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特許7479748アニオン重合開始剤、アニオン重合開始剤組成物およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】アニオン重合開始剤、アニオン重合開始剤組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/48 20060101AFI20240430BHJP
   C08F 297/06 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
C08F4/48
C08F297/06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022520771
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 KR2021001243
(87)【国際公開番号】W WO2021162304
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-04-04
(31)【優先権主張番号】10-2020-0018352
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・モ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ピル・サ
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジ・シン
(72)【発明者】
【氏名】キ・ス・イ
(72)【発明者】
【氏名】ブン・ユル・イ
(72)【発明者】
【氏名】テ・ジン・キム
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/146253(WO,A1)
【文献】米国特許第03769345(US,A)
【文献】特表2018-505945(JP,A)
【文献】特開平10-152541(JP,A)
【文献】特表平10-512916(JP,A)
【文献】Dong Hyung Kim et al.,Preparation of polystyrene-polyolefin multiblock copolymers by sequential coordination and anionic polymerization,RSC Advances,Royal Society of Chemistry,2017年,7,5948-5956
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00 - 4/58
C08F 4/72 - 4/82
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、アニオン重合開始剤。
【化1】
前記化学式1中、
は、水素または炭素数1~20の炭化水素基であり、
Aは、下記化学式2で表される化合物であり、
【化2】
前記化学式2中、
~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20の炭化水素基であり、
aは、1~3の整数であり、bは1である。
【請求項2】
前記Rは、水素、炭素数1~20のアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、もしくは置換または非置換の炭素数7~20のアリールアルキルであり、
前記R~Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、炭素数3~20のシクロアルキル、置換または非置換の炭素数6~20のアリール、もしくは置換または非置換の炭素数7~20のアリールアルキルである、請求項1に記載のアニオン重合開始剤。
【請求項3】
前記R~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20のアルキルであり、
前記aは、1または2の整数であり、前記bは、1の整数である、請求項1に記載のアニオン重合開始剤。
【請求項4】
前記Aは、下記化学式4で表される、請求項1に記載のアニオン重合開始剤。
【化3】
前記化学式中、
、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20のアルキルである。
【請求項5】
前記Aは、下記化学式4aで表される、請求項1に記載のアニオン重合開始剤。
【化4】
【請求項6】
ポリオレフィン-ポリスチレンブロック共重合体のポリスチレンブロック重合用アニオン重合開始剤である、請求項1に記載のアニオン重合開始剤。
【請求項7】
下記化学式2で表される化合物化学式5で表される化合物および化学式6で表される化合物を含む、アニオン重合開始剤組成物。
【化5】
前記化学式2中、
~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20の炭化水素基であり、
aは、1~3の整数であり、bは1であり、
前記化学式5中、
Bは、炭素数1~20のアルキルであり、
前記化学式6中、
は、水素または炭素数1~20の炭化水素基である
【請求項8】
前記R~Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、炭素数3~20のシクロアルキル、置換または非置換の炭素数6~20のアリール、もしくは置換または非置換の炭素数7~20のアリールアルキルである、請求項7に記載のアニオン重合開始剤組成物。
【請求項9】
前記R~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20のアルキルであり、
前記aは、1または2の整数であり、前記bは、1の整数である、請求項7に記載のアニオン重合開始剤組成物。
【請求項10】
前記化学式2で表される化合物は、下記化学式4で表される化合物である、請求項7に記載のアニオン重合開始剤組成物。
【化6】
前記化学式中、
、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20のアルキルである。
【請求項11】
下記化学式6で表される化合物の存在下で、下記化学式5で表される化合物および下記化学式2で表される化合物を追加の溶媒がない条件で投入する過程を含む、請求項1に記載のアニオン重合開始剤の製造方法。
【化7】
前記化学式中、
~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20の炭化水素基であり、
aは、1~3の整数であり、bは、1であり、
前記Bは、炭素数1~20のアルキルである。
【請求項12】
前記Rは、炭素数1~20のアルキルであり、
前記R~Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、炭素数3~20のシクロアルキル、置換または非置換の炭素数6~20のアリール、もしくは置換または非置換の炭素数7~20のアリールアルキルであり、
前記Bは、炭素数1~20のアルキルである、請求項11に記載のアニオン重合開始剤の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載のアニオン重合開始剤または請求項7に記載のアニオン重合開始剤組成物の存在下でスチレンを重合させるステップを含むポリオレフィン-ポリスチレンブロック共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年2月14日付けの韓国特許出願第10-2020-0018352号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、アニオン重合開始剤、アニオン重合開始剤組成物およびその製造方法に関し、より詳細には、ポリオレフィン-ポリスチレンブロック共重合体の製造のためのアニオン重合開始剤、アニオン重合開始剤組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリオレフィン-ポリスチレンブロック共重合体、例えば、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(styrene-ethylene/butylene-styrene;SEBS)またはスチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(styrene-ethylene/propylene-styrene;SEPS)は、現在、世界的に、数十万トン規模の市場が形成されている。また、これらは、スチレン-ブタジエン-スチレン(Styrene-butadiene-styrene;SBS)またはスチレン-イソプレン-スチレン(styrene-isoprene-styrene;SIS)に比べて耐熱性および耐光性に優れる利点があり、グリップおよびハンドルの柔らかくて強いタッチ感のための素材、おむつの弾力性素材、医療および通信材料に使用されるオイル-ゲル、エンジニアリングプラスチックの衝撃補強剤、透明ポリプロピレンの可塑剤(flexibilizer)または強靭化剤(toughener)などとして使用されている。従来のSEBSは、スチレンとブタジエンをアニオン重合して得られたSBSを水素化反応させる二つのステップの反応を経て製造される。従来のSEPSも、同様に、スチレンとイソプレンをアニオン重合して得られたSISを水素化反応させる二つのステップの反応を経て製造される。このように、高分子主鎖に含まれた二重結合を水素化反応させてすべて飽和させる工程は、工程費用が高くてSEBSおよびSEPSの単価が、水素化反応前のSBSおよびSISに比べてかなり高くなる。このような点は、市場の拡張において限界として作用し得る。また、水素化反応によって高分子鎖中の二重結合をすべて飽和させることは、事実上不可能であり、商業化されたSEBSおよびSEPSは、残りの二重結合を若干含むことになり、その存在が時々問題になることがある(Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,2002,40,1253;Polymer Degradation and Stability 2010,95,975)。
