(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】切削ブレード、及び切削ブレード装着機構
(51)【国際特許分類】
B24D 5/12 20060101AFI20240430BHJP
B24B 45/00 20060101ALI20240430BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B24D5/12 Z
B24B45/00 Z
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2020022015
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博公
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3002118(JP,U)
【文献】特開2004-188506(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0134726(US,A1)
【文献】米国特許第05447086(US,A)
【文献】特開平09-277153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 61/00
B24D 5/12、5/16
B24B 27/06、45/00
B28D 1/27、5/02
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に装着孔が形成された環状基台と、
該環状基台の外周に設けられた切刃と、を備え、
該環状基台は、内部に電磁石を有することを特徴とする切削ブレード。
【請求項2】
永久磁石としての性質を有する第1の強磁性体と、第1の電磁石と、のいずれかを含み中心部に装着孔が形成された環状基台と、該環状基台の外周に設けられた切刃と、を有する切削ブレードをスピンドルに装着する切削ブレード装着機構であって、
該スピンドルの先端に装着されるブレードマウントを具備し、
該ブレードマウントは、
該環状基台の該装着孔に挿入されるボス部と、
該ボス部の後端から径方向に突出し該切削ブレードの該環状基台の裏面側を支持する環状支持面を備えたフランジ部と、を備え、
該フランジ部は、第2の電磁石を含み、
該環状基台と、該フランジ部と、の間に働く磁力により該ブレードマウントに該切削ブレードを装着できることを特徴とする切削ブレード装着機構。
【請求項3】
永久磁石としての性質を有さない第1の強磁性体を含み中心部に装着孔が形成された環状基台と、該環状基台の外周に設けられた切刃と、を有する切削ブレードをスピンドルに装着する切削ブレード装着機構であって、
該スピンドルの先端に装着されるブレードマウントを具備し、
該ブレードマウントは、
該環状基台の該装着孔に挿入されるボス部と、
該ボス部の後端から径方向に突出し該切削ブレードの該環状基台の裏面側を支持する環状支持面を備えたフランジ部と、を備え、
該フランジ部は、電磁石を含み、
該環状基台と、該フランジ部と、の間に働く磁力により該ブレードマウントに該切削ブレードを装着できることを特徴とする切削ブレード装着機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を切削する円環状の切削ブレードと、該切削ブレードをスピンドルの先端に装着するための切削ブレード装着機構と、に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やコンピュータ等の電子機器に使用されるデバイスチップは、シリコンやシリコンカーバイド等の材料からなるウェーハから製造される。まず、ウェーハの表面に互いに交差する複数の分割予定ラインを設定し、ウェーハの表面の分割予定ラインによって区画される各領域に、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスを形成する。次に、ウェーハを裏面側から研削して薄化し、分割予定ラインに沿ってウェーハを分割すると個々のデバイスチップを形成できる。
【0003】
ウェーハの分割は、円環状の切削ブレードを備える切削装置によって実施される。回転する切削ブレードを分割予定ラインに沿ってウェーハに切り込ませると、ウェーハに切削溝が形成されてウェーハが分割される。切削ブレードは、例えば、アルミニウムで形成された環状基台と、該環状基台の外周側に固定された切刃と、を備える。切刃は、ダイヤモンド砥粒をニッケルめっきで固定して形成される。切削装置において、切削ブレードは、回転駆動源に接続されたスピンドルの先端に装着されて使用される。
【0004】
スピンドルの先端には切削ブレード装着機構が設けられており、切削ブレードは、該切削ブレード装着機構を介してスピンドルの先端に装着される。該切削ブレード装着機構は、例えば、円筒状のボス部と、ボス部の後端から径方向に突出したフランジ部と、を有するブレードマウントを備える。
【0005】
切削ブレード装着機構に切削ブレードを装着する際には、環状基台の装着孔にボス部を挿入してフランジ部で環状基台の裏面側を支持し、ボス部先端の外周に形成されたねじ溝に固定ナットを締め付ける。そして、固定ナット及びフランジ部で環状基台を挟持することで切削ブレードを固定する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、固定ナットをボス部の先端に螺合する際には、固定ナットを所定のトルクで締め付ける必要がある。そのため、熟練した作業者が作業を実施する場合を除き、トルクを測定できる機構を備える専用の締め付け治具が必要となる。また、固定ナットを締めつける際に切削ブレードが固定ナットの回転に連れ回りながらフランジ部に接触するため、フランジ部の接触面が荒れ易い。該接触面が荒れると切削ブレードが正しい向きで固定されにくくなり、また、切削ブレードの固定が不安定となるおそれがある。
