IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特許-画像読取装置および画像形成装置 図1
  • 特許-画像読取装置および画像形成装置 図2
  • 特許-画像読取装置および画像形成装置 図3
  • 特許-画像読取装置および画像形成装置 図4
  • 特許-画像読取装置および画像形成装置 図5
  • 特許-画像読取装置および画像形成装置 図6
  • 特許-画像読取装置および画像形成装置 図7
  • 特許-画像読取装置および画像形成装置 図8
  • 特許-画像読取装置および画像形成装置 図9
  • 特許-画像読取装置および画像形成装置 図10
  • 特許-画像読取装置および画像形成装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】画像読取装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20240501BHJP
   G03B 27/50 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
H04N1/04 105
G03B27/50 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020085228
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021180418
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】萩原 元太
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-003421(JP,A)
【文献】特開平11-098322(JP,A)
【文献】特開2013-058979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
G03B 27/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止原稿の画像読取が可能な第1の原稿読取ガラスと、移動原稿の画像読取が可能な第2の原稿読取ガラスと、前記第1および第2の原稿読取ガラスに沿って副走査方向に移動可能なライン画像読取ユニットと、前記ライン画像読取ユニットを前記第1、第2の原稿読取ガラスに沿って前記副走査方向に移動可能に案内支持するガイド手段と、前記ライン画像読取ユニットを副走査方向に駆動する駆動手段と、を備えた画像読取装置であって、
前記ライン画像読取ユニットの主走査方向の両端側でそれぞれ前記ライン画像読取ユニットを前記第1および第2の原稿読取ガラス側に付勢する一方の付勢手段および他方の付勢手段をさらに備えており、
前記駆動手段から前記ライン画像読取ユニットへの前記副走査方向への駆動力に対して、前記ライン画像読取ユニットの前記副走査方向への傾きを抑制するよう、前記ライン画像読取ユニットが前記第1の原稿読取ガラスを通して静止原稿の画像を読み取る静止原稿画像読取領域内にあるときと、前記ライン画像読取ユニットが前記第2の原稿読取ガラスを通して移動原稿の画像を読み取る移動原稿画像読取領域内にあるときとでは、前記ライン画像読取ユニットの両端側における前記一方および他方の付勢手段の付勢力の力量比率が変化することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記一方および他方の付勢手段は、前記ライン画像読取ユニットが前記静止原稿画像読取領域内にあるときには、前記ライン画像読取ユニットの両端側における前記一方および他方の付勢手段の前記付勢力が、前記ライン画像読取ユニットの副走査方向への駆動力に対して前記ライン画像読取ユニットの副走査方向への傾きを発生させるものとならない程度に小さく相互に同等な力量比率を有する一方、前記ライン画像読取ユニットが前記第2の原稿読取ガラスを通して移動原稿の画像を読み取る移動原稿画像読取領域内にあるときには、前記副走査方向への駆動力が作用する前記ライン画像読取ユニットの前記主走査方向の一方側での前記一方の付勢手段の付勢力が、前記主走査方向の他方側での前記他方の付勢手段の付勢力より大きくなる力量比率を有することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記ライン画像読取ユニットの前記主走査方向に延在するとともに、前記ライン画像読取ユニットを前記第1の原稿読取ガラスおよび前記第2の原稿読取ガラスを通した画像読取方向に可動に保持するキャリッジが設けられており、
前記一方および他方の付勢手段が、前記ライン画像読取ユニットの前記主走査方向の両端側で前記キャリッジと前記ライン画像読取ユニットの間に介在する一方および他方の弾性部材を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記ライン画像読取ユニットが前記第2の原稿読取ガラスを通して移動原稿の画像を読み取る移動原稿画像読取領域内にあるときには、前記一方の弾性部材が前記他方の弾性部材より大きく弾性変形して、前記副走査方向への駆動力が作用する前記ライン画像読取ユニットの前記主走査方向の一方側での前記一方の付勢手段の付勢力が、前記主走査方向の他方側での前記他方の付勢手段の付勢力より大きくなる力量比率になることを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一つの請求項に記載の画像読取装置を搭載したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか一つの請求項に記載の画像読取装置を搭載したことを特徴とする画像送受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置および画像形成装置に関し、特に移動原稿からの画像読取と静止原稿からの画像読取とが可能な画像読取装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置や同装置を備えた複合機その他の画像形成装置においては、従前より、シート搬送経路中の所定位置で通過原稿シートの原稿面を主走査方向に走査して画像を読み取る移動原稿画像読取部(ドキュメントフィーダスキャナ部)と、フラットベッド読取面にセットされた静止原稿シートの原稿面を主走査方向および副走査方向に走査して画像を読み取る静止原稿画像読取部(フラットベッドスキャナ部)とを備えたものが多用されている。