【0004】
したがって、オレフィンおよびスチレン単量体からワンポット(one-pot)工程でポリオレフィン-ポリスチレンジブロック共重合体を製造する技術が開発された(韓国登録特許第1657925号)。前記技術によると、配位連鎖移動重合(coordinative chain transfer polymerization、CCTP)によって、エチレン、α-オレフィンまたはこれらのすべてを重合することができる遷移金属系触媒を用いて、連鎖移動剤(CTA、例えば、EtZn)を過量添加してPO鎖を均一に成長させることができ、スチレンをアニオン重合させることで、ポリオレフィン-ポリスチレンブロック共重合体を合成することができる。この際、スチレンをアニオン重合させるための開始剤としては、アルキルリチウムとアミンリガンドを投入する。
【0005】
本発明の発明者らは、スチレンをアニオン重合させるための開始剤として新たな構造のアニオン開始剤を用いる場合、PO鎖からより効率的にPS鎖が成長することができ、PS鎖の成長範囲の拡張が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国登録特許第1657925号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,2002,40,1253;Polymer Degradation and Stability 2010,95,975
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は、新規なアニオン重合開始剤を提供することである。
【0009】
本発明の他の解決しようとする課題は、新規なアニオン重合開始剤組成物を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の解決しようとする課題は、前記新規なアニオン重合開始剤の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、下記化学式1で表されるアニオン重合開始剤を提供する。
【化1】
前記化学式1中、
は、水素または炭素数1~20の炭化水素基であり、
Aは、下記化学式2で表され、
【化2】
前記化学式2中、
~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20の炭化水素基であり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、前記aおよびbは、同時に0ではない。
【0012】
本発明は、上記他の課題を解決するために、下記化学式2で表される化合物および化学式5で表される化合物を含むアニオン重合開始剤組成物を提供する。
【化3】
前記化学式2中、
~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20の炭化水素基であり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、前記aおよびbは、同時に0ではなく、
前記化学式5中、
Bは、炭素数1~20のアルキルである。
【0013】
また、本発明は、上記さらに他の課題を解決するために、下記化学式6で表される化合物の存在下で、下記化学式5で表される化合物および下記化学式2で表される化合物を投入する過程を含む、前記のアニオン重合開始剤の製造方法を提供する。
【化4】
前記化学式中、
~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20の炭化水素基であり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、前記aおよびbは、同時に0ではなく、
前記Bは、炭素数1~20のアルキルである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアニオン重合開始剤、およびアニオン重合開始剤組成物は、ポリオレフィン-ポリスチレンブロック共重合体の製造時に、より効果的にスチレンブロックの重合が行われるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)(1-オクチル)Zn、(b)1-ヘキシルリチウムおよび(c)(1-オクチル)Znから転換された(1-オクチル)LiのH NMRスペクトルである。
図2】Cのうち(1-オクチル)Znから転換された(1-オクチル)Liの13C NMRスペクトルである。
図3】Cのうち(1-エチルヘキシル)Znから転換された2-エチルヘキシルリチウムのH NMRスペクトルである。
図4】Cのうち(1-エチルヘキシル)Znから転換された2-エチルヘキシルリチウムの13C NMRスペクトルである。
図5】参考実験例1による重合の後、GPCを測定した結果である。
図6】(a)参考実験例2、(b)参考実験例3、(c)参考実験例4、および(d)参考実験例5のGPCを測定した結果である。
図7】比較開始剤の製造例1で製造された化合物に対するH NMRスペクトルである。
図8】ペンチルアリル-Li、MeNCHCHN(Me)LiおよびMeNCHCHN(Me)CHCHN(Me)CHLiに対するH NMRスペクトルである。
図9】C12でPMDTAとn-BuLiの反応生成物に対するH NMRスペクトルである。
図10】C12でPMDTAとsec-BuLiの反応生成物に対するH NMRスペクトルである。
図11】Cでn-BuLiで処理されたPMDTAから得られたCLi・(PMDTA)に対するH NMRスペクトルである。
図12】1-オクテンのうち「PMDTA+nBuLi」の反応により得られたペンチルアリル-Liに対するH NMRスペクトルである。
図13】ペンチルアリル-Li・(PMDTA)を開始剤として使用したスチレン重合の前(細い曲線)・後(太い曲線)のGPC測定結果[(a)実施重合例A、(b)実施重合例B]を示す図である。
図14】ペンチルアリル-Li・(PMDTA)を開始剤として使用したスチレン重合の前(細い曲線)・後(太い曲線)のGPC測定結果[(a)実施重合例C、(b)実施重合例D]を示す図である。
図15】ペンチルアリル-Li・(PMDTA)を開始剤として使用したスチレン重合の前(細い曲線)・後(太い曲線)のGPC測定結果[(a)比較重合例D、(b)比較重合例E、(c)比較重合例F、(d)比較重合例G]を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
本明細書および請求の範囲で使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0018】
本明細書で使用されている用語「アルキル」は、他に断らない限り、直鎖状、環状または分岐状の炭化水素基を意味する。
【0019】
本明細書で使用されている用語「シクロアルキル」は、他に断らない限り、炭素原子で構成された非芳香族環状炭化水素基を指す。「シクロアルキル」は、非制限的な例示であって、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルを含む。
【0020】
