(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体溶液及びそれを用いるポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2020531945
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 KR2019012490
(87)【国際公開番号】W WO2020067727
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-06-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】10-2018-0114781
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0101527
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジンホ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジンヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、チェ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】パク、チャン ヒョ
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】藤井 勲
【審判官】小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/142170(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/021747(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/176000(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00- 73/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物であるBPDA(ビフェニルジアンヒドリド)とジアミンであるPDA(フェニレンジアミン)とを1:0.93~1:0.98のmol比で反応させて製造され、数平均分子量(Mn)が38,000g/molから50,000g/mоlであるポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体溶液を硬化させて得たポリイミドフィルムであって、
前記ポリイミド前駆体溶液の下記数式1によるT値が、0.9以上であり、
前記ポリイミドフィルムの熱分解温度(Td_5%)が、600℃以上であり、
前記ポリイミド前駆体溶液の気泡発生前、透過度が75%以上であり、気泡発生後、30分間放置した後の溶液の透過度が75%以上である、
ポリイミドフィルム:
[数式1]
【数1】
前記数式1において、
Aは、気泡を発生させた後、30分放置後、溶液の透過度であり、
Bは、気泡発生前、溶液の透過度であ
り、
前記気泡の発生は、インペラが連結された攪拌機を用いて前駆体溶液を200~500rpmで20~60秒間回転させることで行われ、
前記ポリイミド前駆体溶液の透過度が、Turbiscan(登録商標)(Formulaction、Turbiscan(登録商標) LAB)を用いて880nmの波長から測定される。
【請求項2】
前記ポリイミド前駆体溶液は、前記ポリイミド前駆体とピロリドン系有機溶媒とを含んでいる請求項1
に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のポリイミドフィルムを基板として含むフレキシブルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年9月27日付の大韓民国特許出願10-2018-0114781号及び2019年8月20日付の大韓民国特許出願10-2019-0101527号に基づいた優先権の利益を主張し、当該大韓民国特許出願の文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ポリイミド前駆体溶液及びこれにより製造されたポリイミドフィルムに係り、より詳細には、脱泡速度が向上したポリイミド前駆体溶液で製造されたポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
最近、ディスプレイ分野で製品の軽量化及び小型化が重要視されており、現在、使われているガラス基板の場合、重くてよく割れ、連続工程が難しいという限界があるために、ガラス基板を代替して、軽くて柔軟であり、連続工程が可能な長所を有するプラスチック基板を携帯電話、ノート型パソコン、PDA(Personal Digital Assistant)などに適用するための研究が活発に進められている。
【0004】
