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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】電子部品部材洗浄水の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240501BHJP
   C02F 1/78 20230101ALI20240501BHJP
【FI】
H01L21/304 648K
C02F1/78
H01L21/304 622Q
H01L21/304 647Z
H01L21/304 648G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020097521
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021190652
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐一
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-031159(JP,A)
【文献】特開2016-143872(JP,A)
【文献】特開2019-147112(JP,A)
【文献】特開2013-207271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C02F 1/78
B08B 3/00
B08B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水に導電性付与剤と酸化還元電位調整剤とを添加して所望とする導電性及び酸化還元電位の電子部品部材洗浄水を製造して、この電子部品部材洗浄水をユースポイントに供給する電子部品部材洗浄水の製造装置であって、
超純水供給ラインに導電性付与剤注入装置及び酸化還元電位調整剤注入装置を備え、
前記導電性及び酸化還元電位調整手段とユースポイントとの間に冷却機構を設け、
前記導電性付与剤がアンモニアである、電子部品部材洗浄水の製造装置。
【請求項2】
前記酸化還元電位調整剤が、過酸化水素水、O又はHである、請求項に記載の電子部品部材洗浄水の製造装置。
【請求項3】
前記冷却機構が電子部品部材洗浄水を20℃以下でユースポイントに供給可能である、請求項1又は2に記載の電子部品部材洗浄水の製造装置。
【請求項4】
前記超純水供給ラインに導電性付与剤注入装置の下流側に導電率計又は比抵抗計を備えるとともに、前記酸化還元電位調整剤注入装置の下流側に酸化還元剤濃度計測装置又はORP計を備える、請求項1~のいずれか1項に記載の電子部品部材洗浄水の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子産業分野等で使用される電子部品・電子部材の洗浄水の製造装置に関し、特にアンモニアや過酸化水を添加することで、導電性と酸化還元電位を調製した電子部品や電子部材の洗浄水の洗浄性を制御可能な電子部品や電子部材の洗浄水の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや半導体デバイスなどの電子部品や電子部材の処理に使用される洗浄水として、超純水に導電率付与物質や酸化還元電位をコントロール物質、ガスを添加した溶液が使用されている。また、これらによる洗浄後のリンス工程には超純水が用いられるが、超純水はその純度が高いほど比抵抗値が高くなるため、洗浄時に静電気が発生しやすくなり、絶縁膜の静電破壊や微粒子の再付着を招くといった問題があることが知られている。そのため、超純水に炭酸ガスやアンモニアなどを溶解した希薄な薬液をリンス水とすることでpH調整を行い、静電気を低減して上述したような問題に取り組んでいる。
【0003】
ところで、近年では、ウエハを洗浄する際に、ウエハ表面の所定の物質を溶解せずに洗浄するニーズが増えている。このためには、ウエハ材料に応じて、特定の洗浄薬液を調製し、この洗浄薬液により洗浄を行っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ウエハ材料に応じて洗浄薬液を調製していたのでは高価であり、この洗浄薬液を含む排水を回収して洗浄薬液を再利用するのは困難で、薬品コストもかかるという問題点がある。