本明細書で使用されている用語「アリール」は、他に断らない限り、任意的に置換されたベンゼン環を指すか、もしくは一つ以上の任意の置換基を融合させることで形成され得る環システムを指す。例示的な任意の置換基は、置換されたC1~3アルキル、置換されたC2~3アルケニル、置換されたC2~3アルキニル、ヘテロアリール、ヘテロ環状アリール、任意的に1~3個のフッ素置換基を有するアルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アシル、アロイル、ヘテロアロイル、アシルオキシ、アロイルオキシ、ヘテロアロイルオキシ、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、アミノスルホニル、スルホニルアミノ、カルボキシアミド、アミノカルボニル、カルボキシ、ヨウ素、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ、ニトロ、シアノ、ハロゲンまたはウレイドを含む。このような環または環システムは、任意的に一つ以上の置換基を有するアリール環(例えば、ベンゼン環)、炭素環状環またはヘテロ環状環に任意的に融合することができる。「アリール」基の例は、非制限的に、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、ビフェニル、インダニル、アントラシルまたはフェナントリル、およびこれらの置換された誘導体を含む。
【0021】
本明細書で使用されている用語「アルケニル」は、一つ以上の炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分岐鎖の炭化水素基を意味する。本明細書に使用されている「アルケニル」の例は、エテニルおよびプロペニルを含むが、これらに制限されない。
【0022】
本明細書において、用語「重合体」とは、同一もしくは相違する類型の単量体の重合によって製造される重合体化合物を意味する。「重合体」という総称は、「単独重合体」、「共重合体」、「三元共重合体」だけでなく、「混成重合体」という用語を含む。
【0023】
本明細書において、用語「ブロック」とは、重合体分子の一部分であり、多数の構成単位からなり、その部分に隣接する他の部分と化学構造上または立体配置上異なるものを意味し、「ブロック重合体」は、複数のブロックが連結されて構成された重合体を意味し、「ブロック共重合体」は、2種以上の単量体を含むブロック重合体を意味する。
【0024】
本発明は、下記化学式1で表されるアニオン重合開始剤を提供する。
【0025】
【化5】
【0026】
前記化学式1中、
は、水素または炭素数1~20の炭化水素基であり、
Aは、下記化学式2で表される化合物であり、
【0027】
【化6】
【0028】
前記化学式2中、
~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20の炭化水素基であり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、前記aおよびbは、同時に0ではない。
【0029】
本発明の一例において、前記Rは、水素、炭素数1~20のアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、もしくは置換または非置換の炭素数7~20のアリールアルキルであってもよく、
前記R~Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、炭素数3~20のシクロアルキル、置換または非置換の炭素数6~20のアリール、もしくは置換または非置換の炭素数7~20のアリールアルキルであってもよく、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~2の整数であってもよい。
【0030】
また、本発明の一例において、前記R~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20のアルキルであってもよく、前記aは、1または2であり、前記bは、0または1であってもよい。
【0031】
具体的には、aは1~3の整数であり、bは0~3の整数であってもよく、より具体的には、aは1または2であり、bは0~2の整数であってもよく、さらに具体的には、前記aは1または2であり、前記bは0または1であってもよい。
【0032】
本発明の一例において、前記化学式1中、前記Aは、具体的には、下記化学式3または化学式4で表されることができる。
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
【0035】
前記化学式中、
、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20のアルキルである。
【0036】
また、本発明の一例において、前記化学式1中、前記Aは、具体的には、下記の化学式3aまたは化学式4aで表されることができる。
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
本発明の一例によるアニオン重合開始剤は、ポリオレフィン-ポリスチレンブロック共重合体のポリスチレンブロック重合用アニオン重合剤であり、ポリオレフィン亜鉛化合物、例えば、(ポリオレフィニル)Zn[(Polyolefinyl)Zn]と反応してポリオレフィン-ポリスチレンブロック共重合体を形成するためのアニオン重合開始剤として使用されることができる。
【0040】
前記(ポリオレフィニル)Znは、配位連鎖移動重合(CCTP)により製造され、(ポリオレフィニル)Znから開始する重合体鎖の追加成長は、ポリオレフィン(PO)系ブロック共重合体の合成に有用に用いられることができる。例えば、ポリエチレン-ブロック-ポリエステルおよびポリエチレン-ブロック-ポリエーテルの合成が、-OH末端基で官能化したPOを使用して試みられ、これは、CCTP生成物(ポリオレフィニル)ZnをOで処理することで生成されることができた。同様に、ワンポット(one-pot)工程により、(ポリオレフィニル)Znからポリスチレン(PS)ブロックの合成を可能にすることで、ポリエチレン-ブロック-ポリスチレンブロック共重合体が製造されることができ、本発明のアニオン重合剤を用いて、(ポリオレフィニル)Znの存在下でスチレン単量体を重合することで、(ポリオレフィニル)Znから効率的にPS鎖が成長するようにすることができる。
【0041】
また、本発明は、下記化学式2で表される化合物および化学式5で表される化合物を含むアニオン重合開始剤組成物を提供する。
【0042】
【化11】
【0043】
【化12】
【0044】
前記化学式2中、
~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20の炭化水素基であり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、前記aおよびbは、同時に0ではなく、
前記化学式5中、
Bは、炭素数1~20のアルキルである。
【0045】
本発明の一例において、前記R~Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、炭素数3~20のシクロアルキル、置換または非置換の炭素数6~20のアリール、もしくは置換または非置換の炭素数7~20のアリールアルキルであってもよく、
前記Bは、炭素数1~12のアルキルであってもよく、
前記aおよびbは、それぞれ独立して、0~2の整数であってもよい。
【0046】
また、本発明の一例において、前記R~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20のアルキルであってもよく、前記Bは、炭素数1~8のアルキルであってもよく、前記aは、1または2の整数であり、前記bは、0または1の整数であってもよい。
【0047】
具体的には、aは1~3の整数であり、bは0~3の整数であってもよく、より具体的には、aは1または2であり、bは0~2の整数であってもよく、さらに具体的には、前記aは1または2であり、前記bは0または1であってもよい。
【0048】
本発明の一例において、アニオン重合開始剤組成物は、さらに、下記化学式6の化合物を含む。
【0049】
【化13】
【0050】
は、水素または炭素数1~20の炭化水素基であり、前記化学式1で定義したとおりである。
【0051】
前記アニオン重合開始剤組成物は、前記化学式2で表される化合物、前記化学式5で表される化合物、および前記化学式6で表される化合物の他に、さらに溶媒になり得る別の化合物を、前記化学式5の化合物との反応が有意に起こらない微量で含むことができ、または溶媒になり得る別の化合物をさらに含まなくてもよい。
【0052】
また、本発明の一例において、前記化学式2で表される化合物は、下記化学式3または化学式4で表される化合物であってもよい。
【0053】
【化14】
【0054】
【化15】
【0055】
前記化学式中、
、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20のアルキルである。
【0056】
前記化学式2で表される化合物および化学式5で表される化合物を含むアニオン重合開始剤組成物は、アニオン重合開始剤として投入される場合、前記化学式1のような構造をなすことができ、これにより、アニオン重合開始剤として作用することができる。
【0057】
また、本発明は前記アニオン重合開始剤の製造方法を提供する。
【0058】
本発明の一例による前記アニオン重合開始剤の製造方法は、下記化学式6で表される化合物の存在下で、下記化学式5で表される化合物および下記化学式2で表される化合物を投入して反応させる過程を含む。
【0059】
【化16】
【0060】
