(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】MI素子の製造方法、及び、MI素子
(51)【国際特許分類】
H10N 52/00 20230101AFI20240501BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20240501BHJP
H10N 50/01 20230101ALI20240501BHJP
【FI】
H10N52/00 P
G01R33/02 D
H10N50/01
(21)【出願番号】P 2019558140
(86)(22)【出願日】2018-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2018043405
(87)【国際公開番号】W WO2019111744
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2017236346
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】392019709
【氏名又は名称】ニデックアドバンステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】山本 正美
(72)【発明者】
【氏名】北野 一彦
(72)【発明者】
【氏名】太田 憲宏
(72)【発明者】
【氏名】坂井 滋樹
(72)【発明者】
【氏名】沼田 清
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/044820(WO,A1)
【文献】特開平11-162742(JP,A)
【文献】特開平11-109006(JP,A)
【文献】特開平11-204337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 52/00
H10N 50/01
G01R 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファスワイヤの外周に絶縁体層を形成する、絶縁工程と、
前記絶縁体層の外周面に無電解めっき層を形成する、無電解めっき工程と、
前記無電解めっき層の外周面に電解めっき層を形成する、電解めっき工程と、
前記電解めっき層の外周面にレジスト層を形成する、レジスト工程と、
前記レジスト層をレーザーで露光することにより、前記レジスト層の外周面に螺旋状の溝条部を形成する、露光工程と、
前記レジスト層をマスキング材としてエッチングを行い、前記溝条部における前記無電解めっき層及び前記電解めっき層を除去することにより、残存する前記無電解めっき層及び前記電解めっき層でコイルを形成する、エッチング工程と、を備える、MI素子の製造方法。
【請求項2】
前記エッチング工程で形成した前記コイルを樹脂層で被覆し、前記コイルの間に樹脂を充填する、被覆工程を備える、請求項1に記載のMI素子の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁工程において、前記絶縁体層の厚さを周方向で均一に形成する、請求項1又は請求項2に記載のMI素子の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁工程において、前記アモルファスワイヤの両端部は絶縁体層から露出され、
前記無電解めっき工程において、前記無電解めっき層は前記アモルファスワイヤの両端部と接触するように形成され、
前記露光工程において、前記溝条部と、前記溝条部の両端部よりも外端側に離間して前記レジスト層を一周する一対の環状溝と、が形成され、
前記エッチング工程において、前記一対の環状溝より外端側で残存する前記無電解めっき層及び前記電解めっき層が前記アモルファスワイヤの電極として形成され、前記一対の環状溝の間で残存する前記無電解めっき層及び前記電解めっき層が前記コイルとして形成され、前記コイルの両端部が前記絶縁体層を一周する環状のコイル電極として形成される、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のMI素子の製造方法。
【請求項5】
アモルファスワイヤと、
前記アモルファスワイヤの外周に形成される絶縁体層と、
前記絶縁体層の外周面に螺旋状に形成されるコイルと、を備えるMI素子であって、