【0008】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ブレードマウントに固定する際に固定ナットが不要な切削ブレードと、固定ナットを使用することなく切削ブレードを固定できる切削ブレード装着機構と、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、中心部に装着孔が形成された環状基台と、該環状基台の外周に設けられた切刃と、を備え、該環状基台は、内部に電磁石を有することを特徴とする切削ブレードが提供される。
【0012】
さらに、本発明の他の一態様によれば、永久磁石としての性質を有する第1の強磁性体と、第1の電磁石と、のいずれかを含み中心部に装着孔が形成された環状基台と、該環状基台の外周に設けられた切刃と、を有する切削ブレードをスピンドルに装着する切削ブレード装着機構であって、該スピンドルの先端に装着されるブレードマウントを具備し、該ブレードマウントは、該環状基台の該装着孔に挿入されるボス部と、該ボス部の後端から径方向に突出し該切削ブレードの該環状基台の裏面側を支持する環状支持面を備えたフランジ部と、を備え、該フランジ部は、第2の電磁石を含み、該環状基台と、該フランジ部と、の間に働く磁力により該ブレードマウントに該切削ブレードを装着できることを特徴とする切削ブレード装着機構が提供される。
【0014】
さらに、本発明の他の一態様によれば、永久磁石としての性質を有さない第1の強磁性体を含み中心部に装着孔が形成された環状基台と、該環状基台の外周に設けられた切刃と、を有する切削ブレードをスピンドルに装着する切削ブレード装着機構であって、該スピンドルの先端に装着されるブレードマウントを具備し、該ブレードマウントは、該環状基台の該装着孔に挿入されるボス部と、該ボス部の後端から径方向に突出し該切削ブレードの該環状基台の裏面側を支持する環状支持面を備えたフランジ部と、を備え、該フランジ部は、電磁石を含み、該環状基台と、該フランジ部と、の間に働く磁力により該ブレードマウントに該切削ブレードを装着できることを特徴とする切削ブレード装着機構が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係る切削ブレード及び切削ブレード装着機構では、固定ナットが不要である。これは、ブレードマウントへの切削ブレードの固定を磁力により実施できるためである。そのため、いかなる作業者も、専用の治具を使用することなく固定作業を容易に実施できる。磁力による固定作業では、切削ブレードが固定ナットに連れ回ることもないため、フランジ部の接触面が荒れることもない。
【0016】
したがって、本発明によると、ブレードマウントに固定する際に固定ナットが不要な切削ブレードと、固定ナットを使用することなく切削ブレードを固定できる切削ブレード装着機構と、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】切削ユニットの一部を模式的に示す分解斜視図である。
【
図3】
図3(A)は、切削ブレードを模式的に示す側面図であり、
図3(B)は、ブレードマウントを模式的に示す平面図である。
【
図4】切削ブレード装着機構に固定された切削ブレードを模式的に示す断面図である。
【
図5】切削ユニットの一部を模式的に示す分解斜視図である。
【
図6】切削ブレード装着機構に固定された切削ブレードを模式的に示す断面図である。
【
図7】切削ユニットの一部を模式的に示す分解斜視図である。
【
図8】切削ブレード装着機構に固定された切削ブレードを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本実施形態に係る切削ブレードと、切削ブレード装着機構と、について説明する。該切削ブレード装着機構は、切削装置の切削ユニットに据え付けられて使用される。該切削ブレードは、該切削ブレード装着機構を介して切削装置に取り付けられて使用される。まず、被加工物の切削が実施される切削装置について説明する。
図1は、切削装置2を模式的に示す斜視図である。
【0019】
切削装置2で切削される被加工物(不図示)は、例えば、Si(シリコン)、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、GaAs(ヒ化ガリウム)、若しくは、その他の半導体材料から形成される略円板状のウェーハである。または、被加工物は、サファイア、石英、ガラス、セラミックス等の材料からなる板状の基板等である。該ガラスは、例えば、アルカリガラス、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等である。
【0020】
被加工物の表面には互いに交差する複数の分割予定ラインが設定され、被加工物の表面の分割予定ラインによって区画される各領域には、IC、LSI等のデバイスが形成される。該被加工物を裏面側から研削して薄化し、分割予定ラインに沿って該被加工物を切削して分割すると、個々のデバイスチップを形成できる。
【0021】
被加工物は、例えば、環状フレームに貼られたテープ上に貼着され、環状フレームと一体で取り扱われる。環状フレームとテープとを用いて被加工物を取り扱うと、被加工物を搬送する際に生じる衝撃等から該被加工物を保護できる。さらに、該テープを拡張すると、被加工物が分割されて形成された各チップの間隔を広げられるため、チップのピックアップが容易となる。
【0022】
切削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備える。基台4の前方の角部には、昇降機構(不図示)によって昇降するカセット支持台6が設けられている。カセット支持台6の上面には、複数の被加工物を収容するカセット8が配設される。なお、
図1では説明の便宜上、カセット8の輪郭のみを示している。
