(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】インク、インクジェット印刷インク及びコンティニアスインクジェット印刷インク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/00 20140101AFI20240501BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20240501BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20240501BHJP
C09D 11/38 20140101ALI20240501BHJP
【FI】
C09D11/00
C09D11/101
C09D11/30
C09D11/38
(21)【出願番号】P 2020096032
(22)【出願日】2020-06-02
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】尾島 治
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0002591(US,A1)
【文献】特開2016-128527(JP,A)
【文献】特開2012-031254(JP,A)
【文献】特開2007-186568(JP,A)
【文献】特開2011-026404(JP,A)
【文献】国際公開第2011/104994(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンゾオキサゾリル構造を有する化合物(A)と着色剤(B)と
バインダーと導電性付与物質と有機溶剤とを含有することを特徴とするインク
であって、
前記着色剤(B)が前記インクの全量に対して2質量%~15質量%含まれ、
前記着色剤(B)が染料であるインク。
【請求項2】
前記化合物(A)と前記着色剤(B)とを1:1~1:15の質量割合で含有する請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記バインダーが、前記インクの全量に対して、10質量%~30質量%含まれる請求項1または2に記載のインク。
【請求項4】
前記導電性付与物質が、前記インクの全量に対して、0.01質量%~8質量%含まれる請求項1~3のいずれか一項に記載のインク。
【請求項5】
前記インクの全量に対する前記化合物(A)と前記着色剤(B)と前記バインダーと前記導電性付与物質との合計量の割合が13質量%~55質量%の範囲である請求項
1~4のいずれか1項に記載のインク。
【請求項6】
前記インクの全量に対する前記有機溶剤の含有量の割合が30質量%~80質量%の範囲である請求項
1~5のいずれか1項に記載のインク。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のインクジェット印刷インク。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載のコンティニアスインクジェット印刷インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、ノズルよりインクを吐出して被記録媒体に付着させる記録方式である。前記記録方式では、ノズルと被記録媒体とが接触しないため、曲面や凹凸した不規則な形状の面を有する被記録媒体に対する印刷に好適である。
【0003】
インクジェット記録方式としては、たとえばコンティニュアス方式(荷電制御方式)、静電吸引方式、圧電素子を用いてインクに機械的振動又は変位を与えるピエゾ方式、インクを加熱して発泡させそのときの圧力を利用するサーマル方式等が知られている。
【0004】
なかでも、コンティニュアス方式は、例えば飲料容器や食品容器等に賞味期限等を印刷する場面で適用されており、例えばケトン系溶剤および油性染料を含有するインクジェットプリンタ用のインクであって、更にスチレンアクリル樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ジメチルシリコンオイルおよびエポキシ樹脂を含んで成ることを特徴とするインクジェット用インクを使用できることが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
前記賞味期限等の数字や文字は、通常、複数のインク液滴(ドット)によって、1文字は横が5ドット、縦が7ドット程度の大きさで印刷されることが多い。前記印刷物には、前記飲料容器等の被記録媒体の色が前記ドットから透けて見えてしまうことを避け、印刷された文字や数字を明確に認識できる程度の視認性が求められる。前記視認性は、前記コンティニアス方式で印刷された文字や数字であれば、およそ1.8以上の光学濃度であることが好適とされている。
【0006】
1.8以上光学濃度の数字等を印刷する方法としては、例えば染料や顔料等の着色剤の含有量が高いインクを用いる方法がある。
【0007】