前記コイルは、無電解めっき層と、前記無電解めっき層の外周面に形成される電解めっき層と、の二層で形成され、
前記無電解めっき層は、前記電解めっき層の
最も内周側
の部分よりも幅が細くなるように形成され、
前記電解めっき層は、前記最も内周側の部分から外周側にかけて幅が徐々に細くなるように形成され、
前記コイルが樹脂層で被覆され、前記コイルの間において前記無電解めっき層及び前記電解めっき層の周囲に樹脂が充填される、MI素子。
【請求項6】
前記絶縁体層の厚さが周方向で均一に形成される、請求項
5に記載のMI素子。
【請求項7】
前記アモルファスワイヤの両端部は、前記絶縁体層の端部を被覆する無電解めっき層と、前記無電解めっき層の外周面に形成される電解めっき層と、の二層で形成された電極と接続される、
請求項5又は請求項6に記載のMI素子。
【請求項8】
アモルファスワイヤと、
前記アモルファスワイヤの外周に形成される絶縁体層と、
前記絶縁体層の外周面に螺旋状に形成されるコイルと、を備えるMI素子であって、
前記コイルは、第1層と、前記第1層の外周面に形成される第2層と、の二層で形成され、
前記第1層は、前記第2層の
最も内周側
の部分よりも幅が細くなるように形成され、
前記第2層は、前記最も内周側の部分から外周側にかけて幅が徐々に細くなるように形成され、
前記コイルが樹脂層で被覆され、前記コイルの間において前記第1層及び前記第2層の周囲に樹脂が充填される、MI素子。
【請求項9】
前記絶縁体層の厚さが周方向で均一に形成される、請求項
8に記載のMI素子。
【請求項10】
前記アモルファスワイヤの両端部は、前記絶縁体層の端部を被覆する第1層と、前記第1層の外周面に形成される第2層と、の二層で形成された電極と接続される、
請求項8又は請求項9に記載のMI素子。
【請求項11】
前記コイルの両端部が前記絶縁体層を一周する環状のコイル電極として形成される、請求項5から請求項
10の何れか1項に記載のMI素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMI素子の製造方法、及び、MI素子に関し、詳細には、MI素子を製造する際の設備構成を簡素化する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アモルファスワイヤからなる感磁体と、絶縁体を介して感磁体の周囲に巻回される電磁コイルと、を備えたMI(Magneto Impedance:磁気インピーダンス)素子が知られている(例えば、特許文献1を参照)。上記の特許文献には、絶縁体の外周面に銅を含む金属材料を真空蒸着して金属膜を形成し、その後選択エッチングにより電磁コイルを形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
上記従来技術の如く、金属膜を形成する際に真空蒸着を用いる場合は、金属膜の膜厚を大きくすることが難しい。MI素子において金属膜の膜厚が小さい場合、電磁コイルを流れる電流の電流路断面積を十分に確保することができず、MI素子の性能が不十分となる可能性がある。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、金属膜の膜厚を大きく形成して電磁コイルを流れる電流の電流路断面積を確保することにより、性能を確保することのできる、MI素子の製造方法、及び、MI素子を提供することである。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下に構成するMI素子の製造方法、及び、MI素子を提供する。
【0007】
本発明の一例に係るMI素子の製造方法は、アモルファスワイヤの外周に絶縁体層を形成する、絶縁工程と、前記絶縁体層の外周面に無電解めっき層を形成する、無電解めっき工程と、前記無電解めっき層の外周面に電解めっき層を形成する、電解めっき工程と、前記電解めっき層の外周面にレジスト層を形成する、レジスト工程と、前記レジスト層をレーザーで露光することにより、前記レジスト層の外周面に螺旋状の溝条部を形成する、露光工程と、前記レジスト層をマスキング材としてエッチングを行い、前記溝条部における前記無電解めっき層及び前記電解めっき層を除去することにより、残存する前記無電解めっき層及び前記電解めっき層でコイルを形成する、エッチング工程と、を備えるものである。
【0008】