【0023】
カセット支持台6の側方には、長手方向がX軸方向(加工送り方向)に沿うように矩形の開口4aが形成されている。開口4a内には、ボールネジ式のX軸移動機構(不図示)と、X軸移動機構の上部を覆うテーブルカバー10及び蛇腹状の防塵防滴カバー12と、が配置されている。X軸移動機構は、テーブルカバー10によって覆われたX軸移動テーブル(不図示)を備えており、このX軸移動テーブルをX軸方向に移動させる。
【0024】
X軸移動テーブルの上面にはテーブルカバー10から露出するようにチャックテーブル14が配設されている。チャックテーブル14は、上方に露出した保持面14aに載せられた被加工物を吸引保持する機能を有する。チャックテーブル14はモータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、Z軸方向(鉛直方向)に概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル14はX軸移動機構によってX軸移動テーブルやテーブルカバー10とともにX軸方向に移動する。
【0025】
被加工物を吸引保持するチャックテーブル14は、被加工物と同様の径のポーラス部材を上面に備える。そして、該ポーラス部材の上面が被加工物を吸引保持する保持面14aとなる。チャックテーブル14の内部には、チャックテーブル14の外部に設けられたエジェクタ等の吸引源に一端が接続された吸引路が形成されている。吸引路の他端は、該ポーラス部材に達している。さらに、チャックテーブル14の周囲には、被加工物を支持する環状フレームを四方から固定するためのクランプ14bが設けられている。
【0026】
切削装置2は、開口4aに隣接する領域に、カセット8からチャックテーブル14等へと被加工物を搬送する搬送ユニット(不図示)を備える。チャックテーブル14の上方には、環状の切削ブレード44によってウェーハ1を切削する切削ユニット38が配設される。基台4の上面には、切削ユニット38を支持するための支持構造16が配置されている。支持構造16は、開口4aの上方に該開口4aを渡るように伸長した腕部18を上部に備える。
【0027】
支持構造16の前面上部には、切削ユニット38をY軸方向(割り出し送り方向)に移動させる割り出し送りユニット20が設けられている。割り出し送りユニット20は、支持構造16の前面にY軸方向に沿って伸長した一対のY軸ガイドレール22を備える。一対のY軸ガイドレール22には、Y軸移動プレート24がスライド可能に装着されている。Y軸移動プレート24の裏面側(後面側)にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部にはY軸ガイドレール22に平行なY軸ボールネジ26が螺合されている。
【0028】
Y軸ボールネジ26の一端部には、Y軸パルスモータ(不図示)が連結されている。Y軸パルスモータによってY軸ボールネジ26を回転させることにより、Y軸移動プレート24がY軸ガイドレール22に沿ってY軸方向に移動する。
【0029】
Y軸移動プレート24の表面(前面)には、切削ユニット38をZ軸方向(上下方向)に沿って昇降させる昇降ユニット28が設けられる。昇降ユニット28は、Z軸方向に沿った一対のZ軸ガイドレール30をY軸移動プレート24の表面に備える。一対のZ軸ガイドレール30にはZ軸移動プレート32がスライド可能に取り付けられている。
【0030】
Z軸移動プレート32の裏面側(後面側)にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部にはZ軸ガイドレール30に平行な方向に沿うように設けられたZ軸ボールネジ34が螺合されている。Z軸ボールネジ34の一端部にはZ軸パルスモータ36が連結されており、このZ軸パルスモータ36によってZ軸ボールネジ34を回転させることにより、Z軸移動プレート32がZ軸ガイドレール30に沿ってZ軸方向に移動する。
【0031】
Z軸移動プレート32の下部には切削ユニット38が固定されている。切削ユニット38に隣接する位置には、チャックテーブル14によって吸引保持された被加工物を撮像し、分割予定ラインの位置を検出するための撮像ユニット40が設けられている。割り出し送りユニット20により切削ユニット38及び撮像ユニット40のY軸方向における位置が制御され、昇降ユニット28により切削ユニット38及び撮像ユニット40のZ軸方向における位置が制御される。
【0032】
チャックテーブル14に保持された被加工物を切削する際には、チャックテーブル14と、切削ユニット38と、を相対的に移動させて、被加工物の分割予定ラインに切削ブレード44を合わせる。次に、切削ブレード44を回転させた状態で切削ユニット38を所定の高さまで下降させ、チャックテーブル14をX軸方向に沿って加工送りする。回転する切削ブレード44の切刃が被加工物に接触すると、被加工物が切削されて分割される。
【0033】
開口4aに対してカセット支持台6と反対側の位置には、開口4bが形成されている。開口4b内には切削後の被加工物を洗浄するための洗浄ユニット42が配置されている。洗浄ユニット42は、被加工物を保持しながら回転するスピンナテーブル42aと、スピンナテーブル42aに保持された被加工物に上方から洗浄水を噴射する噴射ノズル42bと、を備える。洗浄ユニット42で洗浄された被加工物は、再びカセット8に収納される。
【0034】
切削ユニット38について、さらに説明する。
図2には、切削ユニット38に装着される切削ブレード44を模式的に示す斜視図が含まれている。
図3(A)は、切削ブレード44を模式的に示す側面図である。
図4には、切削ブレード44を模式的に示す断面図が含まれている。
図2等に示された切削ブレード44は、ハブタイプと呼ばれる切削ブレードであり、中心部に装着孔50を備えた環状基台48と、該環状基台48の外周に設けられた切刃52と、を有する。
