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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】尿ハネ抑制用ゲル状組成物
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/00 20060101AFI20240430BHJP
   A47K 17/00 20060101ALI20240430BHJP
   E03D 11/02 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
E03D9/00 F
A47K17/00
E03D11/02 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019237627
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021105304
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】高▲瀬▼ 瞳
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-125088(JP,A)
【文献】特開2011-012410(JP,A)
【文献】特開2017-186861(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104328829(CN,A)
【文献】特開2015-193983(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064070(WO,A1)
【文献】特開昭63-312385(JP,A)
【文献】実開平02-047273(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0144711(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-13/00
A47K 13/00-17/02
A01K 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レオメーターを用いて、試料台速度60mm/分、直径10mmの円板状の感圧軸、測定温度25℃の条件で測定されるゲル強度が240gf/mm2以下であり、便器のボウル面に付着させて使用される、尿ハネ抑制用ゲル状組成物。
【請求項2】
ポリオキシアルキレンブロックポリマーを含む、請求項1に記載の尿ハネ抑制用ゲル状組成物。
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレンブロックポリマーは、下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンブロックポリマーである、請求項2に記載の尿ハネ抑制用ゲル状組成物。
【化1】
(一般式(1)中、j、k、l、m、及びnは、それぞれ付加モル数を示す。j+nは1以上であり、kは0以上であり、lは1以上であり、mは0以上である。A 1 Oは、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを示す。A 2 Oは、炭素数は2~4であって、A 1 Oとは異なる炭素数のアルキレンオキサイドを示す。A 3 Oは、炭素数は2~4であって、A 2 Oとは異なる炭素数のアルキレンオキサイドを示す。A 1 O、A 2 O及びA 3 Oの少なくとも1つは、エチレンオキサイドである。)
【請求項4】
前記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンブロックポリマーの分子量は、4600~20000である、請求項3に記載の尿ハネ抑制用ゲル状組成物。
【請求項5】
更にポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む、請求項2~4のいずれかに記載の尿ハネ抑制用ゲル状組成物。
【請求項6】
洋式便器にて着座姿勢で排尿する際の尿ハネ抑制のために使用される、請求項1~のいずれかに記載の尿ハネ抑制用ゲル状組成物。
【請求項7】
便器のボウル面の排尿された尿が直接当たる部位に、レオメーターを用いて、試料台速度60mm/分、直径10mmの円板状の感圧軸、測定温度25℃の条件で測定されるゲル強度が240gf/mm2以下であるゲル状組成物を付着させる、尿ハネ抑制方法。
【請求項8】
前記ゲル状組成物は、ポリオキシアルキレンブロックポリマーを含む、請求項7に記載の尿ハネ抑制方法。
【請求項9】
前記ポリオキシアルキレンブロックポリマーは、下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンブロックポリマーである、請求項8に記載の尿ハネ抑制方法。
【化2】
(一般式(1)中、j、k、l、m、及びnは、それぞれ付加モル数を示す。j+nは1以上であり、kは0以上であり、lは1以上であり、mは0以上である。A 1 Oは、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを示す。A 2 Oは、炭素数は2~4であって、A 1 Oとは異なる炭素数のアルキレンオキサイドを示す。A 3 Oは、炭素数は2~4であって、A 2 Oとは異なる炭素数のアルキレンオキサイドを示す。A 1 O、A 2 O及びA 3 Oの少なくとも1つは、エチレンオキサイドである。)
【請求項10】