また、本発明の一例に係るMI素子は、アモルファスワイヤと、前記アモルファスワイヤの外周に形成される絶縁体層と、前記絶縁体層の外周面に螺旋状に形成されるコイルと、を備えるMI素子であって、前記コイルは、無電解めっき層と、前記無電解めっき層の外周面に形成される電解めっき層と、の二層で形成されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】第一実施形態に係るMI素子の各製造工程を示す図。
【
図5】第一実施形態に係るMI素子の表面部分を示す拡大断面図。
【
図8】第二実施形態に係るMI素子の各製造工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<MI素子1(第一実施形態)>
まず、
図1から
図3を用いて、本発明の第一実施形態に係る磁気インピーダンス素子(以下、単に「MI素子」と記載する)1の構成について説明する。MI素子1は、感磁体(本実施形態においてはアモルファスワイヤ2)に通電する電流の変化に応じてコイル6に誘起電圧が生じる、いわゆるMI現象を利用して磁気センシングを行うものである。
【0011】
上記のMI現象は、供給する電流方向に対して周回方向に電子スピン配列を有する磁性材料からなる感磁体について生じるものである。この感磁体の通電電流を急激に変化させると、周回方向の磁界が急激に変化し、その磁界変化の作用によって周辺磁界に応じて電子のスピン方向の変化が生じる。そして、その際の感磁体の内部磁化及びインピーダンス等の変化が生じる現象がMI現象である。
【0012】
図2及び
図3に示す如く、本実施形態に係るMI素子1には、感磁体として直径数十μm以下のCoFeSiB等の、外周形状が円形状の線条体であるアモルファスワイヤ2を用いている。アモルファスワイヤ2の外周にはアクリル系樹脂である絶縁体層3が、横断面における外周形状が円形状となるように形成されている。詳細には、絶縁体層3の外周形状は、アモルファスワイヤ2の外周形状と同心円状の円形状に、即ち、絶縁体層3の厚さが周方向で均一となるように形成されている。具体的には、アクリル系の樹脂材が液中にイオン状態で分散している電着塗料の中にアモルファスワイヤ2を浸漬し、アモルファスワイヤ2と槽中の電着塗料との間に電圧を印加することにより、イオン状態のアクリル系樹脂がアモルファスワイヤに電着する。この方法によれば、印加する電圧によって絶縁層の厚みをコントロールできる。このようにしてアモルファスワイヤ2の表面に形成された電着塗料を、例えば100度以上の高温で焼き固めることにより、絶縁体層3を形成している。
【0013】
絶縁体層3の外周面には、コイル6が螺旋状に形成されている。コイル6は、無電解めっき層4と、無電解めっき層4の外周面に形成される電解めっき層5と、の二層で形成される。
図2に示す如く、コイル6はコイル端子である両端部を除いて樹脂7の層で被覆され、コイル6の間に樹脂7が充填されている。これにより、コイル6の間に樹脂7が入り込み、コイル6を絶縁体層3から離脱し難くしている。
【0014】
次に、
図4を用いて、MI素子1の製造方法について説明する。
図4において、(a)は絶縁工程前のアモルファスワイヤ2、(b)は絶縁工程後の状態、(c)は無電解めっき工程後の状態、(d)は電解めっき工程後の状態、(e)はレジスト工程後の状態、(f)は露光工程後の状態、(g)はエッチング工程後の状態、(h)はレジスト除去工程後の状態、(i)は被覆工程後の状態をそれぞれ示している。
【0015】
本実施形態に係るMI素子1を製造する際には、
図4中の(a)に示す如く、外周形状が円形状の線条体であるアモルファスワイヤ2を用意する。そして、
図4中の(b)に示す如く、アモルファスワイヤ2の外周に絶縁体を塗布し、絶縁体層3を形成する(絶縁工程)。この際、
図3に示す如く、絶縁体層3の横断面における外周形状を、アモルファスワイヤ2の外周形状と同心円状の円形状に、即ち、絶縁体層3の厚さが周方向で均一となるように形成する。
【0016】
次に、
図4中の(c)に示す如く、無電解Cuめっきを施すことにより、絶縁体層3の外周面に無電解めっき層4を形成する(無電解めっき工程)。なお、本工程において、無電解Auめっきを採用することも可能である。次に、