【0005】
そこで、従来から半導体基板のウェット洗浄方法であるRCA洗浄で使用されているアンモニア水と過酸化水素水と水との混合液を洗浄液として用いることが考えられる。例えば、図2に示すように、洗浄液の製造装置11は、超純水Wの供給ライン12に開閉弁13Bを備えた配管13Aを介して接続された導電性付与剤としてのアンモニア水供給装置13と、開閉弁14Bを備えた配管14Aを介して接続された酸化還元電位調整剤としての過酸化水素水供給装置14とを備え、超純水供給ライン12の末端はユースポイントUPとなっている。そして、超純水供給ライン12のアンモニア水供給装置13の後段には導電率計15が設けられているとともに、過酸化水素水供給装置14の後段にはORP計6が設けられていて、これらの測定値に基づいて、アンモニア水供給装置13からのアンモニア水の供給量及び過酸化水素水供給装置14からの過酸化水素水の供給量を制御可能となっている。
【0006】
このような洗浄液製造装置11では、超純水Wにアンモニア水を添加してpHをアルカリ側として導電性を高めるとともに、過酸化水素水を添加して酸化還元電位を正の方向に高めて、このアルカリ性の洗浄液によりウエハを洗浄することで、化学反応でウエハ表面をエッチングして除去することを基本メカニズムとしていることから、ウエハ表面の所定の材料のみを溶解させるという、溶解性のコントロールが困難である、という問題点がある。この対策として希薄な薬液を調整することが考えられるが、希薄な薬液を調整するには限界があり、そのままではやはりウエハ表面の所定の材料のみを溶解させるという、溶解性のコントロールが困難である。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、導電性と酸化還元電位を調製し、電子部品・電子部材の洗浄性を制御可能な電子部品や電子部材の洗浄水の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に鑑み、本発明は、超純水に導電性付与剤と酸化還元電位調整剤とを添加して所望とする導電性及び酸化還元電位の電子部品部材洗浄水を製造して、この電子部品部材洗浄水をユースポイントに供給する電子部品部材洗浄水の製造装置であって、超純水供給ラインに導電性付与剤注入装置及び酸化還元電位調整剤注入装置を備え、前記導電性及び酸化還元電位調整手段とユースポイントとの間に冷却機構を設けた、電子部品部材洗浄水の製造装置を提供する(発明1)。
【0009】
かかる発明(発明1)によれば、超純水に導電性付与剤と酸化還元電位調整剤を微量添加して電子部品部材洗浄水を調製し、この電子部品部材洗浄水を冷却機構で所定の温度に冷却してユースポイントに供給することにより、電子部品部材洗浄水の活性を低下させ、ウエハなどの電子部品部材の溶解を抑制することができる。しかも、導電性付与剤と酸化還元電位調整剤を微量添加した希薄溶液とすることで、ウエハなどの電子部品部材の表面の所定の材料のみを溶解させるという溶解性のコントロールが可能となる。
【0010】
上記発明(発明1)においては、前記導電性付与剤がアンモニアもしくは炭酸であることが好ましい(発明2)。
【0011】
かかる発明(発明2)によれば、電子部品部材洗浄水に導電性を付与しつつ、液性をアルカリ性又は酸性に調整することができ、さらにその濃度を調整することにより電子部品部材洗浄水のpHを調整することができる。
【0012】
上記発明(発明1,2)においては、前記酸化還元電位調整剤が、過酸化水素水、O又はHであることが好ましい(発明3)。
【0013】
かかる発明(発明2,3)によれば、電子部品部材洗浄水の酸化還元電位を正又は不に調整することができ、さらにその濃度を調整することにより電子部品部材洗浄水の酸化還元電位を調整することができる。
【0014】
上記発明(発明1~3)においては、前記冷却機構が電子部品部材洗浄水を20℃以下でユースポイントに供給可能であることが好ましい(発明4)。
【0015】
かかる発明(発明4)によれば、超純水に導電性付与剤と酸化還元電位調整剤を微量添加して20℃以下に冷却した電子部品部材洗浄水をユースポイント供給することで、ウエハなどの電子部品部材の溶解を効果的に抑制することができる。