前記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンブロックポリマーの分子量は、4600~20000である、請求項9に記載の尿ハネ抑制方法。
【請求項11】
前記ゲル状組成物は、更にポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む、請求項8~10のいずれかに記載の尿ハネ抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器のボウル面に付着させて使用され、排尿時に便器のボウル面で生じる尿ハネを抑制できる尿ハネ抑制用ゲル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
男性が直立姿勢で洋式便器に排尿する際に、尿ハネが生じ、便器のボウルの周縁部やボウル外に尿が飛散することがあり、衛生上の問題になっている。また、男女問わず、着座姿勢で洋式便器に排尿する際にも、便器のボウル面で生じる尿ハネにより、便座の裏側等に尿が飛散することがあり、同じく衛生上の問題になっている。
【0003】
従来、尿ハネ対策として、様々な手法が提案されている。例えば、特許文献1には、便器のボウルの上部周縁にボードを置いて、便器のボウルに壁を作ることにより、尿ハネにより尿が便器外に飛散することを抑制できることが報告されている。また、便器のボウルの上部周縁に不織布等シートを配することにより、飛散した尿を吸収する手法も提案されている。しかしながら、これらの手法では、尿ハネ自体を抑制するのではなく、尿ハネにより飛散した尿に対する対処法であるため、使用後に尿が付着又は吸収した部材を廃棄又は洗浄する必要があり、依然として衛生上の問題がある。
【0004】
また、特許文献2及び3には、便器のボウル内の水たまりを泡で覆うことにより、便器のボウル内の水たまりで生じる尿ハネを抑制できることが報告されている。しかしながら、特許文献2及び3の手法では、便器のボウル面に尿が当たった際に生じる尿ハネは抑制できないため、着座姿勢で洋式便器に排尿する際の尿ハネ対策にはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-190256号公報
【文献】国際公開第2019/138450号
【文献】特開2015-52257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、排尿時に便器のボウル面で生じる尿ハネを抑制できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、レオメーターを用いて、試料台速度60mm/分、直径10mmの円板状の感圧軸、測定温度25℃の条件で測定されるゲル強度が240gf/mm2以下のゲル状組成物を、便器のボウル面の尿が直接当たる部位に配置することにより、便器のボウル面で生じる尿ハネを抑制できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. レオメーターを用いて、試料台速度60mm/分、直径10mmの円板状の感圧軸、測定温度25℃の条件で測定されるゲル強度が240gf/mm2以下であり、便器のボウル面に付着させて使用される、尿ハネ抑制用ゲル状組成物。
項2. ポリオキシアルキレンブロックポリマーを含む、項1に記載の尿ハネ抑制用ゲル状組成物。
項3. 更にポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む、項2に記載の尿ハネ抑制用ゲル状組成物。
項4. 洋式便器にて着座姿勢で排尿する際の尿ハネ抑制のために使用される、項1~3のいずれか記載の尿ハネ抑制用ゲル状組成物。
項5. 便器のボウル面の排尿された尿が直接当たる部位に、レオメーターを用いて、試料台速度60mm/分、直径10mmの円板状の感圧軸、測定温度25℃の条件で測定されるゲル強度が240gf/mm2以下であるゲル状組成物を付着させる、尿ハネ抑制方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、直立又は着座の姿勢で排尿する際に、便器のボウル面で生じる尿ハネを抑制できるので、便器及びその周辺を衛生的な状態で維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物を付着させる便器のボウル面の部位(着座姿勢の場合はAの領域、直立姿勢の場合はA及び/又はBの領域)を示した図である。
図2】試験例1において、尿ハネ抑制効果の評価した際の試験概要の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.尿ハネ抑制用ゲル状組成物
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物は、レオメーターを用いて、試料台速度60mm/分、直径10mmの円板状の感圧軸、測定温度25℃の条件で測定されるゲル強度が240gf/mm2以下であり、便器のボウル面に付着させて使用されることを特徴とする。以下、本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物について詳述する。
【0012】
[ゲル強度]