【0003】
この種の従来の画像読取装置および画像形成装置として、例えば後掲の特許文献1、2には、ドキュメントフィーダスキャナ部とフラットベッドスキャナ部との間を共通の光学走査ユニットが往復移動できるように、その光学走査ユニットをガイドロッドによりスライド可能に保持しつつベルトによって往復駆動するようにしたものが記載されている。
【0004】
また、特許文献1には、光学走査ユニットが移動原稿読取位置に移動したときに、光学走査ユニットの副走査方向一方側の側壁面に主走査方向の両端側で突き当たる一対の突起部を設け、片方の突起部に設けられた伸縮自在な付勢手段によって光学走査ユニットの傾きを静止画像読取時と同じ方向に矯正することが開示されている。
【0005】
特許文献2には、移動原稿画像読取用のDF(ドキュメントフィーダ)コンタクトガラス面が静止原稿画像読取時のFB(フラットベッド)コンタクトガラス面に対して傾いていることを考慮し、どちらのコンタクトガラスに接触しても光学走査ユニットが良好な姿勢に保持されるように、ガイドロッドにスライド可能に支持されたキャリッジと光学走査ユニットとの間に縮設されつつ、光学走査ユニットをその両端側でそれぞれコンタクトガラスに付勢する複数のスプリングを設けて、光学走査ユニットの両端部を長手方向軸線回りに姿勢変化可能におよび上下方向に変位可能に保持することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の画像読取装置および画像形成装置にあっては、ライン画像読取ユニットである光学走査ユニットをキャリッジに支持しつつガイドロッドに沿って往復移動させる構成であるため、そのガイドロッドと光学走査ユニットを支持するキャリッジのガイド穴部との間に、キャリッジをスライド可能にガイドするために必要な最小限のガタが存在する。そのため、光学走査ユニットがキャリッジ駆動用のベルトにより副走査方向のいずれか一方側に付勢されるとき、光学走査ユニットには駆動方向への傾き(角度変位)が生じることとなり、読取画像のスキューの原因になってしまうという問題があった。
【0007】
これに対し、例えばキャリッジのガイド穴部の軸長を大きくすることで光学走査ユニットの傾きを縮小することができるが、装置の小型化に不利となる。また、画像処理による画像スキューの補正もできるが、処理ソフトの複雑化やメモリ消費量の増大等による処理負担の増加を招いてしまう。あるいは、キャリッジのガイド穴部を、ガイドロッドの一方および他方のガイド部に分割し、両ガイド部を相互に接近させる付勢手段を設けてガタ詰めすることも考えられるが、部品点数の増加とコスト高を招いてしまう。
【0008】
上記従来の画像読取装置および画像形成装置では、さらに、光学走査ユニットのホームポジションが、静止原稿画像読取のためのFBコンタクトガラスと移動原稿画像読取のためのDFコンタクトガラスとの間に設定されるため、光学走査ユニットをそのホームポジションからFBコンタクトガラス側に移動させるときと、DFコンタクトガラス側に移動させるときとでは、ガイドロッドに対する光学走査ユニットの傾きの方向が逆方向となっていた。そのため、読取画像のスキューの向きが逆になってしまうという問題もあった。
【0009】
本発明は、以上のような従来の問題に鑑みてなされたものであり、ライン画像読取ユニットがいずれの画像読取領域に配置されてもライン画像読取ユニットの傾きが同方向でかつ十分に抑制されるようにして、読取画像のスキューを一定範囲内に抑えることのできる画像読取装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像読取装置は、上記目的達成のため、静止原稿の画像読取が可能な第1の原稿読取ガラスと、移動原稿の画像読取が可能な第2の原稿読取ガラスと、前記第1および第2の原稿読取ガラスに沿って副走査方向に移動可能なライン画像読取ユニットと、前記ライン画像読取ユニットを前記第1、第2の原稿読取ガラスに沿って前記副走査方向に移動可能に案内支持するガイド手段と、前記ライン画像読取ユニットを副走査方向に駆動する駆動手段と、を備えた画像読取装置であって、前記ライン画像読取ユニットの主走査方向の両端側でそれぞれ前記ライン画像読取ユニットを前記原稿読取ガラスに対し所定の付勢力で付勢する付勢手段をさらに備えており、前記駆動手段から前記ライン画像読取ユニットへの前記副走査方向への駆動力に対して、前記ライン画像読取ユニットの前記副走査方向への傾きを抑制するよう、前記ライン画像読取ユニットが前記第1の原稿読取ガラスを通して静止原稿の画像を読み取る静止原稿画像読取領域内にあるときと、前記ライン画像読取ユニットが前記第2の原稿読取ガラスを通して移動原稿の画像を読み取る移動原稿画像読取領域内にあるときとでは、前記ライン画像読取ユニットの両端側における前記付勢手段の前記付勢力の力量比率が変化することを特徴とするものである。
【0011】
この構成により、ライン画像読取ユニットの両端側における付勢手段の付勢力の力量比率が変化することで、駆動手段からの駆動力により副走査方向に駆動されるライン画像読取ユニットの副走査方向への傾きが抑制されるとともに、ライン画像読取ユニットが静止原稿の画像を読み取る静止原稿画像読取領域内にあるときと移動原稿の画像を読み取る移動原稿画像読取領域内にあるときとで傾き方向を近付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ライン画像読取ユニットがいずれの画像読取領域に配置されてもライン画像読取ユニットの傾きが同方向でかつ十分に抑制されるようにして、読取画像のスキューを一定範囲内に抑えることのできる画像読取装置、画像形成装置および画像処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る画像読取装置を備えた画像形成装置および画像送受信装置の要部概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る画像読取装置におけるDFコンタクトガラスおよびFBコンタクトガラスの上面側を開放した状態を示す要部概略斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る画像読取装置におけるDFコンタクトガラスおよびFBコンタクトガラスの上面側を閉止した状態を示す一部断面を含む要部概略正面図である。