【0016】
上記発明(発明1~4)においては、前記超純水供給ラインに導電性付与剤注入装置の下流側に導電率計又は比抵抗計を備えるとともに、前記酸化還元電位調整剤注入装置の下流側に酸化還元剤濃度計測装置又はORP計を備えることが好ましい(発明5)。
【0017】
かかる発明(発明5)によれば、超純水に導電性付与剤と酸化還元電位調整剤を微量添加した電子部品部材洗浄水の導電率やORPを測定し、この測定値に応じて導電性付与剤注入装置及び酸化還元電位調整剤注入装置からの添加量を制御することで、電子部品部材洗浄水の導電性及び酸化還元電位を調整し、ウエハなどの電子部品部材の溶解をさらに効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電子部品部材洗浄水の製造装置によれば、超純水に導電性付与剤と酸化還元電位調整剤を微量添加した電子部品部材洗浄水を冷却機構で所定の温度に冷却してユースポイントに供給することにより、ウエハなどの電子部品部材の溶解を抑制した洗浄が可能となる。しかも、導電性付与剤と酸化還元電位調整剤を微量添加した希薄溶液とすることで、ウエハなどの電子部品部材の表面の所定の材料のみを溶解させるという溶解性のコントロールが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態による電子部品部材洗浄水の製造装置を示す概略図である。
図2】従来の電子部品部材洗浄水の製造装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の電子部品部材洗浄水の製造装置の第一の実施形態について添付図面を参照にして詳細に説明する。
【0021】
〔電子部品部材洗浄水の製造装置〕
図1は、一実施形態による電子部品部材洗浄水(以下、単に洗浄水という場合がある)の製造装置を示しており、図1において電子部品部材洗浄水製造装置1は、超純水Wの供給ライン2に開閉弁3Bを備えた配管3Aを介して接続された導電性付与剤供給装置3と、開閉弁4Bを備えた配管4Aを介して接続された酸化還元電位調整剤供給装置4とを備える。そして、超純水供給ライン2の末端はユースポイントUPとなっていて、このユースポイントUPの前段には、冷却機構7が設けられている。なお、本実施形態においては、超純水供給ライン2の導電性付与剤供給装置3の後段には導電率計5が設けられているとともに、酸化還元電位調整剤供給装置4の後段にはORP計6が設けられていて、これらの測定値に基づいて、導電性付与剤供給装置3からの導電性付与剤の供給量及び酸化還元電位調整剤供給装置4からの酸化還元電位調整剤の供給量を図示しない制御機構により制御可能となっている。
【0022】
ここで、冷却機構7はチラーと呼ばれるものであり、本実施形態においてはユースポイントUPに、常温の超純水Wの流量に対して電子部品部材の洗浄水W1を20℃以下、例えば10~20℃で供給可能な能力を有するものであることが好ましい。
【0023】
<超純水>
本実施形態において、原水となる超純水Wとは、例えば、抵抗率:18.1MΩ・cm以上、微粒子:粒径50nm以上で1000個/L以下、生菌:1個/L以下、TOC(Total Organic Carbon):1μg/L以下、全シリコン:0.1μg/L以下、金属類:1ng/L以下、イオン類:10ng/L以下、過酸化水素;30μg/L以下、水温:25±2℃のものが好適である。
【0024】
<導電性付与剤>
本実施形態において導電性付与剤とは、原料水である超純水Wに溶解することでイオン(アニオンまたはカチオン)を生成し、そのイオンによって超純水Wに導電性を付与する物質を意味する。このような導電性付与物質としては、酸性の付与物質としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸などの液体及びCOガスなどのガス体を用いることができる。また、アルカリ性の付与剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はTMAH等を用いることができるが、半導体ウエハの洗浄に使用される場合には、アンモニア、CO(溶解水であってもよい)が好適であり、特にアンモニアが好適である。このアンモニアは所定の濃度のアンモニア水として用いることが好ましい。これらの導電性付与剤は、洗浄液のpHなど所望とする液性に応じて適宜選択すればよい。