【0035】
図2は、ブレードカバーを取り外した状態における切削ユニット38の構造を模式的に示す分解斜視図である。切削ユニット38は、Y軸方向(
図1参照)に平行な回転軸を構成するスピンドル54を備え、スピンドル54の先端に切削ブレード44が固定される。スピンドル54の基端側は、Z軸移動プレート32(
図1参照)に固定されたスピンドルハウジング46に収容されている。該基端側には、スピンドルハウジング46の内部に設けられたモータ等の回転駆動源(不図示)が接続されている。
【0036】
スピンドル54は、先端側に向かうにつれて徐々に径が小さくなるテーパー形状を有する円柱状に形成されており、先端にボルト固定穴58が形成されている。ボルト固定穴58では、切削時のスピンドル54の回転方向に回転させることで締め込まれる向きにねじ溝が切られている。
【0037】
スピンドル54の先端側には、切削ブレード44をスピンドル54の先端に固定するための切削ブレード装着機構55が装着される。切削ブレード44は、切削ブレード装着機構55を介してスピンドル54の先端側に装着される。切削ブレード装着機構55は、例えば、ブレードマウント70及びロータリージョイント60等を具備する。
【0038】
スピンドルハウジング46の前側の端面には、ロータリージョイント60が固定される。ロータリージョイント60は、Y軸方向に沿った円筒状のブレードマウント収容体66を中央に備える。ロータリージョイント60のブレードマウント収容体66には、Y軸方向に沿って貫通するジョイント開口部64が形成されている。ジョイント開口部64には、スピンドル54の先端側が挿通されるとともに、スピンドル54の先端に装着される後述のブレードマウント70の後端側の一部が回転可能に収容される。
【0039】
スピンドルハウジング46の該端面には、ロータリージョイント60を固定する際に使用されるボルト62a(
図4等参照)が螺合される複数のねじ穴56が形成されている。ロータリージョイント60には、ねじ穴56の配置に対応した配置で貫通孔62が形成されている。そして、ロータリージョイント60は、ボルト62aが貫通孔62に通されねじ穴56に螺合されることにより、ジョイント開口部64からスピンドル54の先端が突き出る態様でスピンドルハウジング46に固定されている。
【0040】
スピンドル54の先端に装着されたブレードマウント70は、切削ブレード44を保持する。ブレードマウント70は、前後方向(Y軸方向)に伸長し切削ブレード44の環状基台48の装着孔50に挿入される円筒状のボス部72を備える。また、ブレードマウント70は、ボス部72の後端から径方向外向きに突出し切削ブレード44の環状基台48の裏面側を支持する環状支持面76を備えたフランジ部74を備える。
【0041】
さらに、ブレードマウント70は、フランジ部74よりも後方側に伸長した円筒状の後端部82を備え、フランジ部74及び後端部82の内側にスピンドル54の先端が挿入されるスピンドル装着穴70a(
図4等参照)を備える。スピンドル装着穴70aは後方側に露出しており、後方側からスピンドル54が挿入される。
【0042】
スピンドル54は、先端に向かうにつれて径が小さくなる先細り形状を有し、外周面54aがテーパー形状となっている。そして、スピンドル装着穴70aの内周面は、スピンドル54の外周面54aのテーパー形状に対応するテーパー形状となっている。ブレードマウント70は、前方側に露出するようにボス部72の内側に形成されたボルト収容穴88をさらに備える。ボルト収容穴88は、スピンドル装着穴70aに連通している。
【0043】
スピンドル装着穴70aにスピンドル54の先端を挿入したとき、スピンドル54の先端に形成されたボルト固定穴58がボルト収容穴88を通して前方側に露出する。そして、スピンドル装着穴70aにスピンドル54を挿入した後、ワッシャー94を通した固定ボルト96をブレードマウント70のボルト収容穴88に前方側から差し入れてボルト固定穴58に固定ボルト96を螺合させる。すると、スピンドル54の先端にブレードマウント70が固定される。
【0044】
図4は、切削ブレード装着機構55を備える切削ユニット38を模式的に示す断面図である。
図4には、スピンドル54の先端に固定されたブレードマウント70の断面図が含まれている。ボス部72の外径は、切削ブレード44の環状基台48の装着孔50の内径に対応している。
【0045】
切削ブレード装着機構55を使用してスピンドル54の先端に切削ブレード44を固定する際には、環状基台48の装着孔50にブレードマウント70のボス部72が通される。従来、ボス部72の先端部の外周面にはねじ山が形成されており、切削ブレード44の環状基台48の装着孔50に通されたボス部72の先端部に固定ナットを螺合させることで切削ブレード44を固定していた。
【0046】
しかしながら、固定ナットをボス部72の先端部に螺合する際には、固定ナットを所定のトルクで締め付ける必要がある。そのため、熟練した作業者が作業を実施する場合を除き、トルクを測定できる機構を備える専用の締め付け治具が必要であった。
【0047】
また、固定ナットを締めつける際に切削ブレード44が固定ナットの回転に連れ回りながらフランジ部74に接触するため、フランジ部74の接触面(環状支持面76)が荒れ易い。該接触面が荒れると切削ブレード44が正しい向きで固定されにくくなり、また、切削ブレード44の固定が不安定となるおそれがある。
【0048】
そこで、本実施形態に係る切削ブレード44、及び切削ブレード装着機構55では、固定ナットに代えて磁力により固定作業が実施される。以下、磁力で固定できる切削ブレード44、及び磁力で切削ブレード44を固定できる切削ブレード装着機構55について説明する。
【0049】
図3(A)は、本実施形態に係る切削ブレード44の正面図である。
