(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20240430BHJP
C23C 16/52 20060101ALI20240430BHJP
H01L 21/316 20060101ALN20240430BHJP
H01L 21/318 20060101ALN20240430BHJP
【FI】
H01L21/31 C
C23C16/52
H01L21/316 S
H01L21/318 A
(21)【出願番号】P 2022166726
(22)【出願日】2022-10-18
(62)【分割の表示】P 2021120100の分割
【原出願日】2018-03-12
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2017179784
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(72)【発明者】
【氏名】野村 誠
(72)【発明者】
【氏名】水口 靖裕
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 一人
(72)【発明者】
【氏名】余川 孝士
(72)【発明者】
【氏名】白川 真人
(72)【発明者】
【氏名】末吉 雅子
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-168422(JP,A)
【文献】特開2011-029475(JP,A)
【文献】国際公開第2013/176144(WO,A1)
【文献】特開2002-170819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/52
H01L 21/316
H01L 21/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類のガスを供給して基板の処理を行う処理容器と、
プラズマを発生させるプラズマユニットと、
前記処理容器内の温度を検出するよう構成される温度センサと、
前記基板の処理を行う前に、前記処理容器内に前記基板の搬送を行うことなく、前記処理容器内の温度を調整する前処理レシピに従い、前記ガスのうち少なくとも1つのガスを供給し、前記温度センサにより検出される温度が、予め設定される上限値及び下限値により規定される目標温度の範囲内に収まるように、前記プラズマユニットの出力を制御することが可能に構成されている制御部と、
を備えた基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記温度センサにより検出される温度が、前記目標温度の下限値よりも低い場合、前記処理容器内の温度が上昇するように、前記プラズマユニットの出力を制御するよう構成されている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記温度センサにより検出される温度が、前記目標温度の上限値よりも高い場合、前記処理容器内の温度が下降するように、前記プラズマユニットの出力を制御するよう構成されている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記温度センサにより検出される温度が、前記目標温度の下限値よりも低い場合は、前記処理容器内の温度が上昇するように、また、前記目標温度の上限値を超えた場合は、前記処理容器内の温度が下降するように、前記プラズマユニットの出力を制御するよう構成されている請求項1記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記温度センサにより検出される温度が、前記目標温度の下限値よりも高く、前記目標温度の上限値よりも低い場合、前記前処理レシピを終了させるよう構成されている請求項1記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記処理容器にそれぞれ設けられた温度センサにより検出される各々の温度が、前記目標温度の下限値よりも高く、前記目標温度の上限値よりも低い場合、前記前処理レシピを終了させるよう構成されている請求項1記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記処理容器にそれぞれ設けられた温度センサのうち、少なくとも一つの温度センサにより検出される温度が、前記目標温度の上限値よりも高い場合、若しくは、前記目標温度の下限値よりも低い場合、前記前処理レシピを継続するよう構成されている請求項1記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記プラズマユニットは前記処理容器の外周に設けられたコイルを備える、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
処理ガスを供給して基板の処理を行う処理容器と
プラズマを発生させるプラズマユニットと、
前記処理容器内の温度を検出するよう構成される温度センサと、
前記基板の処理を行う前に、前記処理容器内に前記基板の搬送を行うことなく、前記処理容器内の温度を調整する前処理レシピに従い、前記処理ガスを供給し、前記温度センサにより検出される温度が、予め設定される上限値及び下限値により規定される目標温度の範囲内に収まるように、前記プラズマユニットの出力を制御することが可能に構成されている制御部と、
を備えた基板処理装置。
【請求項10】
複数種類のガスを供給して基板の処理を行う処理容器と、
プラズマを発生させるプラズマユニットと、
前記処理容器内の温度を検出するよう構成される温度センサと、
前記基板の処理を行う前に、前記処理容器内に前記基板がない状態で、前記処理容器内の温度を調整する前処理レシピに従い、前記ガスのうち少なくとも1つのガスを供給し、前記温度センサにより検出される温度が、予め設定される上限値及び下限値により規定される目標温度の範囲内に収まるように、前記プラズマユニットの出力を制御することが可能に構成されている制御部と、
を備えた基板処理装置。
【請求項11】
基板を処理する処理容器内に、処理ガスを供給する工程と、
前記処理容器内でプラズマを発生させるプラズマユニットの出力を制御する工程と、
前記処理容器内の温度を検出する工程と、
前記処理容器内に前記基板の搬送を行うことなく、前記基板を処理する際に供給される前記処理ガスを供給し、前記温度が予め設定される上限値及び下限値により規定される目標温度の範囲内に収まるように、前記プラズマユニットの出力を制御する前処理工程と、
前記基板の処理を実行する処理工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項12】
基板を処理する処理容器内に、処理ガスを供給する手順と、
前記処理容器内でプラズマを発生させるプラズマユニットの出力を制御する手順と、
前記処理容器内の温度を検出する手順と、