しかし、前記着色剤の濃度を高くしようとすると、前記着色剤以外の成分(例えば有機溶剤やバインダー樹脂や導電性付与物質等)の含有量が少なくする必要がある。有機溶剤の含有量の少ないインクは長期の保存安定性を低下させることや物性値を著しく変化させてしまう場合がある。また、前記バインダー樹脂の含有量の少ないインクは被記録媒体への密着性が損なわれる一方、塗膜強度も低下し、本来のマーキング用途の体を成さなくなる場合がある。また、前記導電性付与物質の含有量の少ないインクは、インクの導電性が確保出来なくなるため、連続吐出性を不安定にする等、インクの印字信頼性を低下させてしまう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、視認性の高い印刷物の製造に使用でき、かつ、保存安定性や吐出信頼性、被記録媒体への密着性に優れたインクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、ベンゾオキサゾリル構造を有する化合物(A)と着色剤(B)とを含有することを特徴とするインクによって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインクは、視認性の高い印刷物の製造に使用でき、かつ、保存安定性や吐出信頼性、被記録媒体への密着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のインクは、ベンゾオキサゾリル構造を有する化合物(A)と着色剤(B)とを含有することを特徴とする。前記化合物(A)と前記着色剤(B)とを組み合わせ含有するインクであれば、前記着色剤(B)の含有量が従来と同程度の場合であっても、視認性の高い印刷物を形成することができる。前記従来と同程度の着色剤(B)の含有量は、例えば前記着色剤(B)としてブルーの染料を用いた場合であれば、インクの全量に対して1~5質量%、レッドの染料であれば3~7質量%程度である。
【0013】
本発明のインクとしては、前記化合物(A)と前記着色剤(B)とを1:1~1:15の質量割合で含有するインクを使用することが好ましく、1:2~1:12の質量割合で含有するインクを使用することがより好ましく、1:3~1:10の質量割合で含有するインクを使用することが、優れた保存安定性や吐出信頼性と、印刷物の高い視認性とを両立するうえで特に好ましい。
【0014】
本発明のインクは、前記化合物(A)や着色剤(B)等が水や有機溶剤等の溶媒に溶解または分散したものであることが、インクジェット印刷方式や、コンティニアスインクジェット印刷方式を適用するうえで好ましい。
【0015】
本発明のインクは、例えばインクジェット用インクとして好適に使用でき、なかでも、コンティニュアス方式のインクジェット用インクに好適に使用できる。また、本発明のインクは、例えば紫外線や電子線等の活性エネルギー線の照射によって前記インクに含まれる成分が硬化し塗膜を形成するような活性エネルギー線硬化性インクではなく、前記照射によって硬化しない活性エネルギー線非硬化性インクであることが、コンティニアスインクジェット印刷方式を適用するうえで好ましい。
【0016】
本発明のインクをコンティニュアス方式のインクジェット用インクとして使用する場合、前記化合物(A)と着色剤(B)として好ましくは油溶性染料と、溶媒として有機溶剤を含有するインクを使用することが好ましい。
【0017】
[ベンゾオキサゾリル構造を有する化合物(A)]
本発明で使用する化合物(A)は、ベンゾオキサゾリル構造を有するものである。前記化合物(A)は、後述する着色剤(B)と組み合わせ使用することによって、視認性の高い印刷物を形成可能なインクを製造することができる。
【0018】
前記化合物(A)としては、ベンゾオキサゾイル構造を有するものを使用することができる。なかでも、前記化合物(A)としては、下記一般式(I)で示される構造を有するものを使用することが、優れた保存安定性や吐出信頼性と、印刷物の高い視認性とを両立するうえで特に好ましい。
【0019】
【0020】
(一般式(I)中のR1は水素原子、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基、アルキレン基、アルキニル基を指す。)
【0021】
前記R1は、例えば水素原子、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基、アルキレン基、アルキニル基が挙げられ、アルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基であることがより好ましく、ブチル基であることが特に好ましく、tert-ブチル基であることが特に好ましい。
【0022】
本発明が解決しようとする課題である印刷物の視認性の低下の要因のひとつとして、インクの黄色味が挙げられる。そこで、蛍光増白剤を用い、前記黄色味の補色にあたる青色光を放出することによって、前記黄色味を低下させ、その結果、印刷物の視認性を向上させることができる。
【0023】
本発明では、特定の化合物(A)を用いることによって、上記と同様のメカニズムで視認性を向上させるだけでなく、着色剤(B)の濃度が従来と同程度のインクを用いた場合であっても、印刷物の光学濃度を向上でき、その結果、前記視認性を向上できることを見出した。
【0024】
前記化合物(A)は、本発明のインクの全量に対して、0.3質量%~2.5質量%の範囲で使用することが好ましく、0.5質量%~2.0質量%の範囲で使用することが好ましく、0.7質量%~1.8質量%の範囲で使用することが、優れた保存安定性や吐出信頼性とを備え、着色剤(B)の含有量が前記したとおり従来と同程度であっても印刷物に高い視認性を付与可能なインクを得るうえで特に好ましい。
【0025】
[着色剤(B)]
本発明のインクに含まれる着色剤(B)としては、染料、有機顔料、無機顔料等を使用することができる。なかでも、前記着色剤(B)としては、染料を使用することが好ましく、後述するケトン系溶剤、特にメチルエチルケトンに溶解可能な油溶性染料を使用することが、耐水性に優れた印刷物を得るうえでより好ましい。