図3(A)では、環状基台48の内部の構造物を破線で示している。環状基台48は、強磁性体90a,90b,90c,90dを内部に含む。なお、
図3(A)に示す例では、4つの強磁性体90a,90b,90c,90dが環状基台48に含まれる場合が示されているが、強磁性体の数はこれに限定されない。
【0050】
切削ブレード44では、磁力により偏りなくブレードマウント70に固定されるように、複数の強磁性体90a,90b,90c,90dが装着孔50を中心とした対称形に配置されることが好ましい。または、環状基台48は、装着孔50を外側から囲む環状の強磁性体を内部に含んでもよい。
【0051】
ここで、強磁性体90a,90b,90c,90dについて説明する。強磁性体は、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、及びこれらの金属を含む化合物等で形成される。ただし、強磁性体はこれに限定されない。ここでは、磁石を近づけると磁化する性質を有し、該磁石に引き寄せられる力を生じる性質を有する物体を強磁性体とする。磁化した強磁性体から該磁石を引き離した後、該強磁性体に残留磁化が残る場合がある。この残留磁化が残る強磁性体は、永久磁石となる。すなわち、強磁性体には、永久磁石が含まれる。
【0052】
強磁性体90a,90b,90c,90dが永久磁石である場合、該永久磁石により生じる磁界の向きが該永久磁石の近傍で装着孔50の挿通方向に沿った向きに向くように強磁性体90a,90b,90c,90dの向きが予め調整される。換言すると、強磁性体90a,90b,90c,90dが永久磁石である場合、各強磁性体90a,90b,90c,90dのN極またはS極が環状基台48の表面または裏面に予め向けられる。
【0053】
切削ブレード44の環状基台48に強磁性体90a,90b,90c,90dが含まれていると、ブレードマウント70のフランジ部74との間に働く磁力により切削ブレード44をブレードマウント70に装着できる。そして、強磁性体90a,90b,90c,90dが含まれる切削ブレード44と、フランジ部74と、の間に磁力が生じるように、フランジ部74の内部にも強磁性体を含ませる。
【0054】
図3(B)は、フランジ部74の内部に強磁性体80a,80b,80c,80dを含むブレードマウント70を模式的に示す正面図である。
図3(B)では、内部の構造物を破線で示している。フランジ部74の内部には、ブレードマウント70に装着される切削ブレード44の環状基台48の強磁性体90a,90b,90c,90dの数及び配置に対応する数及び配置で強磁性体80a,80b,80c,80dが配置される。
【0055】
例えば、切削ブレード44の環状基台48の内部に環状の強磁性体が含まれる場合、フランジ部74の内部にも該環状の強磁性体と同程度の径の環状の強磁性体が配設されるのが好ましい。
【0056】
図4は、ブレードマウント70に切削ブレード44が装着された様子を模式的に示す断面図である。
図4に示す通り、切削ブレード44がブレードマウント70に装着されるとき、環状基台48の強磁性体90a,90b,90c,90dの位置がフランジ部74の強磁性体80a,80b,80c,80dに合うように、切削ブレード44の向きが調整される。
【0057】
なお、強磁性体80a,80b,80c,80dが永久磁石である場合、該永久磁石により生じる磁界の向きが該永久磁石の近傍でボス部72の伸長方向に沿った向きに向くように強磁性体80a,80b,80c,80dの向きが予め調整される。換言すると、強磁性体80a,80b,80c,80dが永久磁石である場合、各強磁性体80a,80b,80c,80dのN極またはS極がフランジ部74の該環状基台48に対面する表面に向けられる。
【0058】
ここで、環状基台48の強磁性体90a,90b,90c,90dと、フランジ部74の強磁性体80a,80b,80c,80dと、のいずれもが永久磁石としての性質を有さない強磁性体である場合、両者間に十分な強さの磁力は生じない。すなわち、切削ブレード44をブレードマウント70に磁力で装着できない。そこで、該両者のうち少なくとも一方は、永久磁石としての性質を有する強磁性体とするとよい。
【0059】
また、該両者がともに永久磁石としての性質を有する場合、該両者が互いに反発しないように、該両者は、S極とN極のうち異なる極を互いに向けあう態様で環状基台48及びフランジ部74にそれぞれ配設されなければならない。
【0060】
例えば、切削ブレード44の環状基台48に含まれる永久磁石としての性質を有する各強磁性体90a,90b,90c,90dは、N極側がフランジ部74に向く態様で環状基台48に配設される。このとき、ブレードマウント70のフランジ部74に含まれる永久磁石としての性質を有する各強磁性体80a,80b,80c,80dは、S極側が環状基台48に向く態様で環状基台48に配設される。
【0061】
また、環状基台48の内部で環状に並ぶ強磁性体90a,90b,90c,90dは、互いに隣接するもの同士でフランジ部74に向く極が逆でもよい。そして、フランジ部74の内部で環状に並ぶ強磁性体80a,80b,80c,80dは、互いに隣接するもの同士で環状基台48に向く極が逆でもよい。
【0062】
例えば、環状基台48に含まれる強磁性体90a,90cのN極をフランジ部74に向けるとともに、フランジ部74に含まれる強磁性体80a,80cのS極を環状基台48に向けておく。そして、環状基台48に含まれる強磁性体90b,90dのS極をフランジ部74に向けるとともに、フランジ部74に含まれる強磁性体80b,80dのN極を環状基台48に向けておく。この場合、磁界が強まり、切削ブレード44がブレードマウント70により強固に固定される。
【0063】
