(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】シリコン酸化物の形態選択的な膜形成の方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20240430BHJP
C23C 16/04 20060101ALI20240430BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
H01L21/316 X
C23C16/04
C23C16/42
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020008288
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2023-01-10
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】財津 優
(72)【発明者】
【氏名】深澤 篤毅
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-203007(JP,A)
【文献】国際公開第2017/136945(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
C23C 16/04
C23C 16/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面上に形成されるステップ上にSi‐O結合を含む誘電体膜を形成する方法であって、
(i)最終誘電体膜をもたらす最初の誘電体膜の非対象部分を参照して選択的に除去される対象部分を事前選択することにより、前記ステップ上に形成されるSi‐O結合を含む前記最終誘電体膜の形態を設計するプロセスであって、前記対象部分は、前記ステップの上面および底面上に形成される前記最初の誘電体膜の上部および/または底部、または前記ステップの側壁上に形成される前記最初の誘電体膜の側壁部分である、プロセスと、
(ii)前記ステップの前記上面、前記底面、および前記側壁上に前記最初の誘電体膜を共形に堆積させるプロセスと、
(iii)処理された誘電体膜を得るために、
前記基材が二つの電極に平行に配置される前記二つの電極間にRFパワーを印加することにより励起されるプラズマの異方性衝撃により、前記最初の誘電体膜の前記対象部分に含まれる不純物の量を前記最初の誘電体膜の前記非対象部分に含まれる不純物の量に対して相対的に増加させることによって、エッチングを行った場合、前記対象部分および前記非対象部分に異なる耐薬品性を与えるプロセスと、を含む方法。
【請求項2】
(iv)前記最終誘電体膜を得るために、前記処理された誘電体膜をエッチングするプロセスをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不純物が炭素および/またはハロゲンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
プロセス(i)では、前記側壁部分が前記対象部分として事前選択され、プロセス(ii)では、前記最初の誘電体膜が、炭素および/またはハロゲンをさらに含むシリコン含有前駆体を用いて堆積され、プロセス(iii)では、前記基材が二つの電極に平行に配置される前記二つの電極間にRFパワーを印加することにより励起されるプラズマの異方性衝撃により、最初の誘電体膜の前記非対象部分に含まれる不純物の前記量を減らすことにより、前記対象部分に含まれる不純物の前記量を相対的に増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
プロセス(i)では、前記上部および/または底部が前記対象部分として事前選択され、プロセス(iii)では、(iiia)炭素および/またはハロゲンを含む非シリコンガスを前記最初の誘電体膜の露出表面全体に吸着させること、ならびに(iiib)非シリコンガス吸着表面を、前記基材が二つの電極に平行に配置されている前記二つの電極の間にRFパワーを印加することにより励起されるプラズマの異方性衝撃に曝すことにより、前記最初の誘電体膜の前記対象部分に含まれる不純物の前記量を増加させることにより、前記対象部分に含まれる不純物の前記量を相対的に増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
プロセス(i)では、前記上部および/または底部部分は前記対象部分として事前選択され、プロセス(iii)では、(iiic)基材が二つの電極と平行に配置されている前記二つの電極の間に、炭素および/またはハロゲンを含む非シリコンガスの存在下で、前記最初の誘電体膜を、RFパワーを印加することにより励起されるプラズマの異方性衝撃に曝すことによって、前記最初の誘電体膜の前記対象部分に含まれる不純物の前記量を増加させることにより、前記対象部分に含まれる不純物の前記量を相対的に増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
プロセス(ii)では、前記最初の誘電体膜はプラズマ増強ALDまたは熱ALDによって堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記シリコン含有前駆体は、Si
2R
yCl
6-y(式中yは0~5の整数である)、およびSiR
xCl
4-x(式中RはHまたはアルキル基であり、xは0~3の整数である)からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記RFパワーが、前記基材の表面積あたり0.85W/cm
2~1.41W/cm
2であり、1~100Paの圧力下で印加される、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記非シリコンガスが、炭化水素ガス、ハロゲンガス、およびハロゲン化ガスからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記RFパワーが、前記基材の表面積あたり0.85W/cm
2~1.41W/cm
2であり、1~100Paの圧力下で印加される、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記非シリコンガスが、炭化水素ガス、ハロゲンガス、およびハロゲン化ガスからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記RFパワーが、前記基材の表面積あたり0.85W/cm
2~1.41W/cm
2であり、1~100Paの圧力下で印加される、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