【0026】
前記メチルエチルケトンに溶解可能な油溶性染料は、例えば、クロム錯塩染料、銅フタロシアニン染料、ニグロシン系染料、造塩染料等を使用することができる。
【0027】
前記油溶性染料としては、具体的には、C.I.ソルベントブラック22、27、29、34、43、45、C.I.アシッドバイオレット66、C.I.ソルベントオレンジ62、C.I.ソルベントレッド8、89、91、92、122,124、127、130、132、C.I.ソルベントイエロー19、21、62、79、83、83:1、C.I.ソルベントブルー38、70等を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0028】
前記油溶性染料としては、C.I.ソルベントブラック27、29、34、43、C.I.ソルベントレッド8、122,127、130、132、ソルベントブルー38、70を使用することが好ましく、なかでもC.I.ソルベントブラック27、43、C.I.ソルベントレッド8、130、132、ソルベントブルー70を使用することがより好ましい。
【0029】
前記染料等の着色剤(B)としては、上記したとおり各種の色を使用できる。前記化合物(A)が青色光を発するため、前記着色剤(B)として前記青色光の補色であるイエローの染料を用いる場合には、イエローの染料を単独で用いるよりも他の染料と組み合わせ使用することが視認性を向上させるうえで好ましく、例えばイエローの染料と他の染料とを組み合わせグリーンに調整したものを使用することがより好ましい。
【0030】
前記着色剤(B)は、前記インクの全量に対して、1質量%~10質量%の範囲で使用することが好ましく、2質量%~7質量%の範囲で使用することが、実用上十分な視認性を有する印刷物を得るうえでより好ましい。
【0031】
また、本発明のインクは、前記化合物(A)や着色剤(B)の他に、必要に応じてバインダー、導電性付与物質、有機溶剤等を含有するものを使用することが好ましい。
【0032】
[バインダー]
前記バインダーとしては、例えば、後述するケトン系溶剤、特にメチルエチルケトンに溶解可能で、長期間にわたり、常温、高温および低温環境下において析出しにくいものを使用することが、吐出異常を防止し、吐出信頼性に優れたインクを得るうえで好ましい。
【0033】
前記バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ロジンマレイン酸樹脂、ケトン樹脂、セルロース系樹脂、ロジンエステル、ニトロセルロース樹脂、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂等を単独または2以上組み合わせ使用することができる。なかでも、前記バインダーとしては、ビニル重合体を使用することが好ましく、とりわけスチレン-アクリル重合体を使用することが、ポリオレフィン記録媒体をはじめとする被記録媒体への密着性に優れたインクを得るうえでより好ましい。
【0034】
前記スチレン-アクリル重合体としては、具体的にはスチレン-αメチルスチレン-アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキル-メタクリル酸アルキル-スチレン共重合体、スチレン-アクリル系共重合体、変性アクリル系共重合体等を使用することができる。
【0035】
前記バインダーとしては、重量平均分子量1000以上4000未満の範囲のものを使用することが好ましく、1200以上3500未満の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、1500以上3200未満の範囲ものを使用することが、長期間にわたる吐出信頼性やインクの保存安定性に優れ、かつ、インクに含まれるバインダーの質量割合を比較的高く設定できることから被記録媒体への密着性や印刷物の耐摩耗性、視認性に優れた印刷物を形成可能なインクを得るうえでより好ましい。
【0036】
前記バインダーとしては、200~300の範囲の酸価を有するものを使用することが好ましく、220~270範囲の酸価を有するものを使用することが、インクの再溶解性に優れ、かつ、ポリオレフィン記録媒体をはじめとする被記録媒体への密着性に優れたインクを得るうえでより好ましい。なお、インクの再溶解性が優れるとは、インクの連続吐出を中断させ、再度吐出をさせた場合であっても、吐出異常を起こすことなく、連続吐出を再開できることを指す。
【0037】
前記バインダーは、前記インクの全量に対して、10質量%~30質量%の範囲で使用することが好ましく、15質量%~25質量%の範囲で使用することが、とりわけコンティニュアス方式でも使用可能なインクジェット用インクに適度な粘度を与えるうえで、ポリオレフィン記録媒体をはじめとする被記録媒体への密着性に優れ、耐摩耗性に優れた印刷物の製造に使用可能なインクを得るうえでより好ましい。
【0038】
[導電性付与物質]
本発明のインクをコンティニュアス方式で印刷する場合、導電性付与物質を使用することが、被記録媒体に着弾する前のインク液滴を帯電させ、その量を制御し、これを静電場で偏向させることで、被記録媒体の所定の位置に着弾させることができ、かつインクの液滴曲がりといった吐出異常を生じることがなく、優れた吐出性を実現するうえでるため好ましい。
【0039】