特に、ポリイミド(PI)樹脂は、合成が容易であり、薄膜フィルムを作ることができ、硬化のための架橋基が不要であるという長所を有しており、最近、電子製品の軽量及び精密化の現象によって、LCD、PDPなど半導体材料に集積化素材として多く適用されており、PIを軽くて柔軟な性質を有するフレキシブルディスプレイ基板(flexible plastic display board)に使用しようとする多くの研究が進められている。
【0005】
前記ポリイミド樹脂をフィルム化して製造したものが、ポリイミド(PI)フィルムであり、一般的に、ポリイミド樹脂は、芳香族二無水物と芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシアネートとを溶液重合してポリアミド酸誘導体溶液を製造した後、それをシリコンウェーハやガラスなどにコーティングし、熱処理によって硬化させる方法で製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、貯蔵安定性が向上したポリイミド前駆体溶液を提供するところにある。
【0007】
また、本発明は、前記ポリイミド前駆体溶液から製造されたポリイミドフィルムを提供する。
【0008】
本発明が解決しようとする他の課題は、前記ポリイミドフィルムを用いるフレキシブルデバイスを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述した課題を解決するために、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを1:0.93~1:0.99のmol比で反応させて製造され、数平均分子量(Mn)が38,000g/mol以上であるポリイミド前駆体を含み、下記数式1によるT値が、0.9以上であるポリイミド前駆体溶液を提供する。
[数式1]
【数1】
【0010】
前記式において、Aは、気泡を発生させた後、30分放置した後の溶液の透過度であり、Bは、気泡発生前の溶液の透過度である。
【0011】
一実施例によれば、前記ポリイミド前駆体が、PDA(フェニレンジアミン)及びBPDA(ビフェニルジアンヒドリド)を反応させて製造された重合体を含みうる。
【0012】
一実施例によれば、前記ポリイミド前駆体溶液の気泡発生前、透過度が75%以上であり、気泡発生後、30分間放置した後の溶液の透過度が75%以上である。
【0013】
一実施例によれば、前記ポリイミド前駆体溶液の透過度が、Turbiscan(Formulaction、Turbisca LAB)を用いて880nmの波長から測定されたものである。
【0014】
一実施例によれば、前記ポリイミド前駆体の数平均分子量が、60,000g/mol未満であるものである。
【0015】
一実施例によれば、前記ポリイミド前駆体溶液に含まれた溶媒が、ピロリドン系溶媒である。
【0016】
本発明の他の課題を解決するために、前記ポリイミド前駆体溶液を硬化させて製造されたポリイミドフィルムを提供する。
【0017】
一実施例によれば、前記ポリイミドフィルムの熱分解温度(Td_5%)が、600℃以上である。
【0018】
本発明は、また、前記ポリイミドフィルムを含むフレキシブルデバイスを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によるポリイミド前駆体溶液は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを1:0.93~1:0.99のmol比で反応させて製造され、数平均分子量が38,000g/mol以上であるポリイミド前駆体を含むことにより、耐熱性の高いポリイミドフィルムを製造することができ、溶液の脱泡特性を透過度を用いて数値化して気泡の含量を調節することにより、貯蔵安定性が向上する。また、本発明によるポリイミド前駆体溶液で製造されたポリイミドフィルムは、フィルム内部気泡が減少することにより、素子形成時に発生する無機膜のクラック(crack)形成を抑制させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、多様な変換を加え、さまざまな実施例を有することができるので、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明で詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる、あらゆる変換、均等物または代替物を含むものと理解しなければならない。本発明を説明するに当って、関連した公知技術についての具体的な説明が、本発明の要旨を不明にする恐れがあると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0021】
本明細書において、あらゆる化合物または有機基は、特別な言及がない限り、置換または非置換のものである。ここで、「置換」とは、化合物または有機基に含まれた少なくとも1つの水素がハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルコキシ基、カルボン酸基、アルデヒド基、エポキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、及びこれらの誘導体からなる群から選択される置換基に置き換えられたことを意味する。
