(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20240430BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240430BHJP
【FI】
A23D9/00 504
A23L27/00 C
(21)【出願番号】P 2019208259
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】豊口 柚実子
(72)【発明者】
【氏名】亀谷 剛
(72)【発明者】
【氏名】田木 正樹
(72)【発明者】
【氏名】長澤 奈津恵
(72)【発明者】
【氏名】松原 順一
(72)【発明者】
【氏名】長濱 晋也
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】Koshin Sesame Chili Oil (Mintel GNPD ID#5692195),2018年,pp.1-2,retrieved on 2023.11.20, retrieved from the internet,https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/5692195/from_search/Nhjrfief4J/?page=1
【文献】九鬼 香辛胡麻辣油 45g,2011年,pp.1-6,retrieved on 2023.11.20, retrieved from the internet,https://www.amazon.co.jp/%E4%B9%9D%E9%AC%BC-%E9%A6%99%E8%BE%9B%E8%83%A1%E9%BA%BB%E8%BE%A3%E6%B2%B9-45g/dp/B005EOZL06
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 9/00-9/06
A23L 27/00-27/60
Mintel GNPD
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎ごま油を含むごま油を50質量%以上含み、さらに
フレーバー、唐辛子油及び中華風味油を配合した油脂組成物であって、
前記フレーバーが前記油脂組成物の8質量%以上、前記唐辛子油が前記油脂組成物の5質量%以上30質量%以下、前記中華風味油が前記油脂組成物の0.1質量%以上20質量%以下となるように配合した、油脂組成物。
【請求項2】
前記フレーバーは、ハーブ、スパイス、ガーリック、ねぎ、オニオン、バター、クリーム、オレンジ、レモンからなる群から選ばれる1種または2種以上の香料に由来するものであることを特徴とする、請求項1に記載の油脂組成物。
【請求項3】
焙煎ごま油を含むごま油を50質量%以上含み、さらにオニオンのフレーバー、唐辛子油及び中華風味油を配合した油脂組成物であって、前記唐辛子油が前記油脂組成物の5質量%以上30質量%以下、前記中華風味油が前記油脂組成物の0.1質量%以上20質量%以下となるように配合した、油脂組成物。
【請求項4】
前記焙煎ごま油を含むごま油として、焙煎ごま油のみが用いられることを特徴とする、請求項1
~3のいずれか1項に記載の油脂組成物。
【請求項5】
前記中華風味油には、豆板醤、甜麺醤、芝麻醤、豆鼓醤、花椒、山椒、八角、及び桂皮からなる群から選ばれる1種または2種以上の中華調味料に由来する風味が付与されていることを特徴とする、請求項1
~4のいずれか1項に記載の油脂組成物。
【請求項6】
さらに、
オニオン以外のフレーバーが配合されることを特徴とする、請求項
3~
5のいずれか1項に記載の油脂組成物。
【請求項7】
前記
オニオン以外のフレーバーは、ハーブ、スパイス、ガーリック、ねぎ
、バター、クリーム、オレンジ、レモンからなる群から選ばれる1種または2種以上の香料に由来するものであることを特徴とする、請求項
6に記載の油脂組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の油脂組成物を含む、食品。
【請求項9】
前記食品が、炒め物、焼き物、煮物、鍋物、和え物、麺類、冷奴、スープ、ドレッシングであることを特徴とする、請求項