前記処理容器内に前記基板の搬送を行うことなく、前記基板を処理する際に供給される前記処理ガスを供給し、前記温度が予め設定される上限値及び下限値により規定される目標温度の範囲内に収まるように、前記プラズマユニットの出力を制御する前処理手順と、
前記基板の処理を実行する処理手順と、
をコンピュータにより基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項13】
基板を処理する処理容器内に、処理ガスを供給する工程と、
前記処理容器内の温度を検出する工程と、
前記処理容器内に前記基板の搬送を行うことなく、前記基板処理時に供給される前記処理ガスを供給し、前記温度が予め設定される上限値及び下限値により規定される目標温度の範囲内に収まるように、前記処理容器内でプラズマを発生させるプラズマユニットの出力を制御する前処理工程と、
を有する処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラッシュメモリ等の半導体装置は高集積化の傾向にある。それに伴い、パターンサイズが著しく微細化されている。これらのパターンを形成する際、製造工程の一工程として、基板に酸化処理や窒化処理等の所定の処理を行う工程が実施される場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、プラズマ励起した処理ガスを用いて基板上に形成されたパターン表面を改質処理することが開示されている。
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現状、基板処理の前処理に数枚のダミー基板処理を実行することにより、石英ドームの温度を上昇させた後、製品ロット(製品基板群)を処理するため、生産性の低下が懸念される。
【0006】
本発明は、製品ロットを処理する前にダミー基板を用いない前処理を実行するレシピ実行制御を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、複数種類のガスを供給して基板の処理を行う処理容器と、プラズマを発生させるプラズマユニットと、基板の処理を行う前に、処理容器内に基板の搬送を行うことなく、処理容器内の温度を調整する前処理レシピに従い、ガスのうち少なくとも1つのガスを用いて、処理容器内の温度が、目標温度の範囲内に収まるよう、プラズマユニットの出力を制御することが可能に構成されている制御部と、を備えた基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製品ロット処理用の処理レシピ前の前処理に費やす時間を短縮することにより、生産性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成図(上面図)。
【
図2】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略断面図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の制御部(制御手段)の構成を示す図。
【
図4】本発明の一実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図。
【
図5】本発明の一実施形態に係るシーケンスレシピ編集画面の図示例。
【
図6A】本発明の一実施形態に係る前処理レシピのフローの一実施例。
【
図6B】本発明の一実施形態に係る前処理レシピのフローの一実施例。
【
図7】本発明の一実施形態に係る前処理レシピのフローの一実施例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明の第一の実施形態>
(1)基板処理装置の構成
本発明の第1実施形態に係る基板処理装置について、
図1を用いて以下に説明する。
【0011】
図1に示す基板処理装置は、減圧状態で基板(例えばシリコン等からなるウエハW)を取り扱う真空側の構成と、大気圧状態においてウエハWを取り扱う大気圧側の構成とを備えている。真空側の構成は、主に、真空搬送室TMと、ロードロック室LM1,LM2と、ウエハWを処理する処理モジュール(処理機構)PM1~PM4とを備える。大気圧側の構成は、主に、大気圧搬送室EFEMと、ロードポートLP1~LP3とを備える。ロードポートLP1~LP3には、ウエハWを収納したキャリアCA1~CA3が、基板処理装置外部から搬送されて載置され、また、基板処理装置外部へ搬送される。このような構成により、例えば、ロードポートLP1上のキャリアCA1から未処理のウエハWが取り出され、ロードロック室LM1を経て、処理モジュールPM1へ搬入されて処理された後、処理済みのウエハWは、その逆の手順で、ロードポートLP1上のキャリアCA1へ戻される。
【0012】
(真空側の構成)
真空搬送室TMは、真空状態などの大気圧未満の負圧(減圧)に耐えることが出来る真空気密可能な構造に構成されている。なお、本実施形態においては、真空搬送室TMの筐体は、平面視が五角形で、上下両端が閉塞した箱形状に形成されている。ロードロック室LM1,LM2、処理モジュールPM1~PM4は、真空搬送室TMの外周を囲むように配置されている。なお、処理モジュールPM1~PM4を総称又は代表する場合は、処理モジュールPMと称する。ロードロック室LM1,LM2を総称又は代表する場合は、ロードロック室LMと称する。その他の構成(後述する真空ロボットVR、アームVRA等)についても同様のルールとする。
【0013】
真空搬送室TM内には、減圧状態でウエハWを搬送する搬送手段としての真空ロボットVRが例えば1台設けられている。真空ロボットVRは、ウエハWを基板載置部である2組の基板支持アーム(以下、アーム)VRAに載せることで、ロードロック室LM及び処理モジュールPMとの間で、ウエハWの搬送を行なう。真空ロボットVRは、真空搬送室TMの気密性を維持しつつ昇降できるように構成される。また、2組のアームVRAは、上下方向に離間して設けられ、それぞれ水平方向に伸縮でき、係る水平面内で回転移動できるように構成されている。
【0014】
処理モジュールPMは、ウエハWが載置される基板載置部をそれぞれ備え、例えばウエハWを1枚ずつ減圧状態で処理する枚葉式の処理室として構成されている。すなわち、処理モジュールPMは、それぞれが例えばプラズマ等を用いたエッチングやアッシング、化学反応による成膜など、ウエハWに付加価値を与える処理室として機能する。
【0015】
処理モジュールPMは、開閉弁としてのゲートバルブPGVにより真空搬送室TMにそれぞれ連接されている。したがって、ゲートバルブPGVを開けることにより、真空搬送室TMとの間で減圧下にてウエハWの搬送を行うことが可能である。また、ゲートバルブPGVを閉じることにより、処理モジュールPM内の圧力や処理ガス雰囲気を保持したまま、ウエハWに対して各種の基板処理を行うことが可能である。
【0016】