【化17】
【0061】
【化18】
【0062】
前記化学式中、
~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20の炭化水素基であり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、前記aおよびbは、同時に0ではなく、
前記Bは、炭素数1~20のアルキルである。
【0063】
本発明の一例において、前記R~Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、炭素数3~20のシクロアルキル、置換または非置換の炭素数6~20のアリール、もしくは置換または非置換の炭素数7~20のアリールアルキルであってもよく、前記aおよびbは、それぞれ独立して、0~2の整数であってもよく、前記Bは、炭素数1~12のアルキルであってもよい。
【0064】
また、本発明の一例において、前記R~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~20のアルキルであり、前記aは、1または2の整数であり、前記bは、0または1の整数であってもよく、前記Bは、炭素数1~8のアルキルであってもよい。
【0065】
具体的には、aは1~3の整数であり、bは0~3の整数であってもよく、より具体的には、aは1または2であり、bは0~2の整数であってもよく、さらに具体的には、前記aは1または2であり、前記bは0または1であってもよい。
【0066】
前記化学式5で表されるアルキルリチウム化合物は、例えば、n-BuLiであってもよく、n-BuLiは、アニオン重合の開始剤として広く使用されている物質であり、入手が容易であり、単価効率に優れる。
【0067】
本発明の一例によるアニオン重合開始剤の製造方法は、前記化学式6で表される化合物に、前記化学式5で表される化合物を反応させる過程が優先して行われることができ、次に、化学式2の化合物を反応させて化学式1の化合物を製造することができる。具体的には、前記化学式6で表される化合物に、前記化学式5で表される化合物を反応させることで、アリルリチウムが中間体として生成され、前記アリルリチウムが化学式2の化合物と反応し、最終化学式1のアニオン重合開始剤を形成する。
【0068】
また、本発明の一例によるアニオン重合開始剤の製造方法において、前記化学式6で表される化合物の存在下で、前記化学式5で表される化合物および前記化学式2で表される化合物を投入して反応させる過程は、追加の溶媒がない条件で行われることができる。前記追加の溶媒がない条件は、前記化学式6で表される化合物の存在下で、前記化学式5で表される化合物および前記化学式2で表される化合物の他に、溶媒になり得る別の化合物が存在しないか、前記化学式5の化合物との反応が有意に起こらない量で微量存在することを意味する。
【0069】
前記反応が追加の溶媒がない条件下で行われる場合、化学式6で表される化合物と前記化学式5で表される化合物の反応が主反応として行われ、化学式1のアニオン重合開始剤が効果的に製造されることができる。別の溶媒が存在する場合、化学式1のアニオン重合開始剤、前記化学式5で表される化合物が前記化学式2で表される化合物と反応して生成された化合物、前記化学式5で表される化合物が前記化学式2で表される化合物と反応して生成された化合物が分解された化合物が混在するようになるため、効果的ではない。
【0070】
本発明のアニオン重合開始剤またはアニオン重合開始剤組成物は、スチレン重合用開始剤として有用に使用されることができ、有機亜鉛化合物、特に、亜鉛(Zn)を中心にポリオレフィン鎖が成長した(ポリオレフィニル)Znのポリオレフィンからポリスチレン鎖を成長させるための開始剤として効果的に使用されることができる。
【0071】
したがって、本発明は、また、前記アニオン重合開始剤または前記アニオン重合開始剤組成物の存在下でスチレンを重合させるステップを含むポリオレフィン-ポリスチレンブロック共重合体の製造方法を提供する。
【0072】
前記ポリオレフィンは、オレフィン系単量体の単独重合体または2種以上の共重合体であってもよく、具体的には、エチレンと1種以上のα-オレフィン系単量体との共重合体であってもよい。前記オレフィン系単量体の例としては、エチレン、α-オレフィン、環状オレフィンなどが挙げられ、前記α-オレフィンの例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン(1-decene)、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-イトセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4,4-ジエチル-1-ヘキセンまたは3,4-ジメチル-1-ヘキセンなどが挙げられる。
【0073】
前記ポリスチレンは、スチレン系単量体の単独重合体または2種以上の共重合体であってもよい。前記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、C1~3のアルキル基で置換されたアルキルスチレン(例えば、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレンなど)またはハロゲンで置換されたスチレンが挙げられ、具体的には、スチレンであってもよい。
【0074】
実施例
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は本発明を例示するためのものであって、これらのみで本発明の範囲が限定されるものではない。
【0075】
<試薬および実験条件>
すべての操作は、標準グローブボックスおよびシュレンク(Schlenk)技術を使用して、不活性雰囲気下で行われた。メチルシクロヘキサンは、シグマアルドリッチ社から購入し、Na/K合金で精製した。
【0076】
エチレン/プロピレン混合ガスをボンベ反応器(bomb reactor)(2.0L)からトリオクチルアルミニウム(メチルシクロヘキサンのうち13.6M)で精製した。
【0077】
H NMR(600MHz)および13C NMR(150MHz)スペクトルは、ECZ 600装置(JEOL)を使用して記録した。
【0078】
ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)データは、RI検出器および2つのカラム[PLarian mixed-B 7.5×300mm Varian(Polymer Lab)が取り付けられたPL-GPC 220システムを使用して、160℃で1,2,4-卜リクロロベンゼンから取得した。
【0079】
(1-オクチル)Znおよび(1-ヘキシル)Znは、文献[Kim S. D. et al. Peroxide-Mediated Alkyl-Alkyl Coupling of Dialkylzinc:A Useful tool for Synthesis of ABA-Type Olefin Triblock Copolymers. Macromolecules 2018,51,4821-4828]に記載のように製造し精製した。グローブボックス内部の溶媒を除去した後、n-BuLiおよびsec-BuLiを純粋オイルとして、t-BuLiを固体として使用した。
【0080】
参考例1
(i)(1-オクチル) Znの(1-オクチル)Liへの転換
メチルシクロヘキサン(27.0g)のうちt-BuLi(25.6mg、0.400mmol)の溶液に(1-オクチル)Zn(53.4mg、0.200mmol)を添加した。室温で15分間撹拌した後、揮発物を真空ラインを使用して除去した。淡黄色のオイルを取得し、これに対して、Hおよび13C NMRスペクトルを確認し、1-オクチルリチウムのものと一致することを確認した(収率91%)。
【0081】
H NMR(C):δ 1.54(s,2H,CH),1.49-1.33(br,10H,CH),0.94(t,J=7.2Hz,3H,CH),3.33(s,2H,LiCH)ppm.
13C NMR(C):δ 38.79,32.50,32.23,29.94,29.79,29.68,23.20,14.43 ppm.
【0082】
参考例2
(i)(1-オクチル) Znの(1-オクチル)Liへの転換
(1-オクチル)Zn(0.29g、1.0mmol)をデカン(10g)のうちt-BuLi(0.13g、2.0mmol)の溶液に添加した。生成されたガスを排出しながら溶液を130℃で20分間撹拌した。黒色の固体が生成され、これをセライトにより濾過した。デカンを完全真空下で50℃で蒸留させ、Hおよび13C NMRスペクトルが1-オクチルリチウム(0.22g、91%)のものと一致する淡黄色のオイルを取得した。
【0083】
H NMR(C):δ 1.54(s,2H,CH),1.49-1.33(br,10H,CH),0.94(t,J=7.2HHz,3H,CH),3.33(s,2H,LiCH)ppm.
13C NMR(C):δ 38.79,32.50,32.23,29.94,29.79,29.68,23.20,14.43 ppm.