プロセス(iv)では、前記エッチングがdHFを用いるウェットエッチングである、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記HFの濃度は0.1%である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、基材の表面上に形成されたステップ上にSi‐O結合を含む誘電体膜を形成する方法、特にシリコン酸化物の形態選択的な膜形成の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子層堆積(ALD)は、膜厚の優れた制御性と膜の優れた均一性だけでなく、三次元構造を均一に覆う膜を堆積できることにより特徴付けられ、したがって、ALDは半導体業界で非常に重要な堆積方法であると認識されている。一方、特定の半導体デバイスの製造プロセスでは、例えば、トレンチ内に堆積した膜の側壁部分のみが特定の領域に選択的に残されるゲートスペーサにおいて、不均一な膜形成の要望があり、その場合、ALDにより堆積される膜を異方性ドライエッチングと組み合わせて使用し、所望のパターンを形成する。しかし、ドライエッチングの終点を決定することは難しいため、下層が損傷されるオーバーエッチングの懸念がある。
【0003】
このようなパターンニング技術として、まず、パターンの水平部分と垂直部分のウェットエッチング速度が異なるような特定の条件下で、基材のパターニングされた表面上にSiN膜が堆積され、その後、ウェットエッチングを行い、それによりパターンの側壁部分またはパターンの水平部分のいずれかのみを選択的に残す(例えば、特許文献1に開示され、その開示は、本明細書に開示される特定の実施形態に適用可能なものとして参照によりその全体が組み込まれる)ことが知られている。この技術は、SiNの形態選択的な膜形成(「TS‐SiN」)と呼ばれる場合がある。上記では、ドライエッチングではなくウェットエッチングを用いてパターンの垂直部分または水平部分のいずれかのみを選択的に除去するので、下地膜に対してパターンの高いウェットエッチング選択性を設定すること、およびエッチングの均一性を考慮する必要がないという利点を実現することが可能である。TS‐SiNでは、RFパワーを増やすことにより高いウェットエッチング選択性が得られるが、このような条件は、同様の高いウェットエッチング選択性を与えるようにSiO膜上では機能しない。したがって、半導体産業では、SiOの形態選択的な膜形成(「TS‐SiO」)に対する高い需要があるが、TS‐SiOの実現することに成功していない。
【0004】
関連技術に関わる問題および解決法のいかなる議論は、単に本発明の背景を提供する目的のためにだけ本開示に含まれ、本発明の実施時に、議論のいずれかまたは全てが知られていたことを認めるものとみなされるべきでははい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2017/0243734号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態では、プラズマ増強ALD(PEALD)により基材上のパターンに堆積させたSiO2膜に不純物を導入することにより、HF(フッ化水素酸)に対する膜のウェットエッチング速度が操作され、それにより、基材上に形成されたパターンの垂直部分もしくは水平部分の実質的にいずれかのみまたは主にいずれかを選択的に残す。いくつかの実施形態では、ハロゲン原子および/または炭素原子は、不純物として用いられる。いくつかの実施形態では、基材のパターン形成された表面に存在する不純物の濃度を形態的に操作することにより、不純物の分布は、不純物がパターンの垂直部分に選択的に残るように調整される、または不純物はパターンの水平部分に選択的に異方的に導入され、それにより形態選択的な膜形成を実現する。いくつかの実施形態では、SiO2膜に含まれる不純物は、前駆体に由来するか、もしくは前駆体から誘導され、および/またはその後、追加の膜形成もしくは非シリコンガスを用いる追加の表面処理によりSiO2膜の表面に導入されることができる。いくつかの実施形態では、後続の不純物の導入は、PECVDまたはPEALDによって行われ、後続の導入サイクルは、1サイクルの堆積または複数サイクルの堆積ごとの後に実行される。
【0007】
具体的には、例として、TS‐SiOは次のように行われる。
【0008】
1)まず、炭素および/またはハロゲンを含む前駆体を用いてSiO2膜を堆積させる。そしてSiO2膜を比較的低い圧力および比較的高いRFパワーで生成されるプラズマに曝露し、それによりSiO2膜中に不純物の異方性分布を形成する。SiO2膜に含まれる不純物は、パターンの垂直部分よりもパターンの水平部分から選択的に非常に多く除去される。不純物除去サイクルは、1サイクルの堆積または複数サイクルの堆積ごとの後に実行される。
【0009】
2)第一に、SiO2膜を堆積させる。第二に、SiO2膜の表面を不純物として炭素および/またはハロゲンを含む非シリコンガスに曝露することにより、SiO2膜の表面に不純物を吸着させる。そして不純物吸着SiO2膜を比較的低い圧力および比較的高いRFパワーで生成されるプラズマに曝露し、それによりSiO2膜に不純物の異方性分布を形成する。不純物は、パターンの水平部分よりもパターンの垂直部分に選択的に非常に多く導入される。不純物添加サイクルは、1サイクルの堆積または複数サイクルの堆積ごとの後に実行される。上記において、SiO2膜を堆積させるために、前駆体が炭素および/またはハロゲンを含むかどうかに関係なく、シリコンを含む任意の好適な前駆体を用いることができる。
【0010】
3)上記の工程1)または2)の後、dHFを用いてSiO2膜をウェットエッチングし、それによりパターンの残りの部分よりも多くの不純物を含むパターンの部分を選択的に除去する。これによりTS‐SiOを実現でき、パターンの垂直部分もしくは水平部分の実質的にいずれかのみまたは主にいずれかを選択的に除去することができる。
【0011】
本発明の態様および関連技術を超えて達成される利点を要約するために、本発明のいくつかの目的および利点を本開示に記載する。当然のことながら、必ずしもこうした目的または利点の全てが本発明の任意の特定の実施形態によって達成されなくてもよいことが理解されるべきである。したがって、例えば、当業者であれば、本明細書で教示または示唆される他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示される一つの利点または利点の群を達成または最適化する方法で、本発明が具現化または実行され得ることを認識するであろう。
【0012】
本発明の更なる態様、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0013】
本発明のこれらおよび他の特徴を、本発明を限定するのではなく例示することを意図する好ましい実施形態の図面を参照して説明する。図面は、例示目的のために非常に単純化されており、必ずしも縮尺どおりではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1Aは、本発明の実施形態で使用可能な保護膜を堆積させるためのPEALD(プラズマ増強原子層堆積)装置の概略図である。
図1Bは、本発明の実施形態において使用可能なフローパスシステム(FPS)を用いる前駆体供給システムの概略図である。
【