さらに、この場合、切削ブレード44をブレードマウント70から脱離させる際には、ブレードマウント70を固定しながら切削ブレード44だけをボス部72の周りに回転させるとよい。この場合、環状基台48の強磁性体90a,90b,90c,90dと、フランジ部74の強磁性体80a,80b,80c,80dと、は互いに同極を向け合うようになり、切削ブレード44とフランジ部74との間に反発力が生じる。
【0064】
以上に説明すると通り、切削ブレード44は、磁力により切削ブレード装着機構55を介して切削ユニット38に装着される。このとき、固定ナット等を使用する必要がない。そのため、いかなる作業者も、専用の治具を使用することなく固定作業を容易に実施できる。磁力による固定作業では、切削ブレード44が固定ナットに連れ回ることもないため、フランジ部74の接触面が荒れることもない。
【0065】
なお、フランジ部74には、強磁性体80a,80b,80c,80dに代えて電磁石が含まれてもよく、ブレードマウント70には該電磁石に電力を供給する電力供給路が設けられてもよい。この場合、切削ブレード装着機構55は、電磁石に供給される電力の供給源となる電源と、該電磁石のオンオフを切り替えるスイッチと、をさらに備える。次に、電磁石をフランジ部74に備える切削ブレード装着機構55について説明する。
【0066】
図6には、フランジ部74が電磁石80e,80fを含むブレードマウント70を模式的に示す断面図が含まれている。フランジ部74に含まれる電磁石80e,80fは、例えば、銅線等の材料を含む導電線が巻回されて形成されたコイルである。電磁石80e,80fは2つの端子を有し、それぞれの端子が電源に接続される。
【0067】
図5は、該ブレードマウント70を含む切削ブレード装着機構55を模式的に示す分解斜視図である。
図5に示す通り、切削ブレード装着機構55は、電源98と、スイッチ100と、を備える。電源98の一方の端子には配線68aの一端が接続され、該電源98の他方の端子には配線68bの一端が接続される。ここで、配線68a,68bには、銅等の芯と、該芯を覆う絶縁被膜と、を備える一般的な導電線を使用できる。スイッチ100は、配線68a,68bのいずれかと、電源98と、間に設けられる。
【0068】
配線68a,68bは、ロータリージョイント60の筒状の配線導入部68から内部に敷設されている。ロータリージョイント60のジョイント開口部64の内周面には、該内周面の全周にわたって2つの環状端子64a,64bが設けられている。2つの環状端子64a,64bは、互いに分離されて設けられている。例えば、配線68aの他端には環状端子64aが接続され、配線68bの他端には環状端子64bが接続される。該環状端子64bは、例えば、鉄、銅、銀、金等の導電材料により形成される。
【0069】
ここで、環状端子64a,64bがロータリージョイント60の本体から絶縁されるように、それぞれの環状端子64a,64bは樹脂やゴム等の絶縁部材に覆われている。そして、環状端子64a,64bは、該絶縁部材を介してロータリージョイント60のジョイント開口部64に設けられる。
【0070】
また、ブレードマウント70の後端部82の外周面86には、該後端部82がジョイント開口部64に収容されたときに2つの環状端子64a,64bと対面するそれぞれの位置に2つの環状端子84a,84bを備える。環状端子84a,84bは、ブレードマウント70の本体から絶縁されるように、樹脂やゴム等の絶縁部材に覆われている。そして、該絶縁部材を介してブレードマウント70の後端部82に設けられる。
【0071】
ここで、ジョイント開口部64に設けられた環状端子64a,64bは、
図6に示す通り、ジョイント開口部64の内周面から突出してもよい。この場合、環状端子64aは環状端子84aに接触して通電状態となりやすく、環状端子64bは環状端子84bに接触して通電状態となりやすい。なお、環状端子64a,64bに代えて環状端子84a,84bが後端部82の外周面86から突出していてもよい。
【0072】
すなわち、切削ブレード44をブレードマウント70に装着し、スピンドル54を回転させてブレードマウント70ごと切削ブレード44を回転させている間においても、環状端子64aと、環状端子84aと、の電気的な接続は維持される。同様に環状端子64bと、環状端子84bと、の電気的な接続は維持される。
【0073】
さらに、ブレードマウント70は、一端が環状端子84a,84bにそれぞれ接続された2つの配線84c,84dを内部に有する。2つの配線84c,84dには、配線68a,68bと同様に、絶縁被膜を有する配線を使用できる。そして、2つの配線84c,84dの他端は、電磁石80eにそれぞれ接続される。以上に説明する構成により、電源98から電磁石80eに電力を供給する回路が完成する。
【0074】
また、ブレードマウント70は、さらに、一端が環状端子84a,84bにそれぞれ接続された2つの配線84e,84fを内部に有する。そして、2つの配線84e,84fの他端は、電磁石80fにそれぞれ接続される。このように、ブレードマウント70のフランジ部74に設けられたすべての電磁石は、電源98に接続される。そして、スイッチ100のオンオフにより、各電磁石80への電力の供給の有無を切り替えられる。
【0075】
なお、ロータリージョイント60及びブレードマウント70の内部には、配線68a,68b,84c,84d,84e,84fを通すための通路を備えるが、
図6では、該通路を省略している。
【0076】
強磁性体90a,90b,90c,90dを備える切削ブレード44をブレードマウント70に固定する際には、まず、環状基台48の装着孔50にボス部72を挿通させ、フランジ部74の環状支持面76と、環状基台48と、を接触させる。次に、スイッチ100をオンにして各電磁石80e,80fに電力を供給して磁界を発生させる。
【0077】
すると、磁力により各電磁石80e,80fと、強磁性体90a,90b,90c,90dと、が引き合う。これにより、切削ブレード44が固定される。なお、切削ブレード44の固定を解除したい場合は、スイッチ100をオフ状態にすればよい。