【0084】
参考例3
参考例1と同じ方法を使用して、(2-エチルヘキシル)Znを84%の収率で2-エチルヘキシルリチウムに転換させた。
【0085】
参考例4
参考例2と同じ方法を使用して、(2-エチルヘキシル)Znを84%の収率で2-エチルヘキシルリチウムに転換させた。
【0086】
アルキルリチウム化合物は、リビングアニオン重合に通常使用されるアニオン重合の開始剤として広く使用される物質であり、ジアルキル亜鉛化合物と反応してこれをアルキルリチウムに転換させることができる。このように転換されたアルキルリチウムは、対応するジアルキル亜鉛化合物に比べてより高い反応性を有する。
【0087】
通常、アルキルリチウム化合物をジアルキル亜鉛化合物に転換するための反応はなされているが、その逆反応、すなわち、ジアルキル亜鉛化合物をアルキルリチウム化合物に転換することは好ましくなく、まだ実現されていない。しかし、本発明の発明者らは、ジアルキル亜鉛化合物に対して非常に反応性が高く、体積が大きい第三級アルキルを含むアルキルリチウムを添加し、一時的にジアルキル亜鉛化合物のアルキルとアルキルリチウムのアルキルが互いに転換された化合物が生成されるようにした後、生成された第三級アルキルを含むジアルキル亜鉛化合物を排気(参考例1)または高温での分解(参照比較例2)により反応系から選択的に除去することで、ジアルキル亜鉛化合物をアルキルリチウムに転換することができた。
【0088】
図1に(1-オクチル)Zn(a)、1-ヘキシルリチウム(b)、および(1-オクチル)Znから転換された(1-オクチル)Li(c)のH NMRスペクトルを示し、図2に(1-オクチル)Znから転換された(1-オクチル)Liの13C NMRスペクトルを示した。
【0089】
例えば、下記反応式1のように、(1-オクチル)Znに対して非常に反応性が高く、体積が大きいt-BuLi(2.0eq)を添加すると、一時的に1-オクチルリチウムおよび(t-Bu)Znが生成されることができ、生成された(t-Bu)Znを高温で排気または高温での選択的分解により反応系から選択的に除去することで、1-オクチルリチウムを製造することができる。しかし、t-BuLiの代わりに、n-BuLi、sec-BuLiまたはMeSiCHLiを使用した場合には、排気後、1-オクチルリチウムではなく、アルキルリチウムおよび(1-オクチル)Znの混合物のみが残った。
【0090】
【化19】
【0091】
前記第三級アルキルを含むジアルキル亜鉛化合物は、130℃の高温での選択的分解により除去されることができた(参考例2)。(第一級アルキル)Zn化合物は、最大150℃まで安定的であり、連鎖移動剤(chain transfer agent、CTA)として、125℃~145℃で配位連鎖移動重合(coordinative chain transfer polymerization、CCTP)で利用可能であるが、(t-Bu)Znは、130℃で分解され、デカン中の(t-Bu)Zn溶液を130℃で加熱した時に、黒色の固体が沈殿されたことを確認することができた。
【0092】
トルエン-d(toluene-d)の密封されたチューブで反応が行われた時に、イソブテンおよびH信号がH NMRスペクトルから検出された(前記反応式1の(b)参照)。(第一級アルキル)リチウム、例えば、デカンのうちn-BuLiは、130℃で、無視する程度だけ分解された(半減期、6時間)。一方、t-BuLiは、130℃で~30分の短い時間だけ維持され、したがって、デカン中の(1-オクチル)Znおよびt-BuLi(2.0当量)の溶液を130℃で30分間加熱すると、黒色の固体が沈殿された。これは、(tBu)Znの分解を示すものである。
【0093】
1-オクチルリチウムは、濾過して反応ポットからきれいに分離し、91%の収率で得られた。熱処理の後、ベンズアルデヒドを添加した場合、PhCH(OH)(CHCHが得られた。(1-オクチル)Znは、ベンズアルデヒドと反応しないため、1-オクチルリチウムの成功的な生成をさらに確認することができた。
【0094】
同じ方法を使用して、(2-エチルヘキシル)Znを84%の収率で、2-エチルヘキシルリチウムに転換させ(参考例3および4)、図3に2-エチルヘキシルリチウムのH NMRスペクトルを、図413C NMRスペクトルを示した。
【0095】
参考例に対する実験
(1)(ポリオレフィニル) Znの製造
(ポリオレフィニル)Znは、エチレン/プロピレン混合ガスを供給することで、90℃~110℃の高温でピリジルアミドハフニウム触媒を用いて行われた配位連鎖移動共重合(coordinative chain transfer copolymerization、CCTcoP)により製造された。その過程は、下記の反応式2のとおりである。
【0096】
【化20】
【0097】
連鎖移動剤(CTA)として、(1-ヘキシル)Zn(100または200μmol-Al)と最小量のMMAO(50μmol-Al)を供給した。
【0098】
具体的には、配位連鎖移動重合(CCTP)のためのスカベンジャー(50μmol-Al)として、メチルシクロヘキサン(26g)、下記化学式7の遷移金属化合物と、助触媒として、[(C1837)N(Me)H[B(Cを含む触媒(2.0μmol)およびMMAO(修飾メチルアルミノキサン)を用いた。
【0099】
【化21】
【0100】
(2)(ポリオレフィニル) ZnからPO-block-PSの製造
[参考実験例1]
前記(1)で生成された(ポリオレフィニル)Znを130~135℃でt-BuLi([Li]=2×[Zn]+[Al]、すなわち、250または450μmol)で1.0時間処理し、一時的に生成された(tBu)Znを除去してポリオレフィニル-Liを得た。
【0101】
ポリオレフィニル-Liから開始するPS鎖を成長させるために、メチルシクロヘキサン(15g)のうちスチレン(5.0g)を供給し、供給されたすべてのスチレン単量体は、4時間内に重合体として完全に転換された。
【0102】
[参考実験例2~5]
スチレン単量体とともに、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDTA)を投入し、スチレンの量を5.0gと10gに調節した以外は、前記参考実験例1と同じ方法で重合を行った。
【0103】
前記参考実験例1による重合の結果、所望のPO-ブロック-PSは生成されなかった。GPC結果を図5に示し、これを参照すると、基準線に対して反対方向に2つの信号が観察されたことを確認することができる。ホモ-PSに割り当てられた非常に高い分子量陰性信号(Mn1150000、Mw/Mn1.2)およびPOに割り当てられた主要陽性信号(Mn61000、Mw/Mn2.3)は、スチレンを供給する前に取ったホモ-POサンプル値に比べて増加しなかった(Mn65000、Mw/Mn2.1)。このような結果は、得られた重合体が、ブロック共重合体ではなく、ホモ-POとホモ-PSの混合物であることを示すものである。
【0104】
スチレン単量体とともに、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDTA)を投入した参考実験例2~5の場合、そのGPC結果を図6に示したように、高分子量homo-PS信号が消え、狭い分子量分布(Mw/Mn1.3~1.5)で単峰曲線(細線)が観察された。また、スチレン重合の後、GPC曲線(太線)は、Mn値(ΔMn13~41kDa)が大幅に増加して高分子量方向に移動し、所望のPO-ブロック-PSの生成を裏付けた。