8に記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品に関するものであり、特に、焙煎ごま油を含むごま油に唐辛子油と中華風味油をブレンドすることで、焙煎ごま油の風味を維持しつつ、調理後にも風味や香りがより持続し、総合的な(調理品全体の)美味しさや旨味を増強することのできる、焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食用油には、様々な種類の油があるが、例えば、風味を付ける為に焙煎した焙煎油と、風味のほとんどない精製油とがある。焙煎油としては、焙煎ごま油がよく知られており、このほか、一部業務用として、焙煎菜種油が特に油揚げ用などに使用されている。
【0003】
ここで、焙煎油は製造コストが比較的高く、商品価格が高めになってしまうことから、焙煎ごま油に精製油を加えた「調合ごま油」がよく知られている。しかし、「調合ごま油」の風味を維持することが難しかったため、例えば、焙煎ごま油が65~70質量%になるように焙煎ごま油及び菜種油を配合し、トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み、かつ、脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み、一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下とする技術が知られている(特許文献1)。
このように、焙煎ごま油の持つ風味を維持する技術は知られている。しかし、その一方で、焙煎ごま油はごま油特有の風味を調理品に付与することができるものの、素材のそのものの美味しさや旨味と被ってしまい、焙煎ごま油を用いた食品の本来の風味や香りを損なうことがあるという問題があった。そこで、調理後にも風味や香りがより持続し、総合的な(調理品全体の)美味しさや旨味を増強できる、新しい「焙煎ごま油配合油」が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、焙煎ごま油に唐辛子油と中華風味油をブレンドすることで、焙煎ごま油の風味を維持しつつ、調理後にも風味や香りがより持続し、総合的な(調理品全体の)美味しさや旨味を増強することのできる、焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、焙煎ごま油に様々な油脂を配合した油脂組成物について、鋭意検討した結果、焙煎ごま油を含むごま油が50質量%以上となるように配合し、これに唐辛子油と中華風味油を所定量配合すると、調理後にも風味や香りがより持続し、総合的な(調理品全体の)美味しさや旨味が増強されることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を含み得る。
〔1〕焙煎ごま油を含むごま油を50質量%以上含み、さらに唐辛子油及び中華風味油を配合した油脂組成物であって、前記唐辛子油が前記油脂組成物の5質量%以上30質量%以下、前記中華風味油が前記油脂組成物の0.1質量%以上20質量%以下となるように配合した油脂組成物。
〔2〕前記焙煎ごま油を含むごま油として、焙煎ごま油のみが用いられることを特徴とする、〔1〕に記載の油脂組成物。
〔3〕前記中華風味油には、豆板醤、甜麺醤、芝麻醤、花椒、山椒、八角、及び桂皮からなる群から選ばれる1種または2種以上の中華調味料に由来する風味が付与されていることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の油脂組成物。
〔4〕さらに、フレーバーを配合することを特徴とする、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の油脂組成物。
〔5〕前記フレーバーは、ハーブ、スパイス、ガーリック、ねぎ、オニオン、バター、クリーム、オレンジ、レモンからなる群から選ばれる1種または2種以上の香料に由来するものであることを特徴とする、〔4〕に記載の油脂組成物。
〔6〕〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の油脂組成物を含む、食品。
〔7〕前記食品が、炒め物、焼き物、煮物、鍋物、和え物、麺類、冷奴、スープ、ドレッシングであることを特徴とする、〔6〕に記載の食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、焙煎ごま油を含むごま油に唐辛子油と中華風味油をブレンドすることで、焙煎ごま油の風味を維持しつつ、調理後にも、焙煎ごま油の風味や香りだけでなく、調理品全体の風味や香りがより持続し、総合的な(調理品全体の)美味しさや旨味を増強することのできる、焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1と比較例1に対してTI法を実施した際のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔本発明に係る焙煎ごま油配合油脂組成物〕