ロードロック室LMは、真空搬送室TM内へウエハWを搬入する予備室として、あるいは真空搬送室TM内からウエハWを搬出する予備室として機能する。ロードロック室LMの内部には、ウエハWを搬入搬出する際、ウエハWを一時的に支持する基板載置部としてのバッファステージ(不図示)が、それぞれ設けられている。バッファステージは、複数枚(例えば2枚)のウエハWを保持する多段型スロットとして構成されていてもよい。
【0017】
また、ロードロック室LMは、開閉弁としてのゲートバルブLGVにより真空搬送室TMにそれぞれ連接されており、また、開閉弁としてのゲートバルブLDにより後述する大気圧搬送室EFEMにそれぞれ連接されている。したがって、真空搬送室TM側のゲートバルブLGVを閉じたまま、大気圧搬送室EFEM側のゲートバルブLDを開けることにより、真空搬送室TM内の真空気密を保持したまま、ロードロック室LMと大気圧搬送室EFEMとの間で、大気圧下にてウエハWの搬送を行うことが可能である。
【0018】
また、ロードロック室LMは、真空状態などの大気圧未満の減圧に耐えることが出来る構造に構成されており、その内部をそれぞれ真空排気することが可能となっている。したがって、大気圧搬送室EFEM側のゲートバルブLDを閉じてロードロック室LMの内部を真空排気した後で、真空搬送室TM側のゲートバルブLGVを開けることにより、真空搬送室TM内の真空状態を保持したまま、ロードロック室LMと真空搬送室TMとの間で、減圧下にてウエハWの搬送を行うことが可能である。このように、ロードロック室LMは、大気圧状態と減圧状態とを切換え可能に構成されている。
【0019】
(大気圧側の構成)
一方、基板処理装置の大気圧側には、上述の通り、ロードロック室LM1,LM2に接続されたフロントモジュールである大気圧搬送室EFEM(Equipment Front End Module)と、大気圧搬送室EFEMに接続され、例えば1ロット分、25枚のウエハWをそれぞれ収納したウエハ収納容器としてのキャリアCA1~CA3を載置するキャリア載置部としてのロードポートLP1~LP3と、が設けられている。このようなキャリアCA1~CA3としては、例えばFOUP(Front Opening Unified Pod)が使用される。ここで、ロードポートLP1~LP3を総称又は代表する場合は、ロードポートLPと称する。キャリアCA1~CA3を総称又は代表する場合は、キャリアCAと称する。真空側の構成と同様に大気圧側の構成(後述するキャリアドアCAH1~CAH3、キャリアオープナCP1~CP3等)についても同様のルールとする。
【0020】
大気圧搬送室EFEM内には、搬送手段としての大気圧ロボットARが例えば1台設けられている。大気圧ロボットARは、ロードロック室LM1とロードポートLP1上のキャリアCAとの間でウエハWの搬送を行なう。大気圧ロボットARも、真空ロボットVRと同様に基板載置部である2組のアームARAを有する。
【0021】
キャリアCA1には、キャリアCAのキャップ(蓋)であるキャリアドアCAHが設けられている。ロードポートLP上に載置されたキャリアCAのドアCAHが開放された状態で、基板搬入搬出口CAA1を通して、大気圧ロボットARによりキャリアCA内にウエハWが収納され、また、キャリアCA内のウエハWが大気圧ロボットARにより搬出される。
【0022】
また、大気圧搬送室EFEM内には、それぞれキャリアドアCAHを開閉するためのキャリアオープナCPが、それぞれロードポートLPに隣設されている。つまり、大気圧搬送室EFEM内は、キャリアオープナCPを介してロードポートLPに隣接して設けられている。
【0023】
キャリアオープナCPは、キャリアドアCAHと密着可能なクロージャと、クロージャを水平及び鉛直方向に動作させる駆動機構とを有する。キャリアオープナCPは、キャリアドアCAHにクロージャを密着した状態で、クロージャをキャリアドアCAHとともに水平及び鉛直方向に動かすことにより、キャリアドアCAHを開閉する。
【0024】
また、大気圧搬送室EFEM内には、基板位置修正装置として、ウエハWの結晶方位の位置合わせ等を行うオリフラ合わせ装置であるアライナーAUが設けられている。また、大気圧搬送室EFEMには、大気圧搬送室EFEMの内部にクリーンエアを供給するクリーンエアユニット(図示しない)が設けられている。
【0025】
ロードポートLPは、ロードポートLP上に、複数枚の基板Wを収納したキャリアCA1~CA3をそれぞれ載置するように構成される。それぞれのキャリアCA内には、ウエハWをそれぞれ収納する収納部としてのスロット(図示せず)が例えば1ロット分、25スロット設けられている。各ロードポートLPはキャリアCAが載置されると、キャリアCAに付され、キャリアCAを識別するキャリアIDを示すバーコード等を読み取って記憶するよう構成される。
【0026】
次に、基板処理装置を統括的に制御する制御部10は、基板処理装置の各部を制御するよう構成される。制御部10は、操作部としての装置コントローラ11と、搬送制御部としての搬送系コントローラ31と、処理制御部としてのプロセスコントローラ221と、を少なくとも含む。
【0027】
装置コントローラ11は、図示しない操作表示部とともに、操作員とのインタフェースであり、操作表示部を介して操作員による操作や指示を受け付けるよう構成される。操作表示部には、操作画面や各種データ等の情報が表示される。操作表示部に表示されるデータは、装置コントローラ11の記憶部に記憶される。
【0028】
搬送系コントローラ31は、真空ロボットVRや大気圧ロボットARを制御するロボットコントローラを含み、ウエハWの搬送制御や操作員から指示された作業の実行を制御するよう構成される。また、搬送系コントローラ13は、例えば装置コントローラ11を介して操作員により作成又は編集されて作成された搬送レシピに基づいて、ウエハWを搬送する際の制御データ(制御指示)を、真空ロボットVRや大気圧ロボットAR、各種バルブ、スイッチ等に対して出力し、基板処理装置内におけるウエハWの搬送制御を行う。尚、プロセスコントローラ221の詳細は後述する。制御部10の各コントローラ11,31,222のハードウエア構成も、後述するプロセスコントローラ222と同様な構成であるため、ここでの説明は省略する。
【0029】
制御部10は、
図1に示すように基板処理装置内に設けるだけでなく、基板処理装置外に設けられていても良い。また、装置コントローラ11や搬送系コントローラ31や処理モジュールPMを制御する処理制御部としてのプロセスコントローラ221は、例えばパソコン(パーソナルコンピュータ)等の一般的な汎用コンピュータとして構成されていてもよい。この場合、各種プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体(USBメモリ、DVD等)を用いて汎用コンピュータにプログラムをインストールすることにより、各コントローラを構成することができる。
【0030】