図2】本発明の実施形態による形態選択的な膜形成の工程を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の別の実施形態による形態選択的な膜形成の工程を示すフローチャートである。
【
図4】本発明のさらに別の実施形態による形態選択的な膜形成の工程を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の別の実施形態による形態選択的な膜形成のプロセスを示す概略断面図である((a)および(b)は一実施形態を表し、(a)および(c)は他の実施形態を表す)。
【
図6】本発明の実施形態による、(a)堆積させた状態のシリコン酸化物膜、(b)改質処理なしのdHFエッチング後のシリコン酸化物膜、および(c)改質処理によるdHFエッチング後のシリコン酸化物膜、の断面の走査形電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図7】本発明の実施形態による上面(ブランケット膜)上に形成された膜の処理圧(kPa)とウェットエッチング速度(「WERR.Tox」:熱酸化物に対するウェットエッチング速度)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示では、「ガス」は、気化した固体および/または液体を含むことができ、単一のガスまたはガスの混合物によって構成されることができる。本開示では、シャワーヘッドを介して反応チャンバーに導入されるプロセスガスは、前駆体ガスと添加ガスとから構成される、それらから本質的になる、またはそれらからなる、であってもよい。前駆体および添加ガスを、混合ガスとしてまたは別々に反応空間に導入することができる。前駆体ガスを、キャリアガス、例えば希ガスと共に導入することができる。添加ガスは、反応物質ガス、および希ガスなどの希釈ガスから構成される、それから本質的になる、またはそれらからなる、であってもよい。反応物質ガスおよび希釈ガスは、混合ガスとして、または反応空間と別個に導入されてもよい。前駆体は二つ以上の前駆体から構成され、反応物質ガスは二つ以上の反応物質ガスから構成されてもよい。前駆体は、基材上で化学吸着されるガスであり、典型的には、誘電体膜のマトリックスの主要構造を構成するメタロイドまたは金属元素を含み、および堆積のための反応物質ガスは、ガスが原子層または単分子層を基材上に固定するために励起されるとき、基材上に化学吸着される前駆体と反応することができるガスである。「化学吸着(Chemisorption)」は、化学飽和吸着を指す。プロセスガス以外のガス、即ちシャワーヘッドを通過せずに導入されたガスは、例えば、シールガス、例えば希ガスを含む反応空間をシールするために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、「膜」は、対象物または関連する表面全体を覆うために実質的にピンホールなしで厚さ方向に垂直な方向に連続的に延在する層、または単に対象物もしくは関連する表面を覆う層を指す。いくつかの実施形態では、「層」は、表面上に形成された特定の厚さを有する構造、または膜の同義語、または膜でない構造を指す。膜または層は、特定の特性を有する個別の単一の膜もしくは層、または複数の膜もしくは層によって構成されてもよく、隣接する膜または層の間の境界は、明確であってもなくてもよく、物理的、化学的、および/もしくは他の任意の特徴、形成プロセスもしくは順序、ならびに/または隣接する膜もしくは層の機能もしくは目的に基づいて示される。
【0016】
本開示では、「Si‐O結合を含む」は、Si‐O結合もしくは(複数の)Si‐O結合によって特徴付けられること、Si‐O結合もしくは(複数の)Si‐O結合によって実質的に構成される主要骨格を有すること、および/またはSi‐O結合もしくは(複数の)Si‐O結合によって実質的に構成される置換基を有することを指す。Si‐O結合を含む誘電体膜は、約2~10、典型的には約4~8の誘電率を持つSiO膜、SiOC膜、SiON膜を含むが、これらに限定されない。
【0017】
本開示では、「アニーリング」は、材料がその安定した形態になるように処理されるプロセスを指し、例えば、構成要素に存在する末端基(例えば、アルコール基およびヒドロキシル基)が、より安定した基(例えばSi‐Me基)で置換され、および/またはより安定した形態(例えばSi‐O結合)を形成し、典型的には膜の緻密化を引き起こす。
【0018】
さらに、本開示では、単数形の記載は、特に明記しない限り、複数の種を含む種または属を指す。用語「によって構成される」および「有する」は、いくつかの実施形態では、「典型的にまたは広く含む」、「含む」、「から本質的になる」、または「からなる」を独立して指す。また、本開示では、定義された意味は、いくつかの実施形態では通常および慣習的な意味を必ずしも排除するものではない。
【0019】
その上、本開示では、定常業務に基づいて実行可能な範囲を決定することができるので、任意の二つの変数はその変数の実行可能な範囲を構成することができ、示された任意の範囲は端点を含む、または除外することができる。いくつかの実施形態では、さらに、示された変数の任意の値は(それらが「約」で示されているか否かにかかわらず)、正確な値またはおおよその値を指し、等価物を含み、平均値、中央値、代表値、または大多数等を指してもよい。
【0020】
条件および/または構造が特定されていない本開示では、当業者は、定常的な実験の問題として、本開示を考慮して、このような条件および/または構造を容易に提供することができる。開示された実施形態の全てにおいて、実施形態において用いられる任意の要素を、意図された目的のために本明細書において明示的に、必然的に、または本質的に開示されたものを含むそれらに等価な任意の要素と置き換えることができる。さらに、本発明は装置および方法にも等しく適用することができる。
【0021】
実施形態は、好ましい実施形態に関して説明される。しかし、本発明は好ましい実施形態に限定されない。
【0022】
いくつかの実施形態は、基材の表面上に形成されるステップ上にSi‐O結合を含む誘電体膜を形成する方法を提供し、方法は、(i)最終誘電体膜をもたらす最初の誘電体膜の非対象部分を参照して選択的に除去される対象部分を事前選択することにより、ステップ上に形成されるSi‐O結合を含む最終誘電体膜の形態を設計することであって、前記対象部分は、ステップの上面および底面上に形成される最初の誘電体膜の上部/底部、またはステップの側壁上に形成される最初の誘電体膜の側壁部分である、設計することと;(ii)ステップの上面、底面、および側壁上に最初の誘電体膜を共形に堆積させることと;(iii)処理された誘電体膜を得えるために、最初の誘電体膜の対象部分に含まれる不純物の量を、最初の誘電体膜の非対象部分に含まれる不純物の量に対して相対的に増加させることであって、これにより、エッチングを行った場合、対象部分および非対象部分に異なる耐薬品性を与える、増加させることと;(iv)最終誘電体膜を得るために、処理された誘電体膜をエッチングすることと;を含む。結果として、実質的にパターンの垂直部分または水平部分のいずれかのみ、または主にパターンの垂直部分または水平部分のいずれかを除去することができ、それによってSioのトポロジー選択的膜形成を達成する。本開示では、用語「実質的に」等は、意図された目的または機能に十分であると当業者に認識される十分な、相当な、または材料の量、サイズ、時間、もしくは空間(例えば、関連する部分の総計値または参照値に対して少なくとも70%、80%、90%、または95%)を指すことができる。例えば、用語「実質的に~のみ」等は、対象部分の残りの部分に対する厚さの比が少なくとも70/30、80/20、90/10、または95/5である構成を指すことができる。