前記導電性付与物質としては、例えば硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硝酸テトラメチルアンモニウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸テトラメチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸アンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラメチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム-4-ヒドロキシナフタレン-1-スルフォネート等が好ましい。
【0040】
前記導電性付与物質は、前記インクの全量に対して、0.01質量%~8質量%の範囲で使用することが好ましく、0.2質量%~5質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0041】
[有機溶剤]
本発明のインクに含まれる有機溶剤としては、ケトン系溶剤を必須成分とし、必要に応じてその他の有機溶剤を組み合わせ使用することができる。
【0042】
前記ケトン系溶剤としては、乾燥性の高いアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等を使用することができ、なかでも、メチルエチルケトンを使用することが、乾燥性が高く、耐摩耗性と耐水性と耐候性とに優れた印刷物を得るうえでより好ましい。
【0043】
前記ケトン系溶剤は、前記インクの全量に対して、45質量%~65質量%の範囲で使用することが好ましく、50質量%~62質量%の範囲で使用することが、高温および低温環境下において前記着色剤とバインダー等の析出を抑制でき、長期間にわたり溶解した安定状態を維持でき、その結果、吐出異常を防止し、吐出信頼性に優れたインクを得るうえで好ましい。
【0044】
前記ケトン系溶剤と組み合わせ使用可能なその他の有機溶剤としては、例えば、安全性の高い低級アルコール、エステル系溶剤等を単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0045】
低級アルコールとしては、炭素原子数4以下のアルコールを使用することができ、具体的にはメタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノールが挙げられる。
【0046】
前記エステル系溶剤としては、染料をはじめとする着色剤の溶解性をさらに高めることができ、インクの安定性を高める効果があるものを使用することができ、例えばプロピレングリコールモノアルキルエーテルアルキレート、ポリプロピレングリコールモノアルキルアセテート、カルボン酸エステル、アルコキシカルボン酸エステル等が好ましい。
【0047】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルアルキレートの、モノアルキルエーテルを構成するアルキル基の炭素原子数及びアルキレートを構成するアルキル基の炭素原子数は、1~10であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。前記アルキル基は直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。
【0048】
前記ポリプロピレングリコールモノアルキルアセテートとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート等を使用することがさらにより好ましく、印字ドットの濡れ広がりを防止することで、良好な視認性が得られる、更に、低温環境下での染料の析出を防止する効果を奏するうえでプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが特に好ましい。
【0049】
前記カルボン酸エステルとしては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸ヘキシル等を使用することがより好ましく、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸ヘキシル等を使用することがさらにより好ましく、プロピオン酸エチルを使用することが特に好ましい。
【0050】
前記その他の有機溶剤は、前記着色剤(B)の質量に対して10質量%~100質量%の範囲で使用することが好ましく、20質量%~80質量%の範囲で使用することがより好ましく、30質量%~70質量%の範囲で使用することが印字ドットの濡れ広がり防止することで、良好な視認性が得られる、低温環境下での染料の析出を抑制しインクの吐出異常を防止するうえで特に好ましい。
【0051】
本発明のインクは、前記インクの全量に対して水の含有量が2質量%以下であることが好ましく、0~1.5質量%であることがより好ましく、実質的に0質量%であることが、耐水性に優れた印刷物を得るうえで特に好ましい。
【0052】
[任意成分]
本発明のインクは、前記した成分のほかに、必要に応じて蛍光増白剤を含有するものを使用することができる。
【0053】
前記蛍光増白剤としては、紫外線に照射されて蛍光を発するものを使用することができる。
【0054】
前記蛍光増白剤としては、例えばスチルベン由来の構造を有する化合物、クマリン由来の構造を有する化合物、ナフタルイミド由来の構造を有する化合物等を使用することができる。
【0055】
本発明のインクは、前記した成分のほかに、必要に応じて、例えばシリコーン系化合物、フッ素系化合物等を使用することができる。
【0056】