図4中の(d)に示す如く、電解Cuめっきを施すことにより、無電解めっき層4の外周面に電解めっき層5を形成する(電解めっき工程)。なお、本工程において、電解Auめっきを採用することも可能である。このように、本実施形態においては、無電解めっき及び電解めっきを用いて、絶縁体層3に金属膜を形成している。
【0017】
次に、電解めっき層5が形成されたアモルファスワイヤ2を、フォトレジスト液の入ったフォトレジスト槽に浸漬した後、所定速度(例えば、1mm/secの速度)で引き上げることにより、
図4中の(e)に示す如く電解めっき層5の外周面にレジスト層Rを形成する(レジスト工程)。
【0018】
次に、
図4中の(f)に示す如く、レジスト層Rをレーザーで露光し、レーザーで露光した部分を現像液で溶解することにより、レジスト層Rの外周面に螺旋状の溝条部GRを形成し、溝条部GRの電解めっき層5を露出させる(露光工程)。
【0019】
上記の露光工程におけるレーザーによる露光は、レジスト層Rが形成されたアモルファスワイヤ2の中心軸を軸として回転させつつ、軸方向に変位させながら行う。本実施形態においては、レーザーで露光した部分が現像液に溶解してレジスト層Rに螺旋状の溝条部GRが形成される、ポジ型フォトレジストを採用している。なお、本工程において、レーザーに露光しなかった部分が現像液に溶解してレジスト層に螺旋状の溝条部が形成される、ネガ型フォトレジストを用いることも可能である。
【0020】
次に、レジスト層Rに溝条部GRが形成されたアモルファスワイヤ2を酸性の電解研磨液中に浸漬して電解研磨することにより、電解めっき層5の外周に残っているレジスト層をマスキング材としたエッチングを行う。これにより、
図4中の(g)に示す如く、レジスト層Rに溝条部GRが形成されていた部分の無電解めっき層4及び電解めっき層5を除去する(エッチング工程)。
【0021】
図4中の(g)に示す如く、無電解めっき層4及び電解めっき層5のうち、溝条部GRが形成されていた部分には螺旋状の溝部GPが形成される。即ち、本工程において、残存する無電解めっき層4及び電解めっき層5がコイル6として形成されるのである。
【0022】
次に、
図4中の(h)に示す如く、剥離液等を用いてレジスト層Rを除去する(レジスト除去工程)。そして、アモルファスワイヤ2、絶縁体層3、及び、コイル6を所定の長さに切断した後に、
図4中の(i)に示す如く、コイル6を、両端部を除いて樹脂7の層で被覆し、コイル6の間に樹脂7を充填する(被覆工程)。
【0023】
上記の如く、本実施形態に係るMI素子1の製造方法においては、絶縁体層3の外周面に金属膜を形成する際に、真空蒸着を用いずに無電解めっき及び電解めっきを用いている。めっきによれば、金属膜の膜厚を大きく形成することが容易であるため、電磁コイルを流れる電流の電流路断面積を十分に確保することが可能となる。即ち、本実施形態に係るMI素子の製造方法によれば、電磁コイルの電流路断面積を確保することにより、MI素子の性能を確保することができるのである。
【0024】
また、金属膜を形成する際に真空蒸着を用いる場合は、対象物(感磁体の周囲に絶縁体を設けたもの)を収容したチャンバーを真空状態とする必要があるため、設備構成が大掛かりとなり、製造コストが嵩んでいた。しかし、本実施形態の如く、金属膜の形成に無電解めっき及び電解めっきを用いた場合は、真空チャンバー等が不要となり、設備構成を簡素化することができるため、MI素子1の製造コストを抑制することができる。
【0025】
また、本実施形態に係るMI素子1においては、コイル6は樹脂7の層で被覆され、コイル6の間に樹脂7が充填されている。これにより、コイル6の間に樹脂7が入り込み、コイル6を絶縁体層3から離脱し難くしている。具体的には、エッチング工程においては外側から内側へむけて順次エッチングされるため、エッチング液は電解めっき層5の外側の部分(コイル6の径方向外側の部分)に対する接触時間の方が長くなる。このため、
図5に示す如く、電解めっき層5の外側の部分の方が外側の部分よりも多くエッチングされて細くなっている。一方、無電解めっき層4は電解めっき層5よりも密度が疎であるため、
図5に示す如く多くエッチングされて内側にえぐれている。その結果、被覆工程においてコイル6が樹脂7で被覆されると、樹脂7が無電解めっき層4の側へ回り込むように充填され、この部分が引っかかるような形状となる。これにより、より強固なアンカー効果を得ることができるのである。
【0026】