【0023】
本開示では、用語「ステップ」は、基材に形成されるトレンチを含むがこれに限定されない凹状および/または凸状パターンを指し、いくつかの実施形態では、トレンチは、約10~約50nm(典型的には約15~約30nm)の幅(トレンチが幅と実質的に同じ長さを有する場合、それはホール/ビアと呼ばれ、その直径は約10~約50nmである)、約30~約200nm(典型的には約50~約150nm)の深さ、および約3~約20(典型的には約3~約10)のアスペクト比を有することができる。いくつかの実施形態では、基材の上面上およびトレンチ内に堆積されたシリコン酸化物膜は、約70%~約100%(典型的には約80%以上、より典型的には約90%以上)の共形性を有し、この「共形性」は、側壁上の、または凹部の底部上のある点(典型的には断面図の中間点)に堆積された膜厚を、凹部のすぐ外側の平面上に堆積された膜厚と比較することによって判定される。
【0024】
いくつかの実施形態では、不純物は炭素および/またはハロゲンを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、プロセス(i)では、側壁部分は対象部分として事前選択され、プロセス(ii)では、最初の誘電体膜は、炭素および/またはハロゲンをさらに含むシリコン含有前駆体を用いて堆積され、プロセス(iii)では、基材が二つの電極に平行に配置される二つの電極間にRFパワーを印加することにより励起されるプラズマの異方性衝撃により、最初の誘電体膜の非対象部分に含まれる不純物の量を減らすことにより、対象部分に含まれる不純物の量を相対的に増加させる。この実施形態は、「不純物の領域選択除去による上部/底部厚さのTS‐SiO」と呼ばれる場合がある。この実施形態では、プラズマによる異方性イオン衝撃によって、膜の水平部分は主に付着され、結果として、水平部分が緻密になり、不純物が水平部分から膜の垂直部分に対して選択的に解離または分離および除去され、これにより、水平部分の耐薬品性が領域選択的に増加し、そのウェットエッチング速度が下がる(即ち、実質的に膜の上部/底部のみが、または主に上部/底部が残る)。
【0026】
いくつかの実施形態では、不純物の領域選択的除去による上部/底部厚さのTS‐SiOでは、シリコン含有前駆体は、Si2RyCl6-y(式中、yは0~5の整数である)、およびSiRxCl4-x(式中、RはHまたはアルキル基であり、xは0~3の整数である)からなる群から選択される。例えば、このような前駆体としては、Si2Cl6、SiCl4、および/またはSi2Cl2(CH3)4が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、いくつかの実施形態では、RFパワーは、300mmウェーハについて計算すると600W~1,000Wであり、1~100Paの圧力下で印加される。
【0027】
いくつかの実施形態では、プロセス(i)では、上部/底部部分は対象部分として事前選択され、プロセス(iii)では、(iiia)炭素および/またはハロゲンを含む非シリコンガスを最初の誘電体膜の露出面全体に吸着させ、ならびに(iiib)非シリコンガス吸着表面を基材が二つの電極に平行に配置されている二つの電極の間にRFパワーを印加することにより励起されるプラズマの異方性衝撃に曝すことにより、最初の誘電体膜の対象部分に含まれる不純物の量を増加させることにより、対象部分に含まれる不純物の量は相対的に増加する。この実施形態は、「不純物の領域選択取り込みによる側壁の厚さTS‐SiO」と呼ばれる場合がある。この実施形態では、不純物を膜の表面に導入し、続いてプラズマによる異方性イオン衝撃により、膜の水平部分は主に付着され、結果として、水平部分が緻密になり、不純物が膜の垂直部分に対して水平部分から選択的に取り込まれおよび導入され、これにより、水平部分の耐薬品性が領域選択的に減少し、そのウェットエッチング速度が上がる(つまり、実質的に膜の側壁のみが、または主に側壁が残る)。
【0028】
いくつかの実施形態では、プロセス(i)では、上部/底部部分は対象部分として事前選択され、プロセス(iii)では、(iiic)基材が二つの電極と平行に配置されている二つの電極の間に、炭素および/またはハロゲンを含む非シリコンガスの存在下で、最初の誘電体膜をRFパワーを印加することにより励起されるプラズマの異方性衝撃に曝すことによって、最初の誘電体膜の対象部分に含まれる不純物の量を増加させることにより、対象部分に含まれる不純物の量を相対的に増加させる。上記は、不純物の領域選択的取り込みによる側壁の厚さのTS‐SiOでもある。上記では、プロセス(iiia)および(iiib)の代わりに、プロセス(iiic)は不純物を膜の表面上に吸着させてからプラズマに曝露するのではなく、不純物がプラズマガスに含まれる場合に実行される。
【0029】
いくつかの実施形態では、不純物の領域選択的取り込みによる側壁の厚さのTS‐SiOでは、非シリコンガスを用いて不純物を膜に導入するため、前駆体自体は不純物を含む必要がなく、従来使用されているものであってよい。例えば、このような前駆体は、NxHy(xおよびyはゼロ以外の整数である)、NxCyHz(x、y、およびzはゼロ以外の整数である)、ならびに/またはN2を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、前駆体は炭素もハロゲンも含まない。
【0030】
いくつかの実施形態では、不純物を領域選択的に取り込むことによる側壁の厚さのTS‐SiOでは、非シリコンガスは、炭化水素ガス、ハロゲンガス、およびハロゲン化ガスからなる群から選択される。例えば、このような非シリコンガスとしては、CH4、C2H6、Cl2、Br2、CCl4等、またはその他の炭化水素、ハロゲン、および一般的には液体であり10Torr以上の蒸気圧を有するハロゲン化ガスが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、いくつかの実施形態では、RFパワーは、300mmウェーハについて計算すると600W~1,000Wであり、1~100Paの圧力下で印加される。
【0031】
いくつかの実施形態では、プロセス(ii)では、最初の誘電体膜は、プラズマ増強ALDまたは熱ALDによって堆積される。
【0032】
いくつかの実施形態では、プロセス(iv)では、エッチングはdHFを用いるウェットエッチングである。いくつかの実施形態では、HFの濃度は約0.1%である。
【0033】