また、上述の処理を実行するプログラムを供給するための手段は、任意に選択できる。上述のように所定の記録媒体を介して供給するほか、例えば、通信回線、通信ネットワーク、通信システムなどを介して供給することができる。この場合、例えば、通信ネットワークの掲示板に当該プログラムを掲示し、これをネットワークを介して搬送波に重畳して供給してもよい。そして、このようにして提供されたプログラムを起動し、基板処理装置のOS(Operating System)の制御下、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の処理を実行することができる。
【0031】
(処理室)
次に、本発明の第1実施形態に係る処理機構としての処理モジュールPMについて、
図2を用いて説明する。処理機構PMは、ウエハWをプラズマ処理する処理炉202を備えている。処理炉202には、処理室201を構成する処理容器203が設けられている。処理容器203は、第1の容器である石英製のドーム型の上側容器210(以後、石英ドームともいう)と、第2の容器である碗型の下側容器211とを備えている。上側容器210が下側容器211の上に被さることにより、処理室201が形成される。また、上側容器210には熱電対等の温度センサ280が設けられ、上側容器210の温度を検出することができるよう構成されている。上側容器210は、例えば酸化アルミニウム(Al
2O
3)または石英(SiO
2)等の非金属材料で形成されており、下側容器211は、例えばアルミニウム(Al)で形成されている。
【0032】
また、下側容器211の下部側壁には、ゲートバルブ244が設けられている。ゲートバルブ244は、開いているとき、搬送機構(図示せず)を用いて、搬入出口245を介して、処理室201内へウエハWを搬入したり、処理室201外へとウエハWを搬出したりすることができるように構成されている。ゲートバルブ244は、閉まっているときには、処理室201内の気密性を保持する仕切弁となるように構成されている。
【0033】
処理室201は、周囲にコイル212が設けられているプラズマ生成空間201aと、プラズマ生成空間201aに連通し、ウエハWが処理される基板処理空間201bを有する。プラズマ生成空間201aはプラズマが生成される空間であって、処理室201の内、コイル212の下端より上方であって、且つコイル212の上端より下方の空間を言う。一方、基板処理空間201bは、基板がプラズマを用いて処理される空間であって、コイル212の下端より下方の空間を言う。本実施形態では、プラズマ生成空間201aと基板処理空間201bの水平方向の径は略同一となるように構成されている。
【0034】
(サセプタ)
処理室201の底側中央には、ウエハWを載置する基板載置部としてのサセプタ217が配置されている。サセプタ217は例えば窒化アルミニウム(AlN)、セラミックス、石英等の非金属材料から形成されており、ウエハW上に形成される膜等に対する金属汚染を低減することができるように構成されている。
【0035】
サセプタ217の内部には、加熱機構としてのヒータ217bが一体的に埋め込まれている。ヒータ217bは、電力が供給されると、ウエハW表面を例えば25℃から750℃程度まで加熱することができるように構成されている。
【0036】
サセプタ217は、下側容器211とは電気的に絶縁されている。インピーダンス調整電極217cは、サセプタ217に載置されたウエハW上に生成されるプラズマの密度の均一性をより向上させるために、サセプタ217内部に設けられており、インピーダンス調整部としてのインピーダンス可変機構275を介して接地されている。インピーダンス可変機構275はコイルや可変コンデンサから構成されており、コイルのインダクタンス及び抵抗並びに可変コンデンサの容量値を制御することにより、インピーダンスを約0Ωから処理室201の寄生インピーダンス値の範囲内で変化させることができるように構成されている。
【0037】
サセプタ217には、サセプタを昇降させる駆動機構を備えるサセプタ昇降機構268が設けられている。また、サセプタ217には貫通孔217aが設けられるとともに、下側容器211の底面にはウエハ突上げピン266が設けられている。サセプタ昇降機構268によりサセプタ217が下降させられたときには、ウエハ突上げピン266がサセプタ217とは非接触な状態で、貫通孔217aを突き抜けるように構成されている。
主に、サセプタ217及びヒータ217b、電極217cにより、本実施形態に係る基板載置部が構成されている。
【0038】
(ガス供給部)
処理室201の上方、つまり上側容器210の上部には、ガス供給ヘッド236が設けられている。ガス供給ヘッド236は、キャップ状の蓋体233と、ガス導入口234と、バッファ室237と、開口238と、遮蔽プレート240と、ガス吹出口239とを備え、反応ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。バッファ室237は、ガス導入口234より導入される反応ガスを分散する分散空間としての機能を持つ。
【0039】
ガス導入口234には、酸素含有ガスとしての酸素(O2)ガスを供給する酸素含有ガス供給管232aの下流端と、水素含有ガスとしての水素(H2)ガスを供給する水素含有ガス供給管232bの下流端と、不活性ガスとしてのアルゴン(Ar)ガスを供給する不活性ガス供給管232cと、が合流するように接続されている。酸素含有ガス供給管232aには、上流側から順に、O2ガス供給源250a、流量制御装置としてのマスフローコントローラ(MFC)252a、開閉弁としてのバルブ253aが設けられている。水素含有ガス供給管232bには、上流側から順に、H2ガス供給源250b、MFC252b、バルブ253bが設けられている。不活性ガス供給管232cには、上流側から順に、Arガス供給源250c、MFC252c、バルブ253cが設けられている。酸素含有ガス供給管232aと水素含有ガス供給管232bと不活性ガス供給管232cとが合流した下流側には、バルブ243aが設けられ、ガス導入口234の上流端に接続されている。バルブ253a、253b、253c、243aを開閉させることによって、MFC252a、252b、252cによりそれぞれのガスの流量を調整しつつ、ガス供給管232a、232b、232cを介して、酸素含有ガス、水素ガス含有ガス、不活性ガス等の処理ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。
【0040】
主に、ガス供給ヘッド236(蓋体233、ガス導入口234、バッファ室237、開口238、遮蔽プレート240、ガス吹出口239)、酸素含有ガス供給管232a、水素含有ガス供給管232b、不活性ガス供給管232c、MFC252a,252b,252c、バルブ253a,253b,253c,243aにより、本実施形態に係るガス供給部(ガス供給系)が構成されている。
【0041】
また、ガス供給ヘッド236、酸素含有ガス供給管232a、MFC252a、バルブ253a,243aにより、本実施形態に係る酸素含有ガス供給系が構成されている。さらに、ガス供給ヘッド236、水素含有ガス供給管232b、MFC252b、バルブ253b,243aにより、本実施形態に係る水素ガス供給系が構成されている。さらに、ガス供給ヘッド236、不活性ガス供給管232c、MFC252c、バルブ253c,243aにより、本実施形態に係る不活性ガス供給系が構成されている。