図4】(a)は本発明の一実施形態に係る画像読取装置の移動原稿画像読取領域および静止原稿画像読取領域の配置を示す概略上面図、(b)は両読取領域間を移動するライン画像読取ユニットの状態を示す概略正面図、(c)はそのライン画像読取ユニットの主走査方向の両端部をコンタクトガラス側に付勢する一方および他方のばねの特性の違いを説明する荷重/撓み特性図である。
図5】(a)は本発明の一実施形態に係る画像読取装置におけるライン画像読取ユニットの駆動機構の要部概略上面図であり、(b)は図5(a)のB5部分の要部概略正面図である。
図6】(a)は本発明の一実施形態に係る画像読取装置におけるライン画像読取ユニットの静止原稿画像読取時の状態を説明する概略上面図、(b)はそのライン画像読取ユニットの状態を示す概略正面図、(c)はその静止原稿画像読取時のライン画像読取ユニットの両端部をコンタクトガラス側に付勢する一方および他方のばねの荷重が同等になることを示す荷重/撓み特性図である。
図7】(a)は本発明の一実施形態に係る画像読取装置におけるライン画像読取ユニットの移動原稿画像読取時の状態を説明する概略上面図、(b)はそのライン画像読取ユニットの状態を示す概略正面図、(c)はその移動原稿画像読取時のライン画像読取ユニットの両端部をコンタクトガラス側に付勢する一方および他方のばねの荷重が大小に相違することを示す荷重/撓み特性図である。
図8】本発明の一実施形態に係る画像読取装置におけるライン画像読取ユニットのホームポジションの配置を示す概略上面図である。
図9】(a)は本発明の一実施形態に係る画像読取装置における静止原稿画像読取時および移動原稿画像読取時のそれぞれでライン画像読取ユニットに生じる副走査方向一方側への微小な傾きを誇張して示す説明図であり、(b)は図9(a)のB9部分の要部拡大平面断面図である。
図10】(a)は比較例の画像読取装置における移動原稿画像読取時にライン画像読取ユニットに生じる副走査方向他方側への傾きを誇張して示す説明図であり、(b)は図10(a)のB10部分の要部拡大平面断面図である。
図11】本発明の他の実施形態に係る画像形成装置の要部概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
(一実施形態)
図1ないし図9は、本発明に係る画像読取装置と同装置を備えた画像読取装置および画像形成装置との一実施形態を示している。
【0016】
まず、本実施形態の構成について説明する。
【0017】
本実施形態は、本発明の画像読取装置を電子写真方式やインクジェット記録方式等といった任意の方式のデジタル複合機の自動原稿搬送装置に適用したものである。
【0018】
本実施形態のデジタル複合機1(画像形成装置、画像送受信装置)は、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置、スキャナ等の機能を併有しており、読取画像データ等の入力データを基にフルカラー画像やモノクロ画像を転写紙に記録出力したり所定のデータ形式で出力したりすることができる。ただし、本発明の画像読取装置を備えた画像形成装置は、移動原稿に対する画像読取機能を発揮できるものであればよく、本発明の画像読取装置を備えた画像送受信装置は、読取画像データ等を送信出力および受信入力する機能を有するものであればよい。
【0019】
図1および図2に示すように、デジタル複合機1は、給紙部2と、画像形成部3と、ADF5(自動原稿搬送装置)が装着された画像読取部4(画像読取装置)と、操作パネル6とを備えた画像形成装置である。
【0020】
給紙部2は、詳細を図示しないが、例えばカットシート状の記録紙を収納する給紙カセットと、その給紙カセットから記録紙をピックアップして給紙する給紙ローラとを有している。また、給紙部2は、ピックアップされた記録紙を画像形成部3の所定の画像形成位置まで搬送する各種ローラ等を含む給紙経路を有している。
【0021】
画像形成部3は、例えば公知の露光ユニットと、感光体と、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のトナーを用いる現像装置と、転写部および定着部等とを備えた電子写真方式のものである。
【0022】
この画像形成部3は、画像読取部4で読み取った読取画像に基づき、感光体を露光して形成した静電潜像上にトナーを供給して現像し、そのトナー像を記録紙に転写し定着させて、カラー画像印刷した記録紙を出口3aから出力することができる。あるいは、画像形成部3は、画像読取部4で読み取った読取画像に基づき、所定形式の画像ファイルや画像データを生成したりメモリに記憶させたり、送信出力したりすることができるようになっている。
【0023】
画像読取部4は、ADF5と協働して自動原稿搬送中の移動原稿の画像を読み取るDFスキャナモード(移動原稿画像読取モード)と、平坦なFBコンタクトガラス(第1の原稿読取ガラス)上に載置された静止原稿の画像を読み取るフラットベッドスキャナモード(静止原稿画像読取モード)とに切替え可能に構成されている。
【0024】
フラットベッドスキャナモードにおいて、画像読取部4は、FBコンタクトガラス41上の原稿シートや本等の画像面に光を照射して、その画像面からの反射光を画像信号に変換することにより原稿画像を読み取ることができる。
【0025】
また、DFスキャナモードにおいて、ADF5は、シート載置台である原稿テーブル51上に積載された原稿シート束から原稿シートを1枚ずつ分離して原稿搬送経路52内に搬入し、原稿搬送経路52に沿って搬送する。そして、その搬送中、原稿シートが、その搬送方向の上流側部分から順次部分的に画像読取部4の上面側のDFコンタクトガラス42(第2の原稿読取ガラス)に対面するようになっている。すなわち、画像読取部4は、ADF5により搬送される原稿シート上の画像を画像読取部4のDFコンタクトガラス42上で順次読み取ることにより、ドキュメントフィーダスキャナの機能を発揮できるようになっている。
【0026】
図2に示すように、ADF5は、画像読取部4の上面側の後部にヒンジ等の開閉機構1hを介して開閉動作可能に取り付けられており、画像読取部4のFBコンタクトガラス41上を開放する開位置と、図3に示すようにFBコンタクトガラス41上の原稿を押付け可能な閉位置とを採り得るようになっている。
【0027】
図3に示すように、ADF5は、少なくともその上方を開閉可能としたカバー55によって覆われている。このカバー55は、原稿テーブル51の給紙側の端部付近の上方に給紙口55aを形成するとともに、給紙口55aから排出口56までの原稿搬送経路52を形成する主要なガイド部分をリブ等によって形成している。ADF5の原稿搬送ローラ等は特許文献1、2等に記載される公知の構成を有している。