【0022】
現在、ディスプレイ業界では、基板の重量及び厚さを減らすために、ガラス基板の代わりに、プラスチック基板を用いてディスプレイ装置を製造している。特に、プラスチック基板にOLED素子を結合させたディスプレイ装置は、折り曲げ可能な長所がある。
【0023】
ガラス基板をプラスチック基板に代替するに当って、基板の均一度及び工程安定性は非常に重要な項目である。
【0024】
プラスチック基板の内部及び表面に異物や気泡が存在する場合、TFT(thin film transistor)素子を形成する時に、無機膜のクラックが発生する。特に、フィルム内マイクロバブル(micro bubble)による可動電荷(mobile charge)がTFT駆動に影響を与えるために、ポリイミド前駆体溶液を硬化させる前に8時間以上脱泡工程を適用している。
【0025】
本発明は、このような従来の問題を解決するために、気泡の発生が少なく、脱泡速度が速いポリイミド前駆体組成物及びこれにより製造されたフィルムを提供する。
【0026】
本発明は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを1:0.93~1:0.99のmol比で反応させて製造され、数平均分子量(Mn)が38,000以上であるポリイミド前駆体を含んでおり、下記数式1によって計算されたT値が、0.9以上であるポリイミド前駆体溶液を提供する。
[数式1]
【数2】
【0027】
前記式において、Aは、気泡を発生させた後、30分放置後の溶液の透過度であり、Bは、気泡発生前の溶液の透過度である。
【0028】
この際、前記透過度は、溶液内に存在する粒子を含む溶液の透過度を測定する任意の方法で測定され、特に制限されるものではない。例えば、Turbiscan(Formulaction、Turbisca LAB)を用いて880nmの波長から測定されたものである。
【0029】
本発明の前駆体溶液は、数平均分子量が38,000g/mol以上または40,000g/mol以上に高いポリイミド前駆体を含む。一実施例によれば、数平均分子量は、60,000g/mol未満または55,000g/mol以下または50,000g/mol以下である。ポリイミド前駆体が、前記範囲の数平均分子量を満足する時、前駆体溶液の固形分含量が9~13%でありながら、粘度が1,000~5,000cpになって、それよりも高粘度(例えば、7,000~20,000cp)の前駆体溶液に比べて、気泡が発生時に、脱泡速度が速く、耐熱性を向上させうる。一方、ポリイミド前駆体の数平均分子量が、前記範囲よりも低い場合には、フィルムの耐熱性及び物性が不良になって、工程進行時に、膜浮き上がりのような現象が発生する。
【0030】
前記ポリイミド前駆体の数平均分子量は、当該技術分野に広く知られた多様な方法、例えば、後述する実験例に記載の方法で測定される。
【0031】
また、本発明は、ポリイミド前駆体溶液の脱泡特性を数式1で定義されるT値に数値化することにより、肉眼で脱泡特性を観察して調節する方法に比べて、より体系的にポリイミド前駆体溶液内に存在する気泡の含量の制御に利用できて、貯蔵安定性が向上したポリイミド前駆体溶液を提供することができる。すなわち、数式1によるT値が0.9以上であるポリイミド前駆体溶液から製造されたポリイミドフィルムは、高温の素子工程においても、高い耐熱性を保持するだけではなく、ポリイミドフィルム内に残存する気泡によって発生するクラック形成を効果的に抑制させることができる。
【0032】
一実施例によれば、前記ポリイミド前駆体溶液は、気泡発生前、透過度が70%以上、望ましくは、75%以上であり、気泡を発生させた後、30分間放置した後の溶液の透過度が70%以上、望ましくは、75%以上である。すなわち、気泡発生前と気泡発生後との透過度の差が大きくない。この際、気泡発生は、インペラが連結された攪拌機を用いて前駆体溶液を200~500rpmで20~60秒間回転させることで行われる。
【0033】
前記ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて製造され、望ましくは、テトラカルボン酸二無水物をジアミンに比べて、過量で添加して反応させて製造されるのであり、より望ましくは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを1:0.93~1:0.99mol比、例えば、1:0.93~1:0.98または1:0.94~1:0.98mol比で反応させて製造されるものである。前記テトラカルボン酸二無水物に対するジアミンのmol比が0.93mol比未満に反応する場合、製造されたポリイミドフィルムの耐熱性が低下し、ジアミンのmol比が0.99よりも過量で反応する場合、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとが同量で反応する場合、溶液の粘度上昇のような理由によって脱泡特性が低下する。