本発明では、尿ハネ抑制用部材として、レオメーターを用いて、試料台速度60mm/分、直径10mmの円板状の感圧軸、測定温度25℃の条件で測定されるゲル強度が240gf/mm2以下であるゲル状組成物(尿ハネ抑制用ゲル状組成物)を使用する。このようなゲル強度を有するゲル状組成物を便器のボウル面の尿が当たる部位に配置することにより、排尿された尿が当該ゲル状組成物に当たった際の衝撃(跳ね返る反発力)を吸収し、尿ハネを効果的に抑制することが可能になる。尿ハネをより一層効果的に抑制させるという観点から、25℃でのゲル強度として、好ましくは210gf/mm2以下、より好ましくは50~210gf/mm2、更に好ましくは80~210gf/mm2、特に好ましくは80~120gf/mm2が挙げられる。
【0013】
本発明において、「ゲル強度」とは、レオメーターを用いて前記条件で操作した際にゲル状組成物が壊れた時点で負荷されている感圧軸の1mm2当たりの荷重(gf)を指す。
【0014】
ゲル状組成物のゲル強度は、配合する成分の種類と含有量、配合する成分の組み合わせ等によって変化するので、本発明で使用するゲル状組成物において、前記ゲル強度を具備させるには、配合する成分の種類と含有量、配合する成分の組み合わせ等を適宜調節すればよい。また、当業者であれば、達成すべきゲル強度が決まっていれば、配合する成分の種類と含有量、配合する成分の組み合わせ等を調節することにより所望のゲル強度を具備させることは可能である。
【0015】
[尿ハネ抑制用ゲル状組成物の組成]
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物は、前記ゲル強度を具備するゲル状物であることを限度として、その組成については、特に制限されず、公知のゲル化剤を使用して調製することができる。以下、本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物の好適な例について説明する。
【0016】
・ポリオキシアルキレンブロックポリマー
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物の好適な一例として、ポリオキシアルキレンブロックポリマーを含むことが挙げられる。ポリオキシアルキレンブロックポリマーは、ゲル状物を形成させるためのゲル化剤としての役割と共に、界面活性作用による洗浄作用も発揮することができる。また、ポリオキシアルキレンブロックポリマーを含むことによって、前記ゲル強度を好適に具備させることができる。
【0017】
ポリオキシアルキレンブロックポリマーとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等ポリオキシアルキレンの内、2種以上のポリオキシアルキレンを含むブロックポリマーであればよいが、前記ゲル強度を好適に具備させて、尿ハネをより一層効果的に抑制させるという観点から、好ましくは、下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンブロックポリマーが挙げられる。
【0018】
【化1】
【0019】
一般式(1)中、j、k、l、m、及びnは、それぞれ付加モル数を示す。j+nは1以上であり、kは0以上であり、lは1以上であり、mは0以上である。A1Oは、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを示す。A2Oは、炭素数は2~4であって、A1Oとは異なる炭素数のアルキレンオキサイドを示す。A3Oは、炭素数は2~4であって、A2Oとは異なる炭素数のアルキレンオキサイドを示す。A1O、A2O及びA3Oの少なくとも1つは、エチレンオキサイドである。
【0020】
一般式(1)において、A1Oは、炭素数2~4のアルキレンオキサイド、即ち、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドを示す。前記ゲル強度を好適に具備させて、尿ハネをより一層効果的に抑制させるという観点から、A1Oとして、好ましくはエチレンオキサイドが挙げられる。
【0021】
また、一般式(1)において、j+nはアルキレンオキサイド(A1O)の付加モル数の合計を表し、j+nは1以上であればよく、j又はnの一方は0であってもよい。前記ゲル強度を好適に具備させて、尿ハネをより一層効果的に抑制させるという観点から、j及びnはそれぞれ1以上であることが好ましい。また、j及びnは、略同数であることが好ましい。j+nの上限値については、特に制限されないが、例えば400が挙げられる。また、前記ゲル強度を好適に具備させて、尿ハネをより一層効果的に抑制させるという観点から、j+nは、好ましくは30以上、更に好ましくは30~350、特に好ましくは70~350が挙げられる。より具体的には、jは、好ましくは15以上、更に好ましくは15~175、特に好ましくは35~175が挙げられ、nは好ましくは15以上、更に好ましくは15~175、特に好ましくは35~175が挙げられる。
【0022】
一般式(1)において、A2Oは、炭素数2~4のアルキレンオキサイド、即ち、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドを示す。但し、A2Oは、A1Oとは異なる炭素数のアルキレンオキサイドになる。即ち、A1Oがエチレンオキサイドの場合には、A2Oはプロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドになり、A1Oがプロピレンオキサイドの場合には、A2Oはエチレンオキサイド又はブチレンオキサイドになり、A1Oがブチレンオキサイドの場合には、A2Oはエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドになる。前記ゲル強度を好適に具備させて、尿ハネをより一層効果的に抑制させるという観点から、A2Oとして、好ましくはプロピレンオキサイド又はブチレンオキサイド、更に好ましくはブチレンオキサイドが挙げられる。