【0042】
尚、本実施形態に係る基板処理装置は、酸素含有ガス供給系から酸素含有ガスとしてのO2ガスを供給することにより酸化処理を行うように構成されているが、酸素含有ガス供給系に替えて、窒素含有ガスを処理室201内に供給する窒素含有ガス供給系を設けることもできる。このように構成された基板処理装置によれば、基板の酸化処理に替えて窒化処理を行うことができる。この場合、O2ガス供給源250aに替えて、例えば窒素含有ガス供給源としてのN2ガス供給源が設けられ、酸素含有ガス供給管232aが窒素含有ガス供給管として構成される。
【0043】
(排気部)
下側容器211の側壁には、処理室201内から反応ガスを排気するガス排気口235が設けられている。ガス排気口235には、ガス排気管231の上流端が接続されている。ガス排気管231には、上流側から順に圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)242、開閉弁としてのバルブ243b、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。 主に、ガス排気口235、ガス排気管231、APC242、バルブ243bにより、本実施形態に係る排気部が構成されている。尚、真空ポンプ246を排気部に含めても良い。
【0044】
(プラズマ生成部)
処理室201の外周部、すなわち上側容器210の側壁の外側には、処理室201を囲うように、第1の電極としての、螺旋状の共振コイル212が設けられている。共振コイル212には、RFセンサ272、高周波電源273、高周波電源273のインピーダンスや出力周波数の整合を行う整合器274が接続される。主に、共振コイル212、RFセンサ272、整合器274により、本実施形態に係るプラズマ生成部(プラズマユニット)が構成されている。尚、プラズマ生成部として高周波電源273を含めても良い。
【0045】
高周波電源273は、共振コイル212に高周波電力(RF電力)を供給するものである。RFセンサ272は高周波電源273の出力側に設けられ、供給される高周波の進行波や反射波の情報をモニタするものである。RFセンサ272によってモニタされた反射波電力は整合器274に入力され、整合器274は、RFセンサ272から入力された反射波の情報に基づいて、反射波が最小となるよう、高周波電源273のインピーダンスや出力される高周波電力の周波数を制御するものである。
【0046】
高周波電源273は、発振周波数および出力を規定するための高周波発振回路およびプリアンプを含む電源制御手段(コントロール回路)と、所定の出力に増幅するための増幅器(出力回路)とを備えている。電源制御手段は、操作パネルを通じて予め設定された周波数および電力に関する出力条件に基づいて増幅器を制御する。増幅器は、共振コイル212に伝送線路を介して一定の高周波電力を供給する。
【0047】
共振コイル212は、所定の波長の定在波を形成するため、一定の波長で共振するように巻径、巻回ピッチ、巻数が設定される。すなわち、共振コイル212の電気的長さは、高周波電源273から供給される高周波電力の所定周波数における1波長の整数倍(1倍、2倍、…)に相当する長さに設定される。
【0048】
共振コイル212を構成する素材としては、銅パイプ、銅の薄板、アルミニウムパイプ、アルミニウム薄板、ポリマーベルトに銅またはアルミニウムを蒸着した素材などが使用される。共振コイル212は、絶縁性材料にて平板状に形成され、且つベースプレート248の上端面に鉛直に立設された複数のサポート(図示せず)によって支持される。
【0049】
(制御部)
図3に示すように、処理制御部としてのコントローラ221は、信号線Aを通じてAPC242、バルブ243b及び真空ポンプ246を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276及びインピーダンス可変機構275を、信号線Dを通じてゲートバルブ244を、信号線Eを通じてRFセンサ272、高周波電源273及び整合器274を、信号線Fを通じてMFC252a~252c及びバルブ253a~253c,243aを、それぞれ制御するように構成されている。
【0050】
処理制御部であるコントローラ221は、CPU(Central Processing Unit)221a、RAM(Random Access Memory)221b、記憶装置221c、I/Oポート221dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM221b、記憶装置221c、I/Oポート221dは、内部バス221eを介して、CPU221aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ221には、例えばタッチパネルやディスプレイ等として構成された入出力装置222が接続されている。
【0051】
記憶装置221cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置221c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプログラムレシピ等が読み出し可能に格納されている。プロセスレシピ(処理レシピ)や、後述する前処理レシピとしてのチャンバコンディションレシピ等の各種プログラムレシピは、各手順を処理制御部221に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプログラムレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プログラムレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM221bは、CPU221aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0052】
I/Oポート221dは、上述のMFC252a~252c、バルブ253a~253c、243a、243b、ゲートバルブ244、APCバルブ242、真空ポンプ246、RFセンサ272、高周波電源273、整合器274、サセプタ昇降機構268、インピーダンス可変機構275、ヒータ電力調整機構276、等に接続されている。
【0053】