また、本実施形態に係るMI素子1の製造方法においては、絶縁工程において、絶縁体層3の横断面における外周形状を円形状に形成することにより、絶縁体層3の厚さを周方向で均一に形成している。これにより、アモルファスワイヤ2と、絶縁体層3の外周面に形成されるコイル6と、の距離を一定にすることができるため、MI素子1の感度を向上させることが可能となる。
【0027】
さらに詳細には、特許文献1に記載の技術では、アモルファスワイヤの横断面が円形状のものに対して絶縁体層の横断面が四角形状となっている。このため、周方向の位置によってはワイヤーとコイルとの距離が大きくなり、その結果センサの感度が低くなる。
【0028】
一方、本実施形態に係るMI素子1においては、横断面が円形状のアモルファスワイヤ2の表面に円形状の絶縁体層3が形成されることにより、絶縁体層3の厚さが周方向で均一に形成されている。このため、アモルファスワイヤ2とコイル6との距離を、周方向の位置によらず一定とすることができ、その結果、MIセンサ1の感度を高くすることができるのである。
【0029】
なお、アモルファスワイヤ2とコイル6との距離を周方向の位置によらず一定とするために、アモルファスワイヤ2と絶縁体層3との外周形状を円形状に限定する必要はない。例えば、断面矩形状のアモルファスワイヤの表面に、同じく矩形状(詳細には、角部が円形状に面取りされた矩形状)の絶縁体層を厚さが周方向に均一になるように形成することも可能である。この場合でも、アモルファスワイヤとコイルとの距離を周方向の位置によらず一定とすることができ、その結果、MIセンサ1の感度を高くすることができる。
【0030】
<MI素子101(第二実施形態)>
次に、
図6及び
図7を用いて、本発明の第二実施形態に係るMI素子101の構成について説明する。本実施形態においては、前記第一実施形態に係るMI素子1と共通する構成については詳細な説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
【0031】
図7に示す如く、本実施形態に係るMI素子101についても、第一実施形態に係るMI素子1と同様に、アモルファスワイヤ2の外周に絶縁体層3が形成されている。そして、絶縁体層3の外周面には、コイル106が螺旋状に形成されている。コイル106は、無電解めっき層4と、無電解めっき層4の外周面に形成される電解めっき層5と、の二層で形成される。本実施形態に係るMI素子101は、コイル106の両端部が、絶縁体層3を周方向に一周する環状のコイル電極106T・106Tとして形成され、コイル電極106T・106Tの間の螺旋部分がコイル部106Cとして形成されている。
図7に示す如く、コイル106のコイル部106Cは樹脂7の層で被覆され、コイル部106Cの間に樹脂7が充填されている。
【0032】
また、アモルファスワイヤ2の両端部は、絶縁体層3の端部を被覆する無電解めっき層4と、無電解めっき層4の外周面に形成される電解めっき層5と、の二層で形成された電極8・8と接続されている。
【0033】
次に、
図8を用いて、MI素子101の製造方法について説明する。
図8において、(a)は絶縁工程前のアモルファスワイヤ2、(b)は絶縁工程後の状態、(c)は無電解めっき工程後の状態、(d)は電解めっき工程後の状態、(e)はレジスト工程後の状態、(f)は露光工程後の状態、(g)はエッチング工程後の状態、(h)はレジスト除去工程後の状態、(i)は被覆工程後の状態をそれぞれ示している。
【0034】
本実施形態に係るMI素子1を製造する際には、
図8中の(a)に示す如く所定の長さ(数mm)に切断したアモルファスワイヤ2を用意する。そして、
図8中の(b)に示す如く、アモルファスワイヤ2の外周に、円柱形状にシリコンゴム等の絶縁体を塗布し、絶縁体層3を形成する(絶縁工程)。この際、アモルファスワイヤ2の両端部は絶縁体層3の両端部において露出される。
【0035】
次に、
図8中の(c)に示す如く、無電解Cuめっき(又は無電解Auめっき)を施すことにより、絶縁体層3の外周面に無電解めっき層4を形成する(無電解めっき工程)。この際、無電解めっき層4はアモルファスワイヤ2の両端部と接触するように形成される。次に、
図8中の(d)に示す如く、電解Cuめっき(又は電解Auめっき)を施すことにより、無電解めっき層4の外周面に電解めっき層5を形成する(電解めっき工程)。
【0036】