【0023】
また、一般式(1)において、k及びmは、アルキレンオキサイド(A2O)の付加モル数を示し、それぞれ0以上である。kが0の場合には、mも0であることが好ましいが、前記ゲル強度を好適に具備させて、尿ハネをより一層効果的に抑制させるという観点から、k及びmは、1以上であることが更に好ましい。また、k及びmは、略同数であることが好ましい。k及びmの上限値については、特に制限されないが、例えば、kの上限値として30、mの上限値として30が挙げられる。また、k+mの上限値については、特に制限されないが、例えば60が挙げられる。また、前記ゲル強度を好適に具備させて、尿ハネをより一層効果的に抑制させるという観点から、k+mは、好ましくは0~60、更に好ましくは0~40、特に好ましくは10~40が挙げられる。より具体的には、kは0~30、好ましくは0~20、更に好ましくは5~20;mは0~30、好ましくは0~20、更に好ましくは5~20が挙げられる。
【0024】
一般式(1)において、A3Oは、炭素数2~4のアルキレンオキサイド、即ち、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドを示す。但し、A3Oは、A2Oとは異なる炭素数のアルキレンオキサイドになる。即ち、k及びmが0の場合(A2Oがない場合)であれば、A3Oは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドになる。また、k及び/又はmが1以上の場合、A2Oがエチレンオキサイドであれば、A3Oはプロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドになり、A2Oがプロピレンオキサイドであれば、A3Oはエチレンオキサイド又はブチレンオキサイドになり、A2Oがブチレンオキサイドであれば、A3Oはエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドになる。前記ゲル強度を好適に具備させて、尿ハネをより一層効果的に抑制させるという観点から、A3Oとして、好ましくはプロピレンオキサイド又はブチレンオキサイド、更に好ましくはプロピレンオキサイドが挙げられる。
【0025】
また、一般式(1)において、lは、アルキレンオキサイド(A3O)の付加モル数を示し、1以上である。lの上限値については、特に制限されないが、例えば、60が挙げられる。前記ゲル強度を好適に具備させて、尿ハネをより一層効果的に抑制させるという観点から、lは1~60、好ましくは15~60が挙げられる。より具体的には、k及びmが0の場合であれば、lは、より好ましくは1~60、特に好ましくは15~60、最も好ましくは30~60が挙げられる。また、k及びmが1以上の場合であれば、lは、より好ましくは1~60、特に好ましくは15~60、最も好ましくは15~30が挙げられる。
【0026】
一般式(1)において、A1O、A2O及びA3Oの少なくとも1つは、エチレンオキサイドになる。前記ゲル強度を好適に具備させて、尿ハネをより一層効果的に抑制させるという観点から、少なくともA1Oはエチレンオキサイドであることが好ましい。A1Oがエチレンオキサイドの場合の一般式(1)のブロックポリマーは下記一般式(1a)に示す構造になる。
【0027】
【化2】
【0028】
一般式(1a)中、j、k、l、m、及びnは、前記と同様である。EOは、エチレンオキサイドを示す。A2Oは、炭素数3又は4のアルキレンオキサイドを示す。A3Oは、炭素数2~4であって、A2Oとは異なる炭素数のアルキレンオキサイドを示す。
【0029】
また、一般式(1)のブロックポリマーにおいて、炭素数3~4のアルキレンオキサイドが占める部分の分子量については、前述する一般式(1)の条件を充足する範囲であればよいが、前記ゲル強度を好適に具備させて、尿ハネをより一層効果的に抑制させるという観点から、好ましくは1400以上、更に好ましくは1700以上、特に好ましくは1700~3500が挙げられる。
【0030】
また、一般式(1)のブロックポリマーの分子量については、前述する一般式(1)の条件を充足する範囲であればよいが、前記ゲル強度を好適に具備させて、尿ハネをより一層効果的に抑制させるという観点から、好ましくは4600以上、更に好ましくは6500以上、特に好ましくは6500~20000が挙げられる。
【0031】
一般式(1)のブロックポリマーの中でも、前記ゲル強度を好適に具備させて、尿ハネをより一層効果的に抑制させるという観点から、好適な具体例として、以下の一般式(1a-1)~(1a-3)で表されるポリオキシアルキレンブロックポリマーが挙げられる。
【0032】
【化3】
【0033】
一般式(1a-1)中、EOはエチレンオキサイド、BOはブチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドを示す。また、一般式(1a-1)中、j1、k1、l1、m1、及びn1は、それぞれ付加モル数を示す。j1及びn1は、それぞれ、1以上、好ましくは15以上、更に好ましくは15~175、特に好ましくは35~175を示す。j1及びn1は、略同数であることが好ましい。また、j1+n1(エチレンオキサイドの付加モル数)は、好ましくは30以上、更に好ましくは30~350、特に好ましくは70~350である。k1及びm1は、それぞれ、0以上、好ましくは0~30、更に好ましくは0~20、特に好ましくは5~20を示す。k1及びm1は、略同数であることが好ましい。また、k1+m1(ブチレンオキサイドの付加モル数)は、0以上、好ましくは0~60、更に好ましくは0~40、特に好ましくは10~40である。l1は、1以上、好ましくは1~60、更に好ましくは15~60、特に好ましくは15~30を示す。