【0028】
図2ないし図4に示すように、FBコンタクトガラス41は、画像読取部4が静止原稿(載置原稿)の画像を読み取るためのフラットベッドスキャナとして機能する場合であって読取対象の原稿シートが載置されるとき、その原稿シート(以下、第1の原稿ともいう)の画像面に対面するようになっている。また、DFコンタクトガラス42は、画像読取部4が移動原稿(搬送原稿)の画像を読み取るドキュメントフィーダスキャナとして機能する場合に、原稿搬送経路52の所定読取位置を通過する原稿シート(以下、第2の原稿ともいう)の画像面に対面するようになっている。
【0029】
図4(b)に示すように、本実施形態においては、DFコンタクトガラス42がFBコンタクトガラス41に対して所定の傾斜角θ(同図中では傾きを誇張している)をなすよう傾斜する場合を典型例として例示している。ただし、FBコンタクトガラス41とDFコンタクトガラス42の間にスケール部43aを形成する中間カバー43(図2参照)の下面側等に傾斜面や段差が配置され、両コンタクトガラス41、42が平行に配置されるようなことも考えられる。
【0030】
図4(a)および図4(b)に示すように、画像読取部4の内部には、イメージセンサヘッド4Sとそれを副走査方向(図4中のX方向)に駆動する駆動機構4M(駆動手段)とが設けられている。
【0031】
イメージセンサヘッド4Sは、FBコンタクトガラス41上に載置された静止原稿の画像面を主走査方向にライン走査するとともに副走査方向に移動することで、原稿の画像を読み取ることができる。また、図4および図5に示すように、イメージセンサヘッド4Sは、搬送原稿の画像を主走査方向にライン走査することで原稿のライン画像を読み取ることができる一体型光学走査ユニット47(ライン画像読取ユニット)と、そのキャリッジ48と、これらの間に介在する複数の圧縮コイルばね49A、49Bとを含んで構成されており、キャリッジ48は、副走査方向に延在するガイドロッド46によって副走査方向に移動可能に案内されている。
【0032】
駆動機構4Mは、キャリッジ48に連結されたループ状のタイミングベルト44と、このタイミングベルト44が緩みなくかけ渡された一対のタイミングプーリ45と、一対のタイミングプーリ45のうちいずれか一方または双方を回転駆動してタイミングベルト44を介しイメージセンサヘッド4Sを副走査方向に移動させる図示しない駆動モータを含んでいる。
【0033】
具体的には、図5(b)に示すように、イメージセンサヘッド4Sの一体型光学走査ユニット47は、ガイドロッド46に案内されたキャリッジ48上に複数の圧縮コイルばね49A、49B(弾性部材、付勢手段)を介して弾性支持されている。そして、複数の圧縮コイルばね49A、49Bが一体型光学走査ユニット47およびキャリッジ48の間に組み込まれた状態下で、一体型光学走査ユニット47がその副走査方向位置に応じてFBコンタクトガラス41、DFコンタクトガラス42および中間カバー43の下面のうちいずれかに所定の接触圧で摺動可能に接触するとともに、ガイドロッド46の軸線回りの回動を規制されている。
【0034】
この一体型光学走査ユニット47は、例えばモールドフレームに、等倍結像素子ルーフミラーレンズアレイ、光路分離ミラー、等倍イメージセンサ、照明光源等を保持させた密着イメージセンサとして構成されている。一体型光学走査ユニット47は、画像を主走査方向に高解像でライン走査することができ、ブック原稿等の画像読取りにも対応可能な大きな焦点深度を有するように構成されている。なお、本発明にいうライン画像読取ユニットは、ドキュメントフィーダスキャナとフラットベットスキャナに対応できる構成であれば、一体型光学走査ユニット47のような特定の方式に限定されるものではない。主走査方向(図4中のY方向)は、FBコンタクトガラス41の上面およびDFコンタクトガラス42の上面の双方に対し平行になっている。
【0035】
キャリッジ48は、例えばガイドロッド46に摺動可能に支持された下側スライダ部48a(スラストガイド)と、一体型光学走査ユニット47の両端から主走査方向両側に突出する一対の突起部47pを回転可能にかつ上下方向に変位可能に保持する一対の保持板部48bと、これら下側スライダ部48aおよび一対の保持板部48bを一体に装着したキャッリジ本体部48cとを有している。
【0036】
下側スライダ部48aは、例えばキャッリジ本体部48cの長手方向中央の下部に固定された略筒状体からなり、ガイドロッド46と共にキャリッジ48を副走査方向に移動可能に案内するガイド手段を構成している。一対の保持板部48bは、キャッリジ本体部48cの両端側で図中上方側に突出する長穴48h付きの一対の板状体によって構成されている。下側スライダ部48aの両端側内周部分には、それぞれ中心に近いほど軸方向幅が狭められた略三角形断面の環状内突起48dが設けられている。
【0037】
複数の圧縮コイルばね49A、49Bは、キャリッジ48のキャッリジ本体部48cと一体型光学走査ユニット47の両端部との間に組み込まれることで、一体型光学走査ユニット47の両端部をそれぞれ上方側に付勢する付勢手段を構成している。そして、一体型光学走査ユニット47が図4(a)に示すフラットベッド読取領域Z1(静止原稿画像読取領域、載置原稿読取領域)内にあるとき、一体型光学走査ユニット47はその両端部下面側からFBコンタクトガラス41に押し付けられ、一体型光学走査ユニット47が図4(a)に示すDF読取領域Z2(移動原稿画像読取領域、ドキュメントフィーダスキャナ領域)内にあるときは、一体型光学走査ユニット47はその両端部下面側からDFコンタクトガラス42に押し付けられるようになっている。
【0038】
図5(a)および図5(b)に示すように、一体型光学走査ユニット47の両端側の上部には、それぞれFBコンタクトガラス41およびDFコンタクトガラス42のいずれかの下面に当接して副走査方向に円滑に滑り動く複数の上部スライダ部47bが装着されている。これら上部スライダ部47bは、一体型光学走査ユニット47の長手方向または短手方向に延在するとともに、その延在方向と直交する方向で互いに離間する複数の突条で構成されてもよい。また、上部スライダ部47bは、FBコンタクトガラス41およびDFコンタクトガラス42の下面かそれに代わるガイド面に対し、低摩擦係数で摺動性・滑動性が良く、無潤滑にできる素材で形成されるのがよい。
【0039】