本発明に係る「焙煎ごま油配合油脂組成物」は、焙煎ごま油を含むごま油が50質量%以上となるように配合し、これに唐辛子油を前記油脂組成物の5質量%以上30質量%以下、中華風味油を前記油脂組成物の0.1質量%以上20質量%以下となるように配合する。
【0011】
(焙煎ごま油を含むごま油)
本発明の焙煎ごま油配合油脂組成物に配合される焙煎ごま油を含むごま油は、特に限定されるものではなく、公知の方法により製造された焙煎ごま油を含むごま油を用いることができる。市販の焙煎ごま油を用いても良い。また、前記焙煎ごま油を含むごま油としては、焙煎ごま油のみからなるものが最も好ましく、焙煎ごま油を50質量%以上含むごま油が好ましい。ここで、純正ごま油とは、他の食用油脂を加えない、100%ごま油であるものをいう。通常、純正ごま油は、焙煎ごま油と精製ごま油とのブレンドであることが多く、本発明においても、純正ごま油を用いることが好ましい。
【0012】
一般的な製造工程としては、例えば、原料種子を選別した後、焙煎し、その後、圧搾、ろ過、静置、(ろ過及び静置の繰り返し)、仕上げろ過の工程を経る。焙煎は公知の種々の方法により行なうことができる。
【0013】
本発明の焙煎ごま油配合油脂組成物を100質量%とした場合、焙煎ごま油を含むごま油は、50質量%以上となるように配合される。50質量%以上90質量%以下配合されることが好ましい。より好ましくは、50質量%以上80質量%以下であり、さらに好ましくは、55質量%以上70質量%以下である。
【0014】
(唐辛子油)
本発明の焙煎ごま油配合油脂組成物に配合される唐辛子油は、唐辛子類(例えば、赤唐辛子や一味唐辛子等)に由来する風味が付与された食用油脂のことをいう。また、前記食用油脂としては、任意のものを利用することができ、例えば、大豆油、大豆胚芽油、菜種油、コーン油、ゴマ油、ゴマサラダ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米糠油、小麦胚芽油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、藻類油等を挙げることができる。
【0015】
これらの唐辛子類に由来する風味が付与された食用油脂は、市販のものを利用することができる。いわゆる市販のラー油はこの唐辛子油に含まれる。また、自分で製造することもできる。例えば、唐辛子類に由来する風味が付与された食用油脂の製造方法としては、通常の香味油の製造方法を挙げることができる。例えば、フライパンに食用油脂を注ぎ、唐辛子類を入れて火にかけ、数時間程度煮出した後、網を使って、唐辛子類を取り除くことで、唐辛子油を製造することができる。
【0016】
本発明の焙煎ごま油配合油脂組成物を100質量%とした場合、唐辛子油は5質量%以上30質量%以下となるように配合される。7質量%以上20質量%以下配合されることが好ましい。より好ましくは、8質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは、9質量%以上12質量%以下である。なお、唐辛子類に由来する風味が、唐辛子油の種類によって異なる場合は、市販のラー油を基準にして配合量を調節することができる。
【0017】
(中華風味油)
本発明の焙煎ごま油配合油脂組成物に配合される中華風味油は、中華調味料に由来する風味が付与された食用油脂のことをいう。前記中華調味料としては、豆板醤、甜麺醤、芝麻醤、豆鼓醤、XO醤、沙茶醤、海鮮醤などの中華醤を挙げることができる。また、花椒、山椒、草果、三奈、茴香、甘草、白コウ、梔枝、八角、桂皮、丁香、陳皮、砂仁、香叶、杜仲、朝天辣椒、五香粉などの中華香辛料を挙げることができる。特に、豆板醤、甜麺醤、芝麻醤、豆鼓醤、花椒、山椒、八角、及び桂皮からなる群から選ばれる1種または2種以上の中華調味料を用いることが好ましい。さらに、甜麺醤、豆鼓醤、及び花椒からなる群から選ばれる1種または2種以上の中華調味料を用いることがより好ましい。ここで、前記中華調味料として、唐辛子類は除かれる。すなわち、前記中華風味油に、唐辛子油(ラー油)は含まれない。また、なお、前記食用油脂としては、上述した食用油脂を用いることができる。
【0018】