【0034】
【化4】
【0035】
一般式(1a-2)中、EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドを示す。また、一般式(1a-2)中、j2、l2、及びn2は、それぞれ付加モル数を示す。j2及びn2は、それぞれ、1以上、好ましくは15~150、更に好ましくは35~150を示す。j2及びn2は、略同数であることが好ましい。また、j2+n2(エチレンオキサイドの付加モル数)は、2以上、好ましくは30~300、更に好ましくは70~300である。l2は、1以上、好ましくは1~60、更に好ましくは15~60、特に好ましくは30~60を示す。
【0036】
【化5】
【0037】
一般式(1a-3)中、EOはエチレンオキサイド、BOはブチレンオキサイドを示す。また、一般式(1a-3)中、j3、l3、及びn3は、それぞれ付加モル数を示す。j3及びn3は、それぞれ、1以上、好ましくは15~150、更に好ましくは35~150を示す。j3及びn3は、略同数であることが好ましい。また、j3+n3(エチレンオキサイドの付加モル数)は、2以上、好ましくは30~300、更に好ましくは70~300である。l3は、1以上、好ましくは1~50、更に好ましくは20~50を示す。
【0038】
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物において、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンブロックポリマーとして、1種の構造のものを単独で使用してもよく、また2種以上の構造のものを組み合わせて使用してもよい。
【0039】
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物において、ポリオキシアルキレンブロックポリマーの含有量については、前記ゲル強度を具備できる範囲で適宜設定すればよいが、例えば、10~50重量%、好ましくは17~40重量%、更に好ましくは18~30重量%が挙げられる。
【0040】
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物は、前記ポリオキシアルキレンブロックポリマーと共に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含んでいてもよい。
【0041】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるオキシアルキレン基の種類については、特に制限されないが、例えば、炭素数2~4のアルキレンオキサイド、即ち、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドが挙げられる。これらのオキシアルキレン基の中でも、前記ゲル強度を好適に具備させるという観点から、好ましくはエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド、更に好ましくはエチレンオキサイドが挙げられる。また、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおいて、1種の構造のオキシアルキレン基が単独で含まれていてもよく、2種以上の構造のオキシアルキレン基が組み合わされて含まれていてもよい。
【0042】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるオキシアルキレン基の付加モル数については、特に制限されないが、例えば、10~100、好ましくは25~75、更に好ましくは40~60が挙げられる。
【0043】
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるアルキル基の炭素数については、特に制限されないが、例えば、10~22、好ましくは14~20、更に好ましくは16~18が挙げられる。また、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状が挙げられる。
【0044】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの中でも、前記ゲル強度を好適に具備させつつ、便器のボウル面に対する付着性を好適に備えさせるという観点から、好ましくはポリオキシエチレン(付加モル数10~100)アルキル(炭素数10~22)エーテル、更に好ましくはポリオキシエチレン(付加モル数40~60)アルキル(炭素数16~18)エーテルが挙げられる。
【0045】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、1種の構造のものを単独で使用してもよく、また2種以上の構造のものを組み合わせて使用してもよい。
【0046】
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有させる場合、その含有量については、前記ゲル強度を具備できる範囲で適宜設定すればよいが、例えば、1~40重量%、好ましくは2~35重量%、より好ましくは3~30重量%、更に好ましくは3~19重量%、特に好ましくは3~15重量%が挙げられる。
【0047】