前記シリコーン系化合物としては、印刷物の耐摩耗性、印刷物の色移り度合いを判断する耐転写性、先端が鋭利な突起物等での耐擦性、即ち、耐スクラッチ性等を向上させるうえで、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーンレジン等を使用することができ、具体的には、信越化学工業(株)製のKF-56(シリコーンオイル)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製のTSF-410(高級脂肪酸変性シリコーンオイル)、TSF-4446、4460(ポリエーテル変性シリコーンオイル)、TSF-4710(アミノ変性シリコーンオイル)、信越化学工業(株)製のKR-216、KP-316、360A(シリコーンレジン)等を単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0057】
前記フッ素系化合物としては、前記シリコーン系化合物同様、印刷物の耐摩耗性、印刷物の色移り度合いを判断する耐転写性、先端が鋭利な突起物等での耐擦性、即ち、耐スクラッチ性等を向上させるうえで、フッ素系界面活性剤等を使用することが出来、具体的には、DIC(株)製のメガファックF-470、F-173、F-177等を単独または2種以上組み合わせ使用することができる。前記フッ素系化合物は、前記シリコーン系化合物と組み合わせ使用することもできる。
【0058】
[インクの製造方法]
本発明のインクは、ベンゾオキサゾリル構造を有する化合物(A)と着色剤(B)と、必要に応じてバインダーや導電性付与物質や有機溶剤等を混合し、ディスパミルに代表される高速攪拌機等で撹拌した後、必要に応じてろ過することによって製造することができる。
【0059】
[被記録媒体]
本発明のインクは、様々な被記録媒体への印刷に使用することができる。
【0060】
前記被記録媒体としては、例えば前記インクに含まれる溶媒を吸収し得る吸収性媒体や、インクに含まれる溶媒を吸収しないまたは吸収しにくい低吸収性媒体を使用することができる。本発明のインクは、低吸収性媒体への印刷に使用した場合であっても、乾燥性の高いケトン系溶剤を使用しているため、濡れ広がりの無い均一したドット径を有する優れた印刷物を得ることができる。
【0061】
前記低吸収性媒体としては、例えばポリオレフィン等の樹脂を含む被記録媒体、金属、ガラスからなる被記録媒体等が挙げられる。
【0062】
[印刷方法]
本発明のインクは、もっぱらインクジェット印刷法での印刷に好適に使用することができる。なかでも本発明のインクは、導電性付与物質を含有するインクを、コンティニュアス方式でのインクジェット印刷用インクとして使用することが好ましい。
【0063】
導電性付与物質を含有するインクは、前記インクの液柱を電歪素子で振動させることによって一定の大きさのインク液滴を形成し、インク液滴を帯電し、インク液滴を静電場で偏向させることで、被記録媒体の所定の位置に着弾させ、鮮明な印刷物を得ることができるため好ましい。
【0064】
[印刷物]
本発明のインクを用いた印刷物としては、例えば紙パック、瓶ラベル、レトルトパウチパック、缶詰、包装フィルム、建材、銅板、チューブ、薬品個装箱、化粧品個装箱等のものが挙げられる。これらの印刷物は、密着性、耐摩耗性、印字ドットに濡れ広がりがないため、印字物濃度は別にしても、良好な視認性を有するとされる。これらに加え、耐熱性、耐溶剤性、耐転写性、耐煮沸性等も備えており、実使用に好適とされる優れた特徴をも有している。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0066】
(実施例1)
メチルエチルケトン60.0質量%およびメタノール8.0質量%に、「ジョンクリル682」(BASF製、スチレン-アクリル重合体)18.0質量%、導電性付与物質であるベンジルトリブチルアンモニウム-4-ヒドロキシナフタレン-1-スルフォネート4.0質量%、「KR-216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)4.7質量%、および、2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス[5-(1,1-ジメチルエチル)ベンゾキサゾール0.5重量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0067】
次に、前記で得た攪拌混合物に「VALIFAST BLUE 2680」(オリエント化学工業(株)製、ソルベントブルー70)4.8質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式のインクジェット用ブルーインク(1)を得た。
【0068】
(実施例2)
メチルエチルケトン60.8質量%およびメタノール6.0質量%に、「ジョンクリル682」(BASF製、スチレン-アクリル重合体)19.0質量%、導電性付与物質であるベンジルトリブチルアンモニウム-4-ヒドロキシナフタレン-1-スルフォネート3.0質量%、「KR-216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)4.5質量%、および、2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス[5-(1,1-ジメチルエチル)ベンゾキサゾール0.7重量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0069】