本発明を、図面に例示する好ましい実施形態を参照しながら詳細に説明する。しかし、本発明はこれらの実施形態に限定することを意図していない。
【0034】
図2は、本発明の実施形態によるSiOの形態選択的な膜形成(TS‐SiO)のプロセスを例示するフローチャートであり、これは、不純物の領域選択的除去による上部/底部の厚さのTS‐SiOである。工程S1では、SiO膜を、トレンチを有する基材上に不純物を含む前駆体を用いて堆積させる。堆積は、任意の好適な方法、例えばPEALD、熱ALD、周期的CVD、またはPECVDによって行われることができる。工程S2では、堆積させた膜は比較的低い圧力と比較的高いRFパワーで希ガスプラズマに曝露され、膜の水平部分に含まれる不純物が膜の垂直部分に含まれる不純物と比較して主にまたは十分に除去される。工程S1および工程S2は中断せずに(真空を破ることなく)連続的に行われ、工程S1と工程S2の間で堆積させた膜の表面に、基材を取り巻く雰囲気から全くまたはほとんど不純物を取り込まないまたは吸着しない。工程S1が周期的堆積である場合、工程S2を、周期的堆積の(単分子層を堆積する)1サイクルごとの後に、または周期的堆積(単分子層の積層物を堆積する)の2サイクル以上ごとの後に行うことができる。しかし、工程S1で得られる膜の厚さは、工程S2でプラズマによるイオン衝撃が貫通できない厚さ以下でなければならない。工程S1および工程S2の1セットを、膜の所望の厚さが得られるまで、複数回繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、堆積させた膜の意図する目的または用途に応じて、上面上に堆積させた膜の厚さは、約3nm~約50nm、典型的には約10nm~約30nmである。いくつかの実施形態では、工程S2を、以下の表1に示す条件下で行うことができる。
【0035】
【0036】
「W」は基材の領域ごとに「W/cm2」に変換でき、W/cm2に変換された値を異なるサイズの基材、例えば200mm基材および450mm基材に適用することができる。処理の効果はプラズマのイオンエネルギーに依存するため、堆積後処理の反応空間に適用される好適なRFパワーは、反応空間の圧力に応じて決定される。したがって、例えば、典型的には、圧力は約400Pa以下(好ましくは約100Pa以下)、RFパワーは(例えば、400Paで)約600W以上であり、圧力がより低下すると、より低いRFパワーを適用することができる。SiO2膜の堆積は、一般的に使用されるRFパワーを使用して行われることができるので、堆積後処理が開始されると、典型的にRFパワーが増加する。堆積後処理では、一般的に、RFパワーが増加すると膜の水平部分の耐薬品性がより高くなり、例えば、膜の水平部分からより多くの不純物を除去することができるため、ウェットエッチング速度を低下させる。しかし、RFパワーが高くなりすぎる場合、膜の水平部分が損傷し、その耐薬品性が低下し、例えば、ウェットエッチング速度が上がる。すなわち、(水平軸によって表される)RFパワーと(垂直軸によって表される)耐薬品性との間の関係は、最適なRFパワーを示す最小値を有する下向きの曲線で表わされることができる。したがって、最適なRFパワーは、本開示を考慮して日常的な実験により、事前選択した圧力に対して決定されることができる(最適なRFパワーが圧力に応じて変化する)。
【0037】
いくつかの実施形態では、工程S2では、希ガス以外のガスは反応空間に導入されない。いくつかの実施形態では、工程S2では、水素ガスは、追加的にまたは代替的に類似の流量で導入されてもよい。いくつかの実施形態では、工程S2では、酸素も窒素ガスもなく、または他の反応物質も前駆体ガスも導入されない。
【0038】
工程S3では、プラズマ処理膜はウェットエッチングが行われ、TS‐SiOを達成する。工程S2により、不純物は膜の水平部分(即ち、膜の上部/底部部分)から領域選択的に除去され、膜の水平部分が緻密になり耐薬品性が増加する。プラズマ処理膜をウェットエッチングすることによって、膜の水平部分よりも多くの不純物を含む膜の垂直部分(即ち、膜の側壁部分)が主にエッチングされるか、または除去され、上部/底部の厚みのプロファイルを形成する。いくつかの実施形態では、工程S3を、以下の表2に示す条件下で行うことができる。
【0039】
【0040】
ウェットエッチングについては、任意の従来の装置を含む任意の好適な枚様式またはバッチ式装置を使用することができる。また、任意の従来の溶液を含むウェットエッチングに好適な任意の溶液を使用することができる。膜の主要構成要素はSiO2によって構成され、ウェットエッチングに高濃度のHF溶液が用いられる場合、ウェットエッチング選択性が不十分になる。したがって、典型的には、低濃度のHF溶液、例えば約0.1%溶液がウェットエッチングに使用される。
【0041】
図3は、本発明の別の実施形態による、形態選択的な膜形成のプロセスを例示するフローチャートである。この実施形態は、不純物の領域選択的取り込みによる側壁の厚さのTS‐SiOを表す。ステップS4では、SiO膜がトレンチを有する基材上に堆積される。堆積は、任意の好適な方法、例えばPEALD、熱ALD、周期的CVD、またはPECVDによって行われることができる。工程S5では、不純物は、プラズマに曝される前に膜の表面に吸着される。工程S5は、膜を、炭素および/もしくはハロゲン等の不純物を含むが、シリコンは含まない炭化水素ガス等に曝露することにより達成されることができ、それによって非シリコンガスを膜の表面上に吸着させることができる。いくつかの実施形態では、工程S5を、以下の表3に示す条件下で行うことができる。
【0042】
【0043】
この実施形態では、工程S5の後、SiO以外の不純物が膜の表面上に存在する場合はプラズマ処理が行われる。プラズマ処理は、表1に示される条件下で(不純物の領域選択的除去による上部/底部の厚さのTS‐SiOを示す)
図2の工程S2に実質的に同様の方法で、行うことができる。しかし、不純物の領域選択的取り込みによる側壁の厚さのTS‐SiOでは、工程S2を不純物の領域選択的除去によって上部/底部の厚さのTS‐SiOで工程S2と実質的に同様の方法で行うことができるにもかかわらず、工程S2の機能は、不純物の領域選択的除去による上部/底部の厚さのTS‐SiOの工程S2の機能と完全に反対である。すなわち、不純物の領域選択的除去による上部/底部の厚さのTS‐SiOの工程S2では(
図2)、不純物は主に膜の水平部分から除去されるのに対して、不純物を領域選択的に取り込むことによる側壁の厚さのTS‐SiOの工程S2では(
図3)、不純物は主に膜の水平部分に取り込まれる。
【0044】
工程S2では、不純物吸着膜は、比較的低い圧力と比較的高いRFパワーで希ガスプラズマに曝露され、膜の水平部分上に吸着した不純物は、膜の垂直部分上に吸着した不純物と比較して、主にまたは十分に取り込まれる。工程S4、工程S5、および工程S2は、中断なしに(真空を破ることなく)連続的に実施されるか、または代わりに、工程S5は、工程S4で用いられるものとは異なるチャンバー内に、または不純物を含む異なる雰囲気中に、基材を保存することにより行われることができ、そして基材を工程S4で用いたチャンバーに戻して