このように、本実施形態では、デジタル複合機1の画像読取部4が、静止原稿の画像を読み取るFBコンタクトガラス41(第1の原稿読取ガラス)と、移動原稿の画像読取が可能なDFコンタクトガラス42(第2の原稿読取ガラス)とを備えるとともに、FBコンタクトガラス41およびDFコンタクトガラス42に沿って副走査方向に移動可能な一体型光学走査ユニット47およびキャリッジ48を有するイメージセンサヘッド4Sと、そのキャリッジ48をFBコンタクトガラス41およびDFコンタクトガラス42に沿って副走査方向に移動可能に案内支持するガイドロッド46(ガイド手段)と、一体型光学走査ユニット47を副走査方向に駆動する駆動機構4M(駆動手段)とを具備している。
【0040】
そして、その画像読取部4において、イメージセンサヘッド4Sの一体型光学走査ユニット47に駆動機構4Mからの副走査方向への駆動力F1(図4図6参照)が作用するとき、一体型光学走査ユニット47の主走査方向の両端側で、付勢手段としての複数の圧縮コイルばね49A、49Bが一体型光学走査ユニット47をFBコンタクトガラス41に所定の付勢力Ffbで付勢することに伴って、略同等の抵抗力Ffb_xが発生する。一方、画像読取部4において、イメージセンサヘッド4Sの一体型光学走査ユニット47に駆動機構4Mからの副走査方向への駆動力F2(図4図7参照)が作用するとき、一体型光学走査ユニット47の主走査方向の両端側で、付勢手段としての複数の圧縮コイルばね49A、49Bが一体型光学走査ユニット47を傾斜したDFコンタクトガラス42に付勢することに伴って、異なる抵抗力FAdf_x、FBdf_xが発生する。
【0041】
すなわち、図4(c)に示すように、圧縮コイルばね49A、49Bは、例えばばね線の線径やコイル径、材質等を変えることで、撓み量の変化に対するばね荷重の変化特性が相違しており、フラットベッド読取領域Z1内における圧縮コイルばね49A、49Bの大きな使用長Lfb(組込み長)に応じて撓み量が小さくなるときには、略同等の付勢力Ffbを発生し、一方、DF読取領域Z2内における圧縮コイルばね49A、49Bの小さな使用長Ldfに応じて撓み量が大きくなるときには、大小に異なる付勢力FAdf、FBdfを発生するようになっている。
【0042】
さらに、本実施形態においては、一体型光学走査ユニット47がフラットベッド読取領域Z1(静止原稿画像読取領域)内にあるときと、DF読取領域Z2内にあるときとでは、一体型光学走査ユニット47の両端側における圧縮コイルばね49A、49Bからの付勢力の力量比率が変化する。したがって、イメージセンサヘッド4Sがフラットベッド読取領域Z1からDF読取領域Z2内に移動するように駆動機構4Mからの副走査方向への駆動力F2によって駆動されたとき、イメージセンサヘッド4Sの一体型光学走査ユニット47は、副走査方向への傾きを抑制され、かつ、その微小な傾きを生じ得る方向がフラットベッド読取領域Z1内にあったときと同方向に抑制されることになる(図6図9参照)。
【0043】
また、本実施形態においては、一体型光学走査ユニット47がDF読取領域Z2内にあるときには、副走査方向への駆動F2力が作用する一体型光学走査ユニット47の主走査方向の一方側での圧縮コイルばね49Aの付勢力が、主走査方向の他方側での圧縮コイルばね49Bの付勢力より大きくなるよう、複数の圧縮コイルばね49A、49Bの撓み量に応じた力量比率が設定されている。したがって、イメージセンサヘッド4Sがフラットベッド読取領域Z1からDF読取領域Z2内に移動するように駆動機構4Mからの副走査方向への駆動力F2によって駆動されたとき、イメージセンサヘッド4Sの一体型光学走査ユニット47は、副走査方向への傾きを抑制され、かつ、その微小な傾きを生じ得る方向が、フラットベッド読取領域Z1内にあったときと同方向に抑制されることになる(図6図7図9参照)。
【0044】
加えて、キャリッジ48は、一体型光学走査ユニット47の主走査方向に延在するとともに、一体型光学走査ユニット47をFBコンタクトガラス41およびDFコンタクトガラス42を通した画像読取方向に可動に保持しており、付勢手段である複数の圧縮コイルばね49A、49Bが、一体型光学走査ユニット47の主走査方向の両端側でキャリッジ48と一体型光学走査ユニット47の間に介在する一方および他方の弾性部材を構成している。したがって、複数の圧縮コイルばね49A、49Bに代わる他の弾性部材、例えばゴム弾性体や板ばねあるいはそれらの組合せを採用することもできる。
【0045】
特に、本実施形態においては、一方の弾性部材である圧縮コイルばね49Aが他方の弾性部材である圧縮コイルばね49Bより大きなばね定数を有しており、一体型光学走査ユニット47がDF読取領域Z2内にあるときには、副走査方向D2への駆動力F2が作用する一体型光学走査ユニット47の主走査方向の一方側では圧縮コイルばね49Aの付勢力が相対的に大きく、主走査方向の他方側では圧縮コイルばね49Bの付勢力が相対的に小さくなるように、圧縮コイルばね49A、49Bの撓み量に応じた力量比率が設定される。よって、例えば圧縮コイルばね49A、49Bのそれぞれのばね定数および組込み長を適宜相違させて、図4(c)に示すような撓み量に応じた力量比率設定が容易に可能となる。
【0046】
なお、図3に示すように、DF読取領域Z2に形成されるストレート搬送経路61の途中であってイメージセンサヘッド4SによるDFコンタクトガラス42の下面側からの画像読取動作位置より下流側には、ストレート搬送経路61の鉛直方向上方側のガイド面の一部を構成する第2読取ユニット69が設けられている。
【0047】
この第2読取ユニット69は、原稿シートまたは小サイズのハードシートのうち任意の一方の表面画像をイメージセンサヘッド4Sで読み取った直後に、その原稿シートまたは小サイズのハードシートの裏面画像を読み取る裏面側読取ユニットとなっている。
【0048】
第2読取ユニット69は、イメージセンサヘッド4Sの一体型光学走査ユニット47と略同様に構成されており、主走査方向に延びる裏面側走査領域を有している。これにより、第2読取ユニット69は、その裏面側走査領域を通過するように副走査方向に搬送される原稿シートまたは小サイズのハードシートの裏面から画像を読み取ることができるようになっている。裏面画像の読み取りを行わない場合には、原稿シートやや小サイズのハードシートが第2読取ユニット69の読取位置を素通りし、第2読取ユニット69はストレート搬送経路61を形成するガイドの一部としてのみ機能する。
【0049】