また、本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物において、ポリオキシアルキレンブロックポリマーとポリオキシアルキレンアルキルエーテルの比率については、前述する各成分の含有量に応じた範囲であればよいが、前記ゲル強度を好適に具備させるという観点から、ポリオキシアルキレンブロックポリマーの総量100重量部当たり、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの総量が1~300重量部、好ましくは2~150重量部、より好ましくは3~130重量部、更に好ましくは3~100重量部、特に好ましくは10~80重量部となる比率が挙げられる。
【0048】
・両性界面活性剤
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物には、両性界面活性剤が含まれていてもよい。特に、ポリオキシアルキレンブロックポリマー及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルに加えて、両性界面活性剤が含まれている場合には、前記ゲル強度を好適に具備させ、尿ハネをより一層効果的に抑制させることができる。
【0049】
両性界面活性剤の種類については、特に制限されないが、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のベタイン型両性界面活性剤;β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム等のアミノ酸型両性界面活性剤;デシルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0050】
これらの両性界面活性剤の中でも、前記ゲル強度を好適に具備させつつ、尿ハネをより一層効果的に抑制させるという観点から、好ましくはベタイン型両性界面活性剤、更に好ましくはヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインが挙げられる。
【0051】
これらの両性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物において、両性界面活性剤を含有させる場合、その含有量については、前記ゲル強度を具備できる範囲で適宜設定すればよいが、例えば、1~10重量%、好ましくは1~6重量%、更に好ましくは2~5重量%が挙げられる。
【0053】
また、本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物において、ポリオキシアルキレンブロックポリマーと両性界面活性剤が含まれる場合、これらの比率については、前述する各成分の含有量に応じた範囲であればよいが、前記ゲル強度を好適に具備させるという観点から、ポリオキシアルキレンブロックポリマーの総量100重量部当たり、両性界面活性剤の総量が1~100重量部、好ましくは5~80重量部、更に好ましくは10~70重量部となる比率が挙げられる。
【0054】
・水
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物は、ゲル状にするために水を含んでいることが好ましい。
【0055】
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物において、水の含有量については、前記ゲル強度を有するゲル状物を形成できる範囲で適宜設定すればよいが、例えば、20~80重量%、好ましくは30~70重量%、更に好ましくは40~60重量%が挙げられる。
【0056】
・香料
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物には、必要に応じて、香料が含まれていてもよい。本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物に含有される香料の種類については、特に制限されず、例えば、天然香料の他、炭化水素系香料、エーテル系香料、エステル系香料、アルコール系香料、アルデヒド系香料、ケトン系香料等の合成香料が挙げられる。
【0057】
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物において、香料を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0超~15重量%、好ましくは1~12重量%、更に好ましくは3~10重量%が挙げられる。
【0058】
・その他の添加剤
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物には、前述する成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、更に必要に応じて、非イオン性界面活性剤(ポリオキシアルキレンブロックポリマー及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル以外)、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤(テトラアルキルアンモニウム塩以外)、酵素、殺菌剤、キレート剤、着色剤、顔料、消臭剤、乳化剤、可溶化剤、増量剤、溶解性調整剤、漂白剤、撥水剤、親水剤、充填剤、pH調整剤、増粘剤、緩衝剤、消泡剤等の添加剤を適量含むことができる。
【0059】
[尿ハネ抑制用ゲル状組成物の製造方法]
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物は、常温において、含有させる成分を所定量混合することによって製造される。