次に、前記で得た攪拌混合物に「VALIFAST BLACK 3820」(オリエント化学工業(株)製、ソルベントブラック27)6.0質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式のインクジェット用ブラックインク(2)を得た。
【0070】
(実施例3)
メチルエチルケトン59.1質量%およびメタノール7.0質量%に、「ジョンクリル682」(BASF製、スチレン-アクリル重合体)18.0質量%、導電性付与物質であるベンジルトリブチルアンモニウム-4-ヒドロキシナフタレン-1-スルフォネート3.4質量%、「KR-216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)4.7質量%、および、2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス[5-(1,1-ジメチルエチル)ベンゾキサゾール1.0重量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0071】
次に、前記で得た攪拌混合物に「VALIFAST RED 3320」(オリエント化学工業(株)製、ソルベントレッド132)6.8質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式のインクジェット用レッドインク(3)を得た。
【0072】
(実施例4)
メチルエチルケトン53.5質量%およびメタノール8.2質量%に、「ジョンクリル682」(BASF製、スチレン-アクリル重合体)21.0質量%、導電性付与物質であるベンジルトリブチルアンモニウム-4-ヒドロキシナフタレン-1-スルフォネート4.0質量%、「KR-216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)4.5質量%、および、2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス[5-(1,1-ジメチルエチル)ベンゾキサゾール1.3重量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0073】
次に、前記で得た攪拌混合物に「Orasol Blue 855」(BASF製、ソルベントブルー70)2.8質量%、「Orasol Yellow 081」(BASF製、ソルベントイエロー79)4.7質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式のインクジェット用グリーンインク(4)を得た。
【0074】
(比較例1)
メチルエチルケトン60.1質量%およびメタノール8.2質量%に、「ジョンクリル682」(BASF製、スチレン-アクリル重合体)18.2質量%、導電性付与物質であるベンジルトリブチルアンモニウム-4-ヒドロキシナフタレン-1-スルフォネート4.0質量%、および、「KR-216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)4.7質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0075】
次に、前記で得た攪拌混合物に「VALIFAST BLUE 2680」(オリエント化学工業(株)製、ソルベントブルー70)4.8質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式のインクジェット用ブルーインク(H1)を得た。
【0076】
(比較例2)
メチルエチルケトン60.8質量%およびメタノール6.5質量%に、「ジョンクリル682」(BASF製、スチレン-アクリル重合体)19.2質量%、導電性付与物質であるベンジルトリブチルアンモニウム-4-ヒドロキシナフタレン-1-スルフォネート3.0質量%、および、「KR-216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)4.5質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0077】
次に、前記で得た攪拌混合物に「VALIFAST BLACK 3820」(オリエント化学工業(株)製、ソルベントブラック27)6.0質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式のインクジェット用ブラックインク(H2)を得た。
【0078】
(比較例3)
メチルエチルケトン59.5質量%およびメタノール7.4質量%に、「ジョンクリル682」(BASF製、スチレン-アクリル重合体)18.2質量%、導電性付与物質であるベンジルトリブチルアンモニウム-4-ヒドロキシナフタレン-1-スルフォネート3.4質量%、および、「KR-216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)4.7質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0079】
次に、前記で得た攪拌混合物に「VALIFAST RED 3320」(オリエント化学工業(株)製、ソルベントレッド132)6.8質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式のインクジェット用レッドインク(H3)を得た。
【0080】
(比較例4)