図3に例示の工程S3を行う。工程S4が周期的堆積である場合、工程S5およびS2を、(単分子層を堆積する)周期的堆積の1サイクルごとの後に、または(単分子層の積層を堆積する)周期的堆積の2サイクル以上ごとの後に行うことができる。しかし、工程S4で得られる膜の厚さは、工程S2でプラズマによるイオン衝撃が貫通できない厚さ以下でなければならない。工程S4、S5および工程S2の1セットを、膜の所望の厚さが得られるまで、複数回繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、堆積させた膜の意図する目的または用途に応じて、上面上に堆積させた膜の厚さは、約3nm~約50nm、典型的には約10nm~約20nmである。
【0045】
工程S3では、表2に示す条件下で
図2に示す工程S3と実質的に同様の方法でTS‐SiOを達成するために、プラズマ処理膜をウェットエッチングする。工程S2により、不純物は膜の水平部分(即ち、膜の上部/底部部分)中に領域選択的に取り込まれ、膜の水平部分がよりイオン衝撃に対して脆弱になり、耐薬品性が低下する。プラズマ処理膜をウェットエッチングすることによって、膜の垂直部分よりも多くの不純物を含む膜の水平部分(即ち、膜の上部/底部部分)が主にエッチングされるか、または除去され、側壁の厚みのプロファイルを形成する。
【0046】
図4は、本発明の別の実施形態による、形態選択的な膜形成のプロセスを例示するフローチャートである。この実施形態は、不純物の領域選択的取り込みによる側壁の厚さのTS‐SiOの別の実施形態を表す。工程S4では、
図3の工程S4と実質的に同様の方法で、トレンチを有する基材上にSiO膜が堆積される。工程S6では、不純物を含むガス(例えば、炭素および/またはハロゲン等の不純物を含むがシリコンは含まない炭化水素ガス等)はプラズマガスに加えられ、膜は、不純物として主に膜の水平部分に取り込まれる元素の活性種を含むプラズマに曝露され、結果として
図3に示す得られる膜の不純物分布と同様の不純物分布を有する膜をもたらす。いくつかの実施形態では、工程S6を、以下の表4に示す条件下で行うことができる。
【0047】
【0048】
工程S4および工程S6は、中断せずに(真空を破ることなく)連続的に行われる。工程S4が周期的堆積である場合、工程S6を、周期的堆積の(単分子層を堆積する)1サイクルごとの後に、または周期的堆積(単分子層の積層物を堆積する)の2サイクル以上ごとの後に行うことができる。工程S4および工程S6の1セットを、膜の所望の厚さが得られるまで、複数回繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、堆積させた膜の意図する目的または用途に応じて、上面上に堆積させた膜の厚さは、約3nm~約50nm、典型的には約10nm~約20nmである。
【0049】
工程S3では、表2に示す条件下で
図3に示す工程S3と実質的に同様の方法でTS‐SiOを達成するために、プラズマ処理膜をウェットエッチングする。
図3に例示のプロセスのように、工程S6により、不純物は膜の水平部分(即ち、膜の上部/底部部分)に領域選択的に取り込まれ、膜の水平部分がイオン衝撃に対してより脆弱になり、耐薬品性が低下する。プラズマ処理膜をウェットエッチングすることによって、膜の垂直部分よりも多くの不純物を含む膜の水平部分(即ち、膜の上部/底部部分)が主にエッチングされるか、または除去され、側壁の厚みのプロファイルを形成する。
【0050】
図5は、本発明の別の実施形態によるSiOの形態選択的な膜形成(TS‐SiO)のプロセスを示す概略断面図を例示する((a)および(b)は、不純物の領域選択的除去による上部/底部の厚さのTS‐SiOを表し、(a)および(c)は不純物の領域選択的取り込みによる側壁の厚さのTS‐SiOを表す)。
図5では、SiO
2膜42は、トレンチ46を有する基材41上に共形に堆積され、SiO
2膜42は水平部分(上部部分45および底部部分43)ならびに垂直部分(側壁部分44)によって構成され、この膜はトレンチ46を有する基材41の表面全体を共形にまたは均等に覆う。SiO
2膜42は、実質的に地理的に均一な不純物分布を有し、膜全体に実質的に不純物が分布していないことを含む。
【0051】
不純物の領域選択的除去による上部/底部の厚さのTS‐SiOでは、(a)のSiO2膜42は膜全体に実質的に均一に分布された不純物を含み、膜を(イオン衝撃による)異方性プラズマストライクに曝露することにより、膜の水平部分45、43は膜の垂直部分44よりも多くのイオン衝撃を受け、それにより不純物を垂直部分からよりも水平部分からより多く解離または分離し、水平部分を緻密化させる。結果として、不純物は、膜の水平部分よりも膜の垂直部分により多く残り、即ち垂直部分は水平部分よりもウェットエッチングに対して脆弱になる。したがって、不均一な不純物分布を有する膜を処理することによって、(b)に示すように実質的に膜の垂直部分のみ、または主に膜の垂直部分を除去することができる。
【0052】
対照的に、不純物を領域選択的に取り込むことによる側壁の厚さのTS‐SiOでは、(a)のSiO2膜42は、膜全体に実質的にゼロまたは低濃度の不純物を含む膜全体に実質的に均一に分布した不純物を含み、膜の垂直部分および水平部分の表面に不純物を吸着させ、続いてプラズマに曝露することにより、または膜の垂直部分および水平部分を不純物の活性種を含むプラズマに曝露することにより、膜の水平部分45,43は、膜の垂直部分44よりも多くのイオン衝撃を受け、それにより、より多くの不純物を垂直部分内よりも水平部分内に取り込む。結果として、不純物は、膜の垂直部分よりも膜の水平部分により多く導入され、即ち水平部分は垂直部分よりもウェットエッチングに対して脆弱になる。したがって、(c)に示すように、膜が不均一な不純物分布を有するように処理することにより、実質的に膜の水平部分のみ、または主に膜の水平部分を除去することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、
図5の(b)に示される不純物の領域選択的除去による上部/底部の厚さのTS‐SiOでは、最終的な膜の共形性(側壁での(例えば、断面図の中点での)膜厚の、上部部分での(例えば、断面図の中点での)膜厚に対する比)は、実質的に0%を含む約30%以下(例えば、約0%、約10%、約20%、約30%、または前述の数値の任意の二つの間の範囲内の任意の数値)である。いくつかの実施形態では、
図5の(c)に示される不純物の領域選択的取り込みによる側壁の厚さのTS‐SiOでは、膜の逆の共形性(側壁での(例えば、断面図の中点での)膜厚の、膜の上部部分での(例えば、断面図の中点での)膜厚に対する比)は、実質的に0%を含む約30%以下、例えば、約0%、約10%、約20%、約30%、または前述の数値の任意の二つの間の範囲内の任意の数値)である。上記では、底部の膜の厚さは、トレンチのアスペクト比、RFパワー、圧力などに応じて変化しうる。例えば、トレンチのアスペクト比が高い、例えば5~10またはそれ以上、RFパワーが比較的低い、および/または圧力が比較的高い場合、プラズマによる十分なイオン衝撃がトレンチの底部に到達できない可能性があるため、トレンチの底部の膜は上部の膜と比較してウェットエッチング時に残留する傾向がある。