【0105】
一方、ポリオレフィニル-Liから開始する他の重合体鎖(例えば、ポリイソプレンおよびポリカプロラクトン)の成長も行われないことを確認した。イソプレンのアニオン重合を行った後、GPC曲線は、高分子量方向に移動せず、Mn値の増加は無視する程度であった。
【0106】
【表1】
【0107】
前記表1において、PS鎖の数は、単離されたPS重量を測定されたMn値で除して計算した。取得されたPS鎖は、供給されたZn量(205、203および203μmol vs.2×100=200μmol)の2倍であり、これらの数は、供給されたリチウム種の量(50、70および100μmol)によって変更されなかった。このような結果は、PS鎖が供給されたすべての(1-ヘキシル)Znから選択的に成長し、リチウム化合物は、PS鎖の成長部位として直接関与せず、PS鎖の成長過程で活性化剤としてのみ作用することを示す。参考実験例2~5は、スチレン単量体が重合体に完全に転換されず、高温90℃で5時間の長い反応時間を考慮しても、92~96%の収率を示し、分子量分布は多少広かった(Mw/Mn1.35~1.45)。
【0108】
アニオン重合開始剤の製造例
実施開始剤の製造例1
ペンチルアリル-Li・(PMDTA)の製造
n-BuLi(0.14mg、2.2mmol)を1-オクテン(13.0g)中のPMDTA(0.37g、2.2mmol)に滴加した。室温で一晩中撹拌した後、黄色の溶液(0.16mmol-Li/g)をスチレン重合に使用した。分取量をH NMR分光法で分析した。H NMRスペクトルを記録した後、Cの溶液をHO(またはDO)でクエンチングし、ピペットで無水MgSOの短いパッドで濾過し、H NMRスペクトルをまた記録した。
【0109】
比較開始剤の製造例1
メチルシクロヘキサン中の1-オクテン、n-BuLiおよびPMDTAの製造
メチルシクロヘキサン(77g)の中にPMDTA(3.00g、17.3mmol)および1-オクテン(3.90g、34.6mmol)を含有する溶液にn-BuLi(1.10g、17.3mmol)を滴加した。室温で一晩中撹拌した後、黄色の溶液(2.16mmol-Li/g)をスチレン重合に使用した。
【0110】
比較開始剤の製造例2
Me NCH CH N(Me)CH CH N(Me)CH Liの製造
sec-BuLi(12.8mg、0.200mmol)をメチルシクロヘキサン(1.50g)中のPMDTA(34.6mg、0.200mmol)の溶液に滴加した。室温で30分間撹拌した後、溶液(0.129mmol-Li/g)をスチレン重合に使用した。さらに、sec-BuLi(12.8mg、0.200mmol)およびPMDTA(34.6mg、0.200mmol)をC12(~0.5mL)に溶解させ、30分後に、H NMRスペクトルを記録した。
【0111】
比較開始剤の製造例3
Me NCH CH N(Me)Liの製造
n-BuLi(10mL、1.65M、16.5mmol)をヘキサン(25mL)中のMeNCHCHN(Me)H(1.69g、16.5mmol)の溶液に滴加した。室温で5時間撹拌した後、生成された溶液をセライトにより濾過した。真空ラインを使用して溶媒を除去した。
【0112】
比較開始剤の製造例4
Me NCH CH N(Me)Li・(PMDTA)の製造
比較開始剤の製造例2で製造されたMeNCHCHN(Me)Liをメチルシクロヘキサン中の等量のPMDTAに添加し、白色の固体(1.56g、33%)を取得した。
【0113】
H NMR(C):δ 3.21(br,2H,CH),3.11(br,3H,NLi(CH)),2.45(br,2H,CH),1.98(br,6H,N(CH)ppm.
【0114】
比較開始剤の製造例5
PhLi・(PMDTA)の製造
n-BuLi(12.8mg、0.200mmol)をC(0.600g)中のPMDTA(34.6mg、0.200mmol)の溶液に滴加した。室温で30分間撹拌した後、溶液(0.31mmol-Li/g)をH NMR分光法で分析し、スチレン重合に使用した。
【0115】
比較開始剤の製造例6
n-BuLi・(PMDTA)の製造
n-BuLi・(PMDTA)を文献[De Rosa et. Al.「Expanding the Origin of Stereocontrol in Propene Polymerization Catalysis.ACS」 Catal. 2016, 6, 3767-3770]に記載のように取得した。
【0116】
比較開始剤の製造例7
Me SiCH i・(PMDTA)の製造
MeSiCHLi・(PMDTA)を文献[Park, S.S. et al.「Synthesis of polyolefin-block-polystyrene through sequential coordination and anionic polymerizations.」J. Polym. Sci. Part A:Polym. Chem, 2016, 54, 3110-3118]に記載のように取得した。
【0117】
開始剤に対する分析
比較開始剤の製造例1のように、メチルシクロヘキサンのうちPMDTAおよび1-オクテンを含有する溶液にn-BuLiを滴加して生成された物質(1-オクテン+n-BuLi+PMDTA)のH NMRスペクトルを確認した結果、図7から確認することができるように、広範で収容し難い信号が観察された。これは、ペンチルアリル-Li、MeNCHCHN(Me)LiおよびMeNCHCHN(Me)CHCHN(Me)CHLiが混在していることを示し、これらに対するH NMRスペクトルを図8に示した。
【0118】
12でPMDTAとn-BuLiの反応をH NMR分光法でモニタリングし、n-BuLiは、PMDTAとゆっくり反応し、n-BuLiの完全な消費のためには、室温で~8時間が必要となり、図9に示しているように、主に、MeNCHCHN(Me)CHCHN(Me)CHLiを生成することを確認した。生成されたMeNCHCHN(Me)CHCHN(Me)CHLiは、不安定でMeNCHCHN(Me)Li、MeNLiおよびPMDTAに転換され、sec-BuLiは、室温で30分以内にPMDTAと反応し、図10に示しているように、C12で、主に、MeNCHCHN(Me)CHCHN(Me)CHLiを生成することを確認することができた。
【0119】
で、n-BuLiで処理されたPMDTAからCLi・(PMDTA)をきれいに取得することができた。図11H NMRスペクトルを示した。1-オクテン(溶媒および反応物として)中のn-BuLiで溶液の色が徐々に黄色に変化した。1-オクテンでの「PMDTA+n-BuLi」の反応で生成されたリチウム種のH NMRスペクトルは曖昧であった。しかし、2-オクテン(シス-およびトランス-異性体の混合物として)および1-オクテンに割り当てられた信号は、HOでクエンチングした後に観察され、これは、1-オクテン中の「PMDTA+nBuLi」の反応によるペンチルアリル-Liの生成を示す。図12にそのH NMRスペクトルを示した。
【0120】
[重合実験例1-(1-ヘキシル)ZnからのPS重合]
比較重合例1~3