【0034】
本発明によるポリイミド前駆体は、1種以上のテトラカルボン酸二無水物及び1種以上のジアミンを重合して得られる。
【0035】
一実施例によれば、前記ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物としてBPDA(ビフェニルジアンヒドリド)、ジアミンとしてPDA(フェニレンジアミン)を反応させて形成された反復構造を含み、例えば、下記化学式1の反復構造を含むものである。
[化学式1]
【化1】
【0036】
一実施例によれば、前記ポリイミド前駆体の製造において、BPDAと共に1種以上のテトラカルボン酸二無水物をさらに含みうる。
【0037】
例えば、前記テトラカルボン酸二無水物として、分子内芳香族、脂環族、または脂肪族の4価の有機基、またはこれらの結合基として、脂肪族、脂環族または芳香族の4価の有機基が架橋構造を通じて互いに連結された4価の有機基を含むテトラカルボン酸二無水物を使用することができる。望ましくは、単環式または多環式芳香族、単環式または多環式脂環族、またはこれらのうち2つ以上が単一結合または官能基で連結された構造を有する酸二無水物を含みうる。または、芳香族、脂環族などの環構造が単独、または接合(fused)された複素環構造、または単一結合で連結された構造のような剛直(rigid)な構造を有する4価の有機基を含むテトラカルボン酸二無水物を含みうる。
【0038】
例えば、前記テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式2aから化学式2eの構造を有する4価の有機基を含むものである:
[化学式2a]
【化2】
[化学式2b]
【化3】
[化学式2c]
【化4】
[化学式2d]
【化5】
[化学式2e]
【化6】
【0039】
化学式2aから化学式2eにおいて、前記R11からR17は、それぞれ独立して-F、-Cl、-Br及び-Iから選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基(-OH)、チオール基(-SH)、ニトロ基(-NO2)、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~4のハロゲノアルコキシ、炭素数1~10のハロゲノアルキル、炭素数6~20のアリール基から選択されるものであり、a1は、0~2の整数、a2は、0~4の整数、a3は、0~8の整数、a4及びa5は、それぞれ独立して0~3の整数、a6及びa9は、それぞれ独立して0~3の整数、そして、a7及びa8は、それぞれ独立して0~7の整数であり、A11及びA12は、それぞれ独立して単一結合、-O-、-CR18R19-、-C(=O)-、-C(=O)NH-、-S-、-SO2-、フェニレン基、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものであり、この際、前記R18及びR19は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基、及び炭素数1~10のフルオロアルキル基からなる群から選択されるものである。
【0040】
または、前記テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式3aから化学式3nからなる群から選択される4価の有機基を含むものである。
【化7】
【0041】
化学式3aから化学式3nの4価の有機基内の1つ以上の水素原子は、-F、-Cl、-Br及び-Iから選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基(-OH)、チオール基(-SH)、ニトロ基(-NO2)、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~4のハロゲノアルコキシ、炭素数1~10のハロゲノアルキル、炭素数6~20のアリール基から選択される置換体に置換される。例えば、前記ハロゲン原子は、フルオロ(-F)であり、ハロゲノアルキル基は、フルオロ原子を含む炭素数1~10のフルオロアルキル基であって、フルオロメチル基、パーフルオロエチル基、トリフルオロメチル基などから選択されるものであり、前記アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基から選択されるものであり、前記アリール基は、フェニル基、ナフタレニル基から選択されるものであり、より望ましくは、フルオロ原子及びフルオロアルキル基などのフルオロ原子を含む置換基である。
【0042】
または、前記テトラカルボン酸二無水物は、芳香族環または脂肪族構造がそれぞれの環構造が剛直な構造、すなわち、単一環構造、それぞれの環が単一結合で結合された構造またはそれぞれの環が直接連結された複素環構造を含む4価の有機基を含むものであり、例えば、下記化学式4aから化学式4kから選択される4価の有機基を含むものである。
【化8】
【0043】