CPU221aは、記憶装置221cからの制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置222からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置221cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU221aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、I/Oポート221d及び信号線Aを通じてAPCバルブ242の開度調整動作、バルブ243bの開閉動作、及び真空ポンプ246の起動・停止を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268の昇降動作を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276によるヒータ217bへの供給電力量調整動作(温度調整動作)や、インピーダンス可変機構275によるインピーダンス値調整動作を、信号線Dを通じてゲートバルブ244の開閉動作を、信号線Eを通じてRFセンサ272、整合器274及び高周波電源273の動作を、信号線Fを通じてMFC252a~252cによる各種ガスの流量調整動作、及びバルブ253a~253c、243aの開閉動作、等を制御するように構成されている。
【0054】
処理制御部221は、外部記憶装置(例えば、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)223に格納された上述のプログラムをコンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置221cや外部記憶装置223は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置221c単体のみを含む場合、外部記憶装置223単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合が有る。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置223を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0055】
(2)基板処理工程
図4は、本実施形態に係る処理レシピとしての基板処理工程を示すフロー図である。本実施形態に係る基板処理工程は、例えば半導体デバイスの製造工程の一工程として、上述の処理機構PMにより実施される。以下の説明において、処理機構PMを構成する各部の動作は、処理制御部221により制御される。
【0056】
(基板搬入工程S110)
まず、サセプタ昇降機構268がウエハWの搬送位置までサセプタ217を下降させて、サセプタ217の貫通孔217aにウエハ突上げピン266を貫通させる。その結果、ウエハ突き上げピン266が、サセプタ217表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。
【0057】
続いて、ゲートバルブ244を開き、処理室201に隣接する真空搬送室から、ウエハ搬送機構(図示せず)を用いて処理室201内にウエハWを搬入する。搬入されたウエハWは、サセプタ217の表面から突出したウエハ突上げピン266上に水平姿勢で支持される。処理室201内にウエハWを搬入したら、ウエハ搬送機構を処理室201外へ退避させ、ゲートバルブ244を閉じて処理室201内を密閉する。そして、サセプタ昇降機構268がサセプタ217を上昇させることにより、ウエハWはサセプタ217の上面に支持される。
【0058】
(昇温・真空排気工程S120)
続いて、処理室201内に搬入されたウエハWの昇温を行う。ヒータ217bは予め加熱されており、ヒータ217bが埋め込まれたサセプタ217上にウエハWを保持することで、例えば150~750℃の範囲内の所定値にウエハWを加熱する。ここでは、ウエハWの温度が600℃となるよう加熱する。また、ウエハWの昇温を行う間、真空ポンプ246によりガス排気管231を介して処理室201内を真空排気し、処理室201内の圧力を所定の値とする。真空ポンプ246は、少なくとも後述の基板搬出工程S160が終了するまで作動させておく。
【0059】
(反応ガス供給工程S130)
次に、反応ガスとして、酸素含有ガスであるO2ガスと水素含有ガスであるH2ガスの供給を開始する。具体的には、バルブ253a及び253bを開け、MFC252a及び252bにて流量制御しながら、処理室201内へO2ガス及びH2ガスの供給を開始する。このとき、O2ガスの流量を、例えば20~2000sccm、好ましくは20~1000sccmの範囲内の所定値とする。また、H2ガスの流量を、例えば20~1000sccm、好ましくは20~500sccmの範囲内の所定値とする。より好適な例として、O2ガスとH2ガスの合計流量を1000sccmとし、流量比はO2/H2≧950/50とすることが好ましい。
また、処理室201内の圧力が、例えば1~250Pa、好ましくは50~200Paの範囲内の所定圧力、より好ましくは約150Paとなるように、APC242の開度を調整して処理室201内の排気を制御する。このように、処理室201内を適度に排気しつつ、後述のプラズマ処理工程S140の終了時までO2ガス及びH2ガスの供給を継続する。
【0060】
(プラズマ処理工程S140)
処理室201内の圧力が安定したら、共振コイル212に対して高周波電源273からRFセンサ272を介して、高周波電力の印加を開始する。本実施形態では、高周波電源273から共振コイル212に27.12MHzの高周波電力を供給する。共振コイル212に供給する高周波電力は、例えば100~5000Wの範囲内の所定の電力であって、好ましくは100~3500Wであり、より好ましくは約3500Wとする。電力が100Wより低い場合、プラズマ放電を安定的に生じさせることが難しい。
【0061】
これにより、O2ガス及びH2ガスが供給されているプラズマ生成空間201a内に高周波電界が形成され、係る電界により、プラズマ生成空間の共振コイル212の電気的中点に相当する高さ位置に、最も高いプラズマ密度を有するドーナツ状の誘導プラズマが励起される。プラズマ状のO2ガス及びH2ガスは解離し、酸素を含む酸素ラジカル(酸素活性種)や酸素イオン、水素を含む水素ラジカル(水素活性種)や水素イオン、等の反応種が生成される。
【0062】
前述したように、共振コイル212の電気的長さが高周波電力の波長と同じ場合、プラズマ生成空間201a内には、共振コイル212の電気的中点の近傍において、処理室壁や基板載置台との容量結合が殆どなく、電気的ポテンシャルの極めて低いドーナツ状の誘導プラズマが励起される。電気的ポテンシャルが極めて低いプラズマが生成されることから、プラズマ生成空間201aの壁や、サセプタ217上にシースが発生するのを防ぐことができる。したがって、本実施形態では、プラズマ中のイオンは加速されない。
【0063】
基板処理空間201bでサセプタ217上に保持されているウエハWには、誘導プラズマにより生成されたラジカルと加速されない状態のイオンが溝301内に均一に供給される。供給されたラジカル及びイオンは側壁301a及び301bと均一に反応し、表面のシリコン層をステップカバレッジが良好なシリコン酸化層へと改質する。
【0064】