メチルエチルケトン54.3質量%およびメタノール8.5質量%に、「ジョンクリル682」(BASF製、スチレン-アクリル重合体)21.2質量%、導電性付与物質であるベンジルトリブチルアンモニウム-4-ヒドロキシナフタレン-1-スルフォネート4.0質量%、および、「KR-216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)4.5質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0081】
次に、前記で得た攪拌混合物に「Orasol Blue 855」(BASF製、ソルベントブルー70)2.8質量%、「Orasol Yellow 081」(BASF製、ソルベントイエロー79)4.7質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式のインクジェット用グリーンインク(H4)を得た。
【0082】
(比較例5)
メチルエチルケトン61.1質量%およびメタノール8.2質量%に、「ジョンクリル682」(BASF製、スチレン-アクリル重合体)16.5質量%、導電性付与物質であるベンジルトリブチルアンモニウム-4-ヒドロキシナフタレン-1-スルフォネート4.0質量%、および、「KR-216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)3.7質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0083】
次に、前記で得た攪拌混合物に「VALIFAST BLUE 2680」(オリエント化学工業(株)製、ソルベントブルー70)6.5質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式のインクジェット用ブルーインク(H5)を得た。
【0084】
(比較例6)
メチルエチルケトン60.6質量%およびメタノール8.2質量%に、「ジョンクリル682」(BASF製、スチレン-アクリル重合体)18.0質量%、導電性付与物質であるベンジルトリブチルアンモニウム-4-ヒドロキシナフタレン-1-スルフォネート2.0質量%、および、「KR-216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)4.7質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0085】
次に、前記で得た攪拌混合物に「VALIFAST BLUE 2680」(オリエント化学工業(株)製、ソルベントブルー70)6.5質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式のインクジェット用ブルーインク(H6)を得た。
【0086】
(比較例7)
メチルエチルケトン57.6質量%およびメタノール9.2質量%に、「ジョンクリル682」(BASF製、スチレン-アクリル重合体)18.0質量%、導電性付与物質であるベンジルトリブチルアンモニウム-4-ヒドロキシナフタレン-1-スルフォネート4.0質量%、および、「KR-216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)4.7質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0087】
次に、前記で得た攪拌混合物に「VALIFAST BLUE 2680」(オリエント化学工業(株)製、ソルベントブルー70)6.5質量%を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式のインクジェット用ブルーインク(H7)を得た。
【0088】
[視認性の評価方法]
視認性は、インクを用いて形成した塗膜の光学濃度に基づいて評価した。
【0089】
実施例および比較例で得たインクを、バーコーターを用いて、ポリエチレンフィルムの表面に2ミクロン厚に調整した塗膜を作製し、25℃の環境下で30分間乾燥させることによって印刷塗膜を得た。
【0090】
印刷塗膜を目視で観察し、乾燥面に色ムラや乾燥ムラがないことを確認した後、分光光度計で塗膜の光学濃度をeXactスタンダード分光光度計で測定した(X-rite社製)。測定箇所は、15cm×15cm平面で5か所とし、平面の各頂点部と平面中心部とした。測定結果は、この5か所測定値の平均値を採用した。
【0091】
[インク保存安定性の評価方法]
(1)高温60℃での保存安定性の評価方法
実施例及び比較例で得たインクを、はじめに、製造直後のインクの粘度を、E型粘度計(東機産業社製のTV-20型、コーン型ローター使用)を用い20℃の環境下で測定した(初期粘度X1)。
【0092】
次に、前記インクを、60℃の環境下に1440時間静置した。
【0093】
前記静置後のインクを60℃環境下から取り出し、前記インクが常温になるまで常温の環境下に静置した。
【0094】
前記常温のインクの粘度を、E型粘度計(東機産業社製のTV-20型、コーン型ローター使用)を用い20℃の環境下で測定した(粘度X2)。
【0095】
前記方法で測定した初期粘度X1と粘度X2と下記式とを用い、粘度変化率を算出した。
粘度変化率(%)=[{(粘度X2)-(初期粘度X1)}/初期粘度(X1)]×100
【0096】
○ 粘度変化率が±5%未満
△ 粘度変化率が±5%以上±10%未満
× 粘度変化率が±10以上%以上
【0097】
(2)低温-5℃での保存安定性の評価方法