【0025】
<酸化還元電位調整剤>
本実施形態において、酸化還元電位調整剤とは、原料水である超純水Wに溶解することで、酸化性あるいは還元性を付与して酸化還元電位を変動させる物質を意味する。このような酸化還元電位調整剤としては、特に制限はないが、フェリシアン化カリウムやフェロシアン化カリウムなどは、金属成分を含有するため好ましくない。したがって、酸化還元電位を高く調整する場合には、過酸化水素水などの液体やオゾンガス、酸素ガスなどのガス体を用いることができる。また、酸化還元電位を低く調整する場合にはシュウ酸、硫化水素、ヨウ化カリウムなどの液体や水素などのガス体を用いることが好ましい。半導体ウエハの洗浄に使用される場合には、過酸化水素水等の液体やオゾンガスや水素ガス等のガス体(溶解水であってもよい)が好ましく、特に酸化還元電位の制御が比較的容易であることから過酸化水素水を用いることが好ましい。これらの酸化還元電位調整剤は、洗浄液の酸化還元電位の正負など所望とする液性に応じて選択すればよい。
【0026】
〔電子部品部材洗浄水の製造方法〕
次に前述したような構成を有する本実施形態の電子部品部材洗浄水の製造装置を用いた電子部品部材洗浄水の製造方法について説明する。
【0027】
<導電性付与工程>
まず、供給ライン2から超純水Wが供給されると、この超純水Wの流量から設定された導電率となる導電性付与剤の濃度に基づき、必要な導電性付与剤を導電性付与剤供給装置3から添加する。このとき、供給ライン2に設けられた導電率計5により導電性付与剤添加後の超純水Wの導電率を測定し、設定された導電率となるように導電性付与剤の添加量を調整することが好ましい。
【0028】
上述したような導電性付与工程により、超純水Wの導電率を5μS/cm以下とすることが好ましい。超純水Wの導電率を5μS/cmを超えると、ウエハ表面の洗浄抑制効果が十分でない。したがって、導電性付与剤は極微量添加すればよい。
【0029】
<酸化還元電位調整工程>
次に、超純水Wの流量から設定された酸化還元電位となる酸化還元電位調整剤の濃度に基づき、必要な酸化還元電位調整剤を酸化還元電位調整剤供給装置4から添加する。このとき、供給ライン2に設けられたORP計6により酸化還元電位調整剤添加後の超純水Wの酸化還元電位を測定し、設定された酸化還元電位となるように酸化還元電位調整剤の添加量を調整することが好ましい。
【0030】
上述したような酸化還元電位調整工程において、超純水Wの酸化還元電位を大きくしすぎるとウエハ表面の洗浄抑制効果が十分でないことから、酸化還元電位は±10V未満程度となるように酸化還元電位調整剤を極希薄に溶解することが好ましい。超純水Wを原水とした本実施形態においては、具体的には、酸化還元電位調整剤が過酸化水素の場合には、濃度50ppm以下、特に10ppm以下とすることが好ましく、酸化還元電位調整剤がオゾン(O)の場合には、濃度10ppm以下、特に5ppm以下とすることが好ましく、酸化還元電位調整剤が水素(H)の場合には、濃度1ppm以下、特に0.5ppm以下とすることが好ましい。
【0031】
<冷却工程>
このようにして超純水Wを所望とする導電性及び酸化還元電位に調整した洗浄水W1は活性が高く、ウエハ表面の所定の材料のみを選択的に溶解させるなど溶解性のコントロールが困難である。そこで、ユースポイントUPには20℃以下で洗浄水W1が供給されることが好ましい。したがって、洗浄水W1を冷却機構7で0℃以上20℃未満に冷却することが好ましい。このため冷却機構7の出口での洗浄水W1の温度を測定して、冷却機構7の冷却能を制御することで所望とする温度に調整することが好ましい。
【0032】
なお、上記冷却工程は、並列に連結される複数のチラーを有するチラーユニットを冷却機構7として用いて、各チラーの冷却機能の低下の程度に応じて、複数のチラーの運転状態を切り替えることにより行ってもよい。複数のチラーの運転状態を切り替えることにより、使用するチラーを選択することができるので、例えば微生物等が発生して冷却機能が低下したチラーがある場合でも、チラーユニット全体の運転は停止させずに継続することができ、冷却した洗浄水W1の製造効率が向上する。