これらの中華調味料の風味が付与された食用油脂は、市販のものを利用することができる。また、自分で製造することもできる。例えば、中華調味料の風味が付与された食用油脂の製造方法としては、上述した通常の香味油の製造方法を挙げることができる。例えば、フライパンに食用油脂を注ぎ、中華調味料を入れて火にかけ、数時間程度煮出した後、網を使って、中華調味料を取り除くことで、中華風味油を製造することができる。中華風味油は、これまで中華料理の風味付けに主に利用されてきたが、唐辛子油とともに、これを少量加えると、焙煎ごま油の風味を維持しつつ、調理後にも風味や香りがより持続し、総合的な(調理品全体の)美味しさや旨味を増強できることは、本発明で初めて見出された特徴である。
【0019】
本発明の焙煎ごま油配合油脂組成物を100質量%とした場合、中華風味油は0.1質量%以上20質量%以下となるように配合される。0.1質量%以上10質量%以下配合されることが好ましい。より好ましくは、0.1質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは、0.1質量%以上1質量%以下である。なお、中華調味料に由来する風味が、中華風味油の種類によって異なる場合は、市販の中華風味油を基準にして配合量を調節することができる。
【0020】
(フレーバー)
本発明の焙煎ごま油配合油脂組成物に配合されるフレーバーは、香料のことをいう。前記香料としては、天然香料や合成香料を挙げることができ、より具体的には、例えば、ハーブやスパイスなどの香辛料、ガーリック、ねぎ、オニオンなどの野菜類、バター、クリームなどの乳脂類、オレンジやレモンなどの柑橘類等を挙げることができる。これらをロースト(焙煎)したもの、燻製したもの、あるいはフライしたものも前記香料に含まれる。また、これら香料に由来する風味が付与された食用油脂(フレーバーオイル)も前記香料に含まれる。但し、上述した中華調味料に当たるものは、本発明の香料からは除かれる(但し、唐辛子類は、香料に含まれることがあるが、唐辛子油との混同を避けるため、唐辛子類のフレーバーオイルの形態は香料から除かれる。)。本発明のフレーバーとしては、特に、ハーブ、スパイス、ガーリック、ねぎ、オニオン、バター、クリーム、オレンジ、レモンからなる群から選ばれる1種または2種以上の香料に由来するものを用いることが好ましい。ここで、前記「由来するもの」とは、前記香料だけではなく、同香料をロースト(焙煎)したもの、燻製したもの、あるいはフライしたもの、あるいは、これら香料に由来する風味が付与された食用油脂のことを指す。その他、市販されているフレーバーオイルとして、アルモンド油、バーチ油、キヤラウエー油、カルダモン油、キヤロツト油、カシア油、シナモン油、グローブ油、コニヤツク油、クミン油、ガーリック油、ジンジヤー油、レモン油、ライム油、ミント油、オレンジ油、セイジ油、サイム油等も挙げられる。また、前記食用油脂としては、中華風味油と同様のものを使用することができる。
【0021】
本発明の焙煎ごま油配合油脂組成物を100質量%とした場合、フレーバーは8質量%以上50質量%以下で配合されることが好ましい。より好ましくは、10質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましくは、10質量%以上35質量%以下である。なお、フレーバーに由来する風味が、フレーバーの種類によって異なる場合、市販されているものを基準にして配合量を調節することができる。
【0022】
(その他の成分)
本発明の焙煎ごま油配合油脂組成物の中には、本発明の効果を損ねない程度に、その他の成分を加えることができる。その他の成分とは、例えば、一般的な油脂に用いられる成分(食品添加物など)である。これらの成分としては、例えば、酸化防止剤、乳化剤、シリコーンオイル、結晶調整剤、食感改良剤等が挙げられ、脱臭後から充填前に添加されることが好ましい。なお、本発明の焙煎ごま油配合油脂組成物において、その他の成分は、0.01質量%以上5質量%以下配合されることが好ましい。
【0023】
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、アスコルビン酸類、フラボン誘導体、コウジ酸、没食子酸誘導体、カテキンおよびそのエステル、フキ酸、ゴシポール、セサモール、テルペン類等が挙げられる。
【0024】
乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、モノグリセリド、ジグリセリド、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。一部の乳化剤を含有させることでフライ適性、結晶抑制を向上させることができる。乳化剤の添加量は、乳化剤全体として2質量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.01質量%以上1質量%以下である。