本実施形態のデジタル複合機1は、画像読取部4での読取画像を画像形成部3によって記録紙に印刷したり画像データとして出力したりする場合には、画像形成装置として機能するものであり、画像読取部4での読取画像を受信側で画像形成可能な通信データ形式で送信出力したり、外部からそのような通信データを受信したりする場合には画像送受信装置として機能するものである。
【0050】
次に、動作について説明する。
【0051】
上述のように構成された本実施形態のデジタル複合機1の停止時には、イメージセンサヘッド4Sは、例えば図8に示すホームポジションHPに停止している。
【0052】
静止原稿画像読取、すなわち、フラットベットスキャナモードの読取動作を行う場合、イメージセンサヘッド4Sは、ホームポジションHPから副走査方向一方側、例えば図8中の右側のフラットベッド読取領域Z1内に移動し、その微小移動距離毎に一体型光学走査ユニット47によるライン走査を実行して、FBコンタクトガラス41上の載置原稿の表面(下面)の画像を読み取る。また、その読取動作が終了すると、イメージセンサヘッド4Sは、再度ホームポジションHPに戻る。
【0053】
一方、移動原稿画像読取、すなわち、DFスキャナモードの読取動作を行う場合には、イメージセンサヘッド4Sは、ホームポジションHPから副走査方向一方側、例えば図8中の左側のDF読取領域Z2内に移動する。すなわち、イメージセンサヘッド4Sは、ホームポジションから予め設定された距離だけ副走査方向他方側に移動して、DFコンタクトガラス42の下方のDF原稿読取位置(図3および図4(b)中に実線で示す位置)で停止し、DFコンタクトガラス42上を通過する搬送原稿の表面の画像を読み取る。
【0054】
DFスキャナモード時の原稿搬送は、原稿テーブル51上に原稿シートがセットされると、この原稿シートが原稿検知または/およびサイズ検知用のセンサによって検知され、ADF5がDFスキャナモードで動作可能な状態となる。このとき、イメージセンサヘッド4Sが、ホームポジションHPからDFコンタクトガラス42の下方のDF原稿読取位置(図3および図4(b)中に実線で示す位置)に移動し、第2読取姿勢で停止する。
【0055】
次いで、原稿画像の読取り開始を指示するスイッチ操作入力がなされると、ADF5の搬送駆動モータやセンサ類等が作動する。そして、原稿シートが原稿搬送経路52内に搬入されて搬送され、その原稿搬送状態に応じて、DFコンタクトガラス42上を通過する原稿シートの表面画像がイメージセンサヘッド4Sにより読み取られる。
【0056】
イメージセンサヘッド4Sは、このように、FBコンタクトガラス41の下方側とDFコンタクトガラス42の下方側とに位置し得るよう副走査方向に移動可能であり、一体型光学走査ユニット47は、その副走査方向位置に応じて、FBコンタクトガラス41を通して画像読取り可能な水平の第1読取姿勢(図6(a)および図6(b)に示す水平姿勢)と、DFコンタクトガラス42を通して画像読取り可能な傾斜した第2読取姿勢(図7(a)および図7(b)に示す傾斜姿勢)とに姿勢変化する。
【0057】
DFスキャナモードでの搬送動作は、原稿テーブル51上にセットされた通常の原稿シートがすべて排紙されるまで繰り返し実行される。そして、DFスキャナモードでの搬送動作が終了すると、イメージセンサヘッド4Sは再度ホームポジションに戻る。
【0058】
原稿シートがFBコンタクトガラス41上に載置された状態で、原稿画像の読取り開始を指示するスイッチ操作入力がなされる場合には、フラットベッドスキャナモードでの動作が実行される。すなわち、スイッチ操作入力に応じて、イメージセンサヘッド4SがホームポジションHPからFBコンタクトガラス41の下方に移動し、前述の通り、その微小移動距離毎に一体型光学走査ユニット47によるライン走査を実行して、原稿シートの表面画像を読み取る。
【0059】
また、ADF5の図示しないカード供給トレイが開放位置に操作され、そのカード供給トレイ上にハードシートがセットされると、それがハード原稿検知センサに検知され、ADF5がハードシートに対応するDFスキャナモードで動作可能となる。このとき、イメージセンサヘッド4Sは、ホームポジションHPからDFコンタクトガラス42の下方のDF原稿読取位置に移動して、第2読取姿勢で停止する。
【0060】
次いで、ハードシートの画像の読取り開始を指示するスイッチ操作入力がなされると、ADF5の搬送駆動モータやセンサ類等が作動し、ハードシートがストレート搬送経路61内に搬入されて直進搬送される。そして、その原稿搬送状態に応じて、DFコンタクトガラス42上を通過するハードシートの表面画像が読み取られる。
【0061】
また、予めの原稿搬送条件として、両面画像読取りが要求されている場合には、イメージセンサヘッド4Sによる表面画像読取りと併せて、第2読取ユニット69によるハードシートの裏面画像読取りが実行される。すなわち、1パス両面同時読取りが実行される。そして、画像読取りが完了したハードシートは、排出口56から排紙トレイ53側に排紙される。
【0062】
上述のように、本実施形態においては、イメージセンサヘッド4Sの一体型光学走査ユニット47をFBコンタクトガラス41やDFコンタクトガラス42に押し付ける付勢手段が、一体型光学走査ユニット47の両端部で撓み量に応じて力量比率を変化させる圧縮コイルばね49A、49Bで構成されている。したがって、一体型光学走査ユニット47による移動原稿読取時(ドキュメントフィーダー読取時)に、一体型光学走査ユニット47とDFコンタクトガラス42との摺動時の摩擦力やDFコンタクトガラス42からの反力等が、圧縮コイルばね49A、49Bの力量比率に応じて相違することになる。
【0063】
より具体的には、フラットベットスキャナモードの読取動作(以下、FB読取ともいう)時には、まず、図9(a)に示すように、一体型光学走査ユニット47がタイミングベルト44からの駆動力F1によってD1方向(副走査方向一方側)に駆動される。
【0064】
このとき、圧縮コイルばね49A、49Bを介して一体型光学走査ユニット47を弾性支持するキャリッジ48の下側スライダ部48aとタイミングベルト44との連結点J1がD1方向に引っ張られ、ガイドロッド46と摺動可能に嵌合する下側スライダ部48aがその摺動クリアランス(ガタ)に応じて図9(a)および図9(b)中の時計回り方向にそのガタ分だけ回転する。なお、同図中の一体型光学走査ユニット47や下側スライダ部48aの傾きが誇張して図示されていることはいうまでもない。
【0065】