【0054】
本開示に記載のプロセスシーケンスでは、前駆体は、連続的に供給されるキャリアガスを用いてパルスで供給されてもよい。これは、フローパスシステム(FPS)を使用して達成することができ、キャリアガスラインに前駆体貯留部(ボトル)を有する迂回ラインを設け、主ラインと迂回ラインとを切り替える。キャリアガスのみが反応チャンバーに供給されることが意図される場合、迂回ラインは閉じられ、一方、キャリアガスと前駆体ガスの両方が反応チャンバーに供給されることを意図される場合、主ラインは閉じられ、キャリアガスは迂回ラインを通って流れ、前駆体ガスと共にボトルから流出する。このように、キャリアガスは連続的に反応チャンバー内に流入することができ、主ラインと迂回ラインとを切り替えることによって前駆体ガスをパルス状に運ぶことができる。
図1Bは、本発明の実施形態によるフローパスシステム(FPS)を用いる前駆体供給システムを例示する(黒いバルブはバルブが閉じていることを示す)。
図1Bの(a)に示すように、前駆体を反応チャンバー(図示せず)に供給する場合、まず、キャリアガス、例えばAr(またはHe)がバルブbおよびcを有するガスラインを通って流れ、そしてボトル(貯留部)30に入る。キャリアガスは、ボトル30内の蒸気圧に応じた量の前駆体ガスを運びながらボトル30から流出し、バルブfおよびeを有するガスラインを通って流れ、そして前駆体と共に反応チャンバーに供給される。上記において、バルブaおよびdは閉じられている。キャリアガス(希ガス)のみを反応チャンバーに供給する場合、
図1Bの(b)に示すように、キャリアガスはボトル30を迂回しながらバルブaを有するガスラインを通って流れる。上記において、バルブb、c、d、e、およびfは閉じられている。
【0055】
前駆体を、キャリアガスを用いて供給してもよい。ALDは自己制御的吸着反応プロセスであるため、堆積させた前駆体分子の数は反応性表面部位の数によって決定され、かつ飽和後の前駆体曝露とは無関係であり、前駆体の供給は、それにより反応性表面部位がサイクルごとに飽和されるようなものである。堆積のためのプラズマはその場で、例えば、堆積サイクルを通して連続的に流れるアンモニアガス中で、生成されてもよい。他の実施形態では、プラズマは遠隔で生成され、反応チャンバーに提供されてもよい。
【0056】
上述したように、各堆積サイクルの各パルスまたは段階は好ましくは自己制御的である。過剰の反応物質が各段階において供給され、影響を受けやすい構造表面を飽和させる。表面飽和によって、(例えば、物理的サイズまたは「立体障害」の制限を受ける)全ての利用可能な反応性部位の反応物質の占有が確実になり、したがって優れたステップカバレージが確実になる。いくつかの実施形態では、反応物質のうちの一つまたは複数のパルス時間を減少させて、完全飽和が達成されない、および単分子層未満が基材表面上に吸着されるようにすることができる。
【0057】
例えば
図1Aに示す装置を備える任意の好適な装置を用いてプロセスサイクルを実行することができる。
図1Aは、本発明のいくつかの実施形態で使用可能な、以下に記載のシーケンスを実行するようにプログラムされた制御装置と望ましくは一体化したPEALD装置の概略図である。この図において、反応チャンバー3の内部11(反応領域)に一対の導電性平板電極4、2を互いに平行に対向させて設け、一方の側にHRFパワー(13.56MHzまたは27MHz)20を印加し、他方の側12を電気的に接地することにより、プラズマが電極間で励起される。下部ステージ2(下部電極)には温度調節器が設けられており、その上に配置された基材1の温度は所定の温度で一定に保持される。上部電極4はシャワープレートとしても機能し、反応物質ガス(および希ガス)ならびに前駆体ガスはそれぞれガスライン21およびガスライン22を通って、そしてシャワープレート4を通って反応チャンバー3に導入される。さらに、反応チャンバー3内には、排気ライン7を有する円形ダクト13が設けられており、これを通って反応チャンバー3の内部11内のガスが排気される。さらに、希釈ガスは、ガス管23を通して反応チャンバー3に導入される。さらに、反応チャンバー3の下方に配置された搬送チャンバー5には、搬送チャンバー5の内部16(移送区域)を介して反応チャンバー3の内部11内にシールガスを導入するためのシールガス管24が設けられている。反応区域と搬送区域とを分離するための分離プレート14が設けられている(ウェーハを搬送チャンバー5に搬入および搬送チャンバー5から搬出するのに通過するゲートバルブはこの図から省略されている)。搬送チャンバーには排気管6も設けられている。いくつかの実施形態では、多元素膜の堆積および表面処理は同じ反応空間内で実行されるため、基材を空気または他の酸素含有雰囲気に曝露することなく全てのプロセスを連続的に行うことができる。いくつかの実施形態では、ガスを励起するために遠隔プラズマ装置を使用することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、
図1Aに示す装置において、(前述の)
図1Bに例示する不活性ガスの流れと前駆体ガスの流れとを切り替えるシステムを用いて、反応チャンバーの圧力を実質的に変動させることなく前駆体ガスをパルス状に導入することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、デュアルチャンバー反応器(互いに近接して配置されたウェーハを処理するための二つの区域または区画)を使用することができ、反応物質ガスおよび希ガスを共有ラインを介して供給することができるのに対して、前駆体ガスは非共有ラインを介して供給される。
【0060】
当業者は、本装置が、本明細書の他の箇所に記載された堆積プロセスおよび反応器洗浄プロセスを実行させるようにプログラムされたまたはそうでなければ構成された一つまたは複数の制御装置(図示せず)を備えることを理解するであろう。当業者には理解されるように、制御装置は、様々な電源、加熱システム、ポンプ、ロボット、およびガス流量制御装置または反応器のバルブと通信している。
【0061】
本発明を、以下の実施例を参照しながらさらに説明する。しかし、実施例に本発明を限定するものではない。条件および/または構造が特定されていない例では、当業者は、定常的な実験として、本開示を考慮して、このような条件および/または構造を容易に提示することができる。また、特定の例に適用される数字は、一部の実施形態では少なくとも±50%の範囲で修正でき、数値はおおよそのものである。
【0062】
実施例
【0063】
実施例1
【0064】
この実施例では、不純物を領域選択的に取り込むことによる側壁の厚さのTS‐SiOは
図4に示されるように行われた。しかし、この例はむしろ実験的な例であり、