【0033】
以上のように、本実施形態の電子部品部材洗浄水の製造装置によれば、ウエハの洗浄水W1を所定の温度、特に0℃以上20℃未満の温度に冷却した低温の洗浄水W1を用いることにより、洗浄水W1の活性が低下するので、ウエハ表面の所定の材料のみを溶解させるなど洗浄水1の溶解性をコントロールすることができる。特に本実施形態によれば、低濃度の導電性付与剤及び酸化還元電位調整剤を用いることで、ウエハ表面の所定の材料のみを溶解させるなど洗浄水1の溶解性をコントロールしているので、薬液使用量を低減することができる。これにより、使用した溶液の回収再利用が容易になる、という効果も奏する。
【0034】
以上、本発明について添付図面を参照にして前記実施形態に基づき説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。例えば、導電性付与剤としてはアンモニアを用い、酸化還元電位調整剤としては過酸化水素を用いるのが一般的であるが、種々の導電性付与剤と酸化還元電位調整剤の組み合わせが可能である。また、導電性付与剤供給装置3及び酸化還元電位調整剤供給装置4から導電性付与剤及び酸化還元電位調整剤を添加せずに超純水Wを冷却して洗浄液として用いてもよい。
【実施例
【0035】
以下の具体的実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0036】
[比較例1]
冷却機構7を有しない図1に示す洗浄液製造装置を用い、常温の超純水Wに導電性付与剤供給装置3からアンモニア水(導電性付与剤)を導電率が100μS/cmとなるように添加し、次に酸化還元電位調整剤供給装置4から過酸化水素水(酸化還元電位調整剤)を100ppmとなるよう添加して洗浄水W1を製造した。そして、この洗浄水W1をユースポイントに送液してウエハを洗浄した。ユースポイントでの洗浄水W1の液温は25℃であった。この際、薬液(導電性付与剤+酸化還元電位調整剤)を多量に必要とし、アンモニア及び過酸化水素水の濃度が高く、洗浄液1の回収再利用は困難であった。この洗浄水W1の調整条件及びユースポイントUPにおける液温を表1に示す。
【0037】
[比較例2]
比較例1において、常温の超純水Wに導電性付与剤供給装置3からアンモニア(導電性付与剤)水を導電率が1μS/cmとなるように添加した以外は同様にして洗浄水W1を製造した。そして、この洗浄水W1をユースポイントに送液してウエハを洗浄した。ユースポイントでの洗浄水W1の液温は25℃であった。この際、薬液(導電性付与剤+酸化還元電位調整剤)を多量に必要とし、洗浄液1の回収再利用は困難であった。この洗浄水W1の調整条件及びユースポイントUPにおける液温を表1に示す。また、比較例1の洗浄液W1のウエハ溶解抑制効果を100%(抑制効果が高いほど大きいこととする)とした場合のウエハ溶解抑制効果、比較例1と対比した洗浄液W1の使用量及び洗浄液1の回収再利用の困難又は容易の判断の区別とともに表2にあわせて示す。
【0038】
[比較例3]
比較例1において、常温の超純水Wに導電性付与剤供給装置3からアンモニア(導電性付与剤)水を導電率が100μS/cmとなるように添加し、次に酸化還元電位調整剤供給装置4からオゾン(O)(酸化還元電位調整剤)を30ppmとなるよう添加して洗浄水W1を製造した。そして、この洗浄水W1をユースポイントに送液してウエハを洗浄した。ユースポイントでの洗浄水W1の液温は25℃であった。この際、薬液(導電性付与剤+酸化還元電位調整剤)を多量に必要とし、洗浄液1の回収再利用は困難であった。この洗浄水W1の調整条件及びユースポイントUPにおける液温を表1に示す。また、比較例1の洗浄液W1のウエハ溶解抑制効果を100%とした場合のウエハ溶解抑制効果、比較例1と対比した洗浄液W1の使用量及び洗浄液1の回収再利用の困難又は容易の判断の区別とともに表2にあわせて示す。
【0039】
[比較例4]