そのような回転姿勢を保ちつつ、一体型光学走査ユニット47は、D1方向に移動しながらFBコンタクトガラス41上の静止原稿の画像読取りを行う。
【0066】
この状態において、付勢ばね49Aと49Bの付勢力は、それぞれ図6(b)に示す長い使用長Lfbに対応し、図6(c)に示すように小さいばね加圧力Ffbとなる。また、タイミングベルト44とキャリッジ48の下側スライダ部48aとの連結点J1が一体型光学走査ユニット47の長手方向中央付近に位置する場合、一体型光学走査ユニット47を同図中時計回り方向に回転させるモーメントM1は、小さく、実質的に一体型光学走査ユニット47の傾き(回転)を発生させるものとはならない。
【0067】
一方、DFスキャナモードの読取動作(以下、DF読取ともいう)時には、一体型光学走査ユニット47がタイミングベルト44からの駆動力F2によってFB読取時とは逆向きのD2方向(副走査方向他方側)に駆動される。
【0068】
このとき、キャリッジ48の下側スライダ部48aとタイミングベルト44との連結点J1がD2方向に引っ張られるが、DFコンタクトガラス42がFBコンタクトガラス41に対して所定の傾斜角θをなして傾斜しているので、画像読取部4の内部でイメージセンサヘッド4Sが図3および図4(b)中の仮想線位置から実線位置まで移動する間に、一体型光学走査ユニット47が水平姿勢から傾斜姿勢に変化するとともに、複数の圧縮コイルばね49A、49Bが押し縮められて、それらの使用長が短い使用長Ldfとなる。したがって、DF読取時の使用長Ldfに応じて圧縮コイルばね49A、49Bのばね加圧力FAdf、FBdfが相違することとなる。
【0069】
一方、圧縮コイルばね49A、49Bのばね加圧力に応じて、DFコンタクトガラス42に沿う方向の分力が発生し、副走査方向(図中のX方向)でD2方向に向かう抵抗力が発生する。これらの抵抗力をFAdf_xおよびFBdf_xとすると、圧縮コイルばね49A、49Bのばね加圧力FAdf、FBdfの差に基づいて、その大きさが(FAdf_x-FBdf_x)*Lyで与えられるモーメントM3が、タイミングベルト44からの駆動力F2に応じたモーメントM2とは逆向きに発生する。
【0070】
このとき、キャリッジ48の下側スライダ部48aとタイミングベルト44との連結点J1は、ガイドロッド46の近くに配置されているので、モーメントM2は小さく、これに対し、逆向きのモーメントM3は、キャリッジ48の自重やガイドロッド46との静摩擦力を上回るように圧縮コイルばね49A、49Bの力量比率および大きさを設定することで、一体型光学走査ユニット47の傾きをFB読取時と同じ方向にする程度に大きくすることができる。よって、DFコンタクトガラス42に沿って一体型光学走査ユニット47をガイドロッド46に対し直交する主走査姿勢からモーメントM2とは逆向きの回転方向に傾斜させるようにトルクを発生させ得ることになる。
【0071】
一体型光学走査ユニット47はキャリッジ48の下側スライダ部48aでガイドロッド46に対し摺動可能に支持されているが、ガイドロッド46の外径dと下側スライダ部48aの軸穴径Dとの間には、部品寸法のばらつきを考慮した製品設計および部品加工上、必ずD>dの関係が必要となるとともに、円滑な摺動のためのクリアランスも必要であるから、下側スライダ部48aでガイドロッド46の間に隙間が発生する。
【0072】
この隙間により、一体型光学走査ユニット47はタイミングベルト44で引っ張られる方向へ傾斜してしまうため、通常、画像スキュー(主走査方向の傾き)が発生することが避けられない。また、キャリッジ48の下側スライダ部48aの軸穴スラスト寸法L(軸受け幅)を長くすれば、傾き量は減らすことができるが、小型化に不利になってしまう。
【0073】
勿論、画像処理により画像スキューを補正する方法もあるが、ソフトの複雑化やメモリ消費量が大きくなってしまう。また、傾きの要因となる隙間ができないようにガタ詰めする押し付け手段等を設けることもできる(特開2017-121034号参照)が、部品数が多くなりコスト高になってしまう。
【0074】
これに対し、本実施形態では、一体型光学走査ユニット47のホームポジションHPがDFコンタクトガラス42とFBコンタクトガラス41の間にあり、イメージセンサヘッド4Sの一体型光学走査ユニット47がホームポジションHPからフラットベッド読取領域Z1内に移動して静止原稿画像読取を実行するときと、ホームポジションHPからDF読取領域Z2内に移動して移動原稿画像読取を実行するときとでは、タイミングベルト44からの駆動力F1、F2が逆向きになるにもかかわらず、図9(a)に示すように、DF読取領域Z2内ではキャリッジ48の自重やガイドロッド46との静摩擦力を上回る力で一体型光学走査ユニット47をフラットベッド読取領域Z1側に回転させるように、圧縮コイルばね49A、49Bの力量比率およびばね加圧力を設定することで、一体型光学走査ユニット47の傾きをFB読取時と同じ方向にする程度に大きくすることができる。その結果、画像スキューを抑えることができるとともに、そのスキューの方向がばらつくのを防止することができる。
【0075】
(比較例)
因みに、図10に圧縮コイルばね49A、49Bの力量比率を常時一定にするように同仕様のばねを用いるようにした比較例の場合のDF読取動作時の一体型光学走査ユニット47の傾き方向を例示する。
【0076】
この場合、一体型光学走査ユニット47がフラットベッド読取領域Z1側にあるときとDF読取領域Z2内にあるときのいずれでも、一体型光学走査ユニット47の主走査方向の両端側の複数の圧縮コイルばね49A、49Bの付勢力は略一定で同一比率となり、一体型光学走査ユニット47がフラットベッド読取領域Z1側にあるときとDF読取領域Z2内にあるときとでは、駆動力F1、F2に起因するモーメントに対向する有効な抵抗モーメントが発生し得ない。
【0077】
よって、一体型光学走査ユニット47がフラットベッド読取領域Z1側にあるときには、図10中に仮想線で示すように駆動力F1に対応する時計方向に傾き、DF読取領域Z2内にあるときには、同図中に実線で示すように駆動力F2に対応する反時計方向に傾くこととなって、読取画像のスキューが静止画像読取時と移動原稿読取時とで逆方向になるという問題を解消することができない。
【0078】
(他の実施形態)
図11は、本発明に係る画像形成装置の他の実施形態を示している。
【0079】