化学式4aから化学式4kの4価の官能基内の1つ以上の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など)、炭素数1~10のフルオロアルキル基(例えば、フルオロメチル基、パーフルオロエチル基、トリフルオロメチル基など)、炭素数6~12のアリール基(例えば、フェニル基、ナフタレニル基など)、スルホン酸基、及びカルボン酸基からなる群から選択される置換基に置換されても良く、望ましくは、炭素数1~10のフルオロアルキル基に置換される。
【0044】
一実施例によれば、前記ポリイミド前駆体の製造において、PDAと共に1種以上のジアミンをさらに含みうる。
【0045】
前記ジアミンとして、炭素数6~24の単環式または多環式芳香族の2価の有機基、炭素数6~18の単環式または多環式脂環族の2価の有機基、またはこれらのうち2つ以上が単一結合や官能基で連結された構造を含む2価の有機基から選択される2価の有機基構造を含むジアミンを含み、または、芳香族、脂環族などの環構造化合物が単独、または接合された複素環構造、または単一結合で連結された構造のような剛直な構造を有する2価の有機基から選択されるものである。
【0046】
例えば、前記ジアミンは、下記化学式5aから化学式5eから選択される2価の有機基を含むものである。
[化学式5a]
【化9】
[化学式5b]
【化10】
[化学式5c]
【化11】
[化学式5d]
【化12】
[化学式5e]
【化13】
【0047】
化学式5aから化学式5eにおいて、R21からR27は、それぞれ独立して-F、-Cl、-Br及び-Iから選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基(-OH)、チオール基(-SH)、ニトロ基(-NO2)、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~4のハロゲノアルコキシ、炭素数1~10のハロゲノアルキル、炭素数6~20のアリール基からなる群から選択され、また、A21及びA22は、それぞれ独立して単一結合、-O-、-CR'R''-(この際、R'及びR''は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基など)、及び炭素数1~10のハロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基など)からなる群から選択されるものである)、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-S-、-SO-、-SO2-、-O[CH2CH2O]y-(yは、1~44の整数である)、-NH(C=O)NH-、-NH(C=O)O-、炭素数6~18の単環式または多環式のシクロアルキレン基(例えば、シクロへキシレン基など)、炭素数6~18の単環式または多環式のアリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフタレン基、フルオレニレン基など)、及びこれらの組合わせからなる群から選択され、b1は、0~4の整数であり、b2は、0~6の整数であり、b3は、0~3の整数であり、b4及びb5は、それぞれ独立して0~4の整数であり、b7及びb8は、それぞれ独立して0~9の整数であり、b6及びb9は、それぞれ独立して0~3の整数である。
【0048】
または、前記ジアミンは、下記化学式6aから化学式6pからなる群から選択される2価の有機基を含むものである。
【化14】
【0049】
化学式6aから化学式6pの2価の有機基内の1以上の水素原子は、-F、-Cl、-Br及び-Iから選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基(-OH)、チオール基(-SH)、ニトロ基(-NO2)、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~4のハロゲノアルコキシ、炭素数1~10のハロゲノアルキル、炭素数6~20のアリール基から選択される置換体に置換される。例えば、前記ハロゲン原子は、フルオロ(-F)であり、ハロゲノアルキル基は、フルオロ系原子を含む炭素数1~10のフルオロアルキル基であって、フルオロメチル基、パーフルオロエチル基、トリフルオロメチル基などから選択されるものであり、前記アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基から選択されるものであり、前記アリール基は、フェニル基、ナフタレニル基から選択されるものであり、より望ましくは、フルオロ原子及びフルオロアルキル基などのフルオロ系原子を含む置換基である。
【0050】
または、前記ジアミンは、芳香族環または脂肪族構造が剛直な鎖構造を形成する2価の有機基を含むものであり、例えば、単一環構造、それぞれの環が単一結合で結合された構造またはそれぞれの環が直接に接合された複素環構造を含む2価の有機基構造を含み、例えば、下記化学式7aから化学式7kから選択される2価の有機基構造を含むものであるが、これに限定されるものではない。
【化15】
【0051】