【0060】
[用途・使用方法等]
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物は、便器ボウル面に付着させて、排尿時に生じる尿ハネを抑制するために使用される。
【0061】
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物において、適用対象となる便器については、洋式便器又は男性用小便器のいずれであってもよいが、好ましくは洋式便器が挙げられる。また、本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物を洋式便器に使用する場合、着座又は直立のいずれの姿勢で排尿する際の尿ハネ抑制用途に使用してもよいが、着座姿勢で生じる尿ハネ抑制用途に好適に使用できる。
【0062】
また、本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物を付着させる便器のボウル面の部位については、排尿された尿が直接当たる部位であればよく、便器の種類によって適宜設定すればよい。例えば、洋式便器にて着座姿勢で排尿する際の尿ハネ抑制用途で使用する場合であれば、洋式便器のボウル面の手前中央付近(例えば、図1のAの領域)に本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物を付着させればよい。また、洋式便器にて直立姿勢で排尿する際の尿ハネ抑制用途に使用する場合であれば、図1のAの領域及び/又は洋式便器のボウルの水たまりの奥の中央付近(例えば、図1のBの領域)に本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物を付着させればよい。また、男性用小便器における尿ハネ抑制用途に使用する場合であれば、男性用小便器のボウルの中央内壁面の中央付近に本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物を付着させればよい。
【0063】
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物を便器のボウル面に付着させる面積及び量としては、例えば、面積が1~16cm2程度、好ましくは4~10cm2程度で、高さが0.5~6cm程度、好ましくは1~3cm程度となるように設定すればよい。
【0064】
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物の立体形状については、特に制限されず、適用対象となる便器の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、便器のボウル面に付着させた際の立体形状としては、ブロック状(塊状)、シート状、紐状、粒状等が挙げられる。
【0065】
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物において、便器のボウル面に付着させた際の正面視形状については、特に制限されず、例えば、円状、楕円状、多角形状(三角形状、四角形状等)、回転対称形状(花柄、星柄等)等が挙げられる。ここで、正面視形状とは、の尿ハネ抑制用ゲル状組成物を便器のボウル面に付着させた状態で正面視した際(ボウル面に向かって見た際)の形状を意味する。
【0066】
また、本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物において、便器のボウル面に付着させた際の断面形状については、特に制限されず、例えば、上方に凸部を有する凸断面状、直方状、立方状、半円状、台形状、三角状等が挙げられる。ここで、断面形状とは、尿ハネ抑制用ゲル状組成物を便器のボウル面に付着させた状態でボウル面に対して垂直方向の断面の形状を意味する。
【0067】
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物を便器のボウルに付着させる方法については、特に制限されないが、例えば、本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物を収容した容器から、当該尿ハネ抑制用ゲル状組成物を便器のボウル面に所望の形状となるように吐出させればよい。本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物は、ゲル状であり、便器のボウルに対する付着性を備え得るので、便器のボウルに付着させる際には、粘着材等を使用せずに、そのまま便器のボウルに付着させて固定することができる。
【0068】
本発明の尿ハネ抑制用ゲル状組成物を付着させた便器のボウルに対して、当該尿ハネ抑制用ゲル状組成物に尿が直接当たるように排尿することにより、尿ハネが抑制される。
【0069】
2.尿ハネ抑制方法
更に、本発明は、便器のボウル面に尿ハネ抑制効果を付与するための方法であって、便器のボウル面の排尿された尿が直接当たる部位に、レオメーターを用いて、試料台速度60mm/分、直径10mmの円板状の感圧軸、測定温度25℃の条件で測定されるゲル強度25℃でのゲル強度が240gf/mm2以下であるゲル状組成物を付着させる、尿ハネ抑制方法を提供する。
【0070】
当該尿ハネ抑制方法において、使用するゲル状組成物のゲル強度、組成、形状、適用対象となる便器の種類等については、前記「1.尿ハネ抑制用ゲル状組成物」の欄に記載の通りである。
【実施例
【0071】
以下、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