比較例1において、常温の超純水Wに導電性付与剤供給装置3からアンモニア(導電性付与剤)水を導電率が100μS/cmとなるように添加し、次に酸化還元電位調整剤供給装置4から水素(H)(酸化還元電位調整剤)を1.2ppmとなるよう添加して洗浄水W1を製造した。そして、この洗浄水W1をユースポイントに送液してウエハを洗浄した。ユースポイントでの洗浄水W1の液温は25℃であった。この際、薬液(導電性付与剤+酸化還元電位調整剤)を多量に必要とし、洗浄液1の回収再利用は困難であった。この洗浄水W1の調整条件及びユースポイントUPにおける液温を表1に示す。また、比較例1の洗浄液W1のウエハ溶解抑制効果を100%とした場合のウエハ溶解抑制効果、比較例1と対比した洗浄液W1の使用量及び洗浄液1の回収再利用の困難又は容易の判断の区別とともに表2にあわせて示す。
【0040】
[比較例5]
比較例1において、常温の超純水Wに導電性付与剤供給装置3からCO(導電性付与剤)を導電率が10μS/cmとなるように添加し、次に酸化還元電位調整剤供給装置4から過酸化水素水(酸化還元電位調整剤)を100ppmとなるよう添加して洗浄水W1を製造した。そして、この洗浄水W1をユースポイントに送液してウエハを洗浄した。ユースポイントでの洗浄水W1の液温は25℃であった。この際、薬液(導電性付与剤+酸化還元電位調整剤)を多量に必要とし、洗浄液1の回収再利用は困難であった。この洗浄水W1の調整条件及びユースポイントUPにおける液温を表1に示す。また、比較例1の洗浄液W1のウエハ溶解抑制効果を100%とした場合のウエハ溶解抑制効果、比較例1と対比した洗浄液W1の使用量及び洗浄液1の回収再利用の困難又は容易の判断の区別とともに表2にあわせて示す。
【0041】
[実施例1]
図1に示す洗浄液製造装置を用いて、常温の超純水Wに導電性付与剤供給装置3からアンモニア水(導電性付与剤)を導電率が1μS/cmとなるように添加し、次に酸化還元電位調整剤供給装置4から過酸化水素(酸化還元電位調整剤)を5ppmとなるよう添加して洗浄水W1を製造した。そして、この洗浄水W1を冷却機構7で冷却してユースポイントに送液してウエハを洗浄した。ユースポイントでの洗浄水W1の液温は15℃であった。この際、薬液(導電性付与剤+酸化還元電位調整剤)の使用量は比較例1と比べて少量であり、アンモニア水及び過酸化水素水の濃度が低く、洗浄液1の回収再利用は比較的容易であった。この洗浄水W1の調整条件及びユースポイントUPにおける液温を表1に示す。また、比較例1の洗浄液W1のウエハ溶解抑制効果を100%とした場合のウエハ溶解抑制効果、比較例1と対比した洗浄液W1の使用量及び洗浄液1の回収再利用の困難又は容易の判断の区別とともに表2にあわせて示す。
【0042】
[実施例2]
実施例1において、常温の超純水Wに導電性付与剤供給装置3からアンモニア(導電性付与剤)水を導電率が1μS/cmとなるように添加し、次に酸化還元電位調整剤供給装置4からオゾン(O)(酸化還元電位調整剤)を2ppmとなるよう添加して洗浄水W1を製造した。そして、この洗浄水W1を冷却機構7で冷却してユースポイントに送液してウエハを洗浄した。ユースポイントでの洗浄水W1の液温は15℃であった。この際、薬液(導電性付与剤+酸化還元電位調整剤)の使用量は比較例1と比べて少量であり、洗浄液1の回収再利用は比較的容易であった。この洗浄水W1の調整条件及びユースポイントUPにおける液温を表1に示す。また、比較例1の洗浄液W1のウエハ溶解抑制効果を100%とした場合のウエハ溶解抑制効果、比較例1と対比した洗浄液W1の使用量及び洗浄液1の回収再利用の困難又は容易の判断の区別とともに表2にあわせて示す。
【0043】
[実施例3]
実施例1において、常温の超純水Wに導電性付与剤供給装置3からアンモニア(導電性付与剤)水を導電率が1μS/cmとなるように添加し、次に酸化還元電位調整剤供給装置4から水素(H)(酸化還元電位調整剤)を0.2ppmとなるよう添加して洗浄水W1を製造した。そして、この洗浄水W1を冷却機構7で冷却してユースポイントに送液してウエハを洗浄した。ユースポイントでの洗浄水W1の液温は15℃であった。この際、薬液(導電性付与剤+酸化還元電位調整剤)の使用量は比較例1と比べて少量であり、洗浄液1の回収再利用は比較的容易であった。この洗浄水W1の調整条件及びユースポイントUPにおける液温を表1に示す。また、比較例1の洗浄液W1のウエハ溶解抑制効果を100%とした場合のウエハ溶解抑制効果、比較例1と対比した洗浄液W1の使用量及び洗浄液1の回収再利用の困難又は容易の判断の区別とともに表2にあわせて示す。