前記化学式7aから化学式7kの2価の官能基内の1つ以上の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など)、炭素数1~10のフルオロアルキル基(例えば、フルオロメチル基、パーフルオロエチル基、トリフルオロメチル基など)、炭素数6~12のアリール基(例えば、フェニル基、ナフタレニル基など)、スルホン酸基、及びカルボン酸基からなる群から選択される置換基に置換されても良く、望ましくは、炭素数1~10のフルオロアルキル基に置換される。
【0052】
前記化学式4aから化学式4kまたは化学式7aから化学式7kのように剛直な構造の有機基を有する単量体の含量が増加するほどポリイミドフィルムの高温での耐熱性が増加し、フレキシブルな構造の有機基と共に使用する場合、透明性だけではなく、耐熱性が共に向上したポリイミドフィルムを製造することができる。
【0053】
酸二無水物とジアミン系化合物との重合反応は、溶液重合など通常のポリイミドまたはその前駆体の重合方法によって実施される。
【0054】
前記ポリアミド酸重合反応時に使用可能な有機溶媒としては、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、カルビトール、ジメチルプロピオンアミド(dimethylpropionamide、DMPA)、ジエチルプロピオンアミド(diethylpropionamide、DEPA)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N、N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N、N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチルウレア、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)]エーテル、エクアミド(Equamide)M100、エクアミドB100などであり、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が使われる。
【0055】
望ましくは、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N、N-ジメチルホルムアミド、N、N-ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N、N-ジメチルアセトアミド、N、N-ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドンなどのピロリドン系溶媒を単独または混合物として用いられるが、これに限定されるものではない。
【0056】
また、キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素をさらに使用することもでき、また、ポリマーの溶解を促進させるために、前記溶媒に前記溶媒総量基準に約50重量%以下のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩をさらに添加することもできる。
【0057】
また、ポリアミド酸またはポリイミドを合成する場合、過剰のポリアミノ基または酸無水物基を不活性化するために、分子末端をジカルボン酸無水物またはモノアミンと反応させて、ポリイミドの末端を封止する末端封止剤をさらに添加することができる。
【0058】
前記テトラカルボン酸二無水物をジアミンと反応させる方法は、溶液重合など通常のポリイミド前駆体重合の製造方法によって実施し、具体的には、ジアミンを有機溶媒中に溶解させた後、結果として収得された混合溶液にテトラカルボン酸二無水物を添加して重合反応させることで製造可能である。
【0059】
前記重合反応は、不活性ガスまたは窒素気流下に実施され、無水条件で実行可能である。
【0060】
また、前記重合反応時に、反応温度は、-20~80℃、望ましくは、0~80℃で実施される。反応温度が過度に高い場合、反応性が高くなって、分子量が大きくなり、前駆体組成物の粘度が上昇することにより、工程上に不利である。
【0061】
前記製造方法によって製造されたポリアミド酸溶液は、フィルム形成工程時の塗布性などの工程性を考慮して、前記組成物が適切な粘度を有させる量で固形分を含むことが望ましい。
【0062】
前記ポリアミド酸を含むポリイミド前駆体組成物は、有機溶媒中に溶解された溶液の形態であり、このような形態を有する場合、例えば、ポリイミド前駆体を有機溶媒中で合成した場合には、溶液は、得られる反応溶液のそれ自体でも良く、または、この反応溶液を他の溶媒で希釈したものであっても良い。また、ポリイミド前駆体を固形粉末として得た場合には、それを有機溶媒に溶解させて溶液にしたものであっても良い。
【0063】
一実施例によれば、全体ポリイミド前駆体の含量が8~25重量%になるように、有機溶媒を添加して組成物の含量を調節し、望ましくは、10~25重量%、より望ましくは、10~20重量%以下に調節することができる。
【0064】