その後、所定の処理時間、例えば10~300秒が経過したら、高周波電源273からの電力の出力を停止して、処理室201内におけるプラズマ放電を停止する。また、バルブ253a及び253bを閉めて、O2ガス及びH2ガスの処理室201内への供給を停止する。以上により、プラズマ処理工程S140が終了する。
【0065】
(真空排気工程S150)
O2ガス及びH2ガスの供給を停止したら、ガス排気管231を介して処理室201内を真空排気する。これにより、処理室201内のO2ガスやH2ガス、これらガスの反応により発生した排ガス等を処理室201外へと排気する。その後、APC242の開度を調整し、処理室201内の圧力を処理室201に隣接する真空搬送室(ウエハWの搬出先。図示せず)と同じ圧力(例えば100Pa)に調整する。
【0066】
(基板搬出工程S160)
処理室201内が所定の圧力となったら、サセプタ217をウエハWの搬送位置まで下降させ、ウエハ突上げピン266上にウエハWを支持させる。そして、ゲートバルブ244を開き、ウエハ搬送機構を用いてウエハWを処理室201外へ搬出する。以上により、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。
【0067】
次に、
図5乃至
図7を用いて、制御部10による前処理レシピ(チャンバコンディションレシピ)の実行制御について説明する。
【0068】
先ず、前処理レシピの設定について説明する。
図5に示すシーケンスレシピ編集画面で、前処理レシピを含む各種レシピを指定することができる。
【0069】
シーケンスレシピ編集画面は、シーケンスレシピの名称を記入する欄、処理機構PM毎に前処理レシピの設定を行う領域、処理装置毎にアイドルレシピとしてのウォームアップレシピ、基板処理レシピとしてのプロセスレシピ、後処理レシピをそれぞれ処理機構PM毎に設定する領域、基板処理装置の運用種別を選択する領域をそれぞれ含む構成となっている。
【0070】
処理機構PM毎に前処理レシピの設定を行う領域では、それぞれの処理機構PM毎に目標温度を設定するための前処理レシピを設定する欄が設けられている。また、プロセスレシピ前に目標温度を確認する指定を自動的に全処理機構PMに設定する欄(自動実行設定欄)が設けられ、この欄にチェックが入っている場合、全処理機構PMの処理室201を構成する上側容器210の温度が目標温度に達するまで、全処理機構PMが待機するように構成される。
【0071】
図5に示すシーケンスレシピ編集画面において、前処理レシピの実行設定があり、自動実行設定が無い場合(自動実行設定欄にチェックが入っていない場合)、アイドルレシピ終了後、各処理機構PMで前処理レシピが実行され、実行指定された処理機構PMからレシピ完了報告が行われると、自動運転処理(プロセスレシピの実行)が行われる。このように、処理機構PM1の前処理レシピが終了したら次の処理(基板処理)へ移行することで処理室201を構成する上側容器210の温度より、スループットを優先する場合の適応が可能となる。
【0072】
以下、前処理レシピとしての前処理工程を構成する各工程を、
図6Aを用いて説明する。なお、前処理工程は、ダミー基板としてのウエハWをサセプタ217上に載置した状態で行うこともできるが、ここではダミー基板を用いない例について説明する。
【0073】
(真空排気工程S410)
まず、真空ポンプ246により処理室201を真空排気し、処理室201の圧力を所定の値とする。真空ポンプ246は、少なくとも排気・調圧工程S440が終了するまで作動させておく。なお、ヒータ217bも同様にサセプタ217を加熱するよう制御されている。
【0074】
(放電ガス供給工程S420)
次に、放電用ガスとして、
図4に示す処理レシピにおける反応ガスと同じく、O2ガスとH2ガスの混合ガスを処理室201内へ供給する。具体的なガス供給手順や、供給ガス流量、処理室201の圧力等の条件については、
図4に示す処理レシピと同様である。
【0075】
なお、後述するプラズマ放電工程S430におけるプラズマ放電を促進させる等の目的のため、Arガス等の他のガスを供給してもよく、O2ガス及びH2ガスの少なくともいずれかを供給しないようにしてもよい。また、供給ガス流量や、処理室201の圧力等の条件について異なる条件を設定してもよい。但し、
図4に示す処理レシピにおける反応ガスと同じ放電用ガスを用いる態様は、上側容器210を加熱する以外にも、処理室201の環境を次の処理レシピの安定状態に近づける効果があるため、好ましい態様の一つである。
【0076】
(プラズマ放電工程S430)
次に、共振コイル212に対して高周波電源273から高周波電力の印加を開始する。共振コイル212に供給する高周波電力の大きさも
図4に示す処理レシピと同様である。ただし、高周波電力の大きさは、プラズマ放電を促進させるため
図4に示す処理レシピより大きくしてもよく、また、他の処理条件に合わせて、100~5000Wの範囲内で異ならせてもよい。
【0077】
これにより、プラズマ生成空間201a内の、特に共振コイル212の上端、中点、及び下端のそれぞれの高さ位置に集中的にプラズマ放電が発生する。発生したプラズマ放電は上側容器210を内側から加熱する。特に、集中的にプラズマ放電が発生する上述の高さ位置に対応する上側容器210の部分及びその近傍は集中的に加熱される。
【0078】
コントローラ221は、温度センサとしての熱電対ユニット280により、少なくとも本工程の間、上側容器210の外周面の温度を測定(モニタ)しており、この測定温度が目標温度(第1の温度)以上となるまで、共振コイル212への高周波電力の印加を継続し、プラズマ放電を維持する。この測定温度が目標温度以上となったことを検知すると、コントローラ221は高周波電源273からの高周波電力の供給を停止するとともに、放電用ガスの処理室201への供給を停止し、本工程を終了する。
【0079】
このように、熱電対ユニット280の測定温度が目標温度以上となるまでプラズマ放電を発生させて、上側容器210等を加熱することにより、本工程に続く
図4に示す処理レシピにおいて形成される膜の厚さを所定の偏差範囲に収めることができる。ここで、目標温度として、予め
図4に示す処理レシピを連続的に実行することによってその際の安定温度の値を取得しておくことが望ましい。要するに、その安定温度が目標温度として設定される。
【0080】
(排気・調圧工程S440)
処理室201のガスを処理室201外へと排気する。その後、APCバルブ242の開度を調整し、処理室201の圧力を真空搬送室と同じ圧力とする。これにより、前処理工程を終了し、引き続き
図4に示すロット処理が実行される。
【0081】
次に、閾値が2点(上限値、下限値)で目標温度に幅を持たせた場合の前処理レシピのフローを
図6Bに示す。ロット処理開始要求があると、コントローラ221は、
図6Bに示す前処理レシピが開始されるよう構成されている。また、温度センサ280での石英ドーム210の温度検出も開始される。その後、少なくとも前処理レシピが終了するまで温度検出が行われる。