図4の工程S6は基材をサセプタに接着させる(アクリル接着剤付きの)ポリイミドテープを用いて行われ、このテープはプラズマに曝露され、プラズマ中に放出される炭素(空気中浮遊分子汚染物質、AMC)を含む不純物の発生源になると予想され、(プラズマガスに不純物を含むガスを加えることにより、不純物の活性種を含むプラズマを形成するのとは対照的に)炭素の活性種を含むプラズマを形成する。上記の工程は、工程S6と機能的に同等であると考えられ、両方の工程は不純物の活性種を含むプラズマを生成する。
【0065】
まず、トレンチを有するSi基材(直径300mm)上にSiO膜をPEALDにより形成し、その1サイクルを
図1Aに示すPEALD装置と
図1Bに示すガス給供システム(FPS)を用いて、下記表5に示す条件(堆積サイクル)下で行った。
【0066】
反応チャンバーから基材を取り出した後、基材は大気中に一時的に保存され、その後、基材はアクリル接着剤付きのポリイミドテープを用いて装置のサセプタ表面に接着された。次に、基材は下記表5に示す条件下で堆積後プラズマ処理され、アクリル接着剤をプラズマに曝露し、プラズマ中に炭素の活性種を生成させた。その後、下記表5に示す条件下で基材にウェットエッチングを行った。
【0067】
【0068】
また、比較例として、トレンチを有するSi基材(直径300mm)上に上記と実質的に同様の方法でSiO膜をPEALDにより形成し、且つ、プラズマ処理を行うことなしに(工程S6を実行しなかった)連続的に、上記と実質的に同様の方法で、基材をウェットエッチングした。
【0069】
結果を
図6に示す。
図6は、(a)堆積させた状態のシリコン酸化物膜、(b)プラズマ処理なしのdHFエッチング後のシリコン酸化物膜、および(c)プラズマ処理されたdHFエッチング後のシリコン酸化物膜、の断面の走査形電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
図6の(c)に示すように、基材が不純物の活性種を含むプラズマに曝露される場合、膜の実質的に上部部分のみまたは主に上部部分がエッチングされ、膜の実質的に側壁部分のみまたは主に側壁部分が残る。対照的に、
図6の(b)に示すように、基材がプラズマに曝露されない場合、膜の実質的に側壁部分のみまたは主に側壁部分がエッチングされ、膜の実質的に上部部分のみまたは主に上部部分が残る。上記は、プラズマに含まれる不純物が膜の実質的に上部部分のみにまたは主に上部部分に取り込まれ、膜の上部部分が膜の側壁部分よりもウェットエッチングに対して脆弱になるためであると思われる。
【0070】
図6の(b)では、不純物の領域選択的除去プロセスなしに、上部/底部の厚さのTS‐SiOが達成された。これは、PEALDは異方性の特性を有し、膜の垂直部分ではなく水平部分を活性化して、堆積条件等に応じて水平部分を高品質(高密度および/または低不純物濃度)にさせたためであると思われる。
図2に示すプロセスを用いることにより、膜の水平部分の水平部分の品質をさらに向上させ、水平部分と垂直部分との間の膜のウェットエッチング選択性をさらに向上させることができる。さらに、膜が熱ALDによって堆積される場合、膜の品質は均一であり、原則として膜の水平部分と垂直部分との間の差はない。その場合、プラズマ処理は、上部/底部の厚さのTS‐SiOを達成するために必要である。
【0071】
図6の(c)では、膜の底部と上部部分の両方は水平部分であるにもかかわらず、膜の底部部分は膜の上部部分程は十分にエッチングも除去もされなかった。トレンチのアスペクト比が高すぎた、RFパワーが低すぎた、および/または圧力が高すぎたため、プラズマによる十分なイオン衝撃が底部部分に達しなかったと思われる。これらのパラメータを操作すること(例えば、アスペクト比を約2以下に変更すること)により、膜の底部部分は、膜の上部部分で観察される程度に除去されるか、またはエッチングされうる。
【0072】
参考例1
【0073】
この参考例では、上記実施例1と一致して、不純物(炭素および窒素)がプラズマ処理によって低圧で膜に取り込まれ、より不純物を含む膜の一部がウェットエッチングに対してより脆弱であることが確認された。
【0074】
実施例1に実質的に同様の方法で膜(ブランケット膜)を堆積させ、そして、
図7に示すように処理圧力を変更したこと以外は、実施例1と実質的に同様の方法で膜にプラズマを暴露し、その後、実施例1と実質的に同様の方法でウェットエッチングした。
図7は、膜の処理圧力[kPa]とウェットエッチング速度との関係(「WERR.Tox」:熱酸化物に対するウェットエッチング速度)を示すグラフである。
図7に示すように、処理圧力が100Pa(「No.2」)である場合、WERRは非常に高く(即ち、化学物質に対して耐性が低い低品質の膜)、一方、処理圧力が500Pa、2,000Pa、および10,000Paの場合、プラズマ処理なしの堆積させた状態の膜である「参照」と比較してWERRは低かった(即ち、化学物質に対して耐性が比較的高い比較的高品質の膜)。処理圧力が50,000Pa(「No.1」)と高い場合、プラズマによるイオン衝撃が不十分であるため、WERRは増加した。
【0075】
また、膜はX線光電子分光法(XPS)による膜の組成分析(原子%)が行われた(不要な汚染物質を除去するために、スパッタリングにより2nmの深さで各膜の表面を除去した後に分析を行った)。結果は、以下の表6に示されている(「参照」、「No.1」、および「No.2」は、それぞれ
図7の「参照」、「No.1」、および「No.2」に対応しており、「ND」は「検出されない」を指す)。表6に示すように、低圧(「No.1」)でプラズマ処理によって不純物(炭素および窒素)が膜に取り込まれることを確認した。処理圧力が50,000Pa(「No.2」)と高い場合、プラズマ処理をしない膜(「参照」)のように不純物は膜に取り込まれなかった。
【0076】
【0077】
上記では、No.3は、SiO膜が300℃の温度で堆積されたこと以外はNo.2と同じ方法で得られた膜のデータを示す。堆積条件を変更した場合でも、不純物の領域選択的取り込みにより側壁の厚のTS‐SiOを達成できることが確認された。
【0078】
理論実験例1
【0079】
この実験例では、
図3に示すように,不純物を領域選択的に取り込むことによる側壁の厚さのTS‐SiOが実行される。SiO膜は、
図3の工程S4として、実施例1と実質的に同様の方法で堆積される。実施例1のアクリル接着剤付きポリイミドテープを用いる代わりに、膜の堆積の際に、真空を破ることなく、CxHyガス(xとyはゼロ以外の整数)およびArがそれぞれ約0.5slmと約2slmでチャンバーに導入され、膜を炭化水素ガスに約1分間曝露し、それによって不純物(例えば、炭素)を膜の表面に吸着させる。その後、
図3の工程S2を、実施例1のプラズマ処理のための条件と同様の条件下で行い、その後実施例1と同様の条件下でウェットエッチング(
図3の工程S3)を行う。結果として、
図6の(c)に示す形態と同様の形態を有する側壁の厚さのTS‐SiOが達成される。
【0080】
当業者であれば、本発明の趣旨から逸脱することなく、多くの様々な修正が可能であることを理解するであろう。したがって、本発明の形態は例示的なものにすぎず、本発明の範囲を限定するものではないことは明らかである。