実施例及び比較例で得たインクを、はじめに、製造直後のインクの粘度を、E型粘度計(東機産業社製のTV-20型、コーン型ローター使用)を用い20℃の環境下で測定した(初期粘度X1)。
【0098】
次に、前記インクを、-5℃の環境下に1440時間静置した。
【0099】
前記静置後のインクを-5℃環境下から取り出し、前記インクが常温になるまで常温の環境下に静置した。
【0100】
前記常温のインクの粘度を、E型粘度計(東機産業社製のTV-20型、コーン型ローター使用)を用い20℃の環境下で測定した(粘度X2)。
【0101】
前記方法で測定した初期粘度X1と粘度X2と下記式とを用い、粘度変化率を算出した。
粘度変化率(%)=[{(粘度X2)-(初期粘度X1)}/初期粘度(X1)]×10
【0102】
○ 粘度変化率が±5%未満
△ 粘度変化率が±5%以上±10%未満
× 粘度変化率が±10以上%以上
【0103】
(3)ろ過性試験の評価方法
実施例及び比較例で得たインクを、60℃の環境下と-5℃の環境下に各々1440時間静置した。
【0104】
前記静置後のインクを、前記インクが常温になるまで常温の環境下に静置した。
【0105】
次に、前記インクを、ポアサイズ0.6μm径のメンブレンフィルタでろ過した。
【0106】
前記メンブレンフィルタ上に析出物(残渣物)が目視で確認できたものを「×」と評価し、析出物が確認できなかったものを「○」と評価した。
【0107】
[吐出信頼性の評価方法]
実施例及び比較例で得たインクを、荷電量制御方式のインクジェットプリンタ(日立産機システム社製のコンティニアス方式のインクジェットプリンタ)を用いて、1500時間の連続吐出した。吐出されたインクは、ガターで回収され、プリンタ内のインク経路を通じて再び吐出されるように設定した。
【0108】
1500時間経過後、インクの吐出方向異常が発生したことによりガターで回収されず、ガター周辺がインクで着色したものを「×」と評価し、1500時間経過後であってもインクの吐出方向異常が発生せず、吐出されたインクのすべてがガターで回収されたものを「○」と評価した。
【0109】
[密着性の評価方法]
実施例及び比較例で得たインクを、荷電量制御方式のインクジェットプリンタを用いて、ポリエチレンフィルムの表面に、100個のドット(10cm×10cm)を印字した。
【0110】
前記印刷物を25℃の環境下に30分間静置した後、印刷物の表面にセロハン粘着テープ(ニチバン製)を貼り付けた。次に、前記セロハン粘着テープを、印刷物の表面に対して180度方向に剥離し、印刷面の状態を目視で確認した。
【0111】
印刷面のドットの剥離が0個であったものを「○」と評価し、1以上25個未満のドットがはがれたものを「△」と評価し、25個以上のドットがはがれたものを「×」と評価した。
【0112】
[耐摩耗性の評価方法]
実施例及び比較例で得たインクを、荷電量制御方式のインクジェットプリンタを用いて、ポリエチレンフィルムの表面に、100個のドット(10cm×10cm)を印字した。
【0113】
前記印刷物を25℃の環境下に30分間静置した後、印刷物の表面をDRY状態の綿棒で20回こすった面の状態を目視で確認した。
【0114】
印刷面のドットの剥離が0個であったものを「○」と評価し、1以上25個未満のドットがはがれたものを「△」と評価し、25個以上のドットがはがれたものを「×」と評価した。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
実施例1記載のインクは、2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス[5-(1,1-ジメチルエチル)ベンゾキサゾールを用いないこと以外は実施例1と同様の方法で得られたインクと比較して、同等の保存安定性と吐出信頼性と密着性と耐摩耗性とを維持し、かつ、光学濃度が各段に向上し視認性に優れた備えた印刷物を形成できることが分かった。
【0123】
実施例2記載のインクは、2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス[5-(1,1-ジメチルエチル)ベンゾキサゾールを用いないこと以外は実施例2と同様の方法で得られたインクと比較して、同等の保存安定性と吐出信頼性と密着性と耐摩耗性とを維持し、かつ、光学濃度が各段に向上し視認性に優れた印刷物を形成できることが分かった。
【0124】
実施例3記載のインクは、2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス[5-(1,1-ジメチルエチル)ベンゾキサゾールを用いないこと以外は実施例3と同様の方法で得られたインクと比較して、同等の保存安定性と吐出信頼性と密着性と耐摩耗性とを維持し、かつ、光学濃度が各段に向上し視認性に優れた印刷物を形成できることが分かった。
【0125】
実施例4記載のインクは、2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス[5-(1,1-ジメチルエチル)ベンゾキサゾールを用いないこと以外は実施例4と同様の方法で得られたインクと比較して、同等の保存安定性と吐出信頼性と密着性と耐摩耗性とを維持し、かつ、光学濃度が各段に向上し視認性に優れた印刷物を形成できることが分かった。
【0126】
一方、比較例5~7のインクは、比較例1のインクよりも着色剤の含有量が多いため、光学濃度の高い視認性に優れた印刷物を形成できたものの、保存安定性や吐出信頼性や密着性や耐摩耗性の低下を引き起こす場合があることが分かった。