または、前記ポリイミド前駆体組成物が3,000cP以上、あるいは4,000cP以上の粘度を有するように調節するものであり、前記ポリイミド前駆体組成物の粘度は、10,000cP以下、望ましくは、9,000cP以下、より望ましくは、8,000cP以下の粘度を有するように調節することが望ましい。ポリイミド前駆体組成物の粘度が10,000cPを超過する場合、ポリイミドフィルム加工時に、脱泡の効率性が低下することにより、工程上の効率だけではなく、製造されたフィルムは、気泡発生で表面粗度が不良であって、電気的、光学的、機械的特性が低下する。前記ポリイミド前駆体組成物の粘度は、当該分野に広く公知の方法で測定可能であり、例えば、粘度測定のために、Viscotek社TDA302を利用できる。
【0065】
引き続き、前記重合反応の結果として収得されたポリイミド前駆体をイミド化させることにより、透明ポリイミドフィルムを製造することができる。
【0066】
一実施例によれば、前記ポリイミドフィルム組成物を基板上に塗布する段階;及び前記塗布されたポリイミドフィルム組成物を熱処理する段階;を経てポリイミドフィルムを製造することができる。
【0067】
この際、前記基板としては、ガラス、金属基板またはプラスチック基板などが特に制限なしに使われ、そのうちでも、ポリイミド前駆体に対するイミド化及び硬化工程のうち、熱及び化学的安定性に優れ、別途の離型剤処理なしでも、硬化後、形成されたポリイミド系フィルムに対して損傷なしに容易に分離されるガラス基板が望ましい。
【0068】
また、前記塗布工程は、通常の塗布方法によって実施され、具体的には、スピンコーティング法、バーコーティング法、ロールコーティング法、エアナイフ法、グラビア法、リバースロール法、キスロール法、ドクターブレード法、スプレー法、浸漬法またはブラシ法などが用いられうる。そのうちでも、連続工程が可能であり、ポリイミドのイミド化率を増加させることができるキャスティング法によって実施されることがより望ましい。
【0069】
また、前記ポリイミド前駆体組成物は、最終的に製造されるポリイミドフィルムがディスプレイ基板用として適した厚さを有させる厚さの範囲で基板上に塗布されうる。
【0070】
具体的には、10~30μmの厚さになるように塗布されうる。前記ポリイミド前駆体組成物塗布後、硬化工程に先立って、ポリイミド前駆体組成物内に存在する溶媒を除去するための乾燥工程が選択的にさらに実施される。
【0071】
前記乾燥工程は、通常の方法によって実施され、具体的に、140℃以下、あるいは80~140℃の温度で実施される。乾燥工程の実施温度が80℃未満であれば、乾燥工程が長くなり、140℃を超過する場合、イミド化が急激に進行して、均一な厚さのポリイミドフィルムの形成が難しい。
【0072】
引き続き、前記基板に塗布されたポリイミド前駆体組成物は、IRオーブン、熱風オーブンやホットプレート上で熱処理され、この際、前記熱処理温度は、300~500℃、望ましくは、320~480℃の温度範囲であり、前記温度範囲内で多段階加熱処理で進行することもできる。前記熱処理工程は、20~70分間進行し、望ましくは、20~60分間進行しうる。
【0073】
以後、基板上に形成されたポリイミドフィルムを通常の方法によって基板から剥離することにより、ポリイミドフィルムが製造可能である。
【0074】
また、本発明によるポリイミド前駆体溶液で製造されたポリイミドフィルムは、温度変化による熱安定性に優れ、例えば、前記ポリイミドフィルムの熱分解温度(Td_5%)が、600℃以上である。
【0075】
また、前記ポリイミドは、約360℃以上のガラス転移温度を有するものである。このように優れた耐熱性を有するために、前記ポリイミドを含むフィルムは、素子製造工程中に付加される高温の熱に対しても、優れた耐熱性及び機械的特性を保持することができる。
【0076】
ポリイミドフィルム内の気孔(pore)は、LTPS(low temperature polysilicon)TFT工程時に、高温の熱処理工程によって無機膜(ポリシリコン薄膜)上にクラックを誘発させることがある。したがって、本発明は、このようなポリイミド前駆体内の脱泡特性を数値化して特定数値以下に調節することにより、ポリイミド前駆体溶液に残存する気泡の含量を制御することができる。したがって、これにより製造されるポリイミドフィルム内の残留気泡によって発生する無機膜層のクラックの発生を抑制するか、著しく減少させることができる。
【0077】
本発明によるポリイミドフィルムは、OLEDまたはLCD、電子ペーパー、太陽電池のような電子機器でのフレキシブルデバイスの製造に特に有用に使われ、特に、フレキシブルデバイスの基板として有用に使われる。
【0078】
以下、当業者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は、さまざまな異なる形態として具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0079】
<実施例1>BPDA:PDA=1:0.967