開始剤として、比較開始剤の製造例1で製造された黄色の溶液を、下記表2の量に合わせてグローブボックス内部の(1-ヘキシル)Zn(22.6mg、96μmol)およびメチルシクロヘキサン(27g)を含有するフラスコに添加した。スチレン(5.0g、48.0mmol)を添加し、90℃で5時間アニオン重合を行った。次いで、HCl水溶液(2N、0.3mL)を添加し、生成された溶液を90℃で30分間撹拌して亜鉛化合物を破壊した。溶液を短いシリカゲルパッドにより濾過し、次いで、トルエンで洗浄した。PSを分離するために、回転蒸発器でトルエンを除去した。分離したサンプルを130℃で5時間真空オーブンで乾燥した(5.00g、100%)。
【0121】
比較重合例4
開始剤として、比較開始剤の製造例2で製造された化合物を、下記表2の量に合わせて使用した以外は、前記比較重合例1~3と同じ過程を行った。
【0122】
比較重合例5
開始剤として、比較開始剤の製造例3で製造された化合物を、下記表2の量に合わせて使用した以外は、前記比較重合例1~3と同じ過程を行った。
【0123】
比較重合例6~8
開始剤として、比較開始剤の製造例4で製造された化合物を、下記表2の量に合わせて使用した以外は、前記比較重合例1~3と同じ過程を行った。
【0124】
比較重合例9~11
開始剤として、比較開始剤の製造例5で製造された化合物を、下記表2の量に合わせて使用した以外は、前記比較重合例1~3と同じ過程を行った。
【0125】
比較重合例12
開始剤として、n-BuLi・(PMDTA)を、下記表2の量に合わせて使用した以外は、前記比較重合例1~3と同じ過程を行った。
【0126】
比較重合例13
開始剤として、MeSiCHLi・(PMDTA)を、下記表2の量に合わせて使用した以外は、前記比較重合例1~3と同じ過程を行った。
【0127】
実施重合例1~3
開始剤として、実施開始剤の製造例1で製造された化合物を、下記表2の量に合わせて使用した以外は、前記比較重合例1~3と同じ過程を行った。
【0128】
【表2】
【0129】
前記表2に示しているように、Li、オレフィンおよびPMDTAの反応によって生成され得る有機リチウム化合物を、(1-ヘキシル)Znの存在下でスチレン重合の開始剤として使用した。生成または製造された有機リチウム化合物を、メチルシクロヘキサンのうちスチレン(5.0g)および(1-ヘキシル)Zn(100μmol)を含有する重合ポットに供給し、90℃で5時間重合を行った。PS鎖の成長位置の数は、分離されたPS重量を測定されたMn値で除することで計算され、PS鎖が(1-ヘキシル)Znからよく成長したかをモニタリングした。
【0130】
1-オクテンのうち「n-BuLi+PMDTA」インサイチュ(in situ)反応によって生成されたペンチルアリル-Li・(PMDTA)が使用された時に(実施重合例1~3)、スチレン単量体は、PSに完全に転換され、PS鎖の成長位置の数は、「2×Zn(μmol)」(それぞれ、233、240および258μmol)の値を超え、リチウム化合物の供給量(それぞれ、50、70および100μmol)が増加するにつれて増加した。このような観察結果は、PS鎖がすべてのZn位置(site)だけでなく、下記反応式3に示しているように供給された有機リチウム化合物の一部でも成長したことを示すものである。
【0131】
【化22】
【0132】
「メチルシクロヘキサン中のsec-BuLi+PMDTA」の反応で30分内に生成されたMeNCHCHN(Me)CHCHN(Me)CHLi(100μmol)を使用した場合(比較重合例4)、スチレン単量体が完全にPSに転換されず(95%の収率)、計算されたPS鎖の成長位置の数は、240μmolであり、「2×Zn(μmnol)」の値を超えるが、「2×Zn(μmol)+Li(μmol)」の値を超えず、分子量分布は狭かった(Mw/Mn、1.25)。MeNCHCHN(Me)Liを使用した場合(比較重合例5)、スチレン転換率がかなり低かった(23%)。一方、MeNCHCHN(Me)Li・(PMDTA)が使用された場合(比較重合例6~8)、転換率は高いが、収率が高くなかった(収率91~93%)。PS鎖の数は、「2×Znμmol」の値とよく一致した(207、208、195μmnol vs.2×100μmol)。これは、リチウム種(それぞれ、50、70および100μmol)の供給量の増加によってほとんど影響を受けず、これは、PS鎖が供給されたZn化合物から選択的に成長し、MeNCHCHN(Me)Liから成長しなかったことを示すものである。
【0133】
PhLi・(PMDTA)は、ペンチルアリル-Liと類似する結果を示し、MeSiCHLi・(PMDTA)(比較重合例13)およびn-BuLi・(PMDTA)(比較重合例12)と類似する効果を示した。スチレン単量体は、PSに定量的に転換され、すべての場合に、PS鎖の数は、「2×Zn(μmol)」の値(220~260μmol)を超えた。分子量分布は、ペンチルアリル-Li・(PMDTA)、PhLi・(PMDTA)およびMeSiCHLi・(PMDTA)の場合には狭く(Mw/Mn、1.24~1.30)、n-BuLi・(PMDTA)の場合には多少広範であった(Mw/Mn、1.48)。
【0134】
[重合実験例2-ポリ(エチレン-co-ポリプロピレン)-b-PSの重合]
実施重合例A
ボンベ(bomb)反応器(125mL)を60℃で1時間排気させた。大気圧でエチレンガスで反応器を充填した後、メチルシクロヘキサン(15.5g)のうちMeAl(29.0mg、200μmol-Al)の溶液を添加した。マントルを使用して、混合物を100℃で40分間撹拌した後、溶液をカニューラを使用して除去した。反応器をまた排気させて任意の残留溶媒を除去し、大気圧でエチレン/プロピレンガスで充填した。この洗浄手続きは、触媒毒を除去するために行われた。反応器に、MMAO(修飾メチルアルミノキサン、AkzoNobel、ヘプタンのうち6.7重量%-Al、20mg、50μmol-Al)を含有するメチルシクロヘキサン(15.5g)を充填し、温度を80℃に設定した。メチルシクロヘキサン(10.0g)のうち(1-ヘキシル)Zn(35.4mg、150μmol-Zn)溶液およびメチルシクロヘキサン(0.5g)で希釈されたシクロヘキサン(1.8μmol/g、230mg、2.0μmol)のうち下記化学式7の遷移金属化合物触媒と、助触媒として、[(C1837)N(Me)H[B(Cを含む溶液を連続して注入した。
【0135】
【化23】
【0136】
エチレン/プロピレン混合ガス(10bar/15bar、総25bar)をタンクから25barで反応器に充填し、混合物を40分間重合させた。温度は、5分以内に自ら110℃に増加し、次いで、制御器を使用して90~100℃に維持した。タンクの圧力が23barから21barに減少すると、残りのエチレン/プロピレン混合ガスを排出した後、分取量をGPC測定のために取った。
【0137】
メチルシクロヘキサン(10.0g)中のペンチルアリル-Li・(PMDTA)(200μmol)を95℃で注入した。95℃で15分間撹拌した後、メチルシクロヘキサン(5.0g)中のスチレン(5.0g)溶液を注入し、温度を90℃~100℃の範囲内で調節しながら4時間重合させた。H NMR分光法のために分取量を取った。スペクトルは、スチレン単量体による信号を示さなかった。
【0138】
酢酸(2.0mL)およびエタノール(30mL)を連続して反応器に注入した。生成された重合体を真空オーブンで160℃で乾燥した(18.1g)。60℃で3時間クロロホルム(30g)に重合体(3.0g)を溶解した後、アセトン(60g)を添加し、PO-block-PSを沈殿させた。クロロホルム/アセトン混合溶媒に可溶性のホモ-PSを濾過によって分離した。