次に、電解めっき層5が形成されたアモルファスワイヤ2を、フォトレジスト液の入ったフォトレジスト槽に浸漬した後、所定速度(例えば、1mm/secの速度)で引き上げることにより、
図8中の(e)に示す如く電解めっき層5の外周面にレジスト層Rを形成する(レジスト工程)。
【0037】
次に、
図8中の(f)に示す如く、レジスト層Rをレーザーで露光し、レーザーで露光した部分を現像液で溶解することにより、レジスト層Rの外周面に、螺旋状の溝条部GR1と、溝条部GR1の両端部よりも外端側に離間してレジスト層Rを一周する環状溝GR2と、を形成し、溝条部GR1及び環状溝GR2の電解めっき層5を露出させる(露光工程)。上記の露光工程におけるレーザーによる露光は、レジスト層Rが形成されたアモルファスワイヤ2の中心軸を軸として回転させつつ、軸方向に変位させながら、複数回に亘って行う。
【0038】
次に、エッチング工程において、レジスト層Rに溝条部GR1及び環状溝GR2が形成されたアモルファスワイヤ2を酸性の電解研磨液中に浸漬して電解研磨することにより、電解めっき層5の外周に残っているレジスト層をマスキング材としたエッチングを行う。これにより、
図8中の(g)に示す如く、レジスト層Rに溝条部GR1及び環状溝GR2が形成されていた部分の無電解めっき層4及び電解めっき層5を除去する(エッチング工程)。
【0039】
図8中の(g)に示す如く、無電解めっき層4及び電解めっき層5のうち、溝条部GR1が形成されていた部分には螺旋状の溝部GP1が形成される。また、環状溝GR2が形成されていた部分には環状溝部GP2が形成される。この環状溝部GP2により、無電解めっき層4及び電解めっき層5は、コイル106を形成する中央部と、電極8・8を形成する両端部とに分断される。即ち、本工程において、環状溝部GP2より外端側で残存する無電解めっき層4及び電解めっき層5がアモルファスワイヤ2の電極8・8として形成され、環状溝部GP2の間で残存する無電解めっき層4及び電解めっき層5がコイル106として形成される。
【0040】
本実施形態において、溝条部GR1と環状溝GR2とは離間して形成されているため、溝部GP1は環状溝部GP2と離間して形成される。これにより、コイル106の両端部は、絶縁体層3を一周する環状のコイル電極106T・106Tとして形成され、コイル電極106T・106Tの間の螺旋部分がコイル部106Cとして形成される。
【0041】
次に、
図8中の(h)に示す如く、剥離液等を用いてレジスト層Rを除去する(レジスト除去工程)。そして、
図8中の(i)に示す如く、コイル106を樹脂7の層で被覆し、コイル106の間に樹脂7を充填する(被覆工程)。
【0042】
本実施形態に係るMI素子101の製造方法によれば、アモルファスワイヤ2の電極8・8を、環状溝部GPLより外端側で残存する無電解めっき層4及び電解めっき層5で形成する(アモルファスワイヤ2の両端部が、無電解めっき層4及び電解めっき層5の二層で形成された電極8と接続される)構成としている。このため、別途電極を形成する必要がなくなり、MI素子1の製造プロセスを簡素化することが可能となる。
【0043】
本実施形態に係るMI素子101の製造方法によれば、コイル電極106T・106Tを、絶縁体層3を一周する環状に形成することができる。このため、MI素子106の姿勢に関わらずコイル電極106T・106Tを基板と対向させることができるため、基板に実装することが可能となる。
【0044】
上記の如く、本発明の一例に係るMI素子の製造方法は、アモルファスワイヤの外周に絶縁体層を形成する、絶縁工程と、前記絶縁体層の外周面に無電解めっき層を形成する、無電解めっき工程と、前記無電解めっき層の外周面に電解めっき層を形成する、電解めっき工程と、前記電解めっき層の外周面にレジスト層を形成する、レジスト工程と、前記レジスト層をレーザーで露光することにより、前記レジスト層の外周面に螺旋状の溝条部を形成する、露光工程と、前記レジスト層をマスキング材としてエッチングを行い、前記溝条部における前記無電解めっき層及び前記電解めっき層を除去することにより、残存する前記無電解めっき層及び前記電解めっき層でコイルを形成する、エッチング工程と、を備えるものである。
【0045】
この構成によれば、金属膜の膜厚を大きく形成して電磁コイルを流れる電流の電流路断面積を確保することにより、MI素子の性能を確保することができる。
【0046】