PDA(フェニレンジアミン)0.059molを窒素雰囲気下でN-メチルピロリドン(NMP)100gに20分間にわたって撹拌して溶解させた。前記PDA溶液にBPDA(ビフェニルジアンヒドリド)0.061molをNMP 80gと共に添加した後、12時間30℃で反応させて、ポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0080】
<実施例2>BPDA:PDA=1:0.98
PDAを0.060molで使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0081】
<実施例3>BPDA:PDA=1:0.936
BPDAを0.063molで使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0082】
<比較例1>BPDA:PDA=1:1
PDAを0.061molで使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0083】
<比較例2>BPDA:PDA=1:0.922
BPDAを0.064molで使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0084】
<実験例1>数平均分子量の測定
実施例1から実施例3及び比較例1から比較例2から製造されたポリイミド前駆体の数平均分子量を下記のような条件で測定した。
GPC(Gel permeation chromatography):Viscotek TDA302、Malvern
検出器:RI(Refractive Index)、Laser detector
カラム温度:40℃
標準サンプル:PS(polystyrene、MW:105,000)
展開溶媒:DMF(ジメチルホルムアミド)+THF(テトラヒドロフラン)(LiBr、H3PO4)
【0085】
<実験例2>ポリイミド前駆体溶液の透過度の測定
実施例1から実施例3及び比較例1から比較例2から製造されたポリイミド前駆体溶液を製造して、常温で気泡を発生させる前と気泡発生直後、そして、気泡発生後、30分放置後の透過度をそれぞれ測定した。この際、気泡発生は、インペラが連結された攪拌機を用いて前駆体溶液を300rpmで30秒間回転させて行った。前記溶液の透過度は、Turbiscan(Formulaction、Turbisca LAB)を用いて880nmの波長で測定し、その測定値を下記数式1に代入して、「T」値を算出した。
[数式1]
【数3】
【0086】
前記式において、Aは、気泡を発生させた後、30分放置した後、溶液の透過度であり、Bは、気泡発生前、溶液の透過度である。
【0087】
<実験例3>ポリイミドフィルムの耐熱性の測定
前記実施例1から実施例3及び比較例1から比較例2から製造されたポリイミド前駆体溶液をガラス基板上にスピンコーティングした。ポリイミド前駆体溶液が塗布されたガラス基板をオーブンに入れ、5℃/minの速度で加熱し、80℃で30分、400℃で30分を保持して硬化させることにより、厚さ10μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0088】
製造されたそれぞれのポリイミドフィルムに対して熱分解温度(Td_5%)をTGAを用いて窒素雰囲気で重合体の重量減少率5%である時の温度として測定した。
【0089】
【0090】
表1から分かるように、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを1:0.93~1:0.99のmol比で反応させて製造され、数平均分子量が38,000g/mol以上であるポリイミド前駆体を含む実施例1から実施例3によるポリイミド前駆体溶液の透過度は、気泡発生後、約30分経過後に、ほとんど気泡が発生前の状態に修復されることが分かる。これは、気泡以後、脱泡が迅速に起こることにより、ポリイミド前駆体溶液の貯蔵安定性が向上する。
【0091】
比較例1の場合、BPDAとPDAとを同じmol比で重合されたものであって、重合されたポリイミド前駆体の数平均分子量は高いが、溶液の粘度が高くて、脱泡特性が低下したことが分かり、これは、数式1のT値が0.9以下の値を示すものであって、数値化して証明することができる。
【0092】
比較例2の場合、BPDAがPDAに比べて過量反応することにより、分子量が低いだけではなく、これにより、熱分解特性も、低下することが分かる。
【0093】
このように、本発明は、数平均分子量の高いポリイミド前駆体を使用し、脱泡特性が向上したポリイミド前駆体溶液を提供することにより、ポリイミドフィルムの耐熱性が向上するだけではなく、高温工程時に、ポリイミドフィルムの内部に残留する気泡によって形成されるクラックの発生を抑制することができる。
【0094】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者において、このような具体的記述は、単に望ましい実施形態であり、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、下記の特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。