【0139】
実施重合例B
スチレンの量を10gに変更した以外は、前記実施重合例Aと同じ過程を行った。
【0140】
実施重合例C
(1-ヘキシル)Znの量を300μmolに変更した以外は、前記実施重合例Aと同じ過程を行った。
【0141】
実施重合例D
スチレンの量を5.0gから10gに変更した以外は、前記実施重合例Cと同じ過程を行った。
【0142】
比較重合例A
ペンチルアリル-Li・(PMDTA)の代わりに、比較製造例開始剤1を使用した以外は、前記実施重合例Aと同じ過程を行った。
【0143】
比較重合例B
ペンチルアリル-Li・(PMDTA)の代わりに、比較製造例開始剤2を使用した以外は、前記実施重合例Aと同じ過程を行った。
【0144】
比較重合例C
ペンチルアリル-Li・(PMDTA)の代わりに、比較製造例開始剤4を使用した以外は、前記実施重合例Aと同じ過程を行った。
【0145】
比較重合例D
ペンチルアリル-Li・(PMDTA)の代わりに、比較製造例開始剤5を使用した以外は、前記実施重合例Aと同じ過程を行った。
【0146】
比較重合例E
スチレンの量を5.0gから10gに変更した以外は、前記比較重合例Dと同じ過程を行った。
【0147】
比較重合例F
(1-ヘキシル)Znの量を300μmolに変更した以外は、前記比較重合例Dと同じ過程を行った。
【0148】
比較重合例G
スチレンの量を5.0gから10gに変更した以外は、前記実施重合例Fと同じ過程を行った。
【0149】
比較重合例H
ペンチルアリル-Li・(PMDTA)の代わりに、n-BuLi・(PMDTA)を使用した以外は、前記実施重合例Aと同じ過程を行った。
【0150】
比較重合例I
ペンチルアリル-Li・(PMDTA)の代わりに、MeSiCHLi・(PMDTA)を使用した以外は、前記実施重合例Aと同じ過程を行った。
【0151】
【表3】
【0152】
実施重合例A~Dは、1-オクテンでの「n-BuLi+PMDTA」の反応で生成されたペンチルアリル-Li・(PMDTA)を開始剤として使用したものであり、図13および図14を参照すると、スチレン重合の後、GPC曲線を高分子量方向に移動させたことを確認することができる。スチレン重合の後、Mn値の増加は実質的且つ合理的であった(それぞれ、△Mn22、37、11および20kDa)。同じ条件下で、スチレン単量体を2倍の量で供給することで、△Mn値を22kDaから33kDaに、また11kDaから20kDaに、ほぼ2倍増加させることができた。同じ条件下で、CCTcoP重合により、Zn化合物を2倍の量で供給し、これに伴いリチウム化合物を2倍の量で供給することで、△Mn値を22kDaから11kDaに、37kDaから20kDaに、ほぼ半分に減少させることができた。また、スチレン重合の後、分子量分布は、それぞれ、1.61、1.61、1.50および1.54のMw/Mn値からそれぞれ、1.39、1.30、1.35および1.26(△PDI 0.22、0.31、0.15および0.28)に狭くなった。
【0153】
ホモ-PSは、アセトン/クロロホルム混合溶媒で抽出してブロック共重合体から分離することができる。抽出されたホモ-PSは、消費したスチレンの総量の約1/3(27~29%)であり、これにより、PS鎖が(ポリオレフィニル)Znでのペンチルアリル-Li・(PMDTA)の作用によって形成される亜鉛酸塩(zincate)化合物である[(ポリオレフィニル)(ペンチルアリル)Zn][Li・(PMDTA)]のポリオレフィニルおよびペンチルアリル基から成長したという仮説を立てることができた。
【0154】
ポリオレフィニル基からのPS鎖の成長は、所望のポリ(エチレン-co-プロピレン)-ブロック-PSを生成する一方、ペンチルアリルは、消費した総スチレンの1/3でホモ-PSを生成した。しかし、消費した総スチレンの重量を測定されたホモ-PSMn値で除することで計算されたPS鎖の成長位置の数は、仮説とは異なり、「3×Zn(μmol)」の値と一致しなかった。一方、PS鎖の成長位置の数は、「2×Zn(μmol)」の値と近かった(実施重合例AおよびBの場合、310および360μmol vs.2×150=300μmol;実施例重合例Dの場合、630μmol vs.2×300=600μmol)。
【0155】
したがって、本発明者らは、下記反応式4に示しているように、PS鎖が形成された亜鉛酸塩[(ポリオレフィニル)(ペンチルアリル)Zn][Li・(PMDTA)]のポリオレフィニル基から主に成長したという仮説を立てるようになった。
【0156】
【化24】
【0157】
抽出されたホモ-PSは、CCTPの間にそのまま維持されることができる1-ヘキシル基またはCCTPで生成されたポリオレフィン基から成長したPS鎖に起因したものと考えられる。Zn化合物の供給量が多く(300μmol)、スチレン単量体の供給量が少なすぎると(5.0g)(実施重合例C)、PS鎖の成長部位の数が「2×Zn」の値を超えず、これは、PS鎖がすべてのポリオレフィニル-Zn基から成長しなかったことを示す(450μmol vs.2×300=600μmol)。抽出されたホモ-PSの分子量分布は、かなり狭く(Mw/Mn1.23~1.25)、アニオン性スチレン重合がよく制御されたことを確認することができた。
【0158】
PhLi・(PMDTA)の場合、図15で確認することができるようにスチレン重合の後、Mn値がかなり増加し(△Mn12、38、10、21kDa、比較重合例D~G)、スチレン重合の後、分子量分布Mw/Mnは、それぞれ、1.65、1.63、1.58および1.64から1.49、1.29、1.41および1.34にかなり狭くなった。しかし、抽出されたホモ-PSsの量は、実施開始剤であるペンチルアリル-Li・(PMDTA)に比べて高い値を示し(30~34% vs.27~29%)、抽出されたホモ-PSsの分子量分布が、ペンチルアリル-Li・(PMDTA)を使用した場合に比べてより広かった。
【0159】
これにより、実施開始剤であるペンチルアリル-Li・(PMDTA)が、(ポリオレフィニル)ZnからPS鎖を成長させる際に、比較開始剤であるPhLi・(PMDTA)より優れた効果を発揮することを確認することができた。
【0160】
一方、(1-ヘキシル)ZnからのPS重合では、実施開始剤であるペンチルアリル-Li・(PMDTA)と比較開始剤であるn-BuLi・(PMDTA)およびMeSiCHLi・(PMDTA)の間の有意な効果の差が観察されなかったと見られるが(表2参照)、実際、ブロック共重合体の製造が行われる(ポリオレフィニル)Znで行われたPS重合結果は、実施開始剤であるペンチルアリル-Li・(PMDTA)がより優れた効果を発揮することを確認することができた。具体的には、n-BuLi・(PMDTA)が使用された比較重合例Hの場合、相当な量のホモ-PSが生成され(45%)、MeSiCHLi・(PMDTA)が使用された比較重合例Iの場合、スチレン重合の後、Mn値の増加が、実施開始剤を用いた実施重合例に比べて小さな値を示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図6(d)】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-14】
図15