また、前記MI素子の製造方法は、前記エッチング工程で形成した前記コイルを樹脂層で被覆し、前記コイルの間に樹脂を充填する、被覆工程を備えることが好ましい。
【0047】
この構成によれば、コイルの間に樹脂が入り込むことによりコイルを離脱し難くすることが可能となる。
【0048】
また、前記MI素子の製造方法は、前記絶縁工程において、前記絶縁体層の厚さを周方向で均一に形成することが好ましい。
【0049】
この構成によれば、MI素子の感度を向上させることが可能となる。
【0050】
また、前記MI素子の製造方法は、前記絶縁工程において、前記アモルファスワイヤの両端部は絶縁体層から露出され、前記無電解めっき工程において、前記無電解めっき層は前記アモルファスワイヤの両端部と接触するように形成され、前記露光工程において、前記溝条部と、前記溝条部の両端部よりも外端側に離間して前記レジスト層を一周する一対の環状溝と、が形成され、前記エッチング工程において、前記一対の環状溝より外端側で残存する前記無電解めっき層及び前記電解めっき層が前記アモルファスワイヤの電極として形成され、前記一対の環状溝の間で残存する前記無電解めっき層及び前記電解めっき層が前記コイルとして形成され、前記コイルの両端部が前記絶縁体層を一周する環状のコイル電極として形成されることが好ましい。
【0051】
この構成によれば、コイル電極を、絶縁体層を一周する環状に形成することができるため、MI素子の姿勢に関わらず基板に実装することが可能となる。
【0052】
また、本発明の一例に係るMI素子は、アモルファスワイヤと、前記アモルファスワイヤの外周に形成される絶縁体層と、前記絶縁体層の外周面に螺旋状に形成されるコイルと、を備えるMI素子であって、前記コイルは、無電解めっき層と、前記無電解めっき層の外周面に形成される電解めっき層と、の二層で形成されるものである。
【0053】
この構成によれば、金属膜の膜厚を大きく形成して電磁コイルを流れる電流の電流路断面積を確保することにより、MI素子の性能を確保することができる。
【0054】
また、前記MI素子は、前記コイルが樹脂層で被覆され、前記コイルの間に樹脂が充填されることが好ましい。
【0055】
この構成によれば、コイルの間に樹脂が入り込むことによりコイルを離脱し難くすることが可能となる。
【0056】
また、前記MI素子は、前記絶縁体層の厚さが周方向で均一に形成されることが好ましい。
【0057】
この構成によれば、MI素子の感度を向上させることが可能となる。
【0058】
また、前記MI素子は、前記アモルファスワイヤの両端部は、前記絶縁体層の端部を被覆する無電解めっき層と、前記無電解めっき層の外周面に形成される電解めっき層と、の二層で形成された電極と接続されることが好ましい。
【0059】
この構成によれば、アモルファスワイヤの電極を、環状溝より外端側で残存する無電解めっき層及び電解めっき層で形成することができるため、MI素子の製造プロセスを簡素化することが可能となる。
【0060】
また、前記MI素子は、前記コイルの両端部が前記絶縁体層を一周する環状のコイル電極として形成されることが好ましい。
【0061】
この構成によれば、コイル電極を、絶縁体層を一周する環状に形成することができるため、MI素子の姿勢に関わらず基板に実装することが可能となる。
【0062】
本発明に係るMI素子の製造方法、及び、MI素子によれば、金属膜の膜厚を大きく形成して電磁コイルを流れる電流の電流路断面積を確保することにより、MI素子の性能を確保することができる。
【0063】
この出願は、2017年12月8日に出願された日本国特許出願特願2017-236346を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様又は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、本発明は、そのような具体例のみに限定して狭義に解釈されるべきものではない。
【符号の説明】
【0064】
1 磁気インピーダンス素子(MI素子)
2 アモルファスワイヤ 3 絶縁体層
4 無電解めっき層 5 電解めっき層
6 コイル 7 樹脂
8 電極
101 磁気インピーダンス素子(MI素子)
106 コイル 106C コイル部
106T コイル電極
R レジスト層 GP 溝部
GP1 溝部 GP2 環状溝部
GR 溝条部 GR1 溝条部
GR2 環状溝