【0082】
(前準備工程S510)
先ず、プラズマを生成する前の前準備工程が実行される。具体的には、
図4に示す真空排気工程S410及び放電ガス供給工程S420が実行される。よって、詳細は省略する。
【0083】
(比較工程S520)
温度センサ280の温度(検出温度)が目標温度の上限値以下か比較される。目標温度の上限値より低い温度である場合、高周波電源273がオンとなり、高周波電力を処理室201に供給し、プラズマ処理が行われる(S530)と共に次のステップ(S550)へ移行する。プラズマ処理の詳細は、プラズマ放電工程S430にて説明済なので詳細は省略する。これにより、石英ドーム210の温度が上昇する。
【0084】
また、仮に目標温度の上限値を超えていれば、高周波電源273はオフのままで、プラズマ処理を行うことなく、そのまま次のステップ(S560)へ移行される。
【0085】
(監視工程S550)
コントローラ221は検出温度が目標温度の上限値を超えるまで待機する。
【0086】
また、プラズマ処理(S530)により石英ドーム210の温度を上昇させている場合、検出温度が目標温度の上限値に到達した時点で、高周波電源273をオフにし、次のステップ(S560)に移行する。尚、
図6Bに示されていないが、所定の時間経過しても、目標温度の上限値に到達しない場合、前処理レシピを停止するようにしてもよい。
【0087】
(温度保持工程S560)
コントローラ221は検出温度が目標温度の上下限値の範囲内を保持するように制御を行い、搬送系コントローラ31に温度保持工程S560に移ったことを通知する。
【0088】
例えば、プラズマ処理(S530)により、目標温度の上限値に到達した場合(S550)、プラズマ処理を停止(高周波電源273をオフ)する。一方、高周波電源273をオフにしたまま、石英ドーム210の温度を低下させて、検出温度が目標温度まで低下したときに、S530に示すプラズマ処理を行う。
【0089】
本工程では一定周期毎にコントローラ221が検出温度と目標温度の上下限値との比較を行い、高周波電源273のオンオフを行い、プラズマ検出温度が目標温度の下限値よりも低くなった場合、プラズマ処理(S530)が行われるように構成されている。その後は上述したように検出温度が目標温度の上下限値の範囲内を保持するために、高周波電源273のオンオフが行われる。
【0090】
搬送系コントローラ31は、接続されている全PM(PM1~PM4)のコントローラ221から、温度保持工程S560の処理に移った通知を受けたら、全PM(PM1~PM4)のコントローラ221に、後処理工程S580の処理に移るように指示する。
【0091】
(後処理工程S580)
コントローラ221は、搬送系コントローラ31から後処理工程S580の処理に移るように指示を受けたら後処理を行う。後処理の内容は、
図4に示す排気・調圧工程S440にて説明済のため省略する。後処理が終了することにより、前処理レシピが終了する。そして、コントローラ221は前処理レシピが終了したことを搬送系コントローラ31に通知する。
【0092】
搬送系コントローラ31は、全PM(PM1~PM4)の前処理レシピが終了したらロット処理で処理される製品ウエハを処理室201へ搬送し、その後、プロセスレシピが実施される。
【0093】
ここで、プロセスレシピがスタートするまでの時間に石英ドーム210の温度が低下し、目標温度から外れないように、コントローラ221で自発的に石英ドーム210の温度を監視し、自動で、高周波電源をオンオフ制御し、放電プラズマを発生させて、石英ドーム210の温度が、目標温度の上下限値の範囲内に収まるように一定周期毎に監視するようにしてもよい。
【0094】
このように、
図6に示す前処理レシピによれば、温度センサ280の測定温度が目標温度以上になるまで、若しくは、目標温度の上下限値の範囲内に収束するまでプラズマ放電を発生させて、石英ドーム210等を加熱することにより、本工程(前処理レシピの実行)に続く
図4に示す処理レシピにおいて形成される膜の厚さを所定の偏差範囲に収めることができる。
【0095】
また、ダミーウエハを用いない
図6に示す前処理レシピによれば、数枚のダミー処理を実行しプラズマ処理により石英ドーム内の温度を上昇させて、その後生産処理するため、生産性の低下及びダミーウエハを使用しなければならないという使い勝手の不便さを低減することができる。
【0096】
図7に基板処理装置全体の前処理レシピのフローを示す。
図7において、前処理レシピの実行設定があり、自動実行設定がある場合、アイドルレシピ終了後、各処理機構PMで目的温度に到達するまで前処理レシピが実行され、実行指定された処理機構PMから該前処理レシピ完了報告が行われると、自動運転処理(プロセスレシピの実行)が行われる。
【0097】
各処理機構PMにおける制御は、上述した
図6に示す通りである。ここで、処理機構PM1を制御するコントローラ221をPMC1と記載し、処理機構PM2はPMC2、処理機構PM3はPMC3、処理機構PM4はPMC4と記載する。このとき、装置コントローラ11をOU、搬送系コントローラ31をCCと記載する。
【0098】
オペレータの操作により装置コントローラ11、または、ホストコンピュータ等の上位コントローラよりロット開始要求を受信したCCは、各処理機構PMを制御するコントローラ221にウォームアップレシピ等のアイドルレシピの終了を確認する。尚、アイドルレシピが実行中であれば保留し、アイドルレシピ終了後、前処理レシピの実行要求を各処理機構PMへ要求する。図示例では上側容器210の温度がそれぞれ目標温度より低い時を示す。
【0099】
CCは、処理室201を構成する上側容器210の温度が目標温度に到達する温度到達待ちになる。各PMCは、
図5で指定されたレシピ名に従って処理を実施(前処理レシピを実行)する。また、各処理機構PMは、前処理レシピ実行中に上側容器210の温度が目標温度に達するとCCへイベント報告し、該当ステップを一時停止する。
【0100】
CCは、すべての処理機構PM内の上側容器210の温度が目標温度に到達した温度到達イベントを受信すると、各PMCへ次のステップ処理へ移行することを要求する。各PMCは前処理を再開する。CCは、すべてのPMCから前処理レシピの終了イベントを受信すると、ロット処理を開始するように処理制御部に処理レシピを実行させる。
<本発明の他の実施形態>
上述の実施形態では、プラズマを用いて基板表面に対して酸化処理や窒化処理を行う例について説明したが、これらの処理に限らず、プラズマを用いて基板に対して処理を施すあらゆる技術に適用することができる。例えば、プラズマを用いて行う基板表面に形成された膜に対する改質処理やドーピング処理、酸化膜の還元処理、当該膜に対するエッチング処理、レジストのアッシング処理、等に適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
W…ウエハ(基板) 10…制御部 201…処理室 221…プロセスコントローラ(処理制御部)