部
302~304 リード線
30X 端部
30Y 中間部
305 線状体
305a 連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22