【0025】
シリコーンオイルとしては、食品用途で市販されているものを用いることができ、特に限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサン構造を持ち、動粘度が25℃で800~5000mm2/sのものが挙げられる。シリコーンオイルの動粘度は、特に800~2000mm2/s、さらに900~1100mm2/sであることが好ましい。ここで、「動粘度」とは、JIS K 2283(2000)に準拠して測定される値を指すものとする。シリコーンオイルは、シリコーンオイル以外に微粒子シリカを含んでいてもよい。
【0026】
〔本発明に係る焙煎ごま油配合油脂組成物の製造方法〕
本発明に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は、通常の配合方法により、製造することができる。前記配合方法においては、均質な油脂組成物が得られる限り公知のいかなる混合手段を用いてもよいが、例えば、パドルミキサー、アジホモミキサー、ディスパーミキサー等を用いて行うことができる。
【0027】
〔本発明に係る食品〕
本発明に係る食品は、上記の焙煎ごま油配合油脂組成物を用いて製造した、それを含む食品である。
【0028】
かかる食品としては、例えば、チャーハン等の炒め物、焼き魚等の焼き物、大根煮等の煮物、キムチ鍋等の鍋物、ほうれん草のナムル等の和え物、麺類、冷奴、スープ、ドレッシングが挙げられる。特に、炒め物、焼き物、煮物、鍋物、和え物、麺類、冷奴、スープ、ドレッシングであることが好ましい。これらの調理は、公知の一般的な方法により行なうことができる。
【0029】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
焙煎ごま油を含むごま油(日清オイリオグループ株式会社製)と、唐辛子油(長谷川香料株式会社製)、花椒オイル(和弘食品株式会社製)、さらに、ガーリックオイル(長谷川香料株式会社製)、ローストオニオンオイル(高砂香料株式会社製)を表1に記載の配合割合で混合し、焙煎ごま油配合油脂組成物を調合した(実施例1)。また、比較例として表1に記載の比較例1(実施例1から中華風味油を除いた油脂組成物)を用意した。
【0031】
【0032】
〔生風味の評価〕
以下の方法により、実施例1及び比較例1について風味の評価を行なった。評価結果を表2に示す。
【0033】
<生風味の評価方法>
実施例1で調合した焙煎ごま油配合油脂組成物と、比較例1の油脂組成物の生風味を評価した。風味の評価は、5名のパネルで5段階の風味総合評価を行なった。
○風味の評価基準
5:焙煎ごま油の風味に優れている
4:焙煎ごま油の風味にやや優れている
3:普通
2:焙煎ごま油の風味がやや劣っている
1:焙煎ごま油の風味が劣っている
【0034】
【0035】
〔調理品の風味評価〕
表1の実施例1の焙煎ごま油配合油脂組成物と比較例1の油脂組成物を絹豆腐にかけ、その冷奴の風味を評価した。風味の評価は、5名のパネルで、味や香りなどの知覚される感覚強度の時系列的変化を記述する方法(TI法(Time Intensity))で、風味の総合評価を行なった。
〔冷奴の調理法〕
軽く水を切った絹豆腐を3×1.5×1.5cmにカットし、実施例1及び比較例1の油脂組成物を0.8gのせた。
【0036】
<官能評価方法>
実施例1、比較例1について、辛みの評価項目について知覚される感覚強度の時系列的変化を記述する方法(TI法(Time Intensity))で、風味の総合評価を行なった。
【0037】
使用したTI法による官能検査は、個人差を最小限にした統計的な信頼性を有する客観的評価法である。評価者5名は、トレーニングされた専門パネルである。得られた風味に関する数値データを表3、グラフを
図1に示す。ここで、強度の数値が大きいほど、風味が強いことを表す。
【0038】
【0039】
表3及び
図1より、本発明に係る、実施例1の焙煎ごま油配合油脂組成物をかけた絹豆腐は、比較例1の油脂組成物をかけた絹豆腐に比べて、調理品に辛みが付与され、その強度が強いだけでなく、その持続性も高いことがわかった。したがって、実施例1の焙煎ごま油配合油脂組成物は、調理後にも風味や香りがより持続する、「焙煎ごま油配合油」であるといえる。
また、実施例1の焙煎ごま油配合油脂組成物をかけた絹豆腐は、比較例1の油脂組成物をかけた絹豆腐に比べて、好ましい風味(辛み)を有した絹豆腐へと変わることがわかった。したがって、実施例1の焙煎ごま油配合油脂組成物は、総合的な(調理品全体の)美味しさや旨味を増強することのできる、「焙煎ごま油配合油」であるともいえる。