なお、以下の実施例及び比較例で使用した主な成分の構造は、以下の通りである。
・ポリオキシアルキレンブロックポリマー1:構造式:HO-(EO)j2-(PO)l2-(EO)n2-H[EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、j2及びn2は略同数、EO付加モル数(j2+n2)は約290、POの付加モル数(l2)は約55、分子量は約16000、疎水基部分(-(PO)l2-)の分子量は約3250]
・ポリオキシアルキレンブロックポリマー2:構造式:HO-(EO)j1-(BO)k1-(PO)l1-(BO)m1-(EO)n1-H[EOはエチレンオキサイド、BOはブチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、j1及びn1は略同数、k1及びm1は略同数、EO付加モル数(j1+n1)は約330、BOの付加モル数(k1+m1)は約20、POの付加モル数(l1)は約20、分子量は約16800、疎水基部分((BO)k1-(PO)l1-(BO)m1)の分子量は約2200]
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル:ポリオキシエチレン(付加モル数50)セチルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテルの混合物
・両性界面活性剤:ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチル酢酸ベタイン
・テトラアルキルアンモニウム塩:ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート
・グリセリンオキサイド:付加モル数20のエチレノキサイド3つがグリセリンにエステル結合しているグリセリンポリオキシエチレン付加物
【0073】
試験例1
表1に示す各成分を所定量混合することにより、ゲル状組成物を調製した。なお、表1に示す含有量は、添加した添加剤(商品)に含まれる溶媒を除いた各成分の実質的な量を示す。得られたゲル状組成物について、以下の方法で、ゲル強度の測定及び尿ハネ抑制効果の評価を行った。
【0074】
<ゲル強度の測定>
ゲル状組成物30gを容器(内径30mm、高さ90mmの円柱状)に入れ、レオメーター(「SUNRHEOMETER CR-500DX」、株式会社サン科学)を使用して、以下の測定条件でゲル強度を測定した。
測定モード:定深度測定モード(MODE20)
感圧軸:直径10mm、厚さ1mmの円板状
試料台速度:60mm/分
押し込み深さの設定値:40mm
測定温度:25℃
【0075】
<尿ハネ抑制効果の評価>
尿ハネ抑制効果の評価は、便器のボウル面での尿ハネを模した以下の試験により行った。
【0076】
縦109mm、横109mm、厚み0.5cmの衛生陶器のカットタイル(「KYタイルP4-100」、日本テストパネル株式会社)の中央に、ゲル状組成物7gを付着面積が4.5cm2程度、付着量が1.6g/cm2程度となるように直接付着させた。ゲル状組成物のカットタイルへの付着は、ゲル状組成物を収容したポンプ式容器からカットタイルに吐出させることにより行った。
【0077】
次いで、水平面に設置した台の上に、ゲル状組成物を付着させたカットタイルをゲル状組成物の付着面が上側になるように60°に傾けて固定し、更に、固定したカットタイルの最上部から水平面に対して垂直方向で10cm離れた箇所に、A3サイズの白色用紙を水平方向に固定した(図2Aの状態;図2A中、1:カットタイル、2:ゲル状組成物、3:白色用紙、4:台)。次いで、青色着色水(青色1号を0.5g/l含有する水溶液)を収容したシリンジ(吐出口の口径、直径2mmを用いて、カットタイルに対して垂直方向で15cm離れた場所から青色着色水50mlをゲル状組成物に約2秒間で噴射した(図2のBの状態;図2B中、1:カットタイル、2:ゲル状組成物、3:白色用紙、4:台、5:青色着色水、6:シリンジ)。その後、跳ね返った青色着色水が付着した白色用紙状を画像解析することにより、水ハネの程度を評価した。画像解析は、白色用紙状において青色着色水が最も付着している領域が中心となるように180mm×400mmの長方形の範囲を指定した画像(解析画像)をImageJ(画像処理ソフトウェア)に取り込んで白色と青色を区別できる閾値を設定して2値化し、解析画像全体に対して青色が占める面積の割合(青色面積率、%)を算出した。
【0078】
また、コントロールとして、カットタイルにゲル状組成物を付着させずに、前記と同条件で尿ハネの程度を評価した。
【0079】
結果を表1に示す。この結果、カットタイル上にゲル強度が240gf/mm2以下のゲル状組成物を設けることにより、水ハネが抑制できることが確認された(実施例1~4)。とりわけ、ゲル強度が210gf/mm2以下、特に120gf/mm2以下であるゲル状組成物は、格段顕著に水ハネを抑制できることが分かった。
【0080】
即ち、本結果から、排尿時に尿が直接当たる便器のボウル面に、ゲル強度が240gf/mm2以下のゲル状組成物を付着させることにより、尿ハネを抑制できることが明らかとなった。
【0081】
【表1】
【符号の説明】
【0082】
A 着座姿勢又は直立姿勢で排尿する場合に尿ハネ抑制用ゲル状組成物を付着させる便器のボウル面の部位
B 直立姿勢で排尿する場合に尿ハネ抑制用ゲル状組成物を付着させる便器のボウル面の部位
1 カットタイル
2 ゲル状組成物
3 白色用紙
4 台
5 青色着色水
6 シリンジ
図1
図2