【0078】
また、強磁性体90a,90b,90c,90dが永久磁石としての性質を有する場合、各電磁石80e,80fに電力を供給したときに両者が引き合うような磁力が生じるように、両者が設けられる際の向きに注意が必要である。また、この場合、切削ブレード44をブレードマウント70から離脱させる際には、各電磁石80e,80fに逆向きの磁界を生じさせるように、電源98の向きを変更することもできる。すると、環状基台48と、フランジ部74と、の間に反発力が生じて切削ブレード44の離脱が容易となる。
【0079】
なお、電磁石は、フランジ部74ではなく切削ブレード44の環状基台48に設けられてもよい。次に、環状基台48の内部に強磁性体90a,90b,90c,90dに代えて電磁石を備える切削ブレード44と、該電磁石に電力を供給できる機構を備える切削ブレード装着機構55について説明する。
図6は、電磁石92a,92cを環状基台48の内部に備える切削ブレード44と、該電磁石92a,92cに電力を供給できる切削ブレード装着機構55と、を模式的に示す断面図である。
【0080】
図7は、該切削ブレード装着機構55を模式的に示す分解斜視図である。
図7に示す通り、切削ブレード装着機構55は、電源98と、スイッチ100と、を備える。電磁石92a,92cは、上述の電磁石80e,80fと同様に構成される。また、電源98と、スイッチ100と、配線68a,68bと、ロータリージョイント60のジョイント開口部64に設けられる環状端子64a,64bと、については、
図5及び
図6を用いて既に説明した通りであるから重複する説明を省略する。
【0081】
図7に示す通り、ブレードマウント70の後端部82の外周面86には、該後端部82がジョイント開口部64に収容されたときに2つの環状端子64a,64bと対面する位置に、2つの端子104a,104bが設けられる。上述の環状端子84a,84bに代えて点状に配設された2つの端子104a,104bが該外周面86に設けられている場合においても、2つの端子104a,104bはブレードマウント70の回転時に常に環状端子64a,64bに電気的に接続される。
【0082】
なお、端子104a,104bは、ブレードマウント70の本体から絶縁されるように、樹脂やゴム等の絶縁部材に覆われている。そして、該絶縁部材を介してブレードマウント70の後端部82に設けられる。そして、ブレードマウント70は、一端が端子104a,104bにそれぞれ接続された2つの配線84g,84hを内部に有する。
【0083】
また、ブレードマウント70のボス部72の外周面78には、2つの端子78a,78bが設けられている。そして、2つの配線84g,84hの他端は、それぞれ、2つの端子78a,78bに接続されている。
【0084】
図8に示す切削ブレード44は、上述の強磁性体90a,90b,90c,90dに代えて環状基台48の内部に電磁石92a,92cを備える。環状基台48の装着孔50の内周面には、ボス部72の外周面78に設けられた2つの端子78a,78bに対応する位置に端子50a,50bが設けられる。
【0085】
なお、端子104a,104bと同様に、端子78a,78bもブレードマウント70と電気的に絶縁させるために絶縁部材により覆われていてもよく、端子50a,50bも環状基台48の本体と電気的に絶縁させるために絶縁部材に覆われていてもよい。そして、環状基台48の内部には、一端が端子50aに接続され他端が電磁石92aに接続された配線102aと、一端が端子50bに接続され他端が電磁石92aに接続された配線102bと、が設けられる。
【0086】
切削ブレード44をブレードマウント70に装着する際には、装着孔50にボス部72を挿通して環状基台48をフランジ部74の環状支持面76に接触させる。このとき、端子50aと、端子78aと、が接触すると同時に端子50bと、端子78bと、が接触するように、切削ブレード44の向きを調整する。すると、電源98から電磁石92aに電力を供給する回路が完成する。
【0087】
また、環状基台48の内部には、装着孔50を取り囲む2つの環状の導電部50c,50dが設けられてもよく、2つの端子50a,50bは、該導電部50c,50dにそれぞれ接続されてもよい。そして、環状基台48に設けられた各電磁石92a,92cは、2つの導電部50c,50dを介して2つの端子50a,50bに電気的に接続されてもよい。
【0088】
例えば、環状基台48の内部には、一端が導電部50cに接続され他端が電磁石92cに接続された配線102cと、一端が導電部50dに接続され他端が電磁石92cに接続された配線102dと、が設けられる。このように、
図7及び
図8に示した切削ブレード44及び切削ブレード装着機構55では、電源98からすべての電磁石92a,92cへ電力を供給する回路が形成される。そして、スイッチ100のオンオフを切り替えることにより、切削ブレード44の着脱を実施できる。
【0089】
ここで、強磁性体または電磁石を環状基台48またはフランジ部74に設ける方法について説明する。切削ブレード44に強磁性体90a,90b,90c,90dまたは電磁石92a,92cを設ける場合、例えば、環状基台48の表面または裏面側から所定の設置位置に達する凹部を形成する。そして、凹部の底部に設置の対象物を配設し、該凹部を樹脂部材等の埋め戻し部材で埋める。
【0090】
また、切削ブレード装着機構55に強磁性体80a,80b,80c,80dまたは電磁石80e,80fを設ける場合、フランジ部74の凹部74bの底面から所定の設置位置に達する凹部を形成する。そして、凹部の底部に設置の対象物を配設し、該凹部を樹脂部材等の埋め戻し部材で埋めるとよい。
【0091】
なお、切削ブレード44と、フランジ部74と、の間に働く磁力を妨げないように、環状基台48及びブレードマウント70には、例えば、アルミニウム等の非磁性体を使用するとよい。
【0092】