なお、本実施形態は、DFコンタクトガラス42がFBコンタクトガラス41に対して傾斜おらず、DF読取領域Z2内での圧縮コイルばね49A、49Bの力量比率をフラットベッド読取領域Z1内での力量比率と相違させる方法が前述の一実施形態と相違するものの、他の点については、一実施形態と略同様な全体構成を有するので、同一または類似する構成については、一実施形態における対応する構成要素の符号を用いることとし、以下、一実施形態との相違点について説明する。
【0080】
本実施形態においては、イメージセンサヘッド4Sのキャリッジ48と一体型光学走査ユニット47の主走査方向一端側の圧縮コイルばね49Aとの間に、キャリッジ48に沿って昇降可能なばね受け81が設けられるとともに、画像読取部4のDF読取領域Z2側の内側壁83からキャリッジ48とばね受け81の間に挿入可能に突出する固定スペーサ82が設けられている。
【0081】
画像読取部4においては、駆動機構4Mからの副走査方向への駆動力F1(図4(a)参照)がイメージセンサヘッド4Sに作用するとき、一体型光学走査ユニット47の主走査方向の両端側で、付勢手段としての複数の圧縮コイルばね49A、49Bが一体型光学走査ユニット47をFBコンタクトガラス41に所定の付勢力Ffbで付勢することに伴って、略同等の抵抗力Ffb_x(図6(a)参照)が発生する。
【0082】
一方、画像読取部4において、イメージセンサヘッド4Sの一体型光学走査ユニット47に駆動機構4Mからの副走査方向への駆動力F2(図7(a)参照)が作用するとき、一体型光学走査ユニット47の主走査方向の両端側で、付勢手段としての複数の圧縮コイルばね49A、49Bが一体型光学走査ユニット47をDFコンタクトガラス42に付勢するとともに、キャリッジ48とばね受け81の間に固定スペーサ82が挿入されることで、一体型光学走査ユニット47の主走査方向一端側の圧縮コイルばね49Aの使用長が縮小されてその撓み量が増大される。
【0083】
一方、圧縮コイルばね49A、49Bは、一実施形態と同様に、ばね線の線径やコイル径、材質等を変えることで、撓み量の変化に対するばね荷重の変化特性が相違しており、フラットベッド読取領域Z1内における圧縮コイルばね49A、49Bの大きな使用長Lfbに応じて撓み量が小さくなるときには、略同等の付勢力Ffbを発生し、DF読取領域Z2内における圧縮コイルばね49Aの小さな使用長Ldfと圧縮コイルばね49Bの大きな使用長Lfbとに応じて撓み量が片側だけ大きくなるときには、図7(a)に示した一実施形態の場合と略同様に、大小に異なる付勢力FAdf、FBdfおよび抵抗力FAdf_x、FBdf_x(FAdf_x>FBdf_x)が発生する。
【0084】
本実施形態においても、一体型光学走査ユニット47がフラットベッド読取領域Z1(静止原稿画像読取領域)内にあるときと、DF読取領域Z2内にあるときとでは、一体型光学走査ユニット47の両端側における圧縮コイルばね49A、49Bからの付勢力の力量比率が変化する。したがって、イメージセンサヘッド4Sがフラットベッド読取領域Z1からDF読取領域Z2内に移動するように駆動機構4Mからの副走査方向への駆動力F2によって駆動されたとき、イメージセンサヘッド4Sの一体型光学走査ユニット47は、副走査方向への傾きを抑制され、かつ、その微小な傾きを生じ得る方向がフラットベッド読取領域Z1内にあったときと同方向に抑制されることになる。
【0085】
よって、本実施形態においても、一実施形態と同様な効果を奏し得るものである。
【0086】
なお、上述の各実施形態では、キャリッジ48の下側スライダ部48aを略円筒状としたが、略U字形の凹状やその開放端を閉塞する蓋付きの形状であってもよい。キャリッジ48に対して一体型光学走査ユニット47の副走査方向の移動が規制される縦ガイド位置や複数の圧縮コイルばね49A、49Bの配設位置等が任意であることは勿論である。また、ガイドロッド46やタイミングベルト44の設置数もそれぞれ1つとしたが、複数であってもよく、タイミングベルトに代わる他の副走査方向の駆動手段を用い得ることもいうまでもない。
【0087】
以上説明したように、本発明は、光学走査ユニットがいずれの画像読取領域に配置されても光学走査ユニットの傾きが同方向でかつ十分に抑制されるようにして、読取画像のスキューを一定範囲内に抑えることのできる画像読取装置、画像形成装置および画像送受信装置を提供することができるものである。かかる本発明は、移動原稿からの画像読取と静止原稿からの画像読取とが可能な画像読取装置および画像形成装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 デジタル複合機(画像形成装置、画像送受信装置)
1h 開閉機構
2 給紙部
3 画像形成部
3a 出口
4 画像読取部
4M 駆動機構(駆動手段)
4S イメージセンサヘッド
5 ADF(自動原稿搬送装置)
6 操作パネル
41 FBコンタクトガラス(フラットベッドコンタクトガラス、第1の原稿読取ガラ
ス)
42 DFコンタクトガラス(ドキュメントフィーダコンタクトガラス、第2の原稿読
取ガラス)
43 中間カバー
43a スケール部
44 タイミングベルト(駆動手段)
45 タイミングプーリ(駆動手段)
46 ガイドロッド(ガイド手段)
47 一体型光学走査ユニット(表面読取ユニット)
47b 上部スライダ部
47p 突起部
48 キャリッジ
48a 下側スライダ部(ガイド手段、スラストガイド)
48b 保持板部
48c キャッリジ本体部
48d 環状内突起
48h 長穴
49A 圧縮コイルばね(一方の付勢手段、一方の弾性部材)
49B 圧縮コイルばね(他方の付勢手段、他方の弾性部材)
51 原稿テーブル
52 原稿搬送経路
53 排紙トレイ
55 カバー
55a 給紙口
56 排出口
61 ストレート搬送経路
69 第2読取ユニット(裏面読取ユニット)
81 ばね受け
82 固定スペーサ
83 内側壁
D1 方向(副走査方向一方側)
D2 方向(副走査方向他方側)
F1、F2 駆動力
FAdf_x、FBdf_x 抵抗力
FAdf、FBdf ばね加圧力(付勢力)
J1 連結点
M1、M2 モーメント
M3 抵抗モーメント
Z1 フラットベッド読取領域(静止原稿画像読取領域、載置原稿読取領域)
Z2 DF読取領域(移動原稿画像読取領域、ドキュメントフィーダ読取領域)
θ 傾斜角
【先行技術文献】
【特許文献】
【0089】
【文献】特開2017-108284号公報
【文献】特開2017-218273号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11