【0044】
[実施例4]
実施例1において、常温の超純水Wに導電性付与剤供給装置3からCO(導電性付与剤)を導電率が1μS/cmとなるように添加し、次に酸化還元電位調整剤供給装置4から過酸化水素(酸化還元電位調整剤)を5ppmとなるよう添加して洗浄水W1を製造した。そして、この洗浄水W1を冷却機構7で冷却してユースポイントに送液してウエハを洗浄した。ユースポイントでの洗浄水W1の液温は15℃であった。この際、薬液(導電性付与剤+酸化還元電位調整剤)の使用量は比較例1と比べて少量であり、洗浄液1の回収再利用は比較的容易であった。この洗浄水W1の調整条件及びユースポイントUPにおける液温を表1に示す。また、比較例1の洗浄液W1のウエハ溶解抑制効果を100%とした場合のウエハ溶解抑制効果、比較例1と対比した洗浄液W1の使用量及び洗浄液1の回収再利用の困難又は容易の判断の区別とともに表2にあわせて示す。
【0045】
[参考例1]
比較例1において、常温の超純水Wに導電性付与剤及び酸化還元電位調整剤を添加せず、そのまま洗浄水W1としてユースポイントに送液してウエハを洗浄した。ユースポイントでの洗浄水W1の液温は25℃であった。この洗浄水W1の調整条件及びユースポイントUPにおける液温を表1に示す。また、比較例1の洗浄液W1のウエハ溶解抑制効果を100%とした場合のウエハ溶解の抑制効果、ウエハ溶解抑制効果を比較例1と対比した洗浄液W1の使用量及び洗浄液1の回収再利用の困難又は容易の判断の区別とともに表2にあわせて示す。
【0046】
[参考例2]
実施例1において、常温の超純水Wをそのまま洗浄水W1として、この洗浄水W1を冷却機構7で冷却してユースポイントに送液してウエハを洗浄した。ユースポイントでの洗浄水W1の液温は20℃であった。この洗浄水W1の調整条件及びユースポイントUPにおける液温を表1に示す。また、比較例1の洗浄液W1のウエハ溶解抑制効果を100%とした場合のウエハ溶解抑制効果、比較例1と対比した洗浄液W1の使用量及び洗浄液1の回収再利用の困難又は容易の判断の区別とともに表2にあわせて示す。
【0047】
[参考例3]
実施例1において、常温の超純水Wをそのまま洗浄水W1として、この洗浄水W1を冷却機構7で冷却してユースポイントに送液してウエハを洗浄した。ユースポイントでの洗浄水W1の液温は15℃であった。この洗浄水W1の調整条件及びユースポイントUPにおける液温を表1に示す。また、比較例1の洗浄液W1のウエハ溶解抑制効果を100%(抑制効果が高いほど大きくなる)とした場合のウエハ溶解抑制効果、比較例1と対比した洗浄液W1の使用量及び洗浄液1の回収再利用の困難又は容易の判断の区別とともに表2にあわせて示す。
【0048】
[参考例4]
実施例1において、常温の超純水Wをそのまま洗浄水W1として、この洗浄水W1を冷却機構7で冷却してユースポイントに送液してウエハを洗浄した。ユースポイントでの洗浄水W1の液温は10℃であった。この洗浄水W1の調整条件及びユースポイントUPにおける液温を表1に示す。また、比較例1の洗浄液W1のウエハ溶解抑制効果を100%とした場合のウエハ溶解抑制効果、比較例1と対比した洗浄液W1の使用量及び洗浄液1の回収再利用の困難又は容易の判断の区別とともに表2にあわせて示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1及び表2から明らかな通り、15℃に冷却した実施例1~4の洗浄水W1は、25℃の洗浄水W1ウエハを洗浄した場合と比較して、ウエハの溶解抑制効果が高く、薬液使用量も少量で希薄溶液であるので回収も比較的容易であった。また、参考例1~4から明らかなように、原料水となる超純水Wを洗浄水として用いた場合であっても、25℃である参考例1はウエハ溶解抑制効果が低いのに対し、温度を低下させるほどウエハの溶解抑制効果が高くなることから、洗浄水W1の温度を調整することで、ウエハの溶解抑制効果を調節することができることがわかる。
【符号の説明】
【0052】
1 電子部品部材洗浄水製造装置
2 供給ライン
3 導電性付与剤供給装置
3A 配管
3B 開閉弁
4 酸化還元電位調整剤供給装置
4A 配管
4B 開閉弁
5 導電率計
6 ORP計
7 冷却機構
W 超純水
W1 洗浄水
UP ユースポイント
図1
図2