以上に説明する通り、本実施形態に係る切削ブレード44及び切削ブレード装着機構55では、環状基台48及びフランジ部74の間に働く磁力により切削ブレード44の固定が実現される。そのため、専用の治具を使用することなく切削ブレード44の固定作業を容易に実施できる。
【0093】
さらに、本実施形態に係る切削ブレード44及び切削ブレード装着機構55について、他の表現により説明する。該切削ブレード44は永久磁石や電磁石等の磁界の発生源を有し、該切削ブレード装着機構55のブレードマウント70は強磁性体や電磁石等の該磁界を受ける物体を有する。若しくは、該ブレードマウント70は磁界の発生源を有し、該切削ブレード44は該磁界を受ける物体を有する。
【0094】
例えば、永久磁石としての性質を有する第1の強磁性体と、第1の電磁石と、のいずれかを含む切削ブレード44の装着に使用される切削ブレード装着機構55のブレードマウント70は、フランジ部74に第2の強磁性体と、第2の電磁石と、のいずれかを含む。該第2の強磁性体は、例えば、永久磁石としての性質を有してもよい。この場合、切削ブレード44が磁界の発生源を有し、ブレードマウント70が該磁界を受ける物体を有するといえる。
【0095】
また、例えば、永久磁石としての性質を有さない第1の強磁性体を含む切削ブレード44の装着に使用される切削ブレード装着機構55のブレードマウント70は、フランジ部74に永久磁石としての性質を有する第2の強磁性体と、電磁石と、のいずれかを含む。この場合、ブレードマウント70が磁界の発生源を有し、切削ブレード44が該磁界を受ける物体を有するといえる。
【0096】
そして、いずれの場合においても、環状基台48と、フランジ部74と、の間に働く磁力によりブレードマウント70に切削ブレード44を装着できる。
【0097】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。上述の実施形態では、切削ブレード44の環状基台48と、切削ブレード装着機構55のブレードマウント70のフランジ部74と、の一方に強誘電体に代えて電磁石が設けられる場合について説明した。しかしながら、本発明の一態様はこれに限定されない。すなわち、環状基台48と、フランジ部74と、の両方に電磁石が設けられてもよい。
【0098】
また、上述の実施形態では、各電磁石に電力を供給する電源98がロータリージョイント60を介して各電磁石に電気的に接続される場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。例えば、各電磁石には、スピンドル54を介して電源98が電気的に接続されてもよい。すなわち、スピンドル54の外周面54aには、2つの端子が設けられてもよく、ブレードマウント70のスピンドル装着穴70aの内周面には、該2つの端子に対応する位置に別の2つの端子が設けられてもよい。
【0099】
さらに、上述の実施形態では、ブレードマウント70のボス部72が円筒状に突き出ており、切削ブレード44の装着孔50が該ボス部72に突き通される場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。すなわち、ボス部72の外周面78には、ボス部72の伸長方向に沿った形状の突起部または溝部が形成されてもよく、装着孔50の内周面には、ボス部72の外周面78の形状に対応する溝部または突起部が形成されてもよい。
【0100】
この場合、ボス部72の外周面78と、切削ブレード44の装着孔50の内周面と、が噛み合う。そのため、ブレードマウント70に固定された切削ブレード44に回転方向に向いた力がかかるときに、ボス部72に対する切削ブレード44の該回転方向への滑りが防止される。
【0101】
切削装置2において、チャックテーブル14で吸引保持された被加工物を切削ブレード44で切削する際、切削ブレード44は該回転方向に向いた反力を該被加工物から受ける。このとき、フランジ部74と、環状基台48と、の間に生じる摩擦力により切削ブレード44の滑りが抑制される。その上、ボス部72と、環状基台48と、が噛み合っていると、滑りがより強く抑制される。
【0102】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0103】
2 切削装置
4 基台
4a,4b 開口
6 カセット支持台
8 カセット
10 テーブルカバー
12 防塵防滴カバー
14 チャックテーブル
14a 保持面
14b クランプ
16 支持構造
18 腕部
20 割り出し送りユニット
22,30 ガイドレール
24,32 移動プレート
26,34 ボールネジ
28 昇降ユニット
36 パルスモータ
38 切削ユニット
40 撮像ユニット
42 洗浄ユニット
42a スピンナテーブル
42b 噴射ノズル
44 切削ブレード
46 スピンドルハウジング
48 環状基台
50 装着孔
50a,50b 端子
50c,50d 導電部
52 切刃
54 スピンドル
54a 外周面
55 切削ブレード装着機構
56 ねじ穴
58 ボルト固定穴
60 ロータリージョイント
62 貫通孔
62a ボルト
64 ジョイント開口部
64a,64b 環状端子
66 ブレードマウント収容体
68 配線導入部
68a,68b 配線
70 ブレードマウント
70a スピンドル装着穴
72 ボス部
74 フランジ部
74b 凹部
76 環状支持面
78 外周面
78a,78b 端子
80a,80b,80c,80d 強磁性体
80e,80f 電磁石
82 後端部
84a,84b 環状端子
84c,84d,84e,84f,84g,84h 配線
86 外周面
88 ボルト収容穴
90a,90b,90c,90d 強磁性体
92a,92c 電磁石
94 ワッシャー
96 固定ボルト
98 電源
100 スイッチ
102a,102b,102c,102d 配線
104a,104b 端子